特許第6339076号(P6339076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6339076非水電解液およびそれを用いた非水電解質二次電池
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  • 特許6339076-非水電解液およびそれを用いた非水電解質二次電池 図000024
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339076
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】非水電解液およびそれを用いた非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20180528BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20180528BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20180528BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20180528BHJP
【FI】
   H01M10/0569
   H01M10/0568
   H01M10/052
   H01M10/054
【請求項の数】12
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-527185(P2015-527185)
(86)(22)【出願日】2014年7月18日
(86)【国際出願番号】JP2014003834
(87)【国際公開番号】WO2015008496
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2013-150620(P2013-150620)
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-84422(P2014-84422)
(32)【優先日】2014年4月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拡哲
(72)【発明者】
【氏名】北條 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】中堤 貴之
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−033663(JP,A)
【文献】 特開2012−209145(JP,A)
【文献】 特開2004−055208(JP,A)
【文献】 特開2012−059391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グライム溶媒およびホスファゼン溶媒を含む溶媒成分と、
前記溶媒成分に溶解した、アルカリ金属カチオンとアニオンとからなるアルカリ金属塩と、
を含み、
前記ホスファゼン溶媒が、下記式(1)で表される環状ホスファゼン化合物である、
非水電解液であって、
前記非水電解液中の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率が52%以上88%以下である、非水電解液
【化1】
[式(1)中、X1〜X6は、それぞれ独立して、ハロゲン原子またはOR1を示す。R1は、置換もしくは無置換の芳香族基または飽和脂肪族基であり、前記芳香族基および前記飽和脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子または珪素原子を含んでいてもよく、前記飽和脂肪族基は直鎖状または環状である。]
【請求項2】
前記グライム溶媒が、下記式(2)で表される化合物を含む請求項1記載の非水電解液。
2−O(CX78-CX910−O)n−R3・・・(2)
[式(2)中、X7〜X10は、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を示す。R2およびR3は、それぞれ独立して、芳香族基、不飽和脂肪族基または飽和脂肪族基を示す。前記芳香族基、前記不飽和脂肪族基および前記飽和脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子または珪素原子を含んでいてもよい。前記不飽和脂肪族基および前記飽和脂肪族基は直鎖状または環状である。nは1〜6の整数である。]
【請求項3】
前記式(2)において、前記nは1〜4のいずれかであり、X7〜X10は水素原子である、請求項記載の非水電解液。
【請求項4】
前記式(2)の前記nが2〜4のいずれかであるグライム溶媒が、1molの前記アルカリ金属塩に対し、0.95mol以上1.05mol以下の範囲で含まれている、請求項記載の非水電解液。
【請求項5】
前記式(2)の前記nが1であるグライム溶媒が、1molの前記アルカリ金属塩に対し、1.95mol以上2.05mol以下の範囲で含まれている、請求項記載の非水電解液。
【請求項6】
前記式(2)の前記nが3である、請求項記載の非水電解液。
【請求項7】
前記アニオンが、BF4-、PF6-、N(SO2CF32-、N(SO2F)2-、N(SO2CF2CF32-、N(SO2−CF2CF2SO2−)-および、[N−(SO2F)−(SO2CF3)]-、からなる群から選ばれる少なくともいずれか一種である請求項1記載の非水電解液。
【請求項8】
前記溶媒成分には、実質的に、グライム溶媒とホスファゼン溶媒のみが含まれている請求項1記載の非水電解液。
【請求項9】
前記溶媒成分が、カーボネート系溶媒およびエステル系溶媒からなる群から選択される少なくともいずれか一種をさらに含む、請求項1記載の非水電解液。
【請求項10】
前記アルカリ金属カチオンが、リチウムイオンまたはナトリウムイオンのいずれかである請求項1記載の非水電解液。
【請求項11】
前記グライム溶媒が、前記アルカリ金属カチオンに配位している請求項1記載の非水電解液。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の非水電解液と、
アルカリ金属カチオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、
アルカリ金属カチオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含む負極と、
を備えた非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
非水電解液およびそれを用いた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池、中でもリチウム二次電池は、高電圧・高エネルギー密度であるという特徴を有し、また、貯蔵性能や出力性能に優れているため、多くの電気製品に使用されている。また、最近では、キャリアイオンとしてリチウムイオンの代わりにナトリウムイオンを用いるナトリウム二次電池が、低コストな非水電解質二次電池として注目されている。
【0003】
非水電解質二次電池の電解液として用いられる炭酸エステル等の有機溶媒は、引火点が10〜160℃と低い。したがって、電池内に異物が混入していた場合や、電池制御部や充電器の故障で過充電等の電池異常状態に陥った場合にも、電池の安全性を担保するために、種々の工夫がなされている。
【0004】
電解液の観点から、電池の安全性向上を試みられた取り組みとして、例えば、炭酸エステル等の有機溶媒に、ホスファゼン液体状難燃剤が添加されている電解液を用いたリチウムイオン電池が開示されている(特許文献1および2参照)。
【0005】
特許文献1では、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの2種類の有機溶媒に、ジエチルカーボネートと同様の官能基であるエトキシ基を有するホスファゼン液体状難燃剤が添加されている電解液を用いたリチウムイオン電池が開示されている。具体的には、カーボネートを主成分とする非水電解液に対して、ホスファゼン系液体状難燃剤の添加量が5〜35質量%範囲の割合で添加できることが開示されている。この電解液を用いることにより、リチウムイオン電池を長期間に亘り放置したときに、ホスファゼンが有機溶媒と官能基置換反応を起こすことがなく、難燃剤としての性質が維持されることで、電池異常時に非水電解液の難燃性が十分に発揮され、電池の安全性を確保できることが開示されている。
【0006】
特許文献2では、ホスファゼン系難燃剤と引火点が無検出性のフッ素置換エーテルが混合された非水電解液を用いた電池が開示されている。具体的には、カーボネートを主成分とする非水電解液に対して、ホスファゼン系難燃剤が0〜10重量%、フッ素置換エーテルが0〜50重量%の割合で添加できることが開示されている。また、フッ素置換エーテルとしては、R1−O−R2(R1およびR2は、炭素数が1〜10の範囲のアルキル基)で表される直鎖状エーテル化合物の水素原子のうち、少なくとも一部の水素原子がフッ素原子で置換されたものであることが開示されている。この電解液は、ホスファゼン系難燃剤が混合されたことによって、電池異常で温度上昇したときの電池の燃焼が抑制され、電池挙動を穏やかにし安全性を確保することができる。また、フッ素置換エーテルが混合されたことで、ホスファゼン系難燃化剤の混合による非水電解液の粘性増加が抑えられるため、非水電解液中でのイオン移動性が確保され、高率放電特性の低下を抑制することができる、ということが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−059391
【特許文献2】WO2013/032004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非水電解液に対するホスファゼン系液体状難燃剤の添加割合は、5〜35質量%の範囲と、難燃剤が占める割合が狭い範囲に制限されてしまうという課題があった。これは、ホスファゼン系液体状難燃剤の添加割合が35質量%以上になると、活物質と非水電解液との間のリチウムイオンの移動が阻害され、充放電動作を適正に行うことができなくなり、反対に、ホスファゼン系液体状難燃剤の添加量が5質量%未満になると、難燃剤の割合が小さくなるため、電池異常時に難燃性を発揮しづらくなるため、と特許文献1に記載されている。
