特許第6338833号(P6338833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338833
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】仮固定構造、及び、保持部材
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/07 20060101AFI20180528BHJP
   B60R 11/02 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   F16B5/07 K
   !B60R11/02 A
   !B60R11/02 S
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-159038(P2013-159038)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-31304(P2015-31304A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(72)【発明者】
【氏名】木本 良平
(72)【発明者】
【氏名】平井 知治
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭48−017736(JP,Y1)
【文献】 実開昭53−045856(JP,U)
【文献】 特開平09−169248(JP,A)
【文献】 特開2001−081929(JP,A)
【文献】 実開平03−096933(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00−5/12
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定面に対象物を保持する保持部材を仮固定する仮固定構造であって、
前記保持部材を前記被固定面に仮固定した場合に前記被固定面に対向する前記保持部材の主面と、
前記主面から突出して形成され、前記主面に略直交する部分と前記主面に略平行な部分とが連続する屈曲した形状を有し、前記被固定面の第1係止孔に係合する第1係止片と、
前記主面から突出して形成され、略T字形の形状を有し、前記被固定面の第2係止孔に係合する第2係止片と、
を備え、
前記保持部材は、前記主面と略平行な面内で、少なくとも1方向に伸びた形状を有し、その伸びた形状の、1端側であって、前記主面と略平行な前記面内に、前記対象物の保持部が形成されているとともに、他端側に、前記第1係止片と前記第2係止片が形成されていることを特徴とする仮固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の仮固定構造において、
前記第1係止片と前記第2係止片とが配列されている方向は、前記保持部材の前記1端側と前記他端側とが配列されている方向と略直交することを特徴とする仮固定構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の仮固定構造において、
前記第2係止片の前記略T字形の形状の、該T字形の横棒の方向は、前記第1係止片と前記第2係止片とが配列されている方向と略直交することを特徴とする仮固定構造。
【請求項4】
被固定面に対象物を保持する保持部材を仮固定する仮固定構造であって、
前記保持部材を前記被固定面に仮固定した場合に前記被固定面に対向する前記保持部材の主面と、
前記主面から突出して形成され、前記主面に略直交する部分と前記主面に略平行な部分とが連続する屈曲した形状を有し、前記被固定面の第1係止孔に係合する第1係止片と、
前記主面から突出して形成され、略T字形の形状を有し、前記被固定面の第2係止孔に係合する第2係止片と、
を備え、
前記保持部材は、前記主面と略平行な面内で、少なくとも1方向に伸びた形状を有し、その伸びた形状の1端側に、前記対象物の保持部が形成されているとともに、他端側に、前記第1係止片と前記第2係止片が形成されており、
前記第2係止孔は、略T字形であり、該T字形の横棒の方向が、前記第1係止孔と前記第2係止孔とが配列されている方向と略平行であることを特徴とする仮固定構造。
【請求項5】
請求項1ないし4に記載の仮固定構造において、
前記対象物は、差込口を外側へ向けたコネクタを両端に備える回路基板であることを特徴とする仮固定構造。
【請求項6】
対象物を保持する保持部材であって、
前記保持部材を被固定面に仮固定した場合に前記被固定面に対向する主面と、
前記主面から突出して形成され、前記主面に略直交する部分と前記主面に略平行な部分とが連続する屈曲した形状を有する第1係止片と、
前記主面から突出して形成され、略T字形の形状を有する第2係止片と、
を備え
前記主面と略平行な面内で、少なくとも1方向に伸びた形状を有し、その伸びた形状の1端側であって、前記主面と略平行な前記面内に、前記対象物の保持部が形成されているとともに、他端側に、前記第1係止片と前記第2係止片が形成されていることを特徴とする保持部材。
【請求項7】
請求項6に記載の保持部材において、
前記第1係止片と前記第2係止片とが配列されている方向は、前記保持部材の前記1端側と前記他端側とが配列されている方向と略直交することを特徴とする保持部材。
【請求項8】
請求項6または7に記載の保持部材において、
前記第2係止片の前記略T字形の形状の、該T字形の横棒の方向は、前記第1係止片と前記第2係止片とが配列されている方向と略直交することを特徴とする保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被固定面に対象物を保持する保持部材を仮固定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品を車両のボディー等へ固定する際に、電子部品を保持するブラケット等の保持部材を一時的に固定(仮固定)する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、仮固定用の鉤型の片を、車両のボディー等の被固定面に設けられた穿孔に係止し、保持部材をボディーに仮固定している。
【0004】
