特許第6339611号(P6339611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6339611クレーン装置のワイヤロープ絡まり防止構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339611
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】クレーン装置のワイヤロープ絡まり防止構造
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/00 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   B66C13/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-36888(P2016-36888)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-154827(P2017-154827A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2017年12月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 真輔
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭48−22739(JP,B1)
【文献】 特公昭45−11858(JP,B1)
【文献】 実公平5−6320(JP,Y2)
【文献】 実用新案登録第2556243(JP,Y2)
【文献】 実開平5−30082(JP,U)
【文献】 英国特許出願公開第2519997(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00
B66D 1/38
B66D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインチと、ウインチに巻き掛けられて先端側が所定位置から垂下されるワイヤロープと、ワイヤロープに吊り下げられるフックブロックと、所定位置側及びフックブロック側の少なくともフックブロック側に設けられ、所定位置側及びフックブロック側の一方から他方に向かって延びるワイヤロープを他方から一方に向かって延びるように向きを変えるシーブと、を備え、所定位置から垂下されたワイヤロープをシーブに掛け回すとともに、ワイヤロープの端部を所定位置側またはフックブロック側に固定し、ウインチによるワイヤロープの繰り出し動作及び巻き上げ動作を行うことでフックブロックを上下方向に移動させるクレーン装置において、
所定位置とフックブロックとの間に位置するワイヤロープにおける上下方向に延びる部分である3以上の上下延伸部の互いの間隔を保持する間隔保持部材を備え、
間隔保持部材は、
フックブロックを上下方向の一方に移動させる際に、ワイヤロープが上下方向の一方に向かって移動する上下延伸部に接して転動する第1シーブと、
フックブロックを上下方向の一方に移動させる際に、上下方向の他方に向かってワイヤロープが移動する上下延伸部、または、ワイヤロープが移動しない上下延伸部に接して転動する第2シーブと、
第1シーブ及び第2シーブが接する上下延伸部以外の上下延伸部を案内するガイドローラと、を有し、
第1シーブ及び第2シーブを互いに連動させることで、所定位置とフックブロックとの間隔の変化に応じて、所定位置とフックブロックとの間を上下方向に移動する
ことを特徴とするクレーン装置のワイヤロープ絡まり防止構造。
【請求項2】
第1シーブ及び第2シーブは、互いに異なる径方向寸法を有し、それぞれの回転中心が軸方向に重なる位置で互いに固定されることで連動する
ことを特徴とする請求項に記載のクレーン装置のワイヤロープ絡まり防止構造。
【請求項3】
第1シーブ及び第2シーブは、動力伝達部材を介して互いが連結されることで連動する
ことを特徴とする請求項に記載のクレーン装置のワイヤロープ絡まり防止構造。
【請求項4】
間隔保持部材は、上下方向に移動するフックブロックと所定位置との中間部に位置する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のクレーン装置のワイヤロープ絡まり防止構造。
【請求項5】
