(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JIS標準篩を用いて篩分により測定した粒度分布における、粒径2mm以上の粒子の含有量が、該エポキシ樹脂組成物中、3質量%以下であり、粒径106μm未満の微粉の含有量が、該エポキシ樹脂組成物中、5質量%以下である、請求項1乃至5いずれか1項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
本発明は、圧縮成形により素子を封止するために用いられる粉粒状の封止用エポキシ樹脂組成物である。本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、(a)エポキシ樹脂と、(b)硬化剤と、(c)無機フィラーとを必須成分として含む。本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、平滑な面の上に戴置して、加熱し溶解させ、そのまま加熱し続けることで硬化させたとき、平滑な面と接していた硬化物の面の空隙率が40%以下である。
【0016】
具体的には、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物の空隙率は、以下のように測定することができる。
図1は、この空隙率の測定方法の一例を説明する図である。まず、平坦な底面を有するアルミ箔容器を準備し、このアルミ箔容器の底面の全面を封止用エポキシ樹脂組成物で覆うようにアルミ箔容器に封止用エポキシ樹脂組成物を収容する(
図1(a))。ついで、大気圧下に封止用エポキシ樹脂組成物を曝しながら、封止用エポキシ樹脂組成物を収容するアルミ箔容器全体を175℃の雰囲気下で3分間加熱する。こうすることにより封止用エポキシ樹脂組成物を硬化させる(
図1(b))。そして、アルミ箔容器から前記硬化処理した封止用エポキシ樹脂組成物を取り出し(
図1(c))、封止用エポキシ樹脂組成物のアルミ箔容器の底面に接していた面を観察し(
図1(d))、観察の対象面(硬化した封止用エポキシ樹脂組成物のアルミ箔容器の底面に接していた面)の総面積に対する観察の対象面において形成された空隙の面積の比率、すなわち空隙率を求める。
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、この空隙率が40%以下であるが、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下とすることができる。空隙率は低いほど融け性の優れた封止用エポキシ樹脂組成物とすることができるが、空隙率が0.1%以上となるものであれば、圧縮成形時に十分な融け性を有する封止用エポキシ樹脂組成物とすることができる。
【0017】
空隙の面積の求め方は、特に限定されないが、例えば、硬化した封止用エポキシ樹脂組成物のアルミ箔容器の底面に接していた面をデジタルカメラで撮影するなどしてデジタル画像とし、画像処理により二値化して算出してもよい。例えば、空隙を黒に処理した場合は、黒の部分の合計を空隙の面積とすればよい。そして、画像化された観察の対象面の面積全体に対する黒の部分の面積の比率を算出することにより、空隙率を求めることができる。
【0018】
空隙率の測定に用いるアルミ箔容器の形状は、平坦な底面を有し、かつ、封止用エポキシ樹脂組成物を収容できるものであればどのようなものであってもよい。また、アルミ箔容器の厚みは、例えば、0.01mm以上2mm以下とすることができる。アルミ箔容器の好ましい態様の一例としては、空の容器を雰囲気温度170℃以上180℃以下に保持したオーブンに容器を静置し30秒以内に容器の底面内面(容器の底面内側)の表面温度が170℃以上180℃以下に到達するような容器が例示される。
【0019】
また、アルミ箔容器に封止用エポキシ樹脂組成物を投入する際は、空隙率を測定するときに硬化処理後の封止用エポキシ樹脂組成物の厚み(
図1(b)のw)が2mm以上10mm以下になるようにアルミ箔容器に封止用エポキシ樹脂組成物を収容させることが好ましい。また、封止用エポキシ樹脂組成物の表面(容器から露出した面)は、平坦であることがより好ましい。
【0020】
また、封止用エポキシ樹脂組成物を加熱する際は、封止用エポキシ樹脂組成物を収容するアルミ箔容器を傾けずに静置でき、かつ、封止用エポキシ樹脂組成物を収容したアルミ箔容器の全体を175℃に加熱できれば特に限定されないが、例えば、恒温槽(オーブン)で加熱する方法が挙げられる。
【0021】
本発明において「粉粒状」とは、不定形状の粒子であり、粒状及び粉末状を含むものである。本発明の封止用エポキシ樹脂組成物中、JIS標準篩を用いて篩分により測定した粒度分布における、2mm以上の粒子の含有量が3質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、1質量%以下である。また、同条件で測定した粒度分布における、粒径106μm未満の微粉の含有量は、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
大気圧とは、一般的には、1気圧(約0.1MPa)をいうが、本発明において、大気圧下とは、0.01MPa以上1MPa以下の範囲を含むことができる。
【0023】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、上記のとおり、(a)エポキシ樹脂と(b)硬化剤と、(c)無機フィラーとを必須成分として含むが、(d)硬化促進剤、(e)カップリング剤をさらに含んでいてもよい。以下、各成分について具体的に説明する。
【0024】
[(a)エポキシ樹脂]
