(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338894
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】分割リング電極とリードワイヤとの間に低オーム圧力接触の電気的接続を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-48587(P2014-48587)
(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-176653(P2014-176653A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2017年1月31日
(31)【優先権主張番号】13/802,259
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ブイ・セルキー
【審査官】
近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0228202(US,A1)
【文献】
米国特許第05458629(US,A)
【文献】
特開2010−063886(JP,A)
【文献】
特開昭61−272060(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/005898(WO,A2)
【文献】
米国特許第04592372(US,A)
【文献】
米国特許第04444195(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割リング電極をカテーテルの管材に取り付けるための方法であって、
管材を提供することであって、前記管材が、少なくとも1つのルーメンと、側壁と、前記少なくとも1つのルーメンと前記管材の外側との間の連通をもたらす前記側壁内の少なくとも1つの開口部と、を有する、ことと、
電極リードワイヤを前記少なくとも1つのルーメンを通して前記少なくとも1つの開口部から出るように通過させて、前記電極リードワイヤの遠位部分を露出させることと、
前記電極リードワイヤの前記遠位部分を前記管材の外側表面上に配置させることと、
分割リング電極を前記管材の前記外側表面上に装着させ、前記開口部及び前記電極リードワイヤの遠位部分を覆うことと、
電導性接着剤をフィルムの状態で前記リング電極と前記管材の前記外側表面との間に提供することと、
前記電導性接着剤のフィルムを加熱してリフローさせることと、
を含む方法。
【請求項2】
電導性接着剤をフィルムの状態で提供することが、前記管材の前記外側表面上への装着前に、前記電導性接着剤のフィルムを前記分割リング電極の内側表面に適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リング電極が、プラチナ合金を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プラチナ合金が、プラチナと、イリジウム、パラジウム及び銅からなる群から選択される少なくとも1つと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プラチナ合金が、約90%のプラチナを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのリードワイヤが、ステンレススチール、銅及び/又はニッケル合金を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのリードワイヤが、銀のコーティングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記銀のコーティングが、約20マイクロメートル〜30マイクロメートルの範囲の厚さを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リードワイヤが、約0.051mm(約0.002インチ)〜0.127mm(0.005インチ)の範囲の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電極リードワイヤの前記遠位部分を、前記管材の外側表面上に配置させることが、前記遠位部分を前記管材の前記外側表面の周囲に巻き付けることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記電導性接着剤が、電導性相転移