特許第6338959号(P6338959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6338959熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物、改質熱可塑性高分子フィルムの製造方法及び改質熱可塑性高分子フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338959
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物、改質熱可塑性高分子フィルムの製造方法及び改質熱可塑性高分子フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20180528BHJP
   A01G 9/14 20060101ALI20180528BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20180528BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   C09K3/00 R
   A01G9/14 S
   C08J7/04 SCER
   C08J7/04CEZ
   B32B27/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-152759(P2014-152759)
(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-30775(P2016-30775A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100458
【氏名又は名称】みかど化工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100081798
【弁理士】
【氏名又は名称】入山 宏正
(72)【発明者】
【氏名】元吉 一浩
(72)【発明者】
【氏名】亀井 利也
(72)【発明者】
【氏名】山田 享弘
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−174750(JP,A)
【文献】 特開2008−067645(JP,A)
【文献】 特開平08−176466(JP,A)
【文献】 特開昭60−096682(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/106663(WO,A1)
【文献】 実開平02−138545(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C09K 3/18
A01G 9/14
B32B
C08J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の改質無機カチオンコロイドゾルを固形分換算で100質量部に対し、アニオン界面活性剤を3〜11質量部及び下記の(ポリ)グリセリンを45〜360質量部の割合で含有して成ることを特徴とする熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物。
改質無機カチオンコロイドゾル:下記の無機カチオンコロイドゾルの存在下に、該無機カチオンコロイドゾルの固形分100質量部当たり5〜15質量部の割合となる量のシラノール形成性有機シラン化合物を加水分解処理し、更に生成したシラノール化合物を縮合重合させた改質無機カチオンコロイドゾル。
無機カチオンコロイドゾル:カチオンアルミナゾルを固形分換算で20〜90質量%及びカチオンシリカゾルを固形分換算で10〜80質量%(固形分換算で合計100質量%)の割合で含有して成る無機カチオンコロイドゾル。
(ポリ)グリセリン:グリセン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン及びデカグリセリンから選ばれるもの。
【請求項2】
(ポリ)グリセリンが、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン及びヘキサグリセリンから選ばれるものである請求項1記載の熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物。
【請求項3】
アニオン界面活性剤が、モノカルボン酸の塩、モノスルホン酸の塩及びモノホスホン酸の塩から選ばれるものである請求項1又は2記載の熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物。
【請求項4】
下記の第1工程及び下記の第2工程を経ることを特徴とする改質熱可塑性高分子フィルムの製造方法。
第1工程:熱可塑性高分子フィルムにコロナ放電処理をして、コロナ放電処理面のぬれ張力を35〜70mN/mにする工程
第2工程:第1工程で得た熱可塑性高分子フィルムのコロナ放電処理面に対し、請求項1〜3のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物を固形分として0.1〜2.0g/mとなるよう塗布する工程
【請求項5】
請求項4記載の製造方法により得られる改質熱可塑性高分子フィルム。
【請求項6】
農業用被覆フィルムである請求項5記載の改質熱可塑性高分子フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製膜時や展張時の摩擦による流滴性能の低下がなく、それを塗布したフィルムを農業用ハウスに展張した後も長期間にわたって良好な流滴性を発揮する熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物、かかる組成物を使用する改質熱可塑性高分子フィルムの製造方法及びかかる製造方法によって得られる改質熱可塑性高分子フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記のような熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物として、水酸基含有ビニル単量体を主成分とした共重合体と炭素数1〜8の脂肪族アルコールに分散させたコロイド状シリカと界面活性剤と炭素数1〜8の脂肪族アルコールとを配合したもの(例えば、特許文献1参照)、アルミナゾルと粒子表面が正電化を有する酸性シリカゾルと水溶性又は水分散性の有機アニオン性化合物とを含有し、表面張力を調整したもの(例えば、特許文献2参照)、金属の酸化物コロイド又は水酸化物コロイドを用いたもの(例えば、特許文献3参照)、親水性無機コロイドと紫外線硬化樹脂と紫外線重合開始剤とを用いたもの(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。しかし、これら従来の熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物には、それを塗布した熱可塑性高分子フィルムの製膜時や展張時に、摩擦により流滴性能が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−015473号公報
