(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、
図8(a)から
図8(d)に示す防虫用の薬剤容器が知られている(特許文献1)。
図8(a)は、容器の斜視図であり、
図8(b)は、その容器内に保持される保護シート109の平面図である。
図8(c)は、保護シート109の端部拡大断面図、
図8(d)は、薬剤容器の外観である。
【0003】
薬剤容器は、
図8(a)に示すように、合成樹脂製の外枠101と、外枠101内に位置する保護シート109とから構成される。外枠101は中空であって、表面には第
2開口103が開口されており、保護シート109を収納する空間と外部とは第
2開口103を介して連通している。
【0004】
図8(b)に示すように、この保護シート109は、シート2枚を重ねた構造で、その間に薬剤を保持する樹脂製の樹脂保持体201が配置される。この樹脂保持体201には薬剤が保持され、薬剤を揮散させて虫を遠ざける。
図8(c)に、その断面の端部拡大図を示す。なお、上下の保護シート109は接着されておらず、揮散した薬剤は重ねられた2枚のシートの隙間から外部へ放出される。
【0005】
薬剤容器の使用時には、この保護シート109は、第
1開口104を介して外枠101から取り除かれる。
【0006】
薬剤を保持する樹脂保持体201から、薬剤が揮散し、更に第
2開口103を通って、外枠101の外部へ放出される。この保護シート109の役割は、外枠101と薬剤との接触による薬剤ロスを阻害することである。
【0007】
図8(d)に示すが、この薬剤容器は販売時(使用前、保管時)には、外側を密封された外袋107で覆われ、薬剤は外袋107の外部に揮散しないように設計されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1(a)は、本発明の薬剤容器の使用前の斜視図である。
図1(b)は、
図1(a)の薬剤容器の使用直前を示す図であり、
図1(c)は、本発明の薬剤容器の使用中の状態を示す斜視図である。
【0014】
本発明の薬剤容器は、外形が扁平な六面体の形状を有する樹脂製の外枠101と、外枠101内に収納されている保護袋102とから構成される。前記六面体は、対向する両主面(上面及び下面)とこれらに挟まれた周囲に2つの側面と2つの外枠端面を有している。外枠101の両主面には貫通する孔である第
2開口103が設けられ、両外枠端面にも貫通する第
1開口104が設けられている。
図1(a)に示すように、使用前の状態では、それぞれの第
1開口104から、保護袋102の端部である保護袋端部102a及び102bが外枠101の外部にはみ出だしている。なお、
図1では、両側面に開口が設けられていないが、通風性の点から開口の設置が好ましい。
【0015】
保護袋102の内部には薬剤が密閉、保持されており、保護袋102は使用前に取り除かれる。
【0016】
第
1開口104は、保護袋102を外枠101から取り除く際の取り出し口である。
【0017】
以上のような構成を有する、本実施の形態1の薬剤容器は、
図1(a)に示す使用前の状態から、
図1(b)に示すように、保護袋端部102aを切り取り、切り取った保護袋端部102aと反対側の保護袋端部102bを引っ張ることで、外枠101から保護袋102が取り除かれ、封入されていた薬剤が露出する。これにより薬剤容器は使用可能な状態となる。
【0018】
使用状態においては、
図1(c)に示すように、外枠101の内部にて保護袋102内に封入されていた、後述する、薬剤を保持する樹脂保持体(図示省略)が露出しており、樹脂保持体から薬剤が第
2開口103を介して外部へ放出されている。
【0019】
図2(a)から(c)は、薬剤容器の内部構成の詳細を説明する図である。
【0020】
図2(a)は、外枠101を開いた状態を示す図である。図に示すように、外枠101は、上側の上外枠101aと下側の下外枠101bとから構成される。上外枠101aと下側の下外枠101bの端部には、組立て時に第
1開口104を形成する切り欠き104a及び104bがそれぞれ設けられている。
【0021】
外枠101は、それぞれ樹脂成形で作製された上外枠101aと下外枠101bとを組み合わせることにより構成されている。なお、上外枠101aと下外枠101bは、組み合わせ後も分解することができる。又、上外枠101aと下外枠101bとは一辺を共有して一体化した、いわゆるクラムシェル型の構造を有していてもよいし、分離独立した部品であってもよい。
