特許第6338809号(P6338809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6338809発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂およびその製造方法、ならびに、成形品
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  • 特許6338809-発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂およびその製造方法、ならびに、成形品 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6338809
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂およびその製造方法、ならびに、成形品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/75 20060101AFI20180528BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20180528BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20180528BHJP
   C08J 9/12 20060101ALI20180528BHJP
   A43B 13/04 20060101ALI20180528BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20180528BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20180528BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   C08G18/75 010
   C08G18/10
   C08G18/00 F
   C08J9/12CFF
   A43B13/04
   B24B37/00
   B60N3/00 A
   C08G101:00
【請求項の数】10
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2018-513894(P2018-513894)
(86)(22)【出願日】2017年11月14日
(86)【国際出願番号】JP2017040836
【審査請求日】2018年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-224421(P2016-224421)
(32)【優先日】2016年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】景岡 正和
(72)【発明者】
【氏名】青木 航
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 益巳
(72)【発明者】
【氏名】山崎 聡
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/051114(WO,A1)
【文献】 特表2006−504843(JP,A)
【文献】 特開2011−105812(JP,A)
【文献】 特表2011−518898(JP,A)
【文献】 特開2012−46700(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/038724(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
C08G 101/00
C08J 9/00− 9/42
A43B 13/00− 13/42
B24B 37/00− 37/34
B60N 2/00− 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応生成物である発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂であって、
前記発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定して得られるクロマトグラムのピークにおいて、重量平均分子量400,000以上の高分子量成分の面積が、前記ピークの総面積に対して、25%以上60%以下であることを特徴とする、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
前記発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の、示差走査熱量計により測定した凝集温度が、90℃以上180℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂。
【請求項3】
前記ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンであることを特徴とする、請求項1に記載の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂。
【請求項4】
前記1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが、70モル%以上96モル%以下の割合でトランス体を含有することを特徴とする、請求項3に記載の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂。
【請求項5】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、ポリオール成分とを反応させて一次生成物を得る反応工程と、
前記一次生成物を、50℃以上100℃以下で、3日以上10日以下、熱処理する熱処理工程と
を備えることを特徴とする、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする、成形品。
【請求項7】
ミッドソールであることを特徴とする、請求項6に記載の成形品。
【請求項8】
ショックアブソーバーであることを特徴とする、請求項6に記載の成形品。
【請求項9】
化学機械研磨パッドであることを特徴とする、請求項6に記載の成形品。
【請求項10】
自動車内装部材であることを特徴とする、請求項6に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法、および、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)は、一般に、ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールの反応により得られるゴム弾性体であって、ポリイソシアネートおよび低分子量ポリオールの反応により形成されるハードセグメントと、ポリイソシアネートおよび高分子量ポリオールの反応により形成されるソフトセグメントとを備えている。
【0003】
このような熱可塑性ポリウレタン樹脂を発泡剤とともに溶融成形することにより、発泡成形品を得ることが知られている。
【0004】
具体的には、例えば、ポリイソシアネートとしての4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、高分子量ポリオールとしてのアジピン酸と1,4−ブタンジオールとからなるポリエステルポリオール、および、低分子量ポリオールとしての1,4−ブタンジオールから熱可塑性ポリウレタン樹脂のペレットを作製し、そのペレットを発泡剤とともに溶融成形することにより発泡成形品を得ることが提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0329892号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の熱可塑性ポリウレタン樹脂では、引裂強度などの機械物性が不十分であり、その機械物性のさらなる向上が望まれている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、優れた機械物性を有する発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応生成物である発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂であって、前記発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定して得られるクロマトグラムのピークにおいて、重量平均分子量400,000以上の高分子量成分の面積が、前記ピークの総面積に対して、25%以上60%以下であることを特徴とする、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0009】
また、本発明[2]は、前記発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の、示差走査熱量計により測定した凝集温度が、90℃以上180℃以下であることを特徴とする、上記[1]に記載の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0010】
また、本発明[3]は、前記ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンであることを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0011】
また、本発明[4]は、前記1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが、70モル%以上96モル%以下の割合でトランス体を含有することを特徴とする、上記[3]に記載の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0012】
また、本発明[5]は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、ポリオール成分とを反応させて一次生成物を得る反応工程と、前記一次生成物を、50℃以上100℃以下で、3日以上10日以下、熱処理する熱処理工程とを備えることを特徴とする、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法を含んでいる。
【0013】
また、本発明[6]は、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする、成形品を含んでいる。
【0014】
また、本発明[7]は、ミッドソールであることを特徴とする、上記[6]に記載の成形品を含んでいる。
【0015】
また、本発明[8]は、ショックアブソーバーであることを特徴とする、上記[7]に記載の成形品を含んでいる。
【0016】
また、本発明[9]は、化学機械研磨パッドであることを特徴とする、上記[6]に記載の成形品を含んでいる。
【0017】
また、本発明[10]は、自動車内装部材であることを特徴とする、上記[6]に記載の成形品を含んでいる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂は、特定範囲の重量平均分子量を有する高分子成分を特定比率で含有する。そのため、発泡時の破泡を低減することができ、均一な微細セルを得ることができる。その結果、優れた機械物性を有する。
【0019】
