特許第6339243号(P6339243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6339243ブーストコンバータ段スイッチコントローラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339243
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】ブーストコンバータ段スイッチコントローラ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   H02M3/155 H
【請求項の数】33
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-572582(P2016-572582)
(86)(22)【出願日】2015年6月10日
(65)【公表番号】特表2017-525326(P2017-525326A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】US2015035052
(87)【国際公開番号】WO2015191680
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2016年12月12日
(31)【優先権主張番号】14/303,068
(32)【優先日】2014年6月12日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ワン カン
(72)【発明者】
【氏名】コスト ミカエル エー.
(72)【発明者】
【氏名】キング エリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】メランソン ジョン エル.
(72)【発明者】
【氏名】マクファーランド ジェームス ピー.
【審査官】 小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−228799(JP,A)
【文献】 特開2010−225308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子変圧器の出力電流がインダクタ電流として流れるインダクタと、
前記インダクタ電流を整流することにより整流電流を生成する整流器と、
前記整流器と負荷との間に設けられ、前記整流電流の電流経路を制御するスイッチと、を備える低電圧装置の前記スイッチを制御するスイッチコントローラであって、
前記電子変圧器が出力する変圧器信号を受信する変圧器入力を含む、1つ以上のコントローラ入力のセットと、
前記変圧器信号のエッジ遷移を検出し、前記インダクタ電流が、前記電子変圧器が安定的に動作するのに必要な最小ピークインダクタ電流以上となるように、前記スイッチを閉じるためのスイッチ制御信号のアサーションを前記エッジ遷移に同期させるよう前記スイッチ制御信号を生成するコントローラロジックと、を含み、
前記整流電流は、前記スイッチが閉じられている時、スイッチ電流として前記スイッチを流れて前記電子変圧器に戻り、前記スイッチが開いている時は前記負荷に供給される、
スイッチコントローラ。
【請求項2】
前記インダクタ電流は、前記スイッチ制御信号のアサーションの後、前記変圧器信号の電圧及び前記インダクタのインダクタンスに従って決定されたレートでほぼ線形に増加する、請求項に記載のスイッチコントローラ。
【請求項3】
前記コントローラロジックは、前記スイッチ制御信号のアサーションを前記変圧器信号のエッジ遷移後の遅延間隔だけ遅延させ、前記遅延間隔は、最小ピークインダクタ電流閾値よりも大きく、最大インダクタ電流閾値よりも小さいピークインダクタ電流をもたらす、請求項に記載のスイッチコントローラ。
【請求項4】
前記コントローラ入力は、前記スイッチ電流を示すセンス信号を受信するセンス入力を含み、前記コントローラロジックは、前記センス信号にさらに従って前記スイッチ制御信号を制御する、請求項に記載のスイッチコントローラ。
【請求項5】
前記コントローラ入力は、負荷電圧を示す負荷信号を受信する負荷入力を含み、前記コントローラロジックは、前記負荷信号にさらに従って前記スイッチ制御信号を制御する、請求項に記載のスイッチコントローラ。
【請求項6】
前記コントローラロジックは、前記変圧器信号の半周期に1回前記スイッチ制御信号をアサートする、請求項に記載のスイッチコントローラ。
【請求項7】
前記コントローラロジックは、最小ピークインダクタ電流閾値に従って決定される最小間隔だけ前記変圧器信号の正から負へのエッジ遷移に先立って、前記スイッチ制御信号をアサートする、請求項に記載のスイッチコントローラ。
【請求項8】
前記コントローラロジックは、最大インダクタ電流閾値に従って決定される最大期間だけ正から負へのエッジ遷移に先立って、前記スイッチ制御信号をアサートする、請求項に記載のスイッチコントローラ。
【請求項9】
前記コントローラロジックは、前記変圧器信号の正から負へのエッジ遷移後に前記スイッチを開けるよう前記スイッチ制御信号をデアサートする、請求項に記載のスイッチコントローラ。
【請求項10】
前記コントローラロジックは、前記センス信号のトリガリング値に従って前記正から負へのエッジ遷移後に前記スイッチ制御信号をデアサートする、請求項に記載のスイッチコントローラ。
【請求項11】
前記センス信号の前記トリガリング値は、ゼロインダクタ電流を示す、請求項10に記載のスイッチコントローラ。
【請求項12】
前記センス信号の前記トリガリング値は、前記インダクタ電流の正の値に対応し、前記トリガリング値は負荷回路に転送される、請求項10に記載のスイッチコントローラ。
【請求項13】
前記コントローラロジックは前記変圧器信号の半周期につき複数回、前記スイッチを閉じるよう前記スイッチ制御信号をアサートする及び前記スイッチを開けるよう前記スイッチ制御信号をデアサートする、請求項に記載のスイッチコントローラ。
【請求項14】
前記コントローラロジックは、前記変圧器信号の1つの半周期における前記スイッチ制御信号の複数のアサーションを、規定の閾値を上回る前記センス信号を検出するまで妨げるマルチパルスイネーブル入力を含む、請求項13に記載のスイッチコントローラ。
【請求項15】
前記コントローラロジックは、充電間隔及び散逸間隔を含むマルチパルス間隔だけ正から負へのエッジ遷移に先立って、最初に前記スイッチ制御信号をアサートし、前記充電間隔は、最小ピークインダクタ電流閾値に従って前記インダクタを充電するのに十分であり、前記散逸間隔は、複数の散逸サイクルを包含するのに十分である、請求項13に記載のスイッチコントローラ。
【請求項16】
前記散逸サイクルのそれぞれは、第1の持続時間の間の前記スイッチ制御信号のデアサーション及び第2の持続時間の間の前記スイッチ制御信号のアサーションを含む、請求項15に記載のスイッチコントローラ。
【請求項17】
前記コントローラロジックは、前記負荷信号に従って前記マルチパルス間隔の持続時間を決定する、請求項15に記載のスイッチコントローラ。
【請求項18】
前記コントローラロジックは、前記スイッチ制御信号がアサートされた状態でオン状態に初期化し、前記変圧器の発振を示す発振信号及び前記変圧器信号のエッジ遷移を示すエッジ信号を監視する、請求項に記載のスイッチコントローラ。
【請求項19】
前記コントローラロジックは、前記スイッチを開けるよう前記スイッチ制御信号をデアサートし、エッジ状態に遷移し、低閾値を下回る前記センス信号を示すコンペアロー信号を監視することにより、前記オン状態の間に、いずれもアサートされた前記発振信号及び前記エッジ信号を検出したことに応答する、請求項18に記載のスイッチコントローラ。
【請求項20】
前記コントローラロジックは、オフカウンタをクリアし、オフ状態に遷移し、最大閾値を超える前記オフカウンタを示すオフタイムアウト信号を監視することにより、前記エッジ状態の間に、アサートされた前記コンペアロー信号を検出したことに応答する、請求項19に記載のスイッチコントローラ。
【請求項21】
前記コントローラロジックは、前記スイッチ制御信号をアサートし、前記オン状態に遷移することにより、前記オフ状態の間に、前記オフタイムアウト信号を検出したことに応答する、請求項20に記載のスイッチコントローラ。
【請求項22】
