【実施例】
【0015】
以下本発明の一実施例によるホース巻き取り装置について説明する。
図1は本実施例によるホース巻き取り装置を機能実現手段で表したブロック図である。
本実施例によるホース巻き取り装置は、ホース1を巻き取るホースリール10と、ホースリール10の回転量と回転方向を検出する回転量検出手段20と、ホース1のホースリール10に対する原点位置からの回転量と、原点位置からのホース1のホースリール10からの引出量との対応データをホース長及びホース径に応じて記憶する記憶手段30と、ホース長及びホース径を特定するホース特定情報を入力する入力手段40と、記憶手段30に記憶された対応データの中から、入力手段40で入力されたホース特定情報で定まる対応データを用いて、回転量検出手段20で検出される回転量から引出量を演算する演算手段50と、演算手段50で演算された引出量を表示する表示手段60とを備えている。
ホースリール10には、ホース1が複数列で複数段巻かれる。
記憶手段30に記憶される回転量と引出量との対応データは、ホースリール10のドラム径とドラム幅、及びホース1のホース長とホース径によって決定される。
表示手段60では、原点位置からの引出量(総引出量)と、原点位置とは異なる任意の操作点からの引出量とを表示する。原点位置からの引出量(総引出量)を表示することでホース1の全長に対する引出量を把握できるとともに、任意の操作点からのホース1の引出量を表示することで目標点に対する引出量を把握できる。
また、表示手段60では、原点位置からの引出量(総引出量)の代わりに、ホース長から総引出量を引いたホース残量を表示することができる。ホース残量を把握できることで、例えば目標点に対して作業の続行が可能か否かの判断を行えるなど作業性が向上する。
【0016】
また、本実施例によるホース巻き取り装置は、ホース1のホースリール10でのたるみを検出するたるみ検出手段70と、ホースリール10を駆動する駆動手段80と、駆動手段80の正逆回転を制御する駆動制御手段90とを備えている。駆動制御手段90は、たるみ検出手段70がたるみを検出すると駆動手段80を停止する。
駆動手段80は、油圧回転駆動されるものに限らず、手動回転を行うハンドルであってもよい。駆動手段80がハンドルのような手動回転である場合には、駆動制御手段90は、ブレーキ機能だけを有し、たるみ検出手段70がたるみを検出するとブレーキ機能によって駆動手段80を停止する。
また、本実施例によるホース巻き取り装置は、ホース1をホースリール10に整列させて巻き取らせる整列手段100を備えている。
【0017】
図2は本実施例によるホース巻き取り装置の設定時の動作を示すフロー図である。
本実施例によるホース巻き取り装置の電源をONにすると、演算手段50では、記憶手段30に記憶しているパルスの最終カウント値を読み出し(ステップ1)、ホース1の総引出量を演算する(ステップ2)。
ここで、パルスの最終カウント値は、回転量検出手段20で検出したパルスを加減算して累積したカウント値であり、ホース1のホースリール10に対する原点位置からの総回転量である。
ホース1のすべてをホースリール10に巻いた状態を原点位置とすると、原点位置ではパルス値は「0」であり、ホース1の送り出しによってパルス数を加算、すなわちプラスのカウントを行い、送り出したホース1の巻き取りによってパルス数を減算、すなわちマイナスのカウントを行う。
電源をOFFにして再度、電源をONすると、ホース1がホースリール10から所定量引き出された状態にあれば、ステップ1における最終カウント値は、引き出されたホース1の所定量に相当するプラスのカウント値が読み出される。電源をOFFにして再度、電源をONすると、ホース1のすべてがホースリール10に巻いた状態にあれば、ステップ1における最終カウント値は「0」となる。
ステップ2では、記憶手段30に記憶されている回転量と引出量との対応データを基に、最終カウント値(回転量)に対応するホース1の総引出量を演算する。なお、記憶手段30に、最終カウント値とともにホース1の総引出量を記憶しておいてもよい。記憶手段30にホース1の総引出量を記憶している場合には、ステップ2では演算を行うことなく、記憶手段30に記憶している総引出量を読み出す。
