(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態に係る水上移動装置について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る水上移動装置の外観斜視図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る水上移動装置の平面図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る水上移動装置の前面図である。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る水上移動装置の後面図である。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る水上移動装置の側面図である。
図6は、本発明の第1の実施形態に係る水上移動装置の制御システムの機能ブロック図である。
【0014】
図1−
図5に示すように、水上移動装置10は、本体100、プロペラ211、221、モータ212、222、カバー231、232、制御部30、および、方位算出部33を備える。
【0015】
本体100は、円板形状であり、上面100T、下面100B、および、側面を有する。側面は、上面100Tの円周部分と下面100Bの円周部分とを繋ぐ面である。上面100Tの面積は、下面100Bの面積よりも大きい。
【0016】
なお、本体100の没水部の水平断面の形状は、円形、略円形、または、5角以上の正多角形の形状を有するものであればよい。
【0017】
本体100は、独立気泡体からなる。本体100を独立気泡体とすることにより、転覆時の沈没を防止することができる。また、本体100と他船等との衝突時の衝撃を緩和することで、安全を確保することができる。なお、本体100の全体が独立気泡体であってもよく、本体100の少なくとも側面が独立気泡体であればよい。そして、本体100は、プロペラ211、221、モータ212、222、カバー231、232、制御部30、および、方位算出部33が装着された状態で、静水時に、下面100Bが水面WSよりも下になり、上面100Tが水面WSよりも上になるように、浮力が調整された構造からなる。この本体100における水面WSよりも下になる部分が、本体100の没水部である。
【0018】
ここで、本体100の移動方向に平行な軸をX軸とし、X軸に垂直で上面100Tおよび下面100Bに平行な軸をY軸とし、上面100Tおよび下面100Bに垂直な軸をZ軸とする。本体100における中心点POを通りX軸に平行な直線と本体100の側面の上面100T側の端部との交点の一方を、本体100の先端101とし、他方を、本体100の後端102とする。本体100における中心点POを通りY軸に平行な直線と本体100の側面の上面100T側の端部との交点の一方を、本体100の第1側端(右側端)103とし、他方を、本体100の第2側端(左側端)104とする。
【0019】
本体100は、第1部分110と第2部分120とを備える。第1部分110と第2部分120とは、別体からなり、機構的には繋がっている。第1部分110は、先端101、第1側端103、および、第2側端104を含み、後端102を含まない形状である。第2部分120は、後端102を含む形状である。第2部分120は、本体100の後端付近の一部からなり、第1部分110よりも小さい。また、第2部分120は、中心点POを通りX軸に平行な直線に対して、線対称の形状であることが好ましい。
【0020】
プロペラ211は、本体100の上面100T側に配置されている。プロペラ211は、本体100に対して、回転可能に固定されている。プロペラ211は、本体100の第1部分110における中心点POよりも第1側端103側に配置されている。プロペラ211は、回転面がX軸に垂直(Y軸に平行)になるように、配置されている。
【0021】
モータ212は、プロペラ211における後端102側に配置されている。モータ212の回転軸は、プロペラ211の軸に接続されている。モータ212は、ケーブルを介して制御部30に接続されており、動作制御部31の制御によって駆動される。このプロペラ211が本発明の「第1推進力発生部」に対応する。また、このプロペラ211の回転数および回転方向によって、本体100に対する推進力が調整される。
