【文献】
Samuel E.Wilding,“Expanding Lamina Emergent Mechanism(LEM) Capabilities:Spherical LEMs,LEM Joints,and LEM Applications”,All Theses and Dissertations,米国,BYU ScholarsArchive,2011年 8月11日,Paper 2903,P47-62
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
最近では、コンタクトレンズを市場へ流通する際、個別にコンタクトレンズを包装したブリスター容器が用いられている。
【0003】
一般的なブリスター容器は、コンタクトレンズとその保存液を収容する半球状の窪み部と、その開口部周辺に広がるフランジ部と、を有する合成樹脂製の本体部と、ポリプロピレンフィルムとアルミ箔の積層物からなる蓋部で構成されており、本体部と蓋部のシールには、加熱又は超音波による溶着方法が用いられている。
【0004】
このブリスター容器からコンタクトレンズを取り出す方法として、掌に保存液ごと出したコンタクトレンズを指先で摘む方法があるが、この方法では、コンタクトレンズが流失する危険性を有していると共に、摘み上げる際にコンタクトレンズが折り曲げられるため、レンズの光学特性に悪影響を及ぼしたり、レンズ表面に傷を発生させたりすることが懸念される。また、蓋部を本体部から引き剥がし、ブリスター容器を開封した後に、窪み部に手指を入れて指先でコンタクトレンズをすくい上げる方法も一般的に行われているが、指先ですくい上げ、コンタクトレンズを取り出す過程で、蓋部を本体部から引き剥がす際に発生する溶着部の剥がれ跡にコンタクトレンズが接触する可能性が高く、レンズを傷付ける恐れがある。
【0005】
コンタクトレンズ表面の傷は、擦り洗い時に破損の原因となったり、そこに汚れが蓄積しやすいことから、装用感や視力補正性の低下を引き起こす原因となったりするため、好ましくない。
【0006】
さらに、窪み部に手指を入れて指先ですくい上げる方法においては、指ですくい上げる際、装用時に角膜に接するコンタクトレンズのベースカーブ面に手指が接触するため、手指に付着した汚れや細菌によってコンタクトレンズが汚染される恐れがある。特に、手指の洗浄が不十分な場合には、この汚染を原因とした眼疾患を誘発する危険性も懸念される。
【0007】
これに対し、流通時のコンタクトレンズの保持性を向上すると共に、装用時のコンタクトレンズのベースカーブ面への手指の接触を抑止するようにしたコンタクトレンズ用パッケージが知られている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載のコンタクトレンズ用パッケージは、コンタクトレンズとスプリングディスクをコンタクトレンズのカップの深さ(サジタルデプス)よりも浅いブリスター容器の収容空間において収容シートに挟み込み、コンタクトレンズが押圧された状態で収納されており、収容シートの開封により押圧されない状態に戻る際に、コンタクトレンズを元の形状に戻す補助をするようになっている。
【0008】
また、流通時のコンタクトレンズの保持性を向上するために、凹状内面を有する第一部材と、凸状内面を有する第二部材とを重ね合わせた際に生じる対向内面間にコンタクトレンズを保持し、当該部材を保存液と共に収容するコンタクトレンズ流通ケースも開示されている(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のコンタクトレンズ用パッケージは、コンタクトレンズのカップの深さよりも浅いブリスター容器に、コンタクトレンズがスプリングディスクと共に挟み込まれて押圧された状態で保存されるため、収容シートからの外部応力によるコンタクトレンズの光学特性への悪影響や形状不良、また、コンタクトレンズのスプリングディスクとの接触部に傷が発生しやすいという、新たな問題が危惧される。
【0011】
