特許第6339623号(P6339623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6339623多言語路線図作成プログラム及び多言語路線図作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339623
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】多言語路線図作成プログラム及び多言語路線図作成方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20180528BHJP
   G06F 17/28 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   G09B29/00 F
   G06F17/28 690
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-99947(P2016-99947)
(22)【出願日】2016年5月18日
(65)【公開番号】特開2017-207629(P2017-207629A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2016年9月29日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】508255632
【氏名又は名称】株式会社ナビット
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100087594
【弁理士】
【氏名又は名称】福村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】福井 泰代
【審査官】 上田 泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−003826(JP,A)
【文献】 特開2014−040216(JP,A)
【文献】 特表2009−527811(JP,A)
【文献】 特開2012−181163(JP,A)
【文献】 特開2013−036748(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0215330(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00−29/14
G01C 21/00−21/36,23/00−25/00
B61L 25/02
G06F 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレイヤーを取り扱う市販のベクタイメージ編集ソフトのプラグインとして提供されるとともに、交通機関の路線図、駅構内図を多言語で作成する多言語路線図作成プログラムであって、
コンピュータを、
前記ベクタイメージ編集ソフトで作成された路線図、駅構内図における指定された前記レイヤーの複数のテキストオブジェクト内の文字列と、駅名ID及び路線名ID、検索文字列、多言語名称を含んだDBファイル内の検索文字列とが同じである場合、前記テキストオブジェクトに、前記DBファイルに基づいて該当する前記駅名ID又は前記路線名IDをそれぞれ自動付与するID自動付与部、
前記駅名ID又は前記路線名IDが付与された前記テキストオブジェクト内の文字列の言語を、前記DBファイル内の駅名ID又は路線名IDと、多言語名称とに基づいて、指定された他の言語の文字列に一括変換する文字列一括変換部、
として機能させることを特徴とする多言語路線図作成プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータを、
前記テキストオブジェクト内の文字列が前記DBファイルにおいて重複又は欠損している場合に、前記重複又は欠損しているテキストオブジェクトに、駅名ID又は路線名IDをユーザに手動で設定させる画面を生成するID手動設定部
として更に機能させることを特徴とする請求項1に記載の多言語路線図作成プログラム。
【請求項3】
前記文字列一括変換部は、変換前と変換後で対応する文字列の文字数の変化に応じて、前記変換後の文字列の大きさを調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の多言語路線図作成プログラム。
【請求項4】
複数のレイヤーを取り扱う市販のベクタイメージ編集ソフトのプラグインとして提供される、交通機関の路線図、駅構内図を多言語で作成する多言語路線図作成方法であって、
前記ベクタイメージ編集ソフトで作成された路線図、駅構内図における指定された前記レイヤーの複数のテキストオブジェクト内の文字列と、駅名ID及び路線名ID、検索文字列、多言語名称を含んだDBファイル内の検索文字列とが同じである場合、前記テキストオブジェクトに、前記DBファイルに基づいて該当する前記駅名ID又は前記路線名IDをそれぞれ自動付与するID自動付与段階と、
