(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野を含む多用途の分野において、多機能で高品質の薄膜(たとえば、高絶縁薄膜、半導体薄膜、高誘電体薄膜、発光薄膜、高磁性体薄膜、超硬薄膜等)が求められている。
【0003】
たとえば、半導体装置の製造の場面においては、半導体チップ内において、回路配線相当になる低インピーダンスの高導電膜、回路の配線コイル機能や磁石機能を有する高磁性膜、回路のコンデンサ機能を有する高誘電体膜、および電気的な漏洩電流の少ない高絶縁機能を有する高絶縁膜などが、設けられている。
【0004】
これらの膜の成膜する従来技術として、たとえば、熱CVD(化学気相成長:Chemical Vapor Deposition)装置、光CVD装置またはプラズマCVD装置が用いられており、特に、プラズマCVD装置が多々使用されている。これは、たとえば、熱・光CVD装置よりも、プラズマCVD装置の方が、成膜温度を低く、かつ、成膜速度が大きく短時間での成膜処理が可能なためである。
【0005】
たとえば、窒化膜(SiON、HfSiONなど)や酸化膜(SiO
2,HfO
2)などのゲート絶縁膜を、半導体基板に成膜する場合には、減圧雰囲気でのプラズマCVD装置を用いた以下の技術が一般的に採用されている。
【0006】
つまり、NH
3(アンモニア)やN
3、O
2、O
3(オゾン)などのガスと、シリコンやハフニウムなどの前駆体ガス(非加熱ガス)とが、CVD処理が実施される処理チャンバー装置に直接供給される。処理チャンバー装置内では、前駆体ガスを熱や放電を利用することによって解離させ、金属粒子を生成し、当該金属粒子と、上述したNH
3(アンモニア)などの非加熱ガスまたは熱や放電によって生成したラジカルガスとの化学反応により、被処理体上に、窒化膜または酸化膜などの薄膜が成膜される。
【0007】
一方で、プラズマCVD装置では、処理チャンバー装置内で、直接的に、高周波プラズマやマイクロ波プラズマが発生させていた。したがって、被処理体は、ラジカルガスや、高エネルギーを有したプラズマイオン(または電子)に晒される。
【0008】
なお、プラズマCVD装置に関する技術が開示されている先行文献として、たとえば特許文献1が存在する。
【0009】
しかしながら、プラズマCVD装置内の成膜処理では、上記のように、被処理体がプラズマに直接晒される。したがって、当該被処理体は、プラズマ(イオンや電子)により、半導体機能の性能を低下させる等のダメージを大きく受けていた。
【0010】
他方、熱・光CVD装置を用いた成膜処理では、被処理体はプラズマ(イオンや電子)によるダメージを受けず、高品質の、窒化膜や酸化膜等が成膜される。しかしながら、当該成膜処理では、高濃度で、かつ多量のラジカルガス源を得ることが困難であり、結果として、成膜時間が非常に長く要するという問題がある。
【0011】
最近の熱・光CVD装置では、原料ガスとして、熱や光の照射によって解離しやすい、高濃度の、NH
3ガスやO
3ガスを用いている。さらに、CVDチャンバー装置内には、加熱触媒体が設けられている。これにより、当該熱・光CVD装置では、触媒作用により、ガスの解離が促進し、窒化膜や酸化膜等を短時間で成膜することも可能となっている。しかしながら、当該時間の短縮化は限定的であり、大幅な成膜時間の改善は困難であった。
【0012】
そこで、プラズマによる被処理体に対するダメージを軽減でき、成膜時間のさらなる短縮化が可能な装置として、リモートプラズマ型成膜処理システムが存在する(たとえば、特許文献2参照)。
【0013】
当該特許文献2に係る技術では、プラズマ生成領域と被処理材処理領域とが、隔壁(プラズマ閉込電極)により分離されている。具体的に、特許文献2に係る技術では、高周波印加電極と被処理体が設置された対向電極との間に、当該プラズマ閉込電極を設けている。これにより、特許文献2に係る技術では、中性活性種だけが、被処理体上に供給される。
【0014】
また、特許文献3に係る技術では、リモートプラズマ源において、原料ガスの一部をプラズマにより活性化させている。ここで、ガスの流路は、当該リモートプラズマ源内において、周回されている。リモートプラズマ源において生成された活性ガスは、放出され、被処理体の存する装置側へと供給される。
【0015】
特許文献3のような薄膜技術においては、窒素、酸素、オゾンまたは水素等の様々な原料ガスが、利用されている。そして、当該原料ガスから、活性化されたラジカルガスが生成され、当該ラジカルガスにより、被処理体上に薄膜が成膜される。
【0016】
ラジカルガスは、非常に反応性が高い。したがって、微量(約1%:10000ppm)以下の濃度のラジカルガスを、被処理体に当てることで、被処理体での金属粒子とラジカルガスとの化学反応が促進させ、窒化薄膜、酸化薄膜または水素結合薄膜などを、短時間で効率的に、作り出すことができる。
【0017】
ラジカルガス生成装置では、放電セルが配設されており、当該放電セルにおいて、大気圧プラズマとなる誘電体バリア放電によって、高電界なプラズマを実現させる。これにより、放電セルのプラズマに晒された原料ガスから、高品質なラジカルガスが生成されCVD装置内に供給される。
【0018】
