特許第6339439号(P6339439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6339439密閉型二次電池の変形検出センサ、密閉型二次電池、及び、密閉型二次電池の変形検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339439
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】密閉型二次電池の変形検出センサ、密閉型二次電池、及び、密閉型二次電池の変形検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/24 20060101AFI20180528BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   G01B7/24
   H01M10/48 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-155436(P2014-155436)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-31360(P2016-31360A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 武司
(72)【発明者】
【氏名】南方 伸之
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−76265(JP,A)
【文献】 特開2014−98687(JP,A)
【文献】 特開2013−231166(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/251023(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00− 7/34
G01D 5/00− 5/252
G01D 5/39− 5/62
G01L 1/00− 1/26
G01L 5/00− 5/28
G01L 25/00
H01M 2/00− 2/08
H01M 10/42−10/48
H01M 10/52−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉型二次電池の変形検出センサにおいて、
高分子マトリックス層と、検出部とを備え、
前記高分子マトリックス層は、その高分子マトリックス層の変形に応じて外場に変化を与えるフィラーを分散させて含有し、前記検出部は前記外場の変化を検出し、
前記高分子マトリックス層は、前記フィラーとしての磁性フィラーを含有し、
前記検出部は、前記外場としての磁場の変化を検出し、
前記高分子マトリックス層は、前記フィラーに加えてさらに熱伝導性フィラーを含有し、
前記高分子マトリックス層は、厚み方向に前記磁性フィラーが偏在するものであって、厚み方向の二次電池側領域での前記磁性フィラー濃度が、厚み方向の前記検出部側領域に比して高いことを特徴とする密閉型二次電池の変形検出センサ。
【請求項2】
前記熱伝導性フィラーの比重が、前記磁性フィラーの比重よりも低い請求項に記載の密閉型二次電池の変形検出センサ。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラーの平均粒子径が0.5〜50μmである請求項1または2に記載の密閉型二次電池の変形検出センサ。
【請求項4】
請求項1〜いずれか1項に記載の変形検出センサが取り付けられた密閉型二次電池。
【請求項5】
密閉型二次電池の変形検出方法において、
前記密閉型二次電池が有する間隙内に高分子マトリックス層を装着し、
前記高分子マトリックス層は、その高分子マトリックス層の変形に応じて外場に変化を与えるフィラーを分散させて含有し、かつ前記フィラーに加えてさらに熱伝導性フィラーを含有するものであり、
前記高分子マトリックス層の変形に伴う前記外場の変化を検出し、それに基づいて前記密閉型二次電池の変形を検出するものであり、
前記高分子マトリックス層は、前記フィラーとしての磁性フィラーを含有し、
前記高分子マトリックス層の変形に伴う磁場の変化を検出し、
前記高分子マトリックス層は、厚み方向に前記磁性フィラーが偏在するものであって、厚み方向の二次電池側領域での前記磁性フィラー濃度が、厚み方向の前記検出部側領域に比して高いことを特徴とする密閉型二次電池の変形検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型二次電池の変形を検出するセンサと、それが取り付けられた密閉型二次電池と、密閉型二次電池の変形を検出する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池に代表される密閉型二次電池(以下、単に「二次電池」と呼ぶことがある)は、携帯電話やノートパソコンなどのモバイル機器だけでなく、電気自動車やハイブリッド車といった電動車両用の電源としても利用されている。二次電池を構成する単電池(セル)は、正極と負極をそれらの間にセパレータを介して捲回または積層してなる電極群と、その電極群を収容する外装体とを備える。一般には、外装体としてラミネートフィルムや金属缶が用いられ、その内部の密閉空間に電極群が電解液とともに収容される。
【0003】
二次電池は、上述した電動車両用の電源のように高電圧が必要とされる用途において、複数の単電池を含む電池モジュールまたは電池パックの形態で用いられる。電池モジュールでは、直列に接続された複数の単電池が筐体内に収容され、例えば4つの単電池が2並列2直列に、或いは4直列に接続される。また、電池パックでは、直列に接続された複数の電池モジュールに加えて、コントローラなどの諸般の機器が筐体内に収容される。電動車両用の電源に用いられる二次電池では、電池パックの筐体が車載に適した形状に形成されている。