また、本発明の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法によれば、比較的長時間の熱処理工程を含むため、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂に高分子量成分を特定の割合で含有させることができる。そのため、優れた機械物性を有する発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0020】
また、本発明の成形品は、本発明の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂から成形されるため、優れた機械物性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施例2および比較例1の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したときのクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分とを反応させることにより得られる。
【0023】
すなわち、本発明の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応生成物である。
【0024】
本発明において、ポリイソシアネート成分は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを、必須成分として含んでいる。
【0025】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとしては、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられ、好ましくは、対称構造であり、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の剛直性の向上を図る観点から、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0026】
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンには、シス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、シス1,4体とする。)、および、トランス−
,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、トランス1,4体とする。)の立体異性体があり、本発明では、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、トランス1,4体を、例えば、60モル%以上、好ましくは、70モル%以上、より好ましくは、80モル%以上、さらに好ましくは、85モル%以上、例えば、99モル%以下、好ましくは、96モル%以下、より好ましくは、90モル%以下の割合で、含有している。換言すると、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、トランス1,4体およびシス1,4体の総量が100モル%であるため、シス1,4体を、例えば、1モル%以上、好ましくは、4モル%以上、より好ましくは、10モル%以上、例えば、40モル%以下、好ましくは、30モル%以下、より好ましくは、20モル%以下、さらに好ましくは、15モル%以下の割合で、含有している。
【0027】
トランス1,4体の含有割合が上記下限以上であれば、得られるポリウレタン発泡成形品(後述)の機械物性を向上することができる。また、トランス1,4体の含有割合が上記上限以下であれば、得られるポリウレタン発泡成形品(後述)の硬度や破断強度、引裂強度を向上することができる。
【0028】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、例えば、市販のビス(アミノメチル)シクロヘキサンや、特開2011−6382号公報に記載の方法により得られたビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどから、例えば、特開平7−309827号公報や特開2014−55229号公報に記載される冷熱2段ホスゲン化法(直接法)や造塩法、あるいは、特開2004−244349号公報や特開2003−212835号公報に記載されるノンホスゲン法などにより、製造することができる。
【0029】
また、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、変性体として調製することもできる。
【0030】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの変性体としては、例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの多量体(ダイマー(例えば、ウレトジオン変性体など)、トリマー(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体など)など)、ビウレット変性体(例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと水との反応により生成するビウレット変性体など)、アロファネート変性体(例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと1価アルコールまたは2価アルコールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと3価アルコールとの反応より生成するポリオール変性体(付加体)など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)などが挙げられる。
【0031】
また、ポリイソシアネート成分は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲で、その他のポリイソシアネート、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどを、任意成分として含有することができる。
【0032】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’−ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカメチレントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアナトメチルオクタン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテル−ω、ω’−ジイソシアネート、リジンイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、2−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、ビス(4−イソシアネート−n−ブチリデン)ペンタエリスリトール、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエートなどが挙げられる。
【0033】
また、脂肪族ポリイソシアネートには、脂環族ポリイソシアネート(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除く。)が含まれる。
【0034】
脂環族ポリイソシアネート(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除く。)としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トランス,トランス−、トランス,シス−、およびシス,シス−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびこれらの混合物(水添MDI)、1,3−または1,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよびこれらの混合物、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2’−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,5−ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、その異性体である2,6−ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン(NBDI)、2−イソシアナトメチル2−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチルビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチルビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル3−(3−イソシアナトプロピル)−5−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル3−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル2−(3−イソシアナトプロピル)−5−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタン、2−イソシアナトメチル2−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−〔2,2,1〕−ヘプタンなどが挙げられる。
【0035】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネート、ならびに、これらトリレンジイソシアネートの異性体混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ならびに、これらジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体混合物(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)などが挙げられる。
【0036】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)などが挙げられる。
【0037】
これらその他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0038】
また、その他のポリイソシアネートは、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、変性体として調製することもできる。
【0039】
その他のポリイソシアネートの変性体としては、例えば、その他のポリイソシアネートの多量体(ダイマー、トリマーなど)、ビウレット変性体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体などが挙げられる。
【0040】
その他のポリイソシアネートを含有する場合の含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、20質量%以下である。
【0041】
また、ポリイソシアネート成分は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲でモノイソシアネートを、任意成分として含有することができる。
【0042】
