(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339700
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】静電容量式センサ
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20180528BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
G06F3/041 430
G06F3/041 440
G06F3/044 122
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-569232(P2016-569232)
(86)(22)【出願日】2015年10月29日
(86)【国際出願番号】JP2015080502
(87)【国際公開番号】WO2016113979
(87)【国際公開日】20160721
【審査請求日】2017年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-7253(P2015-7253)
(32)【優先日】2015年1月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】山井 知行
(72)【発明者】
【氏名】北村 恭志
(72)【発明者】
【氏名】平木 勇太
(72)【発明者】
【氏名】石橋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 三津雄
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 学
【審査官】
▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−182436(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/005319(WO,A1)
【文献】
特開2010−140041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に透光性導電膜のパターンが設けられた静電容量式センサであって、
前記透光性導電膜は金属ナノワイヤを含み、
前記パターンは、
複数の検知電極が間隔を置いて配列された検知パターンと、
前記複数の検知電極のそれぞれから第1方向に直線状に延在する複数の引き出し配線と、
前記複数の引き出し配線の少なくともいずれかに接続され、前記第1方向と非平行な方向に延在する部分を含む抵抗設定部と、を有し、
前記抵抗設定部は、折り返しパターンを含み、
前記複数の引き出し配線は、前記第1方向と直交する第2方向に一定の第1ピッチで配置される等間隔領域を含み、
前記折り返しパターンは、前記第2方向に前記等間隔領域と並置され、
前記折り返しパターンは、前記第1方向に直線状に延在する複数の直線パターン部を含む
ことを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項2】
前記複数の直線パターン部のそれぞれの幅は前記引き出し配線の幅と等しく、前記複数の直線パターン部の前記第2方向のピッチは前記第1ピッチと等しい、請求項1に記載の静電容量式センサ。
【請求項3】
前記第1方向は、前記検知パターンから外部端子領域に向かう方向であり、
前記複数の検知電極は前記第1方向に配列され、
前記抵抗設定部は、少なくとも前記外部端子領域に最も近い検知電極から延在する前記引き出し配線に接続されている、請求項1または請求項2に記載の静電容量式センサ。
【請求項4】
前記複数の検知電極のそれぞれから延出する前記引き出し配線を含む配線パターンの抵抗値は互いに等しい、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の静電容量式センサ。
【請求項5】
前記金属ナノワイヤは銀ナノワイヤを含むことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の静電容量式センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノワイヤを含む透光性導電膜のパターンが形成された静電容量式センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、単層構造の透明導電膜を備えた静電容量式センサであるタッチスイッチが開示されている。特許文献1に記載のタッチスイッチは、タッチ電極部およびタッチ電極部から延びる配線部が網目状の金属線で形成されている。このタッチスイッチの構成は、小型のタッチパネルでは実現できるものの、パネルサイズが大型になると細く長い配線を多数配置する必要がある。また、配線部が金属線で形成されているため、配線部を細く長くすると、配線部の電気抵抗が高くなる。
