特許第6338974号(P6338974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338974
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】バッテリシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20180528BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20180528BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   H01M2/10 S
   H01M2/34 B
   H01M2/10 E
   H01M2/30 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-172322(P2014-172322)
(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公開番号】特開2016-46233(P2016-46233A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2016年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】小村 哲司
(72)【発明者】
【氏名】関 日出海
(72)【発明者】
【氏名】磯辺 武揚
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−182944(JP,A)
【文献】 特開2014−010983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/30
H01M 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の角形電池を厚さ方向に積層してなる電池ブロックと、
前記電池ブロックの両端部に配置される導電性のエンドプレートと、
前記電池ブロックの両側面に配置され、前記エンドプレートに連結される導電性の拘束材と、
前記エンドプレートと前記電池ブロックとを絶縁する端面スペーサとを備え、
前記エンドプレートは、
前記拘束材に対向する側面から突出する凸部と、
前記拘束材に対向する側面に形成され、前記凸部に隣接して設けられる段部と、を有し、
前記凸部は、前記拘束材を前記段部から離して配置させると共に、該段部と前記拘束材との間に空間を形成し、
前記端面スペーサは、
前記エンドプレートと前記電池ブロックの間に位置するプレート部と、
前記段部と前記拘束材との間に形成される前記空間に配置され、前記段部に沿って延在する絶縁側壁と、を有し、
前記凸部は、前記段部との高低差が、前記絶縁側壁の厚さよりも大きく形成されており、前記絶縁側壁と前記拘束材との間に空間を形成することを特徴とするバッテリシステム。
【請求項2】
請求項1に記載されるバッテリシステムであって、
前記複数の角形電池は、それぞれ正負の電極端子を設けてなる端子面を有すると共に、該端子面を同一平面に配置して積層され、
前記端面スペーサは、前記角形電池の端子面をカバーする端子面カバー部を前記プレート部に連結して設けてなることを特徴とするバッテリシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載されるバッテリシステムであって、
前記複数の角形電池は、それぞれ正負の電極端子を設けてなる端子面を有すると共に、該端子面を同一平面に配置して積層され、
前記エンドプレートは、前記端子面と平行な面内に配置される外周面を有し、
前記端面スペーサは、前記エンドプレートの外周面をカバーする外周カバー部を前記プレート部に連結して設けてなることを特徴とするバッテリシステム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されるバッテリシステムであって、
前記凸部が、前記エンドプレートの側面の外側端縁に沿って設けられてなることを特徴とするバッテリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の角形電池を厚さ方向に積層してなるバッテリシステムに関し、とくに、電動車両などの電源として最適なバッテリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の角形電池と絶縁性のスペーサを交互に積層して電池ブロックとし、この電池ブロックの両端にエンドプレートを配置して、エンドプレートを拘束材で連結しているバッテリシステムは開発されている(特許文献1参照)。このバッテリシステムは、樹脂で形成されるエンドプレートを備えており、一対のエンドプレートに拘束材を連結して角形電池を拘束している。