(a)エポキシ樹脂の例は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、アルコキシナフタレン骨格含有フェノールアラルキルエポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、分子構造にビフェニル骨格を持ちエポキシ当量が180以上であるものを用いることが好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂全体の配合割合の下限値については、特に限定されないが、全樹脂組成物中に、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。また、エポキシ樹脂全体の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、全樹脂組成物中に、15質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、耐半田性の低下等を引き起こす恐れが少ない。また、融け性を向上させるため、用いるエポキシ樹脂の種類に応じて配合割合を適宜調整することが望ましい。
【0026】
[(b)硬化剤]
(b)硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応して硬化させるものであれば特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2〜20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミド等のアミン類;アニリン変性レゾール樹脂やジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物等;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類が例示される。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの内、半導体封止材料に用いる硬化剤としては、耐湿性、信頼性等の点から、1分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましく、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂、トリスフェノールメタンノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等が例示される。また、分子構造にフェニレン及び/又はビフェニル骨格を持ち水酸基当量が160以上であるものを用いることが好ましい。
【0027】
硬化剤全体の配合割合の下限値については、特に限定されないが、全樹脂組成物中に、0.8質量%以上であることが好ましく1.5質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、硬化剤全体の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、全樹脂組成物中に、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、良好な耐半田性を得ることができる。また、融け性を向上させるため、用いる硬化剤の種類に応じて配合割合を適宜調整することが望ましい。
【0028】
また、硬化剤としてフェノール樹脂系硬化剤を用いる場合においては、エポキシ樹脂全体とフェノール樹脂系硬化剤全体との配合比率としては、エポキシ樹脂全体のエポキシ基数(EP)とフェノール樹脂系硬化剤全体のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が0.8以上、1.3以下であることが好ましい。当量比がこの範囲内であると、樹脂組成物の成形時に充分な硬化性を得ることができる。また、当量比がこの範囲内であると、樹脂硬化物における良好な物性を得ることができる。また、エリア表面実装型の半導体装置における反りの低減という点を考慮すると、樹脂組成物の硬化性及び樹脂硬化物のガラス転移温度又は熱時弾性率を高めることができるように、用いる硬化促進剤の種類に応じてエポキシ樹脂全体のエポキシ基数(Ep)と硬化剤全体のフェノール性水酸基数(Ph)との当量比(Ep/Ph)を調整することが望ましい。また、融け性を向上させるため、用いるエポキシ樹脂、フェノール樹脂系硬化剤の種類に応じて当量比を適宜調整することが望ましい。
【0029】
[(c)無機フィラー]
(c)無機フィラーとしては、本発明の樹脂組成物としたとき融け性が良好であれば特に制限はなく、例えば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、2次凝集シリカ等のシリカ;アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化チタン、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタンホワイト、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、特に溶融球状シリカが好ましい。また、粒子形状は限りなく真球状であることが好ましく、また、粒子の大きさの異なるものを混合することにより充填量を多くすることができる。また、樹脂組成物の融け性を向上させるため、溶融球状シリカを用いるのが好ましい。
【0030】
(c)無機フィラーは1種または2種以上のフィラーを混合していてもよく、その全体の比表面積(SSA)は、5m
2/g以下であると好ましく、下限は、0.1m
2/g以上が好ましく、2m
2/g以上がさらに好ましい。また、(c)無機フィラー全体の平均粒径(D
50)は、1μm以上30μm以下であると好ましく、2μm以上20μm以下がより好ましく、5μm以上20μm以下がさらに好ましい。
【0031】
無機フィラーとしては、比表面積(SSA)及び/又は平均粒径(D
50)が異なる2種以上の無機フィラーを用いることもできる。
【0032】
平均粒径(D
50)が相対的に大きい無機フィラーの例として、平均粒径(D
50)が好ましくは5μm以上35μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の球状シリカが挙げられる。このような平均粒径(D