前記駅名ID又は前記路線名IDが付与された前記テキストオブジェクト内の文字列の言語を、前記DBファイル内の駅名ID又は路線名IDと、多言語名称とに基づいて、指定された他の言語の文字列に一括変換する文字列一括変換段階と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする多言語路線図作成方法。
【請求項5】
前記テキストオブジェクト内の文字列が前記DBファイルにおいて重複又は欠損している場合に、前記ID自動付与段階の後で、前記重複又は欠損しているテキストオブジェクトに、駅名ID又は路線名IDをユーザに手動で設定させる画面を生成するID手動設定段階、
をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項4に記載の多言語路線図作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路線図を作成するためのプログラム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2020年の東京オリンピックに向けて、訪日外国人数は現在既に年間1300万人を突破し、日本への関心が高まっている。そうした中、日本ではソフト面での対応が遅れており、特に大都市では鉄道等の路線が入り組み、目的地に到着するのは容易ではない。そのため、外国人観光客向けの交通機関等の案内方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、駅構内やバス停等に設置され、鉄道やバスの交通機関を利用する乗客が所有する情報記録媒体を利用して、容易に路線や運賃を検索でき情報を取得することができる路線情報案内装置が開示されている。この路線情報案内装置においては、選択釦やアンテナ部の表面に外国語を含む多言語表示をすることが記載されている。また、特許文献2には、その地域の路線網を知らない人や、運賃表示板に表記されている言語が読めない外国人等が、券売機での乗車券の購入にかかる煩わしさを感じることなく、券売機で乗車券をスムーズに購入できるように補助するネットワークサーバが開示されている。このネットワークサーバにおいては、アクセスしてきた携帯端末に対して言語選択ページを送信し、ネットワークサーバは、携帯端末から送信されてきた言語の種類を受信すると、受信した種類の言語で表記している目的地入力ページを携帯端末に送信するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−218244号公報
【特許文献2】特開2013−152650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1及び2に示されるような路線情報案内装置やネットワークサーバは、多言語の表記データが既に存在していることを前提としており、鉄道の路線図や駅構内図の多言語データを作成することを対象としていない。国内の路線図や駅構内図は、複雑でかつ膨大な数が存在するが、駅の表示板等の多言語表記は手作業を主としており、数か国の言語しかサポートされていないのが現状である。
【0006】
したがって、本発明では以上のような現状を踏まえ、訪日外国人が自由に鉄道や地下鉄等の交通機関を乗りこなし、目的地に到着できることをサポートするため、任意の言語に対応可能な「多言語路線図アプリ」を開発し、駅構内のデジタルサイネージ及びスマートフォン等から簡単に閲覧できるソフトウェアの革新的サービスを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、以下のような解決手段を提供する。
(1)本発明の第1の態様では、交通機関の路線図、駅構内図を多言語で作成する多言語路線図作成プログラムであって、コンピュータを、前記交通機関の駅名と路線名を格納した駅情報DBに基づいて、前記駅名及び前記路線名の文字列のIDを自動付与するID自動付与部、前記IDが付与された文字列の言語を、指定された他の言語の文字列に一括変換する文字列一括変換部、として機能させることを特徴とする。
【0008】
(2)また、上記(1)の構成において、前記コンピュータを、前記文字列が前記駅情報DBにおいて重複又は欠損している場合に、前記重複又は欠損した文字列のIDをユーザに手動で設定させるID手動設定部として、更に機能させるようにしてもよい。
【0009】
(3)また、上記(1)又は(2)の構成において、前記多言語路線図作成プログラムは、市販のベクタイメージ編集ソフトのプラグインとして提供されるようにしてもよい。
【0010】
(4)また、上記(1)〜(3)のいずれか1つの構成において、前記ID自動付与部は、前記駅情報DBを検索するためのID、検索文字列、多言語名称を含んだDBファイルに基づいて、前記駅情報DBを検索し、IDを付与するようにしてもよい。
【0011】
