【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る高出力リチウム二次電池は、下記化学式(1)で表される層状構造の第1正極活物質と、化学式(2)で表されるスピネル構造の第2正極活物質とを含んでおり、前記第2正極活物質の含量が正極活物質の全体重量を基準に40乃至100重量%である正極と;負極活物質として、
単位容量対比比表面積が0.005乃至0.013m
2/mAhである結晶質黒鉛を含む負極と;分離膜と;を含むことを特徴とする。
Li
x(Ni
vMn
wCo
yM
z)O
2−tA
t(1)
上記式において、
0.8<x≦1.3、0≦v≦0.9、0≦w≦0.9、0≦y≦0.9、0≦z≦0.9、x+v+w+y+z=2、0≦t<0.2、
Mは、+2価乃至+4価酸化数の一つ以上の金属または遷移金属カチオンであり、
Aは、−1または−2価のアニオンである。
Li
aMn
2−bM’
bO
4−cA’
c(2)
上記式において、
0.8<a≦1.3、0≦b≦0.5、0≦c≦0.3、
M’は、+2価乃至+4価酸化数の一つ以上の金属または遷移金属カチオンであり、
A’は、−1または−2価のアニオンである。
【0010】
前記結晶質黒鉛は、
単位容量対比比表面積が0.007〜0.011である第1黒鉛と、
単位容量対比比表面積が0.005〜0.013である第2黒鉛とからなる群より選ばれた1種またはこれらの混合物であってもよい。混合物の場合、第1黒鉛と第2黒鉛との混合比は、1:9〜9:1の範囲で決定されてもよい。
【0011】
具体的に、前記第1黒鉛は、1.4〜1.6g/ccの粉体密度において粉体伝導度が100S/cm以上〜1000S/cm未満であり、表面が改質された黒鉛であって、XRDデータの2θ=43°(101)面の菱面体晶ピーク(rhombohedral peak)で3Rピークと2Hピークが区別されて示される。
【0012】
また、前記第2黒鉛は、1.4〜1.6g/ccの粉体密度において粉体伝導度が10S/cm以上〜200S/cm未満であり、XRDデータの2θ=43°(101)面の菱面体晶ピーク(rhombohedral peak)で2Hピークが示される。このような第2黒鉛の粉体伝導度は、非晶質カーボンの粉体伝導度と同等の水準であり、これによって、出力特性が向上する効果がある。また、上記の第2黒鉛は、内部構造が非晶質カーボンと類似するので、長寿命特性に長所を発揮する。
【0013】
上記化学式(1)で表される層状構造の正極活物質と前記化学式(2)で表されるスピネル構造の正極活物質は、前記正極活物質の全体重量を基準に第1正極活物質が10重量%〜50重量%、及び第2正極活物質が50重量%〜90重量%の範囲で混合されてもよい。
【0014】
本発明の具体的な実施例において、前記第1正極活物質は、
単位容量対比平均粒径が0.01〜0.12
μm・g/mAh、及び2.65〜2.85g/ccの粉体密度において粉体伝導度が1×10
−3S/cm以上〜10×10
−3S/cm未満である層状結晶構造のリチウム遷移金属酸化物であってもよい。
【0015】
一つの詳細な例において、上記化学式(1)で表される正極活物質は、Ni及びMnの混合遷移金属を含み、リチウムを除外した全体遷移金属の平均酸化数が+3価よりも大きく、モル比を基準にニッケルの含量がマンガンの含量と同一又はそれより大きい条件を満足する層状結晶構造のリチウム遷移金属酸化物であってもよい。
【0016】
また、一つの具体的な例において、上記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物は、Li(Ni
0.5Mn
0.3Co
0.2)O
2またはLi(Ni
1/3Mn
1/3Co
1/3)O
2であってもよい。
【0017】
上記化学式(1)において、Ni、Mn、Coなどの遷移金属は、+2価〜+4価酸化数の金属及び/又はその他の遷移金属(M)元素で置換されてもよい。詳しくは、Al、Mg及びTiからなる群より選ばれる一つ以上で置換されてもよく、この場合、詳細な置換量は
であってもよい。
【0018】
また、本発明の具体的な実施例において、前記第2正極活物質は、
単位容量対比平均粒径が0.1〜0.2
μm・g/mAh、及び2.65〜2.85g/ccの粉体密度において粉体伝導度が1×10
−5S/cm以上〜10×10
−5S/cm未満であるスピネル結晶構造のリチウム遷移金属酸化物であってもよい。
【0019】
上記化学式(2)において、M’は、Co、Mn、Ni、Al、Mg及びTiからなる群より選ばれる一つ以上であってもよい。
【0020】
また、上記化学式(1)及び(2)において、酸素イオンは、所定の範囲で酸化数−1価または−2価のアニオン(A、A’)で置換されてもよい。詳しくは、前記A及びA’は、互いに独立に、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、S及びNからなる群より選ばれる一つ以上であってもよい。
【0021】
このようなアニオンの置換によって遷移金属との優れた結合力を有するようになり、化合物の構造転移が防止されるので、電池の寿命を向上させることができる。反面、アニオンA、A’の置換量が多すぎると(t>0.2)、不完全な結晶構造によってむしろ寿命特性が低下するという問題がある。
【0022】
上記化学式(1)又は化学式(2)の正極活物質において、酸素(O)をハロゲンで置換したり、Ni、Mnなどのような遷移金属を他の遷移金属(M、M’)で置換する場合には、それによる化合物を高温反応の前に追加して製造され得る。
【0023】
上記のような特定の物理量を有する正極活物質、負極活物質を含んでいる本発明に係る高出力リチウム二次電池は、0.03〜0.05Ah/cm
3の体積対比容量、0.1〜0.2Wh/cm
3の体積対比エネルギーを有することを特徴とする。上記した物理量は、当業界において公知の測定方法により測定することができ、具体的に、比表面積はBET法で測定でき、粉体密度は真密度測定方法で測定でき、粉体伝導度は粉体をペレット化した後、面抵抗を測定することによって測定することができる。
【0024】
前記分離膜は、正極と負極との間に介在され、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が用いられる。一般に、分離膜の気孔径は0.01〜10μmで、厚さは5〜300μmである。
【0025】
このような分離膜としては、例えば、耐化学性及び疏水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布;クラフト紙などが用いられる。現在市販中の代表的な例としては、セルガード系列(Celgard
R
2400、2300(Hoechest Celanese Corp.製品)、ポリプロピレン分離膜(Ube Industries Ltd.製品またはPall RAI社製品)、ポリエチレン系列(TonenまたはEntek)などがある。
【0026】
本発明の具体的な実施例において、前記分離膜は、ポリオレフィン系分離膜及びシリコンのような無機物を含む有無機複合分離膜であってもよい。上記の有無機複合分離膜がリチウム二次電池の安全性などを向上させるということは、本出願人の先行出願で説明した。
【0027】
本発明はまた、上記のような高出力リチウム二次電池を単位電池として含む中大型電池モジュール、及び前記電池モジュールを含む中大型電池パックを提供する。
【0028】
