(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持力は、前記ヘッド部と前記リングとの係合によってもたらされる力と、前記アバットメントの上端と前記キャップの内面との間の金属間界面による力と、の組み合わせによって達成される請求項8に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を様々な形態で具現化できるが、幾つかの実施形態の以下の説明は、本開示が特許請求の範囲に記載される主題の例示と見なされなければならず、また、本開示が添付の特許請求の範囲を図示されて説明される特定の実施形態に限定しようとするものではなく且つ本発明の範囲または広さを限定するように解釈されるべきでないという理解の下でなされる。この開示の全体にわたって使用される表題は、単に便宜のために与えられるにすぎず、決して特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきでない。任意の表題の下で説明される実施形態は、任意の他の表題の下で説明される実施形態と組み合わされてもよい。
【0017】
特定の実施形態において、本発明は、キャップ、リング、および、アバットメントを備える歯科用アタッチメント装置に関する。キャップは、歯科用アプライアンスを固定するとともに、開放端と、保持ヘッドを取り囲む環状壁を形成する内側キャビティと、を有する。アバットメントは、凸状外面を有する上部を備える。凸状外面は、開放端と、リングを受けて保持ヘッドと係合するための内部ソケットとを有する。歯科用アプライアンスは、アバットメントを既存の失活歯根内またはインプラント内に取り付けて、キャップをアバットメント上に位置合わせするとともに、保持ヘッドをリングに貫通させてアバットメントのソケット内に係合させることによりキャップ(および歯科用アプライアンス)をアバットメントに固定することによって被検者の口内に固定されてもよい。
【0018】
本明細書中に記載される固定アバットメントおよび義歯キャップは、OリングまたはOボールアタッチメントシステムとほぼ一致する内部特徴を有するが、実質的に2つの主な方法で区別される。第1に、固定アバットメントは、プロテーゼを歯科用インプラントに対して強固に接続するとともに、その目的のために特別に設計された工具を用いた医師による単なる定期的な除去の状態では所定位置にとどまるように形成される。これに対し、OリングまたはOボールアタッチメントシステムは、かなり小さい保持力をもたらすとともに、取り外し可能なプロテーゼと共に使用されるように形成され、それにより、患者はそれらの義歯を日常的に容易に取り外して交換することができる。第2に、固定当接システムは、プロテーゼを歯科用インプラントに対して直接に取り付け、それにより、患者の顎に組み込まれる一連のインプラントに対して全ての咀嚼荷重を伝える。一方、OリングまたはOボールアタッチメントシステムは、咀嚼による力などのほぼ全ての口腔内力を吸収する軟組織上または歯肉上にプロテーゼが直接に着座する状態で口内の義歯の弾性保持をもたらすようになっているにすぎない。これは、咀嚼機能中にプロテーゼが歯肉を圧迫し、擦り減らし、つまむ可能性があることから、組織支持された義歯が一般に患者にとってより不快であるため、重大な差異である。
【0019】
本発明は、1つ以上のハイブリッド固定歯科用アタッチメント装置と、定期的な除去のために設計される1つ以上の工具とを備えるキットを更に考える。
【0020】
以下で更に詳述するように、
図25に例示される本発明の1つの態様において、取り外し可能ボール15およびリング50の形態および材料は、歯列弓にわたって加えられる通常の咀嚼荷重に晒されるときに装置10を移動しない或いは離脱しないように固定するのに十分な保持力を与えるべくアバットメント20に対して保持される或いは取り付けられるように最適化される。また、そのような保持力は、患者による義歯の除去を実行不可能にし、そのため、医師は、取り外し可能ボール15およびキャップ80をアバットメント20から離脱させるために特別に設計された工具を使用する必要がある。つまり、保持力は、従来の固定装置の咀嚼荷重に対処するが患者による装置の除去のリスクを回避する、抑制する、または、減らすのに十分な大きさである。
【0021】
より具体的には、保持力は、患者ニーズに応じて変化し得る。1つの実施形態において、力は、アバットメントごとに張力測定(Instron Corp.Model 8841)装置を用いて測定して約10〜約75ポンドの範囲である。他の実施形態において、力は、約15〜約50ポンド、または、約20〜約45ポンド、または、約25〜約40ポンド、または、約30〜約35ポンドの範囲である。更なる他の実施形態において、力は、約15ポンド、または、約20ポンド、または、約25ポンド、または、約30ポンド、または、約40ポンド、または、約45ポンド、または、約50ポンド、または、約55ポンド、または、約60ポンド、または、約65ポンド、または、約70ポンド、または、約75ポンドである。
【0022】
したがって、本発明は、患者および臨床の状態の大きな変化に基づいて保持力の大きさを調整できる能力を有するシステムを提供する。例えば、修復部の片持ち領域に荷重が加えられる場合、保持力は、修復部が着座されるようにするべく比例して更に大きくなければならない。また、望ましい保持力は、個人のサイズと特定の個人が生み出すことができる咬合力の大きさとに基づいても変化し得る。咬合力が小さい或いは片持ち梁が存在しない幾つかのケースでは、医師がメンテナンスを行なう際に修復部を着座させて除去することがあまり困難とならないように保持力を低くすることが望ましい。
【0023】
非片持ち用途では、アセンブリが耐えなければならない唯一の大きな張力(保持力)は、患者により口から義歯を取り外すための力である。この状況では、プロテーゼを所定位置に保つためには、アバットメントごとに10〜15ポンドの範囲の力で十分である。プロテーゼを両端が支柱(アバットメント)により支持される梁(義歯)であると見なすと、アバットメント/キャップ接合部で見られる力の大部分は、アバットメントおよびインプラントに向けて作用する圧縮力となる。
【0024】