(5)また、上記(1)〜(4)のいずれか1つの構成において、前記文字列一括変換部は、変換前と変換後で対応する文字列の文字数の変化に応じて、前記変換後の文字列の大きさを調整するようにしてもよい。
【0012】
(6)また、本発明の第2の態様では、交通機関の路線図、駅構内図を多言語で作成する多言語路線図作成方法であって、前記交通機関の駅名と路線名を格納した駅情報DBに基づいて、前記駅名及び前記路線名の文字列のIDを自動付与する段階と、前記文字列が前記駅情報DBにおいて重複又は欠損している場合に、前記重複又は欠損した文字列のIDをユーザに手動で設定させる段階と、前記IDが付与された文字列の言語を、指定された他の言語の文字列に一括変換する段階と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、訪日外国人が自由に鉄道や地下鉄等の交通機関を乗りこなし、目的地に迷うことなく到着できることをサポートするための任意の言語に対応可能なソフトウェアのサービスを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る路線図等の多言語化サービスの基本概念を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る路線図等の多言語化サービスの流れを示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る文字列一括変換プラグインの機能ブロックを示す図である。
図4】駅情報データベース(駅情報DB)に格納されるデータの一例を示す図である。
図5】文字列一括変換プラグインの入力となるDBカラム定義ファイル及びDBファイルの構成を示す図である。
図6A】文字列一括変換プラグインのID自動付与部の画面構成の一例を示す図である。
図6B】文字列一括変換プラグインのID自動付与部の画面構成の一例を示す続図である。
図7】文字列一括変換プラグインのID手動設定部の画面構成の一例を示す図である。
図8】文字列一括変換プラグインの文字列一括変換部の画面構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」)について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0016】
(路線図等の多言語化サービス基本概念)
図1は、本発明の実施形態に係る路線図等を多言語化するサービス(多言語化サービス(以下、「本サービス」と呼ぶ))の基本概念を示す図である。本サービスが対象とする多言語化するデータは、交通機関(鉄道やバス等)の路線図、駅、観光施設、スポーツ施設等の構内図(以下、まとめて「路線図等」と呼ぶ)があるが、以下の実施形態では、鉄道の路線図を具体例として説明する。
【0017】
本サービスでは、独自開発ツールである「多言語路線図アプリ」又は「多言語路線図作成プログラム」の中核として、「駅名・路線名等の文字列一括変換プラグイン」(以下、「文字列一括変換プラグイン」と呼ぶ)を提供する。文字列一括変換プラグインは、既にデータベースとして販売している、全国の路線、駅名、駅出口情報をデータ化したコンテンツである駅情報DB(又は単に「駅DB」)の日本語の路線名及び駅名を抽出指定して、Google(登録商標)等の翻訳APIを利用し、多言語の路線図を生成する機能を有する。この機能は、Adobe Illustrator(登録商標)等の市販のベクタイメージ編集ソフトのプラグインによって実現される。
【0018】
なお、プラグインとは、それをインストールすることで、アプリケーションソフトが持っていない機能等を追加することのできるプログラムである。また、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)とは、あるコンピュータ・プログラム(ソフトウェア)の機能や管理するデータ等を、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式等を定めた規約を指す。
【0019】
文字列一括変換プラグインは、言語データ(ID付の多国語駅名データ)をインポートし、路線図の各駅名にID(識別子)を付与する。まずベースとなる路線図を、日本語で1種類を作成しておき、ベース路線図を基にして、変換する言語を指定することで、ワンタッチで他の言語に表示、切替えをすることができる。また、翻訳後(変換後)の路線図を出力し、スマートフォンアプリやタブレットアプリで、様々な目的に利用することができる。現状、鉄道各社が提供している多言語路線図は3か国語(英語、中国2言語、韓国語)が主流となっているが、実装する言語数を、これに9か国語(タイ語/インドネシア語/スペイン語/ポルトガル語/ドイツ語/ロシア語/イタリア語/フランス語/アラビア語)をプラスし、12か国語に対応することで、世界の人口の80%を網羅できる言語領域を実現することができる。
【0020】