また、CVD装置内おいて、被処理体(ウェハー基板)に対してガスを利用した処理を施す場合、被処理体が配設されているCVD装置内を加熱および減圧状態にする。そして、当該CVD装置内に、有機金属化合物蒸気ガス(プリカーサガス)を充満させるとともに、金属粒子の酸化・窒化・還元の促進のために、オゾンガス、水蒸気、水素ガス、またはラジカルガス(酸素ラジカルガス、窒素ラジカルガス、水素ラジカルガス等)を供給する。これにより、CVD装置内おいて、被処理体面状に堆積した酸化・窒化物質等を熱拡散することで、被処理体面に半導体膜または絶縁膜等の機能膜として結晶成長させた膜(成膜)にすることができる。
【0019】
なお、上記において、CVD装置内に、プリカーサガスと共に供給される各種ガス(オゾンガス、水蒸気、水素ガス、またはラジカルガス)を、以後、成膜処理ガスと称することとする。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、高アスペクト比の溝202Aを有する被処理体202の一部の断面構成を示す拡大断面図である。
【0032】
図1において、Dxは、溝202Aの口径であり、Dyは、溝202Aの深さである。たとえば、口径Dxは、約数十μm径程度であり、深さDyは、口径Dxの数倍〜数十倍程度である。
図1に示す高アスペクト比(Dy/Dx)である溝202Aに対して、均質な成膜が求められる(換言すれば、ガス噴射により、高アスペクト比の溝202Aの底まで、均等なガスを供給できることが求められる)。
【0033】
従来のような、所定の口径で短いガス供給配管から噴射する方式は、装置内に万遍なくガスを充満させる場合に適している。しかしながら、当該方式のガス噴出では、ガス供給配管において、ガスの流れる向きが整った整流化やガスの加速化が成されず、成膜装置へガスを供給(噴出)するため、噴出ガスの指向性やガス速度が弱いため、高アスペクト比の溝202A内部まで、ガスが入り込まず、溝202Aの底面および側面に対して、均質な膜を成膜することは困難である。また、供給したラジカルガスは、ガス寿命が非常に短いため、溝202Aの底面に到達する前に死滅することから均質な膜を成膜することは困難になる。
【0034】
したがって、高アスペクト比の溝202A内に均質な膜を成膜するためには、噴出ガスに指向性を持たせるように、ガス供給空間を薄い隙間d0に制限して通過する空間距離Lxを十分確保すること、かつガス供給空間をガス通過流れに沿って狭くすることで、整流化したガスを加速化させガスの高速度化を図る必要がある。つまり、噴出ガスのビーム角度αは、溝202Aのアスペクト比が大きくなるほど、小さくする必要がある(つまり、より指向性を有し、ガスの高速度化をすることで、噴出するガスが拡散速度に打ち勝ちガスの広がりを抑制したガス噴射が必要になる)。
【0035】
本発明に係る非加熱、加熱および放電ガスの成膜装置へのガス噴射装置は、高アスペクト比の溝202A内に均質な膜を成膜するために、プリカーサガスまたは成膜処理ガスを、ビーム状に噴出することができる構成について説明する。以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0036】
<実施の形態1>
図2は、本実施の形態に係る非加熱、加熱および放電ガスの成膜装置へのガス噴射装置(以下、単にガス噴射装置と称する)100と処理チャンバー200とから構成されるリモートプラズマ型成膜処理システムの構成を、模式的に示した斜視図である。
【0037】
非加熱、ガス噴射装置100と処理チャンバー200とは、フランジによって区画されている。つまり、フランジは、ガス噴射装置100と処理チャンバー200とを結合させるための部材であり、フランジの一方主面は、ガス噴射装置100の底面を構成しており、フランジの他方主面は、処理チャンバー200の上面を構成している。ここで、ガス噴射装置100内と処理チャンバー200内とは、噴出孔102を介して、接続されている。
【0038】
図2に示すように、ガス噴射装置100は、密閉された、ガス供給部101、ガス分散供給部99、ガス噴射セル部23およびガス噴射部5から構成されている。ガス分散供給部99では、ガス供給部101から供給されたガスを均等に分散させる。ガス噴射セル部23では、ガス分散供給部99から分散供給されたガスに対して、流れ方向、整流化および加速化を図る。ガス噴射セル部23において、整流され高速度に加速されたガスは、ガス噴射部5に送られる。ここで、ガス噴射部5には、ガスを成膜装置側へ噴出させる孔102が配設されている。
【0039】
ガス噴射装置100の前段には、供給するガス量を調整するバルブ102Bおよびガス噴射装置100内のガス圧力を所定範囲内に監視、制御する圧力制御部103が設けられている。ガス供給部101で、供給されたガスG1は、ガス分散供給部99で、ガス噴射セル部23のガス供給断面であるガス隙間d0に均等に供給される。ここで、ガス噴射装置100内のガス圧力P1は、10kPa〜50kPaの範囲において、一定に維持されている。また、ガス噴射セル部23を通過したガスは、ガス噴射セル部5の噴出孔102を介して噴出ガスG2として噴出される。このガスG2は、処理チャンバー200内に対して噴射される(より具体的には、処理チャンバー200内の被処理体202に対して噴射される)。ここで、噴出孔102の開口径は、たとえば1mm以下である。
