特許第6339397号(P6339397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339397
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20180528BHJP
   B60R 19/24 20060101ALI20180528BHJP
   B60R 19/34 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   B62D25/08 D
   B60R19/24 N
   B60R19/34
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-65578(P2014-65578)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-189242(P2015-189242A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【弁理士】
【氏名又は名称】重泉 達志
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】石井 聡訓
(72)【発明者】
【氏名】藤原 誠二
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−206561(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/036262(WO,A1)
【文献】 特開2011−088484(JP,A)
【文献】 特開平11−268663(JP,A)
【文献】 特開2013−216169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/24
B60R 19/34
B62D 25/08
B62D 21/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向へ延びる左右一対のサイドフレームと、
前記各サイドフレームの前方に配置され、左右端部側よりも左右中央側が前方へ突出するバンパビームと、
前記各サイドフレームの前端から前方へ延び、前記バンパビームを支持する左右一対のステーと、を備え、
前記各ステーの後端側は、前後方向の圧縮荷重に対し、左右方向について内側よりも外側の方が抗力が高く、
前記各ステーは、
前後方向へ延び閉断面を有するステー本体と、
前記ステー本体の後端側における左右外側の壁部に設けられたパッチと、を有する車体前部構造。
【請求項2】
前記ステー本体は、断面が多角形状に形成され、
前記パッチは、前記ステー本体の少なくとも1つの角部を跨いで設けられる請求項に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパビームが固定されるステーを有する車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車車両の前部にはバンパを構成するバンパビームが配設される。バンパビームは左右方向へ延び、ステーを介して、前後へ延びる各サイドフレームの前端に固定される(例えば、特許文献1参照)。車両の衝突の際にバンパビームに荷重が入力されると、バンパビーム及び車体が変形することにより、エネルギーが吸収される。
【0003】
車体側の変形がサイドフレームにまで及ばない軽衝突の場合、ステー及びバンパビームを交換することで修理することができる。一方、車体側の変形がサイドフレームにまで及ぶ大衝突の場合、サイドフレームによりエネルギー吸収が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−268663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バンパビームは左右端部側よりも左右中央側が前方へ突出するよう湾曲して形成されているため、モーメントの作用により、大衝突時におけるバンパビームからサイドフレーム側への荷重伝達について、左右内側よりも左右外側の方が荷重を伝達し難くなっている。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バンパビームの湾曲形状に対応して、車両衝突に関する性能を向上させることのできる車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明によれば、前後方向へ延びる左右一対のサイドフレームと、前記各サイドフレームの前方に配置され、左右端部側よりも左右中央側が前方へ突出するバンパビームと、前記各サイドフレームの前端から前方へ延び、前記バンパビームを支持する左右一対のステーと、を備え、前記各ステーの後端側は、前後方向の圧縮荷重に対し、左右方向について内側よりも外側の方が抗力が高い車体前部構造が提供される。