【0009】
また、特許文献2の技術でも、非水電解液に対するホスファゼン系液体状難燃剤の添加割合は、0〜10質量%範囲と、難燃剤が占める割合が狭い範囲に制限されてしまうという課題があった。
【0010】
上記の事情に鑑み、本開示は、従来よりもホスファゼン系液体状難燃剤の混合割合を、より幅広く、任意の割合で混合することが可能な非水電解液を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様である非水電解液は、
グライム溶媒およびホスファゼン溶媒を含む溶媒成分と、
前記溶媒成分に溶解した、アルカリ金属カチオンとアニオンとからなるアルカリ金属塩と、
を含み、
前記ホスファゼン溶媒が、下記式(1)で表される環状ホスファゼン化合物である。
【0012】
【化1】
[式(1)中、X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子またはORを示す。Rは、置換もしくは無置換の芳香族基または飽和脂肪族基であり、前記芳香族基および前記飽和脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子または珪素原子を含んでいてもよく、前記飽和脂肪族基は直鎖状または環状である。]
【発明の効果】
【0013】
ホスファゼン系液体状難燃剤の添加割合を任意に混合され得ることから、本発明の一態様の非水電解液は、用途に応じ、任意にホスファゼン系液体状難燃剤の添加割合を制御することができ、その結果、電解液設計の自由度を高めることができる。また、本発明のこの態様によれば、例えば、ホスファゼン系液体状難燃剤の添加割合を従来以上に高めることにより、より安全性に優れる非水電解液を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】例示的な実施形態のアルカリ金属二次電池を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、アルカリ金属塩とホスファゼン溶媒とを含む非水電解液に関して、アルカリ金属塩の溶解性、および溶媒の相溶性の観点から鋭意検討を行い、その結果アルカリ金属塩とホスファゼン溶媒に加えて、第三成分となる特定の溶媒をさらに含むことによって、アルカリ金属塩を十分に溶解し、かつ、ホスファゼン溶媒と第三成分の溶媒が相分離せず、任意の組成で混合することが出来る非水電解液を得られることを見出した。
【0016】
本発明の第1の態様は、
グライム溶媒およびホスファゼン溶媒を含む溶媒成分と、
前記溶媒成分に溶解した、アルカリ金属カチオンとアニオンとからなるアルカリ金属塩と、
を含み、
前記ホスファゼン溶媒が、下記式(1)で表される環状ホスファゼン化合物である、
非水電解液を提供する。
【0017】
【化1】
[式(1)中、X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子またはORを示す。Rは、置換もしくは無置換の芳香族基または飽和脂肪族基であり、前記芳香族基および前記飽和脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子または珪素原子を含んでいてもよく、前記飽和脂肪族基は直鎖状または環状である。]
【0018】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記非水電解液中の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率が42〜88%である非水電解液を提供する。第2の態様に係る非水電解液によれば、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率を従来の非水電解液よりも高くすることができる。したがって、第2の態様に係る非水電解液では、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率を適切に調整することが可能となる。
【0019】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、グライム溶媒が、下記式(2)で表される化合物を含む非水電解液を提供する。
−O(CX-CX10−O)−R・・・(2)
[式(2)中、X〜X10は、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を示す。RおよびRは、それぞれ独立して、芳香族基、不飽和脂肪族基または飽和脂肪族基を示す。前記芳香族基、前記不飽和脂肪族基および前記飽和脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子または珪素原子を含んでいてもよい。前記不飽和脂肪族基および前記飽和脂肪族基は直鎖状または環状である。nは1〜6の整数である。]
【0020】
第3の態様に係る非水電解液は、グライム溶媒が上記の一般式で表される化合物を含んでいるので、アルカリ金属を十分に溶解すると同時に、耐酸化性に優れる。したがって、第3の態様に係る非水電解液は、4V級の高電圧を発揮できる活物質の充放電反応にも寄与することができる。
【0021】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記式(2)において、nは1〜4のいずれかであり、X〜X10は水素原子である、非水電解液を提供する。第4の態様に係る非水電解液は、nが1〜4であることで、アルカリ金属カチオンに対する強い相互作用を有したまま、適度な流動性を有するため、溶媒として有利に使用され得る。
【0022】
本発明の第5の態様は、第3の態様において、前記式(2)においてnが2〜4のいずれかであるグライム溶媒が、1molの前記アルカリ金属塩に対し、0.95mol以上1.05mol以下の範囲で含まれている非水電解液を提供する。また、本発明の第6の態様は、第3の態様において、前記式(2)においてnが1である場合、前記グライム溶媒が、1molの前記アルカリ金属塩に対し、1.95mol以上2.05mol以下の範囲で含まれている非水電解液を提供する。第5および第6の態様に係る非水電解液には、アルカリ金属塩とグライム溶媒とがこのような割合で含まれているので、ホスファゼン溶媒を主溶媒と用いた場合でも、アルカリ金属塩の溶解性を保持することができる。本発明の第7の態様は、第3の態様において、前記式(2)においてnが3である非水電解液を提供する。
【0023】
本発明の第8の態様は、第1〜第7の態様のいずれか一つの態様において、前記アニオンが、BF、PF、N(SOCFN(SOF)、N(SOCFCF、N(SO−CFCFSO−)および、[N−(SOF)−(SOCF)]、からなる群から選ばれる少なくともいずれか一種である非水電解液を提供する。第8の態様に係る非水電解液は、これらのアニオンを含むので、優れたアルカリ金属塩の溶解性を有する。
【0024】
本発明の第9の態様は、第1〜第8の態様のいずれか一つの態様において、前記溶媒成分が、実質的に、グライム溶媒とホスファゼン溶媒とのみを含む非水電解液を提供する。第9の態様に係る非水電解液は、ホスファゼン溶媒により難燃性能に優れ、またグライム溶媒によりアルカリ金属を十分に溶解すると同時に、非水電解液の耐酸化性に優れる。したがって、第9の態様に係る非水電解液は、4V級の高電圧を発揮できる活物質の充放電反応にも寄与することができる。
【0025】
本発明の第10の態様は、第1〜第8の態様のいずれか一つの態様において、前記溶媒成分が、カーボネート系溶媒およびエステル系溶媒からなる群から選択される少なくともいずれか一種をさらに含む非水電解液を提供する。第10の態様に係る非水電解液は、非水電解液中の全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の割合を高くすることができるため高い難燃性能を有し、かつ、適度な流動性を有するため、電解液として有利に使用され得る。
【0026】
本発明の第11の態様は、第1〜第10の態様のいずれか一つの態様において、前記アルカリ金属カチオンが、リチウムイオンまたはナトリウムイオンのいずれかである非水電解液を提供する。第11の態様に係る非水電解液は、リチウムイオン、あるいはナトリウムイオンの卑な標準電極電位に起因する3V以上の高電圧の非水電解質二次電池用の非水電解液を実現することができる。
【0027】
本発明の第12の態様は、第1〜第11の態様のいずれか一つの態様において、前記グライム溶媒が、前記アルカリ金属カチオンに配位している非水電解液を提供する。第12の態様に係る非水電解液は、グライム溶媒がアルカリ金属カチオンに配位している非水電解液であり、アルカリ金属塩の溶解性に優れるので、高濃度のアルカリ金属塩を溶解させることが出来る。
【0028】
本発明の第13の態様は、第1〜第12の態様のいずれか一つの態様の非水電解液と、アルカリ金属カチオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、アルカリ金属カチオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含む負極と、を備えた非水電解質二次電池を提供する。第13の態様に係る非水電解質二次電池は、従来よりも幅広い割合、すなわち任意の割合でホスファゼン系液体状難燃剤を含むことができる非水電解液を備えるので、用途に応じた安全性と性能のバランスを任意が設計されることができる。したがって、第13の態様に係る非水電解質二次電池によれば、例えば、安全性が高く、さらに、電圧が高く、エネルギー密度の高い二次電池を得ることが出来る。
【0029】
(実施の形態1)
以下、本発明の一態様である非水電解液の実施の形態をより具体的に説明する。
【0030】
本発明の一態様である電解液は、溶媒成分としてグライム溶媒およびホスファゼン溶媒を含み、前記溶媒成分に、アルカリ金属カチオンとアニオンとからなるアルカリ金属塩が溶解した非水電解液である。
【0031】
本発明者らは、アルカリ金属塩とホスファゼン溶媒とを含む非水電解液に関して、アルカリ金属塩の溶解性、および溶媒の相溶性の観点から鋭意検討を行い、その結果アルカリ金属塩とホスファゼン溶媒に加えて、第三成分としてグライム溶媒をさらに含むことによって、アルカリ金属塩を十分に溶解し、かつ、ホスファゼン溶媒と第三成分であるグライム溶媒が相分離せず、任意の組成で混合することが出来る非水電解液を得ることができることを見出した。