【0040】
なお、ガス噴射装置100内は、圧力P1に減圧されているが、ガス噴射装置100外においては、大気圧である。
【0041】
CVD装置である処理チャンバー200内には、テーブルが配設されている。そして、当該テーブル上には、被処理体が載置される。ここで、被処理体は、
図1に示すように、高アスペクトである溝202Aを有する。
【0042】
処理チャンバー200には、排気口を介して、真空ポンプに接続されている。当該真空ポンプにより、処理チャンバー200内のガス圧力P0は、30Pa〜400Pa程度の真空圧に減圧された圧力に維持されている。
【0043】
図2において、プリカーサガスもしくはラジカルガスとなり得る原料ガスG1が、ガス供給部101を介して、所定の流量で、ガス噴射セル部23に供給される。ガス噴射セル部23で均等に分散された原料ガスG1は、ガス噴射セル部23の隙間d0内に均等に供給される。原料ガスG1は、ガス噴射セル部23を通って、噴出孔102から処理チャンバー200内へ、プリカーサガスG2またはラジカルガスG2として噴出させる。ガスG2は、テーブル上に載置された被処理体に対して、ビーム状に照射され、当該照射された領域において、膜成膜される。
【0044】
以下では、ガス噴射セル部23は、平板形状で中空になっており、中空のガス流れ部分の断面形状は長方形断面をしており、ガスの流れ方向に従って長方形断面のガス流れ幅が小さくなる扇型形状をしたものになっている。このガス噴射セル部23内でのガスの流れについて説明する。
【0045】
ここで、ガス噴射セル部23部分は、たとえば、サファイアまたは石英で構成されている。また、ガスの隙間doの幅(ガス噴射セル部23を構成する2枚の扇型形状の平板間の距離)Δdは、3mm以下に制限している。また、ガス噴射装置100内のガス圧力P1は、10kPa以上、50kPa以下の範囲で一定に維持されているので、隙間doにおけるガス圧力も、10kPa以上、50kPa以下の範囲で一定に維持されている。
【0046】
ガス噴射装置100を、このように、ガス流れ断面を隙間doの幅Δdに制限し、ガス流れ幅Wをガスの流れる方向に対して狭くした長方形断面形状(扇型形状)にし、ガス圧力をP1に減圧することで、ガス噴射装置100に供給するガス流量Qを供給する。(このガス流量Qを、たとえば1L/minとする。)ガス噴射セル部23に流れ込むガスは、所定ガス空間Lxを通過することで、次式(1)式のように、整流化かつ、高速化された流速V
Soとなり、ガス噴射セル部23の頂点部で、所定方向のガス流れに整流化される。また、ガス噴射セル部23内を通過することで、ガスは加速され高速度化され、高速である速度V
Sとして、噴出孔102からガスが噴出される。
【0047】
ここで、式(1)は、V
So=100/P1・[1000・Q/{(W/10)・(Δd/10)}] (cm/s)である。
【0048】
そして、長さLxで、かつ狭い隙間doを通ることにより、四方からガス噴射セル部23に流れ込んだガスG1は、ガス流れ方向に対し、扇型形状のガス空間に起因して、一定方向のガス流れ向き(内向き)に整流化され、加速される。そして、ガスは、ガスG2として、ガス噴射セル部23の頂部側から(つまり、噴出部5の噴出孔102を介して)、被処理体に向けて噴射される(換言すれば、ガス圧力P0で保持されている処理チャンバー200内に噴射される)。ここで、
図4に示すように、ガス噴射セル部1から噴射されるガスG2は、ビーム角度αを有するビーム状である。
【0049】
隙間doにおける、通路距離Lxは、隙間doの幅Δdの数十倍以上、たとえば20mm〜100mm程度に設定される。ガス噴射セル部23の隙間doに流入するガスの流れ方向にばらつきがあっても、ガス噴射セル部23の頂点側(つまり、噴出部5付近)でのガスの流れ方向は、ガス噴射セル部23の側面に沿った向きに整い、整流化される。また、ガス噴射セル部23の形状に起因して、長方形のガス隙間doの断面積は、噴出部5に近づくに連れて小さくなる。したがって、ガス噴射セル部1内を伝搬するガスは、加速(加速度a)され、噴出部5付近では速度Vsとなる。
【0050】
整流・加速され、速度Vsで噴出部5に入力されたガスは、噴出孔102で、さらに圧縮され、高速化する。ここで、噴出孔102において、圧力差ΔP(=ガス噴射装置100内のガス圧P1−処理チャンバー200内のガス圧P0)が生じており、当該圧力差ΔPを利用して、噴出孔102から処理チャンバー200へと、ガスG2が噴射される。
【0051】
ガス噴射セル部23の頂点部から噴出部5へ入力されるガスの速度をVsとし、当該速度Vsの軸方向成分をVsyとし、当該速度Vsの径方向成分をVsxとする。また、噴出部5から出力されたガスの速度をV0とし、当該速度V0の軸方向成分をVy0とし、当該速度V0の径方向成分をVx0とする。
【0052】
すると、処理チャンバー(成膜装置)200への噴出するガスの速度V0は、ガス噴射装置100内のガス圧力P1と成膜装置200内のガス圧力P0との比(=P1/P0)で高速度かされ、速度V0={(ガス圧P1)/(ガス圧P0)}×速度Vsとなり、速度Vy0={(ガス圧P1)/(ガス圧P0)}×速度Vsy、となり、速度Vx0={(ガス圧P1)/(ガス圧P0)}×速度Vsx、となる。
