特許第6339417号(P6339417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社泉精器製作所の特許一覧

<>
  • 特許6339417-ロータリー式電気かみそり 図000002
  • 特許6339417-ロータリー式電気かみそり 図000003
  • 特許6339417-ロータリー式電気かみそり 図000004
  • 特許6339417-ロータリー式電気かみそり 図000005
  • 特許6339417-ロータリー式電気かみそり 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339417
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】ロータリー式電気かみそり
(51)【国際特許分類】
   B26B 19/14 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   B26B19/14 E
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-113266(P2014-113266)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-226618(P2015-226618A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】318001739
【氏名又は名称】株式会社泉精器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三村 良幸
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−154467(JP,A)
【文献】 特開平06−238070(JP,A)
【文献】 実開昭52−141490(JP,U)
【文献】 特開昭54−085866(JP,A)
【文献】 米国特許第02365368(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 19/14
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の髭進入口が形成された外刃と、該外刃の下面に摺接しつつ回転する内刃と、を有する刃ユニットを備えるロータリー式電気かみそりであって、
前記内刃は、複数の小刃を有し、
前記小刃は、刃先の径方向中央位置のすくい角の角度が相対的に小さい角度を有し、刃先の径方向外側位置および径方向内側位置のすくい角の角度が相対的に大きい角度を有する形状に形成されていること
を特徴とするロータリー式電気かみそり。
【請求項2】
前記小刃は、刃先の径方向外側位置のすくい角の角度をα、刃先の径方向中央位置のすくい角の角度をβ、刃先の径方向内側位置のすくい角の角度をγ、としたときに、
β<α、且つ、β<γ
となる形状に形成されていること
を特徴とする請求項記載のロータリー式電気かみそり。
【請求項3】
前記小刃は、
30°≦α≦80°、20°≦β≦45°、30°≦γ≦80°
であって、
β<α、且つ、β<γ
となる形状に形成されていることを特徴とする請求項記載のロータリー式電気かみそり。
【請求項4】
前記小刃は、上端面を含む上端部領域において、回転面と平行な断面における回転方向後方側の領域を減じることによって形成される肉薄部を有すること
を特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のロータリー式電気かみそり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリー式電気かみそりに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載された、複数の髭進入口が形成された外刃と、外刃の下面に摺接しつつ回転する内刃とを備えて、髭進入口に進入した髭を切断するロータリー式電気かみそりが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−135991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本願発明者の鋭意研究によって、特許文献1に例示されるような内刃を備えるロータリー式電気かみそりにおいては、内刃(小刃)の刃先のすくい角の角度を鋭角に形成することによって髭の切れ味を良くすることができることが明らかとなった。
【0005】