特許文献2に記載のコンタクトレンズ流通ケースは、コンタクトレンズの形状を保持したまま収納されるものの、第一部材と第二部材を重ね合わせる際に、コンタクトレンズを挟み込むことが危惧される上、構造が複雑になる。また、保存液の液量を少なくした流通ケースでは、保存液の液量が極端に少なく、移送時の傾きにより、コンタクトレンズの一部或いは大半が液中に浸漬されない場合が考えられ、乾燥による光学特性への悪影響が生じる恐れがある。
【0012】
また、特許文献1に記載のコンタクトレンズ用パッケージ及び特許文献2に記載のコンタクトレンズ流通ケースは、いずれもコンタクトレンズが2枚のシート状体に挟まれて収容されているために、開封と同時にコンタクトレンズが露出するから、開封時に誤ってコンタクトレンズを落下させる恐れもある。
【0013】
そこで、本願発明は、取り出し時や収納時にコンタクトレンズに傷を発生させないと共に、コンタクトレンズの光学特性に影響を及ぼさないコンタクトレンズ用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本願発明者らは、収納時に光学特性を損ねることなく、且つ、取り出し時に容器のフランジ部と接触することなく、さらには、容器中の保存液に手指が接することなく、コンタクトレンズを取り出す方法を鋭意検討し、装用時と同様の形状を保持した状態のコンタクトレンズと保存液を収納する窪み部を有する容器本体部と、窪み部内にあって可動式のコンタクトレンズ保持部材と、前記窪み部を覆う蓋部とを組み合せることを考案した。
【0015】
本発明は、保存液及びコンタクトレンズを収容する一又は二以上の窪み部を有する容器本体部と、前記窪み部内に収容され、前記コンタクトレンズを載置するレンズ載置部を有する一又は二以上のコンタクトレンズ保持部材と、前記窪み部を覆う蓋部と、該蓋部の開蓋に伴って前記レンズ載置部を前記窪み部の上方に移動させる引き上げ機構と、を備えたコンタクトレンズ用容器を提供するものである。
【0016】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記引き上げ機構が、前記蓋部から前記窪み部に向かって突出するように設けた係止部と、該係止部と係合可能に前記コンタクトレンズ保持部材に設けた被係止部と、を有し、前記係止部と前記被係止部が係合し、前記蓋部の開蓋に伴って前記レンズ載置部を前記窪み部の上方に移動させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記係止部が、前記蓋部に固定されており、且つ、前記蓋部の開蓋時に前記被係止部と係合するように形成されたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記係止部と前記被係止部がヒンジ機構によって連結されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記引き上げ機構が、前記コンタクトレンズ保持部材と前記蓋部とを連結する連結部材からなることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記コンタクトレンズ保持部材が、前記窪み部の底部に定置するための安定部を備え、前記被係止部と前記安定部がそれぞれ前記レンズ載置部に連結して設けられたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記レンズ載置部が複数の貫通孔を有することを特徴とする。
【0022】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記レンズ載置部が上方に突出する球面形状に形成され、前記コンタクトレンズがフロントカーブ面を上方にして載置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のコンタクトレンズ用容器は、保存液及びコンタクトレンズを収容する一又は二以上の窪み部を有する容器本体部と、前記窪み部内に収容され、前記コンタクトレンズを載置するレンズ載置部を有する一又は二以上のコンタクトレンズ保持部材と、前記窪み部を覆う蓋部と、該蓋部の開蓋に伴って前記レンズ載置部を前記窪み部の上方に移動させる引き上げ機構と、を備えた構成を有することにより、窪み部内においてコンタクトレンズが装用時と同様の形状を保持してレンズ載置部に載置されるから、収納時にレンズの光学特性を損ねることがない。