【0022】
カバー231は、プロペラ211の回転面を開口した状態でプロペラ211を囲む形状である。カバー231は、省略することもできる。カバー231を備えることによって、プロペラ211に接触することが抑制され、安全性が向上する。また、カバー231を備えることによって、カバー231の形状を調整して、プロペラ211による推進力を向上させることも可能である。
【0023】
プロペラ221は、本体100の上面100T側に配置されている。プロペラ221は、本体100に対して、回転可能に固定されている。プロペラ221は、本体100の第1部分110における中心点POよりも第2側端104側に配置されている。プロペラ221は、回転面がX軸に垂直(Y軸に平行)になるように、配置されている。
【0024】
プロペラ221とプロペラ211とは、本体100を平面視して、中心点POを通りX軸に平行な直線、言い換えれば、先端101と後端102とを結ぶ直線に対して、線対称の位置に配置されている。さらに、言い換えれば、プロペラ221とプロペラ211とは、本体100の没水部の重心点に対して略対称な位置に配置されている。ここで、没水部の重心点とは、没水部全体の立体形状の重心点であっても、没水部の水平断面の平面形状の重心点であってもよい。また、プロペラ221の回転面とプロペラ211の回転面とは、プロペラ221とプロペラ211とを結ぶ直線に対して平行である。
【0025】
モータ222は、プロペラ221における後端102側に配置されている。モータ222の回転軸は、プロペラ221の軸に接続されている。モータ222は、ケーブルを介して制御部30に接続されており、動作制御部31の制御によって駆動される。このプロペラ221が本発明の「第2推進力発生部」に対応する。また、このプロペラ221の回転数および回転方向によって、本体100に対する推進力が調整される。
【0026】
カバー232は、プロペラ221の回転面を開口した状態でプロペラ221を囲む形状である。カバー232は、省略することもできる。カバー232を備えることによって、プロペラ221に接触することが抑制され、安全性が向上する。また、カバー232を備えることによって、カバー232の形状を調整して、プロペラ221による推進力を向上させることも可能である。
【0027】
なお、本実施形態では、プロペラ211、221は、2枚のブレードから構成されているが、ブレードの枚数はこれに限るものではない。また、プロペラ211とプロペラ221とは、先端101と後端102とを結ぶ直線に対して、厳密に線対称の位置に配置されていなくてもよい。この場合、プロペラ211とプロペラ221との回転制御を、位置のずれ量に応じて調整すればよい。しかしながら、プロペラ211とプロペラ221とを上述の線対称の位置に配置することによって、回転制御が容易になり、後述の任意の経路に対する走航制御に有効である。
【0028】
制御部30は、
図6に示す動作制御部31と通信部32とを実現するハードウエアからなる。制御部30は、防水構造であり、第2部分120に装着されている。制御部30は、先端101と後端102とを結ぶ直線上に配置されていることが好ましい。これにより、本体100の左右のバランスの差が小さくなり、後述の任意の経路に対する走航制御に有効である。
【0029】
方位算出部33は、本体100の絶対方位を算出するハードウエアからなる。例えば、方位算出部33は、測位信号を用いた方位算出装置、または、地磁気センサを用いた方位算出装置によって実現可能である。方位算出部33は、防水構造であり、本体100の上面100Tに配置されている。より具体的な位置としては、方位算出部33は、本体100の第1部分110における先端101の近傍に配置されている。方位算出部33の配置位置は、推進力発生部21、22の影響を受けなければ、この位置に限るものではない。方位算出部33は、ケーブルによって制御部30に接続されている。
【0030】
図2−
