特許第6339717号(P6339717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6339717
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】圧力緩衝装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/348 20060101AFI20180528BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20180528BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   F16F9/348
   F16F9/46
   F16F9/32 L
【請求項の数】2
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-45483(P2017-45483)
(22)【出願日】2017年3月9日
【審査請求日】2017年5月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】中野 剛太
(72)【発明者】
【氏名】前田 一成
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 裕
(72)【発明者】
【氏名】小仲井 誠良
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−280919(JP,A)
【文献】 特開2013−029133(JP,A)
【文献】 特開2004−211878(JP,A)
【文献】 特開平03−168429(JP,A)
【文献】 特開平11−051105(JP,A)
【文献】 特開2002−195335(JP,A)
【文献】 実開平03−035341(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/348
F16F 9/46
F16F 9/32
F16F 9/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を収容するシリンダと、
前記シリンダに対するロッドの所定方向の相対移動に伴って流体が流れる流路を形成するピストンと、
弾性を有し、前記ピストンの前記流路を開閉するバルブと、
前記ピストンに接触する接触位置と前記ピストンから離れる離間位置との間で前記バルブの位置の移動を許容する移動許容部と、
弾性を有し、前記バルブの周方向において不均等であって前記ピストン側に向けた荷重を前記バルブに付与する付与部と、
前記付与部とは別体に設けられるとともに、前記離間位置にて前記バルブと環状に接触して前記バルブの半径方向内側の前記ピストンに対して前記離間位置から更に離れる方向への移動を制限する制限部と、
を備える圧力緩衝装置。
【請求項2】
流体を収容するシリンダと、
前記シリンダに対するロッドの所定方向の相対移動に伴って流体が流れる流路を形成するピストンと、
弾性を有し、前記ピストンの前記流路を開閉するバルブと、
前記ピストンに接触する接触位置と前記ピストンから離れる離間位置との間で前記バルブの位置の移動を許容する移動許容部と、
前記離間位置にて前記バルブの撓み変形を制限する制限部と、
弾性を有し、前記バルブの周方向において不均等であって前記ピストン側に向けた荷重を前記バルブに付与する付与部と、
を備え、
前記付与部は、半径方向外側に伸びる複数の外側突出部を有して前記バルブに接触する接触部と、複数の前記外側突出部の間にて半径方向内側に突出する内側突出部とを有する圧力緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を用いて緩衝を行う圧力緩衝装置が知られている。例えば特許文献1には、ボトムピースに流路を形成し、流路を開閉するチェックバルブをボトムピースの一面側に設け、チェックバルブを弾発するコイルばねがボトムピースに設けたボルト及びナットにより締結されるボトムバルブ装置において、コイルばねを締込むナット(又はボルト)のねじ方向と、コイルばねの巻き方向を反対方向にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−211878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、位置の移動によって流体の流れを制御するバルブを採用した場合、流体の大きな圧力をバルブが受けた際にバルブが一気に移動することで、バルブが他の部材に接触して音が発生するおそれがあった。
【0005】
本発明は、バルブによる流体の流れの制御に伴う音の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、流体を収容するシリンダと、前記シリンダに対するロッドの所定方向の相対移動に伴って流体が流れる流路を形成するピストンと、弾性を有し、前記ピストンの前記流路を開閉するバルブと、前記ピストンに接触する接触位置と前記ピストンから離れる離間位置との間で前記バルブの位置の移動を許容する移動許容部と、弾性を有し、前記バルブの周方向において不均等であって前記ピストン側に向けた荷重を前記バルブに付与する付与部と、前記付与部とは別体に設けられ、前記離間位置にて前記バルブと環状に接触して前記バルブの半径方向内側の前記ピストンに対して前記離間位置から更に離れる方向への移動を制限する制限部と、を備える圧力緩衝装置である。
また、かかる目的のもと、本発明は、流体を収容するシリンダと、前記シリンダに対するロッドの所定方向の相対移動に伴って流体が流れる流路を形成するピストンと、弾性を有し、前記ピストンの前記流路を開閉するバルブと、前記ピストンに接触する接触位置と前記ピストンから離れる離間位置との間で前記バルブの位置の移動を許容する移動許容部と、前記離間位置にて前記バルブの撓み変形を制限する制限部と、弾性を有し、前記バルブの周方向において不均等であって前記ピストン側に向けた荷重を前記バルブに付与する付与部と、を備え、前記付与部は、半径方向外側に伸びる複数の外側突出部を有して前記バルブに接触する接触部と、複数の前記外側突出部の間にて半径方向内側に突出する内側突出部とを有する圧力緩衝装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バルブによる流体の流れの制御に伴う音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の油圧緩衝装置の全体図である。
図2】第1実施形態のボトムピストン部の断面図である。
図3】(A)は第1実施形態のボトムピストン部の部分断面図であり、(B)は第1実施形態のボトムピストン部の上面図である。
図4】(A)および(B)は、第1実施形態の油圧緩衝装置の動作説明図である。
図5】第2実施形態の油圧緩衝装置の説明図である。
図6】(A)および(B)は、第3実施形態の油圧緩衝装置の説明図である。
図7】第4実施形態の油圧緩衝装置の説明図である。
図8】(A)および(B)は、第5実施形態の油圧緩衝装置の説明図である。