前記コントローラロジックは、前記スイッチ制御信号をデアサートし、連続電流モードオフカウンタをクリアし、連続電流モードオフ状態に遷移し、前記連続電流モードオフ状態の持続時間を示す前記連続電流モードオフカウンタを監視することにより、前記オフ状態の間に、いずれもアサートされた前記発振信号及びコンペアハイ信号を検出したことに応答する、請求項20に記載のスイッチコントローラ。
【請求項23】
前記コントローラロジックは、前記スイッチ制御信号をアサートし、連続電流モードオンカウンタをクリアし、連続電流モードオン状態に遷移することにより、前記連続電流モードオフ状態の間に、前記連続電流モードオフカウンタが連続電流モードオフ閾値を超えたことを検出したことに応答する、請求項22に記載のスイッチコントローラ。
【請求項24】
前記コントローラロジックは、前記スイッチ制御信号をデアサートし、前記連続電流モードオフカウンタをクリアし、前記連続電流モードオフ状態に遷移することにより、前記連続電流モードオン状態の間に、前記コンペアハイ信号を検出したことに応答し、
前記スイッチ制御信号をデアサートし、前記オフカウンタをクリアし、前記オフ状態に遷移することにより、前記連続電流モードオン状態の間に、前記連続電流モードオンカウンタが連続電流モードオン閾値を超えたこと、及びアサートされていない前記コンペアロー信号を検出したことに応答する、請求項23に記載のスイッチコントローラ。
【請求項25】
前記コントローラロジックは、前記センス信号及び高基準電圧信号に従ってコンペアハイ信号を生成する第1比較器と、前記センス信号及び低基準電圧信号に従ってコンペアロー信号を生成する第2比較器と、を含む、請求項に記載のスイッチコントローラ。
【請求項26】
前記コントローラロジックは、前記コンペアロー信号に従って、前記変圧器の発振を示す発振信号を生成する発振検出器を含み、前記発振信号は、真値に初期化し、前記コンペアロー信号が所定の間隔を超える持続時間の間デアサートされない限り真のままである、請求項25に記載のスイッチコントローラ。
【請求項27】
変圧器出力電流及び変圧器出力電圧を含む変圧器信号を生成する電子変圧器との使用に適した低電圧装置であって、前記低電圧装置は、
前記変圧器出力電流インダクタ電流として流れるインダクタと、
前記インダクタ電流を整流することにより整流電流を生成する整流器と、
前記整流器と負荷との間に設けられ、前記整流電流の電流経路を制御するスイッチと、
前記スイッチを制御するスイッチ制御信号を生成するコントローラと、
を有するブーストコンバータ段を有し、
前記コントローラは、前記変圧器出力電圧を受ける変圧器入力を含む、少なくとも1つのコントローラ入力と、前記インダクタ電流が、前記電子変圧器が安定的に動作するのに必要な最小ピークインダクタ電流以上となるように、前記スイッチを閉じるためのスイッチ制御信号のアサーションを前記変圧器入力により示される変圧器出力遷移に同期させるよう前記スイッチ制御信号を生成するコントローラロジックとを含
前記整流電流は、前記スイッチが閉じられている時、スイッチ電流として前記スイッチを流れて前記電子変圧器に戻り、前記スイッチが開いている時は前記負荷に供給される、
低電圧装置。
【請求項28】
前記ブーストコンバータ段は、前記ブーストコンバータ段の出力に接続されたコンデンサと、スイッチノードに接続されたアノード及び前記ブーストコンバータ段の出力の第1の端子に接続されたカソードを含むダイオードと、をさらに含み、
前記スイッチは、前記スイッチノードに接続された第1の出力端子を含み、前記スイッチは、前記スイッチノードから前記スイッチ電流を引き出し、前記スイッチ電流は、前記スイッチ制御信号が前記スイッチを閉じるようアサートされている時は前記整流電流に等しく、前記スイッチ制御信号が前記スイッチを開くようデアサートされてい時はゼロにほぼ等しい、請求項27に記載の低電圧装置。
【請求項29】
ピークインダクタ電流は、最小ピークインダクタ電流閾値よりも大きく、かつ最大インダクタ電流制限よりも小さ、請求項28に記載の低電圧装置。
【請求項30】
電子変圧器の出力電流がインダクタ電流として流れるインダクタと、
前記インダクタ電流を整流することにより整流電流を生成する整流器と、
前記整流器と負荷との間に設けられ、前記整流電流の電流経路を制御するスイッチと、を備える低電圧装置の前記スイッチを制御するスイッチ制御方法であって、
前記電子変圧器が出力する変圧器信号を受信することと、
前記変圧器信号のエッジ遷移を検出することと、
前記インダクタ電流が、前記電子変圧器が安定的に動作するのに必要な最小ピークインダクタ電流以上となるように、前記スイッチを閉じるためのスイッチ制御信号のアサーションを前記エッジ遷移に同期させるよう前記スイッチを制御するスイッチ制御信号を生成することと、を含
前記整流電流は、前記スイッチが閉じられている時、スイッチ電流として前記スイッチを流れて前記電子変圧器に戻り、前記スイッチが開いている時は前記負荷に供給される、
スイッチ制御方法。
【請求項31】
前記スイッチ制御信号を生成することは、
前記スイッチ制御信号がアサートされた状態でオフ状態に初期化することと、
前記変圧器の発振を示す発振信号、前記変圧器出力のエッジ遷移を示すエッジ信号、最大インダクタ電流閾値に適合するインダクタ電流を示すコンペアハイ信号、及び最小ピークインダクタ電流閾値に適合するインダクタ電流を示すコンペアロー信号を監視することと、
前記スイッチを開けるよう前記スイッチ制御信号をデアサートし、連続電流モードオフ状態の持続時間を示す連続電流モードオフカウンタをクリアし、前記連続電流モードオフ状態に遷移することにより、前記オフ状態の間に、いずれもアサートされた前記発振信号及び前記コンペアハイ信号を検出したことに応答することとを含む、請求項30に記載のスイッチ制御方法。
【請求項32】
前記スイッチ制御信号をアサートし、連続電流モードオン状態の持続時間を示す連続電流モードオンカウンタをクリアし、前記連続電流モードオン状態に遷移することにより、前記連続電流モードオフ状態の間に、前記連続電流モードオフカウンタが連続電流モードオフ閾値を超えたことを検出したことに応答することをさらに含む、請求項31に記載のスイッチ制御方法。
【請求項33】
前記スイッチ制御信号をデアサートし、前記連続電流モードオフカウンタをクリアし、前記連続電流モードオフ状態に遷移することにより、前記連続電流モードオン状態の間に、前記コンペアハイ信号を検出したことに応答することと、
前記オフ状態に遷移することにより、前記連続電流モードオン状態の間に、連続電流モードオン閾値を超える前記連続電流モードオンカウンタ、及びアサートされていない前記コンペアロー信号を検出したことに応答することと、をさらに含む、請求項32に記載のスイッチ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して低電圧照明の分野に係り、より具体的には、電子変圧器を用いて低電圧ランプに電力を供給するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、例えば出力端子16の電圧15を表す主電源信号14を、単純なスイッチで置換できるオプションの要素である調光器20に供給する主電源12を含む従来技術による低電圧照明システム10を示す。図1に示される低電圧照明システム10において、調光器20は、例えば調光器出力26の電圧25を表し、主電源信号14よりも平均電力が低い調光信号24を生成する。調光器20は、例えば主電源信号14の位相をカットする。調光信号24は、電子変圧器30に供給される。電子変圧器30は、調光信号24を、例えば低電圧ランプ40に電源信号を供給する変圧器出力36の電圧35を表し、電子変圧器30からランプ電流42を引き出す変圧器出力信号34に変換する。低電圧ランプ40は、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)ランプ、又は低電圧電源、すなわち12VRMS(二乗平均平方根)以下の電源電圧を生じさせる電源で動作する別のタイプのランプであってもよい。
【0003】
電子変圧器30は、安定した自続発振を行うために、発振電流と呼ばれる最小電流を必要とする自励発振回路を含む。ランプ電流42が電子変圧器30の発振電流よりも小さい場合、電子変圧器30は安定的に動作せず、低電圧ランプ40は点滅するか又は点灯しない。
【0004】