このような仮固定を行うことで、作業者は、電子部品を車両等へ固定する際に電子部品を所定の位置に押さえ続ける必要がなく、固定用機材を用いて容易に固定作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−101723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、車両のボディー等の被固定面は、保持部材が仮固定し易いような鉛直方向に沿って形成されているとは限らない。むしろ、被固定面は、車両内部へ向けて傾斜している場合が少なくない。このため、保持部材の仮固定を行っても、仮固定用の片が穿孔から抜け落ちてしまう場合あった。このような場合、作業者は、保持部材の仮固定用の片を穿孔に再度通さなければならず、作業効率の低下を招いていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、保持部材を仮固定する被固定面が傾斜していても、適切に仮固定できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、被固定面に対象物を保持する保持部材を仮固定する仮固定構造であって、前記保持部材を前記被固定面に仮固定した場合に前記被固定面に対向する前記保持部材の主面と、前記主面から突出して形成され、前記主面に略直交する部分と前記主面に略平行な部分とが連続する屈曲した形状を有し、前記被固定面の第1係止孔に係合する第1係止片と、前記主面から突出して形成され、略T字形の形状を有し、前記被固定面の第2係止孔に係合する第2係止片と、を備え、前記保持部材は、前記主面と略平行な面内で、少なくとも1方向に伸びた形状を有し、その伸びた形状の1端側であって、前記主面と略平行な前記面内に、前記対象物の保持部が形成されているとともに、他端側に、前記第1係止片と前記第2係止片が形成されていることを特徴とする仮固定構造。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の仮固定構造において、前記第1係止片と前記第2係止片とが配列されている方向は、前記保持部材の前記1端側と前記他端側とが配列されている方向と略直交することを特徴とする仮固定構造。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の仮固定構造において、前記第2係止片の前記略T字形の形状の、該T字形の横棒の方向は、前記第1係止片と前記第2係止片とが配列されている方向と略直交することを特徴とする仮固定構造。
【0009】
また、請求項の発明は、被固定面に対象物を保持する保持部材を仮固定する仮固定構造であって、前記保持部材を前記被固定面に仮固定した場合に前記被固定面に対向する前記保持部材の主面と、前記主面から突出して形成され、前記主面に略直交する部分と前記主面に略平行な部分とが連続する屈曲した形状を有し、前記被固定面の第1係止孔に係合する第1係止片と、前記主面から突出して形成され、略T字形の形状を有し、前記被固定面の第2係止孔に係合する第2係止片と、を備え、前記保持部材は、前記主面と略平行な面内で、少なくとも1方向に伸びた形状を有し、その伸びた形状の1端側に、前記対象物の保持部が形成されているとともに、他端側に、前記第1係止片と前記第2係止片が形成されており、前記第2係止孔は、略T字形であり、該T字形の横棒の方向が、第1係止孔と第2係止孔とが配列されている方向と略平行であることを特徴とする仮固定構造。
【0010】
また、請求項の発明は、請求項1ないし4に記載の仮固定構造において、前記対象物は、差込口を外側へ向けたコネクタを両端に備える回路基板であることを特徴とする仮固定構造。
【0012】
また、請求項の発明は、対象物を保持する保持部材であって、前記保持部材を被固定面に仮固定した場合に前記被固定面に対向する主面と、前記主面から突出して形成され、前記主面に略直交する部分と前記主面に略平行な部分とが連続する屈曲した形状を有する第1係止片と、前記主面から突出して形成され、略T字形の形状を有する第2係止片と、を備え、前記主面と略平行な面内で、少なくとも1方向に伸びた形状を有し、その伸びた形状の1端側であって、前記主面と略平行な前記面内に、前記対象物の保持部が形成されているとともに、他端側に、前記第1係止片と前記第2係止片が形成されていることを特徴とする保持部材。
また請求項7の発明は、請求項6に記載の保持部材において、前記第1係止片と前記第2係止片とが配列されている方向は、前記保持部材の前記1端側と前記他端側とが配列されている方向と略直交することを特徴とする保持部材。
また請求項8の発明は、請求項6または7に記載の保持部材において、前記第2係止片の前記略T字形の形状の、該T字形の横棒の方向は、前記第1係止片と前記第2係止片とが配列されている方向と略直交することを特徴とする保持部材。
【発明の効果】
【0014】
請求項1ないし6の発明によれば、略T字形の第2係止片が被固定面の第2係止孔に係合することで、保持部材を仮固定する角度を異ならせても適切に仮固定できる。
【0015】
また、特に請求項2及び4の発明によれば、第2係止片が第2係止孔から外れにくくすることができる。
【0016】
また、特に請求項3の発明によれば、略対面する2つの被固定面のうち、どちらの被固定面に保持部材を取り付けても、保持部材の取り付け位置を略90°異ならせることで、2つのコネクタの差込口の方向を一定に保持して仮固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、保持部材が車両の右リアピラー内側に固定された状態を示す。
図2図2は、図1の一部分を拡大した図である。
図3図3は、左リアピラーの内側に固定した保持部材を車両内部から見た図である。
図4図4は、左リアピラーの内側に仮固定した保持部材の鉤型片が、係止孔から離脱した状態を示す。
図5図5は、第1の実施の形態の保持部材の構成を示す斜視図である。
図6図6は、保持部材の正面図を示す。
図7図7は、保持部材の側面図を示す。
図8図8は、保持部材の保持部に回路基板を載置した状態を示す。
図9図9は、回路基板が載置された保持部材にプラスチックカバーが被せられた状態を示す。
図10図10は、被固定面に穿孔して形成される固定孔及び係止孔を示す。
図11図11は、第1係止片及び第2係止片が、第1係止孔及び第2係止孔に係止する状態を示す。
図12図12は、保持部材1が上向きに仮固定される状態を示す。
図13図13は、保持部材の取付けを行うユーザから見て左側に傾斜している状態において、保持部材が上向きに仮固定された状態を示す。
図14図14は、保持部材の取付けを行うユーザから見て左側に傾斜している状態において、保持部材が下向きに仮固定された状態を示す。
図15図15は、保持部材の取付けを行うユーザから見て右側に傾斜している状態において、保持部材が下向きに仮固定された状態を示す。
図16図16は、第2の実施の形態の仮固定構造の構成を示す。
図17図17は、付勢部により保持部材が付勢された状態を示す図である
図18図18、第2の実施の形態においける被固定面に形成される固定孔及び係止孔を示す。
図19図19は、第3の実施の形態の仮固定構造の構成を示す。
図20図20は、第2係止片が係止孔に係止した状態を示す。
図21図21は、被固定面に形成された固定孔及び係止孔を示す。
図22図22は、第1の変形例の回路基板を緩みがないよう保持する保持部材を示す。
図23図23は、回路基板を保持部材に保持する手法を示す。