【0003】
特許文献2に記載のタッチパネルは、基板の表面に複数の透明な導電構造体が形成され、この導電構造体はカーボンナノチューブで構成されている。また、導電構造体から延び出る導電線はITO(Indium Tin Oxide)で形成されている。しかし、導電線をITO等で形成すると電気抵抗が高くなってしまうため、導電線の電気抵抗が検知感度を低下させることになる。
【0004】
このような問題を解決するために、低抵抗の透光性導電膜として金属ナノワイヤを含んだものが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−191504号公報
【特許文献2】特開2009−146419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単層構造の透光性導電膜に金属ナノワイヤを用いた場合、ITOに比べて静電気放電(ESD:Electro Static Discharge)耐性が低いという問題がある。その理由として、(1)金属ナノワイヤを用いた透光性導電膜では、ITOに比べると電気抵抗が低いこと、(2)同じパターンであってもESDにおいてより多くの電気が流れやすいこと、(3)金属ナノワイヤはナノサイズのコネクションでの導電性発現であるため、バルク金属の融点に比べると低い温度で溶融してしまうこと(短時間に多くの電流が流れた場合の熱量で溶融してしまう)、(4)導通している実際の体積自体が少ないこと、などが挙げられる。
【0007】
そこで、本発明は、金属ナノワイヤを含む透光性導電膜を用いた場合であっても十分なESD耐性を得ることができる静電容量式センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の静電容量式センサは、基材に透光性導電膜のパターンが設けられた静電容量式センサであって、透光性導電膜は金属ナノワイヤを含み、パターンは、複数の検知電極が間隔を置いて配列された検知パターンと、複数の検知電極のそれぞれから第1方向に直線状に延在する複数の引き出し配線と、複数の引き出し配線の少なくともいずれかに接続され、第1方向と非平行な方向に延在する部分を含む抵抗設定部と、を有することを特徴とする。このような構成によれば、抵抗設定部が設けられた引き出し配線においては、抵抗設定部が設けられない場合に比べて電気抵抗が高くなり、ESD耐性を高めることができる。
【0009】
本発明の静電容量式センサにおいて、抵抗設定部は、折り返しパターンを含んでいてもよい。このような構成によれば、折り返しパターンによって配線経路が長くなった分、電気抵抗を高めることができる。
【0010】
本発明の静電容量式センサにおいて、複数の引き出し配線は、第1方向と直交する第2方向に一定の第1ピッチで配置される等間隔領域を含み、折り返しパターンは、第2方向に等間隔領域と並置され、折り返しパターンは、第1方向に直線状に延在する複数の直線パターン部を含んでいてもよい。
【0011】
このような構成によれば、複数の引き出し配線の等間隔領域と、折り返しパターンとが同一方向に延在する直線部分で構成されるため、折り返しパターンが設けられていてもパターンの相違が視認されにくくなる。
【0012】
本発明の静電容量式センサにおいて、複数の直線パターン部のそれぞれの幅は引き出し配線の幅と等しいことが好ましく、複数の直線パターン部の第2方向のピッチは第1ピッチと等しくなっていてもよい。
【0013】
このような構成によれば、複数の引き出し配線の等間隔領域と、折り返しパターンとの線と隙間(ライン&スペース)が同等になり、よりパターンの相違が視認されにくくなる。
【0014】
本発明の静電容量式センサにおいて、第1方向は、検知パターンから外部端子領域に向かう方向であり、複数の検知電極は第1方向に配列され、抵抗設定部は、少なくとも外部端子領域に最も近い検知電極から延在する引き出し配線に接続されていてもよい。このような構成によれば、ESD耐性の最も低い引き出し配線、すなわち検知電極から外部端子領域まで最も短い引き出し配線に抵抗設定部が設けられ、ESD耐性を高めることができる。
【0015】
本発明の静電容量式センサにおいて、複数の検知電極のそれぞれから延出する引き出し配線を含む配線パターンの抵抗値を互いに等しくしてもよい。このような構成によれば、複数の検知電極のそれぞれから引き出される配線パターンのESD耐性を均一化することができる。
【0016】
本発明の静電容量式センサにおいて、金属ナノワイヤは銀ナノワイヤを含んでいてもよい。このような構成によれば、銀ナノワイヤを含む透光性導電膜のパターンのESD耐性を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属ナノワイヤを含む透光性導電膜を用いた場合であっても十分なESD耐性を得ることができる静電容量式センサを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る静電容量式センサの導電パターンを例示する平面図である。