ハロゲンランプのランプ電流は、通常、電子変圧器30の発振電流よりも大きい。一方、LEDランプは、一般に同等の光度のハロゲンランプよりも効率性に優れ、低い電力定格を有する。効率性が高く、電力消費が低いことが一般に望ましいが、LEDランプに関連するランプ電流42は、電子変圧器30の発振電流よりも低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の教示により、LEDランプに関して信頼性のある電子変圧器動作を保証することに関連する欠点及び問題は低減又は除去される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態によると、低電圧電子変圧器との使用に適した低電圧ランプは、1つ以上のLED又は他の低電圧光生成コンポーネントを含む負荷に結合されたブーストコンバータ段を有する。少なくとも一実施形態において、ブーストコンバータ段は、インダクタ、スイッチ、及びスイッチをオンオフするスイッチコントローラを含む。
【0007】
少なくとも幾つかの実施形態において、インダクタは、電子変圧器の出力を受け、整流電流をスイッチノードに供給する整流器にインダクタ電流を供給する。スイッチは、整流電流が負荷に経路指定されるか、電子変圧器に戻されるかを判断するように構成される。例えば、スイッチは、オフの時に整流電流が負荷に供給され、オンの時に電子変圧器に戻されるように構成される。低電圧照明の分野における当業者は、本明細書に開示される、インダクタが電子変圧器から非整流信号を受信する実施形態が、整流器が変圧器出力を整流し、整流信号をインダクタに供給する、従来のMR16対応LEDランプを含む電子変圧器との使用向けに設計された少なくとも幾つかの低電圧ランプと区別できることを理解するだろう。
【0008】
スイッチコントローラは、スイッチコントローラがスイッチの制御端子に供給するスイッチ制御信号をアサート(有効に)することによりスイッチをオンにするように構成される。スイッチコントローラはまた、スイッチ制御信号のアサーションを変圧器出力に同期させるように構成される。例えば、スイッチコントローラは、変圧器出力のエッジ遷移及びスイッチ制御信号のアサーション間の時間間隔を制御するように構成される。また、スイッチコントローラは、ブーストコンバータ段から1つ以上の入力のセットを受け、これら1つ以上の入力のいずれかにさらに従ってスイッチ制御信号を制御する。
【0009】
磁気変圧器及び電子変圧器との使用に互換性のある実施形態において、ブーストコンバータ段の各部は、LEDランプに電力を供給する変圧器が電子変圧器である場合にのみ選択的に接続される。これらの実施形態では、LEDランプは、LEDランプに電力を供給する変圧器が電子変圧器であることを検出したことに応答してブーストコンバータ回路を起動するように構成された電子変圧器検出回路を含む。電子変圧器検出回路は、例として、インダクタを含む又は変圧器出力を受けるLEDランプの電力段から除外するように構成されたスイッチをトリガする高域フィルタを含む。高域フィルタは、電子変圧器出力の高周波成分特性に基づいて電子変圧器出力と磁気変圧器出力とを区別するように構成される。適切な電子変圧器検出回路は、2013年5月13日に出願され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/822,673号に開示される電子変圧器検出回路の素子を含む。以下の詳細な説明は、変圧器出力に同期されるブーストコンバータ回路の使用により、電子変圧器における自励発振回路の安定的かつ確実な動作を容易にすることを強調しているため、以下に図示及び開示される変圧器は、電子変圧器として説明され、又は電子変圧器と仮定される。しかし、本明細書における変圧器が電子変圧器として説明され、又は電子変圧器と仮定される時は常に、電子変圧器との動作のために選択的にブーストコンバータを起動する電子変圧器検出回路を含めることにより、磁気変圧器との互換性が達成される。
【0010】
ここでブーストコンバータ回路に戻ると、ブーストコンバータ回路は、スイッチに結合されたインダクタを含み、有効電力伝達モード又は無効電力伝達モードのいずれかで動作するように構成される。無効電力伝達モードで動作している時、エネルギーは、電子変圧器及びインダクタ間を双方向に伝達される。無効電力伝達に関連するインダクタ電流は、電子変圧器からLEDランプにより引き出される全電流に寄与する。このように、本明細書に開示されるブースト電力回路及びコントローラを含む低電圧LEDランプは、LEDランプの高い効率性を犠牲にすることなく、また、調光器の互換性の問題を発生させることなく、電子変圧器の発振電流要求を有利に満たす。
【0011】
本開示のこれら及び他の実施形態によると、低電圧ランプの低電圧ブーストコンバータ段は、インダクタ、スイッチ、及び1つ以上のコントローラ入力を受けるように構成されたスイッチコントローラを含む。コントローラ入力は、例として、変圧器入力、センス入力、及び負荷入力を含む。変圧器入力は、電子変圧器の出力に結合される、又はさもなければこれを受けるように構成される。センス入力は、スイッチを流れる電流を示し、インダクタ電流を示すセンス信号を受信するように構成される。負荷入力は、負荷電圧を示すLOAD信号を受信するように構成される。
【0012】
スイッチコントローラは、1つ以上のコントローラ入力に少なくとも部分的に基づいてスイッチ制御信号を生成又は制御するように構成されるコントローラロジックを含む。スイッチ制御信号は、スイッチの制御入力に結合され、スイッチを開閉する、又はさもなければスイッチの導電状態を制御する。スイッチは、閉じられている時、インダクタ電流の少なくとも一部のための電流経路を提供する。閉じられている時にスイッチにより提供される電流経路を通る電流は、インダクタ及び電子変圧器間における無効エネルギーの伝達を表す。
【0013】
少なくとも幾つかの実施形態において、コントローラロジックは、スイッチ制御信号の少なくとも幾つかの遷移、すなわちスイッチの開閉を、インダクタ電流パラメータの所定の又は別の閾値に従って変圧器出力のエッジ遷移に同期させるように構成される。例えば、変圧器出力の負から正への遷移は、インダクタ充電期間の終わりを表し、コントローラロジックは、最小ピークインダクタ電流に相当する充電期間の終わりのインダクタ電流が電子変圧器の最小ピークインダクタ電流以上となるように、充電期間の終わりまでの充分に長い間スイッチを閉じるように構成される。スイッチを閉じるタイミングは、特定の最小ピークインダクタ電流、インダクタのインダクタンス、及び変圧器出力の振幅及び発振周波数を含む要因に影響される。スイッチ制御信号と変圧器出力の同期は、電子変圧器の最小ピークインダクタ電流要件の順守を確保することにより、電子変圧器の安定的かつ確実な発振を容易にする。
【0014】
幾つかの実施形態において、スイッチ制御信号のアサーションは、最小ピークインダクタ電流がインダクタの最大閾値を超えないようにさらに制御される。例えば、コントローラロジックは、充電期間の終わりのインダクタ電流がインダクタの最大インダクタ電流以下となるようにスイッチの閉成を十分に遅延させるように構成される。遅延量は、最大インダクタ電流、インダクタのインダクタンス、変圧器出力の振幅及び変圧器の発振周波数を含む要因によって決定される。
【0015】
コントローラロジックは、スイッチ制御信号をデアサートする、又はさもなければ、LOAD信号のトリガリング値に従って、インダクタ放電期間、例えば変圧器出力の正から負への遷移後の期間中にスイッチをオフにするように構成される。これらの実施形態において、インダクタに蓄積された有効エネルギーの伝達は、インダクタエネルギーが負荷に散逸されてスイッチがオフにされる時に生じる。トリガリング値が変化する結果、エネルギーは、多かれ少なかれインダクタから負荷に伝達される。
【0016】