50)が相対的に大きい無機フィラーの含有量は、(c)無機フィラー全体に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上とすることができる。
【0033】
平均粒径(D
50)が相対的に大きい無機フィラーの好ましい例として、平均粒径(D
50)が5μm以上35μm以下であり、かつ、下記(i)乃至(v)をいずれも満たす粒子径分布を備えた溶融球状シリカ(c1)が挙げられる。
(i)粒子径が1μm以下の粒子を(c1)溶融球状シリカ全体を基準として、1〜4.5質量%含む、
(ii)粒子径が2μm以下の粒子を7質量%以上11質量%以下含む、
(iii)粒子径が3μm以下の粒子を13質量%以上17質量%以下含む、
(iv)粒子径が48μmを超える粒子を2質量%以上7質量%以下含む、
(v)粒子径が24μmを超える粒子を33質量%以上40質量%以下含む。
このような(c1)溶融球状シリカの含有量は、(c)無機フィラー中に好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上とすることができる。こうすることで、融け性をより優れたものとすることができる。
【0034】
平均粒径(D
50)が相対的に大きい無機フィラーとして、比表面積が好ましくは0.1m
2/g以上5.0m
2/g以下、より好ましくは1.5m
2/g以上5.0m
2/g以下の球状シリカを用いることが好ましい。このような球状シリカの含有量は、(c)無機フィラー全体に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上とすることができる。
【0035】
また、平均粒径(D
50)が相対的に小さい無機フィラーの例として、平均粒径(D
50)が好ましくは0.1μm以上5μm未満の球状シリカが挙げられる。このような平均粒径(D
50)が相対的に小さい無機フィラーの含有量は、無機フィラー全体に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下とすることができる。
【0036】
平均粒径(D
50)が相対的に小さい無機フィラーの好ましい例として、平均粒径(D
50)が0.1μm以上5μm未満の溶融球状シリカ(c2)、より好まし例として平均粒径(D
50)が0.1μm以上1μm以下の溶融球状シリカ(c3)、および平均粒径(D
50)が1μm以上5μm未満の溶融球状シリカ(c4)を各々単独または組合わせて用いる例が挙げられる。
【0037】
また、平均粒径(D
50)が相対的に小さい無機フィラーとして、比表面積が3.0m
2/g以上10.0m
2/g以下、より好ましくは3.5m
2/g以上8m
2/g以下の球状シリカが挙げられる。このような球状シリカの含有量は、(c)無機フィラー全体に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下とすることができる。
【0038】
比表面積(SSA)及び/又は平均粒径(D
50)が異なる(c)無機フィラーを組み合せる場合のより好ましい態様としては、(c)無機フィラー中に、(c1)溶融球状シリカを70質量%以上94質量%以下含み、かつ、(c2)溶融球状シリカを6質量%以上30質量%以下含むことが好ましい。さらに好ましい態様としては、(c)無機フィラー中に、(c1)溶融球状シリカを70質量%以上94質量%以下含み、平均粒径(D
50)が0.1μm以上1μm以下の溶融球状シリカ(c3)を1質量%以上29質量%以下、および平均粒径(D
50)が1μm以上5μm以下の溶融球状シリカ(c4)を1質量%以上29質量%以下含み、かつ前記(c3)および(c4)の合計量が6質量%以上30質量%以下含むものとすることができる。こうすることで、よりいっそう優れた融け性が発現し好ましい。
なお、本発明において、無機フィラーの比表面積(SSA)は、市販の比表面積計(例えば、(株)マウンテック製MACSORB HM−MODEL−1201等)で測定して求めたものをいう。また、無機フィラーの平均粒径(D
50)及び粒子径は、市販のレーザー式粒度分布計(例えば、(株)島津製作所製、SALD−7000等)で測定して求めたものをいう。
【0039】
(c)無機フィラーの含有割合の下限値としては、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物全体を基準として70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。無機充填剤の含有割合の下限値が上記範囲内であると、樹脂組成物の硬化物物性として、吸湿量が増加したり、強度が低下したりすることがなく、良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、無機フィラーの含有割合の上限値としては、樹脂組成物全体の95質量%以下であることが好ましく、92質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが特に好ましい。無機充填剤の含有割合の上限値が上記範囲内であると、流動性が損なわれることがなく、良好な成形性を得ることができる。また、良好な耐半田性が得られる範囲内で、無機フィラーの含有量を低く設定することが好ましい。
【0040】
[(d)硬化促進剤]
(d)硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを用いることができる。具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、イミダゾールなどのアミジン系化合物、ベンジルジメチルアミンなどの3級アミンや前記化合物の4級オニウム塩であるアミジニウム塩、アンモニウム塩などに代表される窒素原子含有化合物が挙げられる。これらのうち、硬化性の観点からはリン原子含有化合物が好ましく、流動性と硬化性のバランスの観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有する硬化促進剤がより好ましい。流動性という点を考慮するとテトラ置換ホスホニウム化合物が特に好ましく、また耐半田性の観点では、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましく、また潜伏的硬化性という点を考慮すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。また、連続成形性の観点では、テトラ置換ホスホニウム化合物が好ましい。また、コスト面を考えると、有機ホスフィン、窒素原子含有化合物も好適に用いられる。
