特許第6338854号(P6338854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6338854-レモン風味飲料 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338854
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】レモン風味飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20180528BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20180528BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20180528BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   A23L2/00 B
   A23L2/02 B
   C12G3/06
   C11B9/00 Z
   C11B9/00 J
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-269921(P2013-269921)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-123008(P2015-123008A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】311002447
【氏名又は名称】キリン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】佐 野 涼 子
(72)【発明者】
【氏名】小田井 英 陽
(72)【発明者】
【氏名】中 島 麻紀子
(72)【発明者】
【氏名】有 田 麻 美
【審査官】 藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−167170(JP,A)
【文献】 特開2011−167171(JP,A)
【文献】 特開昭61−274670(JP,A)
【文献】 特開2007−039610(JP,A)
【文献】 特開2007−020433(JP,A)
【文献】 特開2002−255778(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/067135(WO,A1)
【文献】 5.飲料におけるフレーバーの劣化防止について,ソフト・ドリンク技術資料,2002年,No.2,pp.81-95
【文献】 J. Agric. Food. Chem.,2006年,Vol.54,pp.1844-1848
【文献】 におい・かおり環境学会誌,2010年,Vol.41, No.4,pp.240-245
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 − 2/40
C12G 1/00 − 3/12
C11B 1/00 − 15/00
C11C 1/00 − 5/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを含む、レモン風味飲料であって、該飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ−0.0047X+0.89≦Y≦−0.021X+10.35であり、シトラールの飲料中の含有量が0.07〜0.82ppmであり、リモネンとα−テルピノレンとの飲料中の含有量比が5.52〜6.33:1であり、かつγ−テルピネンとα−テルピノレンとの飲料中の含有量比が0.48〜1.67:1である、飲料。
【請求項2】
飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)が、0.46〜8.4ppmである、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
リモネンの飲料中の含有量が0.33〜7.2ppmであり、γ−テルピネンの飲料中の含有量が0.08〜0.26ppmであり、かつα−テルピノレンの飲料中の含有量が0.05〜0.96ppmである、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
飲料のpHが2.5〜4である、請求項1〜のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを含むレモン風味飲料の柑橘系香味劣化抑制方法であって、該飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ−0.0047X+0.89≦Y≦−0.021X+10.35となるように調整し、シトラールの飲料中の含有量が0.07〜0.82ppmとなるように調整し、リモネンとα−テルピノレンとの飲料中の含有量比が5.52〜6.33:1となるように調整し、かつγ−テルピネンとα−テルピノレンとの飲料中の含有量比が0.48〜1.67:1となるように調整する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレモン風味飲料に関し、より詳細にはシトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを含む、レモン風味飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
