【実施例】
【0024】
以下に本発明の実施例を説明する。
【0025】
(実施例1)
以下に示す方法で、Bi、Te、およびSeの3元合金を含む、Bi−Te−Se系の熱電変換材料(試験体)を作製した。
【0026】
(1)BiとTeとの液相合成およびろ過洗浄
塩化ビスマス(BiCl
3)7.876g、および塩化テルル(TeCl
4)9.925gを800mlのエタノールに溶解した原料溶液Aを作製した。次に、還元剤として水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)10.49gを800mlのエタノールに溶解した還元剤溶液Bを作製した。
【0027】
次に、
図1(a)に示すように、原料溶液Aと還元剤溶液Bとを窒素ガス雰囲気下で混合し、塩化ビスマス(BiCl
3)および塩化テルル(TeCl
4)を、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)に反応させて、Bi系ナノ微粒子とTe系ナノ微粒子が合成されたスラリーを得た。得られたスラリーを、
図1(b)に示すようにろ過洗浄した。
【0028】
(2)BiとTeとの合金化
ろ過洗浄後のスラリーをエタノールと混合し、240℃、24時間の条件でソルボサーマル処理を施して、BiとTeとを2元合金に合金化した。その後、これをエタノールでろ過洗浄し、窒素気流下で乾燥した。これによりBiとTeの2元合金からなる2元合金粉末(乾燥粉末)を得た。
【0029】
(3)3元合金粉末の作製
BiとTeの2元合金からなる2元合金粉末20gに対して、SeからなるSe粉末0.138gを混合(導入)し、400℃、10時間の条件で熱処理を行い、Bi、TeおよびSeが合金化したBi、Te、およびSeの3元合金からなる3元合金粉末を得た。
【0030】
(4)3元合金粉末(熱電変換材料の粉末)の焼結
3元合金粉末を成形型で成形後、460℃、10分の条件で放電プラズマ焼結を行い、Bi、Te、およびSeの3元合金Bi
2(Te,Se)
3である熱電変換材料の試験体を得た。なお、実施例1では、上述した(1)〜(4)の工程を6回実施、6つの試験体を作製した。
【0031】
(比較例1)
Bi、Te、およびSeの3元合金を含む、Bi−Te−Se系の熱電変換材料(試験体)を作製した。実施例1と相違する点は、上述した(1)に示す工程で、塩化ビスマス(BiCl
3)7.876g、塩化テルル(TeCl
4)9.925g、および塩化セレン(SeCl
4)7.876gを800mlのエタノールに溶解した原料溶液を作製した点である。実施例1と同様の還元剤溶液を用いて、Bi,Te,およびSeを還元し、Bi系ナノ微粒子、Te系ナノ微粒子、およびSeナノ微粒子が合成されたスラリーを得た。
【0032】
そして、スラリーをろ過洗浄後、上述した(2)で示したソルボサーマル処理を行って、Bi、TeおよびSeが合金化したBi、Te、およびSeの3元合金からなる3元合金粉末を作製後、上述した(3)に示す工程は行わず、上述した(4)に示す焼結を行い、熱電変換材料の試験体を得た。なお、比較例1も、同じ工程を6回実施し、6つの試験体を作製した。
【0033】
<熱起電力の測定>
実施例1に係る6つの試験体、および、比較例1に係る6つの試験体の熱起電力を、熱電特性評価装置(ZEM−3:アルバック理工株式会社製)測定した。この結果を
図2に示す。
図2は、実施例1および比較例1に係る熱電変換材料(試験体)の熱起電力の測定結果を示したグラフである。なお、
図2は、測定した熱起電力の値(測定値)を正値に変換して示した。
【0034】
<結果1>
実施例1に係る試験体(熱電変換材料)の熱起電力は、比較例1のものよりも大きかった。これは、実施例1に係る試験体(熱電変換材料)は、アンチサイト欠陥および原子空孔が、比較例1のものよりも少ないことが起因していると考えられる。すなわち、実施例1に係る試験体(熱電変換材料)は、BiとTeとを2元合金に合金化した後、この2元合金に、Seを導入し、Bi、Te、およびSeの3元合金に合金化したので、比較例1の如くBi、Te、およびSeを同時に3元合金に合金化するのに比べて、アンチサイト欠陥および原子空孔が、生成され難かったと考えられる。
【0035】
(実施例2〜4)
実施例1と同じように、試験体(熱電変換材料)を作製した。実施例1と相違する点は、(3)に示す熱処理条件を、実施例2では300℃、48時間とし、実施例3では370℃、48時間とし、実施例4では470℃、48時間とした点である。
【0036】
(比較例2、3)
実施例1と同じように、試験体(熱電変換材料)を作製した。実施例1と相違する点は、(3)に示す熱処理条件を、比較例2では270℃、48時間、比較例3では、570℃、48時間とした点である。
【0037】
実施例2〜4および比較例2、3に係る試験体(熱電変換材料)に対して、実施例1と同様の方法で熱起電力を測定した。この結果を
図3に示す。なお、
図3では、
図2とは異なり、熱起電力の値を負の値(測定値そのもの)で示した。なお、比較例1(従来)に相当する熱起電力の範囲も、
図3に合わせて示した。
【0038】
<結果2>
比較例2および3の熱起電力(大きさ)は、実施例2〜4の如く、上昇しなかった。比較例2の如く熱処理温度が270℃ではその温度が低すぎるため、Seが、BiとTeの2元合金に十分拡散しないので、Bi、TeおよびSeの3元合金への合金化が不十分であり、熱起電力が上昇しなかったと考えられる。
【0039】
一方、比較例3の如く、熱処理温度が570℃ではその温度が高いため、合金化時にBi
2Te
3合金の融点(588℃)付近まで過熱されてしまったため、熱起電力が上昇しなかったと考えられる。
【0040】
従って、2元合金粉末に対してSeを導入し、熱処理を行う際には、実施例2〜4の熱処理条件から、300℃〜470℃の熱処理温度で、熱電変換材料の熱起電力が上昇すると考えられる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。