特許第6339716号(P6339716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6339716
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】圧力緩衝装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/34 20060101AFI20180528BHJP
   F16K 15/14 20060101ALI20180528BHJP
   F15B 15/22 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   F16F9/34
   F16K15/14 A
   F15B15/22 F
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-45482(P2017-45482)
(22)【出願日】2017年3月9日
【審査請求日】2017年5月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】中野 剛太
(72)【発明者】
【氏名】前田 一成
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 裕
(72)【発明者】
【氏名】小仲井 誠良
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−280919(JP,A)
【文献】 特開2013−029133(JP,A)
【文献】 特開2004−211878(JP,A)
【文献】 特開平11−051105(JP,A)
【文献】 特開2002−195335(JP,A)
【文献】 実開平03−035341(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/34
F16K 15/14
F15B 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を収容するシリンダと、
前記シリンダに対するロッドの軸方向の相対移動に伴って流体が流れる流路を形成するピストンと、
弾性を有し、前記ピストンの前記流路を開閉するバルブと、
前記ピストンに接触する接触位置と前記ピストンから離れる離間位置との間で前記バルブの位置の移動を許容する移動許容部と、
弾性を有し、前記バルブを前記ピストンに向けて押し付ける押付部と、
前記押付部とは別体に設けられるとともに、前記離間位置にて前記バルブと環状に接触して前記バルブの半径方向内側の前記ピストンに対して前記離間位置から更に離れる方向への移動を制限する制限部と、
を備える圧力緩衝装置。
【請求項2】
前記押付部は、半径方向外側に延びる複数の突出部を有し、
前記突出部は、前記バルブに向けて突出する第1突出部と、前記バルブ側とは逆側に向けて突出する第2突出部とを有する請求項1に記載の圧力緩衝装置。
【請求項3】
前記押付部の前記バルブ側とは逆側に設けられ、前記押付部の前記第2突出部に接触する接触部材を備える請求項2に記載の圧力緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を用いて緩衝を行う圧力緩衝装置が知られている。そして、圧力緩衝装置においては、流体の流れを制御するバルブが設けられる。このバルブに関して、バルブの位置を移動させることで流体の流れを制御するものが存在する(例えば特許文献1参照)。また、バルブの変形によって流体の流れを制御するものも存在する(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−211878号公報
【特許文献2】特開2003−254372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、位置の移動によって流体の流れを制御するバルブを採用した場合、流体の大きな圧力をバルブが受けた際にバルブが一気に移動することで、バルブが他の部材に接触して音が発生するおそれがあった。また、変形によって流体の流れを制御するバルブを採用した場合、バルブが疲労するおそれがあった。
【0005】
本発明は、バルブによる流体の流れの制御に伴う音の発生の抑制およびバルブの耐久性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、流体を収容するシリンダと、前記シリンダに対するロッドの所定方向の相対移動に伴って流体が流れる流路を形成するピストンと、弾性を有し、前記ピストンの前記流路を開閉するバルブと、前記ピストンに接触する接触位置と前記ピストンから離れる離間位置との間で前記バルブの位置の移動を許容する移動許容部と、弾性を有し、前記バルブを前記ピストンに向けて押し付ける押付部と、前記押付部とは別体に設けられるとともに、前記離間位置にて前記バルブと環状に接触して前記バルブの半径方向内側の前記ピストンに対して前記離間位置から更に離れる方向への移動を制限する制限部と、を備える圧力緩衝装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バルブによる流体の流れの制御に伴う音の発生の抑制およびバルブの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の油圧緩衝装置の全体図である。
図2】第1実施形態のボトムピストン部の断面図である。
図3】(A)は第1実施形態のボトムピストン部の部分断面図であり、(B)は第1実施形態の押付部材の斜視図である。
図4】(A)および(B)は、第1実施形態の油圧緩衝装置の動作説明図である。
図5】第2実施形態の油圧緩衝装置の説明図である。
図6】(A)および(B)は、第2実施形態のチェックバルブ部の説明図である。
図7】(A)および(B)は、第3実施形態の油圧緩衝装置の説明図である。
図8】(A)〜(C)は、第4実施形態の油圧緩衝装置の説明図である。
図9】(A)および(B)は、第5実施形態の油圧緩衝装置の説明図である。
図10】(A)〜(C)は、第6実施形態の油圧緩衝装置の説明図である。
図11】(A)および(B)は、第1変形例および第2変形例のボトムピストン部の説明図である。