図24図24は、回路基板の他方の端部を緩みなく保持部材に保持する手法を示す。
図25図25は、固定板により回路基板を緩みがないよう保持する保持部材を示す。
図26図26は、第2の変形例の回路基板を常に一定の向きで保持する保持部材を示す。
図27図27は、位置決め片と切り欠き片とが勘合せず、保持部材が回路基板を保持できない状態を示す。
図28図28は、ユーザにより位置決め片を切除した状態を示す。
図29図29は、第3の変形例のプラスチックカバーが保持部材に対して位置決めされる状態を示す。
図30図30は、図29の一部分を拡大した図である。
図31図31は、第4の変形例の回路基板を保持した保持部材をプラスチックカバーで覆った後の断面図である。
図32図32は、保持部材を上方から見た図である。
図33図33は、保持部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
<1.第1の実施の形態>
<1−1.概要>
図1は、車両VEに固定すべき対象物となる回路基板(図示せず)が、保持部材(ブラケット)1により車両VEのボディー、特に右リアピラー(右Cピラー)PRr内側に固定された状態を示す。図において、左リアピラーは透過して示される。なお、リアピラーとは、車両VEのボディーのうち、後部座席の斜め後ろに当り、ルーフを支える支柱の部分である。
【0020】
保持部材1により保持され、車両VEに固定される回路基板は、例えば信号を増幅する増幅器を搭載した回路基板である。かかる回路基板は、差込口を外側へ向けたコネクタIC,OCを両端に備えている。回路基板は、車両後方のリアガラスRGに設置されたアンテナANTから、入力信号線IL及び入力コネクタICを介して信号を受信する。信号は例えばラジオ放送等による音声信号である。そして、受信した信号を増幅し、出力コネクタOC及び出力信号線OLを介し、車両前方に設置されたオーディオ装置ECUへ出力する。
【0021】
このように、保持部材1により回路基板を車両VEのピラーに固定する場合には、入力コネクタICはアンテナANTの設置される車両後方を向き、出力コネクタOCはオーディオ装置ECUの設置される車両前方を向いて固定することが好ましい。すなわち、入力コネクタICは回路基板へ入力信号を出力する装置の方向を向き、出力コネクタOCは増幅信号を出力すべき装置の方向を向くことが好ましい。入力信号線IL及び出力信号線OLの長さを最小限とし、コスト削減を可能とするからである。
【0022】
図2は、図1の破線で示す部分図AR1を拡大した図である。部分図AR1は、保持部材1を右リアピラーPRrの内側に固定し、車両VE内部から保持部材1を見た図である。保持部材1を右リアピラーPRrの内側に固定すると、入力コネクタICはアンテナANTを備えたリアガラスRGのある車両後方を向き、出力コネクタOCはオーディオ装置ECUのある車両前方を向いて固定されることとなる。
【0023】
図3は、保持部材1を左リアピラーPRlの内側に固定し、車両VE内部から保持部材1を見た図である。保持部材1を左リアピラーPRlの内側に固定する場合は、右リアピラーPRrの内側に固定した場合に対して、保持部材1の上下を逆方向とすることで、入力コネクタICはアンテナANTを備えたリアガラスRG、すなわち車両後方を向き、出力コネクタOCはオーディオ装置ECUのある車両前方を向いて固定することができる。
【0024】
このように、保持部材1の上下を入れ替えてピラーに固定することで、右ピラーに対しても左ピラーに対しても、2つのコネクタの方向を一定に保ちつつ、保持部材1を固定することができる。
【0025】
このような固定の作業には保持部材1にボルトを挿入する必要があるが、ドライバー等の工具を操作する際、ユーザ(代表的には作業者)は保持部材1を適切な位置に支持しておく必要がある。しかし、固定機器を両手で操作する場合や作業用手袋を填めている場合には、ユーザは自らの手指で保持部材1を適切な位置に支持し続けることが容易でない。そこで、ユーザは保持部材1を固定すべき位置に仮固定を行う必要が生じることとなる。
【0026】
ここで、単純な鉤型片を有する保持部材をピラーに仮固定しようとする場合を想定する。この場合には、保持部材の鉤型片をピラーに穿孔された係止孔に差し込み、保持部材1をピラーに仮固定することとなる。しかし、車両のボディー、特にピラー部分は一般的に車両内側に傾斜している。このため、単純な鉤型片を有する保持部材においては、ピラーの内側への傾斜により鉤型片が係止孔から離脱する場合があった。
【0027】
図4は、このような単純な鉤型片Lを有する保持部材1aを示す図である。この保持部材1aを左リアピラーPRlの内側に仮固定し、車両VE内部から保持部材1を見た図である。図4は、鉤型片Lが係止孔HLから離脱した状態を示している。このように、単純な鉤型片Lを備える保持部材1aにおいては、右ピラー又は左ピラーにおいて保持部材1aを上下逆さまに仮固定すると、各ピラーの傾斜角度が異なるために、右ピラー又は左ピラーのいずれかにおいて鉤型片Lが係止孔から離脱し、仮固定が外れてしまう場合があった。このため、本実施の形態の保持部材1は、右ピラー及び左ピラーのいずれにおいても仮固定を維持できる形状をしている。
【0028】
なお、保持部材1を固定する被固定面は、ピラーのほかルーフやフロアの場合もある。車両のボディーのうちいずれかの部分であればよい。また、以下の説明において、ピラーや車両VEのボディーを図示する際、境界線を示さず図示する場合がある。
【0029】
<1−2.構成>
以下に、本実施の形態の保持部材1の構成を説明する。なお、説明に当り、三次元直交座標系(XYZ)を図示し、適宜、方向及び向きを示す。直交座標系は、保持部材1に対し、相対的に固定して示される。
【0030】
図5は、保持部材1の構成を示す斜視図である。保持部材1は、回路基板(図示せず)を保持する略長方形の保持部2と、保持部2の長辺の略中心から突出して形成され、保持部材1を被固定面BDに仮固定及び固定する固定部3とを備えて構成される。保持部2は、+Z側に回路基板を保持する。また、保持部2及び固定部3を−Z側から見た面が、保持部材1を被固定面BDに仮固定した場合に被固定面BDに対抗する面である。以下、この面を「主面」MSという。
【0031】
なお、保持部材1は、電気亜鉛めっき鋼板(例えば、「Silver Top」(登録商標))で作成されることが好ましい。加工及び半田付けが容易だからである。また、鉛フリー・六価クロムフリーの電気亜鉛めっき鋼板(例えば、「Silver Top ECO」(登録商標))で作成されることも好ましい。加工及び半田付けが容易のうえ環境負荷を低減できるからである。
【0032】
保持部2は、回路基板の切り欠き部と嵌合して保持部2における回路基板の位置を決定する3つの位置決め片21,22,23を備える。また、保持部2は、回路基板を覆うプラスチックカバーを固定する4つのカバー固定片24,25,26,27を備える。位置決め片21,22,23及びカバー固定片24,25,26,27は、保持部2から+Z側へ突出して形成される。また、保持部2は、回路基板を載置する載置片24a,25a,26a,27aを備える。