モノイソシアネートとしては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、2−エチルヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネートなどが挙げられる。
【0043】
モノイソシアネートを含有する場合の含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0044】
ポリイソシアネート成分として、好ましくは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを単独で用いる。
【0045】
本発明において、ポリオール成分は、分子中に水酸基を2つ以上含有する化合物(以下、水酸基含有化合物と称する。)を含有する分子量60以上5000以下の成分が、通常、用いられる。ポリオール成分として、好ましくは、分子量400以上5000以下の第1ポリオール成分と、分子量60以上400未満の第2ポリオール成分とが併用される。
【0046】
なお、ポリオール成分に重合体が含まれる場合には、その重合体の分子量として、数平均分子量が採用される。また、このような場合において、数平均分子量は、GPC法による測定や、重合体を重合する各成分の水酸基価および処方により決定することができる(以下同様)。
【0047】
第1ポリオール成分としては、例えば、分子量が上記範囲内であり分子中に水酸基を2つ以上有する化合物であり、好ましくは、数平均分子量が上記範囲内であり分子中に水酸基を2つ以上有する重合体が挙げられる。
【0048】
第1ポリオール成分として、具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。
【0049】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0050】
ポリオキシアルキレンポリオールは、例えば、低分子量ポリオールなどや、低分子量ポリアミンなどを開始剤とする、アルキレンオキサイドの付加重合物である。
【0051】
低分子量ポリオールとしては、例えば、後述する第2ポリオールなどが挙げられる。
【0052】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。また、これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドが挙げられる。また、ポリオキシアルキレンポリオールとして、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体などが含まれる。
【0053】
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)や、テトラヒドロフランなどの重合単位に、アルキル置換テトラヒドロフランや、2価アルコール(後述)を共重合した非晶性(非結晶性)ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0054】
なお、非晶性(非結晶性)とは、常温(25℃)において液状であることを示す(以下同様)。
【0055】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
【0056】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸、その他の飽和脂肪族ジカルボン酸(C11〜13)、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他の不飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、その他の芳香族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、その他の脂環族ジカルボン酸、例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸などのその他のカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(C12〜C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
【0057】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、植物由来のポリエステルポリオール、具体的には、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12−ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0058】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール(後述))を開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類や、例えば、L−ラクチド、D−ラクチドなどのラクチド類などを開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに2価アルコール(後述)を共重合したものなどのラクトンベースポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0059】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール(後述))を開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物や、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールや1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコール(後述)と、開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0060】
植物油ポリオールとしては、例えば、ひまし油、やし油などのヒドロキシル基含有植物油などが挙げられる。例えば、ひまし油ポリオール、または、ひまし油脂肪酸とポリプロピレンポリオールとの反応により得られるエステル変性ひまし油ポリオールなどが挙げられる。
【0061】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、部分ケン価エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0062】
アクリルポリオールとしては、例えば、ヒドロキシル基含有アクリレートと、ヒドロキシル基含有アクリレートと共重合可能な共重合性ビニルモノマーとを、共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。
【0063】
ヒドロキシル基含有アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0064】
共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート(炭素数1〜12)、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基を含むビニルモノマー、または、そのアルキルエステル、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、3−(2−イソシアネート−2−プロピル)−α−メチルスチレンなどのイソシアネート基を含むビニルモノマーなどが挙げられる。
【0065】
そして、アクリルポリオールは、これらヒドロキシル基含有アクリレート、および、共重合性ビニルモノマーを、適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることにより得ることができる。
【0066】
また、アクリルポリオールには、例えば、シリコーンポリオールやフッ素ポリオールが含まれる。
【0067】
シリコーンポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合性ビニルモノマーとして、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニル基を含むシリコーン化合物が配合されたアクリルポリオールが挙げられる。
【0068】
フッ素ポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合性ビニルモノマーとして、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどのビニル基を含むフッ素化合物が配合されたアクリルポリオールが挙げられる。
【0069】
これら第1ポリオール成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0070】
第1ポリオール成分として、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。
【0071】
第1ポリオール成分が上記のものであれば、破断強度や、引裂強度などの機械物性に優れたポリウレタン発泡成形品(後述)を得ることができる。
【0072】
第1ポリオール成分の数平均分子量は、例えば、400以上、好ましくは、500以上、より好ましくは、1000以上、さらに好ましくは、2000以上であり、例えば、5000以下、好ましくは、4000以下、より好ましくは、3000以下である。
【0073】
第1ポリオール成分の分子量が上記範囲内であれば、発泡倍率を増加させた場合でも良好な機械物性を発現させることができる。
【0074】
第2ポリオール成分としては、例えば、分子中に水酸基を2つ以上有し、分子量60以上400未満の化合物(単量体)が挙げられる。
【0075】
第2ポリオール成分として、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール(1,4−ブタンジオール、1,4−BD)、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,2−トリメチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、アルカン(C7〜11)ジオール、シクロヘキサンジメタノール(1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物)、シクロヘキサンジオール(1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物)、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ベンゼンジオール(別名カテコール)、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール、ビスフェノールAおよびその水添物などの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコールなどの多価アルコールなどが挙げられる。
【0076】
これら第2ポリオール成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0077】
第2ポリオール成分として、好ましくは、2価アルコール、より好ましくは、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
【0078】
第2ポリオール成分が上記のものであれば、破断強度などの機械物性に優れたポリウレタン発泡成形品(後述)を得ることができる。
【0079】
第2ポリオール成分の数平均分子量は、例えば、60以上、好ましくは、80以上であり、例えば、400未満、好ましくは、300未満である。