図12】第3変形例のボトムピストン部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
[油圧緩衝装置1の構成・機能]
図1は、第1実施形態の油圧緩衝装置1の全体図である。
図1に示すように、油圧緩衝装置1(圧力緩衝装置の一例)は、オイルを収容するシリンダ部10と、他方側がシリンダ部10の外部に突出して設けられるとともに一方側がシリンダ部10の内部にスライド可能に挿入されるロッド20とを有する。また、油圧緩衝装置1は、ロッド20の一方側の端部に設けられるピストン部30と、シリンダ部10の一方側の端部に設けられるボトムピストン部40と、シリンダ部10の半径方向外側に設けられる減衰力可変部50とを備える。
【0010】
なお、以下の説明において、図1に示す油圧緩衝装置1の長手方向は、「軸方向」と称する。また、軸方向における下側は、「一方側」と称し、油圧緩衝装置1の上側は、「他方側」と称する。また、図1に示す油圧緩衝装置1の左右方向は、「半径方向」と称する。そして、半径方向において、中心軸側は、「半径方向内側」と称し、中心軸に対して離れる側は、「半径方向外側」と称する。さらに、油圧緩衝装置1の軸方向を中心とした回転方向を「周方向」と称する。
【0011】
〔シリンダ部10の構成・機能〕
シリンダ部10は、シリンダ11と、シリンダ11の半径方向外側に設けられる外筒体12と、外筒体12のさらに半径方向外側に設けられるダンパケース13とを有する。
【0012】
シリンダ11は、円筒状に形成され、他方側にシリンダ開口11Hを有する。
外筒体12は、シリンダ11との間に、連絡路Lを形成する。また、外筒体12は、減衰力可変部50との対向位置に、外筒体開口部12Hを有する。
ダンパケース13は、外筒体12との間においてオイルが溜まるリザーバ室Rを形成する。リザーバ室Rは、ロッド20のシリンダ11に対する相対移動に伴って、シリンダ11(第1油室Y1)内のオイルを吸収したりシリンダ11(第1油室Y1)内にオイルを供給したりする。また、リザーバ室Rは、減衰力可変部50から流出したオイルを溜める。また、ダンパケース13は、減衰力可変部50との対向位置に、ケース開口部13Hを有する。
【0013】
〔ロッド20の構成・機能〕
ロッド20は、軸方向に長く延びる棒状の部材である。ロッド20は、一方側にてピストン部30に接続する。また、ロッド20は、他方側にて図示しない連結部材等を介して車体側に接続する。
【0014】
〔ピストン部30の構成・機能〕
ピストン部30は、複数のピストン油路口311を有するピストンボディ31と、ピストン油路口311の他方側を開閉するピストンバルブ32と、ピストンバルブ32とロッド20の一方側端部との間に設けられるスプリング33とを有する。そして、ピストン部30は、シリンダ11内のオイルを第1油室Y1と第2油室Y2とに区画する。
【0015】
〔ボトムピストン部40の構成・機能〕
ボトムピストン部40は、バルブシート41(ピストンの一例)と、バルブシート41の一方側に設けられる減衰バルブ部42と、バルブシート41の他方側に設けられるチェックバルブ部43と、軸方向に設けられる固定部材44(保持部の一例)と、を有する。そして、ボトムピストン部40は、第1油室Y1とリザーバ室Rとを区分する。
なお、ボトムピストン部40のバルブシート41、減衰バルブ部42、チェックバルブ部43および固定部材44については、後に詳しく説明する。
【0016】
〔減衰力可変部50の構成・機能〕
減衰力可変部50は、ソレノイド部51と、接続流路部材52と、ソレノイドバルブ55とを有する。
ソレノイド部51は、図示しない制御部による制御に基づいて、プランジャ51Pを進退移動させる。
接続流路部材52は、内側に接続流路52Rを有する略円筒状に形成される部材である。
ソレノイドバルブ55は、接続流路部材52に対する位置の移動に応じて、接続流路52Rにおけるオイルの流路断面積を変化させる。そして、ソレノイドバルブ55は、接続流路52Rにおけるオイルの流れを絞る。
なお、第1実施形態においては、ソレノイドバルブ55によってオイルの流れを絞ることにより、油圧緩衝装置1における減衰力を主に発生させている。
【0017】
図2は、第1実施形態のボトムピストン部40の断面図である。
図3(A)は、第1実施形態のボトムピストン部40の部分断面図であり、図3(B)は、第1実施形態の押付部材433の斜視図である。
【0018】
(バルブシート41)
図2に示すように、バルブシート41は、半径方向内側に形成される貫通孔41Hと、貫通孔41Hの半径方向外側に形成される圧側油路412と、圧側油路412の半径方向外側に形成される伸側油路413とを有する。また、バルブシート41は、他方側に形成される保持構造部414と、他方側に形成される内側ラウンド部415(内側環状部の一例)と、他方側に形成される外側ラウンド部416(外側環状部の一例)とを有する。また、バルブシート41は、一方側に形成されるリザーバ流路部417を有する。
【0019】
貫通孔41Hは、バルブシート41の軸方向に延びて形成される。そして、貫通孔41Hには、固定部材44が挿入される。
【0020】
圧側油路412は、周方向において略等間隔に複数(本実施形態では4つ)設けられる。そして、圧側油路412は、他方側の端部に第1他方側油路口P1と、一方側の端部に第1一方側油路口P3とを形成する。
そして、圧側油路412は、油圧緩衝装置1の圧縮行程時に、第1油室Y1とリザーバ室Rとの間でのオイルの流れを可能にする(図1参照)。
【0021】
伸側油路413は、周方向において略等間隔に複数(本実施形態では4つ)設けられる。そして、伸側油路413は、他方側の端部に第2他方側油路口P2(流路口の一例)と、一方側の端部に第2一方側油路口P4とを形成する。
そして、伸側油路413は、油圧緩衝装置1の伸張行程時に、リザーバ室Rと第1油室Y1との間でのオイルの流れを可能にする(図1参照)。
【0022】
保持構造部414(移動許容部の一例)は、貫通孔41Hの外周において略環状に形成される。そして、保持構造部414は、他方側に向けて軸方向に突出する。そして、保持構造部414は、チェックバルブ431の軸方向における位置の移動を可能にする空間(後述する隙間C)を形成する。