図5に示すように、直進キール411Rと直進キール411Lは、平板である。直進キール411Rと直進キール411Lは、互いに同じ形状、同じ材質であることが好ましく、剛性の高い材質からなる。直進キール411Rと直進キール411Lの平板面は、X軸(移動方向に平行な軸)に対して平行である。言い換えれば、直進キール411Rと直進キール411Lは、プロペラ221とプロペラ211とを結ぶ直線に対して垂直に配置されている。直進キール411Rと直進キール411Lは、本体100における中心点POよりも後端102側に配置されている。なお、直進キール411Rと直進キール411Lは、X軸に沿った本体100の中央部など、後端102側に配置されていてもよい。
【0031】
直進キール411Rは、本体100における先端101と後端102とを結ぶ直線よりも第1側端103側に配置されている。より具体的には、直進キール411Rは、当該直線よりも第1側端103側であり、当該直線に平行な第1部分110と第2部分120との隙間に配置されている。
【0032】
直進キール411Lは、本体100における先端101と後端102とを結ぶ直線よりも第2側端104側に配置されている。より具体的には、直進キール411Lは、当該直線よりも第2側端104側であり、当該直線に平行な第1部分110と第2部分120との隙間に配置されている。
【0033】
直進キール411Rと直進キール411Lは、本体100に対して可動するように装着されている。具体的には、直進キール411Rと直進キール411Lは、第1態様として、本体100に収容されている。また、直進キール411Rと直進キール411Lは、第2態様として、本体100の下側に突出する。直進キール411Rと直進キール411Lは、この第1態様と第2態様とを切り替えて利用される。
【0034】
図2−
図5に示すように、ブレーキキール412は、平板である。ブレーキキール412の平板面は、Y軸(移動方向に垂直な軸)に対して平行である。言い換えれば、ブレーキキール412は、プロペラ221とプロペラ211とを結ぶ直線に対して平行に配置されている。ブレーキキール412は、本体100における中心点POよりも後端102側に配置されている。なお、ブレーキキール412は、X軸に沿った本体100の中央部など、後端102側に配置されていてもよい。
【0035】
ブレーキキール412は、直進キール411Rと直進キール411Lとの間に配置されている。ブレーキキール412は、先端101と後端102とを結ぶ直線よりも直進キール411R側のブレーキキール412の面積と、先端101と後端102とを結ぶ直線よりも直進キール411L側のブレーキキール412の面積とが同じであるように左右対称な形状で配置することが好ましい。なお、ブレーキキール412は、直進キール411Rと直進キール411Lとの間でなくとも、左右対称な形で配置すればよい。ブレーキキール412は、剛性の高い材質からなり、例えば、直進キール411R,411Lと同じ材質である。
【0036】
ブレーキキール412は、本体100に対して可動するように装着されている。具体的には、ブレーキキール412は、第3態様として、本体100の下面100Bに平板面が当接している。また、ブレーキキール412は、第4態様として、本体100の下側に突出する。ブレーキキール412は、この第3態様と第4態様とを切り替えて利用される。なお、ブレーキキール412は、直進キール411R,411Lと同様の機構で本体100に収納、突出する方式であることが好ましい。
【0037】
このような構成を有する水上移動装置10は、
図6に示すような制御システムによって走航制御することが可能である。
【0038】
図6に示すように、機能的には、水上移動装置の制御システム1は、水上移動装置10とリモートコントローラ90とを備える。水上移動装置10は、推進力発生部21、22、動作制御部31、通信部32、方位算出部33、直進キール411、ブレーキキール412、および、キール駆動部421、422を備える。リモートコントローラ90は、リモコン制御部91、通信部92、スティック式操作部931、および、ボタン式操作部932を備える。なお、図示していないが、水上移動装置10およびリモートコントローラ90は、それぞれ電源を備えられている。各電源は、水上移動装置10およびリモートコントローラ90のそれぞれに対する電力供給を行っている。
【0039】
推進力発生部21は、上述のプロペラ211、および、モータ212を備える。推進力発生部22は、上述のプロペラ221、および、モータ222を備える。
【0040】
