【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するためのものであって、冷水供給側の二次ポンプ流量制御、熱源機の出口温度制御と、空調機側の流量制御弁開度制御と、を連係させるとともに、流量制御弁の応答遅れに伴う上記問題を解決する技術を提供する。
【0010】
本発明は以下の内容をその要旨とする。すなわち、本発明に係る水冷式空調システムの運転制御方法は、
(1)一次側回路に配設した熱源機で製造した冷水を、往水ヘッダー及び還水ヘッダーを介して、二次側回路に配設した二次ポンプにより複数の空調機に循環供給し、
各空調機は、冷水導入量を制御可能とする流量制御弁と、導入した冷水と戻り空気との熱交換により冷房対象空間に冷風を供給する送風ファンと、を備え、
て成る水冷式空調システムにおいて、
(a1)各空調機の定格冷却能力に対するその時点における冷却余裕度(Ri)に基づいて、複数の空調機により構成される空調機群の群冷却余裕度(Rg)を演算するステップと、
(a2)群冷却余裕度(Rg)が所定の下限閾値(Rc)以下に至ったときは、非常時運転モードとして、二次ポンプ又は/及び熱源機の出力アップにより冷熱供給量を増加させ、かつ、アラーム発報するステップと、
(a3)但し、いずれかの空調機について、所定値以上の冷房出力設定変更があったときは、所定時間(τc)経過するまでは、(a1)に関らず当該空調機を除外して群冷却余裕度(Rg)を演算するステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明において「空調機群」とは、同一室内、同一冷却エリア、設置者が任意に設定したグルーピング、又は、外部の空調自動制御システムにより定義されるグルーピング 等に属する1又は複数の空調機をいう。
【0012】
群冷却余裕度(Rg)について、「所定の下限閾値(Rc)」の設定に際しては、室としての許容温度逸脱の可能性の度合いに基づき行い、例えば、同一冷却エリアの常用空調機台数と予備機台数の関係性等を考慮して設定することができる。さらに、学習機能により閾値を随時更新可能とすることにより、最適化を図ることもできる。以下の各閾値、所定値等の設定についても同様である。
【0013】
また、冷房出力設定変更について、「所定値」の設定に際しては、各空調機の特性、例えば、風量や吹出し温度設定変更の際の吹出設定温度と計測温度との過渡的な乖離や、過渡的な流量制御弁の過剰開度、等の実績データを考慮して行うことができる。
(2)上記(1)の発明において、前記群冷却余裕度(Rg)が、各空調機の前記冷却余裕度(Ri)の平均値(ΣRi/n、n:空調機群に属する空調機台数)であることを特徴とする。
(3)上記各発明において、前記冷却余裕度(Ri)が、
前記流量制御弁の全開開度(θmax)と、当該時点における開度(θ(t))と、により求めた開度余裕率[(Ri=1−(θ(t)/θmax)]、
前記送風ファンの最大周波数(fmax)と、当該時点における周波数(f(t))と、により求めた周波数余裕率[(Ri=1−(f(t)/fmax)]、又は、
空調機の吹出温度計測値(Tb)と吹出温度設定値(Tbs)との乖離度(ΔTb=Tb−Tbs)について、所定の上限乖離度(ΔTb*)と、前記冷房出力設定変更のあった当該空調機の当該時点における乖離度(ΔTb(t))と、により求めた乖離度余裕率[(Ri=1−(ΔTb(t)/ΔTb*)]、
のいずれか、又は、これらの組み合わせであることを特徴とする。
【0014】
「上限乖離度(ΔTb*)」については、吹出温度の現設定値に対応して定義することができ、また、空調機運転実績に基づく所与の室内温度条件を考慮して設定してもよい。なお、上限を超えた検知(ΔTb(t)>ΔTb*)をした場合は、一律にRi=0とする。
【0015】
「これらの組み合わせ」とは、例えば開度余裕率、周波数余裕率、乖離度余裕率の平均値を以て、当該空調機の冷却余裕度(Ri)とすることをいう。
(4) 上記各発明において、前記冷房出力設定変更が、室温設定(Trs)変更、又は、送風ファン風量設定(Qs)変更のいずれか一方、又は、両方であることを特徴とする。
(5) 上記各発明において、所定値以上の冷房出力設定変更があったときに、
前記流量制御弁の当該時点における開度比(Φi(t)=θ(t)/θmax)が、上限開度比(Φi*)以上、
前記乖離度(ΔTb)が上限乖離度(ΔTb*)以上、又は、
前記冷房対象空間温度(Tr)が上限空間温度(ΔTr*)以上、
のいずれかに該当する場合には、前記(a3)のステップを実行しないことを特徴とする。
【0016】
各上限閾値については、サーバ許容温度から逆算して求める当該冷房対象空間の許容上限温度、運転実績により定められた所与の室内温度条件 等に基づき設定する。その際、同一冷却エリアの常用空調機台数、予備機台数の関係 等を考慮に入れることができる。
(6) 上記各発明において、前記(a3)において、
「(a1)に関らず当該空調機を除外して群冷却余裕度(Rg)を演算する」に替えて、
「当該空調機については、設定変更率に対応する緩和係数(k)を乗じた冷却余裕度(Ri’=k*Ri)として、群冷却余裕度(Rg)を演算する」であることを特徴とする。
【0017】
なお、緩和係数(k)については、同一冷却エリアの空調機台数や、室の総冷却負荷量、等を考慮して設定することができる。
(7) 上記各発明において、前記アラーム発報の有無に応じて、発報回数累計を加算又は減算するステップと、
回数累計が所定の上限閾値(Na*)以上の場合には、室温設定(Trs)変更速度(ΔTrs/Δt)、又は、送風ファン風量設定(Qs)変更速度(ΔQs/Δt)を1段階遅延化させるステップと、
その後、群冷却余裕度(Rg)が所定の下限閾値(Rc)を下回ったときは、室温設定変更速度又は送風ファン風量変更速度を1段階迅速化させるステップと、をさらに含むことを特徴とする。
【0018】
「上限閾値(Na*)」については、対象建物の安全性の要求グレード、アラーム発生時における対応者の常駐有無、対象建物の規模や空調機総台数、等を考慮して設定することができる。