【0024】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、取り出し時には、引き上げ機構によって、蓋部の開蓋に伴ってレンズ載置部が窪み部の上方に移動し、コンタクトレンズが保存液中より持ち上げられるから、コンタクトレンズを容器本体部に接触させたり落下させたりすることなく確実に取り出すことができ、レンズ表面に傷が発生せず、これに起因する破損の発生、装用感や視力補正性の低下を抑止することができる効果がある。
【0025】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記引き上げ機構が、前記蓋部から前記窪み部に向かって突出するように設けた係止部と、該係止部と係合可能に前記コンタクトレンズ保持部材に設けた被係止部と、を有し、前記係止部と前記被係止部が係合し、前記蓋部の開蓋に伴って前記レンズ載置部を前記窪み部の上方に移動させることにより、コンタクトレンズの取り出し時には、コンタクトレンズ保持部材が引き揚げられ、前記窪み部の上方に移動させることができる効果がある。
【0026】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記係止部が、前記蓋部に固定されており、且つ、前記蓋部の開蓋時に前記被係止部と係合するように形成されたことにより、係止部は蓋部に固定され、被係止部はコンタクトレンズ保持部材に設けられるから、簡易な製造工程によって引き上げ機構を構成することができるのみならず、開蓋時には係止部と被係止部とが係合してレンズ載置部を上方に移動させることができる効果がある。
【0027】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記係止部と前記被係止部がヒンジ機構によって連結されていることにより、係止部と被係止部とが常に係合しているから、確実にレンズ載置部を上方に移動させることができる。また、ヒンジ機構によって、係止部と被係止部とが回動するから、安定してレンズ載置部を上方に移動させることができる効果がある。
【0028】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記引き上げ機構が、前記コンタクトレンズ保持部材と前記蓋部とを連結する連結部材からなることにより、連結部材によって蓋部に連結されたコンタクトレンズ保持部材が開蓋に伴って引き揚げられるから、簡易な引き上げ機構によってレンズ載置部を窪み部の上方に移動させることができる効果がある。
【0029】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記コンタクトレンズ保持部材が、前記窪み部の底部に定置するための安定部を備え、前記被係止部と前記安定部がそれぞれ前記レンズ載置部に連結して設けられたことにより、収納時には安定部によってコンタクトレンズ保持部材が窪み部の底部に安定的に定置し、取り出し時には、レンズ載置部に連結して設けられた被係止部によってレンズ載置部が引き上げられ、安定してレンズ載置部を上方に移動させることができる効果がある。
【0030】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記レンズ載置部が複数の貫通孔を有することにより、保存液が充填された窪み部内にコンタクトレンズ保持部材を収容する際に、貫通孔を保存液が通過して内側に保存液や空気を閉じ込めることがないから、レンズ載置部が浮遊することなく定位置に安定させることができる効果がある。
【0031】