図9】第6実施形態の油圧緩衝装置の説明図である。
図10】変形例の付与部材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
[油圧緩衝装置1の構成・機能]
図1は、第1実施形態の油圧緩衝装置1の全体図である。
【0010】
図1に示すように、油圧緩衝装置1(圧力緩衝装置の一例)は、オイルを収容するシリンダ部10と、他方側がシリンダ部10の外部に突出して設けられるとともに一方側がシリンダ部10の内部にスライド可能に挿入されるロッド20とを有する。また、油圧緩衝装置1は、ロッド20の一方側の端部に設けられるピストン部30と、シリンダ部10の一方側の端部に設けられるボトムピストン部40と、シリンダ部10の半径方向外側に設けられる減衰力可変部50とを備える。
【0011】
なお、以下の説明において、図1に示す油圧緩衝装置1の長手方向は、「軸方向」と称する。また、軸方向における下側は、「一方側」と称し、油圧緩衝装置1の上側は、「他方側」と称する。また、図1に示す油圧緩衝装置1の左右方向は、「半径方向」と称する。そして、半径方向において、中心軸側は、「半径方向内側」と称し、中心軸に対して離れる側は、「半径方向外側」と称する。さらに、油圧緩衝装置1の軸方向を中心とした回転方向を「周方向」と称する。
【0012】
〔シリンダ部10の構成・機能〕
シリンダ部10は、シリンダ11と、シリンダ11の半径方向外側に設けられる外筒体12と、外筒体12のさらに半径方向外側に設けられるダンパケース13とを有する。
【0013】
シリンダ11は、円筒状に形成され、他方側にシリンダ開口11Hを有する。
外筒体12は、シリンダ11との間に、連絡路Lを形成する。また、外筒体12は、減衰力可変部50との対向位置に、外筒体開口部12Hを有する。
ダンパケース13は、外筒体12との間においてオイルが溜まるリザーバ室Rを形成する。リザーバ室Rは、ロッド20のシリンダ11に対する相対移動に伴って、シリンダ11(第1油室Y1)内のオイルを吸収したりシリンダ11(第1油室Y1)内にオイルを供給したりする。また、リザーバ室Rは、減衰力可変部50から流出したオイルを溜める。また、ダンパケース13は、減衰力可変部50との対向位置に、ケース開口部13Hを有する。
【0014】
〔ロッド20の構成・機能〕
ロッド20は、軸方向に長く延びる棒状の部材である。ロッド20は、一方側にてピストン部30に接続する。また、ロッド20は、他方側にて図示しない連結部材等を介して車体側に接続する。
【0015】
〔ピストン部30の構成・機能〕
ピストン部30は、複数のピストン油路口311を有するピストンボディ31と、ピストン油路口311の他方側を開閉するピストンバルブ32と、ピストンバルブ32とロッド20の一方側端部との間に設けられるスプリング33とを有する。そして、ピストン部30は、シリンダ11内のオイルを第1油室Y1と第2油室Y2とに区画する。
【0016】
〔ボトムピストン部40の構成・機能〕
ボトムピストン部40は、バルブシート41(ピストンの一例)と、バルブシート41の一方側に設けられる減衰バルブ部42と、バルブシート41の他方側に設けられるチェックバルブ部43と、軸方向に設けられる固定部材44と、を有する。そして、ボトムピストン部40は、第1油室Y1とリザーバ室Rとを区分する。
なお、ボトムピストン部40のバルブシート41、減衰バルブ部42、チェックバルブ部43および固定部材44については、後に詳しく説明する。
【0017】
〔減衰力可変部50の構成・機能〕
減衰力可変部50は、ソレノイド部51と、接続流路部材52と、ソレノイドバルブ55とを有する。
ソレノイド部51は、図示しない制御部による制御に基づいて、プランジャ51Pを進退移動させる。
接続流路部材52は、内側に接続流路52Rを有する略円筒状に形成される部材である。
ソレノイドバルブ55は、接続流路部材52に対する位置の移動に応じて、接続流路52Rにおけるオイルの流路断面積を変化させる。そして、ソレノイドバルブ55は、接続流路52Rにおけるオイルの流れを絞る。
なお、第1実施形態においては、ソレノイドバルブ55によってオイルの流れを絞ることにより、油圧緩衝装置1における減衰力を主に発生させている。
【0018】
図2は、第1実施形態のボトムピストン部40の断面図である。
図3(A)は、第1実施形態のボトムピストン部40の部分断面図であり、図3(B)は、第1実施形態のボトムピストン部40の上面図である。
【0019】
(バルブシート41)
図2に示すように、バルブシート41は、半径方向内側に形成される貫通孔41Hと、貫通孔41Hの半径方向外側に形成される圧側油路412と、圧側油路412の半径方向外側に形成される伸側油路413とを有する。また、バルブシート41は、他方側に形成される保持構造部414と、他方側に形成される内側ラウンド部415(内側環状部の一例)と、他方側に形成される外側ラウンド部416(外側環状部の一例)とを有する。また、バルブシート41は、一方側に形成されるリザーバ流路部417を有する。
【0020】
貫通孔41Hは、バルブシート41の軸方向に延びて形成される。そして、貫通孔41Hには、固定部材44が挿入される。
【0021】
圧側油路412は、周方向において略等間隔に複数(本実施形態では4つ)設けられる。そして、圧側油路412は、他方側の端部に第1他方側油路口P1と、一方側の端部に第1一方側油路口P3とを形成する。
そして、圧側油路412は、油圧緩衝装置1の圧縮行程時に、第1油室Y1とリザーバ室Rとの間でのオイルの流れを可能にする(図1参照)。
【0022】
伸側油路413は、周方向において略等間隔に複数(本実施形態では4つ)設けられる。そして、伸側油路413は、他方側の端部に第2他方側油路口P2と、一方側の端部に第2一方側油路口P4とを形成する。
そして、伸側油路413は、油圧緩衝装置1の伸張行程時に、リザーバ室Rと第1油室Y1との間でのオイルの流れを可能にする(図1参照)。
【0023】
保持構造部414(移動許容部の一例)は、貫通孔41Hの外周において略環状に形成される。そして、保持構造部414は、他方側に向けて軸方向に突出する。そして、保持構造部414は、チェックバルブ431の軸方向における位置の移動を可能にする空間(後述する隙間C)を形成する。
また、図3(A)に示すように、第1実施形態の保持構造部414は、側面414Tがテーパ状に形成されている。具体的には、保持構造部414は、一方側と比較して他方側における外径が小さく形成されている。これによって、第1実施形態では、後述のチェックバルブ431は、軸方向においてスムーズに位置の移動が可能になっている。
【0024】
内側ラウンド部415は、第1他方側油路口P1の半径方向外側であって第2他方側油路口P2の半径方向内側にて(図2参照)、環状に形成される。また、内側ラウンド部415は、他方側に向けて軸方向に突出する。そして、第1実施形態の内側ラウンド部415は、後述のチェックバルブ431との接触箇所を形成する。さらに、内側ラウンド部415は、後述のチェックバルブ431とともに、第1他方側油路口P1と第2他方側油路口P2(図2参照)との間でのオイルの流れを抑制する。
【0025】