【0008】
上記車体前部構造において、前記各ステーは、前後方向へ延び閉断面を有するステー本体と、前記ステー本体の後端側における左右外側の壁部に設けられたパッチと、を有する構成とすることができる。
【0009】
上記車体前部構造において、前記ステー本体は、断面が多角形状に形成され、前記パッチは、前記ステー本体の少なくとも1つの角部を跨いで設けられる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バンパビームの湾曲形状に対応して、車両衝突に関する性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態を示す車体前部構造の外観斜視図である。
図2図2は、車体前部構造の一部斜視図である。
図3図3は、車体前部構造の一部平面図である。
図4図4は、図3のA−A断面図である。
図5図5は、車両衝突時におけるステーの変形状態を示す説明図であり、(A)はステーが変形した状態を示し、(B)はサイドフレームが変形した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図5は本発明の一実施形態を示すものであり、図1は車体前部構造の外観斜視図、図2は車体前部構造の一部斜視図、図3は車体前部構造の一部平面図、図4図3のA−A断面図、図5は車両衝突時におけるステーの変形状態を示す説明図である。
【0013】
図1に示すように、車体1は、例えば鋼板をプレス成型したパネル状の部材を集成し、スポット溶接等で接合して構成されている。車体1は、前後方向へ延びる左右一対のサイドフレーム10と、各サイドフレーム10の前方に配置され左右方向へ延びるバンパビーム20と、各サイドフレーム10の前端から前方へ延びバンパビーム20を支持するステー30と、を備えている。
【0014】
また、車体1は、車室とエンジンルームを仕切るトーボード50と、前輪側とエンジンルームを仕切る左右一対のホイールエプロン60と、を備えている。さらに、車体1は、各サイドフレーム10の前端側を連結し左右へ延びるラジエータロアサポート70と、ラジエータロアサポート70の両端側から上方へ延びる左右一対のラジエータパネル80と、ラジエータパネル80の上端を連結し左右へ延びるラジエータアッパサポート90と、を備えている。
【0015】
各サイドフレーム10は、正面視の断面が矩形状の閉断面となるよう形成されている。本実施形態においては、各サイドフレーム10は、インナパネルとアウタパネルを接合して構成されている。また、サイドフレーム10の前端には、サイドフレーム10の本体から外側へ延びるフランジ11が形成される。
【0016】
バンパビーム20は、左右方向について、中央部が各端部よりも前方へ張り出すように、湾曲して形成されている。図1に示すように、バンパビーム20は、側面視の断面が閉断面となるよう形成されている。本実施形態においては、上下方向に並んで2つの閉断面が形成される。
【0017】
図2に示すように、各ステー30は、前後方向へ延びアウタパネル31及びインナパネル32からなるステー本体と、ステー本体31の後端に設けられサイドフレーム10と接続される接続パネル34と、ステー本体31の前端に設けられバンパビーム20に固定される固定ブラケット35と、を有している。ステー本体のアウタパネル31には、パッチ33が設けられる。
【0018】
図4に示すように、ステー本体は断面が多角形状に形成される。ステー本体のアウタパネル31は、水平方向に延びる上面部31aと、上面部31aの左右外端から左右外側へ向かって斜め下方へ延びる第1傾斜面部31bと、第1傾斜面部31bの下端から左右外側へ向かって斜め下方へ延びる第2傾斜面部31cと、第2傾斜面部31cの下端から下方へ延びる鉛直面部31dと、鉛直面部31dの下端から左右内側へ向かって斜め下方へ延びる第3傾斜面部31eと、第3傾斜面部31eの下端から左右内側へ向かって斜め下方へ延びる第4傾斜面部31fと、第4傾斜面部31fの下端から左右内側へ向かって延びる下面部31gと、を有している。第1傾斜面部31bは第2傾斜面部31cよりも水平方向に対する傾きが緩く、第4傾斜面部31fは第3傾斜面部31eよりも水平方向に対する傾きが緩い。また、アウタパネル31は、上面部31aの左右内端から上方へ延びる延在部31hと、延在部31hの上端から左右内側へ延びるフランジ部31iと、を有している。
【0019】