【0080】
第2ポリオール成分の分子量が上記範囲内であれば、発泡倍率を増加させて、軽量なポリウレタン発泡成形品(後述)を得ることができる。
【0081】
ポリオール成分において、第1ポリオール成分および第2ポリオール成分の含有割合は、それら第1ポリオール成分および第2ポリオール成分の総量に対して、第1ポリオール成分が、例えば、5モル%以上、好ましくは、7モル%以上、より好ましくは、10モル%以上、さらに好ましくは、20モル%以上であり、例えば、75モル%以下、好ましくは、65モル%以下、より好ましくは、50モル%以下である。また、第2ポリオール成分が、例えば、25モル%以上、好ましくは、35モル%以上、より好ましくは、50モル%以上であり、例えば、95モル%以下、好ましくは、93モル%以下、より好ましくは、90モル%以下、さらに好ましくは、80モル%以下である。
【0082】
第1ポリオール成分および第2ポリオール成分の含有割合が上記範囲内であれば、得られるポリウレタン発泡成形品(後述)の機械物性を向上することができる。
【0083】
そして、本発明の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂は、反応工程と熱処理工程とを備える製造方法により得ることができる。
【0084】
反応工程は、上記のポリイソシアネート成分と、上記のポリオール成分とを反応させて一次生成物(熱処理前の反応生成物)を得る工程である。
【0085】
上記各成分(ポリイソシアネート成分、ポリオール成分)を反応させるには、例えば、ワンショット法やプレポリマー法などの公知の方法が採用される。好ましくは、プレポリマー法が採用される。
【0086】
プレポリマー法により上記各成分を反応させれば、優れた機械物性を有するポリウレタン発泡成形品(後述)を得ることができる。
【0087】
具体的には、プレポリマー法では、まず、ポリイソシアネート成分と第1ポリオール成分とを反応させて、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを合成する(プレポリマー合成工程)。
【0088】
プレポリマー合成工程では、ポリイソシアネート成分と、第1ポリオール成分とを、例えば、バルク重合や溶液重合などの重合方法により反応させる。
【0089】
バルク重合では、例えば、窒素気流下において、ポリイソシアネート成分および第1ポリオール成分を、反応温度が、例えば、50℃以上、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下で、例えば、0.5時間以上、例えば、15時間以下反応させる。
【0090】
溶液重合では、有機溶剤に、ポリイソシアネート成分および第1ポリオール成分を加えて、反応温度が、例えば、50℃以上、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下で、例えば、0.5時間以上、例えば、15時間以下反応させる。
【0091】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。
【0092】
さらに、上記重合反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒を添加することができる。
【0093】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0094】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫(オクチル酸スズ)、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクタン酸ビスマス(オクチル酸ビスマス)、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられ、好ましくは、オクチル酸スズ、オクチル酸ビスマスが挙げられる。
【0095】
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
【0096】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0097】
ウレタン化触媒の添加割合は、ポリイソシアネート成分および第1ポリオール成分の総量10000質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、例えば、1質量部以下、好ましくは、0.5質量部以下である。
【0098】
また、上記重合反応においては、未反応のポリイソシアネート成分や、触媒や有機溶剤を用いた場合には触媒や有機溶剤を、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により除去することができる。
【0099】
プレポリマー合成工程において、各成分の配合割合は、第1ポリオール成分中の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が、例えば、2.0以上、好ましくは、2.5以上であり、例えば、20以下、好ましくは、15以下、より好ましくは、10以下、さらに好ましくは、6.0以下である。
【0100】
より具体的には、プレポリマー合成工程における各成分の配合割合は、第1ポリオール成分100質量部に対して、ポリイソシアネート成分が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、15質量部以上であり、例えば、100質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下である。
【0101】
そして、この方法では、イソシアネート基含有率が、例えば、1.0質量%以上、好ましくは、3.0質量%以上、より好ましくは、4.0質量%以上、例えば、30.0質量%以下、好ましくは、19.0質量%以下、より好ましくは、16.0質量%以下、さらに好ましくは、12.0質量%以下、さらに好ましくは、10.0質量%以下、特に好ましくは、5.0質量%以下に達するまで上記成分を反応させる。これにより、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを得ることができる。
【0102】
なお、イソシアネート基含有量(イソシアネート基含有率)は、ジ−n−ブチルアミンによる滴定法や、FT−IR分析などの公知の方法によって求めることができる。
【0103】
次いで、この方法では、上記により得られたイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーと、第2ポリオール成分とを反応させて、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との一次生成物を得る(鎖伸長工程)。
【0104】
すなわち、この方法において、第2ポリオール成分は、鎖伸長剤である。
【0105】
そして、鎖伸長工程では、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーと、第2ポリオール成分とを、例えば、上記したバルク重合や上記した溶液重合などの重合方法により反応させる。
【0106】
反応温度は、例えば、室温以上、好ましくは、50℃以上、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下であり、反応時間が、例えば、5分以上、好ましくは、1時間以上、例えば、72時間以下、好ましくは、48時間以下である。
【0107】
また、各成分の配合割合は、第2ポリオール成分中の水酸基に対する、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が、例えば、0.75以上、好ましくは、0.9以上、例えば、1.3以下、好ましくは、1.1以下である。
【0108】
より具体的には、鎖伸長工程における各成分の配合割合は、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー100質量部に対して、第2ポリオール成分が、例えば、1.0質量部以上、好ましくは、2.0質量部以上、より好ましくは、3.0質量部以上であり、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、15質量部以下、さらに好ましくは、10質量部以下、特に好ましくは、6.0質量部以下である。
【0109】
また、鎖伸長工程において、得られる発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメント濃度(後述)を調整するために、第2ポリオール成分の他に、第1ポリオール成分を配合することもできる。
【0110】
鎖伸長工程において、第1ポリオール成分を配合する場合における、第1ポリオール成分の配合割合は、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー100質量部に対して、第1ポリオール成分が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、50質量部以上であり、例えば、120質量部以下、好ましくは、100質量部以下であり、また、第2ポリオール成分1質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、30質量部以下である。
【0111】
さらに、この反応においては、必要に応じて、上記したウレタン化触媒を添加することができる。ウレタン化触媒は、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーおよび/または第2ポリオール成分に配合することができ、また、それらの混合時に別途配合することもできる。
【0112】
また、上記の一次生成物を得る方法として、ワンショット法を採用する場合には、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分(第1ポリオール成分および第2ポリオール成分を含む)とを、ポリオール成分中の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が、例えば、0.9以上、好ましくは、0.95以上、より好ましくは、0.98以上、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下、より好ましくは、1.08以下となる割合で、同時に配合して攪拌混合する。
【0113】
また、この攪拌混合は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素)雰囲気下、反応温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、100℃以上、例えば、280℃以下、好ましくは、260℃以下で、反応時間が、例えば、30秒以上1時間以下で実施する。
【0114】
攪拌混合の方法としては、特に制限されないが、例えば、ディスパー、ディゾルバー、タービン翼を備えた混合槽、循環式の低圧または高圧衝突混合装置、高速攪拌ミキサー、スタティックミキサー、ニーダー、単軸または二軸回転式の押出機、ベルトコンベアー式など、公知の混合装置を用いて攪拌混合する方法が挙げられる。
【0115】
また、攪拌混合時には、必要により、上記したウレタン化触媒や有機溶剤を、適宜の割合で添加することができる。
【0116】
熱処理工程は、上記の一次生成物を熱処理して二次生成物(熱処理後の反応生成物、すなわち、反応生成物である発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂)を得る工程である。