【0033】
固定部3は、固定孔4、第1係止片5、及び第2係止片6を備える。固定孔4は、ボルトSCを挿通するために設けられた穿孔である。固定孔4は、被固定面BDの固定孔111と共にボルトSCが挿通される。かかるボルトSCの挿通により、回路基板を保持した保持部材1は被固定面BDに固定される。
【0034】
第1係止片5は、主面MSから−Z側(被固定面BDに対向する側)へ突出して形成される。第1係止片5は、主面MSに略直交する部分51と主面MSに略平行な部分52とが連続する屈曲形状を有し、被固定面BDの第1係止孔112に係合する。第1係止片5は、第1係止孔112に係合すると、ボルトSCが回転した際の摩擦により保持部材1も連動して回転しないよう、いわゆる回り止めとしても機能する。
【0035】
第2係止片6も、主面MSから−Z側(被固定面BDに対向する側)へ突出して形成される。第2係止片6は、主面MSに略直交する略T字形を形成する部分61を有し、被固定面BDの第2係止孔110に係合する。部分61のT字の横棒に相当する部位は、+Y方向及び−Y方向の双方に延伸する。したがって、部分61は+Y方向及び−Y方向の双方に係合することができる。
【0036】
このように、第2係止片6が略T字形を形成する部分61を有することにより、保持部材1をピラーに仮固定する際、+Y方向を上側(車両のルーフ方向)として仮固定した場合であっても、−Y方向を上側として仮固定した場合であっても、第2係止片6が第2係止孔110から外れることを防止できる。これにより、保持部材1の上下を入れ替えて仮固定することが可能となり、右ピラーに対しても左ピラーに対しても、2つのコネクタの方向を一定に保ちつつ、保持部材1を固定することができる。
【0037】
図6は、保持部材1の正面図を示す。図6は、保持部材1を+Y側から−Y側の方向(図5の矢印V1の向く方向)へ向かって見た図である。図において、第1係止片5の主面MSに略直交する部分51は、主面MSから−Z側へほぼ垂直に突出する。また、主面MSに略平行な部分52は、主面MS略直交する部分51から+X側へほぼ垂直に突出する。また、第2係止片6は、主面MSから−Z側へ突出する。
【0038】
図7は、保持部材1の側面図を示す。図7は、保持部材1を−X側から+X側の方向(図5の矢印V2の向く方向)へ向かって見た図である。図において、第2係止片6は、主面MSから−Z側へ突出し、−Z側へ向けて略T字形を形成する部分61を備える。
【0039】
図8は、保持部材1の保持部2に回路基板BPを載置した状態を示す。図において、回路基板BPは、略長方形をなし、その四隅が保持部2の載置片24a,25a,26a,27a(載置片24a以外は図示せず)に載置される。また、回路基板BPは信号入力用のコネクタIC及び信号出力用のコネクタOCを両端に備える。2つのコネクタIC,OCの差込口は外側へ向けられる。また、回路基板BPの切欠き部CO等が位置決め片21等と嵌合することで、保持部材1における回路基板BPが載置される位置が決定される。切欠き部と位置決め片とが適切に勘合することにより、入力及び出力コネクタの向きを間違った方向として回路基板BPを保持部材1に載置することが防止される。
【0040】
図9は、回路基板BPが載置された保持部材1にプラスチックカバーCAが被せられた状態を示す。プラスチックカバーCAが回路基板BPを覆うことにより、回路基板BPへ埃や水滴が付着するのが防止される。図において、プラスチックカバーCAは、保持部材1の備える4つのカバー固定片24,25,26,27(カバー固定片25,26は図示せず)により保持部材1に固定される。
【0041】
図10は、被固定面BDに穿孔して形成される固定孔111,114及び係止孔110,112,113,115を示す。
【0042】
固定孔111、及び係止孔110並びに112は、ユーザから見て横方向(X軸方向)に平行して被固定面BDに形成される。固定孔114、及び係止孔113並びに115は、ユーザから見て横方向(X軸方向)に平行、かつ固定孔111、及び係止孔110並びに112と縦方向(Z軸方向)に並行して被固定面BDに形成される。
【0043】
また、係止孔110は、略T字型であり、固定孔111の−X側(ユーザから見て固定孔111の略右側)に形成され、第2係止片6が挿入される。係止孔112は、固定孔111の+X側(ユーザから見て固定孔111の略左側)に形成され、第1係止片5が挿入される。
【0044】
係止孔113は、固定孔114の−X側(ユーザから見て固定孔114の略右側)に形成され、第1係止片5が挿入される。係止孔115は、略T字型であり、固定孔114の+X側(ユーザから見て固定孔114の略左側)に形成され、第2係止片6が挿入される。
【0045】
固定孔111,114及び係止孔110,112,113,115をこのように形成することで、保持部材1の向きを固定孔111,114を中心として+Y側又は−Y側のどちらの向きでも仮固定することができる。これにより、ユーザは、被固定面BDが例えば右ピラーであっても、左ピラーであっても、保持部材1に保持された回路基板BPに設置された入力及び出力用の2つのコネクタIC,OCの向きを略一定(例えば、車両の略前後一定)に保ちつつ、保持部材1を被固定面BDに仮固定することができる。
【0046】
なお、保持部材1の上向き固定用の孔及び下向き固定用の孔の両者を同時に被固定面BDに形成することで、プレス加工用の金型を上向き用と下向き用とで複数設ける必要がなく、コスト低減が可能となる。また、係止孔110及び115は略T字でなくともよい。例えば、略L字形状や長方形状でもよい。要するに、第2係止片6と係合する形状であればよい。
【0047】
図11は、第1係止片5及び第2係止片6が、第1係止孔101及び第2係止孔102に係止する状態を示す。図に示すように、第1係止片5の主面MSと略直交する部分51と主面MSに略平行な部分52とが、第1係止孔101に挿入されて係止している。
【0048】
また、第1係止孔101に第1係止片5が挿入されると、第2係止片6の略T字形を形成する部分61が、第2係止孔101に挿入され(矢印A1に示す方向)、係止される。
【0049】
このように、第1係止片5及び第2係止片6が、第1係止孔101及び第2係止孔102に係止し、固定孔4の位置が被固定面BDの固定孔100の位置と合致することで、保持部材1が仮固定の状態となる。
【0050】
図12ないし15は、保持部材1が、被固定面BDに仮固定された状態を示す。
【0051】