外側ラウンド部416は、第2他方側油路口P2の半径方向外側にて(図2参照)、環状に形成される。また、外側ラウンド部416は、他方側に向けて軸方向に突出する。外側ラウンド部416の軸方向における突出高さは、内側ラウンド部415と比較して若干高く形成されている。そして、外側ラウンド部416は、後述のチェックバルブ431との接触箇所を形成する。
【0026】
なお、第1実施形態において、内側ラウンド部415および外側ラウンド部416を通る面をラウンド面41Pと呼ぶ。
【0027】
リザーバ流路部417は、一方側の端部に形成される開口である。リザーバ流路部417は、半径方向内側にて第1一方側油路口P3、減衰バルブ部42および第2一方側油路口P4に対向する。また、リザーバ流路部417は、半径方向外側にてリザーバ室R(図1参照)に接続する。
【0028】
(減衰バルブ部42)
図2に示すように、減衰バルブ部42は、減衰バルブ421と、減衰バルブ421の一方側に設けられる圧側環座422とを有する。
【0029】
減衰バルブ421は、半径方向内側に固定部材44が貫通する円盤状の金属板である。そして、減衰バルブ421の外周は、第1一方側油路口P3よりも半径方向外側であって第2一方側油路口P4の半径方向内側まで形成される。
また、第1実施形態の減衰バルブ421の厚みは、後述するチェックバルブ431の厚みよりも大きく形成されている。
以上のように構成される減衰バルブ421は、第1一方側油路口P3を開閉し、第2一方側油路口P4を常に開放する。
【0030】
圧側環座422は、半径方向内側に固定部材44が貫通する円盤状の金属板である。圧側環座422の外径は、減衰バルブ421よりも小さい。そして、圧側環座422は、減衰バルブ421が一方側に向けて変形する際の変形領域を確保する。
【0031】
なお、減衰バルブ421は、複数(例えば、3枚)の金属板によって形成しても構わない。この場合においても、減衰バルブ421の総厚は、後述するチェックバルブ431の厚みよりも大きくする。
【0032】
(チェックバルブ部43)
図2に示すように、チェックバルブ部43は、バルブシート41の他方側に設けられるチェックバルブ431(バルブの一例)と、チェックバルブ431の他方側に設けられるチェックバルブストッパ432(制限部の一例)と、チェックバルブストッパ432の他方側に設けられる付与部材433(付与部の一例)と、付与部材433の他方側に設けられるカラー部材434と、を有する。
【0033】
図3(A)に示すように、チェックバルブ431は、半径方向内側に保持構造部414を通す開口部431Hを有する円盤状の金属板である。そして、チェックバルブ431の外周は、外側ラウンド部416上に位置している。
なお、チェックバルブ431の外周は、外側ラウンド部416よりも半径方向外側に位置していても良い。
【0034】
そして、チェックバルブ431は、開口部431Hの半径方向外側に形成されるチェックバルブ油路口431Mと、チェックバルブ油路口431Mの半径方向外側に形成されるスリット431Sとを有する。
チェックバルブ油路口431Mは、半径方向において第1他方側油路口P1に対応した位置に形成される。そして、チェックバルブ油路口431Mは、複数設けられる。また、チェックバルブ油路口431Mは、第1他方側油路口P1に対向して設けられる。
【0035】
スリット431Sは、チェックバルブ431の外周にて、半径方向内側に向けて形成される切欠きによって形成されている。そして、スリット431Sは、外側ラウンド部416に対向するように設けられる。スリット431Sは、伸側行程時であってロッド20が微低速で移動する際に、チェックバルブ431が全体的に変形して第2他方側油路口P2を開かない状態でも、伸側油路413を介したオイルの流れを可能にする。
【0036】
以上のように構成されるチェックバルブ431は、第2他方側油路口P2を開閉し、第1他方側油路口P1を常に開放する。そして、第1実施形態のチェックバルブ431は、ロッド20の一方向の移動の際に伸側油路413を介したオイルの流れを制限し、ロッド20の他方向の移動の際に伸側油路413を介したオイルの流れを許容する。
なお、第1実施形態の油圧緩衝装置1において、チェックバルブ431は、減衰力の発生を主たる目的としておらず、伸側油路413におけるオイルの流れを切り替える部材である。
【0037】
図3(A)に示すように、チェックバルブストッパ432は、半径方向内側に固定部材44を通す開口部432Hを有する略円環状の金属板である。図3(A)に示すように、チェックバルブストッパ432は、保持構造部414よりも外径が大きい。従って、チェックバルブストッパ432は、保持構造部414に対して半径方向外側に突出している。
【0038】
そして、チェックバルブストッパ432は、軸方向において、バルブシート41のラウンド面41Pに対して予め定められた隙間Cをもって離れて設けられる。従って、チェックバルブ431は、ラウンド面41Pに接触する接触位置と、ラウンド面41Pから離れた離間位置との間にて移動可能になっている。
また、チェックバルブストッパ432は、ラウンド面41Pから遠い離間位置にて、チェックバルブ431の撓み変形を制限する。
【0039】
ここで、第1実施形態において、接触位置は、チェックバルブ431の全てがラウンド面41Pに接触する位置である。また、離間位置は、チェックバルブ431の全てがラウンド面41Pに対して離れる位置である。
なお、チェックバルブ431の位置の移動とは、チェックバルブ431が全体的に軸方向に変位することと捉えることもできる。この場合に、チェックバルブ431の位置の移動とは、チェックバルブ431の変形を伴わない状態での変位と捉えることができる。
また、チェックバルブ431の変形とは、半径方向内側(開口部432H側)が離間位置に位置した状態にて、半径方向外側(少なくとも第2他方側油路口P2の対向部)が変形することと捉えることもできる。
【0040】
図3(A)に示すように、付与部材433は、半径方向内側に固定部材44およびカラー部材434を通す開口部433Hを有する部材である。そして、付与部材433は、弾性を有する。なお、付与部材433の材料には、例えば鉄などの金属を用いることができる。
そして、付与部材433は、チェックバルブ431の周方向において不均等であってバルブシート41に向けた荷重をチェックバルブ431に付与する。以下、付与部材433について詳細に説明する。
【0041】
図3(B)に示すように、付与部材433は、第1外側突出部433A(接触部の一例)と、第2外側突出部433Bと、被保持部433Rとを有している。
第1外側突出部433Aは、半径方向外側であって一方側に向けて突出している。また、第1外側突出部433Aは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置されている。そして、第1外側突出部433Aは、接触端部E1にて、チェックバルブ431の他方側の面に接触する(図3(A)参照)。
【0042】
第2外側突出部433Bは、半径方向外側であって他方側に向けて突出している。また、第2外側突出部433Bは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置されている。