また、本発明のコンタクトレンズ用容器は、前記レンズ載置部が上方に突出する球面形状に形成され、前記コンタクトレンズがフロントカーブ面を上方にして載置されることにより、取り出し時にコンタクトレンズのフロントカーブ面を把持して、そのまま装着することができるから、コンタクトレンズのベースカーブ面に手指が接触することがなく、手指に付着した汚れや細菌によるコンタクトレンズの汚染を予防でき、さらには、コンタクトレンズの汚染を原因とした眼疾患の発生も予防することができる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係るコンタクトレンズ用容器は、保存液及びコンタクトレンズ9を収容する一又は二以上の窪み部10を有する容器本体部1と、前記窪み部10内に収容され、前記コンタクトレンズ9を載置するレンズ載置部3を有する一又は二以上のコンタクトレンズ保持部材2と、前記窪み部10を覆う蓋部4と、該蓋部4の開蓋に伴って前記レンズ載置部3を前記窪み部10の上方に移動させる引き上げ機構5と、を備えている。このコンタクトレンズ用容器は、一の窪み部10内に一のコンタクトレンズ保持部材2を備えて一のコンタクトレンズ9を収容する構成の他、一の窪み部10内に二以上のコンタクトレンズ保持部材2を備えて二以上のコンタクトレンズ9を収容する構成、一又は二以上のコンタクトレンズ保持部材2を収容した二以上の窪み部10を備えて二以上のコンタクトレンズ9を収容する構成としてもよい。
【0034】
本願発明者らは、特に、流通の際に用いるブリスター容器からコンタクトレンズを取り出す際の簡便性を改善すべく、ブリスター容器の態様と、開封時に生じる接着部の剥がれ跡による悪影響の低減に着眼した。
【0035】
本発明のコンタクトレンズ用容器は、蓋部4を開蓋する際に、該蓋部4の開蓋に伴ってレンズ載置部3を窪み部10の上方に移動させる引き上げ機構5を備えた構成にすることによって、蓋部4の開蓋に連動して保持部材2が引き上げられることで、レンズ載置部3に載置されたコンタクトレンズ9を容器本体部1より簡便に取り出せることを特徴としている。
【0036】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0037】
[容器の第一態様]
図1は、本発明のコンタクトレンズ用容器の第一態様を示す断面図である。また、
図2は、本発明の第一態様を示す平面図であり、
図5は、本発明の第一態様の使用状態を示す断面図である。
【0038】
図1及び
図2において、容器本体1は、コンタクトレンズ9及び保存液を収容する窪み部10を有しており、窪み部10内にはレンズ載置部3を有するコンタクトレンズ保持部材2が収容されている。コンタクトレンズ9は、形状が変化しないようにレンズ載置部3上に載置される。コンタクトレンズ9は、装用時と同様の形状を保持した状態で容器本体部1内に収容されるから、窪み部10の深さは、コンタクトレンズ9及びコンタクトレンズ保持部材2の全体が収容できるサイズに形成されている。13は、容器本体部1の底部であり、コンタクトレンズ保持部材2の形状に合わせて任意の形状を採用することができるが、容器本体部1を静置した際の安定性、移送中のコンタクトレンズ9の位置性を考慮し、矩形状の平面に形成してあることが好ましい。
【0039】
容器本体部1は、窪み部10の周囲にフランジ部11を形成してある。また、容器本体部1の一方には、他の部分より幅広のフランジ部11を形成してあり、コンタクトレンズ9を取り出す際に容器本体部1を把持しやすくしてある。
【0040】
蓋部4は、容器本体部1のフランジ部11に回動自在に連結される連結部20と、フランジ部11に係脱自在に係止されるフック部18と、窪み部10の内周面の上端部に当接して窪み部10内を密閉するシール部19と、を有し、容器本体部1に対して開閉自在に設けてある。フック部18は、幅広側のフランジ部11に係止され、連結部20は、フック部18の反対側でフランジ部11に連結されている。連結部20は、回転軸を有するヒンジ機構によって、別々に成形された容器本体部1と蓋部4とを連結する構成の他、容器本体部1と蓋部4とを一体成形し、連結部20を折り曲げ自在に形成してもよい。
【0041】
引き上げ機構5は、蓋部4を閉じたときに、蓋部4から窪み部10に向かって突出するように設けた係止部6と、この係止部6と係合可能にコンタクトレンズ保持部材2に設けた被係止部7と、を有している。係止部6は、一端が蓋部4の下面に固定されており、窪み部10に向かって斜めに下方に延設され、他端が上方に湾曲したフック形状を成している。係止部6は、熱溶着、超音波溶着、高周波溶着などの溶着方法や接着剤、溶剤などによる接着方法によって蓋部4に固定できる他、蓋部4と一体成形してもよい。被係止部7も、係止部6と同様に、溶着や接着によってコンタクトレンズ保持部材2に固定することができるが、成形性や引き上げ時の安定性の観点から、被係止部7はコンタクトレンズ保持部材2と一体成形してあることが好ましい。