熱結合接着剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記分割リング電極が、約1.0mm〜3.0mmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記分割リング電極が、金又はパラジウムのコーティングを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分割リング電極上の前記コーティングが、約10マイクロメートル〜40マイクロメートルの範囲の厚さを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
分割リング電極を前記管材の前記外側表面上に装着させることが、前記分割リング電極を前記管材の前記外側表面上に半径方向に圧縮させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
分割リング電極を前記管材の前記外側表面上に装着させることが、前記分割リング電極を前記管材の前記外側表面上に半径方向に圧縮させることと、前記電導性接着剤を加熱することとを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気生理学カ的カテーテルに関し、特に、リング電極を電気生理学的カテーテルシャフトの先端部に取り付けるための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気生理学的カテーテルは、長年にわたって医療行為に一般的に使用されている。電気生理学的カテーテルは心臓内の電気的活動をマッピング及び刺激し、異常な電気的活動が見られる部位を除去するために用いられる。電気生理学的カテーテルを構成する際に使用される様々なタイプの電極の1つがリング電極である。これらは、先端部の長さに沿って種々の間隔で配置される金属リングである。リング電極は、カテーテルのルーメンを通って延びる電極リードワイヤを介して、電気計測器、例えばアブレーションのための監視装置、刺激装置又はエネルギー、例えば高周波エネルギーの供給源に、電気的に接続される。
【0003】
電極リードワイヤとリング電極との間の電気的接続を作製するための従来の方法は、ルーメンからカテーテル先端のシャフトの側面まで延びる脱出孔を通して、先端部においてルーメンから電気リードワイヤを引っ張ることである。次いで、いずれの非導電性コーティングも除去された、電極リードワイヤの遠位端が、リング電極の内側表面に熔接されるか又ははんだ付けされる。次いで、電極リードワイヤをルーメンに向かって引き戻すと同時に、リング電極を脱出孔の真上の位置まで直接先端シャフトの上を滑らせる。次いで、例えば、圧伸によって、又は適切な接着剤の
適用によって、リング電極が定位置に固定される。リング電極の外周面とカテーテルシャフトの外周面との間の滑らかな移行を確実にするために、多くの場合、樹脂、例えばポリウレタン樹脂がリング電極のへり又は縁部に
適用される。
【0004】
リング電極をカテーテルに装着させるための従来の方法は、ある種の欠点を有する。例えば、リングを先端部のシャフトの上を滑らせると同時に、電極リードワイヤがカテーテル先端部のルーメンに引き戻されねばならず、リング電極が脱出孔の上に圧伸され又は固定される前に、脱出孔は、封止されずかつ視覚的に点検されることができない。更に、リング電極の最終位置までシャフト上を滑らせるために、リング電極は、カテーテル先端部のシャフトのものよりも十分に大きな直径を有さねばならない。その直径を減らすために先端部のシャフトを延伸させることは、緊密に嵌合するリング電極の使用を可能にする1つの技術である。しかしながら、この技術は、操縦者に依存的であり、シャフト上のリング電極の配置における一貫性のない品質に繋がりやすい。更に、従来の方法によって装着されるリング電極は、先端部のシャフトから「引き剥がされる」傾向があり、すなわちリング電極の端部は、先端部の急激な曲げの間に、カテーテル先端シャフトから曲線の外側に沿って分離し易い。
【0005】
その他の方法として、レーザー溶接、例えば、リードワイヤに対してレーザー溶接された低オームの電気的接触を生み出すためのリング電極を通してのレーザー融解が挙げられる。しかしながら、レーザー溶接は、溶接中のリング電極下のリードワイヤの正確な位置決めに依存する。リング電極の従来の抵抗溶接と同様に、レーザー溶接は、不適切な作業方法のために電気的欠陥を起こしやすい、手作業の大きな労働力を要しかつ時間を費やす操作である。その上、カテーテル管材は、リードワイヤをルーメンから管材の外側まで通すための穴があけられるために、この穴は、管材上へのリングの配置後に、流体漏れがないよう作製されねばならない。