【0041】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0042】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0044】
一般式(1)において、Pはリン原子を表し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して芳香族基又はアルキル基を表し、Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表し、AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表し、x及びyは1〜3の整数であり、zは0〜3の整数であり、かつx=yである。
【0045】
一般式(1)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるが、これに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで、水を加えると、一般式(1)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(1)で表される化合物において、合成時の収得率と硬化促進効果のバランスに優れるという観点では、リン原子に結合するR1、R2、R3及びR4がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール化合物であり、かつAは該フェノール化合物のアニオンであるのが好ましい。なお、フェノール化合物とは、単環のフェノール、クレゾール、カテコール、レゾルシンや縮合多環式のナフトール、ジヒドロキシナフタレン、複数の芳香環を備える(多環式の)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、フェニルフェノール、フェノールノボラックなどを概念に含むものであり、中でも水酸基を2個有するフェノール化合物が好ましく用いられる。
【0046】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば下記一般式(2)で表される化合物等が挙げられる。
【0048】
一般式(2)において、X1は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Y1はヒドロキシル基を表し、aは0〜5の整数であり、bは0〜4の整数である。
【0049】
一般式(2)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0050】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(3)で表される化合物等が挙げられる。
【0052】
一般式(3)において、Pはリン原子を表し、R5、R6及びR7は、互いに独立して、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R8、R9及びR10は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R8とR9は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0053】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換又はアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0054】
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0055】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0056】
一般式(3)で表される化合物において、リン原子に結合するR5、R6及びR7がフェニル基であり、かつR8、R9及びR10が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が硬化したエポキシ樹脂組成物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0057】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記式(4)で表される化合物等が挙げられる。
【0059】
一般式(4)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R11、R12、R13及びR14は、互いに独立して、芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、X2は、基Y2及びY3と結合する有機基である。X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X2、及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。
【0060】
一般式(4)において、R11、R12、R13及びR14としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等の置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0061】