間隔保持部材には、クレーン装置による作業の際に使用される機器が取り付けられている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のクレーン装置のワイヤロープ絡まり防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば移動式クレーン等に適用されるクレーン装置のワイヤロープ絡まり防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のクレーン装置は、ブームと、ウインチと、ウインチに巻き掛けられると共にブームの先端部から垂下されるワイヤロープと、ワイヤロープに吊り下げられるフックブロックと、を備えたものが知られている。
【0003】
前記クレーン装置では、ブームの先端部及びフックブロックの少なくともフックブロックに、ブームの先端部及びフックブロックの一方から他方に向かって延びるワイヤロープを他方から一方に向かって延びるように向きを変えるためのシーブを設け、ブームの先端部から垂下されたワイヤロープをシーブに掛け回すとともに、ワイヤロープの端部をブームの先端部またはフックブロックに固定している。
【0004】
前記クレーン装置では、ウインチによるワイヤロープの繰り出し動作及び巻き上げ動作を行うと、動滑車の原理によってフックブロックが上下方向に移動する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−40289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記クレーン装置では、ワイヤロープにおけるブームの先端部とフックブロックとの間を上下方向に延びる部分である上下延伸部が、ブームの先端部とフックブロックとの間に複数構成される。
【0007】
ワイヤロープは、複数の硬鋼線を撚り合わせることによって形成されているため、引張力が作用すると撚り戻りが生じて、引張力が作用していない状態に対して捩じれが生じる。したがって、前記クレーン装置では、フックブロックに荷物を吊り下げた状態で、フックブロックとブームの先端部との間隔が大きくなると、各上下延伸部にそれぞれ撚り戻りが生じることで、複数の上下延伸部が互いに絡み付く状態が発生するおそれがある。複数の上下延伸部が互いに絡み付く状態は、上下延伸部の上下方向の中間部に発生しやすい。
【0008】
本発明の目的とするところは、荷物を吊り下げたフックブロックとブームの先端部との間隔が大きい場合においても複数の上下延伸部が互いに絡み付くことを防止することが可能なクレーン装置のワイヤロープ絡まり防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、ウインチと、ウインチに巻き掛けられて先端側が所定位置から垂下されるワイヤロープと、ワイヤロープに吊り下げられるフックブロックと、所定位置側及びフックブロック側の少なくともフックブロック側に設けられ、所定位置側及びフックブロック側の一方から他方に向かって延びるワイヤロープを他方から一方に向かって延びるように向きを変えるシーブと、を備え、所定位置から垂下されたワイヤロープをシーブに掛け回すとともに、ワイヤロープの端部を所定位置側またはフックブロック側に固定し、ウインチによるワイヤロープの繰り出し動作及び巻き上げ動作を行うことでフックブロックを上下方向に移動させるクレーン装置において、所定位置とフックブロックとの間に位置するワイヤロープにおける上下方向に延びる部分である3以上の上下延伸部の互いの間隔を保持する間隔保持部材を備え、間隔保持部材は、フックブロックを上下方向の一方に移動させる際に、ワイヤロープが上下方向の一方に向かって移動する上下延伸部に接して転動する第1シーブと、フックブロックを上下方向の一方に移動させる際に、上下方向の他方に向かってワイヤロープが移動する上下延伸部、または、ワイヤロープが移動しない上下延伸部に接して転動する第2シーブと、第1シーブ及び第2シーブが接する上下延伸部以外の上下延伸部を案内するガイドローラと、を有し、第1シーブ及び第2シーブを互いに連動させることで、所定位置とフックブロックとの間隔の変化に応じて、所定位置とフックブロックとの間を上下方向に移動する。
【0010】
これにより、所定位置とフックブロックとの間隔が変化した場合においても、間隔保持部材を常に所定位置とフックブロックとの中間部側に位置させることが可能となることから、複数の上下延伸部の上下方向の中間部の互いの間隔が間隔保持部材によって保持されることで、複数の上下延伸部の上下方向にわたって互いの間隔が保持される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の上下延伸部の上下方向の中間部の互いの間隔を間隔保持部材によって保持することで、複数の上下延伸部の上下方向にわたって互いの間隔を保持することができるので、荷物を吊り下げたフックブロックとブームの先端部との間隔が大きい場合においても、複数の上下延伸部が互いに絡み付くことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態を示す移動式クレーンの側面図である。
