【実施例】
【0066】
以下、実施例および比較例として、本発明の一態様である非水電解液、およびそれを用いた非水電解質二次電池の作製方法および結果を説明する。実施例中の非水電解液は、全てアルゴングローブボックス内で調合した。なお、本発明の実施形態は、以下に説明する実施例に限定されない。
【0067】
≪実施例1≫
グライム溶媒としてテトラエチレングリコールジメチルエーテル(CH
3−(OCH
2CH
2)
4−OCH
3)を、ホスファゼン溶媒として下記式中(3)の置換基Rがエチル基となる化合物を、アルカリ金属塩としてリチウムビストリフルオロメチルスルフォニルイミド(LiN(CF
3CF
2SO
2)
2)を使用して、非水電解液を調合した。
【0068】
【化3】
【0069】
まず、上記のグライム溶媒とアルカリ金属塩を、モル比率が1対1となるように混合し、アルカリ金属塩を溶解させた。ついで、その溶液に対して、上記グライム溶媒とホスファゼン溶媒の合計体積(全溶媒体積)に対するホスファゼン溶媒の体積比率が16、29、42、52、54、62、71、79、88%となるように、ホスファゼン溶媒を混合し、非水電解液サンプル1〜9を得た。
【0070】
非水電解液サンプル1〜9の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0071】
≪実施例2≫
グライム溶媒としてトリエチレングリコールジメチルエーテル(CH
3−(OCH
2CH
2)
3−OCH
3)を用いた以外は実施例1と同様にして非水電解液を調合した。実施例2の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は28、37、46、55、64、73、82、91%であり、それぞれをサンプル12〜19とした。非水電解液サンプル12〜19の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0072】
≪実施例3≫
グライム溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル(CH
3−(OCH
2CH
2)
3−OCH
3)を用いた以外は実施例1と同様にして非水電解液を調合した。実施例3の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率を80%とし、サンプル22とした。非水電解液サンプル22の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0073】
≪実施例4≫
グライム溶媒としてモノエチレングリコールジメチルエーテル(CH
3−(OCH
2CH
2)
1−OCH
3)を用い、グライム溶媒とアルカリ金属塩を、モル比率が2対1となるように混合し、アルカリ金属塩を溶解させた以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調合した。実施例4の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は7、17、27、38、48、58、69、79、89%であり、それぞれをサンプル24〜32とした。非水電解液サンプル24〜32の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は2molであった。
【0074】
≪実施例5≫
アルカリ金属塩としてリチウムビスフルオロスルフォニルイミド(LiN(FSO
2)
2)を使用した以外は、実施例4と同様にして非水電解液を調合した。実施例5の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は7、17、27、38、48、58、69、79、90%であり、それぞれをサンプル35〜43とした。非水電解液サンプル35〜43の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は2molであった。
【0075】
≪実施例6≫
アルカリ金属塩としてリチウムビスフルオロメチルスルフォニルイミド(LiN(CF
3SO
2)
2)とリチウムビスフルオロスルフォニルイミド(LiN(FSO
2)
2)を1対1のモル比率で混合したものを使用した以外は、実施例2と同様にして非水電解液を調合した。実施例6の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率を82%とし、それをサンプル46とした。非水電解液サンプル46の、1molのアルカリ金属混合塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0076】
≪実施例7≫
アルカリ金属塩としてリチウムビスフルオロメチルスルフォニルイミド(LiN(CF
3SO
2)
2)とリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF
6)を0.95対0.05のモル比率で混合したものを使用した以外は、実施例2と同様にして非水電解液を調合した。実施例7の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率を82%とし、それをサンプル48とした。非水電解液サンプル48の、1molのアルカリ金属混合塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0077】
≪実施例8≫
アルカリ金属塩としてナトリウムビストリフルオロメチルスルフォニルイミド(NaN(CF
3SO
2)