なお、第1実施形態において、第2外側突出部433Bは、他の部材には接触せず、自由端になっている。第1実施形態では、第1外側突出部433Aと対称の関係で第2外側突出部433Bを設けることによって、例えば装置の組み立て作業において、付与部材433を第1実施形態とは反対に取り付けた場合であっても、同様に作用するようにしている。
【0043】
そして、第1外側突出部433Aと第2外側突出部433Bとは、周方向において、交互に並べられている。また、第1外側突出部433Aと第2外側突出部433Bとの間には、切欠部433Kが形成される。
【0044】
なお、図3(A)に示すように、第1実施形態の付与部材433の第1外側突出部433Aの接触端部E1は、内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって、外側ラウンド部416よりも半径方向内側の範囲にてチェックバルブ431に接触する。
【0045】
そして、第1実施形態の被保持部433Rは、複数の形状部によって構成されている。以下の説明では、各々の形状部を、第1形状部433R1、第2形状部433R2、第3形状部433R3、第4形状部433R4、第5形状部433R5および第6形状部433R6と呼ぶ。なお、これら複数の形状部を特に区別しない場合には、被保持部433Rの形状部と総称する。
【0046】
被保持部433Rの形状部は、半径方向内側に向けて突出している。また、被保持部433Rの形状部の周方向における幅は、半径方向外側よりも半径方向内側の方が小さくなるテーパ状に形成されている。なお、被保持部433Rの複数の形状部のテーパの角度は、いずれも同様になっている。また、被保持部433Rの複数の形状部は、各々の中心を通る半径方向に沿った線L1が周方向において等間隔になるように配置されている。
また、被保持部433Rの形状部は、切欠部433Kに対向する位置に設けられる。具体的には、被保持部433Rの複数の形状部は、半径方向に沿って切欠部433Kに並ぶように配置される。
そして、図3(A)に示すように、被保持部433Rの半径方向内側は、チェックバルブストッパ432とカラー部材434とによって挟まれる。
【0047】
第1実施形態において、被保持部433Rの複数の形状部は、周方向における幅が異なっている。これによって、第1実施形態の付与部材433では、被保持部433Rの強度を周方向において異ならせている。そして、第1実施形態の付与部材433は、チェックバルブ431の周方向において不均等であってバルブシート41に向けた荷重をチェックバルブ431に付与する。以下、各被保持部433Rの周方向における幅について詳細に説明する。
【0048】
第1実施形態において、第1形状部433R1の幅B1は、他の被保持部433Rと比較して最も大きくなっている。また、第4形状部433R4の幅B4は、他の被保持部433Rと比較して最も小さくなっている。
そして、図3(B)中時計回りに、第1形状部433R1の幅B1、第2形状部433R2の幅B2、第3形状部433R3の幅B3、第4形状部433R4の幅B4の順に、幅が小さくなっている。
また、図3(B)中反時計回りに、第1形状部433R1の幅B1、第6形状部433R6の幅B6、第5形状部433R5の幅B5、第4形状部433R4の幅B4の順に、幅が小さくなっている。
なお、第2形状部433R2の幅B2と第6形状部433R6の幅B6とは、略同じである。また、第3形状部433R3の幅B3と第5形状部433R5の幅B5とは、略同じである。
【0049】
上述したとおり、第1実施形態の複数の被保持部433Rは、周方向の幅が不均等になっている。
【0050】
また、第1実施形態の油圧緩衝装置1において、チェックバルブ431は、減衰力の発生を主たる目的としておらず、伸側油路413におけるオイルの流れを切り替える部材である。
【0051】
図3(A)に示すように、カラー部材434は、小径部434Nと、小径部434Nの他方側に設けられる大径部434Wとを有する。また、カラー部材434は、固定部材44の後述するナット442とは別体に構成されている。
小径部434Nは、一方側にてチェックバルブストッパ432に接触する。また、小径部434Nは、半径方向において付与部材433の被保持部433Rに接触する。そして、小径部434Nは、付与部材433の半径方向における位置を定める。
大径部434Wは、小径部434Nよりも半径方向外側に突出している。そして、大径部434Wは、付与部材433の被保持部433Rの他方側に対向する。
【0052】
(固定部材44)
図2に示すように、固定部材44は、一方側に設けられるボルト441と、他方側に設けられるナット442とを有する。そして、固定部材44は、減衰バルブ部42とチェックバルブ部43とを、それぞれバルブシート41に固定する。
【0053】
[油圧緩衝装置1の動作]
図4は、第1実施形態の油圧緩衝装置1の動作説明図である。なお、図4(A)は伸張行程時におけるオイルの流れを示し、図4(B)は圧縮行程時におけるオイルの流れを示す。
まず、油圧緩衝装置1の伸張行程時における動作を説明する。
図4(A)に示すように、伸張行程時において、ロッド20は、シリンダ11に対して他方側に移動する。このとき、ピストンバルブ32は、ピストン油路口311を塞いだままである。また、ピストン部30の他方側への移動によって、第2油室Y2の容積は、減少する。そして、第2油室Y2のオイルは、シリンダ開口11Hから連絡路Lに流れ出る。
【0054】
さらに、オイルは、連絡路L、外筒体開口部12Hおよび接続流路52Rを通って、減衰力可変部50に流れ込む。減衰力可変部50において、接続流路52Rのオイルは、ソレノイドバルブ55によって流れが絞られる。このソレノイドバルブ55によってオイルの流れが絞られることによって減衰力が発生する。その後、オイルは、リザーバ室Rに流れ出る。
【0055】
また、第1油室Y1の圧力がリザーバ室Rに対して相対的に低くなる。そのため、リザーバ室Rのオイルは、ボトムピストン部40の伸側油路413に流れ込む。
このとき、第1実施形態のチェックバルブ431は、付与部材433のバネ力に抗して他方側に移動する。さらに、チェックバルブ431は、半径方向外側から半径方向内側に向かって撓み変形する。このように、第1実施形態のチェックバルブ431は、伸側油路413を開く際に、チェックバルブ431の軸方向の位置の移動と、チェックバルブ431の撓み変形との両方の動作を生じる。その後、オイルは、第1油室Y1に流れ込む。
【0056】
以上のように、第1実施形態のチェックバルブ431は、位置の移動と、撓み変形との両方の動作をする。これによって、チェックバルブ431にかかる力が付与部材433の変形に伴うチェックバルブ431の位置の移動と、チェックバルブ431自体の撓み変形とに分散される。従って、チェックバルブ431が撓み変形を伴わず位置の移動だけをする場合と比較して、チェックバルブ431が一気に移動せず、チェックバルブ431の位置の移動に伴う大きな音の発生が抑制される。また、チェックバルブ431が撓み変形を伴わず位置の移動だけをする場合と比較して、チェックバルブ431の変形量が小さくなりチェックバルブ431にかかる負荷が低減される。