【0006】
別の方法は、米国特許公開第2005/0097737 A1号に開示される。この中に、フレア形状のスカート部を有するリング電極がその内径及び外径を減らすために圧伸されることで、これが先端シャフトに緊密に固定され、下に重なる電極リードワイヤとの十分な圧力接点をつくり、低オーミック接続をもたらす。このプロセスは、リング抵抗溶接を排除してはいるが、低オーミック接続は、管材のエラストマー材の応力緩和の傾向性のために、長期にわたり不安定な場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら及びその他の理由のために、低コストで、より有効であり、並びに上述した欠点及び従来の方法の不利点を有さない、カテーテル先端部のシャフトにリング電極を取り付けるための方法を見出す必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、リング電極をカテーテル先端部の管材に取り付けるための方法を提供する。その方法は、管材を提供することであって、少なくとも1つのルーメンと、側壁と、ルーメンと管材の外側との間の連通をもたらす側壁内の少なくとも1つの開口部と、を有することを含む。電極リードワイヤは、ルーメンを通して開口部から出るように通過させて、電極リードワイヤの遠位部分を露出し、これが管材の外側表面に配置され又はその周りに巻き付けられる。分割リング電極は、電導性接着剤が、リング電極と管材の外側表面との間に提供された状態で、管材の外側表面上に置かれ、開口部とリードワイヤの遠位部分とを覆う。
【0009】
一実施形態では、電導性の熱可塑性エラストマー系接着剤が、管材の外側表面上への装着の前に分割リング電極の内側表面に
フィルムとして
適用される。
【0010】
別の実施形態では、電導性接着剤は、分割リング電極を装着する前に、管材の外側表面上に
適用され、開口部とリードワイヤの遠位部分の少なくとも一部とを覆う。
【0011】
詳細な実施形態において、リング電極は、プラチナ合金、例えばプラチナと、イリジウム、パラジウム及び銅からなる群からの少なくとも1つと、を含む合金を含む。より詳細な実施形態では、プラチナ合金は、約90%のプラチナを含む。
【0012】
詳細な実施形態では、リードワイヤは、ステンレススチール、銅及び/又はニッケル合金を含む。リードワイヤは、銀のコーティング、例えば約20マイクロメートル〜30マイクロメートルの範囲の厚さを有する銀フラッシュコーティングを含むことができる。リードワイヤは、約0.051mm(0.002インチ)〜0.127mm(0.005インチ)の、好ましくは約0.051mm(0.002インチ)〜0.0076mm(0.003インチ)の範囲の直径を有することができる。
【0013】
電極リードワイヤの遠位部分は、管材の外側表面上に遠位方向に約2回転巻かれることができる。
【0014】
詳細な実施形態では、電導性接着剤は、電導性相転移熱結合接着剤を含み、本発明の方法は、リフローさせるために電導性接着剤を加熱することを含む。
【0015】
詳細な実施形態では、分割リング電極は、約1.0mm〜3.0mmの幅及び0.025〜0.076mm(0.001〜0.003インチ)の厚さを有する。分割リング電極は、酸化を防止するための金、プラチナ又はパラジウムの外側コーティングを有する、低コストの銅又は真鍮260系材料から構成され得る。コーティングの厚さは、約10マイクロメートル〜50マイクロメートルの範囲、好ましくは約20マイクロメートル〜40マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0016】
本発明の方法は、分割リング電極を管材の外側表面上に半径方向に圧縮するために用いられる、第1及び第2の熱成形ダイ部材を有する分割ダイ組立品を使用することを含むことができる。半径方向の圧縮の間に熱が加えられ、電導性相転移熱結合接着剤を融解し、これによって接着剤が管材表面とリードワイヤとの双方に結合する。
【0017】
本発明の方法は、以下を含める多くの利点を提供する:
1)高度に伝導性(電気的に)の銀メッキ外側コーティングのために、単位長当たりのワイヤ抵抗が減少するために、非常に小さい引張り強度のリードワイヤが使用され得ることである。このことは、ルーメン固定断面積当たりのより多くのリードワイヤの取り付けを可能にする。したがって、より高い密度の電極及び/又はより小さな先端フレンチサイズが、このデザインで利用され得る。