図12は、被固定面BDが左リアピラーであり、保持部材1が上向き(保持部2が固定部3よりルーフ側)に仮固定される状態を示す。図に示す被固定面BD(左リアピラー)は、車両内側、かつ車両内側で保持部材1の取付けを行うユーザから見て右側に傾斜している。第1係止片5は、第1係止孔113に係止している。また、第2係止片6は、略T時型の第2係止孔115に係止している。特に、第2係止片6の略T字形を形成する部分61と、第2係止孔115の略T字型の孔が互いに係合することで、被固定面BDが車両内側、かつ右側に傾斜していても、仮固定が外れることがない。
【0052】
図13は、被固定面BDが右リアピラーであり、車両内側、かつ車両内側で保持部材1の取付けを行うユーザから見て左側に傾斜している状態で、保持部材1が上向き(保持部2が固定部3よりルーフ側)に仮固定された状態を示す。
【0053】
図14は、被固定面BDが右リアピラーであり、車両内側、かつ車両内側で保持部材1の取付けを行うユーザから見て左側に傾斜している状態で、保持部材1が下向き(保持部2が固定部3よりフロア側)に仮固定された状態を示す。
【0054】
図15は、被固定面BDが左リアピラーであり、車両内側、かつ車両内側で保持部材1の取付けを行うユーザから見て右側に傾斜している状態で、保持部材1が下向き(保持部2が固定部3よりフロア側)に仮固定された状態を示す。
【0055】
図に示すように、被固定面BDが右リアピラーであっても、左リアピラーであっても、第2係止片6の略T字形を形成する部分61と、第2係止孔110の略T時型の孔が互いに係合し、保持部材1の仮固定が被固定面BDから外れることがない。
【0056】
以上のように、第1の実施の形態の仮固定構造は、略T字形の第2係止片が被固定面BDの第2係止孔に係合することで、保持部材1を仮固定する角度を異ならせても、すなわち保持部材1の上下を異ならせても被固定面BDから離脱することなく適切に仮固定することができる。
【0057】
<2.第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態の仮固定構造は、第1の実施の形態と同様の構成を含む。このため、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0058】
第1の実施の形態では、第2係止片6を略T字形とした。この場合、被固定面BDが内側に傾き、かつ保持部材1を上下に略90°異ならせて仮固定しても、第2係止片6が第2係止孔から外れることがない。第1の実施の形態では、保持部材1は自重により被固定面に掛かるため、仮固定後、作業者の手指や工具が保持部材1に接触すると、仮固定が外れる恐れがあった。仮固定が外れると、作業者は保持部材1を被固定面BDに再度仮固定する必要が生じ、作業効率の低下を招いていた。
【0059】
このため、第2の実施の形態の仮固定構造は、第2係止片6が主面から突出して形成され、かつ被固定面BDの係止孔と係合した場合に第1係止片5の方向に保持部材1を付勢する。これにより、第2係止片6が第2係止孔から容易に外れにくくすることができる。なお、その他の構成は、第1の実施の形態と同様に構成され、また同様に機能する。
【0060】
図16は、第2の実施の形態の仮固定構造を示す。図において、第2係止片6は、主面MSから突出して形成され、付勢部6a1と屈曲部6a2とを備える。
【0061】
付勢部6a1は、主面MSから被固定面BDへ向けて突出して形成される。付勢部6a1は、やや外側、すなわち第1係止片5と反対の方向へ、やや開いて形成される。この開いた長さだけ、付勢部6a1から第1係止片5までの長さが、第2係止孔200から第1係止孔202までの長さより長くなるように形成される。この付勢部6a1の外側への開きにより、付勢部6a1が第2係止孔200に挿入された際に付勢力を生じることとなる。
【0062】
屈曲部6a2は、付勢部6a1から連続して形成され、その先端が保持部材1の内側に向けて、すなわち第1係止片5の方向に屈曲している。このため、第1係止片5を第2係止片6より先に係止孔202に係合させた場合、第1係止片5を係止孔200に容易に挿入することができる。内側に屈曲することで、屈曲部の先端が係止孔200の開口部の広い範囲と接し得るからである。
【0063】
図17は、付勢部6a1により保持部材1が付勢された図である。付勢部6a1は、被固定面BDの係止孔200に挿入されて係止孔200の内側面に当接すると、外側へ向けて、すなわち第1係止片5の方向(矢印の方向)に反発力を生じ、保持部材1を付勢する。したがって、保持部材1は被固定面BDに係止したのち、容易に係止が外れることがない。例えば、作業者の手指や工具が保持部材1に接触した場合であっても容易に係止が外れず、保持部材1を被固定面BDに再度仮固定する必要を生じるような、作業効率の低下を防止することができる。
【0064】
図18は、第2の実施の形態において被固定面BDに形成される固定孔201,204及び係止孔200,202,203,205を示す。
【0065】
固定孔201、及び係止孔200並びに202は、ユーザから見て横方向(X軸方向)に平行して被固定面BDに形成される。固定孔204、及び係止孔203並びに205は、ユーザから見て横方向(X軸方向)に平行、かつ固定孔201、及び係止孔200並びに202と縦方向(Z軸方向)に並行して被固定面BDに形成される。
【0066】
また、係止孔200は、固定孔201の−X側(ユーザから見て固定孔201の略右側)に形成され、第2係止片6が挿入される。係止孔202は、固定孔201の+X側(ユーザから見て固定孔201の略左側)に形成され、第1係止片5が挿入される。
【0067】
同様に、係止孔203は、固定孔204の−X側(ユーザから見て固定孔204の略右側)に形成され、第1係止片5が挿入される。係止孔205は、固定孔201の+X側(ユーザから見て固定孔201の略左側)に形成され、第2係止片6が挿入される。
【0068】
固定孔201,204及び係止孔200,202,203,205をこのように形成することで、保持部材1の向きを固定孔201,204を中心として+Y側又は−Y側(ユーザから見て固定孔201の略上側又は略下側)に仮固定することができる。これにより、ユーザは、被固定面BDが例えば右ピラーであっても、左ピラーであっても、保持部材1に保持された回路基板BPに設置された入力用及び出力用の2つのコネクタIC,OCの向きを略一定(例えば、車両の略前後一定)に保ちつつ、保持部材1を被固定面BDに仮固定することができる。
【0069】
以上のように、第2の実施の形態の仮固定構造は、第2係止片6が主面MSから突出して形成され、かつ被固定面BDの係止孔200と係合した場合に第1係止片5の方向に保持部材1を付勢するので、第2係止片6が第2係止孔200から外れにくくすることができる。
【0070】
<3.第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態の仮固定構造は、第1の実施の形態と同様の構成を含む。このため、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0071】