【0032】
本発明の一態様である非水電解液の均一混合のメカニズムについて、従来の炭酸エステルとホスファゼン溶媒を含む非水電解液と比較しながら、以下に説明する。
【0033】
まず、従来の炭酸エステルとホスファゼン溶媒を含む非水電解液の混合メカニズムについて、説明する。一般的に、ホスファゼン溶媒は分子内の極性が非常に小さく、アルカリ金属塩を溶解させることが出来ないが、炭酸エステル溶媒は分子内に極性を有することから、アルカリ金属塩のカチオンに対して炭酸エステルが溶媒和することで、アルカリ金属塩を溶解させることが出来る。そこで、炭酸エステル溶媒をホスファゼンに混合した混合溶媒に対してアルカリ金属塩を混合した非水電解液が従来から検討されている。しかしながら、本発明者らが検討した結果、この系において、炭酸エステル溶媒に対するホスファゼン溶媒の量を増やしていった場合、非水電解液が容易に相分離してしまうことが明らかとなった。分離した相の一方はアルカリ金属塩を含む炭酸エステルを主として含む相で、もう一方はアルカリ金属塩を含まないホスファゼンを主として含む相であった。
【0034】
この原因について鋭意検討した結果、相分離のメカニズムとして、以下の結論に至った。すなわち、アルカリ金属カチオンに対して数多くの炭酸エステル溶媒が溶媒和もしくはカチオンの周りを取り囲み、アルカリ金属カチオンの表面電荷密度を十分に低下させた場合には、極性の小さなホスファゼン溶媒を一定量以内の量を混合させることが可能であるのに対して、炭酸エステル溶媒に対してホスファゼン溶媒の量を増やしていった場合には、アルカリ金属カチオンに対して、その表面電荷密度を十分に低下させるに足る量の炭酸エステル溶媒が不足し、極性の小さなホスファゼン溶媒を混合させることが出来ずに、過剰分のホスファゼン相が分離することで、相分離したことがわかった。
【0035】
これら従来の非水電解液の結果を踏まえ、アルカリ金属カチオンに対して、より強く相互作用し、それによりカチオンの表面電荷密度を十分に低下させ、極性の小さなホスファゼン溶媒を多量に混合させることの出来る溶媒について種々の検討した結果、グライム溶媒がその機能を有していることを見出した。本発明の一態様である非水電解液における、グライム溶媒は、アルカリ金属カチオンに対して、非常に強く相互作用し、効率的にアルカリ金属カチオンの表面電荷密度を低下させることが出来る。このため、アルカリ金属塩が溶解した非水溶媒においても、極性の小さなホスファゼン溶媒を任意の比率で均一に相分離することなく混合することが出来るのである。
【0036】
本発明の一態様である非水電解液において用いることの出来るホスファゼン溶媒は、リンおよび窒素を構成元素とする二重結合を持つ液体で、下記式(1)で表される環状ホスファゼン化合物である。
【0037】
【化1】
[式(1)中、X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子またはORを示す。Rは、置換もしくは無置換の芳香族基または飽和脂肪族基であり、前記芳香族基および前記飽和脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子または珪素原子を含んでいてもよく、前記飽和脂肪族基は直鎖状または環状である。]
【0038】
このようなホスファゼン化合物は、難燃化剤として、高温環境下で発火を防ぐ作用や消火作用を発揮することが知られている。
【0039】
環状ホスファゼン化合物は、鎖状ホスファゼン化合物と比較して電気化学的に安定な物質であるので、非水電解液の溶媒として用いられた場合に長期間に亘って非水電解液の難燃性を維持しつつ、優れた電池の性能を維持することができる。また、上記式(1)で表される環状ホスファゼン化合物は、例えば置換基にアミノ基が含まれている他の環状ホスファゼン化合物と比較すると、電気化学的に安定で分解されにくい。したがって、上記式(1)で表される環状ホスファゼン化合物を非水電解液の溶媒として用いた場合、例えば置換基にアミノ基が含まれている他の環状ホスファゼン化合物と比較して、長期間に亘って非水電解液の難燃性を維持しつつ、優れた電池の性能を維持することが可能となる。これらの理由から、非水電解液の溶媒成分に占めるホスファゼン溶媒の割合が高くなるほど、本実施形態の非水電解液に用いられる上記式(1)で表される環状ホスファゼン化合物によってもたらされる効果、すなわち、長期間に亘って非水電解液の難燃性を維持しつつ、優れた電池の性能を維持することができるという効果がより顕著となる。
【0040】
上記式(1)で表される環状ホスファゼン化合物は、例えば、ヘキサフルオロホスファゼンとナトリウムアルコキシドを用いた、下記反応工程式に記載の公知の反応で合成することができる。
[反応工程式]
【0041】
【化2】
【0042】
本発明の一態様である非水電解液に用いることの出来るグライム溶媒は、グリコールジエーテル類を意味し、グリコールエーテルの末端をアルキル基で置換した非プロトン性溶剤である。グライム溶媒としては、下記式(2)で表される化合物を用いることが出来る。
−O(CX−CX10−O)−R・・・(2)
ここで、式中のX〜X10はそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を示す。RおよびRは、それぞれ独立して、芳香族基、不飽和脂肪族基または飽和脂肪族基を示す。前記芳香族基、前記不飽和脂肪族基および前記飽和脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子または珪素原子を含んでいてもよい。前記不飽和脂肪族基および前記飽和脂肪族基は直鎖状または環状である。nは1〜6の整数である。
【0043】
グライム溶媒は、炭素Cと酸素Oからなる結合双極子モーメントの大きなC−O結合を多数持っている。また、その結合の回転障壁の小ささから多様な配座をとることができる。これらの理由から、アルカリ金属カチオンに対して、強く相互作用、すわなち、配位し、アルカリ金属塩を溶解させ、かつアルカリ金属カチオンの表面電荷密度を十分に低下させることが出来る。
【0044】
上記式(2)におけるX〜X10は、全てが水素原子、もしくは、水素原子とフッ素原子から選ばれるいずれかであってもよい。電気化学的安定性の点、およびアルカリ金属カチオンに対しての相互作用の強さの点で優れるからである。
【0045】
上記式(2)におけるRおよびRは、それぞれ独立に飽和脂肪族基もしくは芳香族基であってもよい。飽和脂肪族基の場合、アルキル基もしくは、水素原子の一部がフッ素置換されていてもよいアルキル基であってもよいし、芳香族基の場合、フェニル基もしくは、水素原子の一部がフッ素置換されていてもよいフェニル基であってもよい。電気化学的安定性の点、およびアルカリ金属カチオンに対しての相互作用の強さの点で優れるからである。アルキル基の炭素数が大きくなると、アルカリ金属カチオンに対する相互作用が立体的に阻害されてしまうため、炭素数は、より少ないことが好ましく、炭素数が4以下であることが好ましい。
【0046】
上記式(2)における、エチレンオキシド単位の繰り返しを表すnについては1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4である。nが1〜4の場合、アルカリ金属カチオンに対する強い相互作用を有したまま、適度な流動性を有するため、溶媒として有利に使用できるためである。
【0047】
また、上記式(2)において、nが2〜4のいずれかで、グライム溶媒が1molのアルカリ金属塩に対し0.95mol以上1.05mol以下の範囲で含まれていてもよい。また、上記式(2)においてnが1である場合、グライム溶媒が1molのアルカリ金属塩に対し1.95mol以上2.05mol以下の範囲で含まれてもよい。アルカリ金属塩とグライム溶媒とがこのような割合で非水電解液に含まれていると、ホスファゼン溶媒を主溶媒と用いた場合でも、アルカリ金属塩の溶解性を保持することができる。また、上記式(2)においてnが3であってもよい。
【0048】
本発明の一態様である電解液に使用するアルカリ金属塩はMXと表わした場合、Mはカチオンとなるアルカリ金属、Xは対のアニオンとなる物質である。カチオンとなるアルカリ金属Mには制限はなく、通常の二次電池に支持塩や活物質として使用されているアルカリ金属がいずれも使用可能である。具体的には、Li、Na、K、RbおよびCsを挙げることができるが、最も好ましくはLiまたはNaである。重量が軽く、また高電圧の二次電池を形成することが出来るからである。
【0049】
本発明の一態様である電解液に使用するアルカリ金属塩のアニオンXとなる物質としては、例として、Cl、Br、I、BF、PF、CFSO、ClO、CFCO、AsF、SbF、AlCl、N(CFSON(FSO、N(CFCFSO、N(SO−CFCFSO−)、およびN[(CFSO)(FSO)]が挙げられる。化学的安定性の観点から、好ましくはBF、PF、ClO、N(CFSO、N(FSO、N(CFCFSO、N(SO−CFCFSO−)、および、N[(CFSO)(FSO)]である。グライム溶媒に対する溶解性の観点から、より好ましくはN(CFSO、N(FSO、N(CFCFSO、N(SO−CFCFSO−)、およびN[(CFSO)(FSO)]である。上記アルカリ金属塩は、一種、または、二種以上の混合物として使用してもよい。
【0050】
なお、式(2)において、nが2〜4のいずれかの場合、1molの前記アルカリ金属塩に対し、グライム溶媒が約1mol、具体的には0.95mol以上1.05mol以下の範囲で含まれていてもよい。また、nが1である場合、グライム溶媒が、1molの前記アルカリ金属塩に対し約2mol、具体的には1.95mol以上2.05mol以下の範囲で含まれていてもよい。このような範囲であれば、ホスファゼンを主溶媒と用いた場合でも、アルカリ金属塩の溶解性を保持することができる。
【0051】
本発明の一態様である非水電解液に含まれる溶媒成分として、実質的に、グライム溶媒、とホスファゼン溶媒のみが含まれていてもよい。これにより、ホスファゼン溶媒を含むことにより、難燃性能に優れ、またグライム溶媒を含むことによりアルカリ金属を十分に溶解し、高いイオン伝導性を有すると同時に、非水電解液の耐酸化性に優れるので、4V級の高電圧を発揮できる活物質の充放電反応にも寄与することができる。
【0052】