【
図2】(a)および(b)は、検出電極と配線長との関係を例示する模式図である。
【
図3】(a)〜(c)は抵抗設定部の他の例について説明する平面図である。
【
図4】ダミーパターンと抵抗設定部とを含むパターンの例について示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0020】
(静電容量式センサの構成)
図1は、本実施形態に係る静電容量式センサの導電パターンを例示する平面図である。
図1に表したように、本実施形態に係る静電容量式センサは、基材10に単層構造の透光性導電膜のパターン20が設けられた構成を備える。パターン20は、検知パターン21と、引き出し配線22と、抵抗設定部23と、を有する。
【0021】
基材10の材質は限定されない。基材10の材質として、例えば、透光性を有する無機基板、透光性を有するプラスチック基板などが挙げられる。基材10の形態は限定されない。基材10の形態として、例えば、フィルム、シート、板材などが挙げられ、その形状は平面であっても、曲面であっても構わない。無機基板の材料としては、例えば、石英、サファイア、ガラスなどが挙げられる。プラスチック基板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)等のポリオレフィン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、などが挙げられる。基材10は単層構造を有していてもよいし、積層構造を有していてもよい。
【0022】
検知パターン21は、四角形状の複数の検知電極21aを有する。複数の検知電極21aは、X1−X2方向(第2方向)およびY1−Y2方向(第1方向)のそれぞれにおいて一定の間隔を置いて配列される。なお、第1方向および第2方向は互いに直交する。また、
図1は単純化のため模式化された図であり、複数の検知電極21aのそれぞれの面積は互いに等しくなっている。
【0023】
複数の引き出し配線22は、複数の検知電極21aのY2側の端部からそれぞれ同一の方向(Y1−Y2方向)に沿うように、互いに平行に延びている。より具体的には、複数の引き出し配線22は、検知電極21aの第2縦辺21cのY2側の端部から外部端子領域30に向けて延びている。
【0024】
抵抗設定部23は、複数の引き出し配線22の少なくともいずれかに接続される。
図1に表した例では、最も外部端子領域30に近い検知電極21aから延出する引き出し配線22に抵抗設定部23が接続される。この場合には、最も外部端子領域30に近い検知電極21aから外部端子領域30へと向かう配線パターンは、引き出し配線22と抵抗設定部23とから構成される。
図1に示す抵抗設定部23は、折り返しパターン23aを含む。折り返しパターン23aは、Y1−Y2方向に直線状に延在する複数の直線パターン部231と、複数の直線パターン部231の間をY1側およびY2側交互に接続する複数の接続パターン部232とを有する。
【0025】
折り返しパターン23aは複数の直線パターン部231と複数の接続パターン部232とによってX1−X2方向に一定のピッチで折り返した形状となる。引き出し配線22の端部は、最も端の直線パターン部231の端部と接続パターン部232を介して接続される。
【0026】
このような抵抗設定部23が設けられることで、抵抗設定部23が設けられていない場合に比べて、検知電極21aから外部端子領域30に向かう配線パターンの電流経路が長くなる。電流経路が長くなると、それだけ電気抵抗が高くなる。したがって、抵抗設定部23が設けられた引き出し配線22においては、抵抗設定部23が設けられない場合に比べて電気抵抗が高くなり、ESD耐性を高めることができる。
【0027】
図2(a)および(b)は、検出電極と配線長との関係を例示する模式図である。
図2(a)には抵抗設定部23を備えていない配線パターンが表され、
図2(b)には抵抗設定部23を備えた配線パターンが表される。なお、説明の便宜上、
図2(a)および(b)にはパターン20の一部のみが表される。
【0028】
ここで、
図2(a)において、最も外部端子領域30に近い検知電極21a−1のY2側の端部から外部端子領域30までの距離をD1、検知電極21a−1から外部端子領域30までの配線パターンの長さをL1、検知電極21a−1よりも外部端子領域30から離れた検知電極21a−2のY2側の端部から外部端子領域30までの距離をD2、検知電極21a−2から外部端子領域30までの配線パターンの長さをL2とする。
図2(a)において配線パターンの長さは引き出し配線22の長さである。抵抗設定部23が設けられていない場合には、次の関係式(1)が成り立つ。