【0003】
また、角形電池は、導電性の外装缶に正負の電極板や電解液が充填されるため、外装缶が電位を有する。そのため、拘束材は、電池ブロックから絶縁される必要がある。外装缶が電位を有する構成の場合、外装缶の外周面を熱収縮チューブ等の絶縁層で覆うこともできるが、角形電池が拘束材等に接触すると薄い熱収縮チューブは破損するおそれがある。
【0004】
そのため、特許文献1のバッテリシステムでは、角形電池と拘束材との間に介在する絶縁壁をスペーサに設けている。この構成によると、絶縁壁により角形電池と拘束材とを絶縁できるようになっている。特に、絶縁壁は、角形電池と拘束材との間に介在しているため、拘束材と角形電池の物理的な接触を防止することができる。
【0005】
一方で、絶縁壁は、角形電池に対して気密に覆っているわけではないため、熱収縮チューブ等の絶縁層と併用することもできる。この種の絶縁層は、角形電池の外装缶に密着して設けられるので、結露水等を介したショートを効果的に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−157450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、バッテリシステムは、小型で軽量であることが求められている。例えば、電動車両などの電源として用いる場合、バッテリシステムの重量や寸法が、車体の重量や車内のスペースに影響を与えることになる。特許文献1のバッテリシステムにおいて、エンドプレートには比較的大きな力が加わる。そのため、大きな負荷に対しても破損しないように、厚いエンドプレートを備える必要がある。
【0008】
特許文献1のバッテリシステムの寸法を小さくするためには、エンドプレートを金属で形成することが有用である。エンドプレートを金属で形成すると、材質の強度の違いからエンドプレートを薄くすることができる。また、樹脂製のエンドプレートよりも金属製のエンドプレートのほうが変形しにくいため、エンドプレートの変形による拘束材の変位や、拘束材の変位に伴う拘束材と角形電池との接触等を考慮する必要がない。そのため、絶縁壁の構成を省略することができ、特許文献1の構成よりも拘束材を角形電池に近接させることができる。
【0009】
一方で、エンドプレートを金属で形成した場合、角形電池は、拘束材だけでなく、エンドプレートとの絶縁についても考慮する必要がある。この種のバッテリシステムでは、エンドプレートと角形電池の間に絶縁性の端面スペーサが設けられるが、バッテリシステムの寸法を小さくするためには、端面スペーサの厚さを薄くする必要がある。そのため、エンドプレートと角形電池との絶縁距離が短くなり、結露水等による短絡が生じるおそれがある。特に、正負の電極端子が設けられる端子面は、熱収縮チューブ等の絶縁材を設けることができないため、エンドプレートと角形電池との絶縁距離が短いという問題がある。
【0010】
本発明は、斯かる問題を解決するためになされた発明であり、その主な目的は、エンドプレートと角形電池との絶縁距離を確保しながら、バッテリシステムを小型化することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のバッテリシステムは、複数の角形電池1を厚さ方向に積層してなる電池ブロック2と、電池ブロック2の両端部に配置される導電性のエンドプレート4と、電池ブロック2の両側面に配置され、エンドプレート4に連結される導電性の拘束材5と、エンドプレート4と電池ブロック2とを絶縁する端面スペーサ3とを備える。エンドプレート4は、拘束材5に対向する側面4Aから突出する凸部4Dと、拘束材5に対向する側面4Aに形成され、凸部4Dに隣接して設けられる段部4Cと、を有している。凸部4Dは、拘束材5を段部4Cから離して配置させると共に、この段部4Cと拘束材5との間に空間4Eを形成している。端面スペーサ3は、エンドプレート4と電池ブロック2の間に位置するプレート部3Xと、段部4Cと拘束材5との間に形成される空間4Eに配置され、段部4Cに沿って延在する絶縁側壁3Aとを有している。凸部4Dは、段部4Cとの高低差が、絶縁側壁3Aの厚さよりも大きく形成されており、絶縁側壁3Aと拘束材5との間に空間を形成している。

【発明の効果】
【0012】
本発明のバッテリシステムは、エンドプレート全体の外形を大きくすることなく、拘束材と角形電池との接触を抑制し、さらに、エンドプレートと角形電池との絶縁距離を確保することができる特徴がある。それは、エンドプレートの拘束材と対向する面に、凸部および段部を形成するからである。この構成によると、凸部が拘束材に当接することで、拘束材の角形電池へ近接する方向の変位を規制することができる。加えて、拘束材と段部の間に空間が形成され、形成される空間に端面スペーサの絶縁側壁を配置することで、エンドプレートと角形電池との絶縁距離を確保することができる。つまり、エンドプレートを角形電池の外形とほぼ同一としながら、絶縁距離を確保する絶縁側壁を配置する空間を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態にかかるバッテリシステムの斜視図である。