このような電池パックは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車などのように高出力が要求される動力源に適用できることは勿論、高出力による安定性及び信頼性の確保が重要な電力貯蔵装置に適用することができる。
【0029】
したがって、本発明は、前記電池パックを電源として用いるデバイスを提供し、具体的に、前記電池パックは、電気自動車、ハイブリッド−電気自動車、プラグ−インハイブリッド自動車、または電力貯蔵装置の電源として用いることができる。
【0030】
中大型電池モジュール及び電池パックの構成及びその作製方法は、当業界で公知であるので、それについての説明を明細書では省略する。
【0031】
前記正極は、上記した正極活物質を含む正極合剤をNMPなどの溶媒に混合して作られたスラリーを、正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延して製造することができる。
【0032】
前記正極合剤は、前記正極活物質以外に、選択的に導電材、バインダー、充填剤などを含むことができる。
【0033】
前記正極集電体は、一般に、3〜500μmの厚さで製造される。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、塑性炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などを用いることができる。正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用することができる。
【0034】
前記導電材は、通常、正極活物質を含む混合物の全体重量を基準に1〜30重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを用いることができる。
【0035】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合を助ける成分であって、通常、正極活物質を含む混合物の全体重量を基準に1〜30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルローズ、再生セルローズ、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0036】
前記充填剤は、正極の膨脹を抑制する成分として選択的に用いられ、当該電池に化学的変化を誘発せずに繊維状材料であれば、特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が用いられる。
【0037】
前記分散液としては、代表的にイソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトンなどを用いることができる。
【0038】
電極材料のペーストを金属材料に均一に塗布する方法は、材料の特性などを勘案して公知の方法から選択したり、新しい適切な方法で行なったりすることができる。例えば、ペーストを集電体上に分配させた後、ドクターブレード(doctor blade)などを使用して均一に分散させることができる。場合によっては、分配と分散過程を一つの工程として実行する方法を用いてもよい。その他にも、ダイキャスティング(die casting)、コンマコーティング(comma coating)、スクリーンプリント(screen printing)などの方法を選択してもよく、または別途の基材(substrate)上に成形した後、プレシングまたはラミネーション方法により集電体と接合させてもよい。
【0039】
金属板上に塗布されたペーストの乾燥は、50〜200℃の真空オーブンで1日以内に乾燥させることが好ましい。
【0040】
前記負極は、負極集電体上に上記した負極活物質を塗布、乾燥して作製され、必要に応じて、前述したような導電材、バインダー及び充填剤などの成分が選択的にさらに含まれてもよい。
【0041】
前記負極集電体は、一般に、3〜500μmの厚さで製造される。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、塑性炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などを用いることができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で使用することができる。
【0042】
リチウム塩含有非水系電解質は、非水電解質とリチウムからなっている。非水電解質としては、非水電解液、固体電解質、無機固体電解質などが用いられる。
【0043】
前記非水電解液としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ガンマ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、4−メチルー1,3−ジオキセン、ジエチルエーテル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ホルム酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
【0044】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを用いることができる。
【0045】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li
3N、LiI、Li
5NI
2、Li
3N−LiI−LiOH、LiSiO
4、LiSiO
4−LiI−LiOH、Li
2SiS
3、Li
4SiO
4、Li
4SiO
4−LiI−LiOH、Li
3PO
4−Li
2S−SiS
2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを用いることができる。
【0046】
前記リチウム塩は、前記非水系電解質に溶解し易い物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO
4、LiBF
4、LiB
10Cl
10、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、LiAsF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、CH
3SO
3Li、CF
3SO
3Li、LiSCN、LiC(CF
3SO
2)
3、(CF
3SO
2)
2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどを用いることができる。
【0047】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的で、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノン、N,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含めてもよく、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含めてもよく、FEC(fluoro−ethylene carbonate)、PRS(propene sultone)、FPC(fluoro−propylene carbonate)などをさらに含めてもよい。