特許第6338822号(P6338822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338822
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 13/00 20060101AFI20180528BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20180528BHJP
   F24F 5/00 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   F25B13/00 351
   F28D20/02 Z
   !F24F5/00 102N
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-88299(P2013-88299)
(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公開番号】特開2014-211283(P2014-211283A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 伸行
(72)【発明者】
【氏名】長澤 敦氏
(72)【発明者】
【氏名】小見山 嘉浩
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−019652(JP,A)
【文献】 特開昭57−070399(JP,A)
【文献】 特開平02−171594(JP,A)
【文献】 特開2010−133687(JP,A)
【文献】 特開平02−166358(JP,A)
【文献】 実開平03−037338(JP,U)
【文献】 特開2012−072963(JP,A)
【文献】 特開平05−187735(JP,A)
【文献】 特公昭46−002318(JP,B1)
【文献】 特開平02−143060(JP,A)
【文献】 実開昭63−123959(JP,U)
【文献】 特開2012−078010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 13/00
F28D 20/02
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室内熱交換器、減圧器、室外熱交換器及びアキュームレータが冷媒管路によって環状に接続された冷凍サイクル機構と、
前記圧縮機の周囲に配置され、外部からの熱を蓄積する潜熱蓄熱材と、
前記潜熱蓄熱材に埋め込まれており、所定温度を閾値として形状を変化させるバイメタル素子と、
を備え、
前記潜熱蓄熱材は、前記圧縮機の全周の少なくとも半分以上を覆うとともに前記圧縮機の全周を覆っておらず、かつ、前記圧縮機の周囲のうち前記アキュームレータが取り付けられた部分を覆っていない冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記所定温度は、暖房運転を実行するに適した温度範囲内で設定されている請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば空気調和機に備えられる冷凍サイクル装置においては、圧縮機の周囲に蓄熱材を配置し、この蓄熱材に圧縮機からの排熱を蓄積して、その熱を利用する技術が考えられている。例えば特許文献1には、このような蓄熱材に蓄積した熱を暖房運転の始動時に利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−143060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄熱材として潜熱蓄熱材を使用する場合には、放熱を開始するために過冷却状態の潜熱蓄熱材を発核させる必要がある。そして、潜熱蓄熱材を発核させるための構成として、従来では、例えば、圧電素子や超音波振動子によって外部から潜熱蓄熱材に振動を与える構成、電極によって外部から潜熱蓄熱材に電気的衝撃を与える構成などが採用されている。しかしながら、従来の構成では、配線や駆動機構部なども必要であるため、構成が複雑化するという課題を有している。
本実施形態は、構成の複雑化を招くことなく潜熱蓄熱材を発核させることができる冷凍サイクル装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の冷凍サイクル装置は、冷凍サイクル機構と、潜熱蓄熱材と、バイメタル素子と、を備える。冷凍サイクル機構は、圧縮機、室内熱交換器、減圧器、室外熱交換器及びアキュームレータが冷媒管路によって環状に接続された構成である。潜熱蓄熱材は、圧縮機の周囲に配置され、外部からの熱を蓄積する。バイメタル素子は、潜熱蓄熱材に埋め込まれており、所定温度を閾値として形状を変化させる。前記潜熱蓄熱材は、前記圧縮機の全周の少なくとも半分以上を覆うとともに前記圧縮機の全周を覆っておらず、かつ、前記圧縮機の周囲のうち前記アキュームレータが取り付けられた部分を覆っていない