片持ち梁状況において、プロテーゼは、一方側の端部が支柱(アバットメント)の上に張り出し、反対側の端部が支柱(アバットメント)に固定される梁(義歯)と見なすことができる。この“固定”端部は、引張荷重の特定の印加に抵抗できる。梁の自由端または張り出し端に咀嚼力が加えられると、最も近い支柱が回動点として作用し、それにより、“固定”端部が引張荷重に晒される。結果として生じる張力を規定する多くの因子が存在するが、システムは、一般に、機械的な利点をもたらすてこの原理またはモーメントアームの原理にしたがって作用する。回動点の一端に印加される力と、力の印加点から回動点までの距離との積は、回動点から(他方側の)反作用点までの距離と反作用力との積に等しい(例えば、F1×D1=F2×D2)。この原理に基づくと、一般に、張力に対する抵抗(除去力)が例えば60ポンドであれば、保持の大きさに打ち勝つことなく回動点と“固定”端部との間の長さの2倍である片持ち梁に最大で30ポンドの荷重を加えることができるということが成り立つ。想定し得る臨床状況は、患者咬合強度と、片持ち梁長さとプロテーゼの支持長さとの間の比率とに基づいて無限である。高い後咬合力が50−80ポンドの範囲内にあることが文献から推定される。そのような場合、片持ち梁は、固定点が反作用荷重によって克服されず機能中に着座されなくなるように、回動点から“固定”端部までの長さにおおよそ等しい長さを有さなければならない。咬合力が小さい患者では、あるいは、顎筋のてこの作用の減少がより小さい咬合力をもたらす口のより前方の領域では、片持ち梁が支持部分の長さの1〜2倍以上延ばされてもよい。
【0025】
本明細書中に開示される装置の保持力を決定するために、出願人は、以下のように様々な検査を行なった。
【0026】
検査の大部分は、保持ボール上の縁部の鋭利さを減らすことによって及び/又はボールとリングとの間の干渉の大きさを減らすことによって30ポンド未満の保持力を得ることができるという理解の下で片持ち状態において行なわれた。したがって、約60ポンド以上の保持力が検査の焦点であった。また、多くの場合、てこの腕の機械的な利点の理解は、単一のアバットメントに作用する直接的な引き離し力に関する検査を可能にし、したがって、このようにして装置が検査された。
【0027】
ロードセルおよびデジタルコントローラを有するInstron Dynamight力検査機(Instron Corp.Model 8841)を使用して保持力が測定された。キャップは、力検査機で測定される定められた圧縮力を使用してアバットメント上に着座される。単一のアバットメントに関して、キャップは、引張荷重の印加によってアバットメントから引き離された。片持ち梁状況では、“固定”点が着座しなくなるまで、圧縮荷重が片持ち梁の先端に印加された。キャップを着座させないためのピーク荷重が、既知の片持ち梁長さおよび支持長さで測定された。この測定を行なうことにより、簡略化された機械的利点のてこ問題の計算値と比べて実際の値が測定された。
【0028】
片持ち荷重状況下で様々な条件に基づき全部で77個の検査が行なわれた。これは、様々な片持ち梁長さで、あるいは、より具体的には、支持長さに対する片持ち梁長さの様々な比率で、保持ボールおよびリングの形態の変化を含んだ。
【0029】
図1のアセンブリは、非片持ち状況で十分な保持を与えることが分かった。片持ち梁状況では、
図25のアセンブリが、プロテーゼを保持するために必要な保持強度を与えることが分かった。保持ボール上の鋭利な縁部がプラスチックリングに食い込んで保持強度を高める。この場合のボールの除去は、永久的な損傷をリングに引き起こし、それにより、プロテーゼの再着座前にリングを交換する必要があった。
【0030】
図52は、片持ち梁状況における装置の保持力のグラフ表示である。
[
図52]
【0031】
そのような検査データは、非片持ち固定ハイブリッド義歯を強固に取り付けるために必要な保持力の範囲がアバットメントごとにおおよそ15〜20ポンドであることを立証する。この保持レベルは、歯列弓にわたって加えられる通常の咀嚼荷重に晒されるときに固定された義歯を移動させない或いは離脱させないように固定する。また、この保持力範囲は、患者による義歯の除去を実行不可能にし、そのため、医師は、プロテーゼを離脱させるために特別に設計された工具を使用する必要がある。
図1および
図25の実施形態が検査されたが、保持力は、本明細書中に開示される他の実施形態に適用される。
【0032】
片持ち梁固定義歯(歯が殆どの後インプラントよりも先端側にある場合)を固定するために必要な保持力は、先に論じられたような片持ち梁力の実証的研究に基づき、アバットメントごとに30〜35(および、50〜60ポンド以上となり得る)ポンドの範囲となり得る。保持力の増大は、片持ち梁または義歯の自由端部に加えられる咀嚼力により前アバットメントに与えられる張力に抗するために必要とされる。この保持力範囲は、患者による除去を実行不可能にし続けるとともに、医師がプロテーゼを離脱させるために特別な工具を使用することを必要とする。
【0033】
本発明の特定の実施形態では、前述の保持レベルを得るために協働する固定ハイブリッドアタッチメントシステムの2つの設計上の特徴が存在する。
図25〜
図37に関連してより具体的に詳述されるが、第1の特徴は、アバットメントに係合されるリングとキャップの開放端に取り付けられる返し形状の取り外し可能ボールとの干渉によって保持を達成する。保持力は、一方が丸みを帯びた縁部或いは半径縁部を有し且つ他方が鋭利な縁部を有する二返し形状取り外し可能ボール形態のうちの1つを使用することによって変えることができる。丸みを帯びた縁部或いは半径縁部の返しは、非片持ち梁の場合において十分な保持をもたらし、一方、鋭利な縁部の返しは、リングの係合側と共により大きな干渉および除去抵抗をもたらすことによって片持ちの場合に必要な付加的な保持を与える。リングは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)または他のプラスチックから構成されてもよい。
【0034】
第2の保持特徴は、アバットメントの上端とキャップの内径との間に金属間界面を備える。これらの2つの面の嵌め合いは、構成要素間に保持力を生み出す摩擦作用または圧入作用をもたらす。金属間干渉およびそれに伴う保持は、アバットメント上にキャップおよびプロテーゼを着座させるときに加えられる圧縮咬合力によって達成されるとともに、その後の患者により与えられる連続的な咀嚼力によって更に達成される。前述した2つの保持特徴は、片持ちの場合または非片持ちの場合のいずれかのために必要とされる最終的な保持レベルを得るために単独で或いは互いに共同して機能するように形成される。
【0035】
前述したように、本発明のハイブリッド装置は、特別な工具を使用して歯科専門家により除去されるようになっている。1つの実施形態において、工具は、義歯の前部および後部の両方と係合するてこ作用工具である。後部のアバットメントを回動点として使用することにより、工具は、片持ち梁に圧縮荷重を作用させる。また、工具は、義歯の前部と係合して、プロテーゼの下面を引き上げ、それにより、“固定”点でアバットメントに対して引張荷重を加える。工具は、前アバットメントに作用する保持力に打ち勝つべく医師が適度な大きさの力を加えることができるようにするために長いてこの腕を有する。工具は、義歯の底面下でスライドするバーを有することを含むがこれに限定されない様々な方法でプロテーゼの下面と係合できる。また、工具は、十分な引張強度を伴う可撓性コードを有することもできる。このコードは、プロテーゼの真下に通して工具に固定することができ、それにより、ループを形成する。このループまたはバーは、その後、義歯を引き上げ、それにより、確実な解放を達成するのに役立つ。前部が解放された時点で、工具を他方側へ移動させることができるとともに、後部の接続部を同じ方法でてこにより上方へ動かすために工具を使用できる。