また、図3(A)に示すように、第1実施形態の保持構造部414は、側面414Tがテーパ状に形成されている。具体的には、保持構造部414は、一方側と比較して他方側における外径が小さく形成されている。これによって、第1実施形態では、チェックバルブ431は、軸方向においてスムーズに位置の移動が可能になっている。
【0023】
内側ラウンド部415は、第1他方側油路口P1の半径方向外側であって第2他方側油路口P2の半径方向内側にて(図2参照)、環状に形成される。また、内側ラウンド部415は、他方側に向けて軸方向に突出する。そして、第1実施形態の内側ラウンド部415は、後述のチェックバルブ431との接触箇所を形成する。さらに、内側ラウンド部415は、後述のチェックバルブ431とともに、第1他方側油路口P1と第2他方側油路口P2(図2参照)との間でのオイルの流れを抑制する。
【0024】
外側ラウンド部416は、第2他方側油路口P2の半径方向外側にて(図2参照)、環状に形成される。また、外側ラウンド部416は、他方側に向けて軸方向に突出する。外側ラウンド部416の軸方向における突出高さは、内側ラウンド部415と比較して若干高く形成されている。そして、外側ラウンド部416は、後述のチェックバルブ431との接触箇所を形成する。
【0025】
なお、第1実施形態において、内側ラウンド部415および外側ラウンド部416を通る面をラウンド面41Pと呼ぶ。
【0026】
リザーバ流路部417は、一方側の端部に形成される開口である。リザーバ流路部417は、半径方向内側にて第1一方側油路口P3、減衰バルブ部42および第2一方側油路口P4に対向する。また、リザーバ流路部417は、半径方向外側にてリザーバ室R(図1参照)に接続する。
【0027】
(減衰バルブ部42)
図2に示すように、減衰バルブ部42は、減衰バルブ421と、減衰バルブ421の一方側に設けられる圧側環座422とを有する。
【0028】
減衰バルブ421は、半径方向内側に固定部材44が貫通する円盤状の金属板である。そして、減衰バルブ421の外周は、第1一方側油路口P3よりも半径方向外側であって第2一方側油路口P4の半径方向内側まで形成される。
また、第1実施形態の減衰バルブ421の厚みは、後述するチェックバルブ431の厚みよりも大きく形成されている。
以上のように構成される減衰バルブ421は、第1一方側油路口P3を開閉し、第2一方側油路口P4を常に開放する。
【0029】
圧側環座422は、半径方向内側に固定部材44が貫通する円盤状の金属板である。圧側環座422の外径は、減衰バルブ421よりも小さい。そして、圧側環座422は、減衰バルブ421が一方側に向けて変形する際の変形領域を確保する。
【0030】
なお、減衰バルブ421は、複数(例えば、3枚)の金属板によって形成しても構わない。この場合においても、減衰バルブ421の総厚は、後述するチェックバルブ431の厚みよりも大きくする。
【0031】
(チェックバルブ部43)
図3(A)に示すように、チェックバルブ部43は、バルブシート41の他方側に設けられるチェックバルブ431(バルブの一例)と、チェックバルブ431の他方側に設けられるチェックバルブストッパ432(制限部の一例)と、チェックバルブストッパ432の他方側に設けられる押付部材433(押付部の一例)と、押付部材433の他方側に設けられるカラー部材434(支持部の一例)と、を有する。
【0032】
チェックバルブ431は、半径方向内側に保持構造部414を通す開口部431Hを有する円盤状の金属板である。そして、チェックバルブ431の外周は、外側ラウンド部416上に位置している。
なお、チェックバルブ431の外周は、外側ラウンド部416よりも半径方向外側に位置していても良い。
【0033】
そして、図3(A)に示すように、チェックバルブ431は、開口部431Hの半径方向外側に形成されるチェックバルブ油路口431Mと、チェックバルブ油路口431Mの半径方向外側に形成されるスリット431Sとを有する。
チェックバルブ油路口431Mは、半径方向において第1他方側油路口P1に対応した位置に形成される。そして、チェックバルブ油路口431Mは、複数設けられる。また、チェックバルブ油路口431Mは、第1他方側油路口P1に対向して設けられる。
【0034】
スリット431Sは、チェックバルブ431の外周にて、半径方向内側に向けて形成される切欠きによって形成されている。そして、スリット431Sは、外側ラウンド部416に対向するように設けられる。スリット431Sは、伸側行程時であってロッド20が微低速で移動する際に、チェックバルブ431が全体的に変形して第2他方側油路口P2を開かない状態でも、伸側油路413を介したオイルの流れを可能にする。
【0035】
以上のように構成されるチェックバルブ431は、第2他方側油路口P2を開閉し、第1他方側油路口P1を常に開放する。そして、第1実施形態のチェックバルブ431は、ロッド20の一方向の移動の際に伸側油路413を介したオイルの流れを制限し、ロッド20の他方向の移動の際に伸側油路413を介したオイルの流れを許容する。
なお、第1実施形態の油圧緩衝装置1において、チェックバルブ431は、減衰力の発生を主たる目的としておらず、伸側油路413におけるオイルの流れを切り替える部材である。
【0036】
図3(A)に示すように、チェックバルブストッパ432は、半径方向内側に固定部材44を通す開口部432Hを有する略円環状の金属板である。チェックバルブストッパ432は、保持構造部414よりも外径が大きい。従って、チェックバルブストッパ432は、保持構造部414に対して半径方向外側に突出している。
【0037】
そして、チェックバルブストッパ432は、軸方向において、バルブシート41のラウンド面41Pに対して予め定められた隙間Cをもって離れて設けられる。従って、チェックバルブ431は、ラウンド面41Pに接触する接触位置と、ラウンド面41Pから離れた離間位置との間にて移動可能になっている。
また、チェックバルブストッパ432は、ラウンド面41Pから遠い離間位置にて、チェックバルブ431の撓み変形を制限する。
【0038】
ここで、第1実施形態において、接触位置は、チェックバルブ431の全てがラウンド面41Pに接触する位置である。また、離間位置は、チェックバルブ431の全てがラウンド面41Pに対して離れる位置である。