【0004】
かかる二次電池には、過充電などに起因して電解液が分解されると、その分解ガスによる内圧の上昇に伴って単電池が膨らみ、二次電池が変形するという問題がある。その場合、充電電流または放電電流が停止されないと発火を起こし、最悪の結果として二次電池の破裂に至る。したがって、二次電池の破裂を未然に防止するうえでは、充電電流や放電電流を適時に停止できるように、単電池の膨れによる二次電池の変形を高感度に検出することが重要になる。
【0005】
特許文献1には、複数の単電池を有する電池モジュールにおいて、単電池の温度を検知する温度センサを取り付けるために、電池モジュール内にセンサ挿入空間を形成する方法が記載されている。しかし、このような温度センサを利用する手法では、それを取り付けるための空間が別途に設けられることから、二次電池の容積が必要以上に圧迫されてしまう。
【0006】
また、特許文献2には、単電池のケース(外装体の一例)の表面にストレインゲージを接着し、そのケースの膨れに応じたストレインゲージの抵抗値変化を検出することで、二次電池の充電電流または放電電流を減少させる方法が記載されている。しかし、このようなストレインゲージを利用する手法では、特に長期間での使用において、振動によりストレインゲージが位置ずれを起こすなどしてセンサ特性がばらつき、安定性が低下する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−171697号公報
【特許文献2】特開2006−128062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、リチウムイオン二次電池などは特にエネルギー密度が高いため、異常時のみならず通常の充放電時においても発熱する。したがって、発熱に起因した蓄熱を防止する観点から、二次電池の放熱性を向上することが市場において要求されるのが実情であった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、単電池の膨れによる密閉型二次電池の変形を高感度に検出できると共に、放熱性に優れた密閉型二次電池の変形検出センサ、密閉型二次電池、及び、密閉型二次電池の変形検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち本発明は、密閉型二次電池の変形検出センサにおいて、高分子マトリックス層と、検出部とを備え、前記高分子マトリックス層は、その高分子マトリックス層の変形に応じて外場に変化を与えるフィラーを分散させて含有し、前記検出部は前記外場の変化を検出し、前記高分子マトリックス層は、前記フィラーに加えてさらに熱伝導性フィラーを含有することを特徴とする密閉型二次電池の変形検出センサに関する。
【0011】
高分子マトリックス層は、例えば互いに隣り合う単電池の間で、単電池とそれを収容する筐体との間で、挟まれて装着される。あるいは、電池パックに含まれる電池モジュールの筐体とその隣の電池モジュールの筐体との間で、さらには、電池モジュールの筐体と電池パックの筐体との間隙内で、挟まれて装着される。いずれの場合であっても、高分子マトリックス層は圧縮状態で装着されても良い。
【0012】
単電池の膨れにより二次電池が変形を生じると、それに応じて高分子マトリックス層が変形する。検出部は、その高分子マトリックス層の変形に伴う外場の変化を検出する。これにより、二次電池の変形を高感度に検出することができる。上記のように装着された高分子マトリックス層は、二次電池の容積を圧迫しないうえ、振動などによる位置ずれが抑えられることでセンサ特性が安定したものになる。
【0013】
特に本発明に係る密閉型二次電池の変形検出センサを構成する高分子マトリックス層は、その変形に応じて外場に変化を与えるフィラーに加えて、さらに熱伝導性フィラーを含有する。このため、二次電池が発熱しても放熱性に優れる。
【0014】
本発明に係る密閉型二次電池の変形検出センサでは、前記高分子マトリックス層が、前記フィラーとしての磁性フィラーを含有し、前記検出部が、前記外場としての磁場の変化を検出するものが好ましい。かかる構成によれば、高分子マトリックス層の変形に伴う磁場の変化を配線レスで検出することができる。また、感度領域が広いホール素子を検出部として利用できることから、より広範囲にわたって高感度な検出が可能となる。
【0015】
前記密閉型二次電池の変形検出センサにおいて、前記高分子マトリックス層は、厚み方向に前記磁性フィラーが偏在するものであって、厚み方向の二次電池側領域での前記磁性フィラー濃度が、厚み方向の前記検出部側領域に比して高いことが好ましい。かかる構成によれば、単電池の膨れによる密閉型二次電池の変形を、より高感度に検出できる。
【0016】
前記密閉型二次電池の変形検出センサにおいて、前記熱伝導性フィラーの比重が、前記磁性フィラーの比重よりも低いことが好ましく、前記熱伝導性フィラーの平均粒子径が0.5〜50μmであることがより好ましい。かかる構成によれば、磁性フィラーが高分子マトリックス層の厚み方向で一方向に偏在し易くなる。このため、磁性フィラーが多く偏在した側が二次電池側となるように高分子マトリックス層を配置することにより、単電池の膨れによる密閉型二次電池の変形を、より高感度に検出できる。
【0017】
本発明に係る密閉型二次電池は、上述した変形検出センサが取り付けられたものであり、その形態は単一の電池モジュールでもよいが、複数の電池モジュールを含む電池パックであってもよい。かかる密閉型二次電池では、単電池の膨れによる変形が変形検出センサにより高感度に検出される。それでいて、二次電池の容積は変形検出センサによって圧迫されず、そのセンサ特性は安定したものになる。
【0018】