【0036】
図1は、被検者の口内に歯科用アプライアンス(歯科用器具)を固定するための歯科用アタッチメント装置の1つの実施形態を示す。
図1は、歯科用アタッチメント装置10の分解図であり、歯科用アタッチメント装置10は、歯科用アプライアンス内に固定するためのキャップ80と、失活歯根、インプラント、あるいは、同様のものに取り付くためのアバットメント20と、リテーナリング(保持リング)50とを備える。キャップ80は、被検者の口内に歯科用アプライアンスを固定するために
図1の中心線により示されるようにアバットメント20およびリング50と係合する。アバットメント20は、Astraインプラント(Astra Tech Inc.,ウォルサム、マサチューセッツ州)、Branemarkインプラント(Nobel Biocare,チューリッヒ、スイス)、および、Straumannインプラント(Straumann USA LLC,アンドーバー、マサチューセッツ州)などの市販のインプラントに適合するようになっていてもよく、あるいは、歯根アバットメントとして、ミニインプラントとして、または、歯科用インプラントに固定される中間アバットメントに適合され得る形態を成して構成されてもよい。同様に、キャップ80は、例えばこれらに限定されないが、ポスト、ネジ、または、接着剤、例えばアクリル、ビスアクリル、または、他の歯科用セメントを用いて歯科用アプライアンスに組み込むように形成されてもよい。歯科用アプライアンスは、総義歯、オーバーデンチャー、および、部分義歯を含むが、これらに限定されない。したがって、歯科用アプライアンスの程度に応じて、患者の口内に歯科用アプライアンスを固定するために1つ以上の歯科用アタッチメント装置10が使用されてもよい。
【0037】
図2〜
図4は、キャップ80の1つの実施形態を示す。キャップ80は取り付け部100と本体部75とを備え、本体部75は、開放端83と、環状壁90を形成する内側キャビティ95とを有する。本体部75は、歯科用アプライアンス内にキャップ80を固定するのに適した任意の形状であってもよい。一例として、
図2〜
図4は、略カップ形状または円筒状のような外形状を成すが、当該技術分野において知られる他の形状が使用されてもよい。内側キャビティ95は、凹状リップ97を有する先端部を伴う内側環状面92を有する。凹状リップ97は、アバットメント20の外側凸状面35と一致するように形成される。環状壁90は、ヘッド部87とシャフト89とを備える保持ヘッド85を取り囲む。ヘッド部87は略球状またはボール形状である。別の実施形態では、ヘッド部87が略多角形または回転楕円体であってもよい。ヘッド部87は、環状壁90のリップよりも上側に突出できる。別の実施形態では、ヘッド部87が環状壁90のリップと同じ高さ或いはリップよりも下側となることができる。取り付け部100は、短いポスト(
図5)、ネジ(
図6)、または、接着剤(
図7)を含むがこれらに限定されない当該技術分野において良く知られて当業者により理解される構造または技術によって歯科用アプライアンス内に固定するために設けられる。そのような方法および技術は本明細書中で繰り返されず、また、図は、単なる典型として与えられ、キャップを歯科用アプライアンスに取り付ける技術を限定するように意図されない。
【0038】
1つの実施形態において、キャップ80は、歯科用アプライアンスと一体を成すことができるとともに、チタン、チタン合金、コバルト−クロム−モリブデン合金、窒化チタンコーティングを伴うステンレス鋼、ジルコニウム、タンタル、金、白金、パラジウム、ハフニウム、および、タングステン、並びに、当業者に知られる他の材料から形成され得る。取り付け部100および本体部75の両方が歯科用アプライアンス内に埋め込まれてもよい。他の実施形態では、本体部75が歯科用アプライアンス内に部分的に埋め込まれてもよい。更なる他の実施形態では、取り付け部100だけが歯科用アプライアンス内に埋め込まれてもよい。
【0039】
キャップ20の1つの実施形態では、ヘッド部87が約0.05インチ〜約0.15インチの範囲内の直径を有する。例示的に、ヘッド部87の直径は、約0.05インチ、約0.06インチ、約0.07インチ、約0.08インチ、約0.09インチ、約0.10インチ、約0.11インチ、約0.12インチ、約0.13インチ、約0.14インチ、および、約0.15インチである。
【0040】
図8および
図9は、アバットメント20の1つの実施形態を示す。アバットメントは、開放端32とリング50およびキャップ80の保持ヘッド85を受けるためのソケット34とを有する上部30と、カフ部37と、失活歯またはインプラントに取り付くための取り付け部25とを備える。上部30は、開放端32からカフ部37まで延びる凸状外面35を有する。カフ部37は、異なる組織高さを有する患者に対応するべく異なる高さを有してもよい。ソケット34は、開放端32から上部30及び/又はカフ部37の長さの一部または全部にわたって延びるとともに、リング50およびキャップの保持ヘッド85を受け入れるように形成される。ソケット34は、環状リップ41、環状リング42、円筒状キャビティ44、および、半球状部またはボール形状部46を有する。ソケット34は、アバットメント20の環状リング42を通り越えたスナップ係合によりリング50を受け、アバットメント20の環状リング42は、リング50の対応する環状溝60内で嵌合する。保持ヘッド85のヘッド部87は、リング50を通り抜けてスナップ嵌合するとともに、半球状部46内に配置され、それにより、キャップをアバットメントに対して固定する。アバットメント20を失活歯根またはインプラントに取り付けるのに適した工具が係合するために、工具受け孔48が、ソケット34の底部から内側に延びるとともに、ネジを有することができ及び/又は平坦面を伴う多角形、例えば六角形を成すことができる。取り付け部25は、市販のインプラントに適合するようになっており或いは歯根アバットメント、ミニインプラント、または、後述するような中間アバットメントとして構成され得る。
【0041】