なお、チェックバルブ431の位置の移動とは、チェックバルブ431が全体的に軸方向に変位することと捉えることもできる。この場合に、チェックバルブ431の位置の移動とは、チェックバルブ431の変形を伴わない状態での変位と捉えることもできる。
また、チェックバルブ431の変形とは、半径方向内側(開口部432H側)が離間位置に位置した状態にて、半径方向外側(少なくとも第2他方側油路口P2の対向部)が変形することと捉えることもできる。
【0039】
図3(B)に示すように、押付部材433は、半径方向内側に固定部材44およびカラー部材434を通す開口部433Hを有する部材である。そして、押付部材433は、弾性を有する。なお、押付部材433の材料には、例えば鉄などの金属を用いることができる。
そして、押付部材433は、第1外側突出部433Aと、第2外側突出部433Bと、被保持部433Rと、内側突出部433Pとを有する。
【0040】
第1外側突出部433A(突出部の一例)は、半径方向外側であって一方側に向けて突出している。また、第1外側突出部433Aは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置されている。そして、第1外側突出部433Aは、接触端部E1にて、チェックバルブ431の他方側の面に接触する(図3(A)参照)。
【0041】
なお、図3(A)に示すように、第1実施形態の押付部材433の第1外側突出部433Aの接触端部E1は、内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって、外側ラウンド部416よりも半径方向内側の範囲にてチェックバルブ431に接触する。
【0042】
第2外側突出部433Bは、半径方向外側であって他方側に向けて突出している。また、第2外側突出部433Bは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置されている。なお、第1実施形態においては、第2外側突出部433Bは、他の部材には接触せず、自由端となっている。
なお、第1実施形態では、第1外側突出部433Aと対称の関係で第2外側突出部433Bを設けることによって、例えば装置の組み立て作業において、押付部材433を第1実施形態とは反対に取り付けた場合であっても、同様に作用するようにしている。
【0043】
そして、第1外側突出部433Aと第2外側突出部433Bとは、周方向において、交互に並べられている。また、第1外側突出部433Aと第2外側突出部433Bとの間には、切欠部433Kが形成される。
【0044】
被保持部433Rは、半径方向内側に向けて突出している。また、被保持部433Rの周方向における幅は、半径方向外側よりも半径方向内側の方が小さくなるテーパ状に形成されている。さらに、被保持部433Rは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置されている。そして、被保持部433Rの半径方向内側は、チェックバルブストッパ432とカラー部材434とによって挟まれる。
また、被保持部433Rは、切欠部433Kに対向する位置に設けられる。具体的には、被保持部433Rは、半径方向に沿って切欠部433Kに並ぶように配置される。
【0045】
内側突出部433Pは、半径方向内側に向けて突出している。なお、内側突出部433Pの突出量は、被保持部433Rよりも小さい。
また、内側突出部433Pは、切欠部433Kに対向する位置に設けられる。具体的には、被保持部433Rは、半径方向に沿って切欠部433Kに並ぶように配置される。
【0046】
第1実施形態の押付部材433では、第1外側突出部433Aと第2外側突出部433Bとの間に形成される切欠部433Kに対向する位置に、被保持部433Rおよび内側突出部433Pをそれぞれ配置することで、切欠部433Kにおける応力集中を低減している。
【0047】
図3(A)に示すように、カラー部材434は、小径部434Nと、小径部434Nの他方側に設けられる大径部434Wとを有する。また、カラー部材434は、固定部材44の後述するナット442とは別体に構成されている。
小径部434Nは、一方側にてチェックバルブストッパ432に接触する。また、小径部434Nは、半径方向において押付部材433の被保持部433Rに接触する。そして、小径部434Nは、押付部材433の半径方向における位置を定める。
大径部434Wは、小径部434Nよりも半径方向外側に突出している。そして、大径部434Wは、押付部材433の被保持部433Rの他方側に接触する。
【0048】
なお、第1実施形態のカラー部材434は、大径部434Wの外径に応じて、押付部材433の被保持部433Rの半径方向における押さえ量が変わる。従って、大径部434Wのサイズが異なるカラー部材434を用いることによって、押付部材433のバネレートを容易に変更することができる。
【0049】
(固定部材44)
図2に示すように、固定部材44は、一方側に設けられるボルト441と、他方側に設けられるナット442とを有する。そして、固定部材44は、減衰バルブ部42とチェックバルブ部43とを、それぞれバルブシート41に固定する。
【0050】
[油圧緩衝装置1の動作]
図4は、第1実施形態の油圧緩衝装置1の動作説明図である。なお、図4(A)は伸張行程時におけるオイルの流れを示し、図4(B)は圧縮行程時におけるオイルの流れを示す。
まず、油圧緩衝装置1の伸張行程時における動作を説明する。
図4(A)に示すように、伸張行程時において、ロッド20は、シリンダ11に対して他方側に移動する。このとき、ピストンバルブ32は、ピストン油路口311を塞いだままである。また、ピストン部30の他方側への移動によって、第2油室Y2の容積は、減少する。そして、第2油室Y2のオイルは、シリンダ開口11Hから連絡路Lに流れ出る。
【0051】
さらに、オイルは、連絡路L、外筒体開口部12Hおよび接続流路52Rを通って、減衰力可変部50に流れ込む。減衰力可変部50において、接続流路52Rのオイルは、ソレノイドバルブ55によって流れが絞られる。このソレノイドバルブ55によってオイルの流れが絞られることによって減衰力が発生する。その後、オイルは、リザーバ室Rに流れ出る。
【0052】