また、一般式(4)において、X2は、Y2及びY3と結合する有機基である。同様に、X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にY4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基X2及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(4)中の−Y2−X2−Y3−、及び−Y4−X3−Y5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、好ましくは分子内にカルボキシル基または水酸基を少なくとも2個有する有機酸が好ましく、さらに芳香環を構成する炭素上にカルボキシル基または水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物が好ましく、さらには芳香環を構成する隣接する炭素上に水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物がより好ましい。例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2'−ビフェノール、1,1'−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等が挙げられる。これらの中でも、原料入手の容易さと硬化促進効果のバランスという観点では、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0062】
また、一般式(4)中のZ1は、芳香環又は複素環を有する有機基又は脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基及びビニル基等の反応性置換基などが挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
【0063】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3−ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0064】
硬化促進剤全体の配合割合の下限値は、全樹脂組成物中0.1質量%以上であることが好ましい。硬化促進剤全体の配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な硬化性を得ることができる。また、硬化促進剤全体の配合割合の上限値は、全樹脂組成物中1質量%以下であることが好ましい。硬化促進剤全体の配合割合の上限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、融け性を向上させるため、用いる硬化促進剤の種類に応じて配合割合を適宜調整することが望ましい。
【0065】
[(e)カップリング剤]
(e)カップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を用いることができる。これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシリル−N−(1,3−ジメチルーブチリデン)プロピルアミンの加水分解物等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
(e)カップリング剤の配合量は、(c)無機フィラーに対して0.05質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.5質量%以下がより好ましい。0.05質量%以上とすることで、フレームを良好に接着することができ、3質量%以下とすることで、成形性を向上させることができる。
【0067】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、上記の成分以外に、必要に応じて、カーボンブラック等の着色剤;天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等の離型剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力剤;ハイドロタルサイト等のイオン捕捉剤;水酸化アルミニウム等の難燃剤;酸化防止剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0068】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記成分を混合混練した後、粉砕,造粒,押出切断,篩分等の各種の手法を単独または組み合わせることにより、粉粒状にすることができる。例えば、各原料成分をミキサーで予備混合後、ロール、ニーダー又は押出機等の混練機により加熱混練後、複数の小孔を有する円筒状外周部と円盤状の底面から構成される回転子の内側に、溶融混練された樹脂組成物を供給し、その樹脂組成物を、回転子を回転させて得られる遠心力によって小孔を通過させて得る方法(以下、「遠心製粉法」とも言う。);前記と同様の混練後、冷却、粉砕工程を経て粉砕物としたものを、篩を用いて粗粒と微紛の除去を行って得る方法(以下、「粉砕篩分法」とも言う。);各原料成分をミキサーで予備混合後、スクリュー先端部に小径を複数配置したダイを設置した押出機を用いて、加熱混練を行うとともに、ダイに配置された小孔からストランド状に押し出されてくる溶融樹脂をダイ面に略平行に摺動回転するカッターで切断して得る方法(以下、「ホットカット法」とも言う。)等が挙げられる。いずれの方法でも混練条件、遠心条件、篩分条件、切断条件等を選ぶことにより本発明の粒度分布やかさ密度を得ることができる。特に好ましい製法としては、遠心製粉法であり、これにより得られる粉粒状のエポキシ樹脂組成物は、本発明の粒度分布やかさ密度を安定して発現させることができるため、搬送路上での搬送性や固着防止に対して好ましい。また、遠心製粉法では、粒子表面をある程度滑らかにすることができるため、粒子同士が引っかかったり、搬送路面との摩擦抵抗が大きくなったりすることもなく、搬送路への供給口でのブリッジ(詰まり)の防止、搬送路上での滞留の防止に対しても好ましい。また、遠心製粉法では、溶融した状態から遠心力を用いて形成させるため、粒子内に空隙がある程度含まれた状態となり、かさ密度をある程度低くできるため、圧縮成形における搬送性に関して有利である。