【0057】
さらに、第1実施形態の付与部材433において、複数の被保持部433Rは、周方向における幅が異なっている。そのため、付与部材433がチェックバルブ431に付与するバネ力に基づく荷重は、チェックバルブ431の周方向において異なっている。従って、チェックバルブ431が伸側油路413を開く際、チェックバルブ431がラウンド面41Pに対して離れるタイミングが周方向において異なる。
【0058】
第1実施形態では、例えば周方向の幅が最も小さい第4形状部433R4がチェックバルブ431を押し付ける荷重が最も小さくなる。また、例えば周方向の幅が最も大きい第1形状部433R1がチェックバルブ431を押し付ける荷重が最も大きくなる。
従って、チェックバルブ431は、第4形状部433R4に対向する箇所から開き(離れ)始める。そして、最終的には、チェックバルブ431は、第1形状部433R1に対向する箇所が最後に開く(離れる)。
このように、第1実施形態では、チェックバルブ431が周方向において順に位置の移動および変形することで音の発生がより抑制される。
【0059】
次に、油圧緩衝装置1の圧縮行程時における動作を説明する。
図4(B)に示すように、圧縮行程時において、ロッド20は、シリンダ11に対して一方側に相対移動する。ピストン部30においては、第1油室Y1と第2油室Y2との差圧によって、ピストン油路口311を塞ぐピストンバルブ32が開く。そして、第1油室Y1のオイルは、ピストン油路口311を通って第2油室Y2に流れ出る。ここで、第2油室Y2にはロッド20が配置されている。そのため、第1油室Y1から第2油室Y2に流れ込むオイルは、ロッド20の進入体積分だけ過剰になる。従って、このロッド20の進入体積分に相当する量のオイルは、シリンダ開口11Hから連絡路Lに流出する。
【0060】
さらに、オイルは、連絡路L、外筒体開口部12Hおよび接続流路52Rを通って、減衰力可変部50に流れ込む。なお、減衰力可変部50におけるオイルの流れは、上述した伸張行程時におけるオイルの流れと同様である。
【0061】
また、ロッド20がシリンダ11に対して一方側に相対移動することで、第1油室Y1のオイルは、ボトムピストン部40の付与部材433の開口部433Hおよびチェックバルブ油路口431Mを通って(図2参照)、圧側油路412に流れ込む。そして、圧側油路412に流れたオイルは、減衰バルブ421を開く。そして、オイルは、リザーバ室Rに流れ出る。すなわち、第1油室Y1における圧力に応じて、シリンダ開口11Hから減衰力可変部50に流れるオイルの流れとボトムピストン部40におけるオイルの流れとの両方で減衰力を発生させる。
【0062】
特に、付与部材433は、伸張行程にて開いたチェックバルブ431が、圧縮行程に移行するときに、チェックバルブ431が第2他方側油路口P2を直ちに閉じるように作用する。これによって、圧縮行程の初期における減衰力の発生(いわゆる、減衰力の立ち上がり)が早くなる。
さらに、第1実施形態では、付与部材433がチェックバルブ431に対して内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって外側ラウンド部416よりも半径方向内側にて接触するため、チェックバルブ431が内側ラウンド部415および外側ラウンド部416の両方に隙間無く接触することで、オイルのリークが抑制される。
【0063】
ところで、減衰力可変部50にて減衰力を調整する場合には、ソレノイド部51によってソレノイドバルブ55を制御する(図1参照)。具体的には、ソレノイド部51によってソレノイドバルブ55と接続流路部材52との距離を変更する。このとき、ソレノイドバルブ55と接続流路部材52との間隔が狭くなれば、オイルの流れの抵抗が大きくなって減衰力は、高まる。一方、ソレノイドバルブ55と接続流路部材52との間隔が広がれば、オイルの流れの抵抗が小さくなって、減衰力は、低くなる。
【0064】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の油圧緩衝装置1の説明図である。
なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0065】
第2実施形態の油圧緩衝装置1では、ボトムピストン部40の第2付与部材533の構造が、第1実施形態の付与部材433とは異なる。
【0066】
第2付与部材533は、半径方向内側に固定部材44およびカラー部材434を通す開口部533Hを有する部材である。そして、第2付与部材533は、弾性を有する。なお、第2付与部材533の材料には、例えば鉄などの金属を用いることができる。
そして、第2付与部材533は、第1外側突出部533Aと、第2外側突出部533Bと、被保持部533Rとを有している。
なお、第1外側突出部533Aおよび第2外側突出部533Bは、それぞれ第1実施形態の第1外側突出部433Aおよび第2外側突出部433Bと同様である。
また、第2実施形態においても、第1外側突出部533Aの接触端部E2は、内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって、外側ラウンド部416よりも半径方向内側の範囲にてチェックバルブ431に接触する。
【0067】
第2実施形態の被保持部533Rは、複数の形状部によって構成されている。以下の説明では、各々の形状部を、第1形状部533R1、第2形状部533R2、第3形状部533R3、第4形状部533R4、第5形状部533R5および第6形状部533R6とそれぞれ呼ぶ。なお、これら複数の形状部を特に区別しない場合には、被保持部533Rの形状部と総称する。
【0068】
被保持部533Rの形状部は、半径方向内側に向けて突出している。また、被保持部533Rの形状部の周方向における幅は、半径方向外側よりも半径方向内側の方が小さくなるテーパ状に形成されている。そして、被保持部533Rの複数の形状部は、それぞれ略同じ形状をしている。
【0069】
そして、被保持部533Rの複数の形状部は、各々の中心を通る半径方向に沿った線L1が周方向において間隔が異なるように配置されている。すなわち、第2実施形態においては、周方向において隣り合う2つの被保持部533Rの形状部の間隔は、周方向において異なっている。これによって、第2実施形態の第2付与部材533では、被保持部533Rの強度を周方向において異ならせている。そして、第2実施形態の第2付与部材533は、チェックバルブ431の周方向において不均等であってバルブシート41に向けた荷重をチェックバルブ431に付与する。
以下、各被保持部533Rの間隔について詳細に説明する。
【0070】
ここで、第6形状部533R6と第1形状部533R1との間隔を「間隔W1」と呼ぶ。第1形状部533R1と第2形状部533R2との間隔を「間隔W2」と呼ぶ。第2形状部533R2と第3形状部533R3との間隔を「間隔W3」と呼ぶ。第3形状部533R3と第4形状部533R4との間隔を「間隔W4」と呼ぶ。第4形状部533R4と第5形状部533R5との間隔を「間隔W5」と呼ぶ。第5形状部533R5と第6形状部533R6との間隔を「間隔W6」と呼ぶ。