また、逆に、本発明の一態様である非水電解液の溶媒成分として、グライム溶媒、ホスファゼン溶媒に、加えて、さらに他の非水溶媒を含んでいてもよい。他の非水溶媒としては、非水電解液として公知の溶媒が含まれていてもよい。他の非水溶媒として、具体的には、環状もしくは鎖状のカーボネート類、環状もしくは鎖状の炭酸エステル、環状もしくは鎖状のエステル類、環状もしくは鎖状のエーテル類、ニトリル類、アミド類などが挙げられる。例えば、本実施形態の非水電解液が、カーボネート系溶媒およびエステル系溶媒からなる群から選択される少なくともいずれか一種をさらに含んでいてもよい。
【0053】
(実施の形態2)
以下、図面を参照しながら、本発明一態様に係るアルカリ金属二次電池の実施の形態をより具体的に説明する。図1は、本実施の形態のアルカリ金属二次電池の構成を例示する模式的な断面図である。
【0054】
図1に、本実施の形態のアルカリ金属二次電池の模式的な構成を示す。正極集電体11とその上に形成される正極合剤層12とで正極13が構成される。負極集電体14とその上に形成される負極合剤層15とで負極16が構成される。正極13と負極16とはセパレータ17を介して互いに対向し、それらが外装18で覆われるようにして電池が構成される。
【0055】
正極合剤層12は、アルカリ金属イオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含み、正極活物質以外に必要に応じて導電助剤、イオン伝導体および/またはバインダーを含んでいてもよい。
【0056】
以下に正極活物質の例を示す。アルカリ金属がリチウムの場合、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる公知の正極活物質、具体的には、遷移金属酸化物や、リチウム含有遷移金属酸化物などを用いることができる。具体的には、コバルトの酸化物、ニッケルの酸化物、マンガンの酸化物、および、五酸化バナジウム(V)に代表されるバナジウムの酸化物、ならびに、これらの混合物または複合酸化物などが用いられる。コバルト酸リチウム(LiCoO)などの、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物が正極活物質として最もよく知られている。また、遷移金属のケイ酸塩、リン酸鉄リチウム(LiFePO)に代表される遷移金属のリン酸塩なども用いることもできる。
【0057】
アルカリ金属がナトリウムの場合、ナトリウムイオンを吸蔵および放出することができる公知の正極活物質を用いることができる。具体的には、遷移金属酸化物や、ナトリウム含有遷移金属酸化物などを用いることができる。具体的には、コバルトの酸化物、ニッケルの酸化物、マンガンの酸化物、および、五酸化バナジウム(V)に代表されるバナジウムの酸化物、ならびに、これらの混合物または複合酸化物などが用いられる。マンガン酸ナトリウム(NaMnO)などの、ナトリウムと遷移金属とを含む複合酸化物が正極活物質として最もよく知られている。また、遷移金属のケイ酸塩、遷移金属のリン酸塩なども用いることもできる。
【0058】
導電剤およびイオン伝導体は、電極抵抗を低減するために用いられる。導電助剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラックなどの炭素材料、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子が挙げられる。イオン伝導体としては、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸メチルなどのゲル電解質、ポリエチレンオキシドなどの固体電解質が挙げられる。
【0059】
バインダーは、電極を構成する材料の結着性を向上するために用いられる。具体例としては、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミドなどが挙げられる。
【0060】
正極集電体11としては、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、およびそれらの合金などの金属材料で作られた多孔質または無孔のシートまたはフィルムを使用できる。アルミニウムおよびその合金が、安価で薄膜化しやすい点から好ましい。シートまたはフィルムとして、金属箔、メッシュなどが用いられる。抵抗値の低減、触媒効果の付与、正極合剤層12と正極集電体11との結合強化のため、正極集電体11の表面にカーボンなどの炭素材料を塗布してもよい。
【0061】
負極合剤層12は、アルカリ金属イオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含み、負極活物質以外に必要に応じて導電助剤、イオン伝導体および/またはバインダーを含んでいてもよい。イオン伝導体および/またはバインダーを含んでいてもよい。導電助剤、イオン伝導体、正極で使用したバインダーと同様のものを使用可能である。
【0062】
以下に負極活物質の例を示す。アルカリ金属がリチウムの場合、負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出する公知の材料であれば特に制限されるものではなく、例えばリチウム金属単体、リチウム金属合金、炭素、金属酸化物などを用いることができる。炭素としては、例えば黒鉛や、ハードカーボンやコークスといった非黒鉛系炭素を用いることができる。金属酸化物としては、例えばLiTi12で表されるチタン酸リチウム、などを用いることができる。リチウム金属合金としては、ケイ素化合物、錫化合物、アルミニウム化合物とリチウムの合金を用いることが出来る。
【0063】
アルカリ金属がナトリウムの場合、負極活物質としては、ナトリウムイオンを吸蔵・放出する公知の材料であれば特に制限されるものではなく、例えばナトリウム金属単体、ナトリウム金属合金、炭素、金属酸化物などを用いることができる。炭素としては、例えば黒鉛や、ハードカーボンやコークスといった非黒鉛系炭素を用いることができる。金属酸化物としては、例えばNaTiで表されるチタン酸ナトリウム、などを用いることができる。ナトリウム金属合金としては、錫化合物、ゲルマニウム化合物、亜鉛化合物、ビス増す化合物、インジウム化合物などとリチウムの合金を用いることが出来る。
【0064】
負極集電体14としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、銅、およびそれらの合金などの金属材料で作られた多孔質または無孔のシートまたはフィルムを使用できる。アルミニウムおよびその合金が、安価で薄膜化しやすい点から好ましい。シートまたはフィルムとして、金属箔、メッシュなどが用いられる。抵抗値の低減、触媒効果の付与、負極合剤層15と負極集電体14との結合強化のため、負極集電体14の表面にカーボンなどの炭素材料を塗布してもよい。
【0065】
セパレータ17には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス、セルロース、セラミックスなどからなる多孔質膜が用いられ、細孔内部に電解質を含浸して用いられる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例および比較例として、本発明の一態様である非水電解液、およびそれを用いた非水電解質二次電池の作製方法および結果を説明する。実施例中の非水電解液は、全てアルゴングローブボックス内で調合した。なお、本発明の実施形態は、以下に説明する実施例に限定されない。
【0067】
≪実施例1≫
グライム溶媒としてテトラエチレングリコールジメチルエーテル(CH−(OCHCH−OCH)を、ホスファゼン溶媒として下記式中(3)の置換基Rがエチル基となる化合物を、アルカリ金属塩としてリチウムビストリフルオロメチルスルフォニルイミド(LiN(CFCFSO)を使用して、非水電解液を調合した。
【0068】
【化3】
【0069】
まず、上記のグライム溶媒とアルカリ金属塩を、モル比率が1対1となるように混合し、アルカリ金属塩を溶解させた。ついで、その溶液に対して、上記グライム溶媒とホスファゼン溶媒の合計体積(全溶媒体積)に対するホスファゼン溶媒の体積比率が16、29、42、52、54、62、71、79、88%となるように、ホスファゼン溶媒を混合し、非水電解液サンプル1〜9を得た。
【0070】
非水電解液サンプル1〜9の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0071】
≪実施例2≫
グライム溶媒としてトリエチレングリコールジメチルエーテル(CH−(OCHCH−OCH)を用いた以外は実施例1と同様にして非水電解液を調合した。実施例2の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は28、37、46、55、64、73、82、91%であり、それぞれをサンプル12〜19とした。非水電解液サンプル12〜19の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0072】
≪実施例3≫
グライム溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル(CH−(OCHCH−OCH)を用いた以外は実施例1と同様にして非水電解液を調合した。実施例3の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率を80%とし、サンプル22とした。非水電解液サンプル22の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0073】
≪実施例4≫
グライム溶媒としてモノエチレングリコールジメチルエーテル(CH−(OCHCH−OCH)を用い、グライム溶媒とアルカリ金属塩を、モル比率が2対1となるように混合し、アルカリ金属塩を溶解させた以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調合した。実施例4の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は7、17、27、38、48、58、69、79、89%であり、それぞれをサンプル24〜32とした。非水電解液サンプル24〜32の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は2molであった。
【0074】
≪実施例5≫