2)を使用した以外は、実施例4と同様にして非水電解液を調合した。実施例8の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は79%とし、それをサンプル50とした。非水電解液サンプル50の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は2molであった。
【0078】
≪実施例9≫
アルカリ金属塩としてナトリウムビスフルオロスルフォニルイミド(NaN(FSO
2)
2)を使用した以外は、実施例8と同様にして非水電解液を調合した。実施例9の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は79%とし、それをサンプル52とした。非水電解液サンプル52の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は2molであった。
【0079】
≪比較例1≫
ホスファゼン溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例1と同じ方法で、非水電解液サンプル10を調合した。比較例1の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は0%であり、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0080】
≪比較例2≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例1と同じ方法で、非水電解液サンプル11を調合した。比較例2の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/Lとなる濃度のアルカリ金属塩を混合した。
【0081】
≪比較例3≫
ホスファゼン溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例2と同じ方法で、非水電解液サンプル20を調合した。比較例20の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は0%であり、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0082】
≪比較例4≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例2と同じ方法で、非水電解液サンプル21を調合した。比較例4の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属塩を混合した。
【0083】
≪比較例5≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例3と同じ方法で、非水電解液サンプル23を調合した。比較例5の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属塩を混合した。
【0084】
≪比較例6≫
ホスファゼン溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例4と同じ方法で、非水電解液サンプル33を調合した。比較例6の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は0%であり、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は2molであった。
【0085】
≪比較例7≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例4と同じ方法で、非水電解液サンプル34を調合した。比較例7の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属塩を混合した。
【0086】
≪比較例8≫
ホスファゼン溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例5と同じ方法で、非水電解液サンプル44を調合した。比較例8の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は0%であり、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は2molであった。
【0087】
≪比較例9≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例5と同じ方法で、非水電解液サンプル45を調合した。比較例9の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属塩を混合した。
【0088】
≪比較例10≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例6と同じ方法で、非水電解液サンプル47を調合した。比較例10の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属混合塩を混合した。
【0089】
≪比較例11≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例7と同じ方法で、非水電解液サンプル49を調合した。比較例11の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属混合塩を混合した。
【0090】