図2は、路線図等の多言語化サービスの流れを示す図である。図示するように、ステップS1では、路線図の線画をAdobe Illustrator(登録商標)等の市販のベクタイメージ編集ソフトを使って作成する。次にステップS2で、路線図上の駅の地点である駅ポイントを記載する。そして、ステップS3で、日本語版の駅名を記入する。一方、並行して、ステップS4では、駅情報DBから各国語への翻訳作業を行う。ステップS3とステップS4の作業が完了すると、ステップS5において、上記の文字列一括変換プラグインによるデータの流し込みを行う。そして、ステップS6で、翻訳後の路線図の検収作業を行い、最終的な納品とする(ステップS7)。文字列一括変換プラグインを導入することで、従来、12か国語の駅名記入、検収作業、納品で計3600時間程度を要するものが、約1/5の732時間に短縮することが可能となる。
【0021】
(文字列一括変換プラグイン)
図3は、文字列一括変換プラグインの機能ブロックを示す図である。図4は、駅情報データベース(駅情報DB)に格納されるデータの一例を示す図である。図5は、DBカラム定義ファイル及びDBファイルの構成を示す図である。以下これらの図を参照して、文字列一括変換プラグインの機能の詳細について説明する。
【0022】
図3で示す文字列一括変換プラグイン10(以下単にプラグインと呼ぶ)は、機能ブロックとして、ID自動付与部11、ID手動設定部12、文字列一括変換部13を備える。このプラグインは、駅情報DB20に基づいて事前に作成された、DBファイル21/DBカラム定義ファイル22と市販のベクタイメージ編集ソフト30の変換前テキストオブジェクト100とを入力データとする。図4に駅情報DB20に格納されるデータのサンプルを示す。図示するように、駅情報DB20には、電鉄名、路線名、駅名の情報が、それぞれのID(電鉄ID、路線ID、駅名ID)とともに格納されている。駅情報DB20には言語ごとのセルがあり、同一の駅名は、任意に付与された同一のIDで管理される。このIDを元に言語選択をすることで、一括でテキストオブジェクトが変更される。変換前テキストオブジェクト100は、ベースとなる路線図のテキストオブジェクトであるが、日本語である必要はなく、テキストオブジェクトにIDが付与されていればよい。なお、翻訳APIの翻訳結果は駅情報DB20に格納され、そのご、人的な精査と翻訳が行われる。
【0023】
また、DBファイル21/DBカラム定義ファイル22の構成を図5に示す。両ファイル形式は、CSV(Comma-Separated Values)ファイル等のタブで区切られたテキストファイルであり、文字コードはutf-8とする。DBカラム定義ファイル22は、DBファイル21の各カラムを定義したものであり、図5(a)に示すとおり、DBファイルの1レコードの項目を定義したものである。具体的には、(1)駅名、路線名等のID、(2)検索文字列、(3)多言語名称又はコメント、の各項目がある。このうち、(1)と(2)は、固定位置の必須項目である。DBカラム定義ファイルの内容は、各項目を例えば“ ”で区切り、“ID”、“検索文字列”、“※鉄道路線名”、“日本語よみ”、“英語”、“韓国語”のようになる。“検索文字列”とは、一括変換時に態様となるテキストを検索するために用いられる文字列である。なお、先頭に「※」を入れた文字列は、コメントと判断され、一括変換の対象とはならない。
【0024】
図5(b)は、DBファイル21の構成を示したものであり、上記のDBカラム定義ファイル22で定義された実際のデータが並ぶ。例えば、“001”、“東京”、“東海道新幹線/東北新幹線など”、“とうきょう”、“Tokyo”のようになる。この例のDBファイル21の各データは、“ID”、“検索文字列”、“コメント”、“日本語よみ”、“英語”、“韓国語”に対応している。
【0025】
プラグインのID自動付与部11は、DBファイル21/DBカラム定義ファイル22に基づいて、ベクタイメージ編集ソフト30の変換前テキストオブジェクト100にIDを自動付与する。すなわち、DBファイル21の検索文字列と表記が同じテキストオブジェクトに対して該当するIDを付与する。その結果、各国語のID付与後テキストオブジェクト101が生成される。ここで、テキストオブジェクト100、101は、個別のテキスト(文字列)そのものと考えてもよいし、複数のテキストの集合と考えてもよい。このとき、対象となるレイヤーとDBファイル名をユーザに指定させる。レイヤーとは、ベクタイメージ編集ソフト30が提供する機能で、アニメーションのセル画のように、アートワークを乗せた透明なシートのようなものであり、レイヤー上に描かれたイラストを重ね合わせるような感覚で図を作成することができる。
【0026】
ID自動付与部11は、該当のテキストオブジェクトの文字列がDBファイル21に複数レコード存在する場合(重複している場合)、又は該当のテキストオブジェクトの文字列がDBファイル21に存在しない場合(欠損している場合)、エラーとし、その文字列をマークし、リストアップする。そして、自動付与に失敗した文字列に対し、ID手動設定部12が、DBファイル21のIDをユーザに手動で付与させ、設定させるための画面を生成する。ここで対象となるものは、ID自動付与部11にてエラーとなったテキストである。IDの自動付与及び手動付与について具体的には、後述の図6A図6B図7で更に詳しく説明する。