本明細書中に記載されるアバットメント20は、チタン、チタン合金、コバルト−クロム−モリブデン合金、窒化チタンコーティングを伴うステンレス鋼、ジルコニウム、タンタル、金、白金、パラジウム、ハフニウム、および、タングステン、並びに、当業者に知られる他の材料などの適切な強度の材料から形成され得る。アバットメント20は、多くの異なるインプラント、歯根、または、中間アバットメントに適合するように異なるサイズの範囲内に形成され得る。アバットメント20の長さは約1mm〜約10mmの範囲内である。更なる実施形態において、長さは、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、および、約10mmとなり得る。
【0042】
図10および
図11に示されるリング50は、歯科用アプライアンスと一体であるキャップ80の保持のために、アバットメント20のソケット34内に係合するようになっている。
図10を参照すると、リング50は、アバットメント80のソケット34内の対応する環状リング42とスナップフィット係合するために、環状の座部または溝60によって分離される2つの環状フランジ55,57を有する。現在の実施形態は、本明細書中で考慮されるスナップフィット係合のタイプを限定すべきではない。これは、他の形態のスナップフィット係合が当該技術分野において知られるからである。例えば、リング50をスナップフィット係合するために1つ以上の環状フランジを使用でき、並びに、スナップフィット係合のための他の形態を使用できる。リング50の内面65は、
図11に示されるように、上端および下端の両方から内側へと先細り、これにより、砂時計形状が形成される。リング50は、ナイロン、PEEK、デルリン、および、当該技術分野において知られる他のポリマーなどの適切に耐久性がある可撓性材料、および、チタン、ステンレス鋼などの金属、並びに、当業者に知られる他の材料から形成され得る。
【0043】
図12および
図13は、患者の口内に歯科用アプライアンスを固定するための組み付けられた歯科用アタッチメント装置の1つの実施形態を示す。歯科用アタッチメント装置を組み付けるために、リング50がソケット34内に環状リング42を介してスナップ嵌合される。キャップ80(歯科用アプライアンスと一体になり得る)がアバットメント上に位置され、また、保持ヘッド85がソケット34内に係合されるとともにリング50を通り抜けてスナップ嵌合する。ヘッド部87またはその一部が半球状部またはボール形状部46内へ受けられる。保持ヘッド85のヘッド部87とリング50とのスナップフィット係合は、キャップをアバットメントに固定する。同時に、環状壁90、特に凹状リップ97は、アバットメント20の凸状外面35上にわたって係合される。2つの対応する表面97,35間の摩擦力および収束角も、キャップをアバットメントに固定するが、同時に、アバットメント20に対するキャップ80の所定範囲の逸れを可能にする。キャップ80とアバットメント20との間の締め付け嵌合は、微生物汚染および歯垢捕捉を防止しようとして装置を口腔液から遮断するのに役立つ。
【0044】
図14および
図15を参照すると、歯科用アタッチメント装置10が組み付けられる際には、キャップ80とアバットメント20との間に隙間110が存在するとともに、ボール型ヘッド部87と半球状部またはボール形状部46との間に隙間120が存在し、それにより、キャップ20がアバットメント20に対して逸れる或いは回動する或いは旋回することができる。キャップ80とアバットメント20との間の逸れ115の範囲は0°〜約20°である。例示的に、キャップは、0°、約1°、約2°、約3°、約4°、約5°、約6°、約7°、約8°、約9°、約10°、約11°、約12°、約13°、約14°、約15°、約16°、約17°、約18°、約19°、および、約20°の角度でアバットメントに対して逸れる。アバットメント20に対するキャップ80の逸れが参照数値115として示される。しかしながら、逸れの範囲であっても、環状壁90(および凹状リップ97)は、摩擦接触を確保してキャップ80とアバットメント20との間にシールをもたらすのに役立つべくアバットメント20の外面35との接触を維持する。
【0045】
図16〜
図18は、事前傾斜アバットメント200の1つの実施形態を示す。事前傾斜アバットメント200は、
図8および
図9において説明された先の実施形態のアバットメントに類似する。
図16〜
図18を参照すると、事前傾斜アバットメント200は、上部230、カフ部237、取り付け部225、および、貫通孔239を備える。貫通孔239は第1の部分240と第2の部分250とを備える。第1の部分240は、
図9のソケット34に類似し、環状リップ241と、環状リング242と、円筒状キャビティ244と、下部246とを有する。ソケット234は、アバットメント20の環状リング42を通り越えたスナップ係合によりリング50を受け、アバットメント20の環状リング42は、リング50の対応する環状溝60内で嵌合する。保持ヘッド85のヘッド部87は、リング50を通り抜けてスナップ嵌合するとともに、下部246内に位置合わせさせられる。第2の部分250は、事前傾斜アバットメントをインプラントに締結するために保持ネジを受け入れる第1の円筒部252と、第2の円筒部254とを備え、第2の円筒部254は第1の円筒部252よりも小さい直径を有する。
【0046】
1つの実施形態において、上部230は、
図18に示されるように、カフ部237および取り付け部225の中心軸から20°の角度で傾けられる。事前傾斜アバットメントは、典型的なものであって限定的ではない。これは、事前傾斜アバットメントが約10°、約15°、約20°、および、約25°の角度を成し得るからである。更なる実施形態において、事前傾斜アバットメントは、約5°〜約45°の角度、約10°〜約40°の角度、約15°〜約35°の角度、および、約20°〜約30°の角度を成し得る。一例として、20°事前傾斜アバットメントは、その逸れの範囲と共に、アバットメント20のカフ部237および取り付け部225の中心軸に対するキャップ80の最大で約40°の逸れを可能にする。例示的に、キャップ20の逸れの範囲は、20°事前傾斜アバットメント200に対して、約20°、約21°、約22°、約23°、約24°、約25°、約26°、約27°、約28°、約29°、約30°、約31°、約32°、約33°、約34°、約35°、約36°、約37°、約38°、約39°、および、約400°である。
【0047】
図19および
図20を参照すると、取り付け部225を用いて事前傾斜アバットメント200をインプラント233内に固定することができ、取り付け部225は保持ネジ260を使用してインプラント内に固定される。インプラント233は、事前傾斜アバットメント200の取り付け部225を受けるためのキャビティ238とネジ孔236とを備える開放端を有する第1の端部カフ部232と、第2の端部ネジ付きシャフト243とを備える。キャビティ238は、アバットメント200の取り付け部225と嵌め合うサイズおよび形状に形成される。組み付けのため、事前傾斜アバットメント200の取り付け部225は、インプラント233のキャビティ238内に嵌合される。保持ネジ260は、貫通孔239を貫通してセットされるとともに、ネジ孔236内に捩じ込まれ、それにより、事前傾斜アバットメント200をインプラント230に固定する。