≪比較例12≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例8と同じ方法で、非水電解液サンプル51を調合した。比較例12の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属塩を混合した。
【0091】
≪比較例13≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例9と同じ方法で、非水電解液サンプル53を調合した。比較例13の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属塩を混合した。
【0092】
≪比較例14≫
比較例14では、実施例1と同じホスファゼン溶媒とアルカリ金属塩を用い、実施例1におけるグライム溶媒の代わりにカーボネート溶媒であるプロピレンカーボネートを含んだ非水電解液を調合した。
【0093】
まず、上記プロピレンカーボネートとホスファゼン溶媒の合計体積(全溶媒体積)に対するホスファゼン溶媒の体積比率が、それぞれ0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%となるように、ホスファゼン溶媒を混合し、得た混合溶液に、次いで濃度が1モル/Lとなるようにアルカリ金属塩を混合し、比較例14の非水電解液サンプル54〜64を得た。
【0094】
上記プロピレンカーボネートとホスファゼン溶媒の合計体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率が0%とは、ホスファゼン溶媒を全く含まない場合であり、逆に100%とは、プロピレンカーボネートを全く含まない場合を意味する。
【0095】
[相溶性および導電性評価]
実施例1〜9および比較例1〜14の非水電解液の相溶性を目視により評価し、均一であった非水溶媒に関しては、導電率測定を行った。なお、アルカリ金属塩の析出や、溶媒同士の相分離が確認された場合は「相溶性」を×とし、これらの現象が確認されなかった場合は「相溶性」を○とした。
【0096】
導電率測定は、堀場製作所製D-54 pH/Conductivity Meterを用いて、25℃で測定した。実施例1〜9、および比較例1〜13の結果を表1−1および1−2に、比較例14の結果を表2にそれぞれ示す。
【0097】
【表1-1】
【0098】
【表1-2】
【0099】
【表2】
【0100】
表1−1および1−2に示したように、アルカリ金属塩とグライム溶媒とホスファゼン溶媒を含む本発明の実施例1〜9の非水電解液は、溶媒の相分離やアルカリ金属塩の析出は確認されず、均一溶媒として得ることが出来た。グライム溶媒とホスファゼン溶媒を含む本発明の一態様である非水電解液は、ホスファゼンの体積比率が16%〜91%と幅広い組成で均一に混合することが出来た。一方、グライム溶媒を含まない比較例2、4、5、7および9〜13の非水溶媒は、アルカリ金属塩が溶解せず、溶媒の下部に多量の析出物として沈殿した。したがって、アルカリ金属塩を溶解させるために、グライム溶媒が機能していることが確認された。
【0101】
また、本発明の実施例1の材料系を有する非水電解液では、ホスファゼン溶媒の体積比率が16%以上88%以下である場合に導電率が1.9〜3.8mS/cmと高い値を示し、ホスファゼン溶媒を含まない点以外は同じ材料系である比較例1の非水電解液よりも導電率が高くなった。
【0102】
また、本発明の実施例2の材料系を有する非水電解液では、ホスファゼン溶媒の体積比率が28%以上82%以下の場合に導電率が1.4〜2.0mS/cmと高い値を示し、ホスファゼン溶媒を含まない点以外は同じ材料系である比較例3の非水電解液よりも導電率が高くなった。 また、本発明の実施例4の材料系を有する非水電解液では、ホスファゼン溶媒の体積比率が7%以上58%以下の場合に導電率が3.7〜4.6mS/cmと高い値を示し、ホスファゼン溶媒を含まない点以外は同じ材料系である比較例6の非水電解液よりも導電率が高くなった。
【0103】
また、本発明の実施例5の材料系を有する非水電解液では、ホスファゼン溶媒の体積比率が7%以上38%以下の場合に導電率が8.8〜9.9mS/cmと高い値を示し、ホスファゼン溶媒を含まない点以外は同じ材料系である比較例8の非水電解液よりも導電率が高くなった。
【0104】
この結果は、非水溶媒に含まれるホスファゼンの比率を適切な範囲に設定することにより、イオン導電性能を向上することが出来ていることを示している。
【0105】
表2に示したように、アルカリ金属塩と炭酸エステル溶媒とホスファゼン溶媒を含む比較例14におけるサンプル54〜57の非水電解液では、溶媒の相分離やアルカリ金属塩の析出は確認されず、均一溶媒として得ることが出来たが、サンプル58〜64の非水電解液では溶媒の相分離が確認され、均一溶液として得ることが出来なかった。すなわち、炭酸エステル溶媒とホスファゼン溶媒を含む非水電解液は、ホスファゼンの体積比率が30%以下で均一に混合することが出来るものの、40%以上では均一混合できなかった。
【0106】
表1−1、1−2および表2の比較から、ホスファゼン溶媒と炭酸エステル溶媒を含む非水溶媒と比較して、ホスファゼン溶媒とグライム溶媒を含む本発明の一態様である非水電解液は、ホスファゼン溶媒の混合比率の幅広さという点で優れた結果が確認された。
【0107】
また、ホスファゼン溶媒と炭酸エステル溶媒を含む非水電解液では、ホスファゼン体積比率が増加するにつれて導電率が低下する挙動を示した。これは、ホスファゼン比率を多く含むと難燃性をより付与することができるものの、導電性能は低下するというトレードオフの傾向であることを意味している。
【0108】