本発明に係る密閉型二次電池の変形検出方法は、密閉型二次電池の変形検出方法において、前記密閉型二次電池が有する間隙内に高分子マトリックス層を装着し、前記高分子マトリックス層は、その高分子マトリックス層の変形に応じて外場に変化を与えるフィラーを分散させて含有し、かつ前記フィラーに加えてさらに熱伝導性フィラーを含有するものであり、前記高分子マトリックス層の変形に伴う前記外場の変化を検出し、それに基づいて前記密閉型二次電池の変形を検出するものである。
【0019】
高分子マトリックス層は、密閉型二次電池が有する間隙内に装着される。単電池の膨れにより二次電池が変形を生じると、それに応じて高分子マトリックス層が変形し、その高分子マトリックス層の変形に伴う外場の変化を検出することにより、二次電池の変形を高感度に検出できる。特に本発明においては、高分子マトリックス層が、その変形に応じて外場に変化を与えるフィラーに加えて、熱伝導性フィラーを含有しているため、単電池の膨れによる密閉型二次電池の変形を、高感度に検出することができるだけでなく、放熱性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電池モジュールの一例を模式的に示す斜視図
図2図1のA−A矢視断面を模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1,2に示した電池モジュール1は、その筐体11の内部に複数の単電池2を有する。本実施形態では、4つの単電池2が直列に(例えば2並列2直列に、または4直列に)接続されている。詳しく図示しないが、単電池2は、正極と負極をそれらの間にセパレータを介して捲回または積層してなる電極群と、その電極群を収容する外装体とを備える。外装体の内部の密閉空間には、電極群が電解液とともに収容されている。単電池2の外装体には、アルミラミネート箔などのラミネートフィルムが用いられるが、これに代えて円筒型または角型の金属缶を使用してもよい。
【0023】
この電池モジュール1は、電動車両用の電源として使用され得るリチウムイオン二次電池であり、車両には電池パックの形態で搭載される。電池パックでは、直列に接続された複数の電池モジュール1が、コントローラなどの諸般の機器と共に筐体内に収容される。電池パックの筐体は、車載に適した形状に、例えば車両の床下形状に合わせた形状に形成される。なお、本発明において、密閉型二次電池は、リチウムイオン電池などの非水系電解液二次電池に限られず、ニッケル水素電池などの水系電解液二次電池であっても構わない。
【0024】
図2に示すように、密閉型二次電池には変形検出センサが取り付けられ、その変形検出センサは高分子マトリックス層3と検出部4とを備えている。高分子マトリックス層3は、単電池2の表面(外装体の外面)に貼り付けられ、その貼付には必要に応じて接着剤や接着テープが用いられる。高分子マトリックス層3はシート状に形成されていて、二次電池における間隙内、例えば単電池2とそれを収容する筐体11との間に配置される。ただし、本発明においては図示は省略するが、互いに隣り合う単電池2の間隙内や、高分子マトリックス層3を折り曲げるようにして、単電池2や筐体11の角部に貼り付けることも可能である。
【0025】
高分子マトリックス層3は、その高分子マトリックス層3の変形に応じて外場に変化を与えるフィラーを分散させて含有する。検出部4は、その外場の変化を検出する。検出部4は、外場の変化を検出可能な程度で高分子マトリックス層3から離して配置され、好ましくは単電池2の膨れによる影響を受けにくい比較的堅固な箇所に貼り付けられる。本実施形態では、筐体11の外面に検出部4を貼り付けているが、これに限られず、筐体11の内面や電池パックの筐体に検出部4を貼り付けても構わない。これらの筐体は、例えば金属またはプラスチックにより形成され、電池モジュールの筐体にはラミネートフィルムが用いられる場合もある。
【0026】
図2で示した高分子マトリックス層3は、単電池2とそれを収容する筐体11との間において、挟まれて圧縮状態で装着されている。その高分子マトリックス層3の非圧縮状態での厚みは、それが配置される間隙G2よりも大きく、高分子マトリックス層3は厚み方向に圧縮されている。
【0027】
単電池2が膨れると、それに応じて高分子マトリックス層3が変形し、その高分子マトリックス層3の変形に伴う外場の変化が検出部4によって検出される。検出部4から出力された検出信号は不図示の制御装置に送られ、設定値以上の外場の変化が検出部4により検出された場合には、その制御装置に接続された不図示のスイッチング回路が通電を遮断し、充電電流または放電電流を停止する。このようにして、単電池2の膨れによる二次電池の変形が高感度に検出され、二次電池の破裂が未然に防止される。この変形検出センサは、二次電池の容積を圧迫せず、位置ずれが抑えられることでセンサ特性が安定する。
【0028】
図2の例では、それぞれ高分子マトリックス層3と検出部4を1つずつ示しているが、二次電池の形状や大きさなどの諸条件に応じて、それらを複数使用してもよい。その際、複数の高分子マトリックス層3を同じ単電池2に貼り付けたり、複数の検出部4によって同じ高分子マトリックス層3の変形に伴う外場の変化を検出するように構成したりしてもよい。
【0029】
本実施形態では、高分子マトリックス層3が上記フィラーとしての磁性フィラーを含有し、検出部4が上記外場としての磁場の変化を検出する。この場合、高分子マトリックス層3は、エラストマー成分からなるマトリックスに磁性フィラーが分散してなる磁性エラストマー層であることが好ましい。
【0030】
磁性フィラーとしては、希土類系、鉄系、コバルト系、ニッケル系、酸化物系などが挙げられるが、より高い磁力が得られる希土類系が好ましい。磁性フィラーの形状は、特に限定されるものではなく、球状、扁平状、針状、柱状および不定形のいずれであってよい。磁性フィラーの平均粒径は、好ましくは0.02〜500μm、より好ましくは0.1〜400μm、更に好ましくは0.5〜300μmである。平均粒径が0.02μmより小さいと、磁性フィラーの磁気特性が低下する傾向にあり、平均粒径が500μmを超えると、磁性エラストマー層の機械的特性が低下して脆くなる傾向にある。