【0042】
コンタクトレンズ保持部材2は、レンズ載置部3を有するコンタクトレンズ保持部材2を容器本体部1の底部(容器底部13)に定置するための安定部17を備え、被係止部7と安定部17がそれぞれレンズ載置部3に連結して設けられている。本発明のコンタクトレンズ用容器は、コンタクトレンズ9の保存中においては、安定部17によってコンタクトレンズ保持部材2が容器底部13に定置され、開蓋時においては、引き上げ機構5によってコンタクトレンズ保持部材2が容器本体部1に対して可動式になっている。
【0043】
安定部17は、矩形状の容器底部13の一辺と係合する棒状体を成し、レンズ載置部3の底部に連結して一体的に形成されている。被係止部7は、レンズ載置部3に対して安定部17と同じ側に設けられ、レンズ載置部3の周縁部から斜め上方に向かって突出して形成されている。被係止部7は、レンズ載置部3の周縁部と環状体を成すように形成され、係止部6と係合可能にしてある。コンタクトレンズ保持部材2は、蓋部4の開蓋時に、蓋部4に固定されて窪み部10方向に突出した係止部6が、被係止部7に接して係合するように構成されることにより、開蓋に連動して引き上げられるから、
図5に示すようにレンズ載置部3が上方に移動して保存液中より持ち上がる。
【0044】
なお、係止部6及び被係止部7は、開蓋時に係合可能に形成してあればよく、図示の態様に限定されるものではない。また、安定部17は、コンタクトレンズ9の保存中に、コンタクトレンズ保持部材2が容器底部13に対して回転したり移動したりして、被係止部7が係止部6と係合可能な位置からずれるのを防止することができるように構成してあればよい。したがって、安定部17は、被係止部7と反対側に設けることもでき、被係止部7と同じ側及び反対側の双方に設けてもよい。
【0045】
本コンタクトレンズ用容器において、コンタクトレンズ保持部材2は、コンタクトレンズ9の取り出し時に、レンズ載置部3の全体又は大部分が保存液の液面より持ち上がるような可動式であればよい。コンタクトレンズ保持部材2は、蓋部4及び係止部6との一体成形による連結態様、蓋部4及び係止部6とコンタクトレンズ保持部材2を独立成形後に被係止部7において溶着又は嵌合した連結態様、或いは、各々独立したままの態様が考えられ得る。本発明においては、成形性及び可動性などを考慮して、図示の第一態様のように、蓋部4及び係止部6とコンタクトレンズ保持部材2の各々が独立していることが好ましい。
【0046】
本発明のコンタクトレンズ用容器において、コンタクトレンズ9は、ベースカーブ面に手指が接触しないように、フロントカーブ面を上方にしてレンズ載置部3に載置されることが好ましい。レンズ載置部3は、コンタクトレンズ保持部材2において上方に突出する球面形状に形成されており、コンタクトレンズ9のベースカーブと同様の曲率を有していることが好ましい。さらに、移送時や保存時のコンタクトレンズ9の移動を抑止するために、コンタクトレンズ保持部材2は、窪み部10内の容器底部13に安定して収容されていることが重要である。一つの手段として、コンタクトレンズ保持部材2におけるレンズ載置部3を複数の貫通孔を有した形状とすることが挙げられる。レンズ載置部3が当該形状を採用することにより、保存液が充填された窪み部10内にコンタクトレンズ保持部材2を収容する際に、内側に保存液や空気を閉じ込めることがないため、コンタクトレンズ保持部材2が浮遊することなく容器底部13に接した定位置で安定することができる。
【0047】
レンズ載置部3は、具体的な形状の一態様として、
図2に示すように、曲面の頂点部となる中心部に環状部15を有し、この環状部15より放射状に延伸した骨部16を有する。骨部16は、コンタクトレンズ9のベースカーブと同様の曲率を有している。また、コンタクトレンズ9の安定性を考慮し、骨部16の本数は4以上12以下に形成されていることが好ましく、左右対称となるように偶数本配することがより好ましい。
【0048】
容器底部13の横幅は、コンタクトレンズ保持部材2を容器本体部1の底部に接して安定的に収容するために、レンズ載置部3の横幅h(