【0027】
プラグインの文字列一括変換部13は、IDが自動又は手動で付与されたテキストオブジェクト101を基にし、変換する言語をユーザに指定させることで、変換前テキストオブジェクト100の文字列を、DBファイル21内に同じIDで格納された指定言語に翻訳された文字列に、一括変換する。
【0028】
変換後テキストオブジェクト102は、翻訳後の路線図とともに保存されるが、別途テキストオブジェクトだけを保存しておいてもよい。また、DBファイル21に、図5の例のように複数の言語が格納されている場合は、翻訳後の路線図をベースにして他の言語に再変換することも可能である。
【0029】
上記のプラグインの機能構成は、あくまで一例であり、1つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて1つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、コンピュータ装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、コンピュータ・プログラムが、コンピュータを各機能処理部として機能させる。各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。
【0030】
(画面構成)
図6A、6Bは、ID自動付与部11の画面構成の一例を示す図である。図7は、ID手動設定部12の画面構成の一例を示す図である。図8は、文字列一括変換部13の画面構成の一例を示す図である。以下、これらの画面構成例を用いて、ID自動付与部11、ID手動設定部12、文字列一括変換部13の機能を更に詳しく説明する。
【0031】
ID自動付与部11は、図6A(a)に示すメニューから、ユーザが「自動付与ツール」を選択することによって実行される。自動付与ツールが選択されると、図6A(b)に示すレイヤーパレットが表示される。ユーザは、このレイヤーパレットから対象となるレイヤーを指定する。この例では、「私鉄駅名横組」という名称のレイヤーを選択している。続いて、ID自動付与部11は、ユーザに、図6(c)に示す画面から、DBファイル21を指定させる。この例では、「首都圏駅名DB.txt」というファイル名を指定している。なお、図中の「首都圏駅名定義.txt」は、DBカラム定義ファイルである。なお、レイヤーパレットの「引出線」の下の「・・・・・・・・」は、レイヤーの区分けを解り易くするために、空レイヤー(何のオブジェクトも存在しない)を示す。
【0032】
対象となるレイヤー及びDBファイル21の指定がされると、ID自動付与部11は、DBファイル21の検索文字列と表記が同じテキストオブジェクトに該当するIDを付与する。IDを付与したテキストオブジェクトは、画面上では所定色1、例えば、緑色(C100Y100)で表示される。なお、図6B(d)、(e)、(f)の画面では、駅名のうち、「競艇場前」と「是政」が赤色(所定色2)で表示され、「矢野口」と「布田」が青色(所定色3)、それ以外の駅名が緑色(所定色1)で表示されているものとする。
【0033】
ここで、該当のテキスト(文字列)が、DBファイル21に複数存在する場合は、文字色を所定色2、例えば、赤色(M100Y100)にし(図6B(e)の楕円で示す。)、該当のIDをタブ区切りテキストファイルに格納する。格納されるテキストファイルは、DBファイル21と同じフォルダに格納される。テキストファイルの名称は、「ベクタイメージ編集ソフトのファイル名+レイヤー名」となる。
【0034】
また、該当のテキスト(文字列)が、DBファイル21に存在しない場合は、文字色を、所定色3、例えば、青色(C100)にし(図6B(f)の楕円で示す。)、該当のIDには何も値を入れない。なお、既にIDが付与されていてもID自動付与の機能を実行すると、IDはすべて振り直しされるものとする。
【0035】
図7のID手動設定部12において表示される画面の説明に移る。ID手動設定部12は、ユーザが手動変更するレイヤーを指定し、図7(a)に示すメニューから、「手動設定ツール」を選択することによって実行される。ここでは、メニューからユーザが起動する方法をとっているが、自動設定ツールの実行の結果、重複エラー又は欠損エラーとなった場合には、自動的にID手動設定部12が起動されるようにしてもよい。
【0036】
ID手動設定部12が起動されると、図7(b)で示す「手動設定ツール」(手動付与ツール)の画面が表示され、「自動付与ツール」で、赤色(重複エラー)又は青色(欠損エラー)となった文字の一覧が表示される。ここでは、エラーとなった「是政」を入力するか、又は「エラー対象一覧」から選択し、「抽出」ボタンを押すことで、「検索結果」の欄に「是政」の候補が表示される。そして、ユーザがこの「検索結果」から「是政、西武多摩川線」を指定し、「設定」ボタンを押すことで、「是政」駅のIDが手動設定される。