【0071】
第2実施形態において、間隔W1は、他の隣り合う2つの被保持部533Rの間隔と比較して最も小さくなっている。また、間隔W4は、他の隣り合う2つの被保持部533Rの間隔と比較して最も大きくなっている。
【0072】
そして、図5中時計回りに、間隔W1、間隔W2、間隔W3、間隔W4の順に、間隔が大きくなっている。また、図5中反時計回りに、間隔W1、間隔W6、間隔W5、間隔W4の順に、間隔Wが大きくなっている。なお、間隔W2と間隔W6とは、略同じである。また、間隔W3と間隔W5とは、略同じである。
【0073】
上述したとおり、第2実施形態の第2付与部材533は、隣り合う2つの被保持部533Rの間隔が、周方向において不均等になっている。
【0074】
以上のように構成される第2実施形態の第2付与部材533において、複数の被保持部533Rは、隣り合う被保持部533Rの間隔Wが周方向において異なっている。そのため、第2付与部材533がチェックバルブ431に付与するバネ力に基づく荷重は、チェックバルブ431の周方向において異なっている。従って、チェックバルブ431が伸側油路413を開く際、チェックバルブ431がラウンド面41P(図3(A)参照)に対して離れるタイミングが周方向において異なる。
そして、第2実施形態においても、チェックバルブ431が周方向において順に位置の移動および変形することで音の発生がより抑制される。
【0075】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の油圧緩衝装置1の説明図である。
なお、第3実施形態において、他の実施形態と同様の部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0076】
第3実施形態の油圧緩衝装置1では、ボトムピストン部40の第3付与部材633の構造が、第1実施形態の付与部材433とは異なる。
【0077】
図6(A)に示すように、第3付与部材633は、半径方向内側に固定部材44およびカラー部材434を通す開口部633Hを有する部材である。そして、第3付与部材633は、弾性を有する。なお、第3付与部材633の材料には、例えば鉄などの金属を用いることができる。
そして、図6(B)に示すように、第3付与部材633は、第1外側突出部633Aと、第2外側突出部633Bと、被保持部633Rと、内側突出部633Pとを有している。
なお、被保持部633Rは、第1実施形態の被保持部433Rと同様である。
【0078】
そして、第1外側突出部633Aは、複数の形状部によって構成されている。以下の説明では、各々の形状部を、第1形状部633A1、第2形状部633A2、第3形状部633A3、第4形状部633A4、第5形状部633A5、および第6形状部633A6と呼ぶ。なお、これら複数の形状部を特に区別しない場合には、第1外側突出部633Aの形状部と総称する。
【0079】
第1外側突出部633Aの形状部は、半径方向外側であって一方側に向けて突出している。また、第1外側突出部633Aの複数の形状部は、周方向において略等間隔に配置されている。そして、第1外側突出部633Aの形状部は、接触端部E3にて、チェックバルブ431の他方側の面に接触する。
なお、図6(A)に示すように、第3実施形態においても、接触端部E3は、内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって、外側ラウンド部416よりも半径方向内側の範囲にてチェックバルブ431に接触する。
【0080】
そして、第3実施形態において、第1外側突出部633Aの複数の形状部は、一方側に向けた突出量が異なっている。すなわち、第1外側突出部633Aの複数の形状部は、チェックバルブ431との距離が異なっている。そして、第3実施形態の第3付与部材633は、チェックバルブ431の周方向において不均等であってバルブシート41に向けた荷重をチェックバルブ431に付与する。以下、各第1外側突出部633Aの一方側に向けた突出量について詳細に説明する。
【0081】
第3実施形態において、図6(A)に示すように、第1形状部633A1の突出量T1は、他の第1外側突出部633Aと比較して最も大きくなっている。すなわち、第1形状部633A1は、他の第1外側突出部633Aと比較して、最もチェックバルブ431に近い。また、第4形状部633A4の突出量T4は、他の第1外側突出部633Aと比較して最も小さくなっている。すなわち、第4形状部633A4は、他の第1外側突出部633Aと比較して、最もチェックバルブ431から遠い。
そして、図6(B)中時計回りに、第1形状部633A1の突出量T1、第2形状部633A2の突出量、第3形状部633A3の突出量、第4形状部633A4の突出量T4の順に、一方側に向けた突出量が小さくなる。
また、図6(B)中反時計回りに、第1形状部633A1の突出量T1、第6形状部633A6の突出量、第5形状部633A5の突出量、第4形状部633A4の突出量T4の順に、一方側に向けた突出量が小さくなる。
なお、第2形状部633A2の突出量と第6形状部633A6の突出量とは、略同じである。また、第3形状部633A3の突出量と第5形状部633A5の突出量とは、略同じである。
【0082】
第2外側突出部633Bは、突出する方向が第1外側突出部633Aとは軸方向において反対であるが、基本構造は、第1外側突出部633Aと同様である。
【0083】
内側突出部633Pは、複数設けられ、半径方向内側に向けて突出している。なお、内側突出部633Pの突出量は、被保持部633Rよりも小さい。
そして、内側突出部633Pは、第1外側突出部633Aと第2外側突出部633Bとの間である複数の外側突出部の間に設けられる。すなわち、内側突出部633Pは、切欠部633Kに対向する位置に設けられる。より具体的には、内側突出部633Pは、半径方向に沿って切欠部633Kに並ぶように配置される。
【0084】
第3実施形態の第3付与部材633では、第1外側突出部633Aと第2外側突出部633Bとの間に形成される切欠部633Kに対向する位置に、被保持部633Rおよび内側突出部633Pをそれぞれ配置することで、切欠部633Kにおける応力集中を低減している。
【0085】
以上のように構成される第3実施形態の第3付与部材633において、第1外側突出部633Aの複数の形状部は、一方側に向けた突出量が異なっている。すなわち、第1外側突出部633Aの複数の形状部は、チェックバルブ431に対する距離が異なっている。これによって、第3実施形態の第3付与部材633では、チェックバルブ431の周方向において付与するバネ力に基づく荷重は、チェックバルブ431の周方向において異なっている。
【0086】
以上のように構成される第3実施形態のボトムピストン部40では、チェックバルブ431が伸側油路413を開く際、チェックバルブ431がラウンド面41P(図3(A)参照)に対して離れるタイミングが周方向において異なる。そして、第3実施形態においても、チェックバルブ431が周方向において順に位置の移動および変形することで音の発生がより抑制される。
【0087】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態の油圧緩衝装置1の説明図である。