図2図1に示すバッテリシステムの分解斜視図である。
図3】電池ブロックの積層構造を示す分解斜視図である。
図4】エンドプレートと端面スペーサの積層構造を示す分解斜視図である。
図5】エンドプレートと端面スペーサと背面側から見た分解斜視図である。
図6図5に示す端面スペーサを下側から見た斜視図である。
図7図1に示すバッテリシステムの要部拡大平面図である。
図8図7に示すバッテリシステムのVII−VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのバッテリシステムを例示するものであって、本発明はバッテリシステムを以下のものに特定しない。さらに、本発明は、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0015】
以下の実施例に示すバッテリシステムは、主として、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、モータのみで走行する電気自動車、モータで走行する電動バイクなどの電動車両の電源に最適である。ただし、本発明のバッテリシステムは、電動車両以外の大出力が要求される用途にも使用できる。
【0016】
図1図2のバッテリシステムは、複数の角形電池1を厚さ方向に積層している電池ブロック2と、この電池ブロック2の両端部に配置されて、角形電池1を積層方向に加圧状態で固定している導電性のエンドプレート4と、電池ブロック2の両側面にあって角形電池1の積層方向に延びて両端部をエンドプレート4に連結してなる導電性の拘束材5と、エンドプレート4と電池ブロック2との間に配置している端面スペーサ3とを備える。
【0017】
角形電池1は、図3に示すように、厚さに比べて幅が広い、言い換えると幅よりも薄い二次電池で、厚さ方向に積層されて電池ブロック2としている。角形電池1はリチウムイオン二次電池である。ただし、角形電池1は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等、充電できる全ての二次電池とすることもできる。角形電池1は、密閉構造の外装缶に正負の電極板を入れ、さらに電極板を浸漬するように電解液を充填している。外装缶は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属板を角形にプレス成形され、開口部を封口板で気密に密閉している。封口板は、外装缶と同じアルミニウムやアルミニウム合金で、正負の電極端子13を絶縁状態に固定している。この角形電池1は、封口板を端子面10として正負の電極端子13を設けている。さらに、角形電池1は、熱収縮チューブなどの絶縁層を設けて外装缶の表面を被覆している。熱収縮チューブは、端子面10を除く外周面と底面に密着されて外装缶の表面を絶縁する。
【0018】
角形電池1は、両面に位置する対向面を四角形とする角形の電池で、両面を対向するように積層して電池ブロック2としている。角形電池1は、四角形のひとつの外周面を、正負の電極端子13を設けている端子面10として、端子面10を同一平面に配置して、複数の角形電池1を積層して電池ブロック2としている。
【0019】
電池ブロック2は、図3に示すように、積層している角形電池1の間に絶縁スペーサ15を挟着している。絶縁スペーサ15は、隣接する角形電池1をより確実に絶縁する。絶縁スペーサ15は、図3に示すように、両面に角形電池1を積層して定位置に配置する形状として、隣接する角形電池1を位置ずれしないように積層できる。さらに、絶縁スペーサ15は、絶縁材のプラスチックで成形して、隣接する角形電池を絶縁することができる。電池ブロックは、角形電池の底面に熱結合状態に冷却プレートを配置し、この冷却プレートを強制的に冷却して角形電池を冷却することができる。なお、図示はしないが、絶縁スペーサは、冷却空気を強制送風する冷却隙間を設ける構成とすることもできる。例えば、角形電池に対向する絶縁スペーサの面に溝を形成し、絶縁スペーサと角形電池の間に冷却隙間を形成することができる。この冷却隙間に冷却空気を送風することで角形電池を冷却できる。
【0020】