したがって、コントローラロジックの実施形態により、負荷が電子変圧器に必要な発振電流と比べて小さい電流を必要とする場合に、スイッチを排他的に又は主として無効伝達モードで動作させ、これにより、負荷に散逸された電力を実質的に増加することなく電子変圧器から引き出される電流を増加することにより、電子変圧器のより良いパフォーマンスを促進することができる。同様に、コントローラロジックは、負荷が発振電流により近いか又はこれを超える電流を必要とする場合に、インダクタから負荷へより多くの有効エネルギー伝達が生じるようにスイッチを動作させる。この動作モードにおいて、インダクタの切り替えによっても変圧器から引き出される電流の増大、及びこれに応じた電子変圧器のパフォーマンスの向上が促進されるが、インダクタに蓄積されたエネルギーが負荷に必要な有効電力を供給するのに使用される。コントローラロジックは、コントローラロジックが変圧器出力の半サイクル又は半周期に1回スイッチをオンにする単一パルス動作モードをサポートする。コントローラロジックはまた、コントローラロジックが変圧器出力の半周期中に複数回スイッチのオンオフを繰り返すマルチパルスモードをサポートすることもできる。マルチパルスモードにおいて、コントローラロジックは、充電期間の初期にスイッチを閉じ、その後、インダクタ電流が規定の高い値、例えば最小ピークインダクタ電流及び最大インダクタ電流間の値に近づく時に、コントローラロジックはスイッチをオフにする。スイッチがオフの時、インダクタに蓄積されたエネルギーは負荷に散逸され、インダクタ電流が小さくなる。インダクタ電流が規定の低い値よりも下がると、コントローラロジックはスイッチを再度オンにし、インダクタ電流を再度上昇させ始める。この手順は、充電期間を通じて繰り返される。有利にはマルチパルスモードによって、コントローラロジックは、インダクタに蓄積されたエネルギーを利用して負荷のエネルギー要件を満たしつつ、最小ピークインダクタ電流パラメータ及び最大インダクタ電流パラメータの順守を確保することができる。
【0017】
スイッチコントローラは、コントローラロジックがとる状態のセット及びある状態から別の状態へ遷移するための基準を定義する有限状態機械(ステートマシン)を実行する、又はさもなければ有限状態機械として動作する。有限状態機械は、単一パルス有限状態機械、マルチパルス有限状態機械、又はその両方を含む。
【0018】
少なくとも一実施形態において、単一パルス有限状態機械は、3つの状態からなるセットを含む。コントローラロジックは、スイッチが閉じられるON状態に入る。少なくとも幾つかの実施形態において、コントローラロジックは、発振信号及びエッジ信号が両方ともTRUEの時、ON状態からEDGE状態に遷移する。発振信号は、電子変圧器が適切に発振している時間を示す。エッジ信号は、変圧器出力のエッジ遷移、例えば、同一又は類似の振幅の正電圧から負電圧への遷移及びその逆の遷移、又は正電圧からゼロ電圧への遷移又はその逆の遷移を含む、第1電圧から第2電圧への又はその逆の比較的速い遷移を含む。
【0019】
EDGE状態にある時、単一パルス有限状態機械はスイッチを閉じたままにし、センス信号の値が低閾値よりも小さいかどうかを示すCOMP_LO信号を監視する。単一パルス有限状態機械は、COMP_LO信号がFALSEである、すなわちセンス信号が低閾値よりも小さいことを検出すると、EDGE状態からOFF状態に遷移する。
【0020】
OFF状態に遷移する時、単一パルス有限状態機械は、スイッチを開く、又はさもなければスイッチをオフにし、有限状態機械がどれくらいの間現在のOFF状態にあるかを示すOFFカウンタを監視する。OFFカウンタの値が閾値に達するか又はこれを超える時、有限状態機械は、ON状態に遷移し、スイッチをオンにする。これらの実施形態において、OFFカウンタの閾値は、変圧器出力半周期の始まり後、スイッチがどれくらいの間開いたままかを決定し、インダクタが経験する最小ピークインダクタ電流を制御するのに用いられる。閾値の値がより低いと、スイッチは変圧器出力半周期の初期に閉じられ、最小ピークインダクタ電流が増加する一方、閾値の値がより高いと、スイッチは変圧器出力半周期の末期に閉じられ、最小ピークインダクタ電流が減少する。
【0021】
マルチパルス動作をサポートするスイッチコントローラの実施形態は、単一パルス有限状態機械の有限状態機械の状態と異なる又はこれに追加される有限状態機械の状態を含む有限状態機械を実行する。少なくとも一実施形態において、マルチパルス有限状態機械は、スイッチが閉じられている、単一パルス有限状態機械と類似のON状態を含み、コントローラロジックは、スイッチ制御信号をデアサートし、CCM_OFF状態に遷移し、CCM_OFF状態の持続時間を示すCCM_OFFカウンタを監視することにより、いずれもアサートされた発振信号及びCOMP_HI信号を検出したことに応答するように構成される。コントローラロジックはさらに、スイッチ制御信号をアサートし、CCM_ON状態に遷移することにより、CCM_OFF状態の間に、CCM_OFFカウンタがCCM_OFF閾値を超えたことを検出したことに応答するように構成される。
【0022】
CCM_ON状態において、コントローラロジックは、COMP_HI信号、CCM_ONカウンタ、及びCOMP_LO信号を監視する。COMP_HI信号がTRUEである場合、コントローラロジックは、CCM_OFF状態に逆遷移し、スイッチを開き、前と同じようにCCM_OFFカウンタを監視する。COMP_HI信号がアサートされる前に、コントローラロジックが、CCM_ONカウンタがCCM_ON閾値を超えたこと、及びCOMP_LO信号がFALSEであることを検出した場合、コントローラロジックは、スイッチを開き、CCM_ON状態からOFF状態に遷移する。
【0023】
OFF状態において、コントローラロジックは、OFFカウンタを監視し、スイッチをオンにし、ON状態に逆遷移することにより、OFFカウンタがOFF閾値を超えたことを検出したことに応答するように構成される。
【0024】
ON状態にある時、COMP_HI信号がアサートされる前にいずれもアサートされた発振信号及びエッジ信号をコントローラロジックが検出した場合、コントローラロジックは、スイッチを閉じ、EDGE状態に遷移する。コントローラロジックは、COMP_LO信号がTRUEになるまでEDGE状態のままであり、その後OFF状態に遷移する。
【0025】
本明細書に開示される実施形態によると、低電圧照明装置を含むがこれに限定されない低電圧装置は、変圧器出力信号を受信し、負荷に負荷電流を供給するように構成されたブーストコンバータ段を含む。ブーストコンバータ段は、変圧器出力信号を受信するように構成された入力ポートに結合されたインダクタ、インダクタに結合されたスイッチ、及びコントローラを含む。コントローラは、変圧器から変圧器出力を受けるように構成された変圧器入力、スイッチ内の電流を示すセンス信号を受信するように構成されたセンス入力、及び負荷電圧を示すLOAD信号を受信するように構成された負荷入力を含むがこれらに限定されないコントローラ入力、及びコントローラ入力に少なくとも部分的に基づいてスイッチ制御信号を生成するように構成されたコントローラロジックを含む。スイッチ制御信号は、スイッチの状態を制御するように構成される。装置はさらに、低電圧発光ダイオードランプを含む。コントローラロジックは、インダクタ電流の最小閾値に従ってスイッチ制御信号をアサートするように構成される。
【0026】
本明細書に開示されるさらに別の実施形態によると、スイッチ制御方法は、変圧器から変圧器出力を受けることと、スイッチ内の電流を示すセンス信号を受信することと、負荷電圧を示すLOAD信号を受信することとを含む、コントローラ入力を受けることを含む。方法は、コントローラ入力に少なくとも部分的に基づいて、スイッチ制御信号を生成することを含み、スイッチ制御信号は、スイッチの状態を制御するように構成され、スイッチは、変圧器出力に結合されたインダクタに関連するインダクタ電流の電流経路に影響を与える。
【0027】
本開示の技術的な利点は、本明細書に含まれる図、説明及び特許請求の範囲から当業者には容易に明らかになる。実施形態の目的及び利点は、特許請求の範囲において特に指摘される要素、特徴、及び組合せによって少なくとも実現され、達成されるであろう。
【0028】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は両方とも、実例であって説明のためのものであり、本開示で述べられた特許請求の範囲を限定しないことを理解されたい。
【0029】
本実施形態及びその利点についてのより完全な理解は、同様の参照番号が同様の特徴を指す添付図面と併せて以下の説明を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】当技術分野で知られている低電圧照明システムを示す。
図2】インダクタに関連するスイッチを動作させるスイッチコントローラを有する低電圧ランプのブーストコンバータ段を示す。
図3】無効電力伝達モードで動作する図2のブーストコンバータ段を示す。