一方、本発明の一態様である非水電解液では、これと全く異なる挙動を示した。すなわち、本発明の実施例1の非水電解液の導電率は、1.9〜3.8mS/cmを示し、また、ホスファゼン溶媒を含まない比較例1の1.8mS/cmよりも、ホスファゼンを含むことにより、導電率が向上した結果が確認された。この結果は、ホスファゼン比率を多く含むと難燃性をより付与することができることに加えて、導電性能が向上するという傾向を意味している。この点で、本発明の一態様である非水電解液は、炭酸エステル系の非水電解液と全く異なる電解液であるということが出来る。また、ホスファゼンの体積比率が任意の組成で均一混合することが出来ることから、用途に応じて必要とされる導電性能や難燃性能に合わせて、グライム溶媒とホスファゼン溶媒との比率を適宜設計することにより、非水電解液の設計を任意に行うことが出来ることを示している。
【0109】
[熱安定性評価]
本発明の一態様である非水電解液の熱安定性を評価した。熱安定性評価は、Seiko Instrument社製示査走査熱量計DSC−6200を用いた熱量測定により実施した。
【0110】
ステンレス製密封容器の中に充電状態のLi
0.42CoO
2と非水電解液試料0.1μLを封入し、毎分30ccのArガス流通下で、昇温速度を10℃/minとして室温から600℃まで昇温させて行った。室温から600℃までで得られた複数の発熱ピークを積算し、発熱量を評価した。
【0111】
実施例1のサンプル5、8、および比較例1、比較例14のサンプル10、54、57について、熱安定性評価を行った結果を、表3にまとめて示す。
【0112】
【表3】
【0113】
表3における、比較例14の非水電解液サンプル57は体積比率30%と均一混合できる限界量のホスファゼン溶媒を含む非水電解液であり、ホスファゼンを含まないサンプル54と比較して、熱量が303mJとおよそ半分にまで小さく抑えられている。一方、本発明の実施例1の非水電解液サンプルはホスファゼン溶媒を体積比率で54%含むサンプル5で、277mJ、ホスファゼン溶媒を体積比率で79%含むサンプル8で181mJと、比較例14よりも更に熱量が小さく抑えられていることが確認された。また、実施例2〜9の非水電解液サンプルにおいても同様に、熱量が小さく抑えられていることが確認された。
【0114】
また、サンプル10、5、8の比較から、ホスファゼン溶媒の混合量により、発熱量を抑制することが出来ることから、本発明の一態様である非水電解液は、ホスファゼン溶媒の添加割合を任意に混合することが出来ることから、用途に応じた非水電解液を設計し、電池設計の自由度を高めることができる。また、ホスファゼン溶媒の添加割合を従来以上に高めることにより、従来以上に安全性に優れる非水電解液を提供することが出来る。
【0115】
≪実施例10≫
グライム溶媒として、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(CH
3−(OCH
2CH
2)
4−OCH
3)を、ホスファゼン溶媒として、下記式(3)中の置換基Rがフェニル基となる化合物を、アルカリ金属塩としてリチウムビストリフルオロメチルスルフォニルイミド(LiN(CF
3CF
2SO
2)
2)を使用して、実施例1と同じ手順で非水電解液を調合した。
【0116】
【化3】
【0117】
上記のグライム溶媒とアルカリ金属塩を、モル比率が1対1となるように混合し、アルカリ金属塩を溶解させた。ついで、その溶液に対して、上記グライム溶媒とホスファゼン溶媒の合計体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率が16、29、42、52、54、62、71、79、88%となるように、ホスファゼン溶媒を混合し、非水電解液サンプル65〜73を得た。非水電解液の調合は、アルゴングローブボックス内で行った。
【0118】
非水電解液サンプル65〜73の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0119】
≪比較例15≫
ホスファゼン溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例10と同じ方法で、非水電解液サンプル74を調合した。比較例15の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は0%であり、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0120】
≪比較例16≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例10と同じ方法で、非水電解液サンプル75を調合した。比較例16の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/Lとなる濃度のアルカリ金属塩を混合した。
【0121】
≪比較例17≫
比較例17では、実施例10と同じホスファゼン溶媒と、アルカリ金属塩を用い、グライム溶媒の代わりにカーボネート溶媒であるプロピレンカーボネートを用いて、非水電解液を調合した。
【0122】
まず、上記プロピレンカーボネートとホスファゼン溶媒の合計体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率が、それぞれ0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%となるように、ホスファゼン溶媒を混合し、得た混合溶液に、次いで、濃度が1モル/Lとなるようにアルカリ金属塩を混合し、比較例17の非水電解液サンプル76〜86を得た。非水電解液の調合は、アルゴングローブボックス内で行った。
【0123】
[相溶性および導電性評価]