2)銀がリードワイヤ上で又はコーティング内で酸化した場合に関係なく、電導性接着剤中及びステンレススチール、銅又はニッケル合金リードワイヤ上の銀フラッシュコーティング中の微小銀粒子が、可撓性の低オーミック電気的接続を生み出すことである。接着剤はエラストマーであるので、これは先端部管材と同様に可撓性のままである。カテーテル先端部が偏向される場合、エラストマー系接着剤境界面と先端材料と分割リング電極との間で応力が蓄積されない。
3)熱結合接着剤の独自の特性は、容易に再加工されるその性能である。接着剤をその相転移温度(約121℃(250°F))を過ぎて単に加熱することが、装着された分割リング電極が取り外され又は交換されることを可能にする。接着剤は、必要に応じて、複数回の再加工/修復を可能にして、何回もその相転移温度を過ぎて加熱されることができる。分割リング電極接続に失敗したカテーテルは、廃棄されることなく、修復され得る。
4)複数のホットメルト接着剤は、コーティングされた分割リング電極が、1つの工程の50秒の熱接着プロセスにおいて装着され得る。フルリング電極を引っかけて、管材上の定位置に滑動させる必要性が排除される。
5)本発明の方法が、高密度リング電極カテーテルの製造を容易にすることであり、カテーテルのフレンチサイズを低減するために、電導性銀でメッキすることによって、リードワイヤ直径が最小化される。銀は、酸化された場合でも、最も電導性の元素の1つである。したがって、低電導性ワイヤの外側への銀メッキの付加は、単位長当たりのワイヤの抵抗を大きく低減する。
6)接着剤結合を最適化するために、電導性熱結合接着剤のリフロー温度が、管材の配合組成及び材料溶解温度に応じて調整されることができ、リング電極が管材の外側表面とぴったり重なるように、管材内に部分的に埋め込まれたリング電極を提供することができる。
7)分割リング電極が、材料の大きなシートからダイカットされ得、したがって、これらは、フルリング電極を製造するよりも経済的である。
8)熱結合接着剤及び管材材料が、双方ともに類似の機械的特性を有するエラストマーである。加熱及び冷却サイクルの間に、両者は類似の膨張率を有するので、同程度に伸張及び収縮し、したがって、一定の低オームの電気的接続を維持する。
9)熱結合接着剤のリフロープロセスが、各分割リング電極をリードワイヤ脱出孔において自己密着させる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明のこれらの及び他の特徴及び利点は、添付図面と合わせて考慮するとき、以下の詳細な説明を参照することにより、より十分に理解されるであろう。
【
図1】本発明の実施形態による、脱出孔を有するカテーテル先端部の一部分と、脱出孔から延在する電極リードワイヤと、分割リング電極と、の側面拡大図である。
【
図2A】本発明の実施形態による、部分的に剥離された状態の、装着された分割リング電極を有するカテーテル先端部の側面図である。
【
図2B】パーツが剥離されていない、
図2Aのカテーテル先端部の側面図である。
【
図2C】線C−Cに沿った、
図2Aのカテーテル先端部の末端断面図である。
【
図2D】本発明の実施形態による、マルチルーメンの管材を有するカテーテル先端部の末端断面図である。
【
図3A】部分的に剥離された状態の、装着された分割リング電極を有する、
図2Aのカテーテル先端部の対向側面図である。
【
図3B】パーツが剥離されない状態の、
図3Aのカテーテル先端部の側面図である。
【
図4】装着前の初期形態における分割リング電極の斜視図である。
【
図5】本発明の特徴による、カテーテル先端部の一実施形態での使用におけるダイ組立品の概略斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態による、接着剤をカテーテル先端部に適用する供給ニードルの概略斜視図である。
【
図7】分割リング電極の装着用に調製された
図6のカテーテル先端部の側面図である。
【
図8】本発明によるカテーテル先端部の別の実施形態での使用におけるダイ組立品の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によると、電導性相転移熱結合接着剤を含める電導性接着剤を使用して、低オーム接続を電極リードワイヤに作製するために、分割リング電極をカテーテルシャフトに取り付けるための改善された方法が提供される。この方法は、任意のサイズのカテーテルに適用可能であり、分割電極が取り付けられる本体が、概ね円形の断面を有し、電極リードワイヤの通路のためにそれを通る少なくとも1つのルーメンを有することが必要とされるにすぎない。