図4】無効電力伝達モード動作を示す第1の例示的な波形を含む。
図5】無効電力伝達モード動作を示す第2の例示的な波形を含む。
図6】有効電力伝達モードで動作する図2のブーストコンバータ段を示す。
図7】インダクタから及び負荷へ有効エネルギーの伝達が行われる、コントローラの単一パルス動作を示す例示的な波形を含む。
図8】インダクタから及び負荷へ有効エネルギーの伝達が行われる、コントローラの単一パルス動作を示す第2の例示的な波形を含む。
図9】コントローラのマルチパルス動作を示す例示的な波形を含む。
図10図2のスイッチコントローラの例示的な要素を示す。
図11】単一パルスモードにおける、図2のスイッチコントローラによりサポートされる有限状態機械を示す。
図12図11の動作を示す例示的な波形を含む。
図13】マルチパルスモードにおける、図2のスイッチコントローラによりサポートされる有限状態機械を示す。
図14図11の動作を示す例示的な波形を含む。
図15図2のスイッチコントローラの発振信号ロジックの動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図2は、スイッチコントローラ110及び負荷190に結合されたブーストコンバータ段100を含む低電圧ランプ199の選択された要素を示す。負荷190は、1つ以上の低電圧発光ダイオードを含む1つ以上の低電圧光生成コンポーネントを含む。図示されるブーストコンバータ段100は、電子変圧器130の出力を受けるインダクタLを含み、インダクタ電流Iを整流器140に供給する。整流器140は、整流電流Iをスイッチノード155に供給する。整流電流Iは一般に正で、大きさがインダクタ電流Iとほぼ同じである。スイッチノード155は、スイッチQに接続され、連結ダイオードDLINK及び連結コンデンサCを含む連結回路を介して負荷190にも接続される。連結コンデンサCは、ブーストコンバータ段100の出力183間に接続される。ブーストコンバータ段出力183は負荷190に供給される。
【0032】
図2に示されるスイッチコントローラ110は、電子変圧器130の出力及びブーストコンバータ段100からの1つ以上の入力に基づいてスイッチQを動作させるスイッチ制御信号SCSを生成する。スイッチQが開いている時、スイッチQを流れるスイッチ電流Iは無視することができ、ほぼ全ての整流電流Iが連結ダイオード電流Iとして連結ダイオードDLINKを流れる。スイッチQが閉じられている時、ほぼ全ての整流電流IがスイッチQを通って電子変圧器130に還流する、すなわちIはIと実質的に等しく、Iはゼロであるか又は無視することができる。したがって、スイッチQが閉じられている時、スイッチ電流Iは、負荷190に散逸されず、したがって電力消費を増加させない電子変圧器130から引き出される電流を表す。また、スイッチQが閉じられており、変圧器出力電圧VOTが正かつ比較的一定の時、インダクタ電流Iはほぼ線形に増加する。スイッチコントローラ110は、インダクタ電流Iが確実に電子変圧器130の安定的な動作を維持するのに必要な最小ピーク値に達するのに十分であるが、インダクタの最大インダクタ電流を超えるほど長くない持続時間の間、スイッチ制御信号SCSをアサートする。
【0033】
図2に示されるブーストコンバータ段100は、第1端子101及び第2端子102を含む入力103を含む。入力103は、電子変圧器130から変圧器出力電圧VOTを受けるように構成される。スイッチコントローラ110が電子変圧器130から変圧器出力電圧VOTを受けるように、スイッチコントローラ110の入力113は入力103と並列に接続される。インダクタLは、入力103の第1端子101と整流器140の整流器入力133の第1端子131との間に接続される。入力103の第2端子102は、整流器入力133の第2端子132に接続される。
【0034】
図2に示される整流器140は、入力ノード141及び142、ダイオードD1、D2、D3、及びD4、並びに出力ノード143及び144を含むダイオードブリッジ整流器である。図2に示されるように、ダイオードD1及びD3のカソードは、第1出力ノード143に接続され、ダイオードD2及びD4のアノードは、第2出力ノード144に接続される。第1入力ノード141は、D1のアノード及びD2のカソードに接続され、第2入力ノード142は、D3のアノード及びD4のカソードに接続される。図2に示されるように、第1出力ノード143は、整流器出力153の第1端子151に接続される。第2出力ノード144は、整流器出力153の第2端子152に接続される。図2に示される整流器140はダイオードブリッジ整流器であるが、整流器140は、他の適切な構成で実装されてもよい。
【0035】
整流器出力153の第1端子151はスイッチノード155に接続され、整流器出力153の第2端子152は接地ノード159に接続される。整流器140は、整流電流Iをスイッチノード155に供給する。スイッチノード155は、本明細書で連結ダイオードDLINKと呼ばれるダイオードのアノード、及びスイッチQの第1出力端子162−1に接続される。図2に示されるスイッチQは、バイポーラトランジスタ又は電界効果トランジスタとして実装される固体トランジスタ165である。スイッチQの第2出力端子162−2はセンスノード157に接続される。図2に示されるスイッチQはさらに、スイッチコントローラ110からスイッチ制御信号SCSを受信する入力端子161を含む。コントローラ110は、センスノード157からセンス信号115を受信する。センスノード157は、センス抵抗Rの第1端子に接続される。センス抵抗Rの第2端子は接地ノード159に接続される。
【0036】
図2に示されるスイッチコントローラ110がスイッチ制御信号SCSをアサートして、スイッチQを閉じる、起動する、オンにする、又はさもなければ低インピーダンスOR導電状態に置く時、スイッチノード155及びセンスノード157間に短絡又は仮想短絡が生じ、整流電流Iが、スイッチQを通って第1出力端子162−1及び第2出力端子162−2間を容易に流れる。反対に、スイッチコントローラ110がスイッチ制御信号SCSをデアサートし、スイッチQが開かれる、停止される、オフにされる、又はさもなければ高インピーダンス状態に置かれる時、スイッチノード155及びセンスノード157間に開回路又は仮想開回路が確立され、整流電流Iが第1出力端子162−1及び第2出力端子162−2間を流れることが防止又は実質的に防止される。
【0037】
幾つかの実施形態において、連結ダイオードDLINKのカソードは出力ノード171に接続される。出力ノード171は、ブーストコンバータ段の出力183の第1端子181に接続する。出力ノード171はまた、LOAD信号116をスイッチコントローラ110のLOAD入力に供給する。連結コンデンサCは、図では出力ノード171及び接地ノード159間に接続され、ブーストコンバータ段の出力183の第2端子182にも接続される。この実施形態において、連結コンデンサ電圧Vは、負荷190を駆動するブーストコンバータ段の出力電圧Vに等しい。
【0038】
スイッチQは、図では出力端子162−1及び162−2を有し、センス抵抗Rが直列に接続される。スイッチQが閉じられている時、スイッチノード155からスイッチQを通って流れるスイッチ電流Iは、整流電流Iにほぼ等しい。スイッチQが開いている時、スイッチ電流Iは無視することができ、整流電流Iは、ダイオード電流Iとして連結ダイオードDLINKを流れる。次に、スイッチQが閉じられると、スイッチノード155における電圧は、インダクタ電流I、整流電流I、及びダイオード電流Iの全てが急速に増加するので急上昇する。ダイオード電流Iの急速な増加により、連結コンデンサ電圧Vは定常状態電圧を超え、かくてブーストコンバータ段の出力電圧Vは、整流器出力153の振幅に対して上昇(ブースト)される。スイッチQが周期的に開閉されると、ブーストコンバータ段の出力電圧Vの大きさは、整流器出力電圧Vの振幅よりも大きくなる。
【0039】
スイッチQが閉じられている時のセンスノード157におけるセンス電圧Vは、インダクタ電流I及びセンス抵抗Rの関数である。例えば、1Ωのセンス抵抗Rを用いると、ミリボルト(mV)単位のセンス電圧Vは、ミリアンペア(mA)単位のインダクタ電流Iの大きさに厳密に近似する。図2に示されるブーストコンバータ段は、センス信号115としてセンス電圧Vをスイッチコントローラ110に供給する。