【0022】
図2(b)は、外枠101に収納される保護袋102の斜視図である。この保護袋102は、未使用状態においては、保護袋端部102a及び102bを含めた周縁が封止されることにより密閉された袋となっており、内部に樹脂保持体201に保持された薬剤が封入されている。
【0023】
図2(c)は、保護袋102の内部に配置される薬剤を保持する樹脂製の樹脂保持体201の斜視図である。樹脂保持体201は樹脂の網状体を本体部として有し、この本体部に薬剤が樹脂等とともに混練される又は塗布されることにより、薬剤を保持している。
【0024】
ここで薬剤の例としては、防虫材料、殺虫材料、芳香材料、消臭材料などがある。具体的には、メトフルトリン、トランスフルトリン、プロフルトリン、エムペントリン等の揮発性ピレスロイド系防虫殺虫剤や各種テルペン系香料成分等が例示される。
【0025】
又、保護袋102の素材の例としては、ガスを透過させない性質を有するポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンなどを材料にしたフィルムを、単体もしくは組み合わせて使用できる。
【0026】
以上のような本発明では、使用開始前の状態においては密閉された保護袋102により薬剤が封止保持されており、且つ、保護袋102が外枠101に保持されているので、
図5に示すような、従来例における揮散防止用の外袋107が不要となる。
【0027】
又、外枠101は再度利用し、保護袋102のみを交換することもできる。外枠101を別にしているので、密閉する袋としての保護袋102の大きさを小さくでき、従来例に比して、中の薬剤の揮散を抑えることができる。
【0028】
なお、
図1(b)を参照した使用時の説明においては、保護袋102の一方の端部である保護袋端部102aを切り取った後に、同他方の端部である保護袋端部102bを引っ張るものとしたが、保護袋102の片側の端部のみを操作の対象としてもよい。具体的には、保護袋端部102bを外枠101から大きく引っ張り出してその引っ張り出した保護袋端部102bを切り取って、もう一方の端部を引っ張り、保護袋102を取り出してもよい。
【0029】
すなわち、薬剤容器が
図1(a)に示す未使用状態にある流通過程においては外枠101内にその大半が収納された保護袋端部102bを、使用時に大きく引っ張り出して切り取るようにする。もう一方の端部である保護袋端部102aを引き出すことにより、保護袋102外枠101から容易に取り除くことができる。
【0030】
(実施の形態2)
図3(a)〜
図3(d)は、本発明の実施の形態2の構成を示す図である。各図において、
図1及び2と同一又は相当する構成については、同一符号を付し詳細な説明は省略し、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。これは以下の実施の形態も同様である。
【0031】
図3(a)は、本実施の形態2の薬剤容器の、外枠101を開いた状態を示す斜視図である。上外枠101aと下側の下外枠101bのそれぞれについて、先端が尖っている突起301が、第
1開口104を形成する切り欠き104a及び104bの周辺に配置されている。
【0032】
この突起301は、薬剤容器を使用する場合に、保護袋102に差し込まれるものである。以下、
図3(b)と
図3(c)を参照して説明する。
【0033】
図3(b)は、薬剤容器の端部の、外枠101の長手方向に沿った直線による拡大断面図であって、使用前の状態を示すものである。突起301は保護袋102に突き刺さっていない。
図3(c)は、突起301が保護袋102に突き刺さった状態を示す図である。これは、
図3(b)に示す状態から、外枠101を押さえることで、突起301が保護袋102に突き刺さることを示すものである。
【0034】
この
図3(c)に示す、突起301が保護袋102に突き刺さった状態で、保護袋102のもう一端(図示せず)を実施の形態1と同様破る。しかる後、保護袋102の
図3(c)に現れている方を引くことで、外枠101から保護袋102を取り出す。樹脂保持体201の位置が固定でき、スムーズに保護袋102を取り出せる。この突起301の部分を起点として、保護袋102が破れ、保護袋102を取り出しやすい。
【0035】
なお、突起301の配置場所は、少なくとも、第
1開口104の周辺の1か所にあればよい。
【0036】