【特許文献2】特開昭62−062884号公報
【特許文献3】特開平09−174750号公報
【特許文献4】特開2000−154373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、製膜時や展張時の摩擦による流滴性能の低下がなく、それを塗布したフィルムを農業用ハウスに展張した後も長期間にわたって良好な流滴性を発揮する熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物、かかる組成物を使用する改質熱可塑性高分子フィルムの製造方法及びかかる製造方法によって得られる改質熱可塑性高分子フィルムを提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物としては、特定の改質無機カチオンコロイドゾルと、アニオン界面活性剤と、特定の(ポリ)グリセリンとを特定割合で含有して成るものが正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記の改質無機カチオンコロイドゾルを固形分換算で100質量部に対し、アニオン界面活性剤を3〜11質量部及び下記の(ポリ)グリセリンを45〜360質量部の割合で含有して成ることを特徴とする熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物に係る。また本発明は、かかる熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物を用いる改質熱可塑性高分子フィルムの製造方法及びかかる製造方法によって得られる改質熱可塑性高分子フィルムに係る。
【0007】
改質無機カチオンコロイドゾル:下記の無機カチオンコロイドゾルの存在下に、該無機カチオンコロイドゾルの固形分100質量部当たり5〜15質量部の割合となる量のシラノール形成性有機シラン化合物を加水分解処理し、更に生成したシラノール化合物を縮合重合させた改質無機カチオンコロイドゾル。
【0008】
無機カチオンコロイドゾル:カチオンアルミナゾルを固形分換算で20〜90質量%及びカチオンシリカゾルを固形分換算で10〜80質量%(固形分換算で合計100質量%)の割合で含有して成る無機カチオンコロイドゾル。
【0009】
(ポリ)グリセリン:グリセン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン及びデカグリセリンから選ばれるもの
【0010】
先ず、本発明に係る熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物(以下、本発明の組成物という)について説明する。本発明の組成物は、特定の改質無機カチオンコロイドゾルを固形分換算で100質量部に対し、アニオン界面活性剤を3〜11質量部及び特定の(ポリ)グリセリンを45〜360質量部の割合で含有して成るものであるが、該無機カチオンコロイドゾルを固形分換算で100質量部に対し、アニオン界面活性剤を5〜10質量部及び(ポリ)グリセリンを70〜200質量部の割合で含有して成るものが好ましい。
【0011】
本発明の組成物に供する改質無機カチオンコロイドゾルは、特定の無機カチオンコロイドゾルの存在下に、該無機カチオンコロイドゾルの固形分100質量部当たり5〜15質量部、好ましくは7〜12質量部の割合となる量のシラノール形成性有機シラン化合物を加水分解処理し、更に生成したシラノール化合物を縮合重合させたものである。
【0012】
前記の改質無機カチオンコロイドゾルの調製に用いる無機カチオンコロイドゾルは、カチオンアルミナゾルを固形分換算で20〜90質量%及びカチオンシリカゾルを固形分換算で10〜80質量%(固形分換算で合計100質量%)の割合で含有して成るものであるが、カチオンアルミナゾルを固形分換算で50〜80質量%及びカチオンシリカゾルを固形分換算で20〜50質量%(固形分換算で合計100質量%)の割合で含有してなるものが好ましい。
【0013】
カチオンアルミナゾルは、いわゆるコロイダルアルミナであり、水分散液として市販されているものをそのまま使用することができる。そのような市販品として例えば、アルミナゾル100、アルミナゾル200、アルミナゾル520(以上、いずれも日産化学社製の商品名)、カタロイドAS−1、カタロイドAS−2(以上、いずれも日揮触媒化成社製の商品名)等が挙げられる。
【0014】
カチオンシリカゾルも、水分散液として市販されているものをそのまま使用することができる。そのような市販品としては例えば、スノーテックスAK、スノーテックスAK−L(以上、いずれも日産化学社製の商品名)等が挙げられる。
【0015】
また前記の改質無機カチオンコロイドゾルの調製に用いるシラノール形成性有機シラン化合物としては、1)メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類やシリルハライド類、2)ジメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類やシリルハライド類、3)トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン等のモノアルコキシシラン類やシリルハライド類等が挙げられる。なかでもシラノール形成性有機シラン化合物としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが好ましい。
【0016】