【0020】
方法は、先ず初めに、先端部の少なくとも一部を通して長手方向に延在する少なくとも1つのルーメンを有するカテーテルの遠位先端部を提供することを含む。先端部は、一体式の細長いカテーテル本体の遠位部分であってもよく、又は当該技術分野で周知であるような、カテーテル本体の遠位端に取り付けられる別個の構造であってもよい。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,171,277号を参照されたい。カテーテル本体及び先端部は、電気生理学的カテーテルの構成における使用に適した任意の材料から作製され得る。ポリウレタンは、好適な材料の例である。
【0021】
図1及び
図2A〜
図2Cを参照すると、遠位先端部の管材又はシャフト10は、ルーメン12と、ルーメン12と管材10の外側面との間で延びる小さな脱出孔14と、を備える。脱出孔14のサイズは重要ではなく、例えば、ニードルを管材10の壁部を通して挿入し、恒久的な孔を形成するのに十分なほどにニードルを加熱することによって形成され得る。かかる脱出孔は、電極リードワイヤ16が、例えばマイクロフック等によって、孔を通して引っ張られることを可能にするのに十分なほど大きく、容易に封止されるために更に十分に小さい。
【0022】
電極リードワイヤ16は、先端部10のルーメン12を通して脱出孔14から出るように引っ張られる。脱出孔14から延びる電極リードワイヤ16の長さは重要ではないが、電極リードワイヤ16を先端部10の管材10の周りに所望の巻数(複数可)で巻き付けさせるのに十分である。電極リードワイヤ16は、任意の好適な、好ましくは非酸化材料から作製されてもよく、任意の好適な直径を有してもよい。一実施形態では、電極リードワイヤは、ステンレススチール、銅及び/又はニッケル合金(例えば、約67%までのニッケルを含み、残部が銅、鉄及び/又はその他の微量元素を有するニッケル合金)の約0.051mm(0.002インチ)の直径のワイヤである。好適なニッケル合金は、ニューヨーク州ニューハートフォードのSpecial Metals Corporationから入手可能な、ニッケル及び銅の等比率のMONEL 400ニ元合金である。好ましい実施形態では、MONEL 400リードワイヤは、約20マイクロメートル〜30マイクロメートルの範囲の厚さの銀のフラッシュコーティングを有する。
【0023】
脱出孔14から延びる電極リードワイヤの部分は、絶縁材を取り除かれ、管材10の周りに巻かれる。特に好ましいラッピング法を、
図1に示している。この技法では、脱出孔14から延在する電極リードワイヤ16が、管材10の周りで一方向で完全に2回転(この2つの巻きは、遠位方向で進行する)巻かれる。示されるように、電極リードワイヤ16の自由端を、巻結び配置で2回巻きの下を通過させる。ラッピング後に、電極リードワイヤ16の自由端を引っ張り、巻きのいずれの弛みも除去する。リードワイヤ16の遠位端は、リードワイヤの巻きに隣接して刈り込まれる。
【0024】
更に
図3A及び3Bを参照すると、分割リング電極22が提供され、分割リング電極は、これを巻かれた電極リードワイヤ16及び脱出孔14の上の位置に管材10の上を滑動させるために、管材10の外径をわずかに超える内径を有する。例えば、管材10が2.134mm(0.084インチ)の外径を有する場合、2.159mm(0.085インチ)の内径を有するリング電極22が好ましい。
【0025】
図4に示すように、リング電極22は、外側表面24と内側表面26と2つの対向端部27を有する材料25の細長い長四角形の平面的部分から形成される。リング電極は、任意の好適な電導性材料、好ましくは非酸化材料から作製される。1つの好ましい材料は、イリジウム及び/又はパラジウムを含有するプラチナ系合金である。一実施形態では、合金は、約90%のプラチナを含有し、残部はイリジウム及び/又はパラジウムを伴う。合金は、約1.0mm〜3.0mmの範囲の幅を有する。分割リング電極用のベース材料として非貴金属(銅又は真鍮260)が使用される場合、約10マイクロメートル〜40マイクロメートルの範囲の厚さを有する金又はパラジウムのメッキ47が、内側表面24及び外側表面26上に施される。ポリウレタン接着剤は、遠位周囲端部31D及び近位周囲端部31P(
図4)の双方をコーティングかつ封止するよう使用されてもよい。