その一方で、内刃(小刃)の刃先のすくい角の角度を鋭角に形成した場合には、刃先の形状が薄くなり剛性が低下してしまうために、使用(髭剃り)をするにつれて、徐々に刃先が丸まって切れ味が低下してしまうという相反する課題が生じ得ることが明らかとなった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、切れ味の向上を図ることができ、且つ、刃先の丸まりを防止することができるロータリー式電気かみそりを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
開示のロータリー式電気かみそりは、複数の髭進入口が形成された外刃と、該外刃の下面に摺接しつつ回転する内刃と、を有する刃ユニットを備えるロータリー式電気かみそりであって、前記内刃は、複数の小刃を有し、前記小刃は、刃先の径方向中央位置のすくい角の角度が相対的に小さい角度を有し、刃先の径方向外側位置および径方向内側位置のすくい角の角度が相対的に大きい角度を有する形状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、髭剃り時における切れ味の向上を図ることができ、且つ、継時的な刃先の丸まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るロータリー式電気かみそりの例を示す概略図(斜視図)である。
図2図1に示すロータリー式電気かみそりのヘッド部の例を示す概略図(分解斜視図)である。
図3図1に示すロータリー式電気かみそりの内刃の例を示す概略図である。
図4図1に示すロータリー式電気かみそりの内刃の小刃および外刃の一部を示す概略図(側面図)である。
図5図3に示す内刃の小刃の例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係るロータリー式電気かみそり1の例を示す概略図(斜視図)である。また、図2は、ロータリー式電気かみそり1のヘッド部3の例を示す概略図(分解斜視図)である。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0012】
本実施形態に係るロータリー式電気かみそり1は、図1、2に示すように、多数の髭進入口(後述のスリット)22cが貫通形成された外刃22と、当該外刃22の下面に摺接しつつ回転する内刃42とを有し、髭進入口22cに進入した髭を外刃22と内刃42とでカットするロータリー式電気かみそりである。なお、外刃22と内刃42とを備えて構成される刃ユニット6を三組有するロータリー式電気かみそりを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
【0013】
図1において、符号2は本体部であり、略円柱状のケース10を備えている。このケース10の内部には、内刃42を回転駆動するモータ、モータに電力を供給する電池、回転駆動等の制御を行う制御部(いずれも不図示)が収容されている。ケース10の前面には電源のオン・オフ等を行うスイッチボタン16が設けられ、このスイッチボタンの下方には電池の充電残量等を示すLEDランプからなる表示部17が設けられている。
【0014】
図2に示すように、ヘッド部3は、本体部2のケース10の上部に連結されて保持されるヘッドケース32と、このヘッドケース32に上方から被される刃枠30と、ヘッドケース32の内底部に収容された駆動機構(不図示)と、刃枠30に僅かに上下動可能かつ揺動可能に保持された三組の刃ユニット6とを備えている。ここで、各刃ユニット6は、略円盤状の外刃22と、この外刃22の下面(内面)に摺接しながら回転する内刃42とを備えている。また、三組の刃ユニット6は平面視で、三角形となるように配設されている。なお、本実施形態は、前述の通り、刃ユニット6を三組備える場合の例であるが、刃ユニットが三組以外の場合においても基本的な構成は同様に考えればよい。
【0015】
ここで、外刃22は、髭進入口となる多数の放射状のスリット22cが軸方向(すなわち内刃の回転軸の軸方向と同方向)に貫通して形成され、このスリット22cに入った髭を内刃42がカットする構成である。すなわち、外刃22は、上面22aが使用者の肌に接する髭剃り面となり、スリット22cが上面(髭剃り面)22aに開口する構成となる。一例として、上面(髭剃り面)22aは環状の平面に形成されている。また、外刃22は周縁が下方に折曲された形状を有しており、この周縁には外刃リング24が嵌め合わされている。なおこの外刃リング24の内周にはストッパリング26が嵌め込まれて、外刃22を外刃リング24に固定している。
【0016】
一方、内刃42は、内刃保持台44に固定され、この内刃保持台44の下部にモータの出力軸と接続される内刃駆動軸(不図示)の上端が嵌合される凹部が形成されている。この内刃42は外刃リング24に嵌め込まれた内刃受け46により外刃22側に揺動可能に保持され、これらにより三組の独立した刃ユニット6が形成される。