本発明の組成物に供するアニオン界面活性剤としては、1)酢酸、酪酸、オクタン酸、ヘキサン酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、オレイン酸等の脂肪族カルボン酸や、安息香酸、p−トルイン酸等の芳香族カルボン酸等、これらのカルボン酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の塩、2)メタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸等のアルキルスルホン酸や、ジイソブチルスルホコハク酸、ジオクチルスルホコハク酸等のエステル基を有するスルホン酸、更にはp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸等、これらのスルホン酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の塩、3)イソプロピル硫酸、オクチル硫酸、ラウリル硫酸等の硫酸エステルのアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の塩、4)ブチルホスホン酸、ラウリルホスホン酸等のリン酸エステルのアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の塩が挙げられるが、なかでもオクタン酸、ヘキサン酸等のモノカルボン酸の塩、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のモノスルホン酸の塩及びブチルホスホン酸、ラウリルホスホン酸等のモノホスホン酸の塩から選ばれるものが好ましい。
【0017】
本発明の組成物に供する(ポリ)グリセリンは、グリセン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン及びデカグリセリンから選ばれるものであるが、なかでもグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン及びヘキサグリセリンから選ばれるものが好ましい。
【0018】
次に本発明に係る改質熱可塑性高分子フィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法という)について説明する。本発明の製造方法は、下記の第1工程及び下記の第2工程を経る製造方法である。
【0019】
第1工程:熱可塑性高分子フィルムにコロナ放電処理をして、コロナ放電処理面のぬれ張力を35〜70mN/mにする工程
【0020】
第2工程:第1工程で得た熱可塑性高分子フィルムのコロナ放電処理面に対し、前記した本発明の組成物を固形分として0.1〜2.0g/mとなるよう塗布する工程
【0021】
本発明の製造方法に供する熱可塑性高分子フィルムとしては、1)ポリオレフィン系樹脂、2)ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−メチルメタクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、3)ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート等のポリエステル系樹脂等、農業用フィルムとして用いられている熱可塑性樹脂全般が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィンの単独重合、α−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体が挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、通常使用される酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、防霧剤、保温剤、顔料等を必要に応じて含有することができる。これらの樹脂をフィルムに成形する方法としては、特に制限はなく、例えば、インフレーション成形法、Tダイ成形法等が挙げられる。成形に際して用いる樹脂は複数種類の樹脂をブレンドしてもよい。またフィルムは単層でも多層でもよく、目的に応じ、組み合わせて成形したフィルムを用いることができる。
【0022】
本発明の製造方法において、第1工程は、熱可塑性高分子フィルムにコロナ放電処理をして、コロナ放電処理面のぬれ張力を35〜70mN/mにする工程であるが、なかでもコロナ放電処理面のぬれ張力を38〜67mN/mにすることが好ましい。本発明において、ぬれ張力は、JIS−K6768の記載に準じて測定される値である。
【0023】
また第2工程は、第1工程で得た熱可塑性高分子フィルムのコロナ放電処理面に対し、前記した本発明の組成物を固形分として0.1〜2.0g/mとなるよう塗布する工程である。本発明の組成物を熱可塑性高分子フィルムに塗布するには、公知の塗布法を用いることができる。これには例えば、スプレーコート法、浸漬コート法、ロールコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、エアナイフコート法等が挙げられる。
【0024】
最後に本発明に係る改質熱可塑性高分子フィルム(以下、本発明のフィルムという)について説明する。本発明のフィルムは、本発明の製造方法により得られる改質熱可塑性高分子フィルムである。かかる改質熱可塑性フィルムは、特に農業用ハウスに展張するフィルムとして有用である。
【発明の効果】
【0025】
以上説明した本発明によると、製膜時や展張時の摩擦による流滴性能の低下がなく、本発明のフィルムを農業用ハウスに展張した後も長期間にわたって良好な流滴性を発揮するという効果がある。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0027】
試験区分1(熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物の調製)
・実施例1(熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物(P−1)の調製)