第1の実施の形態では、前述のように、仮固定が外れた場合に作業効率の低下を招いていた。このため、第3の実施の形態の仮固定構造は、第2係止片6が主面MSから突出して形成され、かつ被固定面BDの係止孔と係合した場合に保持部2の方向に保持部材1を付勢するものである。この付勢力により、仮固定が容易に外れないようにしている。なお、第3の実施の形態は、第1係止片5を具備しない。その他の構成は、第1の実施の形態と同様に構成され、また同様に機能する。
【0072】
図19は、第3の実施の形態の仮固定構造の構成を示す。図に示すように、第2係止片6は、固定孔4を中心として保持部2と反対側の位置(+Y側)の固定部3に形成される。また、第2係止片は、保持部材1の主面MSから−Z側へ突出して形成され、突出部6b1、付勢部6b2、及びピンチ部6b3を備える。
【0073】
突出部6b1は、第2係止片のうち固定部3から連続して形成される部分である。また、突出部6b1は、主面MSから被固定面BDの方向へ突出して形成される。
【0074】
付勢部6b2は、突出部6b1から外側へ向けて、すなわち保持部2と反対側(+Y側)の方向へ向けて、約30度から40度の角度に屈曲して形成される。付勢部6b2は、屈曲の反発力により付勢力を生成する。
【0075】
ピンチ部6b3は、付勢部6b2の先端に形成される。ピンチ部6b3は、第2係止片6が係止孔300に挿入された際に、係止孔300に当接し、付勢部6b2の付勢力を保持部材1へ伝達する。これにより、保持部材1を付勢する。したがって、保持部材1は被固定面BDに係止したのち、容易に係止が外れることがない。例えば、作業者の手指や工具が保持部材1に接触した場合であっても容易に係止が外れず、保持部材1を被固定面BDに再度仮固定する必要を生じるような、作業効率の低下を防止することができる。
【0076】
また、ピンチ部6b3は、ユーザの指で摘むことができるよう構成されており、付勢部6b2の屈曲した角度を変えることができる。ユーザは、ピンチ部6b3を指で摘み、付勢部6b2の屈曲角度を変えることで、第2係止片6を係止孔300から抜き出すことができる。
【0077】
図20は、第2係止片6が係止孔300に係止した状態を示す。付勢部6b2の付勢力が、ピンチ部6b3を介して係止孔300の側面を付勢することにより、保持部材1を矢印A5の方向へ付勢している。
【0078】
なお、図20の状態において、作業者はピンチ部6b3を矢印A5の方向へ、すなわち保持部2の方向へ押圧することで、付勢部6b2の屈曲が解消されるため、第2係止片6を係止孔300から外すことができる。
【0079】
図21は、被固定面BDに形成された固定孔301及び係止孔300及び302を示す。係止孔300は、固定孔301の+Y側(ユーザから見て固定孔301の略上側)に形成される。係止孔302は、固定孔301の−Y側(ユーザから見て固定孔301の略下側)に形成される。固定孔301及び係止孔300及び302をこのように形成することで、保持部材の向きを固定孔301を中心として+Y側又は−Y側(ユーザから見て固定孔301の略上側又は略下側)に仮固定することができる。これにより、ユーザは右ピラーに対しても、左ピラーに対しても、保持部材1に保持された回路基板のコネクタの向きを一定(ユーザから見て略左右一定)に保ちつつ、保持部材1を被固定面BDに仮固定することができる。
【0080】
以上のように、第3の実施の形態の仮固定構造は、第2係止片6が主面MSから突出して形成され、かつ被固定面BDの係止孔と係合した場合に保持部2の方向に保持部材1を付勢するので、第2係止片6が第2係止孔300から外れにくくすることができる。
【0081】
なお、第3の実施の形態の仮固定構造において、保持部材1は第1の実施の形態で示した第1係止片5を備えてもよい。また、第2係止片6は、固定部3における他の位置に形成されてもよい。例えば、第1の実施の形態で示した固定部3における第1係止片5及び第2係止片6の位置でもよい。すなわち、固定部3における+X側の辺又は−X側の辺でもよい。この場合、第2係止片6を固定部3の最も+Y側の位置に設けた場合と比較し、歩留まりを低減することができる。
【0082】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではない。様々な変形が可能である。以下、このような変形例について説明する。なお、上記実施の形態及び以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜、組み合わせ可能である。また、下記説明において上記実施の形態で説明した構成と同一構成に対しては、同一符号を用いて説明する。
【0083】
<4−1.第1の変形例>
まず、第1の変形例について説明する。前述の通り、保持部材1は、回路基板BPを保持し、車両VEのボディーに固定される。車両VEはエンジンの駆動中や走行中は振動を生じるため、保持部材1は回路基板BPを緩みがないよう保持することが好ましい。回路基板BPの保持に緩みがあると、エンジン等の振動により回路基板BPにガタツキが生じ、コネクタの接触不良や配線の断絶等の故障を生じる恐れがあるからである。第1の変形例は、保持部材1が回路基板BPを緩みがないよう保持する技術を提供する。
【0084】
図22は、回路基板BPを緩みがないよう保持する保持部材1を示す。図に示す保持部材1は、載置片24aの上側(+Z側)に固定片24b、及び載置片25aの上側(+Z側)に固定片25bを備える。また、保持部材1は、載置片26aの上側(+Z側)に固定片26b、及び載置片27aの上側(+Z側)に固定片27bを備える。
【0085】
固定片24bは、カバー固定片24から−X側に突出した後、−Y側に屈曲して形成される。固定片25bは、カバー固定片25から−X側に突出した後、+Y側に屈曲して形成される。固定片26bは、カバー固定片26から+X側に突出して形成される。固定片27bは、カバー固定片27から+X側に突出して形成される。
【0086】
図23は、回路基板BPを保持部材1に保持する手法を示す。まず、回路基板BPの一方の端部を載置片24aと固定片24bとの間、及び載置片25aと固定片24bとの間に差し込む(矢印B1の方向へ回路基板BPを動かす)。次に、回路基板BPの他方の端部を載置片26a(図示せず)、及び載置片27aの上に載置する(矢印B2の方向へ回路基板BPを動かす)。
【0087】
図24は、回路基板BPの他方の端部を緩みなく保持部材1に保持する手法を示す。回路基板BPの他方の端部が、載置片26a及び載置片27aの上に載置されると、固定片26b及び固定片27bは、ユーザにより保持部材1の内側に屈曲させられる。保持部材1の内側とは、固定片26bでは+Y側であり、固定片27bでは−Y側である。これにより、回路基板BPの一方の端部は載置片24aと固定片24bとの間、及び載置片25aと固定片25bとの間に挟まれ、他方の端部は載置片26aと固定片26bとの間、及び載置片27aと固定片27bとの間に挟まれる。このような載置片と固定片との挟み込みにより、回路基板BPを緩みなく保持部材1に保持することができる。