図2】ワイヤロープ絡まり防止構造を説明する図である。
図3】間隔保持部材の構成を説明する図である。
図4】間隔保持部材の動作を説明する図である。
図5】本発明の第2実施形態を示す間隔保持部材の構成を示す図である。
図6】間隔保持部材の動作を説明する図である。
図7】間隔保持部材のその他の例を示す図である。
図8】間隔保持部材のその他の例を示す図である。
図9】間隔保持部材のその他の例を示すものであり、(a)は間隔保持部材を上方から見た図、(b)は間隔保持部材を側方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図4は、本発明の第1実施形態を示すものである。
【0014】
本発明のワイヤロープ絡まり防止構造を備えた移動式クレーン1は、図1に示すように、一般の道路や作業エリア内を走行するための車体10と、クレーン作業を行うためのクレーン装置20と、車体10の走行及びクレーン装置20によるクレーン作業の操作を行うためのキャブ30と、を備えている。クレーン装置20及びキャブ30は、車体10に対して水平方向に旋回可能な旋回台40に支持され、旋回台40の幅方向一方にクレーン装置20が配置され、幅方向他方にキャブ30が配置されている。
【0015】
車体10は、前側及び後側の幅方向両側に設けられた車輪11と、前側の車輪11の前方及び後側の車輪11の後方に設けられたアウトリガ12と、を備えている。車体10は、エンジンの駆動力によって車輪11を回転させることで走行する。
【0016】
クレーン装置20は、車体10に対して起伏自在に設けられると共に伸縮自在な伸縮ブーム21と、伸縮ブーム21に沿って延びると共に伸縮ブーム21の先端部から垂下されるワイヤロープ22と、ワイヤロープ22の巻き取り及び繰り出しを行うウインチ23と、伸縮ブーム21の先端部から垂下されるワイヤロープ22に吊り下げられるフックブロック24と、を有している。
【0017】
伸縮ブーム21は、筒状に形成された複数のブーム部材21aからなり、最先端側を除くブーム部材21aの内部に、それぞれ先端側に隣り合うブーム部材21aが収納されている。伸縮ブーム21は、最先端側を除くブーム部材21aに対してそれぞれ先端側に隣り合うブーム部材21aが移動自在に構成され、図示しない油圧式の伸縮シリンダによって最基端側を除くブーム部材21aを移動させることにより伸縮動作を行う。また、最基端側のブーム部材21aは、基端部が旋回台40に上下方向に回動自在に連結されている。最基端側のブーム部材21aの伸長方向の略中央部と旋回台40との間には、図示しない油圧式の起伏シリンダが連結されており、起伏シリンダの伸縮動作によって伸縮ブーム21が起伏動作を行う。
【0018】
また、最先端側のブーム部材21aの先端部には、ワイヤロープ22が垂下される所定位置としてのブームヘッド21bが設けられている。伸縮ブーム21の伸縮する方向を水平方向に向けた状態におけるブームヘッド21bの上側には、伸縮ブーム21の上面に沿って延びるワイヤロープ22を下方に向けて案内するためのガイドシーブ21cが設けられている。また、ブームヘッド21bの下側には、ブームヘッド21bとフックブロック24との間でワイヤロープ22を掛け回すためのトップシーブ21dが回転軸をブームヘッド21bの幅方向に向けて配置されている。
【0019】
ワイヤロープ22は、硬鋼線を撚って構成した複数のストランドを、心綱を中心に撚り合わせたものである。ワイヤロープ22は、引張力が作用すると、撚り戻りが生じることにより、引張力が作用しない状態に対して捩じれが発生する。
【0020】
ウインチ23は、軸方向の両端側にフランジが形成されたウインチドラム23aを有し、ウインチドラム23aにワイヤロープ22が巻き掛けられている。ウインチドラム23aは、旋回台40に回転自在に支持されており、図示しない油圧式のウインチモータによってワイヤロープ22の巻き取り動作及び繰り出し動作を行う。
【0021】
フックブロック24は、図2に示すように、一対の側板24aと、一対の側板24aの下部に設けられたフック24bと、一対の側板24aの間に支軸を介して回転自在に支持されたフックシーブ24cと、を有している。
【0022】