図3(d)は、突起301の変形例(断面図)を示す図であり、図中上側、
図3(a)の上外枠101a側に突起301を設け、同下側、下外枠101bに突起受け303を設けた構成である。突起301が確実に保護袋102に刺さるように、突起301の外形に対応した凹部の突起受け303を有する。
【0037】
なお、突起301は、樹脂保持体201にも突き刺さるように、一定長の長さを有する、あるいは先端が鋭利に成形されていることが、より望ましい。これにより、突起301が保護袋102と樹脂保持体201に突き刺さり、外枠101内において樹脂保持体201を位置ずれさせることなく定位置にて保持することができる。
【0038】
このように、本実施の形態2によれば、外枠101に突起301を備えたことにより、保護袋102の端部を引きちぎることなく保護袋102を引き裂き、より容易に取り除くことができる。
【0039】
また、保護袋102の材質も、柔軟性が低く、引き裂かれ易い樹脂シートがよい。材質は適時選択できる。シート厚みは、運搬、保管のため、薄くなく、かつ、突起301が刺さるように、厚くないのがよい、例えば、10μmから、100μm程度である。好ましくは、20μmから50μmである。
【0040】
図3(e)に、突起301の変形例を示す。突起301は扇形、または、円の一部を平面として有する薄い柱状体である。前記突起301との相違点は、保護袋102に対して、一方向へ線状に挿入されることにある。前記突起301は保護袋102との接触が点接触に近い態様でなされるが、この例では保護袋102との接触を線接触に近い態様で実現することができる。これにより、保護袋102をより引き裂きやすくなる。すなわち、保護袋102が突起301の縁である線に沿って簡単に引き裂かれることにより、保護袋102が薬剤容器から取り出しやすくなるという効果を奏する。
【0041】
(実施の形態3)
図4(a)〜
図4(c)は、本発明の実施の形態3の構成を示す図である。以下、実施の形態1、2と異なる部分を説明する。
【0042】
図4(a)は、本実施の形態3による薬剤容器の斜視図である。本実施の形態3の薬剤容器は、外枠101の長手側の側端に外形平板状のストッパ302が設けられた構成を有し、ストッパ302の主面上には突起301が設けられている。ストッパ302は、外枠101との連結部分を中心に回動可能であり、突起301の先端が外枠101と対向するように配置されている。
【0043】
ここで、ストッパ302の動作として、
図4(b)にストッパ302が回動し、外枠101の主面に重なり、突起301が第
2開口103に差し込まれた状態を示す。又、
図4(c)は、ストッパ302が外枠101に重なった状態における薬剤容器の端部断面図を示す。
【0044】
本実施の形態3は、上述の回動可能なストッパ302を有することにより、以下の作用効果を奏する。すなわち、
図4(a)に示す、外枠101内に保護袋102を収納した状態から、ストッパ302を回動させて、
図4(b)、
図4(c)に示すように、外枠101に対してストッパ302を押し込むことにより、突起301が保護袋102を貫通して、樹脂保持体201に突き刺さる。これにより、保護袋102及び樹脂保持体201は外枠101内に固定される。
【0045】
図4(d)は前記突起301の別の変形例を示す図である。前記突起301は、点で保護袋102を突き刺すものであった。この例では、線で突き刺す突起である。その形状は、扇形平面、または、円の一部の平面で厚みがある柱状である。その弧に沿って、保護袋102を突き破る。線上に沿って保護袋102が割かれるので保護袋102が薬剤容器から取り出しやすい。
図4(e)は、この突起301が保護袋102に突き刺さった時の薬剤容器の一部の断面図である。
【0046】
この状態で、突起301から遠い側に位置するもう一方の保護袋端部102bを外枠101から引き抜くと、保護袋102は、この突起301の突き刺さった部分の近傍から裂け、薬剤容器から取り除かれる。なお、ストッパ302の位置は、薬剤容器(外枠101)の端部、特に保護袋102が露出する部分の近傍とすることが望ましく、保護袋102を引き裂き易いという効果を奏する。なお、本実施の形態の構成を、実施の形態2の突起301と組み合わせることもできる。
【0047】
なお、上記の説明においては、ストッパ302は突起301が第
2開口103から離れた状態で、外枠101の周りを回動した後に第
2開口103に被さることにより突起301が保護袋102等に突き刺さるものとした。しかしながら、ストッパ302は、あらかじめ、