ステー本体のインナパネル32は、水平方向に延びる上面部32hと、上面部32hの左右外端から左右外側へ向かって斜め下方へ延びる第1傾斜面部32aと、第1傾斜面部32aの下端から左右内側へ向かって斜め下方へ延びる第2傾斜面部32bと、第2傾斜面部32bの下端から下方へ延びる鉛直面部32cと、鉛直面部32cの下端から左右内側へ向かって斜め下方へ延びる第3傾斜面部32dと、第3傾斜面部32dの下端から左右外側へ向かって斜め下方へ延びる第4傾斜面部32eと、第4傾斜面部32eの下端から左右外側へ向かって延びる下面部32gと、を有している。アウタパネル31の上面部31aとインナパネル32の上面部32hとがスポット溶接等により固定され、アウタパネル31の下面部31gとインナパネル32の下面部32gとがスポット溶接等により固定される。
【0020】
パッチ33は、ステー本体の後端側における左右外側の壁部に設けられる。これにより、ステー30の後端側は、前後方向の圧縮荷重に対し、左右方向について内側よりも外側の方が抗力が高くなっている。本実施形態においては、パッチ33は、ステー本体のアウタパネル31の後端側に設けられる。パッチ33は、上下方向へ延びる鉛直面部33aと、鉛直面部33aの上端から左右内側へ向かって斜め上方へ延びる第1傾斜面部33bと、鉛直面部33aの下端から左右内側へ向かって斜め下方へ延びる第2傾斜面部33cと、を有している。また、第1傾斜面部33bには円形の孔33dが形成され、第2傾斜面部33cには円形の孔33eが形成される。
【0021】
パッチ33の鉛直面部33aがアウタパネル31の鉛直面部31dと重ねられ、パッチ33の第1傾斜面部33bがアウタパネル31の第2傾斜面部31cと重ねられ、パッチ33の第2傾斜面部33cがアウタパネル31の第3傾斜面部31eと重ねられる。すなわち、パッチ33は、アウタパネル31の第2傾斜面部31cと鉛直面部31dにより形成される角部と、鉛直面部31dと第3傾斜面部31eとにより形成される角部と、を跨いで形成される。
【0022】
接続パネル34は、正面視にてステー本体31よりも大きな四角形状に形成され、サイドフレーム10前端のフランジ11と接続される。接続パネル34とフランジ11は、ボルト12により締結されている。固定ブラケット35は、バンパビーム20の後部に沿う形状とされ、バンパビーム20に溶接等により固定される。
【0023】
以上のように構成された車体前部構造では、バンパビーム20は、ステー30を介してサイドフレーム10と締結部材としての複数のボルト12を利用して着脱自在に固定される。これにより、図5(A)に示すように、軽衝突時にバンパビーム20及びステー30が損傷した場合、バンパビーム20側を新品に交換することで、サイドフレーム10側に何ら影響を与えることなく修理を行うことができる。
【0024】
一方、大衝突時においては、図5(B)に示すように、ステー30が軸方向に圧潰した後に、ステー30の後方に位置するサイドフレーム10が変形する。このとき、バンパビーム20が左右中央側が前方へ突出するよう湾曲して形成されているため、モーメントの作用により、バンパビーム20からサイドフレーム10側への荷重伝達について、左右内側よりも左右外側の方が荷重を伝達し難くなっている。本実施形態においては、ステー本体の後端側にパッチ33が設けられていることで、ステーの後端側では、左右外側の方が前後方向の入力に対して大きな抗力が生じる。これにより、ステー30がある程度潰れた後にサイドフレーム10に対して的確に荷重を伝達することができ、サイドフレーム10に効率良くエネルギーを吸収させることができる。
【0025】
尚、パッチ33は、ステー本体の後端側における左右外側にのみ設けられているので、軽衝突時にステー30の圧潰が阻害されることはない。これにより、軽衝突時のストローク量は十分に確保され、軽衝突の性能が損なわれることはない。
【0026】
また、ステー本体の断面が多角形状に形成され、パッチ33がステー本体の角部を跨いで設けられることから、パッチ33により効率良くステー30を補強することができる。これにより、大衝突時に比較的高い抗力を生じさせることができる。
【0027】
尚、前記実施形態においては、ステー本体の左右外側の壁部にパッチ33を設けたものを示したが、例えば、アウタパネル31の後端側の板厚をインナパネル32の後端側の板厚よりも大きくしたり、アウタパネル31の後端側の材料をインナパネル32の後端側の材料よりも硬くしたりしてもよい。さらには、例えば断面の多角形の角数を変化させるなど、ステー30の後端外側の断面形状を他の部分に対して異なるようにしてもよい。要は、ステー30の後端側が、前後方向の圧縮荷重に対し、左右方向について内側よりも外側の方が抗力が高ければよい。
【0028】
また、前記実施形態においては、パッチ33がステー本体の2つの角部を跨いで設けられるものを示したが、跨ぐ角部の数はいくつであってもよい。
【0029】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0030】
1 車体
10 サイドフレーム
20 バンパビーム
30 ステー
31 アウタパネル
32 インナパネル
33 パッチ
図1
図2
図3
図4
図5