以上のように構成された移動式クレーン1では、ブームヘッド21bとフックブロック24との間におけるワイヤロープ22の巻き掛け方によって、ワイヤロープ22の巻き上げ速度に対するフックブロック24の移動速度、ワイヤロープ22の巻き上げ量に対するフックブロック24の移動量、フックブロック24及び吊荷を持ち上げるために必要なワイヤロープ22の引張力、が変化する。
【0023】
例えば、図2に示すように、ガイドシーブ21cから下方に延びるワイヤロープ22を、フックシーブ24cで折り返して端部をブームヘッド21bに固定する2本掛けの状態では、ワイヤロープ22の巻き上げ速度に対するフックブロック24の移動速度、ワイヤロープ22の巻き上げ量に対するフックブロック24の移動量、フックブロック24及び吊荷を持ち上げるために必要なワイヤロープ22の引張力、がそれぞれ一本掛けの場合と比較して2分の1となる。
【0024】
また、ガイドシーブ21cから下方に延びるワイヤロープ22を、フックシーブ24c、トップシーブ21dの順に折り返して端部をフックブロック24に固定する3本掛けの状態では、フックブロック24の移動速度及び移動量、ワイヤロープ22の引張力、がそれぞれ一本掛けの場合と比較して3分の1となる。
【0025】
さらに、ガイドシーブ21cから下方に延びるワイヤロープ22を、フックシーブ24c、トップシーブ21d、フックシーブ24cの順に折り返して端部をブームヘッド21bに固定する4本掛けの状態では、フックブロック24の移動速度及び移動量、ワイヤロープ22の引張力、がそれぞれ一本掛けの場合と比較して4分の1となる。
【0026】
このように、ブームヘッド21bとフックブロック24との間におけるワイヤロープ22の掛け数を多くすることによって、ワイヤロープ22の巻き上げ速度に対するフックブロック24の移動速度が小さくなり、ワイヤロープ22の巻き上げ量に対するフックブロック24の移動量が小さくなり、フックブロック24及び吊荷を持ち上げるために必要なワイヤロープ22の引張力が小さくなる。
【0027】
また、ブームヘッド21bとフックブロック24との間におけるワイヤロープ22の掛け数が2本以上の状態において、ブームヘッド21bとフックブロック24との間に位置するワイヤロープ22には、図2に示すように、ブームヘッド21bとフックブロック24との間を上下方向に延びる部分である上下延伸部22aが互いに間隔をおいて複数構成される。
【0028】
ワイヤロープ22の掛け数が2本以上の状態では、ワイヤロープ22の各上下延伸部22aに対してフックブロック24及び吊荷の重さが引張力として作用すると、各上下延伸部22aに撚り戻り生じて、複数の上下延伸部22a同士が絡み付く挙動が発生する場合がある。
【0029】
そこで、ブームヘッド21bとフックブロック24との間に位置するワイヤロープ22には、図2に示すように、複数の上下延伸部22aの互いの間隔を保持することで、ワイヤロープ22の上下延伸部22a同士の絡み付きを防止するための間隔保持部材50が設けられている。
【0030】
間隔保持部材50は、図2及び図3に示すように、フックブロック24を上下方向の一方に向かって移動させる際に、ワイヤロープ22が上下方向の一方に向かって移動する上下延伸部22aに接して転動する第1シーブ51と、ブームヘッド21bまたはフックブロック24に固定されたワイヤロープ22の端部を含む移動しない上下延伸部22aに接して転動する第2シーブ52と、を有している。
【0031】
第1シーブ51は、図3に示すように、所定の第1ピッチ円直径D1を有している。第1シーブ51は、外周部の溝に接したワイヤロープ22を外側から押さえるための第1ワイヤ押さえローラ51aを有している。第1シーブ51は、第1ワイヤ押さえローラ51aによって、ワイヤロープ22に対してずれや滑りを生じることなく転動可能となっている。
【0032】
第2シーブ52は、図3に示すように、第1ピッチ円直径D1よりも小さい第2ピッチ円直径D2を有している。第2シーブ52は、外周部の溝に接したワイヤロープ22を外側から押さえるための第2ワイヤ押さえローラ52aを有している。第2シーブ52は、第2ワイヤ押さえローラ52aによって、ワイヤロープ22に対してずれや滑りを生じることなく転動可能となっている。また、第2シーブ52は、回転軸が第1シーブ51の回転軸と軸方向に重なる位置で第1シーブ51に固定されており、第1シーブ51と共に回転するようになっている。
【0033】
第1及び第2ワイヤ押さえローラ51a,52aは、第1シーブ51及び第2シーブ52の回転軸に回転自在に支持されたブラケット53に固定されている。
【0034】
ブラケット53には、クレーン作業の際に使用される機器として、フックブロック24を上方から照らすライト53aが設けられている。