また、第1油室Y1の圧力がリザーバ室Rに対して相対的に低くなる。そのため、リザーバ室Rのオイルは、ボトムピストン部40の伸側油路413に流れ込む。
このとき、第1実施形態のチェックバルブ431は、押付部材433のバネ力に抗して他方側に位置が移動する(図3(A)参照)。さらに、チェックバルブ431は、半径方向外側から半径方向内側に向かって撓み変形する。このように、第1実施形態のチェックバルブ431は、伸側油路413を開く際に、チェックバルブ431の軸方向の位置の移動と、チェックバルブ431の撓み変形との両方の動作を生じる。その後、オイルは、第1油室Y1に流れ込む。
【0053】
以上のように、第1実施形態のチェックバルブ431は、位置の移動と、撓み変形との両方の動作をする。これによって、チェックバルブ431にかかる力が押付部材433の変形に伴うチェックバルブ431の位置の移動と、チェックバルブ431自体の撓み変形とに分散される。従って、チェックバルブ431が撓み変形を伴わず位置の移動だけをする場合と比較して、チェックバルブ431が一気に移動せず、チェックバルブ431の位置の移動に伴う大きな音の発生が抑制される。また、チェックバルブ431が撓み変形を伴わず位置の移動だけをする場合と比較して、チェックバルブ431の変形量が小さくなりチェックバルブ431の耐久性が向上する。
【0054】
次に、油圧緩衝装置1の圧縮行程時における動作を説明する。
図4(B)に示すように、圧縮行程時において、ロッド20は、シリンダ11に対して一方側に相対移動する。ピストン部30においては、第1油室Y1と第2油室Y2との差圧によって、ピストン油路口311を塞ぐピストンバルブ32が開く。そして、第1油室Y1のオイルは、ピストン油路口311を通って第2油室Y2に流れ出る。ここで、第2油室Y2にはロッド20が配置されている。そのため、第1油室Y1から第2油室Y2に流れ込むオイルは、ロッド20の進入体積分だけ過剰になる。従って、このロッド20の進入体積分に相当する量のオイルは、シリンダ開口11Hから連絡路Lに流出する。
【0055】
さらに、オイルは、連絡路L、外筒体開口部12Hおよび接続流路52Rを通って、減衰力可変部50に流れ込む。なお、減衰力可変部50におけるオイルの流れは、上述した伸張行程時におけるオイルの流れと同様である。
【0056】
また、ロッド20がシリンダ11に対して一方側に相対移動することで、第1油室Y1のオイルは、ボトムピストン部40の押付部材433の開口部433Hおよびチェックバルブ油路口431Mを通って(図2参照)、圧側油路412に流れ込む。そして、圧側油路412に流れたオイルは、減衰バルブ421を開く。そして、オイルは、リザーバ室Rに流れ出る。すなわち、第1油室Y1における圧力に応じて、シリンダ開口11Hから減衰力可変部50に流れるオイルの流れとボトムピストン部40におけるオイルの流れとの両方で減衰力を発生させる。
【0057】
特に、押付部材433は、伸張行程にて開いたチェックバルブ431が、圧縮行程に移行するときに、チェックバルブ431が第2他方側油路口P2を直ちに閉じるように作用する。これによって、圧縮行程の初期における減衰力の発生(いわゆる、減衰力の立ち上がり)が早くなる。
さらに、第1実施形態では、押付部材433がチェックバルブ431に対して内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって外側ラウンド部416よりも半径方向内側にて接触するため、チェックバルブ431が内側ラウンド部415および外側ラウンド部416の両方に隙間無く接触することで、オイルのリークが抑制される。
【0058】
ところで、減衰力可変部50にて減衰力を調整する場合には、ソレノイド部51によってソレノイドバルブ55を制御する(図1参照)。具体的には、ソレノイド部51によってソレノイドバルブ55と接続流路部材52との距離を変更する。このとき、ソレノイドバルブ55と接続流路部材52との間隔が狭くなれば、オイルの流れの抵抗が大きくなって減衰力は、高まる。一方、ソレノイドバルブ55と接続流路部材52との間隔が広がれば、オイルの流れの抵抗が小さくなって、減衰力は、低くなる。
【0059】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の油圧緩衝装置1の説明図である。
図6は、第2実施形態のチェックバルブ部53の説明図である。ここで、図6(A)は、第2実施形態の第2押付部材533の斜視図であり、図6(B)は、第2実施形態のボトムピストン部40の部分断面図である。
なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
第2実施形態の油圧緩衝装置1では、ボトムピストン部40のチェックバルブ部53の構造が、第1実施形態とは異なる。
図5に示すように、第2実施形態のボトムピストン部40のチェックバルブ部53は、チェックバルブ431と、チェックバルブストッパ432と、チェックバルブ431の他方側に設けられる第2押付部材533と、チェックバルブストッパ432の一方側に設けられるスペーサ部材534と、を有する。
【0061】
図6(A)に示すように、第2押付部材533は、半径方向内側に固定部材44を通す開口部533Hを有する部材である。そして、第2押付部材533は、弾性を有する。なお、第2押付部材533の材料には、例えば鉄などの金属を用いることができる。
さらに、第2押付部材533は、環状接触部533Tと、被保持部533Rとを有する。
【0062】
図6(B)に示すように、環状接触部533Tは、接触端部E2にてチェックバルブ431の他方側の面に接触する。また、環状接触部533Tの外周部G1は、チェックバルブ431に対して接触端部E2よりも軸方向において遠くに位置する。
【0063】
図6(A)に示すように、被保持部533Rは、半径方向内側であって他方側に向けて突出している。また、被保持部533Rの周方向における幅は、半径方向外側よりも半径方向内側の方が小さくなるテーパ状に形成されている。さらに、被保持部533Rは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置されている。そして、被保持部533Rの半径方向内側は、ナット442に掛けられている(図6(B)参照)。