アルカリ金属塩としてリチウムビスフルオロスルフォニルイミド(LiN(FSO)を使用した以外は、実施例4と同様にして非水電解液を調合した。実施例5の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は7、17、27、38、48、58、69、79、90%であり、それぞれをサンプル35〜43とした。非水電解液サンプル35〜43の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は2molであった。
【0075】
≪実施例6≫
アルカリ金属塩としてリチウムビスフルオロメチルスルフォニルイミド(LiN(CFSO)とリチウムビスフルオロスルフォニルイミド(LiN(FSO)を1対1のモル比率で混合したものを使用した以外は、実施例2と同様にして非水電解液を調合した。実施例6の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率を82%とし、それをサンプル46とした。非水電解液サンプル46の、1molのアルカリ金属混合塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0076】
≪実施例7≫
アルカリ金属塩としてリチウムビスフルオロメチルスルフォニルイミド(LiN(CFSO)とリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)を0.95対0.05のモル比率で混合したものを使用した以外は、実施例2と同様にして非水電解液を調合した。実施例7の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率を82%とし、それをサンプル48とした。非水電解液サンプル48の、1molのアルカリ金属混合塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0077】
≪実施例8≫
アルカリ金属塩としてナトリウムビストリフルオロメチルスルフォニルイミド(NaN(CFSO)を使用した以外は、実施例4と同様にして非水電解液を調合した。実施例8の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は79%とし、それをサンプル50とした。非水電解液サンプル50の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は2molであった。
【0078】
≪実施例9≫
アルカリ金属塩としてナトリウムビスフルオロスルフォニルイミド(NaN(FSO)を使用した以外は、実施例8と同様にして非水電解液を調合した。実施例9の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は79%とし、それをサンプル52とした。非水電解液サンプル52の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は2molであった。
【0079】
≪比較例1≫
ホスファゼン溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例1と同じ方法で、非水電解液サンプル10を調合した。比較例1の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は0%であり、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0080】
≪比較例2≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例1と同じ方法で、非水電解液サンプル11を調合した。比較例2の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/Lとなる濃度のアルカリ金属塩を混合した。
【0081】
≪比較例3≫
ホスファゼン溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例2と同じ方法で、非水電解液サンプル20を調合した。比較例20の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は0%であり、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0082】
≪比較例4≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例2と同じ方法で、非水電解液サンプル21を調合した。比較例4の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属塩を混合した。
【0083】
≪比較例5≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例3と同じ方法で、非水電解液サンプル23を調合した。比較例5の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属塩を混合した。
【0084】
≪比較例6≫
ホスファゼン溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例4と同じ方法で、非水電解液サンプル33を調合した。比較例6の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は0%であり、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は2molであった。
【0085】
≪比較例7≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例4と同じ方法で、非水電解液サンプル34を調合した。比較例7の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属塩を混合した。
【0086】
≪比較例8≫
ホスファゼン溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例5と同じ方法で、非水電解液サンプル44を調合した。比較例8の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は0%であり、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は2molであった。
【0087】
≪比較例9≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例5と同じ方法で、非水電解液サンプル45を調合した。比較例9の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属塩を混合した。
【0088】
≪比較例10≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例6と同じ方法で、非水電解液サンプル47を調合した。比較例10の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属混合塩を混合した。
【0089】
≪比較例11≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例7と同じ方法で、非水電解液サンプル49を調合した。比較例11の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属混合塩を混合した。
【0090】
≪比較例12≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例8と同じ方法で、非水電解液サンプル51を調合した。比較例12の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属塩を混合した。
【0091】
≪比較例13≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例9と同じ方法で、非水電解液サンプル53を調合した。比較例13の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/L濃度となる量のアルカリ金属塩を混合した。
【0092】
≪比較例14≫
比較例14では、実施例1と同じホスファゼン溶媒とアルカリ金属塩を用い、実施例1におけるグライム溶媒の代わりにカーボネート溶媒であるプロピレンカーボネートを含んだ非水電解液を調合した。
【0093】
まず、上記プロピレンカーボネートとホスファゼン溶媒の合計体積(全溶媒体積)に対するホスファゼン溶媒の体積比率が、それぞれ0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%となるように、ホスファゼン溶媒を混合し、得た混合溶液に、次いで濃度が1モル/Lとなるようにアルカリ金属塩を混合し、比較例14の非水電解液サンプル54〜64を得た。
【0094】
上記プロピレンカーボネートとホスファゼン溶媒の合計体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率が0%とは、ホスファゼン溶媒を全く含まない場合であり、逆に100%とは、プロピレンカーボネートを全く含まない場合を意味する。
【0095】
[相溶性および導電性評価]
実施例1〜9および比較例1〜14の非水電解液の相溶性を目視により評価し、均一であった非水溶媒に関しては、導電率測定を行った。なお、アルカリ金属塩の析出や、溶媒同士の相分離が確認された場合は「相溶性」を×とし、これらの現象が確認されなかった場合は「相溶性」を○とした。
【0096】
導電率測定は、堀場製作所製D-54 pH/Conductivity Meterを用いて、25℃で測定した。実施例1〜9、および比較例1〜13の結果を表1−1および1−2に、比較例14の結果を表2にそれぞれ示す。
【0097】
【表1-1】
【0098】
【表1-2】
【0099】
【表2】
【0100】
表1−1および1−2に示したように、アルカリ金属塩とグライム溶媒とホスファゼン溶媒を含む本発明の実施例1〜9の非水電解液は、溶媒の相分離やアルカリ金属塩の析出は確認されず、均一溶媒として得ることが出来た。グライム溶媒とホスファゼン溶媒を含む本発明の一態様である非水電解液は、ホスファゼンの体積比率が16%〜91%と幅広い組成で均一に混合することが出来た。一方、グライム溶媒を含まない比較例2、4、5、7および9〜13の非水溶媒は、アルカリ金属塩が溶解せず、溶媒の下部に多量の析出物として沈殿した。したがって、アルカリ金属塩を溶解させるために、グライム溶媒が機能していることが確認された。