図4参照)より大きく設けることが好ましい。この窪み部10の横幅は、レンズ載置部3の横幅hに合わせることで、移送時及び保存時のレンズ載置部3の安定性を向上させることが可能となる。
【0049】
図1及び
図2において、14はズレ防止部であり、コンタクトレンズ9がレンズ載置部3からズレ落ちるのを防止している。ズレ防止部14は、図示の実施例のように、安定部17を設けた側及びその反対側に設けることにより、引き上げ機構5によってコンタクトレンズ保持部材2が引き上げられて、レンズ載置部3が保存液から持ち上げられる際に、コンタクトレンズ9がズレ落ちるのを確実に防止することができる。
【0050】
被係止部7は、レンズ載置部3と連結して一体成形されており、
図3に示すように、上方へ延伸した構造を有する。レンズ載置部3の底辺(容器底部13)に対する被係止部7の角度eは、1°〜90°で形成されることが好ましく、被係止部7の長さに係るコンタクトレンズ保持部材2の安定性の面から45°〜80°に形成することがより好ましい。また、被係止部7の長さが、窪み部10の深さを決定することとなる。被係止部7の長さが長すぎる場合、窪み部10を深く形成しなければならず、窪み部10の容積が大きくなることで、保存液中でレンズ載置部3やコンタクトレンズ9が移動しやすくなり、移送時や保存時にコンタクトレンズ9を定位置に保持することが困難になる。一方、被係止部7の長さが短すぎる場合、開蓋時に係止部6を被係止部7と係合させ、コンタクトレンズ保持部材2を引き上げる際の安定性が低下する。このため、被係止部7の長さは、
図3において、コンタクトレンズ保持部材2の高さcに対し、被係止部7の高さdが80〜130%となるように形成されていることが好ましい。さらに好ましくは、窪み部10の深さと、被係止部7の高さdが等しくなる状態であり、当該構成とすることで、コンタクトレンズ保持部材2は、蓋部4に抑えられ、移送時の安定性が向上する。また、コンタクトレンズ9の取り出し時において、
図5に示すようにレンズ載置部3が持ち上げられた状態におけるバランス性を考慮し、レンズ載置部3と被係止部7とは二点で連結するように形成することが好ましい。被係止部7は、この二点の連結部をレンズ載置部3に対して左右対照となるように配することで、バランス性をさらに向上させることが可能となる。
図4に示すように、被係止部7は、この二点間の距離fをレンズ載置部3の横幅hよりも小さく形成することで、コンタクトレンズ9を取り出す開蓋時に、係止部6によって被係止部7を引き上げる際の力が加わり易くなる。
【0051】
安定部17は、レンズ載置部3と連結して一体成形されており、レンズ載置部3の底部より水平方向へ延伸した構造を有する。
図3において、安定部17とレンズ載置部3の全長の合計であるコンタクトレンズ保持部材2の全長bが、窪み部10の容器底部13の全長を決定することとなる。容器底部13の全長は、コンタクトレンズ保持部材2を容器本体部1の底部に接して安定的に収容するために、コンタクトレンズ保持部材2の全長bより大きくすることが好ましい。また、容器底部13の全長は、コンタクトレンズ保持部材2の全長bと合わせることにより、移送時及び保存時のコンタクトレンズ保持部材2の安定性を向上させることができる。安定部17が長すぎる場合、係止部6によって被係止部7を引き上げ、コンタクトレンズ保持部材2全体を保存液中より持ち上げる際に、安定部17の端部が容器本体部1の周縁に引っ掛かり、充分にレンズ載置部3を引き上げることができなくなる。このため、コンタクトレンズ保持部材2の全長bは、レンズ載置部3の全長aに対し、110〜150%となるように形成されていることが好ましい。また、窪み部10へ収容された際のコンタクトレンズ保持部材2の安定性を考慮し、レンズ載置部3と安定部17とは二点で連結するように形成することが好ましい。安定部17は、この二点の連結部をレンズ載置部3に対して左右対照となるように配することで、安定性をさらに向上させることが可能となる。
図4に示すように、安定部17は、この二点間の距離gをレンズ載置部3の横幅hと同じ幅に形成することで、移送時及び保存時の安定性並びにコンタクトレンズ保持部材2を引き上げる際のガイドとしての効果が向上する。