また、隣り合う2つの被保持部533Rの間には、略円弧状の円弧部533Cが形成される。
【0064】
そして、図6(B)に示すように、第2実施形態の第2押付部材533の環状接触部533Tの接触端部E2は、内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって、外側ラウンド部416よりも半径方向内側の範囲に位置する。
【0065】
図6(B)に示すように、スペーサ部材534(移動許容部の一例)は、少なくともチェックバルブ431および第2押付部材533とは分離することが可能な別体に構成されている。また、スペーサ部材534は、バルブシート41とチェックバルブストッパ432との間に介在するように設けられる。そして、第2実施形態のスペーサ部材534は、チェックバルブストッパ432をラウンド面41Pの他方側に位置させる。すなわち、スペーサ部材534は、チェックバルブ431の軸方向における位置を移動可能にする空間(隙間C)を形成する。
【0066】
そして、第2実施形態では、スペーサ部材534がバルブシート41とは別体にて構成されることによって、スペーサ部材534の軸方向の厚みを異ならせることによって、チェックバルブ431の軸方向における位置の移動範囲(隙間Cの大きさ)を容易に調整可能にしている。
【0067】
以上のように構成される第2実施形態のボトムピストン部40においても、チェックバルブ431が一気に移動せず、他の部材との接触に伴う大きな音の発生が抑制される。また、チェックバルブ431の耐久性が向上する。
【0068】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態の油圧緩衝装置1の説明図である。
なお、第3実施形態において、他の実施形態と同様の部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0069】
第3実施形態の油圧緩衝装置1では、ボトムピストン部40のチェックバルブ部63の構造が、他の実施形態とは異なる。
図7(A)に示すように、第3実施形態のチェックバルブ部63は、チェックバルブ431と、チェックバルブストッパ432と、他方側に設けられる第3押付部材633と、カラー部材434と、を有する。
【0070】
図7(B)に示すように、第3押付部材633は、半径方向内側に固定部材44およびカラー部材434を通す開口部633Hを有する部材である。そして、第3押付部材633は、弾性を有する。なお、第3押付部材633の材料には、例えば鉄などの金属を用いることができる。
そして、第3押付部材633は、周方向接触部633Tと、被保持部633Rとを有している。
【0071】
周方向接触部633Tは、周方向であって一方側に向けて突出している。また、周方向接触部633Tは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置されている。そして、周方向接触部633Tは、接触端部E3にて、チェックバルブ431の他方側の面に接触する(図7(A)参照)。
なお、図7(A)に示すように、第3実施形態の第3押付部材633の周方向接触部633Tの接触端部E3は、内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって、外側ラウンド部416よりも半径方向内側の範囲に位置する。
【0072】
被保持部633Rは、半径方向内側に向けて突出している。また、被保持部633Rの周方向における幅は、半径方向外側よりも半径方向内側の方が小さくなるテーパ状に形成されている。さらに、被保持部633Rは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置されている。そして、被保持部633Rの半径方向内側は、カラー部材434に掛けられる(図7(A)参照)。
【0073】
以上のように構成される第3実施形態のボトムピストン部40においても、チェックバルブ431の位置の移動に伴う大きな音の発生が抑制される。また、チェックバルブ431の耐久性が向上する。
【0074】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態の油圧緩衝装置1の説明図である。
なお、第4実施形態において、他の実施形態と同様の部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0075】
第4実施形態の油圧緩衝装置1では、ボトムピストン部40のチェックバルブ部73の構造が、他の実施形態とは異なる。
図8(A)に示すように、第4実施形態のチェックバルブ部73は、チェックバルブ431と、チェックバルブストッパ432と、チェックバルブストッパ432の他方側に設けられる第4押付部材733と、チェックバルブストッパ432の他方側に設けられる受部材735とを有する。
【0076】
図8(B)に示すように、第4押付部材733は、半径方向内側に固定部材44および受部材735を通す開口部733Hを有する部材である。そして、第4押付部材733は、弾性を有する。なお、第4押付部材733の材料には、例えば鉄などの金属を用いることができる。
そして、第4押付部材733は、第1周方向接触部733Aと、第2周方向接触部733Bと、被保持部733Rとを有している。
【0077】
第1周方向接触部733Aは、周方向であって一方側に向けて突出している。また、第1周方向接触部733Aは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置されている。そして、第1周方向接触部733Aは、接触端部E4にて、チェックバルブ431の他方側の面に接触する(図8(A)参照)。
なお、図8(A)に示すように、第4実施形態の第4押付部材733の第1周方向接触部733Aの接触端部E4は、内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって、外側ラウンド部416よりも半径方向内側の範囲に位置する。
【0078】
図8(B)に示すように、第2周方向接触部733Bは、周方向であって他方側に向けて突出している。また、第2周方向接触部733Bは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置されている。そして、第2周方向接触部733Bは、接触端部E5にて、受部材735に接触する。