【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態に係る冷凍サイクル装置の構成を概略的に示す図
図2】圧縮機およびその周辺部分を概略的に示す平面図
図3】経過時間と圧縮機の温度との関係の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、冷凍サイクル装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示す冷凍サイクル装置10は、例えば空気調和機に備えられるものであり、圧縮機11、室内熱交換器12、減圧器13、室外熱交換器14及びアキュームレータ15を冷媒管路16によって環状に接続した冷凍サイクル機構17を備える。この圧縮機11の駆動は、冷凍サイクル機構17が搭載された空気調和機の動作全般を制御する制御装置41によって制御される。
室内熱交換器12は、図示しない室内機の内部に設けられている。この室内熱交換器12の近傍には、例えば横流ファンで構成される図示しない室内送風機が設けられている。室外熱交換器14は、図示しない室外機の内部に設けられている。この室外熱交換器14の近傍には、例えばプロペラファンで構成される図示しない室外送風機が設けられている。減圧器13は、例えば絞り弁などで構成されている。
【0008】
四方弁18は、冷房運転時及び暖房運転時、さらには暖房運転の前に実行する予熱運転時などの各種の運転時において、冷媒管路16を流れる冷媒の循環方向を各運転に適した方向に適宜切り替える。図1は、予熱運転時及び暖房運転時における冷凍サイクル装置10を示しており、この場合、四方弁18は、圧縮機11の吐出口と室内熱交換器12とを連結し且つ室外熱交換器14と圧縮機11の吸入口側に設けられたアキュームレータ15とを連結する状態に切り替わる。一方、図示はしないが、冷房運転時における冷凍サイクル装置10では、四方弁18は、圧縮機11の吐出口と室外熱交換器14とを連結し且つ室内熱交換器12とアキュームレータ15とを連結する状態に切り替わる。
【0009】
この冷凍サイクル装置10において、図1に示す予熱運転時及び暖房運転時には、圧縮機11が駆動されると、破線矢印で示すように、当該圧縮機11から吐出された高温高圧の冷媒が室内熱交換器12に送られ、当該室内熱交換器12にて放熱して凝縮する。そして、この凝縮した冷媒は、減圧器13を通過する際に減圧され、その後、室外熱交換器14に送られ、当該室外熱交換器14にて吸熱して気化する。そして、室外熱交換器14を通過した冷媒は、アキュームレータ15内に流入して気液分離され、液体状態の冷媒がアキュームレータ15内に残り、ガス状態の冷媒が圧縮機11に戻されるようになっている。なお、予熱運転時においては、圧縮機11や室内送風機は、暖房運転時よりも低い出力で駆動される。
【0010】
また、この冷凍サイクル装置10において、冷房運転時には、圧縮機11が駆動されると、当該圧縮機11から吐出された高温高圧の冷媒が室外熱交換器14に送られ、当該室外熱交換器14にて放熱して凝縮する。そして、この凝縮した冷媒は、減圧器13を通過する際に減圧され、その後、室内熱交換器12に送られ、当該室内熱交換器12にて吸熱して気化する。そして、室内熱交換器12を通過した冷媒は、アキュームレータ15内に流入して気液分離され、液体状態の冷媒がアキュームレータ15内に残り、ガス状態の冷媒が圧縮機11に戻されるようになっている。
【0011】
冷凍サイクル装置10は、さらに潜熱蓄熱材21を備える。この潜熱蓄熱材21は、この場合、例えば酢酸ナトリウム三水和物などからなる蓄熱材で構成されており、圧縮機11の周囲に配置され、空気調和機の運転時に発生する当該圧縮機11からの排熱など潜熱蓄熱材21の外部から得られる熱を蓄積する。潜熱蓄熱材21は、融点以下の温度でも凝固せずに液体状態を維持するいわゆる過冷却特性を有しており、排熱を蓄積した過冷却状態の潜熱蓄熱材21に内部又は外部から衝撃を与えると、当該潜熱蓄熱材21が発核して凝固しながら放熱を開始するようになっている。なお、この潜熱蓄熱材21の融点温度は、この場合、「42℃」で設定されている。
図2にも示すように、潜熱蓄熱材21は、圧縮機11の全周を覆っておらず、この場合、少なくともアキュームレータ15が取り付けられた部分を覆わないように構成されている。なお、潜熱蓄熱材21は、圧縮機11の全周の少なくとも半分以上を覆っていればよい。また、潜熱蓄熱材21は、その周方向の両端部が圧縮機11の周面から離間するように構成してもよい。
【0012】