実施例10および比較例15〜17の非水電解液の相溶性を目視により評価し、均一であった非水溶媒に関しては、導電率測定を行った。導電率測定は、堀場製作所製D-54 pH/Conductivity Meterを用いて、25℃で測定した。実施例2、および比較例15〜16の結果を表4に、比較例17の結果を表5にそれぞれ示す。
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
表4に示したように、アルカリ金属塩とグライム溶媒とホスファゼン溶媒を含む本発明の実施例10の非水電解液は、溶媒の相分離やアルカリ金属塩の析出は確認されず、均一溶媒として得ることが出来た。グライム溶媒とホスファゼン溶媒を含む本発明の一態様である非水電解液は、ホスファゼンの体積比率が16%〜88%と幅広い組成で均一に混合することが出来た。一方、グライム溶媒を含まない比較例16の非水溶媒は、アルカリ金属塩が溶解せず、溶媒の下部に多量の析出物として沈殿した。したがって、アルカリ金属塩を溶解させるために、グライム溶媒が機能していることが確認された。また、本発明の実施例2の非水電解液の導電率は、最大値で2.4mS/cmと高い値を示し、また、ホスファゼン溶媒を含まない比較例15よりも向上していることが確認された。
【0127】
この結果は、本発明の一態様である非水溶媒がホスファゼン溶媒を多く含むことにより、イオン導電性能を向上することが出来ていることを示している。
【0128】
表5に示したように、アルカリ金属塩と炭酸エステル溶媒とホスファゼン溶媒を含む比較例17におけるサンプル76〜86の非水電解液では、溶媒の相分離やアルカリ金属塩の析出は確認されず、均一溶媒として得ることが出来たが、サンプル80〜86の非水電解液では溶媒の相分離が確認され、均一溶液として得ることが出来なかった。すなわち、炭酸エステル溶媒とホスファゼン溶媒を含む非水電解液は、ホスファゼンの体積比率が30%以下で均一に混合することが出来るものの、40%以上では均一混合できなかった。
【0129】
また、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率が42%以上88%以下であってもよい。これにより、比較例14及び比較例17で明らかなように、従来では混合できなかった比率が実現できているため、従来よりも安全性に優れた電解液を提供することが出来る。
【0130】
[熱安定性評価]
実施例10のサンプル69、72に関しても、熱安定性評価を行い、比較例17のサンプル80よりも発熱量が小さく、実施例1〜9と同様の傾向であることを確認した。
【0131】
以上の、実施例1〜10、および比較例1〜17の結果から、本発明の一態様である非水電解液はホスファゼン溶媒の構造に依らないことが確認された。
【0132】
≪実施例11≫
本発明の一態様である非水電解液を含むリチウム二次電池の実施例について、以下説明する。
【0133】
正極活物質として、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2を用い、正極活物質と導電助剤アセチレンブラックと結着剤ポリフッ化ビニリデンを重量比8:1:1となるように秤量し、NMP溶媒中に分散させスラリーを作製した。塗工機を用い、作製したスラリーをAl集電体上に塗工した。塗工した極板を圧延機で圧延し、一辺が20mmの正方形に打ち抜き、電極状態に加工して、正極を得た。
【0134】
負極は、一辺が20mmの正方形のニッケルメッシュにリチウム金属を圧着し作製した。上記の正極と、負極とを、ポリエチレン微多孔膜のセパレータを介して対向させ、実施の形態2において説明した構成の電極群を作製した。
【0135】
電解液として、実施例1記載のサンプル5の非水電解液を用い、上記の電極群に注液し、封口し、ラミネート型リチウム二次電池を作製した。
【0136】
≪実施例12≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例11と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例12では、実施例1記載のサンプル8の非水電解液を用いた。
【0137】
≪比較例18≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例11と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。比較例18では、電解液として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比1:3で混合した溶媒に対し、1モル/Lとなる濃度でLiPF
6を溶解させた非水電解液を用いた。
【0138】
[充放電試験]
実施例11および12、比較例18のリチウム二次電池の充放電試験を以下の条件で実施した。充放電試験は25℃の恒温槽内で行なった。充電から先に開始し、30分休止した後放電し、充放電を3回繰り返した。充電は正極活物質の理論容量に対して0.1Cレートとなる電流値で、定電流定電圧で行なった。充電上限電圧は4.3V、定電圧時の下限電流値は0.05Cレートとした。放電は、放電下限電圧を3.0Vとし、充電と同じく0.1Cレートで行なった。
【0139】
充放電動作を3回繰り返し、安定した充放電動作を確認した3回目の放電容量を、それぞれ正極活物質1gあたりの容量に換算した値(mAhg
−1)を算出した。得た容量を以下の表6に示す。
【0140】
【表6】
【0141】
表6に示すように、実施例11および12、ならびに比較例18はいずれも155〜161mAhg