【0037】
「エラー対象一覧」から赤色のテキスト(図7(c)の右の画面の楕円で示す)を選択した場合、図7(c)の右の画面で示すように、候補のDBファイル21の情報が表示される。なお、図7(d)で示すように、「抽出」ボタンの左にあるフィルタ欄に文字列を入力し、「抽出」ボタンを押すことで、別の文字列での抽出も可能である。
【0038】
上記いずれの場合も、検索結果の選択肢から1つを選択し、「設定」ボタンを押すことで、該当のテキストにID及び日本語の文字列が付与され、「是政」の文字色が、図7(e)右に示すようにID(E010100001)が付与されたことを示す緑色(所定色1)に変更される(図7(e)左の楕円で示す)。
【0039】
また、「エラー対象一覧」から青色のテキスト(「矢野口」、「布田」)を選択した場合は、DBファイル21のすべてのレコードが候補に表示され、フィルタ欄に文字列を入力することで、選択肢を抽出することが可能である。この場合は、選択肢から1つを選択し、「設定」ボタンを押下することで、該当のテキストオブジェクトにID及び日本語が付与され、文字色が緑色(所定色1)に変更される。以上のような手順でベースとなる日本語の路線図が完成する。
【0040】
図8の文字列一括変換部13において表示される画面の説明に移る。まず、ユーザは、変換したいレイヤーを選択し、図8(a)に示すメニューから「文字列一括変換ツール」を実行する。文字列一括変換部13が起動されると、図8(b)に示す言語選択画面が表示され、ユーザが、変換する言語を一覧から選択し、「実行」ボタンを押下することで、指定した言語の文字列に変換される。通常、変換前の言語は日本語であるが、変換後の言語から別の言語に(例えば、英語から韓国語)に変換することも可能とする。この変換処理時には、ベクタイメージ編集ソフト30の図8(c)に示す文字パレットの内容を反映することができる。また、日本語表記での改行位置は、変換後の言語の文字列には反映されない。なお、IDが正しく設定されていないテキストオブジェクトについては、処理は行われない。
【0041】
上記では、文字の大きさ等は、文字パレットの内容を反映するようにしたが、路線図等では、元の言語から別の言語に変換する際に、それらの言語によって、変換後の対応する文字の大きさ、幅、高さ等を調整するようにしてもよい。例えば、西武多摩川線の「白糸台」は、日本語では3文字であるが、英語(ローマ字)に変換すると、「Shiraishidai」と12文字となり、文字数が大幅に増加し、路線図からはみ出したり、他の文字や図形と重なったりすることが考えられるので、変換後の文字の大きさ等を、変換前と変換後の文字数の変化に応じて、一括指定で自動的又は半自動的に調整するようにしてもよい。
【0042】
(実施形態の効果)
以上、本実施形態によれば、訪日外国人が自由に鉄道や地下鉄等を乗りこなし、目的地に到着できることをサポートするための任意の言語に対応可能なサービスを実現することができる。また、文字列が重複エラーや欠損エラーにより、自動でIDを付与することができない場合は、ユーザがその文字列に対して手動でIDを付与することができる。また、独自開発のツールを、市販のベクタイメージ編集ソフトのプラグインとして提供することで、多言語対応の路線図等の作成時間を大幅に短縮することができる。また、IDを自動付与する際に、検索文字列、多言語名称を含んだDBファイルに基づいて、駅情報DBから対応する言語を検索し、IDを付与することができる。また、変換前後で文字数が大きく変化する場合は、文字が重ならないようにするため変換後の文字の大きさを自動調整することができる。
【0043】
なお、上記の実施形態では、典型例として、鉄道の路線図について説明したが、駅、観光施設、スポーツ施設の構内図、あるいは、外国人観光客がよく訪れる町や観光名所の地図等にも適用が可能である。
【0044】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲に限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0045】
なお、上記の実施形態では、本発明をプログラムの発明として、多言語路線図作成プログラム(又はその中核となる駅名・路線名文字列一括変換プラグイン)について説明したが、本発明は、方法の発明(多言語路線図作成方法)としても捉えることもできる。
【符号の説明】
【0046】
10 駅名・路線図等の文字列一括変換プラグイン
11 ID自動付与部
12 ID手動設定部
13 文字列一括変換部
20 駅情報DB(駅DB)
21 DBファイル
22 DBカラム定義ファイル
30 ベクタイメージ編集ソフト
100 変換前テキストオブジェクト
101 ID付与後テキストオブジェクト
102 変換後テキストオブジェクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8