また、この潜熱蓄熱材21には、バイメタル素子31が埋め込まれている。このバイメタル素子31は、熱膨張率が異なる2種類の金属板を貼り合わせたものであり、所定の反転温度を閾値として、その形状を変化、即ち、その湾曲方向を反転させる。このバイメタル素子31の反転温度は、この場合、潜熱蓄熱材21の融点温度よりも低い温度範囲内であって、且つ、暖房運転を実行するに適した温度範囲内で適宜変更して設定することができる。よって、この実施形態では、バイメタル素子31の反転温度は、潜熱蓄熱材21の融点温度である「42℃」よりも低い温度範囲内であって、且つ、一般的にユーザが冷房運転よりも暖房運転を実行するであろう温度である「20℃」よりも低い温度範囲内で適宜設定するとよく、具体的には、例えば「0℃」から「20℃」の範囲内で適宜設定するとよい。
【0013】
図3は、前回の暖房運転が終了してからの経過時間に伴う圧縮機11の温度変化の一例を示している。即ち、圧縮機11の温度T1は、前回の暖房運転の終了時t1の後において時間の経過に伴い徐々に低下していく。これに伴い、潜熱蓄熱材21の温度も徐々に低下していく。そして、圧縮機11の温度T1が所定温度Tr以下になると、過冷却状態となった潜熱蓄熱材21の温度が所定の反転温度以下となり、その時点t2において、潜熱蓄熱材21に内蔵されているバイメタル素子31が当該潜熱蓄熱材21の内部において反転する。このバイメタル素子31の変形により、潜熱蓄熱材21に内部から衝撃が与えられ、当該潜熱蓄熱材21が発核する。そして、発核した潜熱蓄熱材21から放熱が開始される。これにより、圧縮機11が潜熱蓄熱材21からの放熱によって暖められ、圧縮機11の温度T1が徐々に上昇する。なお、図3に破線で示す温度T2は、潜熱蓄熱材21からの放熱を行わない場合における圧縮機11の温度変化を示す。即ち、潜熱蓄熱材21を発核させた場合における暖房運転再開時t3の圧縮機11の温度T1aは、潜熱蓄熱材21を発核させない場合における暖房運転再開時t3の圧縮機11の温度T2aよりも格段に高くなる。
【0014】
以上に説明した本実施形態に係る冷凍サイクル装置10によれば、潜熱蓄熱材21に、所定の反転温度を閾値として形状を変化させるバイメタル素子31が埋め込まれている。このバイメタル素子31は、周囲の温度あるいは当該バイメタル素子31の温度が所定の反転温度以下になれば自動的に反転して潜熱蓄熱材21に内部から衝撃を与えるものであり、配線や駆動機構部などが不要である。よって、構成の複雑化を招くことなく潜熱蓄熱材21を発核させることができる。また、バイメタル素子31は、配線や駆動機構部などが不要であることから、配線を通したり駆動機構部を取り付けたりするための孔を潜熱蓄熱材21に設ける必要がない。
また、冷凍サイクル装置10によれば、バイメタル素子31の反転温度は、少なくとも、暖房運転を実行するに適した温度範囲内で設定されている。これにより、ユーザが暖房運転を開始したいと思うような場合に潜熱蓄熱材21を自動的に発核させることができ、潜熱蓄熱材21に蓄積された熱を、利用したいときに合わせて有効に活用することができる。
【0015】
また、冷凍サイクル装置10によれば、暖房運転が開始される前に潜熱蓄熱材21を発核させることにより、潜熱蓄熱材21に蓄積した熱を利用して暖房運転の前から圧縮機11を効率良く暖めることができ、暖房性能の向上を図ることができる。また、前回の運転時において圧縮機11から発生した排熱、つまり、従来では有効に使われていなかった熱エネルギーを蓄積しておき、その蓄積した熱を、今回の暖房運転前において圧縮機加熱用の熱源として利用することができ、省エネルギー性能の向上を図ることができる。
なお、冷凍サイクル装置10は、潜熱蓄熱材21の周囲に、例えばヒーターなどで構成される外部熱源を備えてもよい。この外部熱源によって、放熱後の潜熱蓄熱材21を確実に融解させることにより、融け残りによる意図しない発核の発生を防止することができる。
【0016】
以上に説明した本実施形態に係る冷凍サイクル装置は、冷凍サイクル機構と、潜熱蓄熱材と、バイメタル素子と、を備える。冷凍サイクル機構は、圧縮機、室内熱交換器、減圧器、室外熱交換器及びアキュームレータが冷媒管路によって環状に接続された構成である。潜熱蓄熱材は、圧縮機の周囲に配置され、外部からの熱を蓄積する。バイメタル素子は、潜熱蓄熱材に埋め込まれており、所定温度を閾値として形状を変化させる。この構成によれば、構成の複雑化を招くことなく、潜熱蓄熱材を発核させることができる。
【0017】
上述の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0018】
図面中、10は冷凍サイクル装置、11は圧縮機、12は室内熱交換器、13は減圧器、14は室外熱交換器、15はアキュームレータ、16は冷媒管路、17は冷凍サイクル機構、21は潜熱蓄熱材、31はバイメタル素子を示す。
図1
図2
図3