【0048】
ツーピース事前傾斜アバットメント200’の別の実施形態が
図21および
図22に示される。事前傾斜アバットメント200’は、
図16〜
図18において説明された先の実施形態のアバットメントと類似し、また、同様の参照数字が同様の部分のために使用される。事前傾斜アバットメント200’は、上部230およびネジ付きシャフト227を有する第1の構成要素215と、本体部231、取り付け部225、および、貫通孔239を有する第2の構成要素220とを備える。上部230は、開放端232と、リング50およびキャップ80の保持ヘッド85を受けるためのソケット234とを有するとともに、開放端232からネジ付きシャフト227まで延びる凸状外面235を有する。ソケット234は、環状リップ241、環状リング242、円筒状キャビティ244、および、下部246を有する。工具受け孔245がソケット234の底部から内側へ延びる。本体部231は、開放端247、ネジ部251を有するキャビティ、第1の円筒部252、および、第1の円筒部252よりも小さい直径を有する第2の円筒部254を有する。
【0049】
ネジ部251は、第1および第2の円筒部252,254のそれぞれの中心軸から所定の角度115だけ傾けられ、それにより、第1の構成要素215は、組み付けられるときに同じ所定の角度を成す。例えば、事前傾斜アバットメントは、約10°、約15°、約20°、および、約25°の角度を成すことができる。更なる実施形態において、事前傾斜アバットメントは、約5°〜約45°の角度、約10°〜約40°の角度、約15°〜約35°の角度、および、約20°〜約30°の角度を成し得る。一例として、20°事前傾斜アバットメントは、その逸れの範囲と共に、アバットメント200’の第1および第2の円筒部252,254のそれぞれに対するキャップ80の最大で約40°の逸れを可能にする。例示的に、キャップ20の逸れの範囲は、20°事前傾斜アバットメント200’に対して、約20°、約21°、約22°、約23°、約24°、約25°、約26°、約27°、約28°、約29°、約30°、約31°、約32°、約33°、約34°、約35°、約36°、約37°、約38°、約39°、および、約40°である。
【0050】
ツーピース事前傾斜アバットメント200’は、
図23および
図24に示されるように、
図24に示される保持ネジ260を使用してインプラント233内に組み付けられて固定され得る。第2の構成要素220の取り付け部225は、インプラント223のキャビティ238内に嵌合される。保持ネジ260は、貫通孔239を貫通してセットされるとともに、ネジ孔236内に捩じ込まれ、それにより、第2の構成要素220をインプラント230に固定する。第1の構成要素215のネジ付きシャフト227は、第2の構成要素220のキャビティ236のネジ部251内に螺合されて固定される。
【0051】
他の実施形態において、歯科用アタッチメント装置10は、歯科用アプライアンス(図示せず)を固定するためのキャップ80と、失活歯根、インプラント、あるいは、同様のものに取り付くためのアバットメント20とを備える。キャップ80は、アバットメント20の凸状外面35上にわたる壁90の内側環状面92(および凹状リップ97)の金属間係合をもたらすようにアバットメント20上に位置されてアバットメント20と係合される。これらの2つの面の嵌め合いは、構成要素間に保持力を生み出す摩擦作用または圧入作用をもたらして、キャップ80をアバットメント20に固定する。金属間干渉およびそれに伴う保持は、アバットメント上にキャップおよびプロテーゼを着座させるときに加えられる圧縮咬合力によって達成されるとともに、その後の患者により与えられる連続的な咀嚼力によって更に達成される。
【0052】
図25を参照すると、歯科用アプライアンスを固定するための歯科用アタッチメント装置の他の実施形態が示される。歯科用アタッチメント装置10は、歯科用アプライアンス(図示せず)を固定するためのキャップ80と、失活歯根、インプラント、あるいは、同様のものに取り付くためのアバットメント20と、取り外し可能ボール15と、リテーナリング50とを備える。キャップ80は、被検者の口内に歯科用アプライアンスを固定するために、
図25の点で描いた中心線により示されるように、アバットメント20、取り外し可能ボール15、および、リング50と係合する。アバットメント20は、Astraインプラント(Astra Tech Inc.,ウォルサム、マサチューセッツ州)、Branemarkインプラント(Nobel Biocare,チューリッヒ、スイス)、および、Straumannインプラント(Straumann USA LLC,アンドーバー、マサチューセッツ州)などの市販のインプラントに適合するようになっていてもよく、あるいは、歯根アバットメントとして、ミニインプラントとして、または、歯科用インプラントに固定される中間アバットメントに適合され得る形態を成して構成されてもよい。アバットメント20は、挿入されるときにアバットメント20に当て付く患者の歯肉線のおおよその位置を示すためにカフ部37を更に備える。キャップ80は、例えばこれらに限定されないが、ポスト、ネジ、または、接着剤、例えばアクリル、ビスアクリル、または、他の適したセメントによって歯科用アプライアンスに組み込む或いは接続するように形成されてもよい。この実施形態(
図25)において、キャップ80は、例えばCAD/CAM製造された金属バーへ取り付けるためのネジを有する。
【0053】
図26〜
図28は、取り外し可能ボール15を有するキャップ80の1つの実施形態を示す。キャップ80は、取り付け部100と、環状壁90を形成する内側キャビティ95を有する本体部75とを備える。本体部75は、形状が円形として示されるが、歯科用アプライアンス内にキャップ80を固定するのに適した任意の形状を成してもよい。歯科医師によって取り外し可能ボールをキャップ80内に着座させて該ボールにトルクを与えるために、取り外し可能ボール15は、駆動機能部84、この場合には、これに限定されないが、レンチの係合のための内側六角部を備える。
図27は、キャップ80および取り外し可能ボール15、この場合にはCAD/CAMキャップの側面図を示す。