【0017】
以上の構成を備えて、刃ユニット6が組み立てられることによって、外刃22(後述の下面22b)に、内刃42(後述の小刃42A)が当接する状態となる。この状態で、内刃42を回転駆動することによって、髭進入口(スリット)22cに入った髭を内刃42(小刃42A)の刃先でカットすることができる。
【0018】
ここで、内刃42の構成について、図3、4を用いて詳しく説明する。図3は、内刃42の例を示す概略図であって、図3(a)は斜視図、図3(b)は平面図である。また、図4は、内刃42の小刃42Aおよび外刃22の一部を示す拡大図(側面図)である。なお、各図中、内刃42の回転方向を矢印Fの方向として示す。
【0019】
図3、4に示すように、本実施形態に係る内刃42は、金属板の一部を板面42Bに対して起立させた複数の小刃42Aを備えて構成される(図の簡素化のため、一部の小刃のみに符号を記入している)。一例として、小刃42Aは、金属板の板面42Bに対する回転方向前方側の角(起立角)の角度θが、45°≦θ≦135°となるように起立させ、且つ、上端部を回転方向前方側に向けて折曲させて形成されている。
【0020】
本実施形態においては、内刃42はステンレス鋼からなる金属板を用いて、プレス加工による型抜きおよび折曲を行って、一体構造として形成される。このように、内刃42を、簡素な構造で、且つ、より少ない工程で形成することが可能となるため、部品コストおよび組み立てコストの低減を図ることが可能となる。ただし、一体構造に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態に係る小刃42Aは、一例として、一辺が1[mm]程度で他辺が0.5[mm]程度の矩形断面を有する略角柱状であって、長さ(根元から刃先までの長さ)が3[mm]程度に形成されている。ただし、この寸法形状に限定されるものではない。なお、長さをより短くする方が、小刃42Aの剛性を向上させることができ、作動中に撓みや振動が発生することを防止できるため、切れ味が良くなる。
【0022】
また、小刃42Aは、回転方向における前方側の先端に、髭進入口(スリット)22cに進入した髭を切断する刃先42aが形成されている。より詳しくは、小刃42Aにおいて、回転方向における前方側の面42bと、上端面42cとによって規定される上端縁が、刃先42aとなる。
【0023】
本実施形態における小刃42Aの構成例を図5に示す。図5(a)は、図3(b)におけるY部拡大図すなわち小刃42Aの平面視の拡大図である。また、図5(b)は、図5(a)におけるA−A線断面図すなわち小刃42Aの径方向外側位置の断面図(径方向と直交する面による断面図)である。また、図5(c)は、図5(a)におけるB−B線断面図すなわち小刃42Aの径方向中央位置の断面図(径方向と直交する面による断面図)である。図5(d)は、図5(a)におけるC−C線断面図すなわち小刃42Aの径方向内側位置の断面図(径方向と直交する面による断面図)である。図5(a)〜5(d)に示すように、刃先42aの径方向外側位置のすくい角の角度をα、刃先42aの径方向中央位置のすくい角の角度をβ、刃先42aの径方向内側位置のすくい角の角度をγ、とする。
【0024】
本実施形態に係る小刃42Aは、刃先42aのすくい角の角度が径方向の位置によって小さい角度と大きい角度とを有する形状に形成されていることを特徴とする。
【0025】
例えば、小刃42Aは、刃先42aの径方向中央位置のすくい角の角度βが相対的に小さい角度を有する形状に形成されている。これに対して、刃先42aの径方向外側位置のすくい角の角度αが相対的に大きい角度を有する形状に形成されていると共に、刃先42aの径方向内側位置のすくい角の角度γが相対的に大きい角度を有する形状に形成されている。なお、αとγとの関係は、特に限定されるものではなく、いずれが大きくてもよく、あるいは同じ大きさであってもよい。
【0026】
より具体的には、本実施形態に係る小刃42Aは、刃先42aの形状が
β<α、且つ、β<γ
となるように形成されている。なお、前述の通り、αとγとの関係は、
γ≦α、もしくは、α≦γ
のいずれであってもよい。
【0027】
一例として、小刃は、刃先42aの形状が
30°≦α≦80°、20°≦β≦45°、30°≦γ≦80°
をそれぞれ充足するα、β、γであって、
β<α、且つ、β<γ
となるように形成されている。
【0028】