【0053】
処理チャンバー200内の圧力は真空圧に近い圧力(ガス圧力P0=約30Pa〜400Pa)であるため、噴出部5から噴出させるガス拡散速度VDも非常に大きくなる。ちなみに、被処理体へ噴出されるガスの速度Vsは、ガス噴射セル部23部分で加速され、かつ、ガス噴射装置100内のガス圧P1と処理チャンバー200内のガス圧P0との圧力差ΔPによって、整流化かつ加速されたガスは、噴出孔102で圧縮されることで、超音速を超える速度となって噴出される。
【0054】
図3は、ガス種として、酸素ガスもしくは窒素ガスとした場合におけるガスを供給するガス圧力P0に対する拡散速度VD特性を示した特性図である。この
図3からガス噴射セル部23においては、P1を30kPaとすると、ガスの拡散速度VDは、約0.04m/s程度であるが、処理チャンバーのガス圧力雰囲気P0においては、3m/s〜40m/sとなり、非常にガスの拡散速度VDが大きい。処理チャンバー200での拡散速度VDが大きいため、処理チャンバー200へ噴出するガスが指向性を持たず、噴出速度が拡散速度に比べ、十分に高くなければ、処理チャンバー200へ噴出したガスは、すぐに、四方、八方に拡散されることになることになる。
【0055】
それに対し、本願発明の扇型形状にしたガス噴射セル部23から処理チャンバー200へ噴出した場合は、噴出ガスG2の噴出速度V0は、超音速を超える速度で指向性のあるビーム状となる。そのため、拡散速度VDに比べ、非常に高いガス流速を有するため、噴出ガスの四方への拡散が抑制され、高速度で、被処理体面にビーム状に噴射ガスを照射できる。
【0056】
噴出部5から噴出させるガスは、拡散速度VDを超える速度でガスG2が噴出される。したがって、より大きな速度Vsyを有するようにガスG2を噴出部5から噴射させることにより、ガス噴射セル部23の頂点部から指向性のあるビーム状のガスG2を噴出させることができる。また、速度Vsxは、ガス噴射セルの形状が扇型形状であるため、内向きのガス速度ベクトルになるため、噴出したガスに対しても、内向きガス速度ベクトルVx0になり、拡散速度VDを抑制する方向になる効果がある。
【0057】
さて、発明者らは、実験・シミュレーションを行った結果、処理チャンバー200内のガス圧P0を成膜に適した30Pa〜400Pa程度に設定した場合、ガスG2の指向性の観点から、噴出部5付近のガスの加速度は、約200m/s2以上確保できれば好ましいことを見出した。また、さらに良質なビーム形状のガスG2を噴出させるためには、ガスG2の加速度は、約400m/s2以上確保することが望ましい。
【0058】
よって、上記ガス噴射セル部23の弧角を約20°〜40°付近に設定されたガス噴射セル部23においては、上記加速度を確保する観点から、ガス噴射セル部23内のガス圧P1は、約80kPa以下が好ましく、さらに良質なビーム形状のガスG2を噴出させるためには、当該ガス圧P1は、約50kPa以下であることが望ましい、ことを発明者らは見出した。
【0059】
一方、処理チャンバー200内のガス圧P0(30Pa〜400Pa)に対して、数十倍以上の圧力損失を持たせることが望ましい。そこで、噴出部5において、噴出孔102の径を0.03mm〜1mmとし、噴出部5の長さL1を5mm以上とした場合には、ガス噴射セル部23内のガス圧P1は、約20kPa程度であることが望ましい。
【0060】
ガス噴射装置100は、整流化したガスを高速度のガスとして噴射できる構成であるが、ガス噴射装置100内のガス圧力を制御する手段は有していない。したがって、ガス噴射装置100内のガス圧力の変動によって、噴出されるガス量や噴出するガス速度が変動し、成膜装置において成膜される膜の品質に影響を及ぼす。また、成膜装置の処理チャンバー200内のガス圧P0が、例えば、圧力が30Pa〜400Paの範囲内で変動すれば、この処理チャンバー200内のガス圧P0に対応してガス噴射装置100内のガス圧力の変動することになる。
【0061】
そこで、本発明では、ガス噴射装置100の圧力変動やガス量をコントロールするために、ガス噴射装置100のガス供給側に、ガス流量調整手段とガス圧力とを一定制御する手段および所定圧力範囲内であることを監視する手段を持たせている。
【0062】
図2において、ガス噴射装置100の圧力変動やガス量をコントロールするために、ガス噴射装置100の前段に、ガス流量を調整するバルブ102Bが配設されている。また、バルブ102Bの後段に、オートプレッシャコントローラ(APC)103が配設されている。つまり、バルブ102BおよびAPC103により、ガス噴射装置100内の圧力が一定値となるようにコントロールされている。
【0063】
APC103では、圧力計103bが常時、ガス噴射装置100内の圧力を計測している。そして、当該測定値が一定になるように、APC103内の自動開閉バルブ103bが微調整開閉制御されている。これにより、ガス噴射装置100内のガス流量および圧力が一定に制御されている。
【0064】
このように、ガス噴射装置100の前段に、バルブ102BとAPC103とを設けることで、成膜装置内に成膜される膜の品質を高めることができる。