ステップ2で演算、又は読み出された総引出量は、表示手段60で表示される(ステップ3)。
【0018】
本実施例によるホース巻き取り装置では、使用するホース1を取り替え、又はホース長を変更することができる。
ホース径を変更する場合には、既設のホース1をホースリール10から取り外してホース径の異なる新たなホース1をホースリール10に巻き付ける。一方、ホース長を変更する場合には、ホースリール10に巻き付けている既設のホース1に、延長用のホース1を接続するか、ホースリール10に巻き付けている既設のホース1から、延長用のホース1を取り外すことで行う。ホース長の変更は、新たなホース1に取り替えることでも行える。
ステップ4においてホース1を変更する場合には、新たに取り付けるホース1について、入力手段40からホース特定情報を入力する(ステップ5)。ホース特定情報は、ホース長とホース径を特定する情報であり、ステップ5では、例えば、ホース1の品番や型番などのホース識別情報を入力する。ホース識別情報ではなく、ホース長及びホース径を直接入力してもよい。また、入力にあたっては数値を直接入力してもよいが、表示された複数のコマンドから選択することで入力してもよい。
【0019】
ステップ5の後に、新たなホース1をホースリール10に取り付け、あらかじめ設定した位置にホース1をセットする(ステップ6)。なお、ステップ5のホース特定情報の入力の前に、ステップ6のホース1のセットを行ってもよい。
ステップ6の設定位置は、基本的には原点位置となるものであり、例えば、ホース1のすべてをホースリール10に巻いた状態を設定位置とする。また、ホース1をホースリール10からすべて送り出した状態を設定位置とすることもできる。なお、ホースリール10から所定量(例えば1m)だけホース1を送り出した状態を設定位置とすることもできるが、この場合における原点位置は、ホース1のすべてをホースリール10に巻いた状態、又はホース1をホースリール10からすべて送り出した位置とし、ここでの所定量(例えば1m)を初期引出量としてあらかじめ設定するか、入力手段40から入力する。
ステップ6においてホース1を設定位置にセットした後に、入力手段40からセット完了入力を行う(ステップ7)。
ステップ7における完了入力が行われると、最終カウント値はリセットされ(ステップ8)、表示手段60では初期値が表示される(ステップ9)。
ステップ9における初期値表示では、ホース1のすべてをホースリール10に巻いた状態では「0m」表示がされる。なお、ホースリール10から所定量(例えば1m)だけホース1を送り出した状態を設定位置とした場合には、ステップ9における初期値表示では「所定量(例えば1m)」が表示される。
【0020】
ステップ4においてホース1の変更が無く、ステップ10においてホース長を変更する場合には、入力手段40からホース長変更情報を入力する(ステップ11)。
ステップ12においてホース長を短縮する場合には、ホース1の送り出し操作が行われる(ステップ13)。
ホース1の送り出し操作によってホースリール10は回転するため、回転量検出手段20によってホースリール10の回転量及び回転方向が検出される(ステップ14)。
ステップ14で検出される回転量からホース1の総引出量を演算手段50で演算する(ステップ15)。
ステップ15で演算されたホース1の総引出量は、表示手段60で表示される(ステップ16)。
表示手段60で表示される総引出量から、取り外すホース長以上の長さのホース1を送り出したことを確認すると、ホース1の送り出し操作を停止して接続用ホースを取り外す(ステップ17)。
ステップ17における接続用ホースを取り外した後に、入力手段40から取り外し完了入力を行う(ステップ18)。
ステップ18における完了入力が行われると、総引出量が補正される(ステップ19)。ステップ19における総引出量の補正は、取り外し時点での総引出量から、取り外すホース長を減算する。すなわち、例えば、既設のホース1が80mであり、取り外すホース長が10mである場合には、取り外し時点での総引出量の表示が11mであった場合には、補正された総引出量の表示は1mとなる。なお、総引出量に対応する最終カウント値についても、減算補正を行い、補正された最終カウント値を記憶手段30に記憶させる。