【0088】
なお、固定片26b及び固定片27bを、ユーザにより保持部材1の内側に屈曲させる代わりに、固定板26c及び固定板27cを設けてもよい。図25は、固定板26c及び固定板27cにより、回路基板BPを緩みがないよう保持する保持部材1を示す。
【0089】
固定板26cは、一端がカバー固定片26の上端(+Z側)に一体的に形成され、他端が保持部材1内側(−Y側)へ斜めに延びて形成されている。固定板26cは、回路基板BPが載置片26aに載置された際は、回路基板BPに略当接する。
【0090】
固定板27cは、一端がカバー固定片27の上端(+Z側)に一体的に形成され、他端が保持部材1内側(+Y側)へ斜めに延びて形成されている。固定板26cは、回路基板BPが載置片27aに載置された際は、回路基板BPに略当接する。
【0091】
このような状態において、まず、図23で示したように、回路基板BPの一方の端部を載置片24aと固定片24bとの間、及び載置片25aと固定片24bとの間に差し込む。次に、回路基板BPの他方の端部は、保持部材1の上方(+Z方向)から載置片の方向(図23の矢印B2の方向)へ向けて、固定板26c及び固定板27cを保持部材1の外側(+Y側及び−Y側)に各々押し広げるように動き、やがて載置片26a及び載置片27aに載置される。この際、固定板26c及び固定板27cは、押し広げられた状態から元の状態に戻り、回路基板BPに略当接する。
【0092】
これにより、回路基板BPの一方の端部は載置片24aと固定片24bとの間、及び載置片25aと固定片25bとの間に挟まれ、他方の端部は載置片26aと固定板26cとの間、及び載置片27aと固定板27cとの間に挟まれる。このような載置片と固定板との挟み込みにより、回路基板BPを緩みなく保持部材1に保持することができる。
【0093】
以上のように、第1の変形例は、回路基板BPの一方の端部を載置片24aと固定片24bとの間、及び載置片25aと固定片25bとの間に挟み、回路基板BPの他方の端部を載置片26aに載置した後、かかる他方の端部を載置片26aと固定板26cとの間、及び載置片27aと固定板27cとの間に挟むことを特徴とする仮固定構造である。
【0094】
<4−2.第2の変形例>
次に、第2の変形例について説明する。前述の通り、保持部材1は、入力コネクタIC及び出力コネクタOCを備えた回路基板BPを保持し、車両VEのボディーに固定される。入力コネクタIC及び出力コネクタOCを備えた回路基板BPは、保持部材1に対し、常に一定の向きで保持されることが好ましい。両コネクタに対して間違った配線を行わないようにするためである。第2の変形例は、保持部材1が回路基板BPを常に一定の向きで保持する技術を提供する。
【0095】
図26は、回路基板BPを常に一定の向きで保持する保持部材1を示す。保持部材1は、位置決め片21を備える。位置決め片21は、回路基板BPの切り欠き部COと勘合する。保持部材1は、位置決め片21と切り欠き部COとが勘合した場合に、回路基板BPを適切に保持し得る。保持部材1が回路基板BPを適切に保持すると、図26に示すように、入力コネクタICが保持部材1の+X側に位置し、出力コネクタOCが保持部材1の−X側に位置する。
【0096】
保持部材1が回路基板BPを適切な向きに保持する場合、位置決め片21と切り欠き部CO1及びCO2とは、保持部材1と回路基板BPとの長辺LE上において、長辺LEの中心C1より+X側へずれた位置C2に設けられている。したがって、回路基板BPを保持部材1に対し不適切な向き、すなわち入力コネクタICが保持部材1の−X側、出力コネクタOCが保持部材1の+X側となる向きに設置しようとすると、位置決め片21と切り欠き部CO1又はCO2とが勘合せず、保持部材1は回路基板BPを保持することができない。この場合、ユーザは、回路基板BPが保持部材1に対し不適切な向きであることを認識し、回路基板BPを適切な向きにして保持部材1に保持する作業を再度行うことができる。
【0097】
図27は、位置決め片21と切り欠き部CO2とが勘合せず、保持部材1が回路基板BPを保持できない状態を示す。図において、回路基板BPが保持部材1に対し不適切な向き、すなわち入力コネクタICが保持部材1の−X側、出力コネクタOCが保持部材1の+X側の向きとなっている。この場合、位置決め片21は、回路基板BPと当接し、切り欠き部CO2と勘合できない。位置決め片21は位置C2にあるものの、切り欠き部CO2は長辺LEの中心C1を挟んで位置C2より−X側へ位置するからである。
【0098】
なお、回路基板BPと保持部材1とは、位置決め片21と切り欠き部CO1とのみを設けてもよい。この場合、回路基板BPが保持部材1に対し不適切な向きとなると、常に位置決め片21は回路基板BPと当接し、切り欠き部COと勘合できないからである。
【0099】
次に、第2の変形例の他の例について説明する。
【0100】
図28は、保持部材1が長辺LEの中心C1からずれた位置に位置決め片21と、長辺LEの中心C1に位置決め片21aとを備えた後に、ユーザにより位置決め片21を切除した状態を示す。この場合、切り欠き部CO3及びCO4とを長辺LEの中心C1に備えることにより、コネクタIC及びOCの向きに関わらず回路基板BPを保持部材1に保持することができる。
【0101】
一方、ユーザにより位置決め片21aを切除し、切り欠き部CO3及びCO4とを長辺LEの中心C1からずれた位置C2に備えることにより、コネクタIC及びOCの向きを常に一定にして回路基板BPを保持部材1に保持することができる。
【0102】
このように、位置決め片21と位置決め片21aとを備えた後にいずれかを切除することで、コネクタIC及びOCの向きに関わらず回路基板BPを保持部材1に保持する場合と、コネクタIC及びOCの向きを常に一定にして回路基板BPを保持部材1に保持する場合とに対応することができる。また、保持部材1の金型を複数用意する必要がなく、単一の金型で両者の場合に対応でき、コストの上昇を防止できる。
【0103】
以上のように、第2の変形例は、保持部材1の備える位置決め片21と回路基板BPの備える切り欠き部CO1及びCO2とは、保持部材1と回路基板BPとの長辺LE上において、長辺LEの中心C1よりずれた位置C2に設けられることを特徴とする仮固定構造である。これにより、回路基板BPが保持部材1に対し不適切な向きとなった場合には、位置決め片21と切り欠き部CO1又はCO2とは勘合せず、保持部材1が回路基板BPを保持することを防止できる。
【0104】