【0101】
また、本発明の実施例1の材料系を有する非水電解液では、ホスファゼン溶媒の体積比率が16%以上88%以下である場合に導電率が1.9〜3.8mS/cmと高い値を示し、ホスファゼン溶媒を含まない点以外は同じ材料系である比較例1の非水電解液よりも導電率が高くなった。
【0102】
また、本発明の実施例2の材料系を有する非水電解液では、ホスファゼン溶媒の体積比率が28%以上82%以下の場合に導電率が1.4〜2.0mS/cmと高い値を示し、ホスファゼン溶媒を含まない点以外は同じ材料系である比較例3の非水電解液よりも導電率が高くなった。 また、本発明の実施例4の材料系を有する非水電解液では、ホスファゼン溶媒の体積比率が7%以上58%以下の場合に導電率が3.7〜4.6mS/cmと高い値を示し、ホスファゼン溶媒を含まない点以外は同じ材料系である比較例6の非水電解液よりも導電率が高くなった。
【0103】
また、本発明の実施例5の材料系を有する非水電解液では、ホスファゼン溶媒の体積比率が7%以上38%以下の場合に導電率が8.8〜9.9mS/cmと高い値を示し、ホスファゼン溶媒を含まない点以外は同じ材料系である比較例8の非水電解液よりも導電率が高くなった。
【0104】
この結果は、非水溶媒に含まれるホスファゼンの比率を適切な範囲に設定することにより、イオン導電性能を向上することが出来ていることを示している。
【0105】
表2に示したように、アルカリ金属塩と炭酸エステル溶媒とホスファゼン溶媒を含む比較例14におけるサンプル54〜57の非水電解液では、溶媒の相分離やアルカリ金属塩の析出は確認されず、均一溶媒として得ることが出来たが、サンプル58〜64の非水電解液では溶媒の相分離が確認され、均一溶液として得ることが出来なかった。すなわち、炭酸エステル溶媒とホスファゼン溶媒を含む非水電解液は、ホスファゼンの体積比率が30%以下で均一に混合することが出来るものの、40%以上では均一混合できなかった。
【0106】
表1−1、1−2および表2の比較から、ホスファゼン溶媒と炭酸エステル溶媒を含む非水溶媒と比較して、ホスファゼン溶媒とグライム溶媒を含む本発明の一態様である非水電解液は、ホスファゼン溶媒の混合比率の幅広さという点で優れた結果が確認された。
【0107】
また、ホスファゼン溶媒と炭酸エステル溶媒を含む非水電解液では、ホスファゼン体積比率が増加するにつれて導電率が低下する挙動を示した。これは、ホスファゼン比率を多く含むと難燃性をより付与することができるものの、導電性能は低下するというトレードオフの傾向であることを意味している。
【0108】
一方、本発明の一態様である非水電解液では、これと全く異なる挙動を示した。すなわち、本発明の実施例1の非水電解液の導電率は、1.9〜3.8mS/cmを示し、また、ホスファゼン溶媒を含まない比較例1の1.8mS/cmよりも、ホスファゼンを含むことにより、導電率が向上した結果が確認された。この結果は、ホスファゼン比率を多く含むと難燃性をより付与することができることに加えて、導電性能が向上するという傾向を意味している。この点で、本発明の一態様である非水電解液は、炭酸エステル系の非水電解液と全く異なる電解液であるということが出来る。また、ホスファゼンの体積比率が任意の組成で均一混合することが出来ることから、用途に応じて必要とされる導電性能や難燃性能に合わせて、グライム溶媒とホスファゼン溶媒との比率を適宜設計することにより、非水電解液の設計を任意に行うことが出来ることを示している。
【0109】
[熱安定性評価]
本発明の一態様である非水電解液の熱安定性を評価した。熱安定性評価は、Seiko Instrument社製示査走査熱量計DSC−6200を用いた熱量測定により実施した。
【0110】
ステンレス製密封容器の中に充電状態のLi0.42CoOと非水電解液試料0.1μLを封入し、毎分30ccのArガス流通下で、昇温速度を10℃/minとして室温から600℃まで昇温させて行った。室温から600℃までで得られた複数の発熱ピークを積算し、発熱量を評価した。
【0111】
実施例1のサンプル5、8、および比較例1、比較例14のサンプル10、54、57について、熱安定性評価を行った結果を、表3にまとめて示す。
【0112】
【表3】
【0113】
表3における、比較例14の非水電解液サンプル57は体積比率30%と均一混合できる限界量のホスファゼン溶媒を含む非水電解液であり、ホスファゼンを含まないサンプル54と比較して、熱量が303mJとおよそ半分にまで小さく抑えられている。一方、本発明の実施例1の非水電解液サンプルはホスファゼン溶媒を体積比率で54%含むサンプル5で、277mJ、ホスファゼン溶媒を体積比率で79%含むサンプル8で181mJと、比較例14よりも更に熱量が小さく抑えられていることが確認された。また、実施例2〜9の非水電解液サンプルにおいても同様に、熱量が小さく抑えられていることが確認された。
【0114】
また、サンプル10、5、8の比較から、ホスファゼン溶媒の混合量により、発熱量を抑制することが出来ることから、本発明の一態様である非水電解液は、ホスファゼン溶媒の添加割合を任意に混合することが出来ることから、用途に応じた非水電解液を設計し、電池設計の自由度を高めることができる。また、ホスファゼン溶媒の添加割合を従来以上に高めることにより、従来以上に安全性に優れる非水電解液を提供することが出来る。
【0115】
≪実施例10≫
グライム溶媒として、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(CH−(OCHCH−OCH)を、ホスファゼン溶媒として、下記式(3)中の置換基Rがフェニル基となる化合物を、アルカリ金属塩としてリチウムビストリフルオロメチルスルフォニルイミド(LiN(CFCFSO)を使用して、実施例1と同じ手順で非水電解液を調合した。
【0116】
【化3】
【0117】
上記のグライム溶媒とアルカリ金属塩を、モル比率が1対1となるように混合し、アルカリ金属塩を溶解させた。ついで、その溶液に対して、上記グライム溶媒とホスファゼン溶媒の合計体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率が16、29、42、52、54、62、71、79、88%となるように、ホスファゼン溶媒を混合し、非水電解液サンプル65〜73を得た。非水電解液の調合は、アルゴングローブボックス内で行った。
【0118】
非水電解液サンプル65〜73の、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0119】
≪比較例15≫
ホスファゼン溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例10と同じ方法で、非水電解液サンプル74を調合した。比較例15の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は0%であり、1molのアルカリ金属塩に対するグライム溶媒の量は1molであった。
【0120】
≪比較例16≫
グライム溶媒を含まないことを除き、その他は、実施例10と同じ方法で、非水電解液サンプル75を調合した。比較例16の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は100%であった。このとき、1モル/Lとなる濃度のアルカリ金属塩を混合した。
【0121】
≪比較例17≫
比較例17では、実施例10と同じホスファゼン溶媒と、アルカリ金属塩を用い、グライム溶媒の代わりにカーボネート溶媒であるプロピレンカーボネートを用いて、非水電解液を調合した。
【0122】
まず、上記プロピレンカーボネートとホスファゼン溶媒の合計体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率が、それぞれ0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%となるように、ホスファゼン溶媒を混合し、得た混合溶液に、次いで、濃度が1モル/Lとなるようにアルカリ金属塩を混合し、比較例17の非水電解液サンプル76〜86を得た。非水電解液の調合は、アルゴングローブボックス内で行った。
【0123】
[相溶性および導電性評価]
実施例10および比較例15〜17の非水電解液の相溶性を目視により評価し、均一であった非水溶媒に関しては、導電率測定を行った。導電率測定は、堀場製作所製D-54 pH/Conductivity Meterを用いて、25℃で測定した。実施例2、および比較例15〜16の結果を表4に、比較例17の結果を表5にそれぞれ示す。
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
表4に示したように、アルカリ金属塩とグライム溶媒とホスファゼン溶媒を含む本発明の実施例10の非水電解液は、溶媒の相分離やアルカリ金属塩の析出は確認されず、均一溶媒として得ることが出来た。グライム溶媒とホスファゼン溶媒を含む本発明の一態様である非水電解液は、ホスファゼンの体積比率が16%〜88%と幅広い組成で均一に混合することが出来た。一方、グライム溶媒を含まない比較例16の非水溶媒は、アルカリ金属塩が溶解せず、溶媒の下部に多量の析出物として沈殿した。したがって、アルカリ金属塩を溶解させるために、グライム溶媒が機能していることが確認された。また、本発明の実施例2の非水電解液の導電率は、最大値で2.4mS/cmと高い値を示し、また、ホスファゼン溶媒を含まない比較例15よりも向上していることが確認された。
【0127】
この結果は、本発明の一態様である非水溶媒がホスファゼン溶媒を多く含むことにより、イオン導電性能を向上することが出来ていることを示している。
【0128】
表5に示したように、アルカリ金属塩と炭酸エステル溶媒とホスファゼン溶媒を含む比較例17におけるサンプル76〜86の非水電解液では、溶媒の相分離やアルカリ金属塩の析出は確認されず、均一溶媒として得ることが出来たが、サンプル80〜86の非水電解液では溶媒の相分離が確認され、均一溶液として得ることが出来なかった。すなわち、炭酸エステル溶媒とホスファゼン溶媒を含む非水電解液は、ホスファゼンの体積比率が30%以下で均一に混合することが出来るものの、40%以上では均一混合できなかった。