【0035】
以上のように構成された移動式クレーン1のワイヤロープ絡まり防止構造において、ブームヘッド21bとフックブロック24との間におけるワイヤロープ22の掛け数が2本である場合の間隔保持部材50の動作を説明する。掛け数が2本の場合には、第2ピッチ円直径D2は、第1ピッチ円直径D1の2分の1となる。
【0036】
ウインチ23に巻き掛けられたワイヤロープ22の繰り出し又は巻き上げを所定の速度Vで行うと、フックブロック24は、図4に示すように、ワイヤロープ22の速度Vの2分の1の速度(V/2)で上下方向に移動する。
【0037】
このとき、間隔保持部材50において、第1シーブ51は、ワイヤロープ22が上下方向に移動する一方の上下延伸部22aに接している。このため、第1シーブ51は、ワイヤロープ22の速度Vの速さの回転力を受ける。一方、第2シーブ52は、上端部がブームヘッド21bに固定された移動しない他方の上下延伸部22aに接している。このため、第2シーブ52は、第1シーブ51と共に回転し、他方の上下延伸部22aに沿って上下方向に移動する。ここで、第2シーブ52は、第1シーブ51と同一の角速度で回転する。このため、仮に、第2ピッチ円直径D2が第1シーブ51の第1ピッチ円直径D1と同一の場合に、第1シーブ51及び第2シーブ52は、ワイヤロープ22の速度Vの2分の1の速度(V/2)で他方の上下延伸部22aに沿って移動する。しかし、第2シーブ52の第2ピッチ円直径D2は、第1シーブ51の第1ピッチ円直径D1の2分の1であるため、間隔保持部材50は、図4に示すように、ワイヤロープ22の速度Vの4分の1の速度(V/4)で他方の上下延伸部22aに沿って移動する。即ち、間隔保持部材50は、フックブロック24の上下方向に移動する速度(V/2)の2分の1の速度(V/4)で上下方向に移動する。これにより、間隔保持部材50は、フックブロック24が上下方向に移動する際に、ブームヘッド21bとフックブロック24との中間部に常に位置することとなる。したがって、間隔保持部材50は、ブームヘッド21bとフックブロック24との間の距離にかかわらず、複数の上下延伸部22aの上下方向の中間部において互いの間隔を保持するため、複数の上下延伸部22a同士の絡み付きの発生が抑制される。
【0038】
このように、本実施形態のワイヤロープ絡まり防止構造によれば、ワイヤロープ22の複数の上下延伸部22aの間隔を保持するための間隔保持部材50を備え、間隔保持部材50が、ブームヘッド21bとフックブロック24との間隔の変化に応じて、ブームヘッド21bとフックブロック24との間を上下方向に移動する。
【0039】
これにより、複数の上下延伸部22aの上下方向の中間部の互いの間隔を間隔保持部材50によって保持することで、複数の上下延伸部22aの上下方向にわたって互いの間隔を保持することができるので、荷物を吊り下げたフックブロック24とブームヘッド21bとの間隔が大きい場合においても、複数の上下延伸部22aが互いに絡み付くことを防止することが可能となる。
【0040】
また、間隔保持部材50は、フックブロック24を上下方向の一方に移動させる際に、ワイヤロープ22が上下方向の一方に向かって移動する上下延伸部22aに接して転動する第1シーブ51と、フックブロック24を上下方向の一方に移動させる際に、ワイヤロープ22が移動しない上下延伸部22aに接して転動する第2シーブ52と、を有し、第1シーブ51及び第2シーブ52を互いに連動させることで、ブームヘッド21bとフックブロック24との間を上下方向に移動する。
【0041】
これにより、ウインチ23によるワイヤロープ22の繰り出し動作及び巻き上げ動作に連動させて間隔保持部材50を移動させることができるので、専用の動力源を必要とすることなく間隔保持部材50を移動させることができ、製造コスト及び重量の低減を図ることが可能となる。
【0042】
また、第1シーブ51及び第2シーブ52は、互いに異なる第1ピッチ円直径D1及び第2ピッチ円直径D2を有し、それぞれの回転中心が軸方向に重なる位置で互いに固定されることで連動する。
【0043】
これにより、間隔保持部材50を移動させる機構を簡単な構成とすることができるので、製造コスト及び重量の低減を図ることが可能となる。
【0044】
また、間隔保持部材50は、上下方向に移動するフックブロック24とブームヘッド21bとの中間部に位置する。
【0045】
これにより、絡み付きが生じやすいフックブロック24とブームヘッド21bとの中間部に位置する複数の上下延伸部22aの互い間隔を保持することができるので、ワイヤロープ22の絡み付きを確実に防止することが可能となる。