【0031】
磁性フィラーは、着磁後にエラストマー中に導入しても構わないが、エラストマーに導入した後に着磁することが好ましい。エラストマーに導入した後に着磁することで、磁石の極性の制御が容易となり、磁場の検出が容易になる。
【0032】
本発明に係る変形検出センサを構成する高分子マトリックスは、高分子マトリックス層の変形に応じて外場に変化を与えるフィラー、好適には磁性フィラーに加えて、さらに熱伝導性フィラーを含有する点が特徴である。熱伝導性フィラーをさらに含有することにより、高分子マトリックス層の放熱性が向上する。十分な放熱性を高分子マトリックス層に付与するためには、高分子マトリックス層を構成する高分子(エラストマー)成分100重量部に対し、熱伝導性フィラーの量は1〜300重量部であることが好ましく、3〜200重量部であることがより好ましい。また、高分子マトリックス層の放熱性を十分に確保するためには、高分子マトリックス層の熱伝導率を0.5W/mK以上とすることが好ましく、0.6W/mK以上とすることがより好ましい。
【0033】
熱伝導性フィラーとしては、具体的には、例えば、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、マイカ、チタン酸カリウム、酸化鉄、タルクなどの酸化物粒子、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの窒化物粒子、炭化ケイ素などの炭化物粒子、銀、銅、アルミニウムなどの金属粒子、カーボンナノチューブ、カーボンブラックなどの炭素化合物などが挙げられる。
【0034】
高分子マトリックス層の厚み方向で磁性フィラーを一方向に偏在し易くするためには、熱伝導性フィラーの比重は、磁性フィラーの比重よりも低いことが好ましく、磁性フィラーと熱伝導性フィラーとの比重差が2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましく、4以上であることが特に好ましい。同様の観点から、熱伝導性フィラーの平均粒子径は0.3〜300μmであることが好ましく、0.4〜200μmであることがより好ましく、0.5〜50μmであることが特に好ましい。
【0035】
一方、高分子マトリックスとしては、例えばエラストマー成分を使用することができ、エラストマー成分としては、任意のものを使用可能である。エラストマー成分としては、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーまたはそれらの混合物を用いることができる。熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。また、熱硬化性エラストマーとしては、例えばポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系合成ゴム、および天然ゴム等を挙げることができる。このうち好ましいのは熱硬化性エラストマーであり、これは電池の発熱や過負荷に伴う磁性エラストマーのへたりを抑制できるためである。更に好ましくは、ポリウレタンゴム(ポリウレタンエラストマーともいう)またはシリコーンゴム(シリコーンエラストマーともいう)である。
【0036】
ポリウレタンエラストマーは、活性水素含有化合物とイソシアネート成分とを反応させることにより得られる。ポリウレタンエラストマーをエラストマー成分として用いる場合、活性水素含有化合物と磁性フィラーとを混合し、ここにイソシアネート成分を混合させて混合液を得る。また、イソシアネート成分に磁性フィラーを混合し、活性水素含有化合物を混合させることで混合液を得ることも出来る。その混合液を離型処理したモールド内に注型し、その後硬化温度まで加熱して硬化することにより、磁性エラストマーを製造することができる。また、シリコーンエラストマーをエラストマー成分として用いる場合、シリコーンエラストマーの前駆体に磁性フィラーを入れて混合し、型内に入れ、その後加熱して硬化させることにより磁性エラストマーを製造することができる。なお、必要に応じて溶剤を添加してもよい。
【0037】
ポリウレタンエラストマーに使用できるイソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を使用できる。例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートを挙げることができる。これらは1種で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、イソシアネート成分は、ウレタン変性、アロファネート変性、ビウレット変性、及びイソシアヌレート変性等の変性化したものであってもよい。好ましいイソシアネート成分は、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジシソシアネート、より好ましくは2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートである。
【0038】
本発明においては活性水素含有化合物として、ポリウレタンの分野において公知の化合物を使用できる。例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、3−メチル−1,5−ペンタンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いで得られた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオール等の高分子量ポリオールを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