電池ブロック2は、隣接する角形電池1の正負の電極端子13に金属板のバスバー14を接続して、バスバー14でもって角形電池1を直列に接続している。バスバー14は、貫通孔を設けて、この貫通孔に電極端子13を挿入し、電極端子13に設けた雄ネジにナット16をねじ込んで電極端子13に連結している。ただし、バスバーは、図示しないが、電極端子と貫通孔との境界にレーザービームを照射して電極端子に溶接することもできる。さらに、電極端子に雌ネジ孔を設け、この雌ネジ孔に止ネジをねじ込んでバスバーを連結することもできる。
【0021】
隣接する角形電池1を互いに直列に接続するバッテリシステムは、出力電圧を高くして出力を大きくできる。ただし、バッテリシステムは、隣接する角形電池1を並列に接続して出力電流を大きくでき、また直列と並列に接続して出力電圧と出力電流を大きくすることができる。
【0022】
電池ブロック2は両端面に、端面スペーサ3を挟んでエンドプレート4を配置している。エンドプレート4は拘束材5に連結されて、積層している角形電池1を加圧状態で固定する。図2のバッテリシステムは、電池ブロック2の両側面に拘束材5を配置する。拘束材5は導電性のある金属板等で製作される。図の拘束材5は、エンドプレート4の両側の側面4Aから内側に折曲されて、折曲部5Aをエンドプレート4の外側表面に固定している。折曲部5Aは、これを貫通する止ネジ19をエンドプレート4の雌ネジ孔4aにねじ込んでエンドプレート4に固定される。
【0023】
エンドプレート4は、アルミニウムやアルミニウム合金等の導電性のある金属で製作される。アルミニウムやアルミニウム合金のエンドプレート4は、ダイキャストや押し出し成形されて製造される。エンドプレート4は、角形電池1の外形と同じ四角形で、拘束材5と対向する側面4Aから拘束材5の内面に向かって突出する凸部4Dを設けている。図4図5のエンドプレート4は、両側の側面4Aに長手方向(図においては上下方向)に延びるリブ状の凸部4Dを設けている。さらに、エンドプレート4は、拘束材5に対向する側面4Aに形成され、凸部4Dに隣接して設けられる段部4Cを有している。このエンドプレート4は、凸部4Dによって拘束材5を段部4Cから離して配置しており、この段部4Cと拘束材5との間に空間4Eを形成している。
【0024】
端面スペーサ3は、図4図8に示すように、電池ブロック2とエンドプレート4との間に配置されるプレート部3Xを備えており、このプレート部3Xで導電性のエンドプレート4を電池ブロック2から絶縁する。端面スペーサ3は、エンドプレート4の段部4Cと拘束材5との間に形成される空間に配置され、段部4Cに沿って延在する絶縁側壁3Aを有し、この絶縁側壁3Aをプレート部3Xに連結して設けている。端面スペーサ3は、絶縁材のプラスチックを一体的に成形して、絶縁側壁3Aをプレート部3Xに連結している。プレート部3Xは、電池ブロック2とエンドプレート4との間に挟着され、絶縁側壁3Aはエンドプレート4の側面4Aに配置される。したがって、絶縁側壁3Aはプレート部3Xに対して直角に連結される。絶縁側壁3Aは、エンドプレート4の側面4Aの段部4Cに配置されて、段部4Cと拘束材5との間に形成される空間4Eに配置される。
【0025】
図4図6に示す端面スペーサ3は、プレート部3Xの両側縁の上下のほぼ全体にわたって絶縁側壁3Aを設けている。この絶縁側壁3Aは、エンドプレート4の側面4Aの上下全体にわたって形成された段部4Cに配置されて、角形電池1の側面とエンドプレート4の側面4Aとの絶縁距離を長くできる。ただ、絶縁側壁は、必ずしもエンドプレートの側面の上下全体にわたって設ける必要はなく、部分的に設けることもできる。例えば、外装缶を熱収縮チューブで被覆して絶縁してなる角形電池においては、端子面となる封口板の近傍における絶縁構造が重要である。したがって、端面スペーサは、角形電池の端子面側である上端部にのみ絶縁側壁を設けることもできる。
【0026】
さらに、図4図6、及び図8の端面スペーサ3は、角形電池1の端子面10をカバーする端子面カバー部3Cと、エンドプレート4の上面の外周面4Bをカバーする外周カバー部3Bとをプレート部3Xの上縁部に連結して設けている。端子面カバー部3Cは角形電池1の上面の端子面10をカバーし、外周カバー部3Bはエンドプレート4の上面の外周面4Bをカバーするので、端子面カバー部3Cと外周カバー部3Bとは互いに反対方向に突出して設けられる。
【0027】