通信部32は、リモートコントローラ90の通信部92と無線通信する。通信部32は、通信部92からの操作データを受信して、動作制御部31に出力する。方位算出部33は、上述のように、本体100の絶対方位を算出して、動作制御部31に出力する。
【0041】
動作制御部31は、通信部32から取得した操作データと、方位算出部33からの本体100の方位とに基づいて、モータ212、222およびキール駆動部421、422の動作を制御する。モータ212は、この制御に応じて、プロペラ211を回転させ、モータ222は、この制御に応じて、プロペラ221を回転させる。キール駆動部421は、この制御に応じて、直進キール411(上述の直進キール411R、411L)を第1態様または第2態様にし、キール駆動部422は、この制御に応じて、ブレーキキール412を第3態様または第4態様にする。なお、この走航制御の詳細は後述し、ここでは省略する。
【0042】
図7(A)は、本発明の実施形態に係るリモートコントローラの正面図であり、
図7(B)は、このリモートコントローラの側面図である。リモートコントローラ90は、筐体900を備える。スティック式操作部931、および、ボタン式操作部932は、筐体900の表面に設置されている。スティック式操作部931は、筐体900の表面の全方位に向けて押し倒すことが可能である。
【0043】
リモコン制御部91は、スティック式操作部931の押し倒す方向を、水上移動装置10の移動方位として検出する。例えば、
図7(A)に示すDR1の方向に押し倒せば、水上移動装置10の移動方位として基準方位(例えば、北)を検出する。また、
図7(A)に示すDR2の方向に押し倒せば、水上移動装置10の移動方位として基準方位の逆方位(例えば、南)を検出する。同様に、
図7(A)に示すDR3の方向に押し倒せば、水上移動装置10の移動方位として基準方位の右手方位(例えば、東)を検出する。
図7(A)に示すDR4の方向に押し倒せば、水上移動装置10の移動方位として基準方位の左手方位(例えば、西)を検出する。なお、絶対方位を必要としない場合には、DR1、DR2、DR3、DR4は、それぞれ、本体100の前方、後方、右方向、左方向を移動方位として検出すればよい。
【0044】
また、リモコン制御部91は、スティック式操作部931の押し倒す量を、水上移動装置10の移動速度として検出する。リモコン制御部91は、移動方位、移動速度を含む操作データを生成する。
【0045】
このようなスティック式操作部931を用いることによって、ユーザは、所望方位で所望速度によって水上移動装置10を移動するように、直感的に操作できる。
【0046】
なお、所望の位置に最短経路で移動する場合、水上移動装置10が停止した状態にて、スティック式操作部931を操作することによって、水上移動装置10は、指定された方向に、略点の位置で方向転換してから、直進するように制御される。また、スティック式操作部931を押し倒して操作している状態で、押し倒す方向と押し倒す量とを調整することによって、任意の方向に任意の旋回半径で、水上移動装置10を正確に旋回させることができる。
【0047】
ボタン式操作部932は、例えば、
図7(A)に示すように複数であり、それぞれに各種のファンクションが割り当てられている。リモコン制御部91は、押下されたボタン式操作部932を検出することで、当該ボタン式操作部932に割り当てられたファンクションを含む操作データを生成する。
【0048】
リモコン制御部91は、生成した操作データを、通信部92に出力する。通信部92は、操作データを、無線通信によって、水上移動装置10の通信部32に送信する。
【0049】
このようなリモートコントローラ90を用いることによって、ユーザは、各種の任意の移動経路で水上移動装置10を走行するように、遠隔操作によって制御できる。
【0050】
なお、上述の説明では、無人機としての実施形態を主に記載している。しかしながら、有人機としての実施形態では、操作部を水上移動装置10に付属させることにより、水上移動装置10の通信部およびリモートコントローラ90は不要となる。この場合、本体100には、人が搭乗する搭乗部が設けられており、当該搭乗部は操作部を有している。搭乗部は、屋根等があってもよいが、本体100を人が搭乗可能な大きさ形成することによって、本体100の上面100Tを搭乗部として利用できる。そして、操作部としては、上述のスティック式操作部931およびボタン式操作部932の少なくとも一方を備えていればよく、特にスティック式操作部931を備えることによって、直感的な操作が可能になる。