レモン果実中の特徴的な香気成分の一つとしてシトラールが知られており、レモン風味飲料には、シトラールが含有される場合が多い。このシトラールは熱や光に不安定であり、劣化によりオフフレーバーの原因となり、飲料の品質が損なわれるおそれがあった。使用するシトラール量を減らせば、シトラールの劣化によるオフフレーバーを減少させることができるが、レモン感に乏しい飲料となってしまう場合があった。
【0003】
これまでに、レモン風味を呈する飲料にジャスミン茶抽出液を配合した、劣化臭が抑制された飲料(例えば、特許文献1参照)、飲料にクエン酸カリウムを添加して飲料のpHを3.0以上に調整することによりシトラールの環化反応を抑制する方法(例えば、特許文献2参照)、柑橘系天然精油または柑橘系香料を活性炭と接触させることを特徴とする柑橘系香味の劣化抑制方法(例えば、特許文献3参照)などが開示されているが、これらの飲料や、方法では香料の劣化を十分に抑制できない場合があり、シトラールなどの柑橘系香料の劣化がさらに抑制された飲料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−5787号公報
【特許文献2】特開2007−39610号公報
【特許文献3】特開2005−143370公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は、柑橘系香味の劣化が抑制されたレモン風味飲料を提供することを目的とする。
【0006】
本発明者らは、飲料中に、シトラールを含む飲料中のテルペン類に属する特定の化合物の合計含有量を一定量となるように原料を配合することにより、柑橘系香味の劣化が抑制されたレモン風味飲料を提供できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0007】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを含む、レモン風味飲料であって、該飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ−0.0047X+0.89≦Y≦−0.021X+10.35である、飲料。
(2)飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量が、0.46〜8.4ppmである、(1)に記載の飲料。
(3)シトラールの飲料中の含有量が0.06〜7.2ppmであり、
リモネンと、α−テルピノレンとの飲料中の含有量比が、5.5〜7.4:1であり、かつγ−テルピネンと、α−テルピノレンとの飲料中の含有量比が、0.25〜1.8:1である、(1)または(2)に記載の飲料。
(4)リモネンの飲料中の含有量が0.33〜7.2ppmであり、γ−テルピネンの飲料中の含有量が0.08〜0.26ppmであり、かつα−テルピノレンの飲料中の含有量が0.05〜0.96ppmである、(1)〜(3)のいずれかに記載の飲料。
(5)飲料のpHが2.5〜4である、(1)〜(4)のいずれかに記載の飲料。
(6)シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを含むレモン風味飲料の製造方法であって、該飲料中の該リモネンと、該γ−テルピネンと、該α−テルピノレンとの合計含有量が、0.87〜10.4ppmとなるように原料が配合される、製造方法。
(7)シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを含むレモン風味飲料の柑橘系香味劣化抑制方法であって、該飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ−0.0047X+0.89≦Y≦−0.021X+10.35となるように調整する、方法
【0008】
本発明によれば、柑橘系香味の劣化が抑制されたレモン風味飲料が提供できる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、レモン風味飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係を表すグラフである。グラフ中の製品1〜5とは、製造(調製)された調合品1〜5中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)と、F品1〜5中の合計含有量(ppm)とをそれぞれ結んだグラフである。
【発明の具体的説明】
【0010】
本発明の飲料は、シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを含む、レモン風味飲料であって、該飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、X≧0およびY≧0(好ましくは、X≦90)であり、かつ−0.0047X+0.89≦Y≦−0.021X+10.35(より好ましくは、−0.0047X+0.89≦Y≦−0.0078X+4.35)である飲料である。本発明の飲料は柑橘系香味の劣化が抑制されたレモン風味飲料である。
【0011】
本発明のレモン風味飲料には、シトラール(Citral)に加え、テルペン類であるリモネン(Limonene)、γ−テルピネン(γ-terpinene)、およびα−テルピノレン(α-terpinolene)が含まれる。
【0012】
飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量は、好ましくは0.46〜8.4ppmであり、より好ましくは0.46〜7ppm、さらに好ましくは0.46〜6ppm、より一層好ましくは0.46〜4ppm、さらに一層好ましくは0.46〜1.9ppm、さらにより一層好ましくは0.46〜1ppmである。飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量を、0.46〜4ppmとすることにより、レモン風味飲料の香味のバランスがより良い飲料を提供することができ、さらに該合計含有量を、0.46〜1.9ppmとすることにより、レモン風味飲料の香味のバランスがさらに良い飲料を提供することができる。
【0013】
本発明のレモン風味飲料の好ましい態様によれば、シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを含む、レモン風味飲料であって、該シトラールの該飲料中の含有量が0.06〜7.2ppmであり、該リモネンと、該α−テルピノレンとの該飲料中の含有量比(リモネン:α−テルピノレン)が、5.5〜7.4:1(リモネン/α−テルピノレン比が5.5〜7.4)であり、かつ該γ−テルピネンと、該α−テルピノレンとの該飲料中の含有量比(γ−テルピネン:α−テルピノレン)が、0.25〜1.8:1(γ−テルピネン/α−テルピノレン比が0.25〜1.8)であるレモン風味飲料が提供される。
【0014】
本発明のレモン風味飲料中に含まれるシトラールは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.06〜7.2ppm、より好ましくは0.06〜3ppmであり、さらに好ましくは0.06〜2.5ppm、より一層好ましくは0.06〜2ppm、さらにより一層好ましくは0.06〜1.5ppm、さらにより一層好ましくは0.06〜0.08ppmである。
【0015】
本発明のレモン風味飲料中に含まれるリモネンと、α−テルピノレンとの含有量比(リモネン:α−テルピノレン)は、特に限定されるものではないが、好ましくは5.5〜7.4:1であり、より好ましくは5.5〜7:1であり、さらに好ましくは5.5〜6.7:1であり、より一層好ましくは5.5〜6.3:1である。
【0016】
本発明のレモン風味飲料中に含まれるγ−テルピネンと、α−テルピノレンとの含有量比(γ−テルピネン:α−テルピノレン)は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.25〜1.8:1であり、より好ましくは0.3〜1.8:1であり、さらに好ましくは0.4〜1.67:1であり、より一層好ましくは0.48〜1.67:1、さらにより一層好ましくは1.3〜1.67:1である。
【0017】
本発明のレモン風味飲料のさらに好ましい態様によれば、シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを含む、レモン風味飲料であって、該シトラールの該飲料中の含有量が0.06〜0.08ppmであり、該リモネンと、該α−テルピノレンとの該飲料中の含有量比(リモネン:α−テルピノレン)が、5.5〜6.3:1であり、かつ該γ−テルピネンと、該α−テルピノレンとの該飲料中の含有量比(γ−テルピネン:α−テルピノレン)が、1.3〜1.67:1であるレモン風味飲料が提供される。本発明のレモン風味飲料に含まれるシトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンをこのような含有量および含有量比とすることにより、レモン風味飲料の香味のバランスがより良い飲料を提供することができる。
【0018】
本発明のレモン風味飲料の好ましい態様によれば、リモネンの飲料中の含有量が0.33〜7.2ppmであり、γ−テルピネンの飲料中の含有量が0.08〜0.26ppmであり、かつα−テルピノレンの飲料中の含有量が0.05〜0.96ppmであるレモン風味飲料が提供される。
【0019】
本発明のレモン風味飲料のより好ましい態様によれば、リモネンの飲料中の含有量が好ましくは0.33〜4.1ppm(より好ましくは0.33〜2.9ppm、さらに0.33〜0.34ppm)であり、γ−テルピネンの飲料中の含有量が好ましくは0.08〜0.17ppm(より好ましくは0.08〜0.15ppm、さらに0.08〜0.09ppm)であり、かつα−テルピノレンの飲料中の含有量が0.05〜0.6ppm(より好ましくは0.05〜0.3ppm、さらに好ましくは0.05〜0.06ppm)であるレモン風味飲料が提供される。
【0020】
本発明のレモン風味飲料のさらに好ましい態様によれば、リモネンの飲料中の含有量が0.33〜0.34ppmであり、γ−テルピネンの飲料中の含有量が0.08〜0.09ppmであり、かつα−テルピノレンの飲料中の含有量が0.05〜0.06ppmであるレモン風味飲料が提供される。本発明のレモン風味飲料に含まれるリモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンをこのような含有量とすることにより、レモン風味飲料の香味のバランスがより良い飲料を提供することができる。
【0021】
本発明のレモン風味飲料は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、酸性であることが好ましく、pHが2.5〜4であることがより好ましく、pHが2.8〜3.5であることがさらに好ましい。本発明のレモン風味飲料のpHを2.5〜4とすることにより、より一層新鮮なレモン香気を維持することができる。
【0022】