【0052】
コンタクトレンズ保持部材2は、被係止部7及び安定部17が容器本体部1と蓋部4の連結部20側に位置するように、容器本体部1の窪み部10内に収容されている。コンタクトレンズ9を取り出す際には、蓋部4のフック部18と容器本体部1のフランジ部11との係合を外し、このフランジ部11を手指で摘まんで蓋部4を開蓋操作することで、係止部6と被係止部7が係合し、コンタクトレンズ保持部材2が安定部17にガイドされて安定的に引き上げられ、レンズ載置部3を保存液中から確実に持ち上げることができる。また、窪み部10は、連結部20側の側壁を対向する側壁と比べて緩やかな傾斜に形成することで、安定部17がこの側壁に沿って引き上げられるから、コンタクトレンズ保持部材2を更に安定して引き上げることができる。
【0053】
容器本体部1及びコンタクトレンズ保持部材2は、成形性や液密性がよいことから合成樹脂で形成してある。容器本体部1及びコンタクトレンズ保持部材2に用いる合成樹脂は、コンタクトレンズ9と保存液を封入した後に滅菌工程を行う必要があるので、オートクレーブ滅菌に耐えうる程度の耐熱性や耐薬品性を有するものが好ましい。一般的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、脂環式ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。本発明のコンタクトレンズ用容器においては、取扱いの簡便性から、容器本体部1及びコンタクトレンズ保持部材2の双方ともにポリプロピレンが最も好ましく用いられる。さらに、本容器は、耐熱性を有する生分解性の樹脂を使用することで、使用後の廃棄処理を容易にするという利点も得られる。
【0054】
蓋部4及び引き上げ機構5に用いる合成樹脂は、容器本体部1、コンタクトレンズ保持部材2と同様に、オートクレーブ滅菌に耐えうる程度の耐熱性や耐薬品性を有することが好ましく、また、溶着性を考慮すると、容器本体部1と同一の合成樹脂を用いることが特に好ましい。
【0055】
第一態様のコンタクトレンズ用容器は、蓋部4が開閉自在に設けられていることから、出荷用容器に限られず、保存用容器としても使用することができる。
【0056】
[容器の第二態様]
図6は、本発明のコンタクトレンズ用容器の第二態様を示す断面図である。また、
図7は、本発明の第二態様を示す平面図である。
【0057】
容器本体部1は、コンタクトレンズ9及び保存液を収容する窪み部10を有しており、窪み部10内にはレンズ載置部3を有するコンタクトレンズ保持部材2が収容されている。また、容器本体部1は、窪み部10の周囲にフランジ部11を形成してある。容器本体部1の一方には、フランジ部11より僅かに高さが低い容器把持部12を延設してあり、蓋部4を開封したりコンタクトレンズ9を取り出したりする際に容器本体部1を把持しやすくしてある。容器本体部1及びコンタクトレンズ保持部材2の他の構成は、第一態様と同様である。
【0058】
第二態様のコンタクトレンズ用容器において、蓋部4は、開封時に、蓋部4の全体が取り除き可能な一体のシート構造により形成されたシートタイプ、又は、窪み部10の開口部のみが取り除き可能なプルトップ構造により形成されたプルトップタイプなど、窪み部10を密閉可能な種々の構成を採用することができる。シートタイプを採用した場合に、蓋部4は、ポリプロピレンとアルミ箔の積層物や合成樹脂により形成される。本願発明においては、各部の形成性を考慮し、蓋部4に合成樹脂を好ましく用い、射出成型により形成することができる。蓋部4に用いる合成樹脂は、容器本体部1、コンタクトレンズ保持部材2と同様に、オートクレーブ滅菌に耐えうる程度の耐熱性や耐薬品性を有することが好ましく、また、密閉時の容器本体部1との溶着性を考慮すると、容器本体部1と同一の合成樹脂を用いることが特に好ましい。
【0059】
図6に示す容器は、蓋部4がシートタイプのものであり、通常のブリスター容器と同様に、窪み部10周辺のフランジ部11において蓋部4と容器本体部1とを溶着することにより密閉される。蓋部4は、容器本体部1との溶着部位がフランジ部11に連続する容器把持部12まで至ると、蓋部4の開封性が低下するため好ましくない。蓋部4と容器本体部1の接合には、熱溶着、超音波溶着、高周波溶着などの通常のプラスチックの溶着方法を用いることができ、蓋部4と容器本体部1の材質によっては接着剤や溶剤による接着方法を用いることも可能であるが、熱溶着を用いることが最も好ましい。