【0040】
定性的な見地から言えば、スイッチQ及びインダクタLと併用されるスイッチコントローラ110は、低電圧LEDランプを電子変圧器に接続するのに適している。スイッチQを制御することにより、スイッチコントローラ110は、インダクタ電流Iを制御して、最大インダクタ電流制限に違反することなく、電子変圧器に必要な最小ピークインダクタ電流との整合性を確保することができる。例えば、スイッチコントローラ110は、インダクタ電流Iをセンス信号115を介して監視し、感知されたインダクタ電流に基づいて、スイッチコントローラ110は、インダクタ電流Iが規定又は所望の値に達した時にスイッチQを開く。インダクタ電流Iを直接感知できることで、インダクタのサイズ、変圧器電圧の大きさ、及びインダクタ電流とインダクタ電流の変化率とに寄与する他の様々なパラメータに関する懸念が軽減される。
【0041】
図3は、スイッチQがオンの時に無効電力伝達モードで動作するブーストコンバータ段100を示す。図3が示すように、インダクタ電流Iは、変圧器出力電圧VOTの極性に応じて、電子変圧器130から、Iが正の時はダイオードD1、スイッチQ、及びダイオードD4を通り、負の時はダイオードD3、スイッチQ、及びダイオードD2を通る電流経路301を辿る。この動作モードでは、電子変圧器130及びインダクタLは、エネルギーを無効的に交換する。図3の無効電力伝達モードに関連するインダクタ電流I及び電流経路301により、有効電力を全く又はほとんど消費せずに電子変圧器130に必要な発振電流を維持できることが強調される。
【0042】
図4は、無効電力伝達モードで動作する、スイッチ制御信号SCSが常にオン状態の、変圧器出力電圧VOT、インダクタ電流I、及びスイッチ制御信号SCSの例示的な波形を示す。図では、変圧器出力電圧VOTは、(2*T−1(TはVOTの半周期である)の周波数で正電圧VHI及び負電圧VLO間で発振している。変圧器出力電圧VOTの一定値に対して、スイッチQが閉じられている時のインダクタLの電圧はほぼ一定で、インダクタ電流Iは、インダクタンスLを有するインダクタの電流電圧曲線V=L*dI/dt(Vはインダクタの電圧)に従って、変圧器出力電圧VOTが正の時はほぼ線形に増加し、変圧器出力信号が負の時はほぼ線形に減少する。Rの十分に小さい値に対して、Vは、スイッチQが閉じられている時にVOTにほぼ等しく、インダクタ電流Iが増加するレートはおよそVOT/Lである。図4の例において、VHI及びVLOが同じ大きさを有すると仮定すると、ピークインダクタ電流IPEAKは、VHI、L、及びTの線形関数であり、より具体的にはIPEAK=(VHI*T)/2Lである。
【0043】
図5は、スイッチ制御信号SCSを用いて、インダクタ電流Iのピーク値IPEAKを変圧器出力電圧の半周期Tの持続時間とは独立に制御することを強調した無効電力伝達モードの例を示す。図5に示すように、例えばスイッチ制御信号SCSのアサーションは、ピークインダクタ電流IPEAK=VHI*(T−TDELAY)/2Lが、L、VHI、Tの与えられた値に対してスイッチコントローラ110により制御されるように、変圧器出力電圧VOTのエッジ遷移後に間隔TDELAYだけ遅延される。図5は、電子変圧器130に必要な最小ピークインダクタ電流IMINPEAKより大きく、インダクタLの最大インダクタ電流IMAXより小さいピークインダクタ電流IPEAKをもたらすTDELAYの値を示す。
【0044】
図5のタイミング図はまた、変圧器出力電圧VOTの極性が正(VHI)から負(VLO)に遷移する時、VOTエッジ197を起点としてピーク値IPEAKからゼロに減少するインダクタ電流Iを示す。図5に示されるスイッチ制御信号SCSは、インダクタ電流Iがゼロに達すると同時にSCSエッジ198においてデアサートされる。図5に示されるスイッチ制御信号SCSは、インダクタLに蓄積されたエネルギーがなくなるまで、すなわちIが0に達するまでアサートされた状態であるため、図5の全てのエネルギー伝達は無効エネルギー伝達である。
【0045】
図6は、スイッチQが開いている時に有効電力伝達モードで動作するブーストコンバータ段100を示す。図示されるように、インダクタ電流Iは、インダクタLから、Iが正の時、整流器ダイオードD1及び連結ダイオードDLINKを通り、出力ノード171に達する電流経路302を辿る。この動作モードでは、インダクタLに蓄積されたエネルギーは、連結コンデンサCを充電するか、負荷190に散逸されるか、又はその両方である。
【0046】
図7は、図5と類似した波形の例を示す。しかし、図7の波形において、スイッチ制御信号SCSは、インダクタLに蓄積されたエネルギーの全てが電子変圧器に戻る前、すなわちインダクタ電流Iの大きさがゼロに戻る前の202においてデアサートされる。図7に示されるタイミングで、スイッチQが開かれている時にインダクタLに蓄積されたエネルギー210が、(図6の)負荷190に伝達される。スイッチ制御信号SCSがデアサートされる変圧器出力電圧VOTのエッジ遷移後の時間の長さを変化させることにより、スイッチコントローラ110は、インダクタLに蓄積され、負荷に伝達されるエネルギーの量を制御することができる。
【0047】
図8は、図8の212におけるSCS信号のデアサーションが変圧器出力電圧VOTのサイクル遷移の終わりとほぼ同時に発生することを除き図7と類似した波形を示す。この例では、スイッチが開かれている時のインダクタ電流Iは、図7においてスイッチが開かれていた時のインダクタ電流Iよりも大きく、結果として、参照符号220で表される図8で発生する有効電力伝達は、参照符号210で表される図7の有効電力伝達よりも大きい。
【0048】
図4図5図7、及び図8に示されるタイミング構成は、全てスイッチ制御信号SCSが変圧器出力電圧VOTの半周期に1回のみアサートされる単一パルス構成である。
【0049】
図9は、スイッチ制御信号SCSが変圧器出力電圧VOTの1つの半周期内に2回以上アサートされるマルチパルスタイミング構成を示す。VOTの立ち上がりエッジ320に対して時間TDELAYで始まるスイッチ制御信号SCSの第1アサーション321の間に、インダクタ電流は、変圧器出力信号の半周期の終わりよりかなり前に、ゼロから図9で時間322においてCOMP_HI値と特定された規定値まで増加する。その後スイッチQは、322においてスイッチ制御信号SCSをデアサートすることにより、CCM_OFF間隔と表示された間隔の間オフにされ、その間にインダクタLに蓄積されたエネルギーの一部が負荷に伝達される。図9には、スイッチ制御信号SCSは、Iが325においてCOMP_LO値に達した時にスイッチQが再度オンにされて再アサートされ、インダクタ電流Iは、CCM_ONと表示された間隔の間増加し始めることが示されている。インダクタ電流が326において再度COMP_HI値に達すると、スイッチQは再度オフにされ、第2のCCM_OFF間隔が始まる。このCCM_OFF間隔とCCM_ON間隔の連続は、時間328における変圧器出力信号の半周期の終わりまで続く。
【0050】
図9に示される例において、スイッチ制御信号SCSは、変圧器出力信号の半周期の終わりにおいてアサート状態にあり、SCSが時間329においてデアサートされ、インダクタLに残っているエネルギー330が負荷に伝達されるまで、半周期の終わりに続くある間隔の間アサートされたままである。スイッチコントローラ110の実施形態は、1つ以上の基準が満たされると329においてスイッチQを開く。例えば、329におけるSCS信号のデアサーションは、IがCOMP_LOよりも下がった時に発生し、スイッチ制御信号SCSの最後のアサーション331の幅は、最小CCM_ON閾値よりも大きい。また、図9は、SCSが変圧器出力信号の半周期の終わりにおいてアサート状態にあることを示しているが、SCS信号は変圧器出力信号の半周期の終わりにおいてデアサート状態にあってもよい。
【0051】
定性的に、図9の波形は、スイッチQを変圧器出力信号の半周期の比較的早い段階でオンにし、インダクタ電流が例えば最小ピークインダクタ電流よりも大きいが最大インダクタ電流IMAXよりも小さいCOMP_HI値に達するまでこれを監視することによりインダクタ電流Iを制御し、インダクタに蓄積されたエネルギーを利用し、次にスイッチQのオンオフ切り替えを開始して、インダクタ電流を最小ピークインダクタ電流及び最大インダクタ電流間の比較的狭い範囲に維持しながら、インダクタエネルギーの一部を負荷に伝達できることを示している。