図28に示されるように、開放端83における内側キャビティ95は内側環状凹面92を有する。凹面92は、アバットメント20の外側凸状面35に対応して外側凸状面35上にわたって係合するように形成される。環状壁90は、略球状またはボール形状のヘッド部87と共に、取り外し可能ボール15を取り囲む。別の実施形態において、取り外し可能ボール15は、多角形または回転楕円体などの他の適した形状であってもよい。別の実施形態において、取り外し可能ボール15または駆動機能部84または両方は、環状壁90のリップよりも上側、下側、または、環状壁90のリップと同じ高さに突出してもよい。
【0054】
取り付け部100は、短いポスト、ネジ、または、接着剤を含むがこれらに限定されない当業者により良く知られて理解される構造または技術によって歯科用アプライアンスを固定するために設けられる。そのような技術は本明細書中で繰り返されず、また、図は、単なる典型として与えられ、本発明を限定するように意図されない。
【0055】
図27を参照すると、キャップ80は、歯科用アプライアンスの対応するネジと螺合する雄ネジ81を備える。キャップ80は、
図28に示されるように、取り外し可能ボール15上の対応する雄ネジ16と係合する雌ネジ82を更に備える。取り外し可能ボール15は、アバットメント20と係合されるときに取り外し可能ボール15の保持を増大させるための縁部17を備える。
【0056】
図29A−
図29Cは、歯科専門家によって交換可能な取り外し可能ボール15の3つの形態例を示す。
図29Aにおいて、ヘッド部87は、患者による脱離を防止するのに十分であるが他の2つの形態よりも小さい保持力を与えるボール形状を成す。
図29Aにおけるヘッド部87は、プラスチックから構成され及び/又はボールがアバットメント20内のリング50と係合するときに滑らかな球状面を有するように構成されてもよい。
【0057】
図29Bは、中間の保持力のヘッド部87を有するボール15の例である。これは、ヘッド部87またはボール15全体を金属または他の硬質材料から形成することによって達成される。ボール15は、該ボール15をリング50内へスムーズに挿入できるようにするが取り外されるときに着座する或いは“かむ”ことにより保持力を高める環状リップまたは縁部17を有してもよい。
【0058】
高い保持力を伴うヘッド部87を有するボール15の第3の形態が
図29Cに示される。これは、ボールを保持リング50およびアバットメント20を通じて取り外すための力の大きさが増大されるように環状フランジまたは縁部17を鋭くすることによってもたらされる。したがって、ヘッド部87は、返し、環状縁部、部分的に環状の縁部、または、リップから成るグループから選択される表面特徴を備えてもよい。
【0059】
リング50内およびアバットメント20に対する保持力を変えるために他の形態も想定し得る。必要とされるそのような力は、キャップの内径とアバットメントの球状面との金属間接触、ボール直径とリングの内径との間の干渉、この係合を制御するためにキャップの完全着座の垂直高さを厳重に制御すること、および、分離移動に抵抗するためのヘッド部87上の縁部17の鋭利さを含むがこれらに限定されない多くの因子によって決定付けられる。
【0060】
図30および
図31は、キャップ80の2つの実施形態を示す。
図30におけるキャップ80は、CAD/CAM義歯バーと接続する。矢印88は、周囲の義歯からのアクリルがキャップ80と共に滑らかな仕上がりをもたらすことができるアクリル仕上げライン特徴を特定する。この特徴は、キャップ80の任意の形態に適用されてもよい。金属底部を伴って作り上げられる義歯に適した接触点を与えるために同様の特徴を使用できる。
図31におけるキャップ80は、アクリルの直接的な適用と共に用いるためのものである。CAD/CAMバーまたはアクリルピックアップタイプ以外の他のタイプの義歯支持構造と共に用いるために更なるキャップ形態が作り上げられてもよい。
【0061】
図32および
図33は、アバットメント20およびその断面をそれぞれ示す。アバットメント20は、
図8および
図9で説明された先の実施形態のアバットメントに類似し、また、同様の参照数字が同様の部分のために使用される。アバットメント20の断面は、ヒーリングキャップ300および印象コーピングネジ(図示せず)などのネジ付き構成要素を固定するための雌ネジ49を示す。また、アバットメント20をインプラント内へ締め付けるために適した工具が係合するための駆動機能部として作用する内孔48も存在する。最後に、リングのためのソケット34がある。この場合、取り外し可能ボールが係合するリングを固定するために使用されるネジ62(大径雌ネジ)がアバットメントにある。
【0062】
図34および
図35は、保持リング50およびその断面をそれぞれ示す。リングの側面図は、この実施形態ではリング50をアバットメント20内に固定するために使用される雄ネジ54を示す。リング50は、医師によって取り外しでき或いは容易に取り外しできてもよく、この形態では医師によって取り外しでき或いは容易に取り外しできるようになっており、それにより、例えば定期洗浄中および一般的な修復メンテナンス中などにおいて、義歯が取り外されるときにリング50が必要に応じて交換されてもよい。リングの断面は、リングをアバットメント内へ締め付けるための内部駆動機能部である内部六角形56を示す。最後に、最小内径リングまたはフランジ58は、取り外し可能ボール15と係合して保持力をもたらすために使用される。その内径の左側の開口52は、ボールが完全に係合されるときに可聴音または“クリック”をもたらすことができるようにする。キャップ80および取り外し可能ボール15は、
図35の右から左へ向けてリング(アバットメント)と接続する。リングは、プラスチックなどの軟質材料から形成される。1つの実施形態において、リングは、取り外し可能ボールが所定の位置でスナップ係合できるようにするのに十分な柔順性をそれが有するが十分な大きさの保持力を維持するのに十分な剛性をそれが有するようにPEEKを備える。
【0063】
図36および
図37は、患者の口内に歯科用アプライアンスを固定するための組み付けられた歯科用アタッチメント装置10の1つの実施形態を示す。歯科用アタッチメント装置を組み付けるために、リング50は、嵌め合いネジ部54,62でそれぞれソケット34内に螺合接続される。別の実施形態では、リング50がソケット34内にスナップフィット係合または圧入係合されてもよい。キャップ80(歯科用アプライアンスと一体になり得る)および取り外し可能ボール15がアバットメント上に位置決めされ、また、取り外し可能ボール15のヘッド部87がソケット34内に係合されてリング50に貫通してスナップ嵌合する。取り外し可能ボール15のヘッド部87とリング50とのスナップフィット係合は、保持力を与えて、キャップをアバットメント上に固定する。(