【0117】
熱処理工程では、上記の反応工程で得られた一次生成物を、所定の熱処理温度で、所定の熱処理期間静置することにより熱処理した後、50℃以上100℃以下の温度で6時間以上3日間以下乾燥させる。
【0118】
熱処理温度としては、50℃以上、好ましくは、60℃以上、より好ましくは、70℃以上であり、100℃以下、好ましくは、90℃以下である。
【0119】
熱処理温度が上記下限以上であれば、効率よく高分子量成分を所定割合含ませることができ、また、熱処理温度が上記上限以下であれば、得られるポリウレタン発泡成形品(後述)の耐紫外線(UV)変色性を向上させることができる。
【0120】
熱処理期間としては、3日以上、好ましくは、4日以上、より好ましくは、5日以上、さらに好ましくは、6日以上であり、10日以下、好ましくは、9日以下、より好ましくは、8日以下である。
【0121】
熱処理期間が上記下限以上であれば、得られる発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂に高分子量成分を所定量以上含ませることができるため、得られるポリウレタン発泡成形品(後述)の機械物性を向上させることができ、また、熱処理期間が上記上限以下であれば、得られる発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂への高分子量成分の含有量を所定量以下に抑制することができるため、得られるポリウレタン発泡成形品(後述)の機械物性および耐紫外線(UV)変色性を向上させることができる。
【0122】
これにより、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0123】
なお、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、さらには、可塑剤、ブロッキング防止剤、離型剤、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤、防錆剤、充填剤、ブルーイング剤などを添加することができる。これら添加剤は、各成分の混合時、合成時または合成後に添加することができる。
【0124】
耐熱安定剤としては、特に制限されず、公知の耐熱安定剤(例えば、BASFジャパン製カタログに記載)が挙げられ、より具体的には、例えば、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系加工熱安定剤などが挙げられる。
【0125】
紫外線吸収剤としては、特に制限されず、公知の紫外線吸収剤(例えば、BASFジャパン製カタログに記載)が挙げられ、より具体的には、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0126】
耐光安定剤としては、特に制限されず、公知の耐光安定剤(例えば、ADEKA製カタログに記載)が挙げられ、より具体的には、例えば、ベンゾエート系光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。
【0127】
これら添加剤は、それぞれ発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂に対して、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上、例えば、3.0質量%以下、好ましくは、2.0質量%以下となる割合で、添加される。
【0128】
そして、このような製造方法により得られる本発明の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂は、高分子量成分(重量平均分子量が、400,000以上、好ましくは、500,000以上の成分)を特定割合で含有する。そのため、得られるポリウレタン発泡成形品(後述)の機械物性を向上することができる。
【0129】
具体的には、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の高分子量成分の含有割合は、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定して得られるクロマトグラムのピークにおいて、そのピークの総面積に対する、重量平均分子量400,000以上の高分子量成分の面積に相当し、25%以上、好ましくは、30%以上、より好ましくは、36%以上、さらに好ましくは、40%以上、特に好ましくは、44%以上であり、60%以下、好ましくは、55%以下、より好ましくは、50%以下、さらに好ましくは、46%以下、特に好ましくは、45%以下である。なお、クロマトグラムのピークは、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂に由来する分子量分布曲線であり、溶媒などの不純物によるピークは除かれる。
【0130】
なお、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の高分子量成分の含有割合は、本発明では、特定の条件下(後述する実施例を参照。)における、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定(GPC測定)することができる。
【0131】
具体的には、本発明では、得られた発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を、例えば、N−メチルピロリドンに浸漬し、例えば、80℃以上120℃以下(好ましくは、100℃程度)において、例えば、2時間以上8時間以下の時間攪拌して溶解させ、得られた溶液を室温(25℃)まで冷却後に濾過し、試料溶液を調製する。そして、その試料溶液は示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、後述する実施例の条件に従って、GPC測定される。
【0132】
発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の高分子量成分が上記下限以上であれば、伸長粘度を上昇でき、発泡時の破泡を低減することができるため、微細セルの均一性を保持することができ、その結果、得られるポリウレタン発泡成形品(後述)の機械物性を向上させることができる。
【0133】
また、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の高分子量成分が上記上限以下であれば、伸長粘度が高くなりすぎるのを抑制できるため、発泡を制御しやすくなり、その結果、得られるポリウレタン発泡成形品(後述)の熱およびせん断による劣化を抑制でき、また、耐紫外線(UV)変色性を向上させることができる。
【0134】
また、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメント濃度は、例えば、3質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、8質量%以上であり、例えば、55質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、45質量%以下、さらに好ましくは、35質量%以下、特に好ましくは、20質量%以下である。
【0135】
発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメント濃度が上記範囲内であれば、得られるポリウレタン発泡成形品(後述)を構成するセルの均一性を向上させることができる。
【0136】
なお、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメント(ポリイソシアネート成分と第2ポリオール成分との反応により形成されるハードセグメント)濃度は、例えば、各成分の配合割合(仕込)から算出することができる(後述する実施例を参照。)。
【0137】
また、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の凝集温度は、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂中のハードセグメント相の凝集温度に相当し、例えば、75℃以上、好ましくは、90℃以上、より好ましくは、100℃以上、さらに好ましくは、110℃以上、特に好ましくは、130℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下、より好ましくは、170℃以下、さらに好ましくは、150℃以下、特に好ましくは、140℃以下である。
【0138】
発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の凝集温度が上記下限以上であれば、得られるポリウレタン発泡成形品(後述)の破断強度や引裂強度を向上させることができ、また、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の凝集温度が上記上限以下であれば、得られるポリウレタン発泡成形品(後述)の反発弾性の向上や圧縮永久歪の抑制を図ることができる。
【0139】
なお、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の凝集温度は、例えば、実施例の条件に準拠した示差走査熱量測定(DSC測定)により測定することができる。
【0140】
また、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の硬度(ASKER A(JIS K7311(1995)に準拠)、ASKER D(JIS K7311(1995)に準拠))は、例えば、50A以上、好ましくは、70A以上、より好ましくは、72A以上、さらに好ましくは、75A以上、特に好ましくは、78A以上であり、例えば、60D以下、好ましくは、55D以下、より好ましくは、50D以下、さらに好ましくは、95A以下、特に好ましくは、90A以下、とりわけ好ましくは、85A以下である。
【0141】
そして、本発明は、上記した本発明の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む成形品、具体的には、発泡成形品を含んでいる。発泡成形品は、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂から成形される。
【0142】
発泡成形品は、例えば、上記の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を、押出発泡法、射出発泡法、ビーズ発泡法などの公知の発泡成形方法により成形することにより得ることができる。
【0143】
具体的には、押出発泡法では、例えば、上記の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を溶融し、公知の発泡剤(例えば、超臨界二酸化炭素ガス)を混錬した後、押し出すことにより、ポリウレタン発泡成形品を得ることができる。
【0144】
また、射出発泡法では、例えば、上記の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を溶融し、公知の発泡剤(例えば、超臨界二酸化炭素ガス)を混錬した後、射出して金型で成形することにより、ポリウレタン発泡成形品を得ることができる。
【0145】
また、ビーズ発泡法では、例えば、上記の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を溶融し、公知の発泡剤(例えば、超臨界二酸化炭素ガス)を混錬した後、吐出された発泡体ストランドを適当な大きさにカットすることにより発泡ビーズを得て、その発泡ビーズを金型により溶融成形することにより、ポリウレタン発泡成形品を得ることができる。