【0026】
内側表面26上に、リング電極22は、
フィルム形
態28で電導性相転移熱結合接着剤を含める電導性接着剤17のコーティングを有する。好適な接着剤は、Fastel Adhesives(San Clemente,California)から入手可能なFASTELEKである。FASTELEKは、フィルムとして入手可能であり、低抵抗導電率、所望の材料境界面に対する均一な接着及び封着を提供するようデザインされた、電導性のEVA系の溶剤フリー(金属封入)接着剤である。FASTELEKは、多様な封入材(銀、ニッケル又は金)、厚さ及び相転移(融点)温度において利用可能である。FASTELEKは、破壊前に約80〜90のショアA硬度及び150%の引張伸びを備えるエラストマー系接着剤であり、広範囲の金属、プラスチック及びエラストマーに強固に接着するようデザインされている。
【0027】
リング電極22は、リング電極の長さ寸法が管材10の長手方向軸に概ね垂直な状態で、管材10から離れて面する外側表面24及び巻かれたリードワイヤ16に面する熱結合接着剤
フィルム28を有する巻かれたリードワイヤ16の上に配置される。熱及び周囲方向に圧縮する力が加えられ、リング電極22を管材10の周りに巻き、接着し、装着し、かつ電気的に接続する。リング電極22は、巻かれたリードワイヤがリング電極の下で概ね中心に置かれる状態で、巻かれたリードワイヤ16を覆う。管材10上に装着されると、リング電極は、C字形状で分割部又はギャップ29を形成する、管材10の周りで互いに接近する端部27を有するC字型の断面形状を形成する。注目すべきことに、リング電極22は、リードワイヤ16がルーメン12を出る脱出孔14を分割部29が避けるように、管材10上で配向されている。図示した実施形態では、分割部29及び脱出孔14は、互いに正反体にある。
【0028】
加熱の適応によって、熱結合接着剤
フィルム28は、その相転移温度を過ぎて循環する場合、その制御された流動を開始し、リング電極22の下の銀でフラッシュメッキされたリードワイヤ16に接着し、管材10の外側表面に存在し得るいずれかの顕微鏡的表面状態又は不規則性を埋めて調整する。このように、接着剤
フィルム28は、リフローして、リング電極22と孔14を含める管材10の外側表面との間の空隙及びエアギャップを封止し、孔14を封着し、孔14を通してルーメン12に別に侵入し得る汚染物からルーメン12を保護する。接着剤
フィルム28はまた、リング電極22の遠位端31D及び近位端31P上の周囲端部も封止するようにリフローする。接着剤
フィルム28は、ギャップ29内に更に流れ、これによって端部27で横方向縁部を封止する。
【0029】
フィルム28は、接着剤を加熱して、0.0178mm(0.0007インチ)の幅を有する箔の大きなシート上に流し、箔の大きなシートからダイカットすることによって作製されてもよい。分割リング電極22の管10への装着の間に、接着剤
フィルム28は、それを管材及びリードワイヤに取り付けるようリフローするために再加熱される。
【0030】
図2Cで図示するように、本発明により製造された遠位先端部15は、ルーメン12と、それを通してリードワイヤ16がルーメン12からその周りでリードワイヤの遠位部分が巻きつけられる管材の外側表面まで通過する開口部14と、を有する管材10上に装着されたC字形状の分割リング電極22を有する。分割リング22とリードワイヤ16は、管材10の外側表面と、巻かれたリードワイヤ16を覆って、管材10上に装着されているリング電極22との間の熱結合接着剤
フィルム28によって、電気的に接続されている。電気的接続は、抵抗溶接又はレーザー溶接なしに、有利に達成される。結果的に、本発明のもとでの遠位先端部15の製造は、手作業の大きな労働力を要することが少なく、時間を費やすことなく、かつ不適切な技能法に起因する電気的欠陥の可能性も少ない。本発明は、リードワイヤ16が開口部14に連通したルーメン12’を通して延びる、
図2Dに示すようなマルチルーメンの管材10’の使用を包含することが理解される。
【0031】
一旦リング電極22が、巻かれたリードワイヤ16の上に直接配置されると、
図5に示すように、遠位先端部15(及び分割リング電極を保有するカテーテルのその他の部分)は、ダイ組立品30内に配置される。可動式の上方及び下方の半円形状ダイ半部材32のそれぞれは、半円筒状の凹状枠型34を有し、その枠型は遠位先端部15(及び分割リング電極を保有するカテーテルのいずれかのその他の部分)に所望の外径寸法を画定する直径を有する完全な円筒状型枠を一緒に形成する。上方及び下方ダイ部材32のそれぞれは、熱結合接着剤