【0051】
次に、水上移動装置10が所望の位置に最短経路で移動する場合における各走航状態での形状、走航制御について、
図8、
図9、
図10を用いて、より具体的に説明する。
図8(A)は、直進時の水上移動装置の外形を示す平面図であり、
図8(B)は、その後面図であり、
図8(C)は、その側面図である。
図9(A)は、左方向転換時の水上移動装置の外形を示す平面図であり、
図9(B)は、その後面図であり、
図9(C)は、その側面図である。
図10(A)は、直進時且つ減速時の水上移動装置の外形を示す平面図であり、
図10(B)は、その後面図であり、
図10(C)は、その側面図である。
【0052】
(直進時)
図8(A)、
図8(B)、
図8(C)に示すように、直進時には、水上移動装置10は、直進キール411R、411Lを本体100の下側に突出させる。すなわち、直進キール411R、411Lの第1態様が選択される。
【0053】
水上移動装置10は、ブレーキキール412の平板面を本体100の下面100Bに当接させる。すなわち、ブレーキキール412の第3態様が選択される。
【0054】
水上移動装置10は、モータ212、222を駆動制御し、プロペラ211、221を回転させる。この際、プロペラ211の回転方向とプロペラ221の回転方向は同じであり、プロペラ211の回転速度とプロペラ221の回転速度は同じである。
【0055】
このような直進キール411R、411Lおよびブレーキキール412の態様の選択と、モータ212、222およびプロペラ211、221の制御とを行うことによって、水上移動装置10は、先端101から先の方向に直進する。
【0056】
この際、第2部分120は、第1部分110の後方側に突出する。この構造により、先端101と後端102との距離は、第1側端103と第2側端104との距離よりも長くなる。したがって、前方からの水の抵抗よりも、側方からの水の抵抗を受けやすくなり、更に直進性が向上する。
【0057】
なお、この第2部分120の移動動作と、直進キール411R、411Lの本体100の下側への突出動作とを、リンクさせておくとよい。これにより、それぞれを個別に動作させる必要が無く、水上移動装置10を直進用の形状に素早く変形することができる。
【0058】
(方向転換時)
ここでは、左方向転換時を説明する。
図9(A)、
図9(B)、
図9(C)に示すように、左方向転換時には、水上移動装置10は、直進キール411R、411Lを本体100の内部に収容する。すなわち、直進キール411R、411Lの第2態様が選択される。
【0059】
水上移動装置10は、ブレーキキール412の平板面を本体100の下面100Bに当接させる。すなわち、ブレーキキール412の第3態様が選択される。このように、ブレーキキール412を本体100の下面100Bに当接させることによって、方向転換時の水の抵抗を少なくでき、より正確な方向転換が可能になる。
【0060】
水上移動装置10は、モータ212を駆動制御し、プロペラ211を回転させる。水上移動装置10は、モータ222を停止制御し、プロペラ221を停止させる。なお、モータ222を通電しない場合も、本実施形態の停止制御に含まれる。
【0061】
このような直進キール411R、411Lおよびブレーキキール412の態様の選択と、モータ212、222およびプロペラ211、221の制御とを行うことによって、水上移動装置10は、制御を開始した略点の位置において、制御を開始した方位から、指定された角度だけ左方向転換する。
【0062】
この際、第2部分120は、第1部分110の凹部に収容されており、本体100は、平面視して円形となる。この構造により、本体100は、水面の全方位に対して水の抵抗が同じになり、方向転換が容易になる。これにより、水上移動装置10は、方向転換制御を開始した位置から殆ど前方に移動することなく、左方向転換できる。
【0063】
また、プロペラ221を停止させず、プロペラ211と逆回転に制御してもよい。これにより、プロペラ211の回転速度を上げることなく、左方向転換の速度を向上できる。