【0069】
一方、粉砕篩分法は、篩分により発生する多量の微粉及び粗粒の処理方法を検討する必要はあるものの、篩分装置等はエポキシ樹脂組成物の既存製造ラインで使用されているものであるため、従来の製造ラインをそのまま使用できる点で好ましい。また、粉砕篩分法は、粉砕前に溶融樹脂をシート化する際のシート厚の選択、粉砕時の粉砕条件やスクリーンの選択、篩分時の篩の選択等、本発明の粒度分布を発現させるため独立して制御可能な因子が多いため、所望の粒度分布に調整するための手段の選択肢が多い点で好ましい。また、ホットカット法も、例えば、押出機の先端にホットカット機構を付加する程度で、従来の製造ラインをそのまま利用できる点で好ましい。本発明の粉粒状の封止用エポキシ樹脂組成物を得るための製法の一例である遠心製粉法については、例えば、特開2010−159400号公報に記載の方法がある。
【0070】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて圧縮成形により半導体素子を封止してなる本発明の半導体装置について説明する。まず、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて圧縮成形により半導体素子を封止して半導体装置を得る方法を説明する。本発明のエポキシ樹脂組成物の秤量及び金型キャビティへの供給方法の概念図を
図2、3に示す。粉粒状のエポキシ樹脂組成物を瞬時に下型キャビティ104内に供給することができるシャッター等の樹脂材料供給機構を備えた樹脂材料供給容器102上に、振動フィーダー101等の搬送手段を用いて粉粒状の樹脂組成物103を一定量搬送し、粉粒状の樹脂組成物103が入れられた樹脂材料供給容器102を準備する(
図2参照。)。この際、樹脂材料供給容器102における粉粒状の樹脂組成物103の計量は、樹脂材料供給容器102の下に設置した計量手段により行うことができる。次に、圧縮成形金型の上型と下型の間に、粉粒状の樹脂組成物103が入れられた樹脂材料供給容器102を設置するとともに、半導体素子を搭載したリードフレーム又は回路基板を、クランプ、吸着等の固定手段により圧縮成形金型の上型に、半導体素子搭載面が下側になるようにして固定する(図示せず。)。尚、リードフレーム又は回路基板が貫通する部分のある構造の場合は、半導体素子搭載面の反対側の面にフィルム等を用いて裏打ちをする。
【0071】
次いで、樹脂材料供給容器102の底面を構成するシャッター等の樹脂材料供給機構により、秤量された粉粒状の樹脂組成物103を下型キャビティ104内へ供給すると(
図3参照。)、粉粒状の樹脂組成物103は下型キャビティ104内で所定温度にて溶融される。さらに、樹脂材料供給容器102を金型外へ搬出したのち、必要に応じてキャビティ内を減圧下にしながら、圧縮成形機により型締めを行って、溶融した樹脂組成物が半導体素子を取り囲むようにキャビティ内に充填させ、さらに所定時間樹脂組成物を硬化させることにより、半導体素子を封止成形する。所定時間経過後、金型を開き、半導体装置の取り出しを行う。なお、キャビティ内を減圧下にして脱気成形することは必須ではないが、樹脂組成物の硬化物中のボイドを低減できるため好ましい。また、リードフレーム又は回路基板に搭載される半導体素子は、複数であってもよく、かつ積層又は並列して搭載されていてもよい。
【0072】
本発明の半導体装置で封止される半導体素子としては、特に限定されるものではなく、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。
【0073】
本発明の半導体装置の形態としては、特に限定されないが、例えば、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、MAPタイプのBGA等が挙げられる。又、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)、クワッド・フラット・ノンリーデッド・パッケージ(QFN)、スモールアウトライン・ノンリーデッド・パッケージ(SON)、リードフレーム・BGA(LF−BGA)等にも適用可能である。
【0074】
圧縮成形で樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止した本発明の半導体装置は、そのまま、或いは80℃から200℃程度の温度で、10分から10時間程度の時間をかけて完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0075】
以下に、リードフレーム又は回路基板と、リードフレーム又は回路基板上に積層又は並列して搭載された1以上の半導体素子と、リードフレーム又は回路基板と半導体素子とを電気的に接続するボンディングワイヤと、半導体素子とボンディングワイヤを封止する封止材とを備えた半導体装置について、図を用いて詳細に説明するが、本発明はボンディングワイヤを用いたものに限定されるものではない。
【0076】
図4は、本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いて、リードフレームに搭載した半導体素子を封止して得られる半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド403上に、ダイボンド材硬化体402を介して半導体素子401が固定されている。半導体素子401の電極パッドとリードフレーム405との間はワイヤー404によって接続されている。半導体素子401は、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化体で構成される封止材406によって封止されている。
【0077】