水61.4部、カチオンアルミナゾル(X1−1)341.5部(固形分換算で70部)、カチオンシリカゾル(X2−1)130.4部(固形分換算で30部)、及びシラノール形成性有機シラン化合物(Y−1)10部を混合して固形分濃度20%の混合液を調製し、50℃で5時間撹拌して加水分解処理し、更に縮合重合させて改質無機カチオンコロイドゾル(A−1)を得た。次いで、この改質無機カチオンコロイドゾル(A−1)の固形分換算で100部に水9204部、アニオン界面活性剤(B−1)6部及び(ポリ)ジグリセリン(C−1)90部を加えて撹拌し、固形分濃度2%の熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物(P−1)を得た。
【0028】
・実施例2〜27及び比較例1〜17(熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物(P−2)〜(P−27)及び(RP−1)〜(RP−17)の調製)
実施例1の熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物(P−1)の調製と同様にして、改質無機カチオンコロイドゾル(A−2)〜(A−17)及び(RA−1)〜(RA−9)を調製し、更に熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物(P−2)〜(P−27)及び(RP−1)〜(RP−17)を得た。以上の各例で調製した改質無機カチオンコロイドゾルの内容を表1及び表2にまとめて示し、また以上の各例で得た熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物の内容を表3及び表4にまとめて示した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表1及び表2において、
X1−1:カチオンアルミナゾル(日産化学工業製の商品名アルミナゾル520)
X1−2:カチオンアルミナゾル(日産化学工業製の商品名アルミナゾル200)
X1−3:カチオンアルミナゾル(日揮触媒化成製の商品名カタロイドAS−1)
RX1−4:フュームドシリカ(日本アエロジル製の商品名アルミニウムオキサイドC)
X2−1:カチオンシリカゾル(日産化学工業製の商品名スノーテックスAK)
RX2−2:アニオンシリカゾル(日産化学工業製の商品名スノーテックス30)
Y−1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
Y−2:γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン
Y−3:メチルトリエトキシシラン
【0032】
【表3】









【0033】
【表4】
【0034】
表3及び表4において、
A−1〜A−17,RA−1〜RA−9:表1及び表2に記載の改質無機カチオンコロイドゾル
B−1:オクタン酸Na
B−2:p−トルエンスルホン酸Na
B−3:ヘキサン酸Na
RB−4:ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド
C−1:ジグリセリン
C−2:トリグリセリン
C−3:テトラグリセリン
C−4:ヘキサグリセリン
C−5:モノグリセリン
C−6:デカグリセリン
RC−7:メタノール
【0035】
試験区分2(改質熱可塑性高分子フィルムの製造)
・実施例28
エチレン・1−ブテン共重合体(エチレン共重合比率96%、密度0.930g/cm、MFR1.0g/10分)を、直径75mmでリップ間隙3mmのダイを取り付けたインフレーション成形機に供し、樹脂押し出し温度200℃及びBUR=1.8の条件下でインフレーション成形を行ない、厚さ150μmのオレフィン重合体フィルムを作製した。次いで、このオレフィン重合体フィルムにコロナ処理放電を施し、コロナ放電処理面のぬれ張力を42mN/mとした後、かかるコロナ放電処理面に試験区分1で調製した熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物を固形分として0.3g/mとなるようグラビアコート法により塗布し、70℃に温調した温風乾燥炉に1分間滞留させて、改質熱可塑性高分子フィルムを得た。
【0036】
・実施例29〜55及び比較例18〜35
実施例28の改質熱可塑性高分子フィルムの製造と同様にして、実施例29〜55及び比較例18〜35の改質熱可塑性高分子フィルムを製造した。以上の各例で製造した改質熱可塑性高分子フィルムの内容を表5及び表6にまとめて示した。
【0037】
試験区分3(改質熱可塑性高分子フィルムの評価)
・流滴性の評価
試験区分2で製造した各改質熱可塑性高分子フィルムを、ハウスの内温30℃でハウスの外温10℃に調節した15度の傾斜面を有するテストハウスに1m張り、1日後及び30日後に水滴付着状況を観察し、水滴防止効果すなわち流滴性を以下の基準で評価した。結果を表5及び表6にまとめて示した。
【0038】
流滴性の評価基準
5:水滴の付着無し
4:水滴の付着面積が10%未満
3:水滴の付着面積が10%以上〜50%未満
2:水滴の付着面積が50%以上〜80%未満
1:水滴の付着面積が80%以上
【0039】
・耐擦傷性の評価
摩擦試験機(学振型染色堅牢度試験機、大栄科学精機製作所社製)のアームの摩擦面にビニールテープを貼って300gの荷重をかけ、試験区分2で製造した各改質熱可塑性高分子フィルムの塗布面100cmに10往復摩擦させた後、摩擦させた部分に湯気を当て、水滴が付着して生じる曇部分により、塗膜の剥離程度を観察し、塗膜の耐剥離強度すなわち耐擦傷性を以下の基準で評価した。結果を表5及び表6にまとめて示した。
【0040】
耐擦傷性の評価基準
5:塗膜の剥がれ無し
4:塗膜の剥がれ面積が10%未満
3:塗膜の剥がれ面積が10%以上〜50%未満
2:塗膜の剥がれ面積が50%以上〜80%未満
1:塗膜の剥がれ面積が80%以上
【0041】
・液安定性の評価
試験区分1で調製した熱可塑性高分子フィルムコーティング用組成物を、密閉容器中にて、室温20℃で静置保管した際の分離の状況を観察し、分離するまでの時間により以下の基準で評価した。結果を表5及び表6にまとめて示した。
【0042】
液安定性の評価基準
5:24時間以上分離無し
4:12時間以上〜24時間未満分離無し
3:6時間以上〜12時間未満分離無し
2:2時間以上〜6時間未満分離無し
1:2時間未満に分離



【0043】
【表5】
















【0044】
【表6】
【0045】
表5及び表6の結果からも明らかなように、本発明の組成物を塗布すると、製膜時や展張時の摩擦による流滴性能の低下がなく、製造したフィルムを農業用ハウスに展張した後も長期間にわたって良好な流滴性を発揮することが解る。