活性水素含有化合物として上述した高分子量ポリオール成分の他に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオール成分、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミン成分を用いてもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。更に、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン類を混合することもできる。好ましい活性水素含有化合物は、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体、3−メチル−1,5−ペンタンアジペート、より好ましくはポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体である。
【0040】
ポリウレタンエラストマーを用いる場合、そのNCO indexは、好ましくは0.3〜1.2、より好ましくは0.35〜1.1、更に好ましく0.4〜1.05である。NCO indexが0.3より小さいと、磁性エラストマーの硬化が不十分になる傾向にあり、NCO indexが1.2より大きいと、弾性率が高くなり、センサ感度が低下する傾向にある。
【0041】
磁性エラストマー中の磁性フィラーの量は、エラストマー成分100重量部に対して、好ましくは1〜450重量部、より好ましくは2〜400重量部である。これが1重量部より少ないと、磁場の変化を検出することが難しくなる傾向にあり、450重量部を超えると、磁性エラストマー自体が脆くなる場合がある。
【0042】
磁場の変化を検出する検出部4には、例えば、磁気抵抗素子、ホール素子、インダクタ、MI素子、フラックスゲートセンサなどを用いることができる。磁気抵抗素子としては、半導体化合物磁気抵抗素子、異方性磁気抵抗素子(AMR)、巨大磁気抵抗素子(GMR)、トンネル磁気抵抗素子(TMR)が挙げられる。このうち好ましいのはホール素子であり、これは広範囲にわたって高い感度を有する検出部4として有用なためである。
【0043】
高分子マトリックス層3の非圧縮状態での厚みは、好ましくは300〜3000μm、より好ましくは400〜2000μm、更に好ましくは500〜1500μmである。上記の厚みが300μmよりも小さいと、所要量のフィラーを添加しようとした際に脆くなってハンドリング性が悪化する傾向にある。一方、上記の厚みが3000μmよりも大きいと、上記の如き間隙内に配置する際に高分子マトリックス層3が過度に圧縮されて変形しにくくなり、センサ感度が低下する場合がある。
【0044】
高分子マトリックス層3は、気泡を含まない無発泡体であっても構わないが、安定性やセンサ感度を高める観点から、更には軽量化の観点から、気泡を含有する発泡体であってもよい。その発泡体には、一般の樹脂フォームを用いることができるが、圧縮永久歪などの特性を考慮すると熱硬化性樹脂フォームを用いることが好ましい。熱硬化性樹脂フォームとしては、ポリウレタン樹脂フォーム、シリコーン樹脂フォームなどが挙げられ、このうちポリウレタン樹脂フォームが好適である。ポリウレタン樹脂フォームには、上掲したイソシアネート成分や活性水素含有化合物を使用できる。
【0045】
ポリウレタン樹脂フォームに用いられる触媒としては、公知の触媒を限定なく使用することができるが、トリエチレンジアミン(1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン)、N,N,N’,N’‐テトラメチルヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等の第3級アミン触媒、オクチル酸錫、オクチル酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス等の金属触媒を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記触媒の市販品として、東ソー社製の「TEDA−L33」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の「NIAX CATALYST A1」、花王社製の「カオーライザー NO.1」、「カオーライザー NO.30P」、エアプロダクツ社製の「DABCO T−9」、東栄化工社製の「BTT−24」、日本化学産業社製の「プキャット25」などが挙げられる。
【0047】
ポリウレタン樹脂フォームに用いられる整泡剤としては、例えば、シリコーン系整泡剤、フッ素系整泡剤など、通常のポリウレタン樹脂フォームの製造に用いられるものを使用することができる。上記シリコーン系整泡剤やフッ素系整泡剤として用いられるシリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤は、分子内に、ポリウレタン系に可溶な部分と、不溶な部分とが存在し、上記不溶な部分がポリウレタン系材料を均一に分散し、ポリウレタン系の表面張力を下げることによって、気泡を発生させやすく、割れにくくするものであり、もちろん、上記表面張力を下げ過ぎると気泡が発生しにくくなる。本発明の樹脂フォームにおいては、例えば、上記シリコーン系界面活性剤を用いる場合、上記不溶な部分としてのジメチルポリシロキサン構造によって、気泡径を小さくしたり、気泡数を多くしたりすることが可能となるのである。
【0048】
上記シリコーン系整泡剤の市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製の「SF−2962」、「SRX 274DL」、「SF−2965」、「SF−2904」、「SF−2908」、「SF−2904」、「L5340」、エボニック・デグサ社製の「テゴスターブ(Tegostab) B8017、B−8465,B−8443」などが挙げられる。また、上記フッ素系整泡剤の市販品としては、例えば、3M社製の「FC430」、「FC4430」、大日本インキ化学工業社製の「FC142D」、「F552」、「F554」、「F558」、「F561」、「R41」などが挙げられる。