図29において説明されたような)ヘッド部87の形態に応じて、患者及び/又は臨床の状態の変化を考慮するべく保持力が調整されてもよい。例えば、修復部の片持ち領域に荷重が加えられる場合には、修復部が着座されるようにするべく、保持力を比例して更に大きくしなければならない。
【0064】
歯科用装置10の更なる保持特徴は、アバットメント20の凸状外面35上にわたる壁90の内側凹状面92の金属間係合から成る。2つの対応する表面92,35間の摩擦力および収束角は、キャップをアバットメントに固定するが、同時に、アバットメント20に対するキャップ80の所定範囲の逸れを可能にする。キャップ80とアバットメント20との間の締め付け嵌合は、微生物汚染および歯垢捕捉を防止しようとして装置を口腔液からシールするのに役立つ。
【0065】
図38および
図39を参照すると、歯科用アタッチメント装置10が組み付けられる際には、キャップ80とアバットメント20との間に隙間110が存在するとともに、ボール型ヘッド部87と半球状部またはボール形状部44との間に隙間120が存在し、それにより、キャップ20がアバットメント20に対して逸れる或いは回動する或いは旋回することができる。キャップ80とアバットメント20との間の逸れの範囲は0°〜約20°である。例示的に、キャップ80は、0°、約1°、約2°、約3°、約4°、約5°、約6°、約7°、約8°、約9°、約10°、約11°、約12°、約13°、約14°、約15°、約16°、約17°、約18°、約19°、および、約20°の角度でアバットメントに対して逸れる。アバットメント20に対するキャップ80の逸れが参照数値115として示される。しかしながら、逸れの範囲であっても、環状壁90は、摩擦接触を確保してキャップ80とアバットメント20との間にシールをもたらすのに役立つべくアバットメント20の外面35との接触を維持する。
【0066】
図40および
図41は、ツーピース事前傾斜アバットメント200’の他の実施形態を示す。事前傾斜アバットメント200”は、
図21および
図22において説明された先の実施形態のアバットメントと類似し、また、同様の参照数字が同様の部分のために使用される。事前傾斜アバットメント200”は、上部230およびネジ付きシャフト227を有する第1の構成要素215と、本体部231、取り付け部225、および、貫通孔239を有する第2の構成要素220とを備える。上部230は、開放端232と、リング50およびキャップ80の取り外し可能ボール15を受けるためのソケット234とを有するとともに、開放端232からネジ付きシャフト227まで延びる凸状外面235を有する。ソケット234は、ネジ部262、円筒状キャビティ244、および、下部246を有する。工具受け孔245がソケット234の底部から内側へ延びる。本体部231は、開放端247、ネジ部251を有するキャビティ、第1の円筒部252、および、第1の円筒部252よりも小さい直径を有する第2の円筒部254を有する。
【0067】
ネジ部251は、第1および第2の円筒部252,254のそれぞれの中心軸から所定の角度115だけ傾けられ、それにより、第1の構成要素は、組み付けられるときに同じ所定の角度を成す。例えば、事前傾斜アバットメントは、約10°、約15°、約20°、および、約25°の角度を成すことができる。更なる実施形態において、事前傾斜アバットメントは、約5°〜約45°の角度、約10°〜約40°の角度、約15°〜約35°の角度、および、約20°〜約30°の角度を成し得る。一例として、20°事前傾斜アバットメントは、その逸れの範囲と共に、アバットメント200’の第1および第2の円筒部252,254のそれぞれに対するキャップ80の最大で約40°の逸れを可能にする。例示的に、キャップ20の逸れの範囲は、20°事前傾斜アバットメント200”に対して、約20°、約21°、約22°、約23°、約24°、約25°、約26°、約27°、約28°、約29°、約30°、約31°、約32°、約33°、約34°、約35°、約36°、約37°、約38°、約39°、および、約40°である。
【0068】
ツーピース事前傾斜アバットメント200”は、
図42および
図43に示される保持ネジ260を使用してインプラント233内に組み付けられて固定され得る。第2の構成要素220の取り付け部225は、インプラント233のキャビティ238内に嵌合される。保持ネジ260は、貫通孔239を貫通してセットされるとともに、ネジ孔236内に捩じ込まれ、それにより、第2の構成要素220をインプラント230に固定する。第1の構成要素215のネジ付きシャフト227は、第2の構成要素220のキャビティ236のネジ部251内に係合されて固定される。
【0069】
他の実施形態において、歯科用アタッチメント装置10は、歯科用アプライアンス(図示せず)を固定するためのキャップ80と、失活歯根、インプラント、あるいは、同様のものに取り付くためのアバットメント20とを備える。キャップ80は、アバットメント20の凸状外面35上にわたる壁90の内側凹状面92の金属間係合をもたらすようにアバットメント20上に位置されてアバットメント20と係合される。これらの2つの面の嵌め合いは、構成要素間に保持力を生み出す摩擦作用または圧入作用をもたらして、キャップ80をアバットメント20に固定する。金属間干渉およびそれに伴う保持は、アバットメント上にキャップおよびプロテーゼを着座させるときに加えられる圧縮咬合力によって達成されるとともに、その後の患者により与えられる連続的な咀嚼力によって更に達成される。
【0070】
本明細書中に開示されるアバットメントの他の実施形態が、オッセオインテグレーションのためのミニインプラントとして被検者の顎骨に組み込まれる。ミニインプラントは、顎骨にオッセオインテグレートして歯科用アプライアンスの即時荷重を可能にする小径の一体原形インプラントである。ミニインプラントには多くの異なるサイズがある。シャフトは、直径が約1.8mm〜約2.9mmの範囲であってもよい。例示的に、シャフトの直径は、約1.8mm、約1.9mm、約2.0mm、約2.1mm、約2.2mm、約2.3mm、約2.4mm、約2.5mm、約2.6mm、約2.7mm、約2.8mm、および、約2.9mmであってもよい。また、シャフトの長さは約10mm〜約18mmの範囲である。更なる実施形態において、長さは、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、約15mm、約16mm、約17mm、および、約18mmであってもよい。
【0071】
図44〜
図46はヒーリングキャップ300の1つの実施形態を示す。ヒーリングキャップ300は、略平坦な上面310と、シャフト330を取り囲むために上面310から下方へ突出する環状スカート320とを備える。シャフトは、先端ネジ部333と、同軸な円錐台部分340とを備える。工具受け孔345が上面310から内側に延びる。工具受け孔345は、例えば、適した工具が係合するための平坦面を有する六角形であってもよい。