【0065】
なお、ガス噴射装置100から、良質なビーム状のガスを噴出させるには、ガス噴射セル部23を大きくすることが望ましい。また、ガス噴射セル部23で、整流化されたガスを乱さずに噴出させるための噴出部5は、出来る限り小さく設計することが望ましい。
【0066】
上記のように、ガス噴射セル部23の扇型形状の長さLx、隙間doの部分において、長さLxを十分長くすることで、ガスの流れは一定方向に整流化され、かつ、ガス通過に対応して、整流化したガスが加速される。したがって、ガス噴射セル部23からは、指向性を有するビーム状のガスG2を噴射させることができる。よって、非加熱、加熱および放電ガスの成膜装置へのガス噴射装置100は、高アスペクト比である溝を有する被処理体においても、当該溝内にガスを到達させ、均等にガスを噴射でき、結果として、当該溝内に均質な膜を成膜させることができる。
【0067】
また、ガス噴射セル部23の扇型形状の長さLx、隙間doの部分において、ガスは整流・加速されるので、結果として、ガス噴射セル部23からは高速のガスG2を噴射できる。よって、たとえば、ガスG2が、寿命の短いラジカルガスを含むガスである場合には、短時間で、被処理体までガスを到達させることが可能になるため、高濃度のラジカルを維持した状態で、被処理体に対してラジカルガスG2を照射することができる。よって、被処理体上に、高品質の膜を成膜することが可能となり、また、成膜温度を下げることもできる。
【0068】
ガス噴射セル部23を、扇型形状(弧角<180°)で構成し、ガス通路の隙間doを形成し、当該隙間do内にガスを流せば、ガス噴射セル部23内においてガスは、整流(拡散速度VDを打ち消す方向の速度が生成され)・加速(噴射されるガスG2の高速化)される。よって、ガス噴射セル部23からは、上記指向性のあるガスG2が噴射される。
【0069】
一方、ガス噴射セル部23の弧角が大きすぎると、隙間doにおけるガス衝突が多く発生し、隙間do内でラジカルガスを生成する場合には、ラジカルガスが隙間do内で多く消滅する。また、弧角が大きすぎると、ガス噴射セル部23の占有面積が大きくなる。これらの事項を勘案すると、弧角は、60°以下にすることが望ましい。
【0070】
また、隙間doの幅Δdは、3mmの以下であれば、ガス噴射セル部23における整流化は十分達成できる。ただし、隙間doの幅Δdが小さいほど、整流化をより向上させることができ、ガス噴射セル部23から噴射されるガスG2の高速化も可能となる。
【0071】
また、上記の通り、ガス噴射セル部23の部材のガスの面する部分は、ラジカルガスの壁との衝突による消滅の少ないサファイアまたは石英で構成され、通路面は凹凸の少ない面にすることが望ましい。
【0072】
これにより、ガスが通過する壁面にガスに起因した腐食物等が生成されることを抑制することができる。よって、ガス噴射セル部23から、ガスG2以外に、不純物が出力されることを防止すべきである。つまり、ガス噴射セル部23から、常に、高純度のガスG2を噴出させることができる。
【0073】
<実施の形態2>
本実施の形態では、ガス噴射セル部23において、ガスG1を加熱させることにより、ガスG1をラジカルガス化させる。そして、本実施の形態に係るガス噴射セル部23は、ラジカルガスG2を噴射する。
図4は、加熱ガスを噴射する、本実施の形態に係るガス噴射装置100の構成を示す図である。
【0074】
加熱させてラジカルガスG2を生成するガス種としては、オゾンガスがある(つまり、
図4において、ガス供給部101からガス噴射装置100に供給されるガスG1は、オゾンガスである)。
【0075】
一般的に、オゾン発生器では、誘電体バリア放電を利用して、オゾンガスを発生させている。最近においては、窒素ガスを含まず、かつ400g/m
3程度の高濃度オゾン化ガスをCVD装置に供給することで、オゾンガスを利用した酸化膜の成膜技術が既に確立されている。
【0076】
このような成膜技術は、例えば、CVD装置内を減圧雰囲気かつ加熱雰囲気とする。そして、当該CVD装置へ、プリカーサガス(たとえば、TEOS(Tetraetheylorthosilicate)等のシリコン有機化合物)と高濃度オゾンガスとを交互に供給し、CVD装置内の被処理体に対して酸化膜が成膜される。
【0077】
ここで、プリカーサガスを供給する工程において、シリコン有機化合物からSi金属を熱解離させ、かつ、オゾンガスを供給する工程において、オゾンガスの一部を熱解離させることによって、酸素原子(酸素ラジカル)を生成させる。当該酸素ラジカルは酸化力が強く、熱解離したSi金属との酸化反応で、被処理体上にSiO
2膜が成膜される。
【0078】
本実施の形態に係るガス噴射セル部23は、オゾンガスから酸素ラジカルガスを生成し、当該酸素ラジカルガスを、指向性を有するビーム状のガスG2として噴出する。
【0079】
実施の形態1で説明したガス噴射装置100と本実施の形態に係るガス噴射装置100とは、下記の部材が追加されている以外は、同じ構成である。
【0080】
図4に示すように、本実施の形態では、扇型形状のガス噴射セル部23の外側面には、ヒータ(加熱部)51が環状に配設されている。なお、本実施の形態では、
図4に示すように、ガス噴射装置100は、ヒータ51を加熱するための電源H1を有している。