【0064】
(直進減速時)
図10(A)、
図10(B)、
図10(C)に示すように、直進減速時には、水上移動装置10は、直進キール411R、411Lを本体100の下側に突出させる。すなわち、直進キール411R、411Lの第1態様が選択される。
【0065】
水上移動装置10は、ブレーキキール412を本体100の下側に突出させる。すなわち、ブレーキキール412の第4態様が選択される。
【0066】
水上移動装置10は、モータ212、222を停止制御し、プロペラ211、221を停止させる。なお、モータ212、222を通電しない場合、または、プロペラ211,221を逆回転させる制御の場合も、本実施形態の停止制御に含まれる。
【0067】
このような直進キール411R、411Lおよびブレーキキール412の態様の選択と、モータ212、222およびプロペラ211、221の制御とを行うことによって、水上移動装置10は、直進しながら減速する。
【0068】
この際、第2部分120は、第1部分110の後方側に突出する。この構造により、先端101と後端102との距離は、第1側端103と第2側端104との距離よりも長くなる。したがって、前方からの水の抵抗よりも、側方からの水の抵抗を受けやすくなり、減速時に、本体100が不要に旋回することを抑制できる。
【0069】
また、ブレーキキール412の突出量を調整することによって、減速の速度を調整できる。
【0070】
このような減速制御を行うことによって、水上移動装置10を所望の位置に高精度に停止させることができる。
【0071】
そして、上述の、直進、方向転換、減速を組み合わせることによって、水上移動装置10は、所望の位置に最短経路で移動できる。
図11は、本発明の実施形態に係る水上移動装置の移動経路の一例を示す平面図である。
図11には、設定移動経路と水上移動装置10の実際の移動経路とを記載している。
【0072】
図11に示すように、設定移動経路では、位置Aから位置Bまでの距離LL1の区間では、水上移動装置を直進させ、位置Bでは、水上移動装置を90[°]に左方向転換させる。次に、位置Bから位置Cまでの距離LL2の区間では、水上移動装置を直進させ、位置Cでは、水上移動装置をψ[°]に右方向転換させる。
【0073】
これに対し、上述の構成および制御を備えることによって、
図11に示すように、水上移動装置10は、位置Aから位置Bまでの距離LL1の区間では直進し、位置Bの直前で減速して、位置Bで停止し、90[°]に左方向転換する。この際、位置Bにて、位置A側と反対側の方向に移動(オーバーラン)することはなく、位置Bにて左方向に移動を開始する。
【0074】
次に、水上移動装置10は、位置Bから位置Cまでの距離LL2の区間では直進し、図示しない減速制御を行って位置Cで停止し、ψ[°]に右方向転換する。この際、位置Cにて、位置B側と反対側の方向に移動(オーバーラン)することはなく、位置Cにて左方向への方向転換を開始し、ψ[°]の方向転換後、移動を開始する。
【0075】
このように、水上移動装置10は、直進距離、方向転換角度等の移動経路に関するパラメータを任意の所望値に設定しても、この移動経路に沿って正確に移動することができる。
【0076】
次に、水上移動装置10が任意の方向に任意の旋回半径で旋回する場合における形状、走航制御について説明する。
【0077】
旋回時には、水上移動装置10は、直進キール411R、411Lを本体100の内部に収容する。すなわち、直進キール411R、411Lの第2態様が選択される。
【0078】
水上移動装置10は、ブレーキキール412の平板面を本体100の下面100Bに当接させる。すなわち、ブレーキキール412の第3態様が選択される。
【0079】
水上移動装置10は、モータ212、222を駆動制御し、プロペラ211、221を回転させる。この際、プロペラ211の回転方向とプロペラ221の回転方向は同じであり、プロペラ211の回転速度とプロペラ221の回転速度は異なっている。ここで、回転速度を調整することによって、旋回方向と旋回半径を調整することができる。
【0080】
このような直進キール411R、411Lおよびブレーキキール412の態様の選択と、モータ212、222およびプロペラ211、221の制御とを行うことによって、水上移動装置10は、先端101から先の任意の方向に任意の旋回半径で旋回する。