図6の端面スペーサ3は、プレート部3Xの上縁の全体にわたって、角形電池1側に突出する端子面カバー部3Cを設けている。図の端子面カバー部3Cは絶縁側壁3Aまで延長して設けられている。このように、プレート部3Xの上縁の全体にわたって端子面カバー部3Cを設ける構造は、エンドプレート4と電池ブロック2との絶縁距離を確実に確保して絶縁特性を向上できる。それは、角形電池1の端子面10の露出部から外周面4Bまでの表面距離であって、端面スペーサ3の表面に沿う距離を長くできるからである。さらに、図4図6の端面スペーサ3は、端子面カバー部3Cの中央部における突出量を両側部よりも大きくして拡大カバー部3C’とすると共に、端子面カバー部3Cの両側端部においては、さらに上方に延長して、電極端子13を支持するホルダー17をカバーするホルダーカバー部3Dを設けている。このように、端子面カバー部3Cの突出量を大きくして拡大カバー部3C’を設け、あるいは、端子面カバー部3Cから延長してホルダーカバー部3Dを設ける構造は、これらの部分におけるエンドプレート4と角形電池1との絶縁距離をより長くしてさらに絶縁特性を向上できる。ここで、中央部に形成される拡大カバー部3C’は、角形電池1の端子面10の中央部に設けられるガス排出弁11のガス排出口12を閉塞しないように、その形状や突出量が調整される。さらに、端面スペーサ3の両側に設けられたホルダーカバー部3Dは、絶縁側壁3Aの上端部に連結されており、これ等を一体的に成形することで端面スペーサ3全体の強度を向上させている。
【0028】
また、図4の端面スペーサ3は、プレート部3Xの上縁部であって、中央部分から両側に離して外周カバー部3Bを設けている。図の端面スペーサ3は、複数の外周カバー部3Bを部分的に設けている。とくに、図に示す端面スペーサ3は、前述の拡大カバー部3C’とホルダーカバー部3Dが設けられない領域に対向して外周カバー部3Bを設けている。この構造は、図8に示すように、端子面カバー部3Cと外周カバー部3Bとでエンドプレート4と角形電池1の絶縁距離を長くして、絶縁特性を向上できる。ただ、端面スペーサは、プレート部の上縁部の全体にわたって外周カバー部を設けることも、中央部の全体をカバーするひとつの外周カバー部を設けることもできる。さらに、外周カバー部は、絶縁特性を考慮して、その長さや突出量を種々に調整することができる。
【0029】
エンドプレート4は、図4図7に示すように、側面4Aの一部に凸部4Dを設けて段部4Cを設けている。したがって、凸部4Dの突起高さ(H)は、段部4Cとの高低差となる。このエンドプレート4は、段部4Cに絶縁側壁3Aを配置し、凸部4Dに拘束材5を接触させて、拘束材5の位置を特定する。したがって、凸部4Dの突出高さ(H)、すなわち段部4Cとの高低差は、絶縁側壁3Aの厚さ以上、好ましくは絶縁側壁3Aの厚さよりも高くする。図7のエンドプレート4は、側面4Aの外側端縁に沿って凸部4Dを設けている。この構造は、絶縁側壁3Aの横幅(W)を広くして絶縁距離を長くできる特徴がある。ただ、図示しないが、凸部は、例えば、エンドプレートの側面の中央部に沿って設けることもできる。
【0030】
エンドプレート4の凸部4Dを含む横幅(T)は、角形電池1の横幅(S)よりも大きくしている。これにより、電池ブロックを構成する角形電池の側面が、エンドプレート4の凸部4Dで位置決めされる拘束材5の内面に必要以上に強く衝突するのを防止している。このバッテリシステムは、角形電池1が拘束材5に強く衝突して変形したり、損傷することがないので、角形電池1の外装缶と拘束材5とが電気的に接触してショートするのを防止して、安全性を向上できる。とくに、四角形の外形に多少の寸法誤差がある角形電池1であっても、拘束材5に強く衝突させて損傷することなく、安定して定位置に保持できる。
【0031】
以上のバッテリシステムは、エンドプレート4の凸部4Dに拘束材5の内面を接触させて拘束材5の位置を特定する。図示しないが、仮に拘束材が絶縁側壁を挟んでエンドプレートに連結されると、プラスチック製の絶縁側壁が拘束材に押し潰されて変形する。絶縁側壁が押し潰されると、拘束材の位置がずれて角形電池の側面を加圧して変形し、あるいは損傷させる等の弊害が発生する。図7に示すバッテリシステムは、エンドプレート4の凸部4Dで拘束材5の位置を特定して、段部4Cと拘束材5との間に形成される空間4Eに絶縁側壁3Aを配置する。したがって、拘束材5が絶縁側壁3Aを押し潰して位置ずれすることがなく、拘束材5の位置ずれによる角形電池1の変形や損傷を防止する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のバッテリシステムは、大電力が要求される車両のモータに電力を供給する電源装置や、自然エネルギーや深夜電力を蓄電する蓄電装置に最適に使用される。
【符号の説明】
【0033】
1…角形電池
2…電池ブロック
3…端面スペーサ
3X…プレート部
3A…絶縁側壁
3B…外周カバー部
3C…端子面カバー部
3C’…拡大カバー部
3D…ホルダーカバー部
4…エンドプレート
4A…側面
4B…外周面
4C…段部
4D…凸部
4E…空間
4a…雌ネジ孔
5…拘束材
5A…折曲部
10…端子面
11…ガス排出弁
12…ガス排出口
13…電極端子
14…バスバー
15…絶縁スペーサ
16…ナット
17…ホルダー
19…止ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8