【0081】
ヒータ51を加熱させることにより、扇型形状のガス噴射セル部23を数十℃〜100℃程度まで加熱させ、結果として、ガス噴射セル部23における隙間do内のガス空間を数十℃〜100℃まで加熱する。当該加熱状態の隙間doにオゾンガスが通過すると、オゾンガスは熱解離し、酸素ラジカルガスが生成され、酸素ラジカルガスから酸素ガスに戻る寿命までの短時間に被処理体に酸素ラジカルガスを含んだガスG2を噴射させる。
【0082】
ガス供給部101から供給された高濃度のオゾンガスG1は、ガス分散供給部99内で均等に分散された後、扇型形状のガスの隙間do、ガス空間幅W0の長方形断面のガス空間に入力する。そして、数十℃〜100℃程度まで加熱している隙間doのガス空間を、オゾンガスG1は伝搬する。隙間do内を伝搬中のオゾンガスは、部分的に熱解離する。つまり、加熱されている隙間do内において、オゾンガスが熱解離することで、酸素ラジカルガスが多量に生成される。当該酸素ラジカルガスは、噴出部5内に供給される。そして、噴出孔102を介して、酸素ラジカルガスG2は、被処理体に向けて噴射される。ここで、実施の形態1でも説明したように、噴出孔102からは、指向性を有するビーム状の酸素ラジカルガスG2が噴出する。
【0083】
なお、上記説明では、噴出孔102が一つの構成を例にとって説明したが、複数の噴出孔102を有しても良い(実施の形態1も同様)。
【0084】
以上のように、本実施の形態では、ガス噴射セル部23の外側に、加熱を行うヒータ51が配設されている。
【0085】
このように、狭い隙間doのガス空間をヒータ51で直接加熱できるので、より低温(数十℃〜100℃程度)で、オゾンガスを効率良く熱解離させることができ、かつ、解離した酸素ラジカルガスをガス噴射セル部23によって短時間で、噴出させることができる。そして、噴出された酸素ラジカルガスを含んだ噴出ガスG2は、指向性を有するビームとして、被処理体に照射させることができる。
【0086】
なお、噴出ガスG1として、オゾンガスの代わりに、窒素化合物ガスや水素化合物ガスを採用しても良い。これらの場合には、加熱状態の隙間do内において、熱解離により、窒素ラジカルガスや水素ラジカルガスが生成される。ガス噴射セル部23から被処理体に、窒素ラジカルガスG2が照射されると、窒化膜が成膜され、水素ラジカルガスG2が照射されると、水素還元膜(水素結合を促進させた金属膜)が成膜される。
【0087】
また、
図4に示すガス噴射セル部1の隙間do内に、ガスG1として、プリカーサガスを入力させても良い。この場合には、加熱したプリカーサガスが、ガス噴射セル部23からビーム状に噴出させる。
【0088】
なお、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、ガス噴射装置100の前段には、バルブ102BとAPC103が配設されている。
【0089】
<実施の形態3>
本実施の形態に係るガス噴射装置100では、ガス噴射セル部23のガス隙間doにおいて、誘電体バリア放電を発生させ、当該誘電体バリア放電を利用して、良質なラジカルガスを生成する。そして、本実施の形態に係るガス噴射セル部23は、指向性を有するビーム状の高速度のラジカルガスを噴出する。
図5は、本実施の形態に係るガス噴射装置100の構成を示す図である。
【0090】
実施の形態1で説明したガス噴射装置100と本実施の形態に係るガス噴射装置100とは、下記の部材が追加されている以外は、同じ構成である。
【0091】
電極面に高電圧の交流電圧を印加し、誘電体バリア放電を発生させ、当該誘電体バリア放電利用して、ガスを解離させ、ラジカルガスを生成することは良く知られている。本実施の形態に係るガス噴射装置100は、誘電体バリア放電によって生成される、非常に高エネルギーを有した良質なラジカルガスを取り出すことができる、有効な手段として利用できる。
【0092】
図5に示すように、本実施の形態に係るガス噴射セル部23では、平板状で、かつ扇型形状の二つの平板2,3を有する。そして、平板2には、第一の電極61が密着するように配設され、平板3には、第二の電極が密着するように配設される(第二の電極は、平板3の後ろに存するので、
図5では図示されない)。そして、第一の電極51には、給電板610が配設され、第二の電極には、給電板620が配設される。
【0093】
本実施の形態に係るガス噴射セル部23は、誘電体であり、たとえば、サファイアもしくは石英で一体形成され、ガス噴射セル部23内は密閉された空間で構成されている。そのため、ガス噴射セル部23内のガス圧力は低圧力状態であっても、ガス噴射セル部23外に設けた第一の電極部61、第二の電極部の設置する場所は大気圧であるため、第一の電極部61の高電圧印加による絶縁対策は大気圧で設計出来るメリットが生じる。
【0094】
なお、本実施の形態では、
図5に示すように、ガス噴射装置100は、給電板610、620を介して第一の電極部61と第二の電極部との間に交流電圧を印加するための、交流電源9を有している。ここで、第一の電極部61は高電位HV側であり、第二の電極部は低電位(接地電位)LV側である。
【0095】