【0049】
上記整泡剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは1〜15質量部、より好ましくは2〜12質量部である。整泡剤の配合量が1質量部未満であると発泡が十分ではなく、15質量部を超えるとブリードアウトする可能性がある。
【0050】
高分子マトリックス層3を形成する発泡体の気泡含有率は、20〜80体積%であることが好ましい。気泡含有率が20体積%以上であると、高分子マトリックス層3が柔軟で変形しやすくなり、センサ感度を良好に高められる。また、気泡含有率が80体積%以下であると、高分子マトリックス層3の脆化が抑えられ、ハンドリング性や安定性が高められる。気泡含有率は、JIS Z−8807−1976に準拠して比重測定を行い、この値と無発泡体の比重の値から算出される。
【0051】
高分子マトリックス層3を形成する発泡体の平均気泡径は、好ましくは50〜300μmである。また、その発泡体の平均開口径は、好ましくは15〜100μmである。平均気泡径が50μm未満または平均開口径が15μm未満であると、整泡剤量の増大に起因してセンサ特性の安定性が悪化する傾向にある。また、平均気泡径が300μmを超え、または平均開口径が100μmを超えると、検出対象である単電池などとの接触面積が減少し、安定性が低下する傾向にある。平均気泡径及び平均開口径は、高分子マトリックス層の断面をSEMにより100倍の倍率で観察し、得られた画像について画像解析ソフトを用いて上記断面の任意範囲内に存在する全ての気泡の気泡径、及び全ての連続気泡の開口径を測定し、その平均値から算出される。
【0052】
高分子マトリックス層3を形成する発泡体の独立気泡率は、5〜70%であることが好ましい。これにより、高分子マトリックス層3の圧縮されやすさを確保しつつ、優れた安定性を発揮できる。また、高分子マトリックス層3を形成する発泡体に対するフィラー(本実施形態では磁性フィラー)の体積分率は、1〜30体積%であることが好ましい。
【0053】
上述したポリウレタン樹脂フォームは、磁性フィラーを含有すること以外は、通常のポリウレタン樹脂フォームの製造方法により製造できる。その磁性フィラーを含有するポリウレタン樹脂フォームの製造方法は、例えば以下の工程(i)〜(v)を含む。
(i)ポリイソシアネート成分および活性水素成分からイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成する工程
(ii)該イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、整泡剤、触媒および磁性フィラーを混合、予備撹拌して、非反応性気体雰囲気下で、気泡を取り込むように激しく撹拌する一次撹拌工程
(iii)更に活性水素成分を加えて、二次撹拌して、磁性フィラーを含む気泡分散ウレタン組成物を調製する工程
(iv)該気泡分散ウレタン組成物を所望の形状に成形し、硬化して、磁性フィラーを含むウレタン樹脂フォームを作製する工程
(v)該ウレタン樹脂フォームを着磁して磁性ウレタン樹脂フォームを形成する工程
【0054】
ポリウレタン樹脂フォームの製造方法としては、水などの反応型発泡剤を用いる化学的発泡法が知られているが、上記工程(ii)、(iii)のような、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、整泡剤、触媒および磁性フィラーを含有する混合物と、活性水素成分とを、非反応性気体雰囲気下で機械的撹拌する機械的発泡法を用いることが好ましい。機械的発泡法によれば、化学的発泡法に比べて成形操作が簡便であり、発泡剤として水を用いないので、微細な気泡を有する強靭で反発弾性(復元性)などに優れた成形体が得られる。
【0055】
まず、上記工程(i)のように、ポリイソシアネート成分および活性水素成分からイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成し、上記一次撹拌工程(ii)のように、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、整泡剤、触媒および磁性フィラーを混合、予備撹拌して、非反応性気体雰囲気下で、気泡を取り込むように激しく撹拌し、上記二次撹拌工程(iii)のように、更に該活性水素成分を加えて激しく撹拌して、磁性フィラーを含む気泡分散ウレタン組成物を調製する。上記工程(i)〜(iv)のように、ポリイソシアネート成分、活性水素成分および触媒を含有するポリウレタン樹脂フォームにおいて、予めイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成してからポリウレタン樹脂フォームを形成する方法は当業者に公知であり、製造条件は配合材料によって適宜選択することができる。
【0056】
上記工程(i)の形成条件としては、まず、ポリイソシアネート成分および活性水素成分の配合比率は、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基と活性水素成分中の活性水素基との比(イソシアネート基/活性水素基)が、1.5〜5、好ましくは1.7〜2.3となるように選択する。また、反応温度は60〜120℃が好ましく、反応時間は3〜8時間が好ましい。更に、従来公知のウレタン化触媒、有機触媒、例えば東栄化工株式会社から商品名「BTT−24」で市販されているオクチル酸鉛、東ソー株式会社製の「TEDA−L33」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の「NIAX CATALYST A1」、花王株式会社製の「カオーライザー NO.1」、「エアプロダクツ社製の「DABCO T−9」、などを用いてもよい。上記工程(i)に用いられる装置としては、上記のような条件で上記材料を撹拌混合して反応させることができるものであれば使用でき、通常のポリウレタン製造に用いられるものを使用することができる。