フィルム28を融解しかつリフローさせるように加熱されることができ、このことが、リフローされた接着剤を、巻かれたリードワイヤ16と、リング電極22と、管材10と、に固着させる。ダイ部材32は、任意の従来の方法によって加熱されてもよく、例えば、これが電気的加熱要素によって加熱されてもよい。これに代えて又は加えて、図示するように、熱気が管又はパイプ36によって供給されてもよい。上述したように、リフローされた接着剤はまた、管材10の外径における顕微鏡的表面状態を埋め、いずれの表面不規則性も調整し、脱出孔14を埋め、そしてリング電極の近位周囲縁部及び遠位周囲縁部を封止する。
【0032】
結果的に、リフローされた接着剤は、分割リング電極22とそれらの対応するリードワイヤ16との間に電導性の低オーム接続を形成する。そのために、リードワイヤ16上の銀コーティングは、リードワイヤ16及び熱結合接着剤の双方がいずれの元素の最高導電率も有する銀を含有する線状単位長当たりのリードワイヤ抵抗を大きく減少させて、リング電極22又は管材10に導入されるいかなる機械的応力もなしに、可撓性の低オーム接続が確立される。本発明により装着された分割リング電極22はまた、MONELリードワイヤを使用する既存のカテーテルと比較して、リング電極22とカテーテル操縦ハンドル16内のコネクターピン(図示せず)との間の約50%まで低減された抵抗の利点も有する。直径が0.076mm(0.003インチ)のMONEL 400ワイヤは、1フィート当たり40オームの抵抗を有し、フラッシュ銀メッキされた直径が0.051mm(0.002インチ)のMONEL 400ワイヤは、1フィート当たり20オームの低減した抵抗を有する。結果的に、本発明は、全てのリング電極が、遠位先端部上に位置することができ、1回の操作でリードワイヤに電気的に接続されることができ、コネクターピンに対するリング電極全体の抵抗を低下させると同時に、フラッシュ銀コーティングを有するMONELリードワイヤがより小さい直径で作製され得るために、非常に経済的で、高密度の電極の製造を容易にする。ルーメンを通して送り込まれるリードワイヤの本数(例えば、1〜50本以上)もまた、増加させることができる。
【0033】
巻かれたリードワイヤに隣接する管材10の局部領域が、遠位先端部15がダイ組立品内に置かれると同時に加熱されることが理解される。管材がポリウレタンである場合、約110〜125℃の温度がまた、管材の材料を軟化させる。この軟化は、巻かれたリードワイヤ上で管材上に装着させるように、ダイ組立品がリング電極の外径を更に最小化させるように、管材の外側表面に、巻かれたリードワイヤを埋め込むことに役立つ。
【0034】
ワイヤの巻きの埋め込みを容易にするために加熱することは好ましいが、これは本発明を実行する上で必須ではない。更に、加熱が用いられる場合、先端部のシャフトのプラスチック材料を軟化させる任意の温度が採用されてもよい。更に、加熱、特に局部的加熱を容易にする任意の技術又は装置が使用されてもよい。
【0035】
本発明による製造の代替法を、
図6〜
図8に図示する。管材10を、上記のとおりに、脱出孔14と管材の外側表面の周囲に巻かれるリードワイヤ16を有するように調製する。次いで、作製された管材を、供給ニードル40の下に配置し、管材10が矢印45に示すように半径方向に回転されると同時に、熱結合接着剤17を管材10の外側表面及び巻かれたリードワイヤ16上に直接供給する。接着剤は、連続的なラインとして、又は個々のビーズ42として
適用されてもよい。供給ニードル40は、接着剤17を融解かつリフローするために、例えば電気的加熱要素によって加熱されるか、又は管又はパイプ36を介して熱気が供給されてもよい。次いで、分割リング電極22(熱結合接着剤フィルムの有無で)が管材10上に装着され、ダイ組立品30によって、
適用された接着剤42及び巻かれたリードワイヤ16を覆う。
【0036】
上記の説明文は、現時点における本発明の好ましい実施形態に基づいて示したものである。当業者であれば、本発明の原理、趣旨及び範囲を大きく逸脱することなく、本願に述べた構造の改変及び変更を実施することが可能であることは認識されるところであろう。例えば、ワイヤ前進制御メカニズムが、制御ハンドルに沿ってどこにでも組み込まれてもよい。上述された回転ノブよりはむしろ直線運動偏向ノブを可能にするために、ユーザーインターフェースが変更されてもよい。ニ方向の偏向が望ましい場合には、当業者に理解されるように、第2のプーラワイヤが提供されてもよい。更に、図面は必ずしも同一尺度ではない。