【0129】
また、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率が42%以上88%以下であってもよい。これにより、比較例14及び比較例17で明らかなように、従来では混合できなかった比率が実現できているため、従来よりも安全性に優れた電解液を提供することが出来る。
【0130】
[熱安定性評価]
実施例10のサンプル69、72に関しても、熱安定性評価を行い、比較例17のサンプル80よりも発熱量が小さく、実施例1〜9と同様の傾向であることを確認した。
【0131】
以上の、実施例1〜10、および比較例1〜17の結果から、本発明の一態様である非水電解液はホスファゼン溶媒の構造に依らないことが確認された。
【0132】
≪実施例11≫
本発明の一態様である非水電解液を含むリチウム二次電池の実施例について、以下説明する。
【0133】
正極活物質として、LiNi1/3Co1/3Mn1/3を用い、正極活物質と導電助剤アセチレンブラックと結着剤ポリフッ化ビニリデンを重量比8:1:1となるように秤量し、NMP溶媒中に分散させスラリーを作製した。塗工機を用い、作製したスラリーをAl集電体上に塗工した。塗工した極板を圧延機で圧延し、一辺が20mmの正方形に打ち抜き、電極状態に加工して、正極を得た。
【0134】
負極は、一辺が20mmの正方形のニッケルメッシュにリチウム金属を圧着し作製した。上記の正極と、負極とを、ポリエチレン微多孔膜のセパレータを介して対向させ、実施の形態2において説明した構成の電極群を作製した。
【0135】
電解液として、実施例1記載のサンプル5の非水電解液を用い、上記の電極群に注液し、封口し、ラミネート型リチウム二次電池を作製した。
【0136】
≪実施例12≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例11と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例12では、実施例1記載のサンプル8の非水電解液を用いた。
【0137】
≪比較例18≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例11と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。比較例18では、電解液として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比1:3で混合した溶媒に対し、1モル/Lとなる濃度でLiPFを溶解させた非水電解液を用いた。
【0138】
[充放電試験]
実施例11および12、比較例18のリチウム二次電池の充放電試験を以下の条件で実施した。充放電試験は25℃の恒温槽内で行なった。充電から先に開始し、30分休止した後放電し、充放電を3回繰り返した。充電は正極活物質の理論容量に対して0.1Cレートとなる電流値で、定電流定電圧で行なった。充電上限電圧は4.3V、定電圧時の下限電流値は0.05Cレートとした。放電は、放電下限電圧を3.0Vとし、充電と同じく0.1Cレートで行なった。
【0139】
充放電動作を3回繰り返し、安定した充放電動作を確認した3回目の放電容量を、それぞれ正極活物質1gあたりの容量に換算した値(mAhg−1)を算出した。得た容量を以下の表6に示す。
【0140】
【表6】
【0141】
表6に示すように、実施例11および12、ならびに比較例18はいずれも155〜161mAhg−1と、ほぼ同様の値を示した。すなわち、本発明の一態様である非水電解液は、体積比率で54%、79%と多量の難燃化剤であるホスファゼン溶媒を含んでいるにもかかわらず、本発明の実施の形態に係る電解液を用いた非水電解質二次電池は、従来のカーボネート系電解液と遜色ない放電容量を示した。このことは、本発明の非水電解液が電池の充放電動作に耐えうる十分な電気化学安定性を有していることを示している。
【0142】
≪実施例13≫
正極活物質として、LiNiCoAlOを用いた以外は、実施例11と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例13では、実施例1記載のサンプル8の非水電解液を用いた。
【0143】
≪実施例14≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例13と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例14では、実施例2記載のサンプル18の非水電解液を用いた。
【0144】
≪実施例15≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例13と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例15では、実施例3記載のサンプル22の非水電解液を用いた。
【0145】
≪実施例16≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例13と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例16では、実施例4記載のサンプル31の非水電解液を用いた。
【0146】
≪実施例17≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例13と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例17では、実施例5記載のサンプル42の非水電解液を用いた。
【0147】
≪比較例19≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例13と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。比較例19では、電解液として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比1:3で混合した溶媒に対し、1モル/Lとなる濃度でLiPFを溶解させた非水電解液を用いた。
【0148】
[充放電試験]
実施例13〜17、比較例19のリチウム二次電池の充放電試験を以下の条件で実施した。充放電試験は25℃の恒温槽内で行なった。充電から先に開始し、30分休止した後放電し、充放電を3回繰り返した。充電は正極活物質の理論容量に対して0.05Cレートとなる電流値で、定電流で行なった。充電上限電圧は4.3V、放電下限電圧を2.5Vとし、放電は充電と同じく0.05Cレートで行なった。充放電動作を3回繰り返し、安定した充放電動作を確認した3回目の放電容量を、それぞれ正極活物質1gあたりの容量に換算した値(mAhg−1)を算出した。得た容量を以下の表7に示す。
【0149】
【表7】
【0150】
表7に示すように、実施例13〜17、ならびに比較例19はいずれも185〜206mAhg−1と、ほぼ同様の値を示した。すなわち、本発明の一態様である非水電解液は、体積比率で79〜82%と多量の難燃化剤であるホスファゼン溶媒を含んでいるにもかかわらず、本発明の実施の形態に係る電解液を用いた非水電解質二次電池は、従来のカーボネート系電解液と遜色ない放電容量を示した。このことは、本発明の非水電解液が電池の充放電動作に耐えうる十分な電気化学安定性を有していることを示している。
【0151】
[放電負荷試験]
実施例13〜17のリチウム二次電池の放電負荷試験を以下の条件で実施した。充電は正極活物質の理論容量に対して0.05Cレートとなる電流値により定電流で行ない、充電上限電圧は4.3V、放電下限電圧を2.5Vとした。充電から先に開始し、30分休止した後放電し、充放電を2回繰り返した。その後再度充電し、放電は0.2Cレートで放電下限電圧まで行なった。それぞれ0.05Cレートでの放電容量を100%としたときの容量維持率を算出した。得た容量維持率を以下の表8に示す。
【0152】
【表8】
【0153】
表8に示すように、実施例13および17はいずれも0.2Cレートにおいても、0.05Cレート時の70%以上の維持率を示した。また、実施例16および17においては維持率92〜94%の値を示した。このことは、本発明の非水電解液が高放電電流での充放電動作に耐えうる十分な電気化学安定性を有していることを示している。
【0154】
≪実施例18≫
本発明の一態様である非水電解液を含むリチウム二次電池の実施例について、以下説明する。
【0155】
負極活物質として、天然黒鉛を用い、負極活物質と結着剤ポリフッ化ビニリデンを重量比9:1となるように秤量し、NMP溶媒中に分散させスラリーを作製した。塗工機を用い、作製したスラリーをAl集電体上に塗工した。塗工した極板を圧延機で圧延し、一辺が20mmの正方形に打ち抜き、電極状態に加工して、負極を得た。
【0156】
対極は、一辺が20mmの正方形のニッケルメッシュにリチウム金属を圧着し作製した。上記の負極と、対極とを、ポリエチレン微多孔膜のセパレータを介して対向させ、実施の形態2にておいて説明した構成の電極群を作製した。
【0157】
電解液として、実施例2記載のサンプル18の非水電解液を用い、上記の電極群に注液し、封口し、ラミネート型リチウム二次電池を作製した。
【0158】
≪実施例19≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例18と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。実施例19では、実施例6記載のサンプル46の非水電解液を用いた。
【0159】
≪比較例20≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例18と同じ方法でリチウム二次電池を作製した。比較例20では、電解液として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比1:3で混合した溶媒に対し、1モル/Lとなる濃度でLiPFを溶解させた非水電解液を用いた。
【0160】
[充放電試験]