本発明のレモン風味飲料は、シトラールを含む該飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量が、0.87〜10.4ppmとなるように原料が配合される製造方法により製造することができる。このように原料を配合することにより、シトラールを含む本発明のレモン風味飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係を、X≧0およびY≧0であり、かつ−0.0047X+0.89≦Y≦−0.021X+10.35とするように製造でき、またこの関係を満たすことにより、レモン風味飲料の柑橘系香味の劣化を抑制することができる。
【0023】
本発明のレモン風味飲料は、例えば、レモン風味飲料の原料として、水100mL当たり、90〜100%アルコール33.4〜30.1ml、レモン果汁1.5〜15g(1.5〜15%)、クエン酸0.1〜0.5g(0.1〜0.5%)、クエン酸ナトリウム0.1〜0.5g(0.1〜0.5%)、香料0.1〜1.0g(0.1〜1.0%)、甘味料0.01〜0.1g(0.01〜0.1%)を添加し、炭酸ガス付けして、350mlの缶に詰めることにより製造してもよい。これらの原料のいずれかまたは全部に、シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンが含まれていてもよく、また原料としてシトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを単独で加えても良い。また、シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンが、レモン風味飲料の原料であるレモン果汁や、その他の柑橘類の果汁や、香料に含まれることが好ましく、これらの果汁や香料の種類や、添加量を適宜調整して、各成分を所定の含有量および含有量比に調整してもよい。本発明のレモン風味飲料の原料として用いられるレモン果汁、その他の柑橘類の果汁、および香料は市販されているものを用いてもよい。
【0024】
本発明のレモン風味飲料は、アルコール飲料であっても、ノンアルコール飲料のいずれでもよいが、アルコール飲料であることが好ましい。アルコール飲料としては、例えば、チューハイ、カクテル、サワーが挙げられる。また、本発明のレモン風味飲料がアルコール飲料である場合には、アルコール含有量が1.0〜10%程度のものが好ましい。ここで、チューハイとは、焼酎、ウォッカなどの蒸留酒を果汁や炭酸等で割った飲料であり、カクテルとはウォッカなどのアルコール度の高い蒸留酒をベースとし、果汁や香料などを混合して作った飲料であり、サワーとはカクテルの一種で、ウイスキー、ジンなどにレモンなどを入れて酸味をもたせた飲料である。
【0025】
本発明のレモン風味飲料には、食品上許容される各種任意成分(例えば、酸化防止剤、保存料、甘味料)を含んでいてもよい。
【0026】
本発明の別の態様によれば、シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを含むレモン風味飲料の製造方法であって、該飲料中の該リモネンと、該γ−テルピネンと、該α−テルピノレンとの合計含有量が、0.87〜10.4ppmとなるように原料が配合される製造方法が提供される。
【0027】
本発明のレモン風味飲料の製造方法の好ましい態様によれば、飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量が、0.87〜8.4ppm、好ましくは0.87〜6.4ppm、より好ましくは0.87〜4.4ppm、さらに好ましくは0.87〜0.91ppmとなるように原料が配合される、製造方法が提供される。飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量を、0.87〜4.4ppmとすることにより、レモン風味飲料の香味のバランスがより良い飲料の製造方法を提供することができ、さらに該合計含有量を、0.87〜0.91ppmとすることにより、レモン風味飲料の香味のバランスがさらに良い飲料の製造方法を提供することができる。
【0028】
本発明のレモン風味飲料の製造方法の好ましい態様によれば、シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを含むレモン風味飲料の製造方法であって、該飲料中の該シトラールの含有量が、1.35〜50.5ppm(好ましくは1.35〜23ppm、より好ましくは1.35〜3ppm、さらに好ましくは1.35〜1.48ppm)、該リモネンと該α−テルピノレンとの含有量比(リモネン:α−テルピノレン)が5.1〜16.8:1(好ましくは10〜16.8:1、より好ましくは15〜16.8:1)、かつ該γ−テルピネンと該α−テルピノレンとの含有量比(γ−テルピネン:α−テルピノレン)が、0.38〜1.74:1(好ましくは0.5〜1.74:1、より好ましくは1〜1.74:1、さらに好ましくは1.7〜1.74:1)となるように原料が配合される製造方法が提供される。
【0029】
本発明のレモン風味飲料の製造方法の好ましい態様によれば、リモネンの飲料中の含有量が0.75〜8.3ppm(好ましくは0.75〜5.1ppm、より好ましくは0.75〜3.5ppm、さらに好ましくは0.75〜1ppm、より一層好ましくは0.75〜0.77ppm)、γ−テルピネンの飲料中の含有量が0.08〜0.61ppm(好ましくは0.08〜0.4ppm、より好ましくは0.08〜0.3ppm、さらに好ましくは0.08〜0.1ppm、より一層好ましくは0.08〜0.09ppm)、かつα−テルピノレンの飲料中の含有量が0.04〜1.49ppm(好ましくは0.04〜1ppm、より好ましくは0.04〜0.7ppm、さらに好ましくは0.04〜0.5ppm、より一層好ましくは0.04〜0.05ppm)となるように原料が配合される製造方法が提供される。
【0030】