【0057】
上記工程(ii)の一次撹拌を行う方法としては、液状樹脂とフィラーを混合することができる一般的な混合機を用いる方法が挙げられ、例えばホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサなどが挙げられる。
【0058】
上記工程(ii)において、整泡剤をイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー側に加えて撹拌(一次撹拌)し、上記工程(iii)において、更に上記活性水素成分を加えて二次撹拌することによって、反応系内に取り込んだ気泡が抜けにくくなり、効率的な発泡を行うことができるため好ましい。
【0059】
上記工程(ii)における非反応性気体としては可燃性でないものが好ましく、具体的には窒素、酸素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴンなどの希ガス、これらの混合気体が例示され、乾燥して水分を除去した空気の使用が最も好ましい。また、上記一次撹拌および二次撹拌、特に一次撹拌の条件についても、通常の機械的発泡法によるウレタンフォーム製造時の条件を用いることができ、特に限定されないが、撹拌翼または撹拌翼を備えた混合機を用いて、回転数1000〜10000rpmで1〜30分間激しく撹拌する。そのような装置として、例えばホモジナイザー、ディゾルバー、メカニカルフロス発泡機などが挙げられる。
【0060】
上記工程(iv)において、上記気泡分散ウレタン組成物をシート状など所望の形状に成形する方法も特に限定されず、例えば、上記混合液を離型処理したモールド内に注入し、硬化させるバッチ式成形方法、離型処理した面材上に上記気泡分散ウレタン組成物を連続的に供給し硬化させる連続成形方法を用いることができる。また、上記硬化条件も、特に限定されず、60〜200℃で10分間〜24時間が好ましく、硬化温度が高すぎると上記樹脂フォームが熱劣化してしまい機械的強度が悪化し、硬化温度が低すぎると上記樹脂フォームの硬化不良が生じてしまう。また、硬化時間が長すぎると上記樹脂フォームが熱劣化してしまい機械的強度が悪化し、硬化時間が短すぎると上記樹脂フォームの硬化不良が生じてしまう。
【0061】
上記工程(v)において、磁性フィラーの着磁方法は特に限定されず、通常用いられる着磁装置、例えば電子磁気工業株式会社製の「ES−10100−15SH」、株式会社玉川製作所製の「TM−YS4E」などを用いて行うことができる。通常、磁束密度1〜3Tを有する磁場を印加する。磁性フィラーは、着磁後に磁性フィラー分散液を形成する上記工程(ii)において添加してもよいが、途中の工程での磁性フィラーの取り扱い作業性などの観点から、上記工程(v)において着磁することが好ましい。
【0062】
本実施形態では、既述の通り、図2のように互いに隣り合う単電池2の間で、または図3のように単電池2とそれを収容する筐体11との間で挟むようにして高分子マトリックス層3を圧縮状態で装着する。そして、単電池2が膨れて高分子マトリックス層3が変形した場合には、その高分子マトリックス層3の変形に伴う外場の変化を検出し、それに基づいて二次電池の変形を検出する。
【0063】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【0064】
前述の実施形態では、高分子マトリックス層3が、単電池2と筐体11との間隙内で挟まれる例(図2参照)を示したが、これに限定されない。例えば、電池パックに含まれる電池モジュールの筐体とその隣の電池モジュールの筐体との間で、即ち互いに隣り合う電池モジュールの筐体の間隙内で、高分子マトリックス層が挟まれてもよく、特にラミネートフィルム型の電池モジュールにおいて有用である。或いは、電池モジュールの筐体と電池パックの筐体との間隙内で、高分子マトリックス層が挟まれるものでもよい。
【0065】
前述の実施形態では、磁場の変化を利用した例を示したが、電場などの他の外場の変化を利用する構成でもよい。例えば、高分子マトリックス層がフィラーとして金属粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの導電性フィラーを含有し、検出部が外場としての電場の変化(抵抗および誘電率の変化)を検出する構成が考えられる。
【0066】
本発明においては、高分子マトリックス層の柔軟性を損ねない程度に封止材を設けても良い。封止材としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂またはそれらの混合物を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、エチレン・アクリル酸エチルコポリマー、エチレン・酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリブタジエン等を挙げることができる。また、熱硬化性樹脂としては、例えばポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系ゴム、天然ゴム、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
高分子マトリックス層となる磁性ポリウレタンエラストマーの製造には、以下の原料を用いた。
TDI−80:トルエンジイソシアネート(三井化学社製、2,4−体=80%、コスモネートT−80)