【0146】
得られる発泡成形品中のセルの均一性(後述する実施例に準拠)は、例えば、4以上、好ましくは、4を超過し、例えば、5以下である。
【0147】
また、発泡成形品のコア密度(後述する実施例に準拠)は、例えば、0.01g/cm以上、好ましくは、0.05g/cm以上、より好ましくは、0.10g/cm以上、さらに好ましくは、0.20g/cm以上であり、例えば、0.5g/cm以下、好ましくは、0.4g/cm以下、より好ましくは、0.30g/cm以下である。
【0148】
また、発泡成形品の硬度(後述する実施例に準拠、JIS K7312(1996年)に準拠)は、例えば、1C以上、好ましくは、10C以上、より好ましくは、30C以上、さらに好ましくは、35C以上であり、例えば、80C以下、好ましくは、70C以下、より好ましくは、50C以下、さらに好ましくは、45C以下、特に好ましくは、42C以下である。
【0149】
また、発泡成形品の反発弾性(後述する実施例に準拠)は、例えば、5%以上、好ましくは、30%以上、より好ましくは、40%以上、さらに好ましくは、50%以上、特に好ましくは、70%以上、とりわけ好ましくは、73%以上であり、例えば、85%以下、好ましくは、83%以下である。
【0150】
また、発泡成形品の圧縮永久歪(後述する実施例に準拠)は、例えば、0.1%以上、好ましくは、1%以上であり、例えば、40%以下、好ましくは、25%以下、より好ましくは、20%以下、さらに好ましくは、13%以下、さらに好ましくは、11%以下、さらに好ましくは、10%以下、特に好ましくは、9%以下である。
【0151】
また、発泡成形品の破断強度(後述する実施例に準拠)は、例えば、1.0MPa以上、好ましくは、1.5MPa以上、より好ましくは、1.8MPa以上、さらに好ましくは、2.1MPa以上、特に好ましくは、2.4MPa以上であり、例えば、5.0MPa以下、好ましくは、4.5MPa以下である。
【0152】
また、発泡成形品の引裂強度(後述する実施例に準拠)は、例えば、2kN/m以上、好ましくは、3kN/m以上、より好ましくは、4kN/m以上、さらに好ましくは、6kN/m以上、さらに好ましくは、7kN/m以上、特に好ましくは、10kN/m以上であり、例えば、30kN/m以下、好ましくは、20kN/m以下である。
【0153】
また、発泡成形品の耐紫外線(UV)変色性(後述する実施例に準拠)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.3以上であり、例えば、5以下、好ましくは、3.5以下、より好ましくは、2.5以下、さらに好ましくは、2.3以下、さらに好ましくは、2.0以下、特に好ましくは、1.9以下である。
【0154】
そして、本発明の成形品は、本発明の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂から成形されているため、得られた成形品は、ポリウレタン発泡成形品であり、機械物性に優れる。
【0155】
そのため、本発明の成形品は、マットレスやソファーなどの家具用品、ブラジャーや肩パッドなどの衣料用品、紙おむつ、ナプキン、メディカルテープの緩衝材などの医療用品、化粧品、洗顔パフや枕などのサニタリー用品、靴底(アウトソール、インナーソール)、ミッドソールなどの靴用品、医療用途などの各種用途におけるフットウェア製品(サンダルなど)、さらには、車両用のパッドやクッションなどの体圧分散用品、ドアトリム、インスツルメントパネル、ギアノブなどの手で触れる部材、電気冷蔵庫や建築物の断熱材、ショックアブソーバーなどの衝撃吸収材、充填材、車両のハンドル、自動車内装部材、自動車外装部材などの車両用品、化学機械研磨(CMP)パッドなどの半導体製造用品、バット、グリップの芯材などのスポーツ用品、ポールなどの幅広い分野において用いることができる。
【0156】
とりわけ、本発明の成形品は、高い機械物性が要求される、ミッドソール、ショックアブソーバー、化学機械研磨(CMP)パッド、スポーツ用品、自動車内装部材などとして、好適に用いられる。
【実施例】
【0157】
次に、本発明を、製造例、合成例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
<ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの製造>
製造例1(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1)(以下、1,4−BIC(1)とする。)の製造)
特開2014−55229号公報の製造例6の記載に準拠して、純度99.5%以上のトランス体/シス体比98/2の1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを92%の収率で得た。
【0158】
その後、特開2014−55229号公報の製造例1の記載に準拠して、この1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを原料として、冷熱2段ホスゲン化法を加圧下で実施して、1,4−BIC(1)を382質量部得た。
【0159】
得られた1,4−BIC(1)のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C−NMR測定によるトランス体/シス体比は98/2であった。加水分解性塩素濃度(以下、HC濃度とする。)は18ppmであった。
【0160】
製造例2(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(2)(以下、1,4−BIC(2)とする。)の製造)
13C−NMR測定によるトランス体/シス体比が93/7の1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱瓦斯化学社製)を原料として、特開2014−55229号公報の製造例1の記載に準拠して、385質量部の1,4−BIC(2)を得た。
【0161】
得られた1,4−BIC(2)のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C−NMR測定によるトランス体/シス体比は93/7であった。HC濃度は19ppmであった。
【0162】
製造例3(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(3)(以下、1,4−BIC(3)とする。)の製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例1で得られた1,4−BIC(1)を200質量部、製造例2で得られた1,4−BIC(2)を800質量部装入し、窒素雰囲気下、室温にて1時間攪拌して、1000質量部の1,4−BIC(3)を得た。
【0163】
得られた1,4−BIC(3)のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C−NMR測定によるトランス体/シス体比は94/6であった。HC濃度は19ppmであった。
【0164】
製造例4(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(4)(以下、1,4−BIC(4)とする。)の製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例2で得られた1,4−BIC(2)を865質量部、後述の製造例7で得られた1,4−BIC(7)を135質量部装入し、窒素雰囲気下、室温にて1時間攪拌して、1000質量部の1,4−BIC(4)を得た。
【0165】
得られた1,4−BIC(4)のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C−NMR測定によるトランス体/シス体比は86/14であった。HC濃度は19ppmであった。
【0166】
製造例5(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(5)(以下、1,4−BIC(5)とする。)の製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例2で得られた1,4−BIC(2)を615質量部、後述の製造例7で得られた1,4−BIC(7)を385質量部装入し、窒素雰囲気下、室温にて1時間攪拌して、1000質量部の1,4−BIC(5)を得た。
【0167】
得られた1,4−BIC(5)のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C−NMR測定によるトランス体/シス体比は73/27であった。HC濃度は21ppmであった。
【0168】
製造例6(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(6)(以下、1,4−BIC(6)とする。)の製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例2で得られた1,4−BIC(2)を462質量部、後述の製造例7で得られた1,4−BIC(7)を538質量部装入し、窒素雰囲気下、室温にて1時間攪拌して、1000質量部の1,4−BIC(6)を得た。
【0169】
得られた1,4−BIC(6)のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C−NMR測定によるトランス体/シス体比は65/35であった。HC濃度は20ppmであった。
【0170】
製造例7(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(7)(以下、1,4−BIC(7)とする。)の製造)
13C−NMR測定によるトランス体/シス体比が41/59の1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(東京化成工業社製)を原料として、特開2014−55229号公報の製造例1の記載に準拠して、388質量部の1,4−BIC(7)を得た。
【0171】
得られた1,4−BIC(7)のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C−NMR測定によるトランス体/シス体比は41/59であった。HC濃度は22ppmであった。
<イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーの合成>
合成例1〜13
表1に記載した種類および質量割合でポリイソシアネート成分および第1ポリオール成分を、攪拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、80℃にて1時間攪拌した。その後、合成例1、2、4〜11および13(イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー(以下、プレポリマーとする。)(a)、(b)、(d)〜(k)および(m))においては、予めジイソノニルアジペート(ジェイ・プラス社製)により4質量%に希釈したオクチル酸スズ(商品名:スタノクト、エーピーアイコーポレーション社製)を、合成例3(プレポリマー(c))においては、予めジイソノニルアジペート(ジェイ・プラス社製、DINA)により4質量%に希釈したオクチル酸ビスマス(商品名:ネオスタンU−600、日東化成社製)を、ポリイソシアネート成分および第1ポリオール成分の総量に対して、触媒量として10ppm(ポリイソシアネート成分および第1ポリオール成分の総量10000質量部に対して、0.10質量部)添加し、合成例12(プレポリマー(l))においては、触媒を添加せずに、80℃の温調下、窒素気流下で攪拌混合しながら、プレポリマー(a)〜(l)を得た。