図4(b)に示す、第
2開口103に被さった状態にしておき、上から更にストッパ302を押し込むことにより、保護袋102等に突き刺ささる構成としてもよい。更に、被さった状態にあるストッパ302と、第
2開口103を含めた外枠101との間に、突起301が保護袋102と接触するのを防ぐ栓を設けた構成としてもよい。この場合は、使用直前に栓を抜いてストッパ302を押し込むことにより突起301を保護袋102等に突き刺すこととなる。
【0048】
(実施の形態4)
図5(a)〜(c)は、別の薬剤容器の例を示す図である。この薬剤容器は略直方体状を呈し、上外枠101aと下外枠101bの2つの部材からなる。
図5(a)は、上外枠101a、
図5(c)は、下外枠101b、
図5(b)は、それらを組み合わせた薬剤容器の斜視図である。
【0049】
この薬剤容器においては、上外枠101aに上面、下外枠101bに下面を有し、上、下面に挟まれた周囲は2つの側面と2つの外枠端面を構成している。なお、上面は、外枠の中央が端部に較べて厚くなるように湾曲してもよく、一方、下面は平面状が一般的である。また、両外枠端面と平行にカットした場合の断面形状としては、長方形のほか、台形状、三角形状、円弧状等であってもよい。
【0050】
第
1開口104は、実施の形態1、2同様、保護袋102を取り出すところである。実施の形態1、2との違いは、容器内部に、凹部が形成され、外観上、薬剤が外部へ出ることがない。
【0051】
薬剤容器の上、下面には、第
2開口103があり、側面には、第3開口105が設けられている。本実施例では、第
2開口103は、複数の小さな方形状であり、一方、第3開口105は、1つ1つが、第
2開口103の1つより大きな開口面積の細長い楕円形状、または、長方形である。
【0052】
薬剤容器中の通風性を良くし、空気の流れにのせて薬剤を容器外に揮散させるためには、上、下面の第
2開口103に加えて、側面に第3開口105を設置するのが極めて好ましく、特に、実施の形態4のような薬剤容器においては、両側面に設けられた第3開口105の総開口面積は、上、下面における第
2開口103の総開口面積と比較して0.3〜3.0倍程度に設定するのがよい。
【0053】
本薬剤容器は、棚や机等に置いて使用してもよいが、通常、玄関等のドアノブや壁等に吊下げて使用に供することが多い。この場合、下面がドアや載置面等に密着して下面の第1開口103が塞がれ空気の流れが遮断される恐れがある。そこで、下面に突起状の足106を付設する。これにより、下面を介した空気の流れが確保されるので、薬剤の揮散効率を向上させることができる。
【0054】
図6(a)、(b)は、薬剤容器へ保護袋102をセットした状態を示す図である。保護袋102を上外枠101aと下外枠101bの間に挟んでセットした状態が
図6(a)である。
図1と同様、第
1開口104から、保護袋102を取り除いたものが
図6(b)である。第
1開口104は、薬剤容器の外枠端面で、容器内部へ向かって凹んだ形状である。保護袋102が取り出しやすく、外部へあまり出ない。
【0055】
なお、図示しないが、上外枠101a、又は、下外枠101bには、
図3に示す突起301、また、
図4のストッパ302を設けている。
【0056】
図6(c)は、薬剤容器をドアノブなどに固定している状態を示す図である。第3開口105の下部に設けられたフック先端部取付け孔兼開口部105aの適当位置にフック先端部を差し込んでフック部108を形成し、ドアノブなどの突起に掛けることができる。フック先端部取付け孔兼開口部105aは、薬剤容器の側面下部に複数個設けられ、フック部108の取付け方法や長さを調整できるようになっている。ドアノブや壁等に吊下げて使用しても、足106があるので、薬剤容器の下面がドアや壁などに密着しない。このため、薬剤容器中の空気の流れが妨げられず、薬剤は容器からスムーズに揮散可能となる。
【0057】
図7は、薬剤容器の側面に設けられた第3開口105の形状の変形例を示す図である。
図7に示す薬剤容器における第3開口105は、薬剤容器の底面(下面)に対して、垂直方向の長細い楕円形状、スリット状を呈している。この変形例は、薬剤容器中の空気の流れがスムーズであることに加え、
図5や
図6のものに較べて樹脂成形性が良く薬剤容器の製造コスト上有利となる。
【0058】
なお、各実施の形態は、阻害要因がない限り、適時組み合わせることができる。