表示手段60には、ステップ19で補正された後の総引出量が表示される(ステップ20)。
【0021】
ステップ12においてホース長を延長する場合には、接続用ホースが接続される(ステップ21)。
ステップ21における接続用ホースの接続がされた後に、入力手段40から接続完了入力を行う(ステップ22)。
ステップ22における完了入力が行われると、総引出量が補正される(ステップ23)。ステップ23における総引出量の補正は、接続前の時点での総引出量に延長するホース長を加算する。すなわち、例えば、既設のホース1が80mであり、延長するホース長が10mである場合には、接続前の時点での総引出量の表示が1mであった場合には、補正された総引出量の表示は11mとなる。なお、総引出量に対応する最終カウント値についても、加算補正を行い、補正された最終カウント値を記憶手段30に記憶させる。
表示手段60には、ステップ23で補正された後の総引出量が表示される(ステップ24)。
【0022】
ステップ10においてホース長を変更せず、ステップ25において原点修正が必要な場合には、あらかじめ設定した位置にホース1をセットする(ステップ26)。ステップ26の設定位置は、ステップ6における設定位置と同じである。
ステップ26においてホース1を設定位置にセットした後に、入力手段40からセット完了入力を行う(ステップ27)。
ステップ27における完了入力が行われると、最終カウント値はリセットされ(ステップ28)、表示手段60では初期値が表示される(ステップ29)。
【0023】
図3は本実施例によるホース巻き取り装置の使用時の動作を示すフロー図である。
ホース1の送り出し又は巻き取り操作が行われると(ステップ30)、ホースリール10は回転するため、回転量検出手段20によってホースリール10の回転量及び回転方向が検出される(ステップ31)。
ステップ31で検出される回転量からホース1の総引出量を演算手段50で演算する(ステップ32)。
ステップ32で演算されたホース1の総引出量は、表示手段60で表示される(ステップ33)。
本実施例によるホース巻き取り装置は、原点位置とは異なる任意の操作点からの引出量を表示することができる。
ステップ34において任意の操作点からの計測開始の操作がなされると、計測開始の操作点からのホース1の引出量が演算される(ステップ35)。
ステップ35では、計測開始の操作点での最終カウント値(回転量)に対応するホース1の総引出量を初期値として記憶しておき、その後に演算される総引出量から初期値を減算する。
ステップ35で演算された任意の操作点からの引出量は、表示手段60で表示される(ステップ36)。
ステップ37で電源がOFFとなるまで、ホース1の送り出し又は巻き取り操作に応じて演算処理と表示が行われる。
【0024】
図4は本実施例によるホース巻き取り装置の要部構成図である。
ホース1を巻き取るホースリール10には、回転量検出手段20と、たるみ検出手段70と、駆動手段80と、整列手段100とを備えている。
図4では、ホースリール10には、ホース1が10列で3段巻かれた状態を示している。
回転量検出手段20は、例えばロータリーエンコーダで構成し、ホースリール10の回転軸11の回転を検出する。ロータリーエンコーダは、ホースリール10の回転軸11が所定角度回転するとパルスを発するとともに、回転方向を検出することができる。
たるみ検出手段70は、ホースリール10のドラム12下方に配置されるたるみ検出バー71と、たるみ検出バー71の変位を検出する近接スイッチ72とで構成される。たるみ検出バー71上に、たるんだホース1が当接すると、たるみ検出バー71は変位し、近接スイッチ72がたるみを検出する。なお、たるみ検出手段70はホースリール10のドラム12下方に配置されるたるみ検出バースイッチで構成することもできる。たるみ検出バースイッチに、たるんだホース1が当接すると、たるみ検出バースイッチが押され、たるみを検出する。たるみ検出手段70がたるみを検出すると駆動制御手段90はホースリール10の回転を停止する。
ホースリール10でのホース1のたるみが生じた場合にはホースリール10の回転を停止し、ホース1を引っ張ることでホースリール10を回転させることなくたるみを無くすことができ、引出量の精度を低下させず、誤差を生じることなく運転を再開できる。