【0072】
図47〜
図49を参照すると、ヒーリングキャップ300がアバットメント20のソケット34上に位置され、また、シャフトがリング50を貫通して係合されてネジ孔48内に螺合される。リング50のテーパ状内面65がヒーリングキャップ300のシャフト330の円錐台部分340に適合する。同時に、環状スカート320がアバットメント80の外面35上にわたって係合されて締め付けられる。ヒーリングキャップ300とアバットメント20との間の嵌合は、微生物汚染を防止しようとしてアバットメントキャビティ内への口腔液の侵入を最小限に抑えるシールを形成するのに役立ち得る。ヒーリングキャップ300は、本明細書中に開示される及び/又は考慮されるアバットメント20の他の実施形態と共に使用され得る。
【0073】
図50および
図51は湾曲バーアタッチメント400の1つの実施形態を示す。バーアタッチメント400は、2つ以上の歯科用アタッチメント装置10を総義歯、オーバーデンチャー、および、部分義歯のための硬質フレームに接続するために使用され得る。バー400は、例えば小、中、大、および、特大の様々な患者の歯列弓に対応するべく多くの異なるサイズで形成することができるとともに、チタン、チタン合金、コバルト−クロム−モリブデン合金、窒化チタンコーティングを伴うステンレス鋼、ジルコニウム、タンタル、金、白金、パラジウム、ハフニウム、および、タングステン、並びに、当業者に知られる他の材料などの適切な強度の材料から形成され得る。また、バーは、様々な長さの直線状および湾曲状の両方を成す部分的な弓形状にカットされてもよい。
【0074】
開示された実施形態の先の説明は、当業者が発明を作り出せる或いは使用できるようにするべく与えられる。これらの実施形態に対する様々な改変は当業者にも容易に分かり、また、本明細書中に記載される一般的な原理は、本発明の思想または範囲から逸脱することなく他の実施形態に適用できる。したがって、言うまでもなく、ここで与えられる説明および図面は、本発明によって広義に考えられる主題を表わすことが理解される。また、本発明の範囲が本明細書中に示される実施形態に限定されるように意図されておらず、特許法と本明細書中に開示される原理および新規な特徴とに合致する最も広い範囲が本発明の範囲に対して与えられるべきことが更に理解される。
【0075】
本明細書中で挙げられた公開公報、特許出願、および、特許を含む全ての文献は、あたかも各文献が参照により組み入れられるように個別に且つ具体的に示唆されてその全体が本明細書中に記載されたかのように同じ程度まで参照により本願に組み入れられる。
【0076】
この開示の文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)用語“1つの(a)”、“1つの(an)”、および、“その(the)”、並びに、同様の言及の使用は、本明細書中で別段に示唆されなければ或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、単数形および複数形の両方を網羅するように解釈されるべきである。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で別段に示唆されなければ或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、任意の適した順序で行なうことができる。本明細書中で与えられる任意の全ての例または典型的な言葉(例えば、好ましい、好ましくは、など)の使用は、開示の内容を更に例示しようとしているにすぎず、特許請求の範囲に限定をもたらさない。明細書中の言語は、特許請求の範囲に記載されない任意の要素を本開示の実施に不可欠であるとして示唆するように解釈されるべきでない。
【0077】
特許請求の範囲に記載される開示の選択的な実施形態が、特許請求の範囲に記載される発明を実施するための発明者等に知られる最良の形態を含めて、本明細書中に記載される。これらの実施形態のうち、開示された実施形態の変形は、前述の開示を読むと、当業者に明らかになる。発明者等は、当業者がそのような変形を必要に応じて使用する(例えば、特徴または実施形態を変更する或いは組み合わせる)ことを予期し、また、発明者等は、本明細書中に具体的に記載される方法とは別の方法で発明が実施されることを意図する。
【0078】
したがって、この発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲に挙げられる主題の全ての改変および等価物を適用可能な法律により許容されるように含む。また、前述した要素のその全ての想定し得る変形における任意の組み合わせは、本明細書中で別段に示唆されなければ或いは文脈により明らかに矛盾しなければ、本発明によって包含される。
【0079】
個々の数値の使用は、あたかもその値が“約”または“おおよそ”という単語によって先行されたかのように近似値として述べられる。同様に、この出願で特定される様々な範囲内の数値は、別段明示的に示唆されなければ、あたかもその述べられた範囲内の最小値および最大値がいずれも“約”または“おおよそ”という単語によって先行されたかのように近似値として述べられる。このように、述べられた範囲を上回る変化および下回る変化を使用して、その範囲内の値とほぼ同じ結果を得ることができる。数値に言及するときに本明細書中で使用される用語“約”および“おおよそ”は、開示された主題が最も密接に関連する技術或いは対象のその範囲または要素に関連する技術における当業者に対してそれらのそのままの普通の意味を有するものとする。厳格な数値境界から広がる大きさは、多くの因子に依存する。例えば、考慮されてもよい因子の幾つかとして、要素の臨界、及び/又は、所定の大きさの変化が特許請求の範囲に記載される主題の性能に与える影響、並びに、当業者に知られる他の考慮すべき事項が挙げられる。本明細書中で使用されるように、異なる数値に関する異なる大きさの有効数字の使用は、“約”または“おおよそ”という単語の使用が特定の数値または範囲をどのようにして広げる役目を果たすのかを限定しようとするものではない。したがって、一般的な態様として、“約”または“おおよそ”は数値を広げる。また、範囲の開示は、最小値と最大値との間の全ての値に“約”または“おおよそ”という単語の使用により与えられる範囲の広がりを加えたものを含む連続範囲として意図される。そのため、本明細書中における値の範囲の記述は、本明細書中で別段に示唆されなければ、その範囲内に入るそれぞれの別個の値に個別に言及する省略法としての役目を果たそうとしているにすぎず、また、それぞれの別個の値は、あたかもそれが本明細書中に個別に列挙されたかのように明細書中に組み入れられる。