【0172】
また、プレポリマー(a)〜(l)それぞれのイソシアネート基濃度を、80℃に温調して測定した。その結果を表1に示す。
【0173】
なお、イソシアネート基含有量は、JIS K7301に記載のイソシアネート基含有率試験に準拠して、ジ−n−ブチルアミンによる滴定法により求めた。
【0174】
【表1】
【0175】
<表1中の略号の説明>
1,4−BIC:各製造例で製造した1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン
1,3−BIC:1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(商品名:タケネート600、三井化学社製)
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:コスモネートPH、三井化学SKCポリウレタン社製)
PLACCEL 230N:ポリカプロラクトンジオール(商品名:PLACCEL 230N、水酸基価:37.4mgKOH/g、数平均分子量:3000、ダイセル社製)
PTG3000SN:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名:PTG−3000SN、水酸基価:37.5mgKOH/g、数平均分子量:3000、保土ヶ谷化学工業社製)
PEG#4000:ポリエチレングリコール(商品名:PEG#4000、水酸基価:36.9mgKOH/g、数平均分子量:3000、日油社製)
<発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造>
実施例1〜15、33および比較例1〜5
第2ポリオール成分(第1ポリオール成分を配合する場合は、第1ポリオール成分および第2ポリオール成分)中のヒドロキシ基(OH基)に対するプレポリマー中のイソシアネート基(NCO基)の割合(NCO基/OH基、NCOインデックス)が、実施例1〜3、5〜15、33および比較例1〜5(発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)〜(C)および(E)〜(W))においては、1.01となるように、実施例4(発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂(D))においては、1.03となるように、第2ポリオール成分(第1ポリオール成分を配合する場合は、第1ポリオール成分および第2ポリオール成分)をステンレスカップに計量し、80℃に温調した。プレポリマーおよび第2ポリオール成分(第1ポリオール成分を配合する場合は、第1ポリオール成分および第2ポリオール成分)の総量に対して、イルガノックス245(BASF社製、耐熱安定剤)0.3質量%、チヌビン234(BASF社製、紫外線吸収剤)0.25質量%およびアデカスタブLA−72(ADEKA社製、耐光安定剤(HALS))0.15質量%を、ステンレス容器中で80℃に温調したプレポリマー中に添加し、高速ディスパーを使用して、500〜1500rpmの攪拌下、約3分間攪拌混合した。次いで、80℃に温調していた、第2ポリオール成分(第1ポリオール成分を配合する場合は、第1ポリオール成分および第2ポリオール成分)を配合し、高速ディスパーを使用して、500〜1500rpmの攪拌下、約10分間攪拌混合した。
【0176】
次いで、予め120℃に温調したテフロン製バットに反応混合液を流し込み、120℃にて24時間反応させ、一次生成物(A)〜(O)および(R)〜(W)を得た。
【0177】
その後、一次生成物(A)〜(O)および(R)〜(W)を、それぞれ、テフロン製バットから取り外し、ベールカッターによりサイコロ状に切断し、粉砕機にて粉砕ペレットに粉砕した。この粉砕ペレットを、表2〜6に記載した熱処理温度で熱処理期間静置した後、窒素気流下、80℃にて一昼夜乾燥した。その後、単軸押出機(型式:SZW40−28MG、テクノベル社製)によりシリンダー温度150〜270℃の範囲でストランドを押出し、それをカットすることによって、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)〜(O)および(R)〜(W)のペレットを得た。得られたペレットをさらに窒素気流下、80℃にて一昼夜乾燥した。
【0178】
なお、実施例1〜15、33および比較例1〜5における、プレポリマーおよび第2ポリオール成分(第1ポリオール成分を配合する場合は、第1ポリオール成分および第2ポリオール成分)の種類および質量割合、熱処理温度および熱処理期間を表2〜6に示す。
<発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の評価>
得られた発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)〜(O)および(R)〜(W)について、以下の評価方法により評価した。なお、その結果を表2〜表6に示す。
(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量測定)
発泡用熱可塑性ポリウレタン50mg(サンプル)を、三角フラスコ中で10mLのN−メチルピロリドン中に浸漬し、100℃に温調し、サンプルが溶解するまでスターラーを用いて攪拌した。その後、この溶液を室温まで冷却した後、0.45μmの濾過フィルターを用いて濾過後、濾液を下記の分析条件でGPC測定した。そして、測定されたクロマトグラムから、クロマトグラムにおけるピークにおいて、ピークの総面積に対する、重量平均分子量が400,000以上となる高分子量成分に相当する面積の割合を算出した。なお、実施例2および比較例1のGPC測定より得られたクロマトグラムを図1に示す。
装置:東ソー HLC−8220GPC
カラム:Shodex KF−805L×2本 + KF−G4A(ガードカラム)
カラム温度:40℃
溶離液:N−メチルピロリドン(臭化リチウム50mM含有)
流量:0.7mL/min
試料濃度:0.5wt%
注入量:100μl
検出器:RI検出器(示差屈折計)
分子量マーカー:ポリスチレン(TSKゲル標準ポリスチレン)
(発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメント濃度)
ハードセグメント(ポリイソシアネート成分と第2ポリオール成分との反応により形成されるハードセグメント)濃度は、各成分の配合割合(仕込)から下記式により算出した。
式:[第2ポリオール成分の質量(g)+(第2ポリオール成分の質量(g)/第2ポリオール成分の平均分子量(g/mol))×ポリイソシアネート成分の平均分子量(g/mol)]÷(第1ポリオール成分の質量(g)+ポリイソシアネート成分(g)+第2ポリオール成分の質量(g))×100
(示差走査熱計(DSC)による発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の凝集温度測定)
示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名:EXSTAR6000 PCステーション、および、DSC220C)を使用して測定した。発泡用熱可塑性ポリウレタン約8mgを、アルミニウム製パンにできるだけ密着可能な形状となるように薄く切断して採取した。このアルミニウム製パンにカバーを被せてクリンプしたものを測定用試料(サンプル)とした。同様にアルミナを採取したものをリファレンス試料とした。サンプルおよびリファレンスをセル内の所定位置にセットした後、流量40NmL/minの窒素気流下、試料を10℃/minの速度で−100℃まで冷却し、同温度で5分間保持後、次いで、10℃/minの速度で270℃まで昇温した。さらに270℃で5分間保持した後、−70℃まで10℃/minの速度で冷却した。この冷却の間に現れる発熱ピークの温度を発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の凝集温度とした。
(発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の硬度測定)
実施例1〜15、33および比較例1〜5で得られた発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂のペレットを、それぞれ、射出成型機(型式:NEX−140、日精樹脂工業社製)を使用して、スクリュー回転数80rpm、バレル温度150〜270℃の設定にて、金型温度20℃、射出時間10秒、射出速度60mm/sおよび冷却時間20〜60秒の条件で、シート状に射出成形した。得られた2mm厚みのシートを、80℃のオーブン中で3日間アニール処理をした後、室温23℃、相対湿度55%の恒温恒湿条件下にて、7日間養生し、実施例1〜15、33および比較例1〜5それぞれの発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂のエラストマーシートを得た。
【0179】
そして、「JIS K−7311 ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの試験方法」(1995年)に準じて、得られたそれぞれのエラストマーシートの硬さ(ASKER AおよびASKER D)を測定した。
<ポリウレタン発泡成形品の製造>
以下のようにして、実施例1〜15、33および比較例1〜5の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂からポリウレタン発泡成形品(A)〜(W)を得た。
【0180】
なお、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の溶融粘度および流出開始温度(流動開始温度)は、以下のようにして測定した。
(溶融粘度および流動開始温度の測定)
高化式フローテスター(島津製作所社製、型式:島津フローテスターCFT−500)を用いて、流動開始温度を測定し、その流動開始温度より20℃低い温度を測定開始温度として、荷重を196N、昇温速度を2.5℃/minとして溶融粘度を測定した。なお、測定に用いた発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂は、窒素気流下、80℃で一昼夜乾燥したものを使用した。
【0181】
実施例16〜30、34および比較例6〜10(超臨界二酸化炭素を用いた押出発泡法による成形)
発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)〜(O)および(R)〜(W)から、超臨界二酸化炭素を用いた押出発泡法により、ポリウレタン発泡成形品(A)〜(O)および(R)〜(W)を成形した。
【0182】
具体的には、一段目の直径30mmの単軸押出機(有限会社サン・エンジニアリング製、L/D=32、L/D=17.5の位置に逆流防止タイプの超臨界二酸化炭素ガス注入部を設置)と、二段目の直径40mmの押出機(有限会社サン・エンジニアリング製、L/D=42)とを直径10mmの短管(以下、コネクションとする。)により連結し、直径40mmの押出機(二段目)の先端部にサーキュラーダイ(リップ径(直径):40mm、リップと中子との間隙:0.46mm)を装着したタンデム押出機を使用した。
【0183】
一段目の直径30mmの単軸押出機のバレル温度は、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の溶融粘度が1000Pa・sを示す温度に設定し、二段目の直径40mmの押出機の設定温度は、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の流動開始温度に設定した。