この構成によれば、小刃42Aは、刃先42aにおける相対的に小さいすなわち鋭利な角度のすくい角を有する部位(すなわち刃先42aの径方向中央の部位)を備えて構成されており、当該部位によって髭Xを切断する際に、切れ味が向上する効果が得られる。ただし、当該部位は、刃先42aのすくい角の角度が小さく形成されることによって、刃先42aの形状が相対的に薄くなり剛性が低下してしまう。したがって、使用(髭剃り)をするにつれて、徐々に刃先が丸まって切れ味が低下してしまうという課題が生じ得る。
【0029】
一方、小刃42Aは、刃先42aにおける相対的に大きいすなわち鋭利ではない角度のすくい角を有する部位(すなわち刃先42aの径方向外側の部位および径方向内側の部位)を備えて構成されている。当該部位は、刃先42aのすくい角の角度が大きく形成されることによって、刃先42aの形状が相対的に厚くなり剛性を上げることが可能となる。したがって、使用(髭剃り)をするにつれて、徐々に刃先が丸まって切れ味が低下してしまうことを防止することが可能となる。
【0030】
このように、本実施形態に係る内刃の小刃は、径方向中央位置のすくい角の角度βが小さく、且つ、径方向外側位置および内側位置のすくい角の角度α、γが大きい形状の刃先を備える構成によって、相反する課題の解決が可能となる。すなわち、髭剃り時における切れ味の良さを向上・維持させることができ、且つ、使用を重ねることによって刃先42aの丸まりが生じて切れ味が低下してしまうことを防止できる。
【0031】
また、小刃42Aは、上端面42cを含む上端部領域において、回転面と平行な断面(すなわち、金属板の板面42Bと平行な面による断面)における回転方向後方側の領域を減じることによって形成される肉薄部42dが、回転方向と直交する方向(すなわち、径方向)の一部領域(本実施形態では、径方向外側位置および内側位置)に形成されている。これと対応して、回転面と平行な断面における回転方向後方側の領域を減じない箇所は、肉厚部42eとして、径方向の残りの領域(本実施形態では、径方向中央位置)に形成されることとなる。
【0032】
すなわち、回転方向の寸法において、肉薄部42dは相対的に短く、肉厚部42eは相対的に長い形状を有している。本実施形態においては、上端面42cの形状が回転方向後方側に向かって凸状となる形状に形成されている(図5(a)参照)。なお、肉薄部42dは、一例としてプレス加工によって形成されるが、この加工方法に限定されるものではない。
【0033】
この構成によれば、小刃42Aの上端部領域において、径方向の一部領域に肉薄部42dが形成されることによって、小刃42Aの上端部が研磨されて形成される上端面42cの面積を、起立形成した小刃の上端部を単に回転面と平行な面で切断しただけの場合と比較してより小さい面積に形成することが可能となる。このように、外刃22の下面22bと摺接する小刃42Aの上端面42cの面積をより小さくできるため、摺動抵抗を低減することが可能となる。
【0034】
ここで、径方向の全部領域を肉薄部として形成してしまうと、小刃42Aの上端部の強度が確保できなくなってしまう。これに対して、本実施形態においては、径方向の一部領域に肉薄部42dを形成し、残りの領域に肉厚部42eを形成する構成によって、当該肉厚部42eを補強リブとして作用させることができる。その結果、小刃42Aの上端面42cの面積を小さくしつつも、小刃42Aの上端部の強度を確保することが可能となる。
【0035】
特に、本実施形態においては、小刃42Aの上端部の径方向中央位置の強度を確保することができるため、当該径方向中央位置の刃先42aのすくい角の角度を相対的に小さい角度に形成する構成が実現できる。
【0036】
以上、説明した通り、本発明に係るロータリー式電気かみそりによれば、髭剃り時における切れ味の良さを向上・維持させることが可能となる。その一方で、使用するにつれて徐々に刃先が丸まって切れ味が低下してしまうことの防止が可能となる。このように、相反する課題の解決が可能となる。
【0037】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。特に、外刃と内刃との組合せ(刃ユニット)を三組有するロータリー式電気かみそりを例に挙げて説明を行ったが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
1 ロータリー式電気かみそり
2 本体部
3 ヘッド部
6 刃ユニット
10 ケース
16 スイッチボタン
22 外刃
22a 外刃の上面(髭剃り面)
22b 外刃の下面
22c スリット(髭進入口)
24 外刃リング
26 ストッパリング
30 刃枠
32 ヘッドケース
42 内刃
42A 小刃
42B 金属板の板面
42a 刃先
42b 小刃の回転方向前方側の面
42c 小刃の上端面
42d 肉薄部
42e 肉厚部
44 内刃保持台
46 内刃受け
X 髭
図1
図2
図3
図4
図5