−1と、ほぼ同様の値を示した。すなわち、本発明の一態様である非水電解液は、体積比率で54%、79%と多量の難燃化剤であるホスファゼン溶媒を含んでいるにもかかわらず、本発明の実施の形態に係る電解液を用いた非水電解質二次電池は、従来のカーボネート系電解液と遜色ない放電容量を示した。このことは、本発明の非水電解液が電池の充放電動作に耐えうる十分な電気化学安定性を有していることを示している。
【0142】
≪実施例13≫
正極活物質として、LiNiCoAlO
2を用いた以外は、実施例11と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例13では、実施例1記載のサンプル8の非水電解液を用いた。
【0143】
≪実施例14≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例13と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例14では、実施例2記載のサンプル18の非水電解液を用いた。
【0144】
≪実施例15≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例13と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例15では、実施例3記載のサンプル22の非水電解液を用いた。
【0145】
≪実施例16≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例13と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例16では、実施例4記載のサンプル31の非水電解液を用いた。
【0146】
≪実施例17≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例13と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例17では、実施例5記載のサンプル42の非水電解液を用いた。
【0147】
≪比較例19≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例13と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。比較例19では、電解液として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比1:3で混合した溶媒に対し、1モル/Lとなる濃度でLiPF
6を溶解させた非水電解液を用いた。
【0148】
[充放電試験]
実施例13〜17、比較例19のリチウム二次電池の充放電試験を以下の条件で実施した。充放電試験は25℃の恒温槽内で行なった。充電から先に開始し、30分休止した後放電し、充放電を3回繰り返した。充電は正極活物質の理論容量に対して0.05Cレートとなる電流値で、定電流で行なった。充電上限電圧は4.3V、放電下限電圧を2.5Vとし、放電は充電と同じく0.05Cレートで行なった。充放電動作を3回繰り返し、安定した充放電動作を確認した3回目の放電容量を、それぞれ正極活物質1gあたりの容量に換算した値(mAhg
−1)を算出した。得た容量を以下の表7に示す。
【0149】
【表7】
【0150】
表7に示すように、実施例13〜17、ならびに比較例19はいずれも185〜206mAhg
−1と、ほぼ同様の値を示した。すなわち、本発明の一態様である非水電解液は、体積比率で79〜82%と多量の難燃化剤であるホスファゼン溶媒を含んでいるにもかかわらず、本発明の実施の形態に係る電解液を用いた非水電解質二次電池は、従来のカーボネート系電解液と遜色ない放電容量を示した。このことは、本発明の非水電解液が電池の充放電動作に耐えうる十分な電気化学安定性を有していることを示している。
【0151】
[放電負荷試験]
実施例13〜17のリチウム二次電池の放電負荷試験を以下の条件で実施した。充電は正極活物質の理論容量に対して0.05Cレートとなる電流値により定電流で行ない、充電上限電圧は4.3V、放電下限電圧を2.5Vとした。充電から先に開始し、30分休止した後放電し、充放電を2回繰り返した。その後再度充電し、放電は0.2Cレートで放電下限電圧まで行なった。それぞれ0.05Cレートでの放電容量を100%としたときの容量維持率を算出した。得た容量維持率を以下の表8に示す。
【0152】
【表8】
【0153】
表8に示すように、実施例13および17はいずれも0.2Cレートにおいても、0.05Cレート時の70%以上の維持率を示した。また、実施例16および17においては維持率92〜94%の値を示した。このことは、本発明の非水電解液が高放電電流での充放電動作に耐えうる十分な電気化学安定性を有していることを示している。
【0154】
≪実施例18≫
本発明の一態様である非水電解液を含むリチウム二次電池の実施例について、以下説明する。
【0155】
負極活物質として、天然黒鉛を用い、負極活物質と結着剤ポリフッ化ビニリデンを重量比9:1となるように秤量し、NMP溶媒中に分散させスラリーを作製した。塗工機を用い、作製したスラリーをAl集電体上に塗工した。塗工した極板を圧延機で圧延し、一辺が20mmの正方形に打ち抜き、電極状態に加工して、負極を得た。
【0156】
対極は、一辺が20mmの正方形のニッケルメッシュにリチウム金属を圧着し作製した。上記の負極と、対極とを、ポリエチレン微多孔膜のセパレータを介して対向させ、実施の形態2にておいて説明した構成の電極群を作製した。
【0157】