交流電源9により、給電板610、620を介して第一の電極部61と第二の電極部との間に、高電圧の交流電圧を印加する。すると、ガス噴射セル部23内に形成されたガス隙間do(放電空間と解することができる)内において、誘電体バリア放電が発生する。当該誘電体バリア放電が発生している隙間doにガスが通過すると、ガスは電離し、非常に高エネルギーを有した良質なラジカルガスが生成される。ここで、本実施の形態では、隙間doは高電界であり、低温である。
【0096】
ガス供給部101から供給されたガスG1(例えば、窒素ガス)は、ガス分散供給部99内で均等に分散された後、ガス噴射セル部23の隙間doに入力する。そして、誘電体バリア放電が発生している隙間do内を、窒素ガスG1は伝搬する。誘電体バリア放電により、隙間do内を伝搬中の窒素ガスから、窒素ラジカルガスが生成される。当該窒素ラジカルガスは、噴出部5内に供給される。そして、噴出孔102を介して、窒素ラジカルガスG2は、被処理体に向けて噴射される。ここで、実施の形態1でも説明したように、噴出孔102からは、指向性を有するビーム状の高速度を有する窒素ラジカルガスG2が噴出する。
【0097】
なお、上記説明では、噴出孔102が一つの構成を例にとって説明したが、複数の噴出孔102を有していても良い。
【0098】
以上のように、本実施の形態では、ガス噴射セル部23の両主面には、二つの電極部61が配設されている。
【0099】
したがって、誘電体であるガス噴射セル部23を介してガス隙間do内に交流電圧を印加すると、ガス隙間doおいて誘電体バリア放電を発生させることができる。よって、当該隙間do内にガスG1を供給させると、当該隙間do内においてラジカルガスG2を生成することができる。ガス噴射セル部23からは、指向性を有するビーム状のラジカルガスG2が出力される。ここで、実施の形態1でも説明したように、隙間do内を伝搬するガスは、整流・加速される。したがって、ガス噴射セル部23からは、高速のビーム化されたラジカルガスG2が出力される。よって、ラジカルガスG2が被処理体に到達するまでの時間は短縮化され、高濃度を維持した状態で、ラジカルガスG2は被処理体に照射される。
【0100】
ここで、誘電体バリア放電により発生した放電熱を除去するために、図示を省略しているが、給電板610,620内に冷媒が循環する流路を設けても良い。当該流路内に水等の冷媒を循環させることにより、冷却された給電板610,620を介して二つの電極61、およびガス噴射セル部23内を冷却することができる。当該冷却されたガス隙間doの放電空間内では、より良質なラジカルガスが生成される。
【0101】
誘電体バリア放電を利用して良質なラジカルガスを生成するために、ガス隙間doでのプラズマ状態を高電界にする必要がある。高電界のプラズマ状態を実現するためには、P・d(kPa・cm)積を、所定値以下の条件にすることが要求される。ここで、Pは、隙間do内のガス圧力(上記のガス圧力P1と把握できる)であり、またdは、隙間doの幅(上記のΔdと把握できる)である。
【0102】
ラジカルガスの場合において、P・d積が同じ値のとき、大気圧+短ギャップ長(幅Δdが小さい)の条件(前者の場合と称する)と、減圧+長ギャップ長(幅Δdが大きい)の条件(後者の場合と称する)との場合では、後者の場合の方が下記の点で有益である。つまり、後者の場合の方が、隙間do中を流れるガス流速が高められ、かつ、ギャップ長(放電面の壁)が広くなり、ラジカルガスの壁への衝突量による損失を抑制される(つまり、発生したラジカルガス量(ラジカルガス濃度)の分解を抑制できる)。
【0103】
以上のようなことから、誘電体バリア放電を安定的に駆動出来、良好なラジカルガスが得られるという観点から、ガス噴射セル部23は以下の条件を満たすことが望ましいことを、発明者らは見出した。
【0104】
つまり、ガス噴射装置100内において、ガス圧力P1を、約10kPa〜30kPa程度に設定し、隙間do内の幅Δdを、約0.3〜3mmに設定することにより、P・d積値を、約0.3〜9(kPa・cm)とすることが望ましい。ガス圧力P1および幅Δdを前記値の範囲で設定することにより、誘電体バリア放電の電界強度を高めることができ、良質なラジカルガスを生成することができる。
【0105】
なお、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、ガス噴射装置100の前段には、バルブ102BとAPC103が配設されている。本実施の形態では、ガス噴射装置100のガス圧力が所定範囲外になると、誘電体バリア放電が出来なくなったり、異常放電が発生したりする。したがって、本実施の形態では、当該観点においても、バルブ102BおよびAPC103を配設し、ガス噴射装置100内の圧力を一定時維持することは需要である。また、APC103において、ガス噴射装置100内の圧力異常を感知した場合には、APC103からの電気信号によって、放電用電源9を即停止させる構成を採用しても良い。
【0106】
なお、上記では、一例として、ガスG1として窒素ガスを採用する場合について言及した。しかしながら、窒素ガスの代わりに窒素化合物ガスを採用しても良い。また、ガス噴射セル部23の隙間do内に供給されるガスG1として、酸素化合物ガス(酸素ガスやオゾンを含む)や水素化合物ガス(水素ガスを含む)などを採用しても良い。この場合には、隙間do内では電離により、酸素化合物ガスから酸素ラジカルガスが生成され、水素化合物ガスから水素ラジカルガスが生成される。