なお、第4実施形態において、他の実施形態と同様の部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0088】
第4実施形態の油圧緩衝装置1では、ボトムピストン部40の第4付与部材733の構造が、第1実施形態の付与部材433とは異なる。
【0089】
図7に示すように、第4付与部材733は、半径方向内側に固定部材44およびカラー部材434を通す開口部733Hを有する部材である。そして、第4付与部材733は、弾性を有する。なお、第4付与部材733の材料には、例えば鉄などの金属を用いることができる。
そして、第4付与部材733は、第1外側突出部733Aと、第2外側突出部733Bと、被保持部733Rと、内側突出部733Pとを有している。
なお、第1外側突出部733A、第2外側突出部733Bおよび内側突出部733Pは、それぞれ第3実施形態の第1外側突出部633A、第2外側突出部633Bおよび内側突出部633Pと同様である。
【0090】
被保持部733Rは、半径方向内側に向けて突出している。また、被保持部733Rの周方向における幅は、半径方向外側よりも半径方向内側の方が小さくなるテーパ状に形成されている。さらに、被保持部733Rは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置されている。また、複数の被保持部733Rは、それぞれ略同じ形状に形成されている。
そして、被保持部733Rの半径方向内側は、チェックバルブストッパ432とカラー部材434とによって挟まれる。
【0091】
そして、第4実施形態においては、被保持部733Rと第1外側突出部733Aおよび第2外側突出部733Bとの間隔Iが、周方向において異なっている。すなわち、第4実施形態では、複数の被保持部733Rの長さが異なっていると捉えることができる。
具体的には、第1間隔I1は、他の間隔Iと比較して最も小さくなっている。また、第4間隔I4は、他の間隔Iと比較して最も大きくなっている。
そして、図7中時計回りに、第1間隔I1、第2間隔I2、第3間隔I3、第4間隔I4の順に、間隔Iが大きくなる。また、図7中反時計回りに、第1間隔I1、第6間隔I6、第5間隔I5、第4間隔I4の順に、間隔Iが大きくなる。
なお、第2間隔I2と第6間隔I6とは、略同じである。また、第3間隔I3と第5間隔I5とは、略同じである。
【0092】
これによって、第4実施形態において、チェックバルブ431の周方向において、チェックバルブ431に対して第1外側突出部733Aが接触する接触端部E4の位置が、半径方向において異なる。すなわち、第4実施形態では、複数の第1外側突出部733Aのチェックバルブ431に対する接触位置が、周方向において異なっている。そして、第4実施形態の第4付与部材733は、チェックバルブ431の周方向において不均等であってバルブシート41に向けた荷重をチェックバルブ431に付与する。
【0093】
なお、第4実施形態においても、第1外側突出部733Aの接触端部E4は、内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって、外側ラウンド部416よりも半径方向内側の範囲にてチェックバルブ431(図2参照)に接触する。
【0094】
以上のように構成される第4実施形態の第4付与部材733において、複数の第1外側突出部733Aは、半径方向における位置がそれぞれ異なっている。そのため、第4付与部材733がチェックバルブ431に付与するバネ力に基づく荷重は、チェックバルブ431の周方向において異なる。従って、チェックバルブ431が伸側油路413を開く際、チェックバルブ431がラウンド面41P(図3(A)参照)に対して離れるタイミングが周方向において異なる。
そして、第4実施形態においても、チェックバルブ431が周方向において順に位置の移動および変形することで音の発生がより抑制される。
【0095】
<第5実施形態>
図8は、第5実施形態の油圧緩衝装置1の説明図である。
なお、第5実施形態において、他の実施形態と同様の部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0096】
第5実施形態の油圧緩衝装置1では、ボトムピストン部40の第5付与部材833およびカラー部材834の構造が、第1実施形態の付与部材433およびカラー部材434とそれぞれ異なる。
【0097】
図8(A)に示すように、第5付与部材833は、半径方向内側に固定部材44およびカラー部材834を通す開口部833Hを有する部材である。そして、第5付与部材833は、弾性を有する。なお、第5付与部材833の材料には、例えば鉄などの金属を用いることができる。
【0098】
図8(B)に示すように、第5付与部材833は、第1外側突出部833Aと、第2外側突出部833Bと、被保持部833Rと、内側突出部833Pとを有している。
なお、第1外側突出部833Aおよび第2外側突出部833Bは、第1実施形態の第1外側突出部433Aおよび第2外側突出部433Bと同様である。また、被保持部833Rおよび内側突出部833Pは、第3実施形態の被保持部633Rおよび内側突出部633Pと同様である。すなわち、第5付与部材833は、複数の第1外側突出部833A、複数の第2外側突出部833B、複数の被保持部833R、および、複数の内側突出部833Pが、それぞれ略同じ形状に形成されるとともに等間隔に配置されている。
【0099】
そして、図8(A)に示すように、カラー部材834は、小径部834Nと、小径部834Nの他方側に設けられる大径部834Wとを有する。
第5実施形態の小径部834Nは、中心(例えば、固定部材44、バルブシート41、チェックバルブ431の半径方向における中心)から外周までの距離(外径)が周方向において一定ではなく異なっている。すなわち、小径部834Nは、中心に対して偏芯した円を描いている。具体的には、小径部834Nは、第1小径部R1と、第1小径部R1に対して周方向に異なる位置に設けられる第2小径部R2とを有している。第1小径部R1の半径方向の長さは、距離r1である。また、第2小径部R2の半径方向の長さは、距離r1よりも長い距離r2である。
小径部834Nは、半径方向において第5付与部材833の被保持部833Rに接触する。この際、小径部834Nは、第5付与部材833の半径方向における位置を定める。
【0100】
そして、第5実施形態の第5付与部材833において、複数の第1外側突出部833Aの接触端部E5は、チェックバルブ431の半径方向における接触位置がそれぞれ異なる。そして、第5実施形態の第5付与部材833は、チェックバルブ431の周方向において不均等であってバルブシート41に向けた荷重をチェックバルブ431に付与する。
【0101】
なお、第5実施形態においても、第1外側突出部833Aの接触端部E5は、内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって、外側ラウンド部416よりも半径方向内側の範囲にてチェックバルブ431に接触する。
【0102】