電解液として、実施例2記載のサンプル18の非水電解液を用い、上記の電極群に注液し、封口し、ラミネート型リチウム二次電池を作製した。
【0158】
≪実施例19≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例18と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例19では、実施例6記載のサンプル46の非水電解液を用いた。
【0159】
≪比較例20≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例18と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。比較例20では、電解液として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比1:3で混合した溶媒に対し、1モル/Lとなる濃度でLiPF
6を溶解させた非水電解液を用いた。
【0160】
[充放電試験]
実施例18および19、比較例20のリチウム二次電池の充放電試験を以下の条件で実施した。充放電試験は25℃の恒温槽内で行なった。充電から先に開始し、30分休止した後放電し、充放電を3回繰り返した。充電は負極活物質の理論容量に対して0.05Cレートとなる電流値で、定電流定電圧で行なった。充電下限電圧は0V、定電圧時の下限電流値は0.005Cレートとした。放電は、放電上限電圧を2.0Vとし、充電と同じく0.05Cレートで行なった。充放電動作を3回繰り返し、安定した充放電動作を確認した3回目の放電容量を、それぞれ負極活物質1gあたりの容量に換算した値(mAhg
−1)を算出した。得た容量を以下の表9に示す。
【0161】
【表9】
【0162】
表9に示すように、実施例18および19、ならびに比較例20はいずれも333〜350mAhg
−1と、ほぼ同様の値を示した。すなわち、本発明の一態様である非水電解液は、体積比率で82%と多量の難燃化剤であるホスファゼン溶媒を含んでいるにもかかわらず、本発明の実施の形態に係る電解液を用いた非水電解質二次電池は、従来のカーボネート系電解液と遜色ない放電容量を示した。このことは、本発明の非水電解液が電池の充放電動作に耐えうる十分な電気化学安定性を有していることを示している。
【0163】
≪実施例20≫
本発明の一態様である非水電解液を含むナトリウム二次電池の実施例について、以下説明する。
【0164】
正極活物質として、NaFe
0.4Mn
0.3Ni
0.3O
2を用い、正極活物質と導電助剤アセチレンブラックと結着剤ポリフッ化ビニリデンを重量比8:1:1となるように秤量し、NMP溶媒中に分散させスラリーを作製した。塗工機を用い、作製したスラリーをAl集電体上に塗工した。塗工した極板を圧延機で圧延し、一辺が20mmの正方形に打ち抜き、電極状態に加工して、正極を得た。
【0165】
負極は、一辺が20mmの正方形のニッケルメッシュにナトリウム金属を圧着し作製した。上記の正極と、負極とを、ポリエチレン微多孔膜のセパレータを介して対向させ、実施の形態1にておいて説明した構成の電極群を作製した。
【0166】
電解液として、実施例8記載のサンプル50の非水電解液を用い、上記の電極群に注液し、封口し、ラミネート型ナトリウム二次電池を作製した。
【0167】
≪実施例21≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例20と同じ方法でナトリウム二次電池を作製した。実施例21では、実施例9記載のサンプル52の非水電解液を用いた。
【0168】
≪比較例21≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例20と同じ方法でナトリウム二次電池を作製した。比較例21では、電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:3で混合した溶媒に対し、1モル/Lとなる濃度でNaPF6を溶解させた非水電解液を用いた。
【0169】
[充放電試験]
実施例20および21、比較例21のナトリウム二次電池の充放電試験を以下の条件で実施した。充放電試験は25℃の恒温槽内で行なった。充電から先に開始し、30分休止した後放電し、充放電を3回繰り返した。充電は正極活物質の理論容量に対して0.05Cレートとなる電流値で、定電流で行なった。充電上限電圧は3.8V、放電下限電圧を2.0Vとし、放電は充電と同じく0.05Cレートで行なった。
【0170】
充放電動作を3回繰り返し、安定した充放電動作を確認した3回目の放電容量を、それぞれ正極活物質1gあたりの容量に換算した値(mAhg
−1)を算出した。得た容量を以下の表10に示す。
【0171】
【表10】
【0172】
表10に示すように、実施例20〜21、ならびに比較例21はいずれも88〜98mAhg
−1と、ほぼ同様の値を示した。すなわち、本発明の一態様である非水電解液は、体積比率で79%と多量の難燃化剤であるホスファゼン溶媒を含んでいるにもかかわらず、本発明の実施の形態に係る電解液を用いた非水電解質二次電池は、従来のカーボネート系電解液と遜色ない放電容量を示した。このことは、本発明の非水電解液がアルカリ金属塩のアルカリ金属種が異なっても、電池の充放電動作に耐えうる十分な電気化学安定性を有していることを示している。
【0173】
≪実施例22≫
負極活物質として、難黒鉛化炭素を用い、負極活物質と結着剤ポリフッ化ビニリデンを重量比9:1となるように秤量し、NMP溶媒中に分散させスラリーを作製した。塗工機を用い、作製したスラリーをAl集電体上に塗工した。塗工した極板を圧延機で圧延し、一辺が20mmの正方形に打ち抜き、電極状態に加工して、負極を得た。