【0060】
蓋部4にプルトップ構造を採用した場合においては、合成樹脂製のシートタイプを採用した場合と同一の事由により、容器本体部1と同一の合成樹脂で形成してあることが好ましく、射出成型により形成することができる。
【0061】
第二態様のコンタクトレンズ用容器において、引き上げ機構5は、蓋部4を閉じたときに、蓋部4から窪み部10に向かって突出するように設けた係止部6と、この係止部6と係合するようにコンタクトレンズ保持部材2に設けた被係止部7と、係止部6と被係止部7とを連結するヒンジ機構8と、を有している。ヒンジ機構8は、連結部に回転軸を有する構成の他、連結部を折り曲げ自在に形成した構成にしてもよい。第二態様の引き上げ機構5は、断面が「く」の字状に構成してあり、レンズ載置部3を上方に引き上げやすくしてある。引き上げ機構5の他の構成は、第一態様と同様である。
【0062】
この第二態様のコンタクトレンズ用容器は、簡易な構成で蓋部4の再利用ができないことから、出荷用容器として好適である。また、第二態様のコンタクトレンズ用容器は、係止部6と被係止部7とがヒンジ機構8によって連結され、コンタクトレンズ保持部材2が引き上げ機構5を介して蓋部4と連結されているから、コンタクトレンズ保持部材2に安定部17を設けなくても、窪み部10内でコンタクトレンズ保持部材2を定位置に安定して収容することができる。
【0063】
[容器の第三態様]
図8は、本発明のコンタクトレンズ用容器の第三態様を示す断面図である。また、
図9は、本発明の第三態様の使用状態を示す断面図である。
【0064】
第三態様のコンタクトレンズ用容器において、引き上げ機構5は、蓋部4を閉じたときに、蓋部4から窪み部10に向かって突出するように設けた係止部6と、この係止部6と係合するようにコンタクトレンズ保持部材2に設けた被係止部7と、係止部6と被係止部7とを連結するヒンジ機構8と、を有している。ヒンジ機構8は、連結部に回転軸を有する構成の他、連結部を折り曲げ自在に形成した構成にしてもよい。第三態様の引き上げ機構5は、断面が「く」の字状に構成してあり、レンズ載置部3を上方に引き上げやすくしてある。
【0065】
本発明の第三態様は、蓋部4より突出した係止部6と、コンタクトレンズ保持部材2と一体成形された被係止部7とが、ヒンジ機構8によって回動自在に連結され、蓋部4とコンタクトレンズ保持部材2とが引き上げ機構5を介して連結されている。係止部6と被係止部7との連結部を可動式の構成とすることにより、封止時において屈曲した状態である連結部は、蓋部4の開蓋に伴って伸長し、コンタクトレンズ保持部材2を上方へ引上げることが可能となる。また、当該連結部(ヒンジ機構8)の形成については、コンタクトレンズ保持部材2、蓋部4及び引き上げ機構5の一体成形の他、蓋部4、係止部6及び被係止部7を含むコンタクトレンズ保持部材2を独立成形後に、係止部6と被係止部7を溶着又は嵌合した連結態様が考えられる。本容器の他の構成は、第一態様と同様である。
【0066】
なお、引き上げ機構5は、第一態様乃至第三態様に示される構成に限定されるものではなく、コンタクトレンズ保持部材2と蓋部4とを連結し、開蓋に伴ってレンズ載置部3を窪み部10の上方に移動可能な様々な連結部材を採用することが可能である。
【0067】
[容器の第四態様]
図10は、本発明の第四態様の使用状態を示す断面図である。
図10に示す容器本体部1は、容器底部13において、レンズ載置部3が位置する部分の底面にレンズ載置部3の球面形状より半径の小さい球面形状からなる椀部21を形成してある。容器本体部1は、椀部21によって容量が小さくなり、収容する保存液の液量を少なくすることができる。また、
図10に示す容器本体部1は、容器底部13がコンタクトレンズ保持部材2より大きい場合でも、椀部21の球面形状をレンズ載置部3の球面形状に合わせることによって、窪み部10内でコンタクトレンズ保持部材2を定位置に安定して収容することができる。本容器の他の構成は、第二態様と同様である。