実施例18および19、比較例20のリチウム二次電池の充放電試験を以下の条件で実施した。充放電試験は25℃の恒温槽内で行なった。充電から先に開始し、30分休止した後放電し、充放電を3回繰り返した。充電は負極活物質の理論容量に対して0.05Cレートとなる電流値で、定電流定電圧で行なった。充電下限電圧は0V、定電圧時の下限電流値は0.005Cレートとした。放電は、放電上限電圧を2.0Vとし、充電と同じく0.05Cレートで行なった。充放電動作を3回繰り返し、安定した充放電動作を確認した3回目の放電容量を、それぞれ負極活物質1gあたりの容量に換算した値(mAhg−1)を算出した。得た容量を以下の表9に示す。
【0161】
【表9】
【0162】
表9に示すように、実施例18および19、ならびに比較例20はいずれも333〜350mAhg−1と、ほぼ同様の値を示した。すなわち、本発明の一態様である非水電解液は、体積比率で82%と多量の難燃化剤であるホスファゼン溶媒を含んでいるにもかかわらず、本発明の実施の形態に係る電解液を用いた非水電解質二次電池は、従来のカーボネート系電解液と遜色ない放電容量を示した。このことは、本発明の非水電解液が電池の充放電動作に耐えうる十分な電気化学安定性を有していることを示している。
【0163】
≪実施例20≫
本発明の一態様である非水電解液を含むナトリウム二次電池の実施例について、以下説明する。
【0164】
正極活物質として、NaFe0.4Mn0.3Ni0.3を用い、正極活物質と導電助剤アセチレンブラックと結着剤ポリフッ化ビニリデンを重量比8:1:1となるように秤量し、NMP溶媒中に分散させスラリーを作製した。塗工機を用い、作製したスラリーをAl集電体上に塗工した。塗工した極板を圧延機で圧延し、一辺が20mmの正方形に打ち抜き、電極状態に加工して、正極を得た。
【0165】
負極は、一辺が20mmの正方形のニッケルメッシュにナトリウム金属を圧着し作製した。上記の正極と、負極とを、ポリエチレン微多孔膜のセパレータを介して対向させ、実施の形態1にておいて説明した構成の電極群を作製した。
【0166】
電解液として、実施例8記載のサンプル50の非水電解液を用い、上記の電極群に注液し、封口し、ラミネート型ナトリウム二次電池を作製した。
【0167】
≪実施例21≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例20と同じ方法でナトリウム二次電池を作製した。実施例21では、実施例9記載のサンプル52の非水電解液を用いた。
【0168】
≪比較例21≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例20と同じ方法でナトリウム二次電池を作製した。比較例21では、電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:3で混合した溶媒に対し、1モル/Lとなる濃度でNaPF6を溶解させた非水電解液を用いた。
【0169】
[充放電試験]
実施例20および21、比較例21のナトリウム二次電池の充放電試験を以下の条件で実施した。充放電試験は25℃の恒温槽内で行なった。充電から先に開始し、30分休止した後放電し、充放電を3回繰り返した。充電は正極活物質の理論容量に対して0.05Cレートとなる電流値で、定電流で行なった。充電上限電圧は3.8V、放電下限電圧を2.0Vとし、放電は充電と同じく0.05Cレートで行なった。
【0170】
充放電動作を3回繰り返し、安定した充放電動作を確認した3回目の放電容量を、それぞれ正極活物質1gあたりの容量に換算した値(mAhg−1)を算出した。得た容量を以下の表10に示す。
【0171】
【表10】
【0172】
表10に示すように、実施例20〜21、ならびに比較例21はいずれも88〜98mAhg−1と、ほぼ同様の値を示した。すなわち、本発明の一態様である非水電解液は、体積比率で79%と多量の難燃化剤であるホスファゼン溶媒を含んでいるにもかかわらず、本発明の実施の形態に係る電解液を用いた非水電解質二次電池は、従来のカーボネート系電解液と遜色ない放電容量を示した。このことは、本発明の非水電解液がアルカリ金属塩のアルカリ金属種が異なっても、電池の充放電動作に耐えうる十分な電気化学安定性を有していることを示している。
【0173】
≪実施例22≫
負極活物質として、難黒鉛化炭素を用い、負極活物質と結着剤ポリフッ化ビニリデンを重量比9:1となるように秤量し、NMP溶媒中に分散させスラリーを作製した。塗工機を用い、作製したスラリーをAl集電体上に塗工した。塗工した極板を圧延機で圧延し、一辺が20mmの正方形に打ち抜き、電極状態に加工して、負極を得た。
【0174】
対極は、一辺が20mmの正方形のニッケルメッシュにナトリウム金属を圧着し作製した。上記の負極と、対極とを、ポリエチレン微多孔膜のセパレータを介して対向させ、実施の形態1にておいて説明した構成の電極群を作製した。
【0175】
電解液として、実施例8記載のサンプル50の非水電解液を用い、上記の電極群に注液し、封口し、ラミネート型ナトリウム二次電池を作製した。
【0176】
≪実施例23≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例22と同じ方法でナトリウム二次電池を作製した。実施例23では、実施例9記載のサンプル52の非水電解液を用いた。
【0177】
≪比較例22≫
用いた電解液が異なる以外は全く実施例22と同じ方法でナトリウム二次電池を作製した。比較例22では、電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:3で混合した溶媒に対し、1モル/Lとなる濃度でNaPFを溶解させた非水電解液を用いた。
【0178】
[充放電試験]
実施例22および23、比較例22のナトリウム二次電池の充放電試験を以下の条件で実施した。充放電試験は25℃の恒温槽内で行なった。充電から先に開始し、30分休止した後放電し、充放電を3回繰り返した。充電は負極活物質の理論容量に対して0.05Cレートとなる電流値で、定電流定電圧で行なった。充電下限電圧は0V、定電圧時の下限電流値は0.005Cレートとした。放電は、放電上限電圧を2.0Vとし、充電と同じく0.05Cレートで行なった。充放電動作を3回繰り返し、安定した充放電動作を確認した3回目の放電容量を、それぞれ負極活物質1gあたりの容量に換算した値(mAhg−1)を算出した。得た容量を以下の表11に示す。
【0179】
【表11】
【0180】
表11に示すように、実施例22および23、ならびに比較例22はいずれも253〜257mAhg−1と、ほぼ同様の値を示した。すなわち、本発明の一態様である非水電解液は、体積比率で79%と多量の難燃化剤であるホスファゼン溶媒を含んでいるにもかかわらず、本発明の実施の形態に係る電解液を用いた非水電解質二次電池は、従来のカーボネート系電解液と遜色ない放電容量を示した。このことは、本発明の非水電解液がアルカリ金属塩のアルカリ金属種が異なっても、電池の充放電動作に耐えうる十分な電気化学安定性を有していることを示している。
【0181】
以上説明したように、溶媒としてグライム溶媒、ならびにホスファゼン溶媒を含み、溶媒に、アルカリ金属カチオンとアニオンとからなるアルカリ金属塩が溶解した非水電解液により、ホスファゼン系液体状難燃剤の添加割合をより任意に制御することができ、その結果、電解液設計の自由度を高めることができる。また、例えば、ホスファゼン系液体状難燃剤の添加割合を従来以上に高めることにより、より安全性に優れる非水電解液を提供することが出来る。
【0182】
なお、以上の実施例では、下記式で表される環状ホスファゼン化合物においてRがエチル基またはフェニル基であるホスファゼン化合物を用いたが、これに限られず、Rがアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基等のホスファゼン化合物であっても、グライム溶媒を含むことによりホスファゼン化合物の添加割合を増加させることができる。
【0183】
【化3】
【0184】
≪実施例24≫
実施例24では、比較例14におけるサンプル58、60、61、63に対して、グライム溶媒であるテトラエチレングリコールジメチルエーテルを溶液が均一に一相になるまで添加することで、カーボネート溶媒であるプロピレンカーボネートとホスファゼン溶媒とグライム溶媒とを含んだ非水電解液87〜90をそれぞれ調合した。各サンプルの相溶性及び導電性を、実施例1と同じ方法で評価した。結果を表12に示す。
【0185】
上記サンプルのプロピレンカーボネートとホスファゼン溶媒とグライム溶媒との合計体積(全溶媒体積)に対するホスファゼン溶媒の体積比率は、それぞれ38%、54%、62%、77%であり、高い体積比率を実現できた。
【0186】
【表12】
【0187】
また、プロピレンカーボネートに代えて、エステル化合物であるγ-ブチロラクトンでも同様の実験を行った。その結果、エステル系溶媒を用いた場合でも、カーボネート系溶媒の場合と同様に、グライム溶媒を添加することで非水電解液が均一に一相になる傾向を確認した。
【0188】
≪実施例25≫
ホスファゼン溶媒として、式(1)のX〜Xのうち全てがフッ素原子である化合物が37%と、X〜Xの中の一つが塩素原子でそれ以外はフッ素原子である化合物が31%と、X〜Xの中の二つが塩素原子でそれ以外はフッ素原子である化合物が32%とで構成された混合物(混合物におけるフッ素原子と塩素原子の平均個数の比は、フッ素原子5個に対して塩素原子1個)を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調合した。実施例25の非水電解液の、全溶媒体積に対するホスファゼン溶媒の体積比率は43%であり、サンプル91とした。サンプルの相溶性及び導電性を、実施例1と同じ方法で評価した。
【0189】
このようなホスファゼン化合物の混合物をホスファゼン溶媒として用いた場合でも、グライム溶媒を添加することで、従来の非水電解液よりも高い比率でホスファゼン溶媒を含むことが可能であることが確認された。
【0190】
【表13】
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明の一態様のアルカリ金属二次電池は、携帯電子機器などの電源;火力発電、風力発電、燃料電池発電などの発電設備と組み合わせて使用される電力平準化用の蓄電デバイス;一般家庭および集合住宅用の非常用蓄電システム、深夜電力蓄電システムなどの電源;無停電電源;電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車といった輸送機器などの電源に好適に使用できる。
図1