D1/D2=L1/L2 …(1)
【0029】
一方、
図2(b)において、検知電極21a−1のY2側の端部から外部端子領域30までの距離をD1、検知電極21a−1から外部端子領域30までの配線長をL1’、検知電極21a−2のY2側の端部から外部端子領域30までの距離をD2、検知電極21a−2から外部端子領域30までの配線長をL2とする。
図2(b)において配線パターンの長さは引き出し配線22の長さ、または引き出し配線22および抵抗設定部23の合計の長さである。抵抗設定部23が設けられている場合には、次の関係式(2)が成り立つ。
D1/D2<L1’/L2 …(2)
【0030】
上記関係式(2)が成り立つように配線パターンの長さを設定すると、外部端子領域30までの距離が近い検知電極21a−1であってもESD耐性を高めることが可能になる。
【0031】
ここで、折り返しパターン23aを含む抵抗設定部23の場合、複数の引き出し配線22がY1−Y2方向に平行に並ぶ等間隔領域S1と並ぶように設けられていてもよい。等間隔領域S1では、複数の引き出し配線22がX1−X2方向に一定のピッチ(第1ピッチ)で配置される。折り返しパターン23aとして、複数の直線パターン部231のX1−X2方向のピッチが第1ピッチと等しいことが好ましい。これにより、複数の引き出し配線22の等間隔領域S1と、折り返しパターン23aとが同一方向に延在する直線部分で構成されるため、等間隔領域S1の直線部分のパターンエッジからの反射/散乱強度が大きくなる角度から観察した場合でも、折り返しパターン23aの直線パターン部231でも同様に反射/散乱強度が大きくなる。これにより、視認されやすさの差が小さくなり、折り返しパターン23aが設けられていてもパターンの相違が視認されにくくなる。また、複数の引き出し配線22の等間隔領域S1と、折り返しパターン23aとの線と隙間(ライン&スペース)が同等になることにより、反射/散乱強度の差異がより小さくなるうえ、透過光強度の差異も小さくなるため、折り返しパターン23aが設けられていてもパターンの相違がさらに視認されにくくなる。
【0032】
(検知動作)
本実施形態に係る静電容量式センサにおいては、隣り合う複数の検知電極21aの間に静電容量が形成される。検知電極21aの表面に指を接触または接近させると、指と、指に近い検知電極21aとの間に静電容量が形成されるため、検知電極21aから検出される電流値を計測することで、複数の検知電極21aのどの電極に指が最も接近しているかを検知できる。
【0033】
(構成材料)
パターン20を形成する透光性導電膜は導電性の金属ナノワイヤを含んでいる。この金属ナノワイヤの材質は限定されない。金属ナノワイヤを構成する材料として、Ag、Au、Ni、Cu、Pd、Pt、Rh、Ir、Ru、Os、Fe、Co、Snから選択される1種類以上の金属元素を含む材料が例示される。金属ナノワイヤの平均短軸径は限定されない。金属ナノワイヤの平均短軸径は、1nmよりも大きく500nm以下であることが好ましい。金属ナノワイヤの平均長軸長は、限定されない。金属ナノワイヤの平均長軸長は、1μmよりも大きく1000μm以下であることが好ましい。
【0034】
透光性導電膜を形成するナノワイヤインク中での金属ナノワイヤの分散性向上のため、金属ナノワイヤは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミンなどのアミノ基含有化合物で表面処理されていてもよい。塗膜化した際に導電性が劣化しない程度の添加量にすることが好ましい。その他、スルホ基(スルホン酸塩含む)、スルホニル基、スルホンアミド基、カルボン酸基(カルボン酸塩含む)、アミド基、リン酸基(リン酸塩、リン酸エステル含む)、フォスフィノ基、シラノール基、エポキシ基、イソシアネート基、シアノ基、ビニル基、チオール基、カルビノール基などの官能基を有する化合物で金属に吸着可能なものを分散剤として用いてもよい。
【0035】
ナノワイヤインクの分散剤の種類は限定されない。ナノワイヤインクの分散剤としては、例えば、水、アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等が具体例として挙げられる。)、ケトン(シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどが具体例として挙げられる。)、アミド(N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等が具体例として挙げられる。)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド(DMSO)等が具体例として挙げられる。)などが挙げられる。ナノワイヤインクの分散剤は1種類の物質から構成されていてもよいし、複数種類の物質から構成されていてもよい。