また、保持部材1は、長辺LEの中心C1からずれた位置に位置決め片21と、長辺LEの中心C1に位置決め片21aとを備え、後にいずれかが切除されることを特徴とする仮固定構造である。これにより、位置決め片21と切り欠き部CO3及びCO4とを長辺LEの中心C1からずれた位置に備え、長辺LEの中心C1の位置にある位置決め片21を切除すれば、コネクタの向きを常に一定にして回路基板BPを保持部材1に保持することができる。また、位置決め片21aと切り欠き部CO3及びCO4とを長辺LEの中心C1に備え、長辺LEの中心C1からずれた位置の位置決め片21を切除すれば、コネクタの向きに関わらず回路基板BPを保持部材1に保持することができる。
【0105】
<4−3.第3の変形例>
次に、第3の変形例について説明する。前述の通り、回路基板BPへ埃や水滴が付着するのを防止するため、回路基板BPを保持した保持部材1をプラスチックカバーCAで覆うことが好ましい。しかし、ユーザは、保持部材どの位置にプラスチックカバーCAを当てれば適切に覆うことができるか、直ちに判別できない場合もある。また、ユーザが作業手袋をしている場合には、プラスチックカバーCAを手に保持しての微小な位置決めは行い難い。第3の変形例は、このような課題に鑑み、保持部材1をプラスチックカバーCAで覆う際、プラスチックカバーCAの保持部材1に対する位置決めを容易にする技術を提供する。
【0106】
図29は、プラスチックカバーCAが保持部材1に対し、矢印D1の方向へ移動されつつ位置決めされる状態を示す。なお、回路基板BPの図示は省略する。保持部材1のカバー固定片25は、接合位置決定部25d及び接合部25eを備える。
【0107】
接合位置決定部25dは、カバー固定片25の上端に設けられた切り欠き形状の部分である。なお、上端とは、カバー固定片25において最も+Z側、かつプラスチックカバーCAで保持部材1を覆う際、最初にプラスチックカバーCAが保持部材1に接する位置である。
【0108】
接合部25eは、接合位置決定部25dから−Z側に位置する空間であり、プラスチックカバーCAの接合片CAa(後述)と結合する。接合部25eと接合片CAaとが結合することにより、プラスチックカバーCAが保持部材1に固定される。
【0109】
プラスチックカバーCAは、接合片CAaを備える。接合片CAaは、プラスチックカバーCA内側に突出して爪状の形状をなし、接合部25eの空間と結合する。
【0110】
また、プラスチックカバーCAは、接合片CAaのほか3つ接合片を備える。これらの接合片は保持部材1が備える4つのカバー固定片24,25,26,27と各々対応するプラスチックカバーCA内の位置に形成される。
【0111】
図30の上段は、図29の部分図AR2を拡大した図である。また、同下段に示す部分図AR3は、部分図AR2においてプラスチックカバーCAを矢印D1の方向へ移動させた状態を示す。
【0112】
部分図AR2において、接合片CAaは、接合位置決定部25dと当接することで、プラスチックカバーCAの保持部材1に対する位置が決定される。次に、部分図AR2においてプラスチックカバーCAを矢印D1の方向(−Z側)へ移動させることで、接合片CAaが接合部25eの空間と結合し、プラスチックカバーCAが保持部材1に固定される。
【0113】
以上のように、第3の変形例は、保持部材1のカバー固定片の上端に切り欠き形状の接合位置決定部を備え、接合位置決定部25dから−Z側の位置に接合部を備える。また、プラスチックカバーCAは、接合部25eの空間と結合する接合片CAaを備える。これにより、ユーザは接合片CAaと接合位置決定部25dとを当接させることで、プラスチックカバーCAを保持部材1に固定させるためのプラスチックカバーCAの位置決めを容易に行うことができる。
【0114】
<4−4.第4の変形例>
次に、第4の変形例について説明する。保持部材1をプラスチックカバーCAで覆った後、プラスチックカバーCAに変形等が生じると故障等の原因となり得る。特に、プラスチックは熱や振動に脆弱のため、保持部材1の外側へ開くような変形がプラスチックカバーCAに生じる恐れがある。この場合、保持部材1とプラスチックカバーCAとの間に隙間が生じ、埃や水滴が回路基板BPへ付着し、故障を生じる要因となり得る。第4の変形例では、保持部材1をプラスチックカバーCAで覆った後、プラスチックカバーCAが保持部材1の外側へ開くような変形を防止する技術を提供する。
【0115】
図31は、回路基板BPを保持した保持部材1をプラスチックカバーCAで覆った後の、プラスチックカバーCA、保持部材1、及び回路基板BPの断面図である。なお、図31の断面図は、保持部材1を上方(+Z側)から見た場合(図32)に、回路基板BPの長辺方向の中心を+X方向へ切断し、視点A(+Y方向)から見た断面図(図33)をカバー固定片24の位置でさらに切断し、視点B(+X方向)から見た断面図である。
【0116】
図31に示すように、プラスチックカバーCAは内壁CAiと外壁CAoとを備えている。内壁CAiと外壁CAoとは、両者の間に空間を備える。内壁CAiと外壁CAoとは、プラスチックカバーCAが保持部材1に固定された際、かかる空間にカバー固定片24を挟み込むよう形成されている。保持部材1のカバー固定片24は金属で形成されて容易には変形しないため、カバー固定片24を挟み込むことにより、プラスチックカバーCAの側面CAbが、保持部材1の外側(矢印E1の方向)へ開いて変形するのを防止できる。
【0117】
なお、プラスチックカバーCAの内壁CAiと外壁CAoとは、保持部材1が備える4つのカバー固定片24,25,26,27と各々対応するプラスチックカバーCAの位置に各々形成される。
【0118】
以上のように、プラスチックカバーCAは内壁CAiと外壁CAoとを備え、両者の間の空間にカバー固定片24を挟み込むよう形成されている。内壁CAiと外壁CAoとでカバー固定片24を挟み込むことにより、プラスチックカバーCAの側面CAbが、保持部材1の外側へ開いて変形するのを防止できる。
【0119】
<4−5.第5の変形例>
上記第1ないし第3の実施の形態の説明において、保持部材1の上向き固定用の孔及び下向き固定用の孔を同時に被固定面BDに形成することで、右ピラー及び左ピラーに対し、回路基板のコネクタの向きを一定(ユーザから見て略左右一定)に保ち、保持部材1を被固定面BDに仮固定できると述べた。しかし、被固定面BDに上向き固定用の孔及び下向き固定用の孔を同時に形成しなくともよい。回路基板を取り付ける車両や回路基板の配置に応じ、上向き固定用の孔及び下向き固定用の孔のいずれかを選択して形成してもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 保持部材
2 保持部
3 固定部
4 固定孔
5 第1係止片
6 第2係止片
MS 主面
IC 入力コネクタ
OC 出力コネクタ
PRr 右リアピラー
PRl 左リアピラー
図1
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