【0079】
被保持部733Rは、半径方向内側に向けて突出している。また、被保持部733Rの周方向における幅は、半径方向外側よりも半径方向内側の方が小さくなるテーパ状に形成されている。さらに、被保持部733Rは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置されている。そして、被保持部733Rの半径方向内側は、受部材735に掛けられる。
【0080】
図8(C)に示すように、受部材735(変形制限部の一例)は、押付部材収容部735Hと、複数の油路口735Yとを有する。また、受部材735は、チェックバルブ431の一定量以上の撓み変形を抑制する。
図8(A)に示すように、押付部材収容部735Hは、他方側および半径方向において第4押付部材733を覆うようにして第4押付部材733を保持する。また、押付部材収容部735Hは、他方側にて、第4押付部材733の第2周方向接触部733Bに接触している。さらに、押付部材収容部735Hは、一方側にて、ラウンド面41Pに対して所定の距離をもって離れて設けられている。
油路口735Yは、受部材735の他方側に形成され、受部材735を介した軸方向のオイルの流れを可能にする。
【0081】
以上のように構成される第4実施形態のボトムピストン部40においても、チェックバルブ431の位置の移動に伴う大きな音の発生が抑制される。また、チェックバルブ431の耐久性が向上する。
さらに、第4実施形態では、第4押付部材733が他方側にて受部材735により押さえ込まれることによって、第4押付部材733の反力が安定して生じ易くなる。また、チェックバルブ431の撓み変形が所定量になると、チェックバルブ431の所定量以上の変形が抑制される。
【0082】
<第5実施形態>
図9は、第5実施形態の油圧緩衝装置1の説明図である。
なお、第5実施形態において、他の実施形態と同様の部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0083】
第5実施形態の油圧緩衝装置1では、ボトムピストン部40のチェックバルブ部83の構造が、他の実施形態とは異なる。
図9(A)に示すように、第5実施形態のチェックバルブ部83は、チェックバルブ431と、チェックバルブストッパ432と、チェックバルブストッパ432の他方側に設けられる第5押付部材836と、第5押付部材836の他方側に設けられる板バネ837と、カラー部材434とを有する。
【0084】
第5押付部材836は、形状が第1実施形態の押付部材433と同じである。ただし、第5押付部材836は、押付部材433と異なり、チェックバルブ431の位置の移動および変形によっても、弾性変形し難く構成されている。
なお、第5実施形態の第5押付部材836の接触端部E6は、内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって、外側ラウンド部416よりも半径方向内側の範囲にてチェックバルブ431に接触する。
【0085】
図9(B)に示すように、板バネ837は、半径方向内側に固定部材44が貫通する円盤状の金属板である。そして、板バネ837は、固定部材44およびカラー部材434によって保持されている。また、板バネ837は、複数の油路口837Yを有している。
板バネ837は、一方側にて第5押付部材836が接触する。そして、板バネ837は、第5押付部材836を介して、チェックバルブ431をバルブシート41に押し付ける。
【0086】
以上のように構成される第5実施形態のボトムピストン部40においても、チェックバルブ431の位置の移動に伴う大きな音の発生が抑制される。また、チェックバルブ431の耐久性が向上する。
【0087】
<第6実施形態>
図10は、第6実施形態の油圧緩衝装置1の説明図である。
なお、第6実施形態において、他の実施形態と同様の部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0088】
第6実施形態の油圧緩衝装置1では、ボトムピストン部40のチェックバルブ部93の構造が、他の実施形態とは異なる。
図10(A)に示すように、第6実施形態のボトムピストン部40のチェックバルブ部93は、チェックバルブ431と、チェックバルブストッパ432と、チェックバルブストッパ432の他方側に設けられる第6押付部材933と、チェックバルブストッパ432の他方側に設けられる受部材935(変形制限部の一例)とを有する。
【0089】
図10(B)に示すように、第6押付部材933は、波状に形成された環状の部材であるウェーブワッシャである。そして、第6押付部材933は、例えば鉄などの金属を材料とし、弾性を有する。
そして、第6押付部材933は、一方側の接触端部E7にてチェックバルブ431に接触し、他方側にて受部材935に接触する(図10(A)参照)。
なお、第6実施形態の第6押付部材933の接触端部E7は、内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって、外側ラウンド部416よりも半径方向内側の範囲に位置する。
【0090】
図10(C)に示すように、受部材935は、押付部材収容部935Hと、油路口935Yとを有する。
図10(A)に示すように、押付部材収容部935Hは、他方側および半径方向において第6押付部材933を覆うようにして第6押付部材933を保持する。さらに、押付部材収容部935Hは、一方側にて、ラウンド面41Pに対して所定の距離をもって離れて設けられている。
油路口935Yは、受部材935の他方側に形成され、受部材935を介した軸方向のオイルの流れを可能にする。
【0091】
以上のように構成される第6実施形態のボトムピストン部40においても、チェックバルブ431の位置の移動に伴う大きな音の発生が抑制される。また、チェックバルブ431の耐久性が向上する。
さらに、第6実施形態では、第6押付部材933が他方側にて受部材935により押さえ込まれることによって、第6押付部材933の反力が安定して生じ易くなる。また、チェックバルブ431の撓み変形が所定量になると、第6押付部材933によって、チェックバルブ431の所定量以上の変形が抑制される。