【0046】
また、間隔保持部材50には、フックブロック24を上方から照らすライト53aが取り付けられている。
【0047】
これにより、クレーン作業の際に使用される機器を、専用の部材を必要とすることなく、ブームヘッド21bとフックブロック24との間に設置することが可能となるので、設置コストを抑えて、クレーン作業時の安全性及び作業効率を向上させることが可能となる。
【0048】
図5及び図6は、本発明の第2実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0049】
本実施形態の間隔保持部材50は、図5及び図6に示すように、ワイヤロープ22の掛け数を4本以上に設定した場合に、第1シーブ51を、ワイヤロープ22がフックブロック24の移動する方向に向かって移動する上下延伸部22aに当接させ、第2シーブ52を、ワイヤロープ22の移動する方向と反対の方向に向かって移動する上下延伸部22aに当接させている。
【0050】
以上のように構成された移動式クレーン1のワイヤロープ絡まり防止構造において、ワイヤロープ22の掛け数が4本の場合における間隔保持部材50の動作を説明する。ワイヤロープ22の掛け数が4本の場合には、第2シーブ52の第2ピッチ円直径D2は、第1ピッチ円直径D1の3分の5となる。
【0051】
ウインチ23に巻き掛けられたワイヤロープ22の繰り出し又は巻き上げを所定の速度Vで行うと、4本掛けでワイヤロープ22に吊り下げられたフックブロック24は、図6に示すように、ワイヤロープ22の速度Vの4分の1の速度(V/4)で上下方向に移動する。
【0052】
このとき、間隔保持部材50において、第1シーブ51は、フックブロック24が移動する方向に移動する上下延伸部22aに接している。このため、第1シーブ51は、ワイヤロープ22の速度Vの速さの回転力を受ける。一方、第2シーブ52は、フックブロック24が移動する方向と反対の方向に移動する上下延伸部22aに接している。このため、第2シーブ52は、第1シーブ51が受ける回転方向と反対方向に、ワイヤロープ22の速度Vの速さの回転力を受ける。ここで、第2シーブ52は、第1シーブ51と一体に構成され、第1シーブ51と同一の角速度で回転する。このため、仮に、第2ピッチ円直径D2が第1シーブ51の第1ピッチ円直径D1と同一の場合に、第1シーブ51及び第2シーブ52は、第1シーブ51が接する上下延伸部22aと第2シーブが接する上下延伸部22aとの間で上下方向に移動することなく回転する。しかし、第2シーブ52の第2ピッチ円直径D2は、第1シーブ51の第1ピッチ円直径D1の3分の5であるため、第1シーブ51に対して周長が大きい第2シーブ52がワイヤロープ22に接しながら転動する方向に間隔保持部材50が移動する。これにより、間隔保持部材50は、フックブロック24が移動する方向に向かってワイヤロープ22の速度Vの8分の1の速度(V/8)で移動する。即ち、間隔保持部材50は、フックブロック24の上下方向に移動する速度(V/4)の2分の1の速度(V/8)で上下方向に移動する。これにより、間隔保持部材50は、フックブロック24が上下方向に移動する際に、ブームヘッド21bとフックブロック24との中間部に常に位置することとなる。したがって、間隔保持部材50は、ブームヘッド21bとフックブロック24との間の距離にかかわらず、複数の上下延伸部22aの上下方向の中間部において互いの間隔を保持するため、複数の上下延伸部22a同士の絡み付きの発生が抑制される。
【0053】
このように、本実施形態のワイヤロープ絡まり防止構造によれば、前記実施形態と同様に、複数の上下延伸部22aの上下方向の中間部の互いの間隔を間隔保持部材50によって保持することで、複数の上下延伸部22aの上下方向にわたって互いの間隔を保持することができるので、荷物を吊り下げたフックブロック24とブームヘッド21bとの間隔が大きい場合においても、複数の上下延伸部22aが互いに絡み付くことを防止することが可能となる。
【0054】
また、間隔保持部材50は、フックブロック24を上下方向の一方に移動させる際に、ワイヤロープ22が上下方向の一方に向かって移動する上下延伸部22aに接して転動する第1シーブ51と、フックブロック24を上下方向の一方に移動させる際に、上下方向の他方に向かってワイヤロープ22が移動する上下延伸部22aに接して転動する第2シーブ52と、を有し、第1シーブ51及び第2シーブ52を互いに連動させることで、ブームヘッド21bとフックブロック24との間を上下方向に移動する。
【0055】