本発明のレモン風味飲料の製造方法に用いられる任意成分、製造されたレモン風味飲料のpH等は、本発明のレモン風味飲料と同じであってよい。
【0031】
本発明の別の態様によれば、シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを含むレモン風味飲料の柑橘系香味劣化抑制方法であって、該飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ−−0.0047X+0.89≦Y≦−0.021X+10.35となるように調整する方法が提供される。
【0032】
本発明において、レモン風味飲料の柑橘系香味劣化とは、飲料の製造直後と比べて、レモン風味飲料の柑橘系香味が劣化することをいい、例えば、飲料の製造直後と比べて、シトラールがオフフレーバーの原因となる香気成分へ変化するなどして柑橘系の香味が劣化して劣化臭を生じることをいう。レモン風味飲料の柑橘系香味劣化の抑制とは、このような劣化の抑制であればどのような態様でもよく、例えば劣化臭の抑制をいう。
【0033】
本発明のレモン風味飲料の柑橘系香味劣化抑制方法に用いられるシトラール、リモネン、γ−テルピネン、α−テルピノレン、任意成分等およびそれらの含有量および含有量比等は、上述した本発明のレモン風味飲料と同じであってよい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0035】
試験例1:劣化臭評価試験
(1)レモン風味飲料の調製
以下の処方に従い、レモン風味飲料(調合品1〜5)を調製した。
処方:レモン果汁0.1〜5%、クエン酸0.5%、クエン酸ナトリウム0.1%、香料(レモンフレーバー)0.2〜0.4%、甘味料0.02%(pH3、アルコール濃度:6%)
シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンの含有量を下記表3に記載の含有量および含有量比となるように、処方中のレモン果汁および香料のレモン風味飲料中の含有割合を調製した(調合品1〜5)。
【0036】
調製したレモン風味飲料(調合品1〜5)を、350mL容アルミ缶に入れ、50℃で4日間保管した後に下記の官能評価を行った。保管後のシトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンの飲料(F品1〜5)中の含有量および含有量比は、下記表3に記載の通りであった。また、50℃で4日間保管は、レモン風味飲料を通常の流通過程(常温)で流通させた場合の90日間に相当し、レモン風味飲料を通常の流通過程で流通させた場合の製造(調製)後の経過日数(日)(X)と、飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)との関係を示せば、図1の通りであった。
保管後のレモン風味飲料中のシトラール含有量は、保管後のレモン風味飲料を固相抽出により濃縮した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(日本分光株式会社製)により測定した。HPLC条件を下記表1に示す。
また、保管後のレモン風味飲料中のリモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンの含有量は、保管後のレモン風味飲料をクロロホルムで抽出し、対象成分を濃縮した後、ガスクロマトグラフィー(GC/MS)により定量した。GC/MSの条件を下記表2に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
下記表3に記載の50℃で4日間保管後のレモン風味飲料(F品1〜5)について劣化臭および香味バランスに関する官能評価を行った。官能評価は、訓練されたパネリスト8名によって、下記の評価基準により行われた。訓練されたパネリスト8名は全て同じ評価を選択した。評価結果を下記表3に示す。
【0040】
(2)評価基準
劣化臭
― : ほとんど劣化臭を感じない
+ : 劣化臭を感じる
++: 非常に劣化臭を感じる。
香味バランス
◎: バランスが良い
○: ややバランスが良い
△: ややバランスが悪い
X: バランスが悪い
【0041】
(3)評価結果
【表3】
*リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンの合計含有量を表す。また、表中の「調合品」とは50℃で4日間保管する前のレモン風味飲料を表し、「F品」とは50℃で4日間保管後のレモン風味飲料を表す。
【0042】
上記表3の結果から、本発明のレモン風味飲料(F品1〜5)は、50℃で4日間保管後であっても、ほとんど劣化臭を感じないことがわかった。また、上記表3中のF品1〜3は、F品4および5と比較して、レモン風味飲料の香味バランスが良く、F品1および2はレモン風味飲料の香味バランスがさらに良いことがわかった。
また、図1の結果から、レモン風味飲料を通常の流通過程(常温)で流通させた場合の製造後の経過日数(日)(X)と、飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ−0.0047X+0.89≦Y≦−0.021X+10.35であれば、レモン風味飲料はほとんど劣化臭を感じないことがわかった。
さらに、図1の結果から、レモン風味飲料を通常の流通過程(常温)で流通させた場合の製造後の経過日数(日)(X)と、飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ−0.0047X+0.89≦Y≦−0.0078X+4.35であれば、レモン味飲料はほとんど劣化臭を感じず、かつ香味バランスが良いことがわかった。
図1