【0081】
この際、第2部分120は、第1部分110の凹部に収容されており、本体100は、平面視して円形となる。この構造により、本体100は、水面の全方位に対して水の抵抗が同じになり、旋回が容易になる。これにより、水上移動装置10は、任意の方向に任意の旋回半径で正確に旋回できる。
【0082】
次に、本発明の第2の実施形態に係る水上移動装置について、図を参照して説明する。
図12(A)は、本発明の第2の実施形態に係る水上移動装置の旋回または方向転換時の外形を示す側面図であり、
図12(B)は、本発明の第2の実施形態に係る水上移動装置の直進時の外形を示す側面図である。
【0083】
第2の実施形態に係る水上移動装置10Aは、第1の実施形態に係る水上移動装置10に対して、直進キールの形状において異なる。水上移動装置10Aの他の構成は、水上移動装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0084】
直進キール411LAは、本体100の直径と略同じ長さである。なお、図示していないが、第1の実施形態に示した直進キール411R、411Lの関係と同様に、直進キール411LAに対となる直進キールが存在し、この直進キールは、直進キール411LAと同形状、同材質からなる。
【0085】
このような構成であっても、水上移動装置10Aは、水上移動装置10と同様に、所望の位置に最短経路または任意の移動経路に沿って正確に移動できる。
【0086】
なお、上述の各実施形態では、推力発生部としてプロペラを用いる態様を示した。しかしながら、本体の先端と後端とを結ぶ直線方向(X軸に沿った方向)に沿って、本体を推進させる力を発生し、水中に配置されていないものであれば、本実施形態の推力発生部として利用することができる。
【0087】
また、上述の各実施形態では、推力発生部を2個配置する態様を示したが、更に推力発生部を補助的に追加することも可能である。
【0088】
また、上述の各実施形態では、直進キールの個数を2個、ブレーキキールの個数を1個とする態様を示した。しかしながら、直進キールの個数、ブレーキキールの個数は、これに限るものではなく、個数および配置は適宜設定できる。
【0089】
また、上述の各実施形態では、水上を単に移動する水上移動装置を示した。しかしながら、水中探知用の超音波センサを取り付けてもよい。上述の水上移動装置は、水中にスクリューを備えていない。したがって、超音波センサがスクリューの泡等を検知せず、超音波センサは、魚、魚群、または、海底等の所望とする探知対象を確実に探知できる。また、魚または魚群を驚かせることがないので、魚または魚群の直上に近づいて、超音波探知を行うことができ、魚または魚群の探知精度を向上できる。
【0090】
また、水上移動装置は、任意の移動経路を設定できるので、現在位置から所望位置までを最短距離で移動できる。超音波センサは、所望位置での探知を正確且つ素早く行うことができる。また、水上移動装置は、所望の探知経路に沿って正確に移動できるので、超音波センサは、探知経路上の所望位置にて、探知を正確に行うことができる。
【0091】
また、水上移動装置は、上述のようにオーバーランしないので、複数の水上移動装置を所定間隔で配置しながら、隊列を組んで移動させることができる。この際、オーバランしないことにより、複数の水上移動装置を同時に旋回または方向転換させても、複数の水上移動装置の絶対方位に対する位置関係が崩れ難い。そして、このように、複数の水上移動装置がそれぞれの位置関係を保ちながら移動できることによって、複数の水上移動装置のそれぞれによる点での探知結果を合成して、面での探知結果を実現できる。
【解決手段】水上移動装置10は、本体100、プロペラ211とモータ212を有する第1推進力発生部、プロペラ221とモータ222を有する第2推進力発生部、および、制御部30を備える。本体100は、水面に浮かび、没水部の水平断面の形状が円形、略円形、または5角以上の正多角形の形状を有する。第1推進力発生部と第2推進力発生部とは、本体の上面側であって、没水部の重心点に対して略対称な位置に配置されている。制御部30は、第1推進力発生部の推進力と第2推進力発生部の推進力とを個別に制御する。