【0052】
図10は、図1のブーストコンバータ段100での使用に適した例示的なスイッチコントローラ110の要素を示す。図10に示されるスイッチコントローラ110は、SENSE_IN入力でセンス信号115を、LOAD_IN入力でLOAD信号116を、VA_IN及びVB_INと特定された入力対を介して変圧器出力電圧VOTを受ける。少なくとも一実施形態において、スイッチコントローラ110は、受け取った入力から1つ以上の内部信号のセットを抽出する。図10に示されるスイッチコントローラ110は、内部信号を受信し、SCS_OUT出力で出力されるスイッチ制御信号SCSを生成するコントローラロジック400を含む。
【0053】
幾つかの実施形態において、スイッチコントローラ110は、センス信号115を第1比較器401の第1入力及び第2比較器402の第1入力に供給する。第1比較器401の第2入力は、デジタル/アナログコンバータ403から所定の又は設定可能なDAC_HI信号405を受信し、一方第2比較器402の第2入力は、デジタル/アナログコンバータ404から所定の又は設定可能なDAC_LO信号406を受信する。
【0054】
図10に示されるスイッチコントローラ110は、センス信号115及びDAC_HI信号405の相対値に基づいてCOMP_HI信号410を生成する。スイッチコントローラ110はまた、比較器402により行われるセンス信号115とDAC_LO信号406との比較に基づいてCOMP_LO信号420を生成する。
【0055】
図10に示されるスイッチコントローラ110は、発振信号431を生成する発振ロジック430にCOMP_LO信号420を供給する。発振信号431は、電子変圧器130の動作状態を示す。例えば発振信号431は、インダクタ電流IがいつIMINPEAK又は別の最小閾値を超えたかを示すことにより、ブーストコンバータ段100が電子変圧器の確実な動作を維持するのに十分な電流を引き出しているかどうかを示す。発振ロジック430の例示的な実施態様は、図15に関連してより詳細に説明される。
【0056】
図10に示されるスイッチコントローラ110の実施形態において、変圧器出力信号VOTは、変圧器出力信号遷移、例えば変圧器出力電圧VOTのエッジを示すEDGE信号441を生成するEDGE検出ロジック440により受信される。
【0057】
図10は、基準電圧信号452を第2入力として受信するカウンタロジック450の第1入力に供給されるLOAD信号116を示す。図10に示されるカウンタロジック450は、変圧器出力電圧半周期の開始後のスイッチ制御信号SCSの最初のアサーションを計時するのに用いられる、OFF_COUNT_MAX信号451として特定されたカウンタ値を生成する。幾つかの実施形態において、カウンタロジック450は、LOAD信号116が小さい負荷を示す時、大きい値のOFF_COUNT_MAXを生成する。反対に、カウンタロジック450は、LOAD信号116が比較的大きい負荷を示す時、小さい値のOFF_COUNT_MAXを生成する。
【0058】
図10に示されるコントローラ110は、メモリ又はストレージ要素470を含む。メモリ470は、磁気ストレージ、固体ストレージ、不揮発性ストレージ、揮発性ストレージ等を含むがこれらに限定されない、コンピュータ可読メモリ又はストレージの任意の適当な形態で実装される。図10に示されるメモリ470は、構成設定480を格納するか又はさもなければこれを含む。図10に示されるメモリ470に格納された構成設定480は、マルチパルス動作を可能にする又は示すマルチパルス構成設定、COMP_HI信号を判定するのに用いられるDAC_HI基準403に対応するDAC_HI構成設定、COMP_LO信号を判定するのに用いられるDAC_LO基準404に対応するDAC_LO構成設定、インダクタLの最小ピーク電流を示す最小ピークインダクタ電流構成設定、インダクタLに推奨される最大電流に対応する最大インダクタ電流IMAX設定、インダクタLのインダクタンスを示すインダクタンス構成設定、電子変圧器周波数構成設定、CCM_ON間隔を示すCCM_ON構成設定、及びCCM_OFF間隔を示すCCM_OFF設定を含むがこれらに限定されない。他の実施形態は、より多い構成設定、より少ない構成設定、及び/又は図10に示されるものとは異なる構成設定を採用する。
【0059】
図10のコントローラロジック400は、非制限的例示として、COMP_HI信号410、COMP_LO信号420、発振信号431、EDGE信号441、及びOFF_COUNT_MAX信号451を含むコントローラロジック入力を受ける。図10に示されるコントローラロジック400は、コントローラロジック400及び構成設定480により受け取られるコントローラロジック入力に基づいてスイッチ制御信号SCSを生成する。コントローラロジック400は、図4図5図7図8、及び図9に示されるタイミング構成のいずれか、及び図示されたこれらの構成の変種をサポートするようにスイッチ制御信号SCSを制御する。
【0060】
これから図11を参照すると、少なくとも幾つかの実施形態において、スイッチコントローラ110は、定義された動作状態のセット及び定義された状態間を遷移するための定義された基準を含む有限状態機械を実装する。図11は、スイッチコントローラ110により単一パルスモードでサポートされる例示的な有限状態機械501を示す。図11に示される有限状態機械501は、ON状態502、EDGE状態510、及びOFF状態520を含む。少なくとも一実施形態において、スイッチコントローラ110は、例えば電源リセット後にON状態502に入る。ON状態502において、スイッチQは閉じられており、スイッチコントローラ110は発振信号431及びエッジ信号441を監視している。図11に示される有限状態機械501は、発振信号431及びエッジ信号441が両方ともTRUEである場合、遷移経路503に沿ってON状態502からEDGE状態510に遷移する。図11に示される有限状態機械501は、FALSE状態のCOMP_LO信号、すなわちNOT COMP_LOが真であることを検出すると、遷移経路504に沿ってEDGE状態510からOFF状態520に遷移する。有限状態機械501がOFF状態520に遷移すると、有限状態機械501はスイッチQをオフにし、OFFカウンタをクリアする。少なくとも一実施形態において、OFFカウンタは、コントローラ110に供給される論理クロック信号の1周期に1回インクリメントし、コントローラ110は、OFF_COUNT_MAX信号451に対してOFFカウンタを監視する。OFFカウンタがOFF_COUNT_MAX451を超える時、図11に示される有限状態機械501は、OFF状態520からON状態502に遷移する。
【0061】
図12は、図11の有限状態機械501の場合の、変圧器出力電圧VOT、インダクタ電流I、及びスイッチ制御信号SCSの例示的な波形を示す。図12に示すように、OFF状態の持続時間TDELAYは、変圧器出力電圧VOTがローからハイへ遷移した後もデアサートされている時間の長さを示す。持続時間TDELAYの終わりにおいて、有限状態機械501はON状態502に遷移し、スイッチ制御信号SCSはアサートされ、インダクタ電流Iが上昇し始める。図11及び図12に示される有限状態機械501は、エッジ532における変圧器出力電圧VOTの半周期の終わりまでスイッチQが閉じられたON状態502にある。この構成において、ピークインダクタ電流は、TDELAY531及びブーストコンバータ段100の電気特性にのみ制限される。
【0062】
変圧器出力電圧VOTのエッジ遷移532の後、EDGE信号441はTRUEであり、スイッチコントローラ110はEDGE状態510に遷移し、スイッチQは閉じられたままであり、インダクタ電流Iは、インダクタエネルギーが電子変圧器130に戻るのに伴い減少する。有限状態機械501は、インダクタ電流IがCOMP_LO信号420をTRUEに維持するのに必要なCOMP_LO閾値よりも下がる時、EDGE状態510からOFF状態520に遷移する。有限状態機械501は、SCSエッジ533においてスイッチ制御信号SCSをデアサートし、スイッチQを開く。スイッチQがオフにされると、インダクタLに残っているインダクタエネルギー535は負荷に伝達される。
【0063】