図5は、本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いて、回路基板に搭載した半導体素子を封止して得られる半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。回路基板408上にダイボンド材硬化体402を介して半導体素子401が固定されている。半導体素子401の電極パッドと回路基板408上の電極パッドとの間はワイヤー404によって接続されている。本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化体で構成される封止材406によって、回路基板408の半導体素子401が搭載された片面側のみが封止されている。回路基板408上の電極パッド407は回路基板408上の非封止面側の半田ボール409と内部で接合されている。
【0078】
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物は、集積回路、大規模集積回路などの半導体素子に限定されず、種々の素子、例えば、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子、コンデンサ、抵抗、LEDなどを封止することができる。
【0079】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.圧縮成形により素子を封止するために用いられる粉粒状の封止用エポキシ樹脂組成物であって、
(a)エポキシ樹脂と、(b)硬化剤と、(c)無機フィラーとを必須成分として含み、
平坦な底面を有するアルミ箔容器の前記底面の全面を覆うように前記エポキシ樹脂組成物を前記アルミ箔容器に収容し、大気圧下175℃の雰囲気下で3分間加熱することにより前記エポキシ樹脂組成物を硬化させたとき、硬化した前記エポキシ樹脂組成物の前記底面に接する面において形成された空隙の面積が、硬化した前記エポキシ樹脂組成物の前記底面に接する面の総面積に対して40%以下であることを特徴とする、封止用エポキシ樹脂組成物。
2.前記(c)無機フィラーの比表面積(SSA)が5m2/g以下である、1.に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
3.前記(c)無機フィラーの平均粒径(D50)が1μm以上30μm以下である、1.又は2.に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
4.前記(c)無機フィラーは、平均粒径(D50)が5μm以上35μm以下であり、かつ、下記(i)乃至(v)をいずれも満たす粒子径分布を備えた溶融球状シリカ(c1)を含み、該(c1)溶融球状シリカの含有量が(c)無機フィラー全体を基準として10質量%以上である、1.乃至3.いずれか1つに記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
(i)粒子径が1μm以下の粒子を1〜4.5質量%含む、
(ii)粒子径が2μm以下の粒子を7質量%以上11質量%以下含む、
(iii)粒子径が3μm以下の粒子を13質量%以上17質量%以下含む、
(iv)粒子径が48μmを超える粒子を2質量%以上7質量%以下含む、
(v)粒子径が24μmを超える粒子を33質量%以上40質量%以下含む。
5.前記(c)無機フィラーは、平均粒径(D50)0.1μm以上5μm未満の無機フィラー(c2)を含み、
前記(c1)溶融球状シリカの含有量が、(c)無機フィラー全体を基準として、70質量%以上94質量%以下であり、
(c2)無機フィラーの含有量が、(c)無機フィラー全体を基準として、6質量%以上30質量%以下である、4.に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
6.前記(c)無機フィラーの含有量が、前記エポキシ樹脂組成物の全体を基準として50質量%以上95質量%以下である、1.乃至5.いずれか1つに記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
7.JIS標準篩を用いて篩分により測定した粒度分布における、2mm以上の粒子の含有量が、該エポキシ樹脂組成物中、3質量%以下であり、粒径106μm未満の微粉の含有量が、該エポキシ樹脂組成物中、5質量%以下である、1.乃至6.いずれか1つに記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
8.(d)硬化促進剤をさらに含み、前記(d)硬化促進剤がテトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、及び、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物からなる群から選択されるリン原子含有化合物である、1.乃至7.いずれか1つに記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
9.(e)カップリング剤をさらに含み、前記カップリング剤が2級アミノ基を有するシランカップリング剤である、1.乃至8.いずれか1つに記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
10.前記素子が半導体素子である、1.乃至9.いずれか1つに記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
11.1.乃至10.いずれか1つに記載の封止用エポキシ樹脂組成物を用いて圧縮成形により素子を封止することを特徴とする電子機器の製造方法。
12.1.乃至10.いずれか1つに記載の封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、圧縮成形により素子を封止してなることを特徴とする電子機器。
【実施例】
【0080】
実施例、比較例で用いた成分について下記に示す。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1::
ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製NC3000)
エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX4000H)
【0081】
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851SS)
フェノール樹脂2:フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製、XLC−4L)
【0082】
(無機フィラー)
球状無機フィラー1:球状溶融シリカ(平均粒径16μm、比表面積2.1m
2/g)
球状無機フィラー2:球状溶融シリカ(平均粒径10μm、比表面積4.7m
2/g)
球状無機フィラー3:球状溶融シリカ(平均粒径32μm、比表面積1.5m
2/g)
【0083】
球状無機フィラー1〜3中の粒子径の分布を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
微球無機フィラー1:球状溶融シリカ(平均粒径0.5μm、比表面積6.1m
2/g)
微球無機フィラー2:球状溶融シリカ(平均粒径1.5μm、比表面積4.0m
2/g)
【0086】
(その他の成分)
硬化促進剤1:トリフェニルホスフィン
カップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
カーボンブラック
ワックス:カルナバワックス
【0087】
実施例1−3、比較例1、2
表2で示す配合のエポキシ樹脂組成物の原材料をスーパーミキサーにより5分間粉砕混合したのち、この混合原料を直径65mmのシリンダー内径を持つ同方向回転二軸押出機にてスクリュー回転数30RPM、100℃の樹脂温度で溶融混練し、次に、直径20cmの回転子の上方より溶融混練された樹脂組成物を2kg/hrの割合で供給して、回転子を3000RPMで回転させて得られる遠心力によって、115℃に加熱された円筒状外周部の複数の小孔(孔径2.5mm)を通過させることで、粉粒状の封止用エポキシ樹脂組成物を得た。樹脂組成物の性状は表2に示す。
【0088】
実施例4
表2で示す配合のエポキシ樹脂組成物の原材料をスーパーミキサーにより5分間粉砕混合したのち、この混合原料を直径65mmのシリンダー内径を持つ同方向回転二軸押出機にてスクリュー回転数30RPM、100℃の樹脂温度で溶融混練し、冷却、粉砕工程を経て粉砕物としたものを、篩を用いて粗粒と微紛の除去を行って粉粒状の封止用エポキシ樹脂組成物を得た。樹脂組成物の性状は表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
<評価方法>
実施例及び比較例における粉粒状のエポキシ樹脂組成物を下記の方法で評価した。
1.空隙率
アルミカップ(直径50mm、外周高さ10mm、厚み70μm)に実施例及び比較例の粉粒状のエポキシ樹脂組成物(7g)を加え、175℃に設定したオーブンで3分加熱した。硬化後のエポキシ樹脂組成物の厚みは、5.2mmであった。アルミカップから硬化した樹脂組成物を取りだし、アルミカップの底面と接していた樹脂組成物の面をデジタルカメラで撮影し画像化した。得られた画像を二値化し、アルミカップの底面と接していた樹脂組成物の面内における空隙の面積(A1)とアルミカップの底面と接していた樹脂組成物の面の総面積(A2)を計測し、空隙率を式(1)で示すように算出した。
空隙率[%]=(A1/A2)×100・・・(1)
【0091】
実施例1のデジタル画像、及び、二値化画像を
図6に示す。
図6(a)がデジタル画像であり、
図6(b)が二値化画像である。
【0092】
2.比表面積(SSA)
(株)マウンテック製MACSORB HM−MODEL−1201を使用し、BET流動法により評価した。
【0093】
3.平均粒径(D
50)
(株)島津製作所製、SALD−7000を使用し、レーザー回折式粒度分布測定法にて評価した。
【0094】
4.円板フロー
200mm(W)×200mm(D)×25mm(H)の上型と200mm(W)×200mm(D)×15mm(H)の下型を有する円板フロー測定用平板金型を用いて、上皿天秤にて秤量した封止用エポキシ樹脂成形材料5gを180℃に加熱した下型の中心部にのせ、5秒後に、180℃に加熱した上型を閉じて、荷重78N、硬化時間90秒の条件で圧縮成形し、ノギスで成形品の長径(mm)及び短径(mm)を測定して、その平均値(mm)を円板フローとした。
【0095】
5.ワイヤー変形
厚み0.5mm、幅50mm、長さ210mmの回路基板上に、厚み0.3mm、9mm角の半導体素子を銀ペーストにて接着し、幅25μm、長さ約5mmの金線ワイヤーをピッチ間隔60μmで半導体素子と回路基板に接合したものを、圧縮成形機(TOWA株式会社製、PMC1040)により一括で封止成形し、MAP成形品を得た。この際の成形条件は、金型温度175℃、成形圧力3.9MPa、硬化時間120秒で行った。次いで、得られたMAP成形品をダイシングにより個片化し、模擬半導体装置を得た。得られた模擬半導体装置におけるワイヤー流れ量を、軟X線装置(ソフテックス株式会社製、PRO−TEST−100)を用いてパッケージの対角線上にある最も長い金ワイヤー4本(長さ5mm)の平均の流れ率を測定し、ワイヤー流れ率(ワイヤー流れ量/ワイヤー長×100(%))を算出した。
【0096】
評価結果は、表2に示す。
実施例のエポキシ樹脂組成物を用いて圧縮成形により半導体素子を封止した半導体装置では、ワイヤー変形が極めて小さかったのに対し、比較例のエポキシ樹脂組成物を用いた場合には、ワイヤー変形が大きいという結果が得られた。
また、実施例及び比較例の粉粒状のエポキシ樹脂組成物をそれぞれスパイラルフロー及び円板フローにより評価したが、必ずしもスパイラルフローおよび円板フローが長いものが、空隙率が小さい結果にはならなかった。したがって、空隙率を用いた評価は、低剪断域の粘度を反映した融け性との関連性の指標となり、スパイラルフローや円板フローによる流動性の評価では把握できない指標となることがわかった。