【0037】
したがって、上述の記載は、記述され以下の添付図に説明された厳密な構造のみに関係付けられるものとして読解されるべきではなく、むしろ、以下の最も完全で公正な範囲を有するとされる「特許請求の範囲」と一致し、かつそれらを補助するものとして読解されるべきである。
【0038】
〔実施の態様〕
(1) 分割リング電極をカテーテルの管材に取り付けるための方法であって、
管材を提供することであって、前記管材が、少なくとも1つのルーメンと、側壁と、前記少なくとも1つのルーメンと前記管材の外側との間の連通をもたらす前記側壁内の少なくとも1つの開口部と、を有する、ことと、
電極リードワイヤを前記少なくとも1つのルーメンを通して前記少なくとも1つの開口部から出るように通過させて、前記電極リードワイヤの遠位部分を露出させることと、
前記電極リードワイヤの前記遠位部分を前記管材の外側表面上に配置させることと、
分割リング電極を前記管材の前記外側表面上に装着させ、前記開口部及び前記電極リードワイヤの遠位部分を覆うことと、
電導性接着剤を前記リング電極と前記管材の前記外側表面との間に提供することと、
を含む方法。
(2) 電導性接着剤を提供することが、前記管材の前記外側表面上への装着前に、前記電導性接着剤のフィルムを前記分割リング電極の内側表面に
適用することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記リング電極が、プラチナ合金を含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記プラチナ合金が、プラチナと、イリジウム、パラジウム及び銅からなる群から選択される少なくとも1つと、を含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記プラチナ合金が、約90%のプラチナを含む、実施態様3に記載の方法。
【0039】
(6) 前記少なくとも1つのリードワイヤが、ステンレススチール、銅及び/又はニッケル合金を含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記少なくとも1つのリードワイヤが、銀のコーティングを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記銀のコーティングが、約20マイクロメートル〜30マイクロメートルの範囲の厚さを有する、実施態様3に記載の方法。
(9) 前記リードワイヤが、約0.051mm(約0.002インチ)〜0.127mm(0.005インチ)の範囲の直径を有する、実施態様1に記載の方法。
(10) 電導性接着剤を提供することが、前記分割リング電極を装着する前に、前記電導性接着剤を前記電極の前記遠位部分及び前記外側表面の少なくとも一部に
適用することを含む、実施態様1に記載の方法。
【0040】
(11) 前記電導性接着剤が、前記管材の周りの周囲方向に概ね連続的なラインとして
適用される、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記電導性接着剤が、前記管材の周りの周囲方向に個々のビーズとして
適用される、実施態様10に記載の方法。
(13) 前記電極リードワイヤの前記遠位部分を、前記管材の外側表面上に配置させることが、前記遠位部分を前記管材の前記外側表面の周囲に巻き付けることを含む、実施態様1に記載の方法。
(14) 前記電導性接着剤が、電導性相転移熱結合接着剤を含む、実施態様1に記載の方法。
(15) 前記電導性接着剤を加熱してリフローさせることを更に含む、実施態様1に記載の方法。
【0041】
(16) 前記分割リング電極が、約1.0mm〜3.0mmの範囲の厚さを有する、実施態様1に記載の方法。
(17) 前記分割リング電極が、金又はパラジウムのコーティングを有する、実施態様1に記載の方法。
(18) 前記分割リング電極上の前記コーティングが、約10マイクロメートル〜40マイクロメートルの範囲の厚さを有する、実施態様17に記載の方法。
(19) 分割リング電極を前記管材の前記外側表面上に装着させることが、前記分割リング電極を前記管材の前記外側表面上に半径方向に圧縮させることを含む、実施態様1に記載の方法。
(20) 分割リング電極を前記管材の前記外側表面上に装着させることが、前記分割リング電極を前記管材の前記外側表面上に半径方向に圧縮させることと、前記電導性接着剤を加熱することとを含む、実施態様1に記載の方法。