これにより、ウインチ23によるワイヤロープ22の繰り出し動作及び巻き上げ動作に連動させて間隔保持部材50を移動させることができるので、専用の動力源を必要とすることなく間隔保持部材50を移動させることができ、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0056】
尚、前記実施形態では、移動式クレーン1のクレーン装置20を示したが、2本掛け以上の掛け数でフックブロックを吊り下げる構造を有するものであれば、タワークレーンに本発明を適用してもよいし、ブームを有していない天井クレーンや門型クレーン等に本発明を適用してもよい。
【0057】
また、前記実施形態では、クレーン作業の際に使用される機器として、フックブロック24を上方から照らすライト53aを間隔保持部材50に設けたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、間隔保持部材50には、フックを上方から監視するためのカメラや、フックブロック24と伸縮ブーム21との間で無線通信を行う際に用いる中継器等を取り付けることが可能である。
【0058】
また、前記実施形態では、第1シーブ51及び第2シーブ52の回転軸同士を固定することにより第1シーブ51及び第2シーブ52を互いに連動させるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、第1シーブ51と第2シーブ52を、図7(a)に示すベルト54aとプーリ54bや、図7(b)に示す歯車54cの組み合わせ等からなる動力伝達部材54によって回転数を変換して連動させることで、前記実施形態と同様に、ブームヘッド21bとフックブロック24との間の所定位置に間隔保持部材50を位置させることが可能となる。
【0059】
また、前記第2実施形態では、ワイヤロープ22の掛け数を4本とした場合において、4本のワイヤロープ22のうちの2本のワイヤロープ22に対して間隔保持部材50を取り付けるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。掛け数が3本以上の場合において、上下延伸部22aのそれぞれの間に間隔保持部材50を取り付けるようにすることで、より確実に上下延伸部22aの絡み付きを防止することができる。図8では、掛け数が6本の場合において、対向する上下延伸部22a毎に間隔保持部材50を取り付けたものを示している。
【0060】
また、前記第2実施形態では、ワイヤロープ22の掛け数を4本とした場合において、4本のワイヤロープ22のうちの2本のワイヤロープ22に対して間隔保持部材50を取り付けるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。掛け数が3本以上の場合において、図9に示すように、間隔保持部材50が取り付けられていない上下延伸部22aを、間隔保持部材50のブラケット53から延びるローラ支持部材55の端部に回転自在に設けたガイドローラ55aによって案内することで、より確実にワイヤロープ22の絡み付きを防止することができる。
【0061】
また、前記実施形態では、間隔保持部材50を、フックブロック24が上下方向に移動する際に、ブームヘッド21bとフックブロック24との中間部に常に位置させるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、間隔保持部材を、ブームヘッド21bとフックブロック24との間における、ブームヘッド21bから3分の1の部分に常に位置させるようにしてもよい。この場合には、第1シーブ51及び第2シーブ52のそれぞれのピッチ円直径または回転数を調整して、間隔保持部材50の移動速度を設定すればよい。
【0062】
また、前記実施形態では、間隔保持部材50の第1シーブ51及び第2シーブ52がワイヤロープ22に対してずれや滑りを生じることなく転動するものを示したが、第1シーブ51及び第2シーブ52がワイヤロープ22に対して僅かにずれや滑りが生じたとしても前述の効果を奏する。間隔保持部材50は、第1シーブ51及び第2シーブ52がワイヤロープ22に対してずれや滑りが生じた場合に、ずれや滑りを修正して元に戻す手段を備えることが好ましい。
【符号の説明】
【0063】
20…クレーン装置、21b…ブームヘッド、21d…トップシーブ、22…ワイヤロープ、22a…上下延伸部、23…ウインチ、24…フックブロック、24c…フックシーブ、50…間隔保持部材、51…第1シーブ、52…第2シーブ、53a…ライト、54…動力伝達部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9