【0092】
<変形例>
図11は、変形例のボトムピストン部40の説明図である。ここで、図11(A)は、第1変形例のボトムピストン部40の全体図であり、図11(B)は、第2変形例のボトムピストン部40の全体図である。
図12は、第3変形例のボトムピストン部40の説明図である。
なお、各変形例において、他の実施形態と同様の部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0093】
図11(A)に示すように、第1変形例のボトムピストン部40は、第1実施形態のボトムピストン部40と基本構成が同じである。ただし、第1変形例のボトムピストン部40は、押付部材433の他方側に板部材435(変形制限部の一例)が設けられている。
板部材435は、半径方向内側に固定部材44が貫通する円盤状の金属板である。また、板部材435は、オイルが通る油路口435Yを有する。
そして、第1変形例のボトムピストン部40において、板部材435は、チェックバルブ431が撓み変形が所定量になった場合に接触し、チェックバルブ431の所定量以上の変形を抑制する。
【0094】
図11(B)に示すように、第2変形例のボトムピストン部40は、第4実施形態のボトムピストン部40と基本構成が同じである。ただし、第2変形例のボトムピストン部40は、第4押付部材733の第2周方向接触部733Bがチェックバルブ431の位置の移動および変形の前の状態にて受部材735に接触していない。
そして、第2変形例のボトムピストン部40において、受部材735は、チェックバルブ431の撓み変形が所定量になった場合に接触する。そして、受部材735は、チェックバルブ431の第4押付部材733の一定量以上の変形を抑制する。
【0095】
第3変形例のボトムピストン部40の基本構成は、他の実施形態のボトムピストン部40と同様である。ただし、ただし、第3変形例のボトムピストン部40は、チェックバルブストッパ1032の形状が、他の実施形態とは異なる。
【0096】
図12に示すように、チェックバルブストッパ1032(制限部の一例)は、本体部132Bと、本体部132Bから半径方向に延びる突出部132Pとを有している。
本体部132Bは、外径がバルブシート41の保持構造部414よりも大きく内側ラウンド部415よりも小さく形成される。すなわち、本体部132Bは、チェックバルブ油路口431Mよりも内側にてチェックバルブ431に接触する。
【0097】
突出部132Pは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置される。そして、突出部132Pは、外径がバルブシート41の内側ラウンド部415よりも大きく形成される。すなわち、突出部132Pは、チェックバルブ油路口431Mよりも外側にてチェックバルブ431に接触する。
【0098】
ところで、チェックバルブ431のチェックバルブ油路口431Mの部分を起点として撓むと、応力集中によってチェックバルブ431にかかる負荷が大きくなる。これに対して、第3変形例においては、チェックバルブストッパ1032の突出部132Pが、チェックバルブ油路口431Mよりも内側における撓みを制限するように作用する。
なお、第3変形例のチェックバルブストッパ1032の形状は、図12に示す例に限定されない。チェックバルブストッパ1032は、チェックバルブ油路口431Mにおけるオイルの流れを可能にし、外径が内側ラウンド部415よりも大きければ、他の形状であっても良い。また、本実施形態においては、チェックバルブストッパ1032の外径は、押付部材(例えば、第2押付部材533)の外径よりも小さい。
【0099】
ここで、チェックバルブ431は、シール性を向上させるという観点においては、板厚が薄い方が好ましい。しかしながら、チェックバルブ431の板厚を薄くすると、剛性が低下する。そこで、例えば第3変形例のように、チェックバルブストッパ1032を大径化することで、撓み量を抑制して耐久性を向上させたり、チェックバルブストッパ1032の形状によりチェックバルブ431の剛性を調整したりすることができる。
【0100】
なお、第1実施形態〜第6実施形態、第1変形例および第2変形例のボトムピストン部40の構成は、シリンダ11内を第1油室Y1と第2油室Y2とに区画するとともにロッド20の移動に伴って移動するピストン部30に適用しても良い。具体的には、ピストン部30のスプリング33およびピストンバルブ32の構成に代えて、ボトムピストン部40のチェックバルブ部43を適用することができる。
【0101】
なお、第1実施形態〜第6実施形態の油圧緩衝装置1は、いわゆる三重管構造であるが、本実施形態の構成は、いわゆる二重管構造に適用しても良い。
【0102】
また、例えば、第1実施形態のボトムピストン部40の構成は、シリンダ部10とは別に設けられ、オイルを収容する外部の収容部に設けても良い。この場合、シリンダ部10にてロッド20の移動に伴って生じるオイルの流れに対して、外部の収容部にて減衰力を発生させれば良い。
【符号の説明】
【0103】
1…油圧緩衝装置、11…シリンダ(シリンダの一例)、20…ロッド(ロッドの一例)、40…ボトムピストン部、41…バルブシート(ピストンの一例)、431…チェックバルブ(バルブの一例)、432…チェックバルブストッパ(制限部の一例)、433…押付部材(押付部の一例)
【要約】
【課題】バルブによる流体の流れの制御に伴う音の発生の抑制およびバルブの耐久性を向上させる。
【解決手段】油圧緩衝装置は、オイルを収容するシリンダと、シリンダに対するロッドの所定方向の相対移動に伴ってオイルが流れる流路を形成するバルブシート41と、弾性を有し、バルブシート41の伸側油路413を開閉するチェックバルブ431と、バルブシート41に接触する接触位置とバルブシート41から離れる離間位置との間でチェックバルブ431の位置の移動を許容する保持構造部414と、離間位置にてチェックバルブ431の撓み変形を制限するチェックバルブストッパ432と、弾性を有し、チェックバルブ431をバルブシート41に向けて押し付ける押付部材433とを備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12