【0107】
特に、ガス噴射装置100に酸素ガスを供給する場合においては、供給する酸素ガスに、微量の窒素ガスもしくは窒素酸化物ガス(数十ppm〜数万ppm)を加える。誘電体バリア放電を行うと、生成した窒素酸化物の触媒作用で、酸素ラジカルガスの生成量が飛躍的に多くすることが出来る。結果として、酸化膜の成膜の品質向上や成膜レートを上げることに寄与することが出来る。
【0108】
供給する酸素ガスに微量の窒素ガスもしくは窒素酸化物ガス加えた場合、添加した窒素ガスもしくは窒素酸化物ガスが、放電によって、硝酸ガスも生成される。成膜装置200内で、生成した硝酸ガスが装置200内の金属部品と接触すると、金属コンタミが発生する。よって、金属コンタミ発生抑制の観点から、酸素ガスに添加する窒素量は、特に1000ppm以下にすることが望ましい。
【0109】
ガス噴射セル部23から被処理体に、酸素ラジカルガスG2が照射されると、酸化膜が成膜され、水素ラジカルガスG2が照射されると、水素還元膜(水素結合を促進させた金属膜)が成膜される。
【0110】
<実施の形態4>
本実施の形態では、実施の形態1で説明したガス噴射セル部23が、ガス噴射装置100において複数配設されている。
【0111】
図6は、複数のガス噴射セル部23を有するガス噴射装置100と処理チャンバー(成膜装置)200とから構成された、リモートプラズマ型成膜処理システムの構成を、模式的に示した斜視図である。
図6に示すガス噴射装置100では、各噴出孔102を介して、成膜装置200内にガスG2が噴出される。
【0112】
図6に示すように、一つのガス分散供給部99と一つの成膜装置200との間に、実施の形態1で説明したガス噴射セル部23が複数個配設されている。なお、本実施の形態においても、ガス噴射装置100の外側は大気圧である。また、ガス噴射セル部23の数以外は、実施の形態1と
図6の構成とは同じである。
【0113】
図7は、本実施の形態に係るガス噴射装置100の他の構成を、模式的に示した斜視図である。
図7に示すガス噴射装置100では、各噴出孔102を介して、成膜装置200内にガスG2が噴出される。
【0114】
図7に示すように、一つのガス分散供給部99と一つの成膜装置200との間に、実施の形態2で説明したガス噴射セル部23が複数個配設されている。なお、本実施の形態においても、ガス噴射装置100の外側は大気圧である。また、ガス噴射セル部23の数以外は、実施の形態2と
図7の構成とは同じである。
【0115】
図8は、本実施の形態に係るガス噴射装置100の他の構成を、模式的に示した斜視図である。
図8に示すガス噴射装置100では、各噴出孔102を介して、成膜装置200内にガスG2が噴出される。
【0116】
図8に示すように、一つのガス分散供給部99と一つの成膜装置200との間に、実施の形態3で説明したガス噴射セル部23が複数個配設されている。なお、本実施の形態においても、ガス噴射装置100の外側は大気圧である。また、ガス噴射セル部23の数以外は、実施の形態3と
図8の構成とは同じである。
【0117】
通常、成膜装置200においては、プリカーサを供給する部分と、酸化膜や窒化膜のように求める膜種に対応したガスを供給する部分とを、有している。そこで、一つの成膜装置200に対して、プリカーサを供給する部分に相当する第一の非加熱のガス噴射装置100(
図6のガス噴射装置100)と、酸化膜や窒化膜のように求める膜種に対応したガスを供給する部分に相当する第二の加熱ガスもしくは放電ガスのガス噴射装置100(
図7もしくは
図8のガス噴射装置100)とが組み合わせで接続されても良い。ここで、第一の非加熱のガス噴射装置100内には、プリカーサガスを噴射する、複数のガス噴射セル部23が配設されている。また、第二の非加熱、加熱および放電ガスのガス噴射装置100内には、ラジカルガスを噴射する、複数のガス噴射セル部23が配設されている。
【0118】
リモートプラズマ型成膜処理システムの構成としては、成膜装置200内に被処理体を1枚設置した枚葉型、被処理体を複数個設置したバッチ型がある。成膜装置200にプリカーサガスを送り込む際に、
図6に示した複数個のガス噴射セル部23を介して供給し、窒化や酸化材としての活性化ガスの原料ガスを送り込む際に、
図7,8に示した複数個のガス噴射セル部23を介して供給する。これにより、被処理体である機能素子を多層に渡って形成させた、三次元の機能素子(3D素子)の表面に、窒化や酸化膜を均一に成膜できる。
【0119】
図6,7,8において、複数のガス噴射セル部23は均等に並べられており、ガス分散供給部99内において均等に分散されたガスは、各ガス噴射セル部23に対して、均等に流入する。
【0120】
<実施の形態5>
本実施の形態では、
図9に示すように、ガス噴射装置100は、同軸状の錐体形状の二つの部材を、ガスの間隙d0が設けられるように配置した、錐体形状のガス噴射セル部23を有する。錐体形状のガス噴射セル部23の頂点部からガスG2を噴出するようにすれば、同等のビーム状のガスを噴出することが出来、良質な成膜を実現することができる。