以上のように構成される第5実施形態のボトムピストン部40では、チェックバルブ431が伸側油路413を開く際、チェックバルブ431がラウンド面41P(図3(A)参照)に対して離れるタイミングが周方向において異なる。そして、第5実施形態においても、チェックバルブ431が周方向において順に位置の移動および変形することで音の発生がより抑制される。
【0103】
<第6実施形態>
図9は、第6実施形態の油圧緩衝装置1の説明図である。
なお、第6実施形態において、他の実施形態と同様の部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0104】
第6実施形態の油圧緩衝装置1では、ボトムピストン部40の第6付与部材991、および固定部材944のナット942(保持部の一例)の構造が、第1実施形態の付与部材433および固定部材44のナット442と異なる。
【0105】
第6付与部材991は、半径方向内側に固定部材944を通す開口部991Hを有する略円盤状の部材である。また、第6付与部材991は、オイルが通過可能な油路口991Yと、チェックバルブ431に接触する接触端部E6を有する環状部991Rと、を備えている。そして、第6付与部材991は、後述するように、周方向において不均等であってバルブシート41に向けた荷重をチェックバルブ431に付与する。
なお、第6実施形態においても、接触端部E6は、内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって、外側ラウンド部416よりも半径方向内側の範囲にてチェックバルブ431に接触する。
【0106】
ナット942は、一方側面942Mの高さが周方向において不均一になっている。すなわち、一方側面942Mにおける第1面M1は、仮想線VL(例えばナット942の他方側面942L)を基準として一方側に向けて突出する量が第1突出量H1になっている。一方、周方向において第1面M1とは異なる位置の第2面M2は、仮想線VLを基準として一方側に向けて突出する量が第1突出量H1よりも大きい第2突出量H2になっている。すなわち、ナット942は、第6付与部材991およびチェックバルブ431に対する距離が周方向において異なっている。
【0107】
以上のように構成される第6実施形態のボトムピストン部40では、チェックバルブ431が伸側油路413を開く際、チェックバルブ431がラウンド面41P(図3(A)参照)に対して離れるタイミングが周方向において異なる。そして、第6実施形態においても、チェックバルブ431が周方向において順に位置の移動および変形することで音の発生がより抑制される。
【0108】
<変形例>
図10は、変形例の付与部材933の説明図である。
図10に示すように、変形例の付与部材933は、開口部933Hと、第1周方向突出部933Aと、第2周方向突出部933Bと、被保持部933Rとを有している。
【0109】
第1周方向突出部933Aは、周方向であって一方側に向けて突出している。また、第1周方向突出部933Aは、複数設けられ、周方向において略等間隔に配置されている。そして、第1周方向突出部933Aは、接触端部E7にて、チェックバルブ431の他方側の面に接触する。
なお、変形例の付与部材933の第1周方向突出部933Aの接触端部E7は、内側ラウンド部415よりも半径方向外側であって、外側ラウンド部416よりも半径方向内側の範囲に位置する(図3(A)参照)。
また、第2周方向突出部933Bは、周方向であって他方側に向けて突出している。
【0110】
以上のように構成される変形例の付与部材933を、上述した第1実施形態〜第6実施形態の各付与部材に代えて用いても良い。
【0111】
なお、例えば第1実施形態の被保持部433Rにおいて、複数の形状部の板厚を異ならせることで、被保持部433Rの周方向における強度を異ならせても良い。
また、例えば第1実施形態および第2実施形態の被保持部(被保持部433R、被保持部533R)にて被保持部の周方向における強度を異ならせる構成を、各実施形態の外側突出部に適用しても良い。例えば、複数の外側突出部の幅、間隔および厚みを異ならせることで、チェックバルブ431の周方向において不均等であってバルブシート41に向けた荷重をチェックバルブ431に付与しても良い。
【0112】
また、第1実施形態〜第6実施形態の各付与部材において、複数の外側突出部の半径方向における長さ(半径方向外側に向けた突出量)を異ならせることで、チェックバルブ431の周方向において不均等であってバルブシート41に向けた荷重をチェックバルブ431に付与しても良い。
【0113】
例えば第1実施形態において、チェックバルブ431とは逆側に向けて突出する第2外側突出部433Bは、必須の構成ではない。第2外側突出部433Bに代えて、第1外側突出部433Aを設け、付与部材433の外周部において全て第1外側突出部433Aが周方向において所定間隔で並べられていても良い。これは、他の実施形態や変形例についても同様である。
【0114】
なお、第1実施形態〜第6実施形態のボトムピストン部40の構成は、シリンダ11内を第1油室Y1と第2油室Y2とに区画するとともにロッド20の移動に伴って移動するピストン部30に適用しても良い。具体的には、ピストン部30のスプリング33およびピストンバルブ32の構成に代えて、ボトムピストン部40のチェックバルブ部43を適用することができる。
【0115】
なお、第1実施形態〜第6実施形態の油圧緩衝装置1は、いわゆる三重管構造であるが、本実施形態の構成は、いわゆる二重管構造に適用しても良い。
【0116】
また、例えば、第1実施形態のボトムピストン部40の構成は、シリンダ部10とは別に設けられ、オイルを収容する外部の収容部に設けても良い。この場合、シリンダ部10にてロッド20の移動に伴って生じるオイルの流れに対して、外部の収容部にて減衰力を発生させれば良い。
【符号の説明】
【0117】
1…油圧緩衝装置、11…シリンダ(シリンダの一例)、20…ロッド(ロッドの一例)、40…ボトムピストン部、41…バルブシート(ピストンの一例)、431…チェックバルブ(バルブの一例)、432…チェックバルブストッパ(制限部の一例)、433…付与部材(付与部の一例)
【要約】
【課題】バルブによる流体の流れの制御に伴う音の発生を抑制する。
【解決手段】油圧緩衝装置は、オイルを収容するシリンダと、シリンダに対するロッドの所定方向の相対移動に伴ってオイルが流れる流路を形成するバルブシート41と、弾性を有し、バルブシート41の伸側油路413を開閉するチェックバルブ431と、バルブシート41に接触する接触位置とバルブシート41から離れる離間位置との間でチェックバルブ431の位置の移動を許容する保持構造部414と、離間位置にてチェックバルブ431の撓み変形を制限するチェックバルブストッパ432と、弾性を有し、チェックバルブ431の周方向において不均等であってバルブシート41に向けた荷重をチェックバルブ431に付与する付与部材433とを備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
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図10