【0184】
窒素気流下、80℃のオーブン中で一昼夜乾燥させた発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂を、一段目の直径30mmの単軸押出機(スクリュー回転数:30rpm)を用いて十分に溶融させた後、溶融した発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂に、液化二酸化炭素ボンベから昇圧装置(日本分光社製SCF−Get)を通して30MPaまで昇圧して得られた超臨界二酸化炭素を、25g/時間の流速で供給し、それらを十分に混錬溶解させ、混練物を作製した。
【0185】
続いて、その混練物を、コネクションを通して、二段目の直径40mmの押出機(スクリュー回転数:4pm)へと送入し、サーキュラーダイから吐出される混練物(発泡体)の状態が安定したところで、円筒状の発泡体の内側へ空気を送り込んで冷却し、厚み2mmの円筒状の発泡体を得た。この発泡体の円周を吐出方向にカットして広げ、厚み2mmのシート状のポリウレタン発泡成形品(A)〜(O)および(R)〜(W)を得た。
【0186】
実施例31(超臨界二酸化炭素を用いた射出発泡法による成形)
発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂(B)から、超臨界二酸化炭素を用いた射出発泡法により、ポリウレタン発泡成形品(P)を成形した。
【0187】
具体的には、バレル温度を発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の溶融粘度が1000Pa・sを示す温度に設定した射出成型機(型式:JSW MuCell 110H/J85AD、日本製鋼所社製)に、窒素気流下、80℃のオーブン中で一昼夜乾燥させた発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂(B)を充填し、計量時に昇圧装置(日本分光社製SCF−Get)を通して30MPaまで昇圧して得られた超臨界二酸化炭素を0.8質量%の比率で、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂に、送入し混錬させた。
【0188】
60℃に設定した1.5mm厚みの金型に、射出速度60mm/min、保圧50MPa、保圧時間5秒で射出した後、金型コアを4.5mm後退させ、60秒冷却した後に脱型し、厚み6mmのポリウレタン発泡成形品(P)を得た。
【0189】
実施例32(ビーズ発泡法による成形)
発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂(B)から、超臨界二酸化炭素を用いたビーズ発泡法により、ポリウレタン発泡体(Q)を成形した。
【0190】
具体的には、一段目の直径30mmの単軸押出機(有限会社サン・エンジニアリング製、L/D=32、L/D=17.5の位置に逆流防止タイプの超臨界二酸化炭素ガス注入部を設置)と、二段目の直径40mmの押出機(有限会社サン・エンジニアリング製、L/D=42)とを直径10mmのコネクションにより連結し、直径40mmの押出機(二段目)の先端部に単孔(孔の直径:1.5mm)のダイスを装着したタンデム押出機を使用した。
【0191】
一段目の直径30mmの単軸押出機のバレル温度は、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の溶融粘度が1000Pa・sを示す温度に設定し、二段目の直径40mmの押出機の設定温度は、発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂の流動開始温度に設定した。
【0192】
窒素気流下、80℃のオーブン中で一昼夜乾燥させた発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂(B)を一段目の直径30mmの単軸押出機(スクリュー回転数:30rpm)を用いて十分に溶融させた後、溶融した発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂に、液化二酸化炭素ボンベから昇圧装置(日本分光社製SCF−Get)を通して30MPaまで昇圧して得られた超臨界二酸化炭素を、25g/時間の流速で供給して、十分に混錬溶解させ、混練物を作製した。
【0193】
続いて、その混練物を、コネクションを通して、二段目の直径40mmの押出機(スクリュー回転数:4pm)へと送入し、ダイスから吐出される混練物(発泡体ストランド)が冷却され、発泡体ストランドの状態が安定したところで、その発泡体を適当な大きさ(約2mmサイズ)にカットすることにより発泡ビーズを得た。
【0194】
その後、金型に発泡ビーズを充填し、圧力1MPa、180℃の蒸気で温調した後、冷却して、厚み6mmのポリウレタン発泡成形品(Q)を得た。
<ポリウレタン発泡成形品の評価>
得られたポリウレタン発泡成形品(A)〜(W)について、以下の評価方法により評価した。その結果を表2〜6に示す。
(セルの均一性)
得られたポリウレタン発泡成形品のセルの均一性を目視で観察し、以下のように、評価5〜1を設定し、5段階で評価した。
評価5:ほとんどのセルが微細で、セルの大きさはほぼ均一である。
評価4:粗大なセルは少なく、セルの大きさはほぼ均一である。
評価3:粗大なセルは少ないが、セルの大きさはそろっていない。
評価2:粗大なセルが多く、セルの大きさはそろっていない。
評価1:粗大なセルがほとんどであり、その大きさはそろっていない。
(コア密度(単位:kg/m))
得られたポリウレタン発泡成形品から10cm×10cmのサイズの直方体を切り出して、測定試料を作製した。
【0195】
その後、測定試料の見かけ密度をJIS K7222(2005)に従って測定した。これをポリウレタン発泡成形品のコア密度(見かけのコア密度)として評価した。
(硬度(ASKER C)
得られたポリウレタン発泡成形品を重ねて、厚みを12mmとし、JIS K7312(1996年)の硬さ試験(タイプC)に準拠して、C硬度を測定した。
(反発弾性(単位:%))
得られたポリウレタン発泡成形品から10cm×10cmのサイズの直方体に切り出した後、厚みが12mmになるようにその直方体を重ねて測定試料とした。
【0196】
その測定試料の反発弾性をJIS K6400−3(2004)に従って測定した。
(圧縮永久歪(単位:%))
得られたポリウレタン発泡成形品を直径29mmサイズの円柱状に切り出した後、厚みが12mmになるように測定試料を作製した。
【0197】
その後、測定試料の圧縮永久歪をJIS K6262に従って、23℃、25%圧縮の条件で測定した。
(破断強度(単位:MPa))
得られたポリウレタン発泡成形品から、JIS−1号ダンベルを用いて測定試料を作製し、その後、測定試料の破断強度をJIS K6400−5(2012)に従って測定した。
(引裂強度(単位:kN/m))
得られたポリウレタン発泡成形品から、JIS−B型ダンベルを用いて測定試料を作製し、その後、測定試料の引裂強度をJIS K6400−5(2012)のB法に従って測定した。
(初期色相:b、耐紫外線(UV)変色性:Δb)
ポリウレタン発泡成形品から30mm×40mmのサイズの直方体を切り出して、測定試料を作製し、色差計(東京電色社製、カラーエースMODEL TC−1)を用いて、黄色度bを測定した。なお、bは、一般に、ポリウレタンの色相の指標とされる。
【0198】
その後、測定試料に、紫外線蛍光灯が取り付けられたQUVウェザリングテスター(スガ試験機社製、紫外線蛍光灯ウェザーメーターFUV)を使用して24時間にわたり短波長(波長270〜720nm)の紫外線を照射した。
【0199】
紫外線照射前後におけるポリウレタン発泡成形品のΔb(b値の変化量)を、色差計(東京電色社製、カラーエースMODEL TC−1)を用いて測定した。なお、Δbは、一般に、発泡成形品の耐UV変色性の指標とされる。
【0200】
【表2】
【0201】
【表3】
【0202】
【表4】
【0203】
【表5】
【0204】
【表6】
【0205】
<表2〜6中の略号の説明>
プレポリマー:イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー
1,4−BD:1,4−ブタンジオール(三菱化学社製)
PLACCEL 230N:ポリカプロラクトンポリオール(商品名:PLACCEL 230N、水酸基価:37.4mgKOH/g、数平均分子量:3000、ダイセル社製)
<ポリウレタン発泡成形品の用途>
参考実施例1
発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂(B)を用いて、実施例31と同様にして、射出発泡により密度0.25g/cmのミッドソール用のポリウレタン発泡成形品に成形した。
【0206】
この発泡成形品から幅10mm、長さ12cmの短冊形状の試験片を打ち抜き、23℃、周波数5Hzの条件で、繰り返しデマッチャ屈曲試験を行った結果、15万回以上で亀裂無しであった。
【0207】
参考実施例2
発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂(B)を用いて、実施例31と同様にして、射出発泡により密度0.50g/cmのショックアブソーバー用のポリウレタン発泡成形品に成形した。
【0208】
直径29mm、高さ30mmの円柱状にした発泡成形品の試験片を、23℃、周波数0.22Hzの条件で、圧縮率75%の繰り返し圧縮試験を行った結果、2500回以上で亀裂無しであった。
【0209】
参考実施例3
発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂(B)を用いて、実施例31と同様にして、射出発泡により密度0.30g/cmの化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing、CMP)パッド用のポリウレタン発泡成形品に成形した。
【0210】
この発泡成形品を、直径50mmの円状(厚み3mm)に打ち抜き、23℃の酢酸ブチルおよびメチルエチルケトンへ7日間浸漬し、体積変化率((V1(浸漬後の体積)−V0(浸漬前の体積))/V0×100(%))を算出した結果、それぞれ、55%および70%であった。
【0211】
参考実施例4
発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂(B)を用いて、実施例31と同様にして、射出発泡により密度0.15g/cmの自動車内装部材用のポリウレタン発泡成形品に成形した。この発泡成形品を、直径50mmの円状(厚み3mm)に打ち抜き、23℃のオレイン酸へ7日間浸漬し、体積変化率(((V1(浸漬後の体積)−V0(浸漬前の体積))/V0)×100(%))を算出した結果、7%であった。
【0212】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0213】
本発明の発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂およびその製造方法、ならびに、成形品は、ミッドソール、ショックアブソーバー、化学機械研磨(CMP)パッド、スポーツ用品、自動車内装部材などにおいて、好適に用いられる。
【要約】
発泡用熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定して得られるクロマトグラムのピークにおいて、重量平均分子量400,000以上の高分子量成分の面積が、ピークの総面積に対して、25%以上60%以下である。
図1