ポリオールA:グリセリンを開始剤にプロピレンオキサイドを付加したポリオキシプロピレングリコール、OHV56、官能基数3(旭硝子社製、EX−3030)。
ポリオールB:プロピレングリコールを開始剤にプロピレンオキサイドを付加したポリオキシプロピレングリコール、OHV56、官能基数2(旭硝子社製、EX−2020)。
Nd−Fe−B微粉:MF−15P(平均粒径:133μm, 比重7.5, 愛知製鋼社製)
窒化アルミニウム:WJB(平均粒径:1.5μm, 比重3.3, 東洋アルミニウム社製)
窒化アルミニウム:W15(平均粒径:15μm, 比重3.3, 東洋アルミニウム社製)
銀:Ag−HWQ(平均粒径5μm, 比重10.5, 福田金属箔粉工業社製)
オクチル酸鉛:BTT−24(東栄化工社製)
【0069】
また、プレポリマーには、表1に示すプレポリマーAを用いた。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1
反応容器に、ポリオールA(グリセリンを開始剤にプロピレンオキサイドを付加したポリオキシプロピレングリコール、OH価56、官能基数3、旭硝子社製、EX−3030)42.6重量部と、ポリオールB(グリセリンを開始剤にプロピレンオキサイドを付加したポリオキシプロピレングリコール、OH価56、官能基数2、旭硝子社製、EX−2020)42.6重量部を入れ、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。その後、反応容器内を窒素置換した。次いで、反応容器にトルエンジイソシアネート(三井化学社製、2,4体=80%、コスモネートT−80)14.8重量部を添加して、反応容器内の温度を80℃に保持しながら3時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーA(NCO%=3.58%)を合成した。
【0072】
次に、ポリオールA213.1重量部、オクチル酸鉛(東栄化工社製、BTT−24)0.65重量部およびトルエン62.6重量部の混合液に、Nd−Fe−B微粉(愛知製鋼社製、MF−15P、平均粒径133μm)670.9重量部および窒化アルミニウム(東洋アルミニウム社製、WJB、平均粒径1.5μm)147.6重量部を添加し、フィラー分散液を調製した。このフィラー分散液に減圧脱泡した上記プレポリマーA100.0重量部を添加して、自転・公転ミキサー(シンキー社製)にて混合および脱泡し、磁性フィラーを含有するウレタン組成物を調製した。このウレタン組成物を1.0mmのスペーサーを有する離型処理したPETフィルム上に滴下し、ニップロールにて厚み1.0mmに調整した。その後、室温で5分間静置して偏在処理を施し、80℃で1時間硬化を行って、磁性フィラーを含有するポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂を着磁装置(電子磁気工業株式会社製)にて2.0Tで着磁することにより、磁性ポリウレタン樹脂を得た。配合および製造条件を表2に示す。なお、表2中、「配置」の項目で示した「電池側」および「センサ側」は、それぞれ得られた高分子マトリックス層を使用して密閉型二次電池の変形検出センサを製造した際、磁性フィラーの高濃度面(つまり、厚み方向で高濃度に偏在する領域)が、電池側(二次電池領域)かセンサ側(検出部側領域)のいずれであるかを示す。
【0073】
実施例2〜5、比較例1
表2の配合および製造条件に基づき、実施例1と同様にして磁性ポリウレタン樹脂を得た。
【0074】
(熱伝導率の測定)
熱伝導率は、縦100mm×横100mm×厚さ10mmのサンプルの厚さ方向についてJISA 1412−2に従って熱流計法によって測定した。上記の熱伝導率測定装置は、熱流計(江藤電気製:M55A、2300A)、ラバーヒーター(サミコン230、SBX3030K1S)を組み合わせ作製した装置を用いて性能評価を行った。
【0075】
(フィラー偏在率)
作製した磁性ポリウレタン樹脂の断面(厚み:1.0mm)を、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDS)(SEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製S−3500N、EDS:堀場製作所製EMAX モデル7021−H)を用いて、加速電圧25kV、真空度50Pa、WD15mmの条件で100倍の倍率で観察した。そして、その厚み方向全体と、その断面を厚み方向に2等分した2つの領域に対し、それぞれの元素分析により磁性フィラー固有のFe元素の存在量を求めた。この存在量について、厚み方向全体の領域に対する、検出部とは反対側の領域の比率を算出し、これを磁性フィラー偏在率とした。
また、同様の方法にて磁性ポリウレタン樹脂中の Al 元素(アルミニウム元素)の存在量を求め、この存在量について、厚み方向全体の領域に対する、検出部とは反対側の領域の比率を算出し、これを熱伝導性フィラー偏在率とした。
【0076】
(センサ特性の評価)
作製した磁性ポリウレタン樹脂(サイズ:10mm×10mm)の大きさに切り出し、ステンレス板に両面テープ(積水化学工業社製、ダブルタックテープ#5782)で貼り付けた。この試験片に20mm×20mmの大きさを有する面圧子を用いて圧力を印加し、初期値に対する磁束密度の変化を測定した(試験数はn=5)。表には、歪み量が10%となったときの磁束密度変化を示す。この値が大きいほど、センサとしての感度が高いことを示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2の結果から、実施例1〜5に係る高分子マトリックス層を備える密閉型二次電池の変形検出センサは、二次電池の変形を高感度に検出できると共に、放熱性に優れることがわかる。
【符号の説明】
【0079】
1 電池モジュール
2 単電池
3 高分子マトリックス層
4 検出部
6 容器
11 筐体
図1
図2