【0174】
対極は、一辺が20mmの正方形のニッケルメッシュにナトリウム金属を圧着し作製した。上記の負極と、対極とを、ポリエチレン微多孔膜のセパレータを介して対向させ、実施の形態1にておいて説明した構成の電極群を作製した。
【0175】
電解液として、実施例8記載のサンプル50の非水電解液を用い、上記の電極群に注液し、封口し、ラミネート型ナトリウム二次電池を作製した。
【0176】
≪実施例23≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例22と同じ方法でナトリウム二次電池を作製した。実施例23では、実施例9記載のサンプル52の非水電解液を用いた。
【0177】
≪比較例22≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例22と同じ方法でナトリウム二次電池を作製した。比較例22では、電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:3で混合した溶媒に対し、1モル/Lとなる濃度でNaPF
6を溶解させた非水電解液を用いた。
【0178】
[充放電試験]
実施例22および23、比較例22のナトリウム二次電池の充放電試験を以下の条件で実施した。充放電試験は25℃の恒温槽内で行なった。充電から先に開始し、30分休止した後放電し、充放電を3回繰り返した。充電は負極活物質の理論容量に対して0.05Cレートとなる電流値で、定電流定電圧で行なった。充電下限電圧は0V、定電圧時の下限電流値は0.005Cレートとした。放電は、放電上限電圧を2.0Vとし、充電と同じく0.05Cレートで行なった。充放電動作を3回繰り返し、安定した充放電動作を確認した3回目の放電容量を、それぞれ負極活物質1gあたりの容量に換算した値(mAhg
−1)を算出した。得た容量を以下の表11に示す。
【0179】
【表11】
【0180】
表11に示すように、実施例22および23、ならびに比較例22はいずれも253〜257mAhg
−1と、ほぼ同様の値を示した。すなわち、本発明の一態様である非水電解液は、体積比率で79%と多量の難燃化剤であるホスファゼン溶媒を含んでいるにもかかわらず、本発明の実施の形態に係る電解液を用いた非水電解質二次電池は、従来のカーボネート系電解液と遜色ない放電容量を示した。このことは、本発明の非水電解液がアルカリ金属塩のアルカリ金属種が異なっても、電池の充放電動作に耐えうる十分な電気化学安定性を有していることを示している。
【0181】
以上説明したように、溶媒としてグライム溶媒、ならびにホスファゼン溶媒を含み、溶媒に、アルカリ金属カチオンとアニオンとからなるアルカリ金属塩が溶解した非水電解液により、ホスファゼン系液体状難燃剤の添加割合をより任意に制御することができ、その結果、電解液設計の自由度を高めることができる。また、例えば、ホスファゼン系液体状難燃剤の添加割合を従来以上に高めることにより、より安全性に優れる非水電解液を提供することが出来る。
【0182】
なお、以上の実施例では、下記式で表される環状ホスファゼン化合物においてRがエチル基またはフェニル基であるホスファゼン化合物を用いたが、これに限られず、Rがアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基等のホスファゼン化合物であっても、グライム溶媒を含むことによりホスファゼン化合物の添加割合を増加させることができる。
【0183】
【化3】
【0184】
≪実施例24≫
実施例24では、比較例14におけるサンプル58、60、61、63に対して、グライム溶媒であるテトラエチレングリコールジメチルエーテルを溶液が均一に一相になるまで添加することで、カーボネート溶媒であるプロピレンカーボネートとホスファゼン溶媒とグライム溶媒とを含んだ非水電解液87〜90をそれぞれ調合した。各サンプルの相溶性及び導電性を、実施例1と同じ方法で評価した。結果を表12に示す。
【0185】
上記サンプルのプロピレンカーボネートとホスファゼン溶媒とグライム溶媒との合計体積(全溶媒体積)に対するホスファゼン溶媒の体積比率は、それぞれ38%、54%、62%、77%であり、高い体積比率を実現できた。
【0186】
【表12】
【0187】
また、プロピレンカーボネートに代えて、エステル化合物であるγ-ブチロラクトンでも同様の実験を行った。その結果、エステル系溶媒を用いた場合でも、カーボネート系溶媒の場合と同様に、グライム溶媒を添加することで非水電解液が均一に一相になる傾向を確認した。
【0188】
≪実施例25≫
ホスファゼン溶媒として、式(1)のX
1〜X
6のうち全てがフッ素原子である化合物が37%と、X
1〜X
6の中の一つが塩素原子でそれ以外はフッ素原子である化合物が31%と、X
1〜X
6の中の二つが塩素原子でそれ以外はフッ素原子である化合物が32%とで構成された混合物(混合物におけるフッ素原子と塩素原子の平均個数の比は、フッ素原子5個に対して塩素原子1個)を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調合した。実施例25の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は43%であり、サンプル91とした。サンプルの相溶性及び導電性を、実施例1と同じ方法で評価した。
【0189】
このようなホスファゼン化合物の混合物をホスファゼン溶媒として用いた場合でも、グライム溶媒を添加することで、従来の非水電解液よりも高い比率でホスファゼン溶媒を含むことが可能であることが確認された。
【0190】
【表13】