【0036】
ナノワイヤインクの乾燥ムラやクラックを抑えるため、高沸点溶媒をさらに添加して、溶剤の蒸発速度をコントロールすることもできる。高沸点溶媒の具体例として、ブチルセロソルブ、ジアセトンアルコール、ブチルトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールイソプロピルエーテル、メチルグリコールなどが挙げられる。高沸点溶媒は単独で用いられてもよく、また、複数を組み合わせてもよい。
【0037】
ナノワイヤインクに適用可能なバインダ材料としては、既知の透明な天然高分子樹脂または合成高分子樹脂から広く選択して使用することができる。例えば、透明な熱可塑性樹脂や、熱・光・電子線・放射線で硬化する透明硬化性樹脂を使用することができる。透明な熱可塑性樹脂の具体例として、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。透明硬化性樹脂の具体例として、メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、イソシアネート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケート等のシリコン樹脂などが挙げられる。ナノワイヤインクはさらに添加剤を含有していてもよい。かかる添加剤としては、界面活性剤、粘度調整剤、分散剤、硬化促進触媒、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤などが挙げられる。
【0038】
(抵抗設定部の他の例)
次に、抵抗設定部23の他の例について説明する。
図3(a)〜(c)は抵抗設定部の他の例について説明する平面図である。なお、説明の便宜上、
図3(a)〜(c)にはパターン20の一部のみが表される。
【0039】
図3(a)に表した例では、外部端子領域30に最も近い検知電極21a−1の引き出し配線22のほか、他の検知電極21aの引き出し配線22にも抵抗設定部23が設けられている。このように構成することで、全ての検知電極21aについて配線パターンの長さを均一化することができ、ESD耐性のばらつきを抑制することができる。
【0040】
図3(b)に表した例では、折り返しパターン23aの直線パターン部231がX1−X2方向に延出している。すなわち、
図1および
図2(b)に表した折り返しパターン23aとは直線パターン部231の延出方向が90°異なっている。
【0041】
図3(c)に表した例では、折り返しパターン23aの直線パターン部231がX1−X2方向およびY1−Y2方向のいずれにも非平行な方向に延出している。このように、折り返しパターン23aの直線パターン部231の延出方向や折り返しパターン23aのパターン形状はどのようなものでもよく、配線長を長くして抵抗値を増加させるものであれば抵抗設定部23として機能させることができる。
【0042】
図4は、ダミーパターンと抵抗設定部とを含むパターンの例について示す平面図である。
ダミーパターンDPは、各検知電極21aに設けられたスリット状のパターンである。検知電極21aには、Y1−Y2方向に延びるダミーパターンDPが複数本平行に設けられる。これにより、検知電極21aのライン&スペースの領域が構成される。
【0043】
ダミーパターンDPを設ける場合、ダミーパターンDPによる各検知電極21aのライン&スペースの幅およびピッチを、複数の引き出し配線22の等間隔領域S1でのライン&スペースの幅およびピッチと合わせることが望ましい。また、等間隔領域S1と並置される折り返しパターン23aのライン&スペースの幅およびピッチも等間隔領域S1のライン&スペースの幅およびピッチと合わせることが望ましい。これにより、パターン20全体の広い領域において同じライン&スペースが設けられ、パターン20を目立たせなくすることができる。
【0044】
なお、上記に本実施の形態およびその変形例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の実施の形態またはその変形例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施の形態や変形例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る静電容量式センサは、単層構造でありながらESD耐性に優れるため、透光性導電膜を有する大型のタッチパネルに有用であり、使用者から視認しづらい透光性パターンを形成することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…基材
20…パターン
21…検知パターン
21a…検知電極
22…引き出し配線
23…抵抗設定部
23a…折り返しパターン
30…外部端子領域
231…直線パターン部
232…接続パターン部
S1…等間隔領域