図13は、マルチパルス動作をサポートし、5つの状態を含む有限状態機械601を示す。有限状態機械601は、図11に示されるON状態502、EDGE状態510、及びOFF状態520と類似するON状態602、EDGE状態610、及びOFF状態620を含む。しかしながら、図11に示される有限状態機械501のON状態502は、EDGE状態510にのみ遷移可能であるが、図13に示される有限状態機械601は、ON状態602から2つの異なる状態に遷移可能である。ON状態602からの遷移はどちらも発振信号431の検出を必要とする。しかしながら、有限状態機械501と異なり、有限状態機械601は、エッジ信号及び有限状態機械501により監視される発振信号に加えて、COMP_HI信号を監視する。図13に示される有限状態機械601は、いずれもアサートされた発振信号及びCOMP_HI信号を検出すると、ON状態602からCCM_OFF状態630に遷移する。有限状態機械601は、いずれもアサートされた発振信号及びエッジ信号を検出すると、ON状態602からEDGE状態610に遷移する。有限状態機械601は、COMP_HI信号が所定の限界値以上の値を有するインダクタ電流に関連していることを認識すると、変圧器出力半周期が終わる前にインダクタ電流IがCOMP_HI閾値以上である場合にCCM_OFF状態630に遷移する。
【0064】
ON状態602からCCM_OFF状態630への遷移は、エッジ遷移631で図14にグラフで示されている。CCM_OFF状態630において、スイッチコントローラ110はスイッチQを開き、一方変圧器出力電圧VOTは、図示される例において正電圧に維持される。スイッチQが開いた状態で、インダクタLはエネルギーを負荷に伝達し始め、インダクタ電流Iは下がり始める。図13を再度参照すると、有限状態機械601は、CCM_OFFカウンタを監視して、スイッチコントローラ110がどれくらいの間CCM_OFF状態630にあるかを判定する。CCM_OFFカウンタがCCM_OFF閾値以上になると、有限状態機械601は、CCM_OFF状態630から、スイッチ制御信号SCSがアサートされ、第2信号、すなわちエッジイネーブル信号が1に設定されるCCM_ON状態640に遷移する。
【0065】
図13に示される有限状態機械601は、CCM_ON状態640から、CCM_OFF状態630又はOFF状態620のいずれかに遷移する。有限状態機械601がCCM_ON状態640にある間にCOMP_HI信号がアサートされると、有限状態機械601はCCM_OFF状態630に逆遷移する。このCCM_ON状態640からCCM_OFF状態630への遷移は、図14のエッジ遷移641としてグラフで示されている。図14は、有限状態機械601が、変圧器出力電圧VOTがほぼ一定で、インダクタ電流IがCOMP_HI値及びCOMP_LO値間を上下するのに伴い、CCM_OFF状態630及びCCM_ON状態640間を2以上のサイクルで往復発振する。
【0066】
図13に示される有限状態機械601は、CCM_ONカウンタがCCM_ON_MIN値を超え、COMP_LO信号がFALSEである場合、CCM_ON状態640からOFF状態620に遷移する。図14に示すように、CCM_ON状態640からOFF状態620への遷移は、変圧器出力電圧VOTエッジ651の後に発生する。変圧器出力電圧VOTがエッジ651において遷移する時、VOTは負の値に変化する一方、スイッチ制御信号SCSはスイッチQを閉じたままにする。有限状態機械601は、インダクタLに蓄積された無効エネルギーを電子変圧器130に戻し始め、インダクタ電流Iは下がり始める。次にスイッチ制御信号SCSが基準661においてデアサートされる時、スイッチQは開かれ、インダクタLは、その残っているエネルギー655を負荷に伝達する。
【0067】
CCM_OFF限界値、CCM_ON限界値、COMP_HI信号及びCOMP_LO信号を制御することにより、有限状態機械601は、図14に示される状態機械遷移を柔軟に実行して、TDELAYの持続時間、CCM_ON/CCM_OFF間隔の数及び持続時間を制御することができる。図14に示される有限状態機械601において、COMP_HI閾値及びCOMP_LO閾値は、両方とも最小ピークインダクタ電流IMINPEAK及び最大インダクタ電流IMAX間の範囲内にあり、ここで、COMP_HI閾値はCOMP_LO閾値よりも大きい。この構成において、スイッチコントローラ110は、インダクタの最大電流定格に違反することなく発振電流の基準を満たすことにより、電子変圧器の確実な動作を保証する。
【0068】
図13及び図14に示される有限状態機械601及び図11及び図12に示される有限状態機械501はいずれも、特に最初のON状態から他の何らかの状態への遷移について発振信号を監視する。これらの両実施形態において、ブーストコンバータ段100の有限状態機械は、発振信号により電子変圧器回路が適切に機能していることが示されるまで、スイッチ制御信号がアサートされた最初のON状態のままである。図15を参照すると、有限状態機械501、有限状態機械601、又は他の適当な有限状態機械の一部は、図15のフロー図による動作を実行するように動作可能な発振信号ロジックを含む。図15に示されるように、動作700は、COMP_LO信号の最初の比較(ブロック702)を含む。COMP_LO信号が真の場合、動作700は、デッドカウンタがゼロに初期化され、発振信号がアサートされるブロック704に移行する。次に、図15に示される方法700はブロック702に戻る。ブロック702の比較が行われる際にコンペアローがアサート解除された場合、図15に示される方法700は、ブロック702から、デッドカウンタがインクリメントされるブロック706に移行する。次に、図15に示される方法700は、ブロック708においてデッドカウンタをデッドカウンタ最大値と比較する。デッドカウンタがデッドカウンタ最大値以上である場合、方法700は、発振信号がデアサートされ、デッドカウンタがデッドカウンタ最大値に設定されるブロック710に移行する。ブロック708において、デッドカウンタがデッドカウンタ最大値よりも小さい場合、方法700は、ブロック712において発振信号を1に設定し、ブロック702に戻る。
【0069】
図15に示されるように、方法700は最初に発振信号をアサートし、COMP_LO信号が、デッドカウンタ最大値により決定された持続時間の間デアサートされたままでない限り発振信号を維持する。COMP_LO信号がデッドカウンタ最大値により決定された間隔よりも長い間デアサートされたままである場合、発振信号はブロック710においてデアサートされる。
【0070】
本明細書で使用されるように、2つ以上の要素が互いに「結合されている」という時、かかる用語は、そのような2つ以上の要素が、間接接続であろうと直接接続であろうと介在要素の有無にかかわらず電子的に通信していることを示す。
【0071】
本開示は、当業者が理解する本明細書の例示的な実施形態に対する全ての変更形態、置換形態、変形形態、代替形態及び修正形態を包含する。同様に、適切な場合は、添付された特許請求の範囲は、当業者が理解する本明細書の例示的な実施形態に対する全ての変更形態、置換形態、変形形態、代替形態及び修正形態を包含する。さらに、特定の機能を行うように適合され、配置され、能力を有し、構成され、可能にされ、動作可能であり、又は作用効果がある、添付された特許請求の範囲における装置若しくはシステム又は装置若しくはシステムの構成要素への言及は、その装置、システム、若しくは構成要素、又はその特定の機能が、活性化され、電源投入され、若しくは解除されるか否かにかかわらず、その装置、システム、若しくは構成要素が、そのように適合され、配置され、能力を有し、構成され、可能にされ、動作可能であり又は作用効果がある限り、その装置、システム、若しくは構成要素を包含する。
【0072】
本明細書に列挙された実例及び条件付き文言は全て、本開示及び発明者が技術の推進に貢献した概念を読者が理解する手助けとなる教育的な目的が意図されており、そのような特別に列挙された実例及び条件に限定しないものとして解釈される。本開示の実施形態について詳細に記載したが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱せずに、本開示に対する様々な変更、置換え、及び代替を行うことができることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15