駆動手段80は、例えばモータ81と、モータ81の回転をホースリール10の回転軸11に伝達するチェーン82とで構成される。
整列手段100は、ホース1の位置を規制するホースガイド部101と、このホースガイド部101をホースリール10の幅方向に往復動作させるガイドシャフト部102を有しており、ガイドシャフト部102を回転させることで、ホースガイド部101をホースリール10の幅方向に往復動作させる。ガイドシャフト部102の回転は、駆動源によって駆動するか、手動によって行う。
【0025】
図5は本実施例によるホース巻き取り装置の回転量(パルス数)と引出量との関係を示す図である。
図5(a)は、ホース1のすべてをホースリール10に巻いた状態を原点位置とした場合、
図5(b)は、ホース1をホースリール10からすべて送り出した状態を原点位置とした場合を示している。
以下に、ホース1のホースリール10に対する原点位置からの回転量と、原点位置からのホース1のホースリール10からの引出量との対応データについて説明する。
ホースリール10の1段毎の列数aは、ドラム幅をDw、ホース径をHとすると式(1)で表される。
a=Dw/H・・・(1)
ホースリール10の1段毎の総パルス数Ptは、式(2)で表される。bはホースリール10の1回転でのパルス数である。
Pt=a×b・・・(2)
各段の円周cは、ドラム径をDr、段数をnとすると、式(3)で表される。
c=(Dr+(n×2−1)H)×π・・・(3)
【0026】
n段での1パルスでの引出量Lnは式(4)で表される。
Ln=c/b・・・(4)
n段での引出量Lntは式(5)で表される。
Lnt=Ln×Pt・・・(5)
ここで式(3)と式(4)とから式(6)が導かれ、1段目(n=1)における1パルスでの引出量L1は式(6−1)、2段目(n=2)における1パルスでの引出量L2は式(6−2)、3段目(n=3)における1パルスでの引出量L3は式(6−3)となる。
Ln=((Dr+(n×2−1)H)×π)/b・・・(6)
L1=((Dr+H)×π)/b・・・(6−1)
L2=((Dr+3H)×π)/b・・・(6−2)
L3=((Dr+5H)×π)/b・・・(6−3)
従って、L1<L2<L3となる。
また、式(5)は、式(7)で表せ、1段目(n=1)における引出量L1tは式(7−1)、2段目(n=2)における引出量L2tは式(7−2)、3段目(n=3)における引出量L3tは式(7−3)となる。
Lnt=(Dr+(n×2−1)H)×π×Dw/H・・・(7)
L1t=(Dr+H)×π×Dw/H・・・(7−1)
L2t=(Dr+3H)×π×Dw/H・・・(7−2)
L3t=(Dr+5H)×π×Dw/H・・・(7−3)
従って、L1t<L2t<L3tとなる。
【0027】
以上のように、本実施例によれば、ホースリール10の回転量からホース1の引出量を検出することができるため、ホース1の汚れの状態やホース1の伸縮力の状態に影響を受けることなく、精度良く引出量を検出できる。
特に、本実施例によれば、ホース1のホースリール10に対する原点位置からの回転量と、原点位置からのホース1のホースリール10からの引出量との対応データをホース長及びホース径に応じて記憶し、入力手段40で入力されたホース特定情報で定まる対応データを用いて演算するため、異なるホース長又は異なるホース径に対しても精度良く引出量を検出できる。
また、本実施例によれば、ホースリール10に対してホース1を所定位置にセットした状態で原点位置の入力を行うことで、原点位置を設定するものであり、原点位置を入力によって行えることで、初期設定だけでなく、原点修正が可能となり、長期の連続使用による累積誤差をなくすことができる。
また、本実施例によれば、ホースリール10でのホース1のたるみが生じた場合にはホースリール10の回転を停止し、ホースを引っ張ることでホースリールを回転させることなくたるみを無くすことができ、引出量の精度を低下させず、誤差を生じることなく運転を再開できる。
本実施例におけるホース巻き取り装置は、水タンクとともに荷台に搭載される高圧洗浄車に用いることができる。