(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゼロ点診断部は、規定時間の間に取得された前記アンモニアセンサの出力値の平均値に基づいて、前記アンモニアセンサのゼロ点を診断することを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
前記ゼロ点初期化部は、前記条件下で取得された前記アンモニアセンサの出力値が所定の許容値以上の場合に前記アンモニアセンサのゼロ点を初期化することを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような従来のシステムでは、選択還元型NOx触媒装置の下流にNOxセンサを配置して、このNOxセンサによりNOxおよびNH3を検出しており、この検出値を用いて外部に排出される排気ガス中にアンモニアが含まれないようにフィードバック制御を行っている。
【0006】
しかしながら、NOxセンサによりNH3を検出した場合、正確なNH3濃度を検出することは困難である。このため、還元触媒の下流にアンモニアセンサを配置して、正確なNH3濃度を検出することが望ましい。
【0007】
一方、アンモニアセンサを使用した場合、実際のNH3濃度がゼロ“0”の場合に、アンモニアセンサの検出値が0を示していない場合は、ゼロ点のリセットを行う必要がある。この点に関し、上述のように特許文献2,3には、NOxセンサの出力を補正する技術が記載されている。しかしながら、選択還元型NOx触媒装置(SCR)を備えたシステムでは、触媒の上流側からアンモニア系溶液を噴射して生成されるアンモニアを触媒に吸着させる。このため、触媒下流にアンモニアが存在するか否かは、触媒上流におけるアンモニア系溶液の噴射制御と密接な関係があり、NOxセンサと同様の方法でゼロ点リセットを行うことは困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、還元剤を吸着して窒素酸化物を還元する還元触媒を備えたシステムにおいて、アンモニアセンサのゼロ点の初期化を確実に行うことが可能な、新規かつ改良された制御装置、内燃機関の排気浄化装置、及び排気浄化装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、還元剤を吸着して排気ガス中の窒素酸化物を還元する還元触媒の下流に前記還元剤が流出しない条件下で前記還元剤の噴射を制御する還元剤噴射制御部と、前記還元触媒の下流に設けられたアンモニアセンサの出力を取得するアンモニアセンサ出力取得部と、前記条件下で取得された前記アンモニアセンサの出力値に基づいて、前記アンモニアセンサのゼロ点を診断するゼロ点診断部と、前記ゼロ点診断部の診断結果に基づいて、前記アンモニアセンサのゼロ点を初期化するゼロ点初期化部と、を備える制御装置が提供される。
【0010】
前記ゼロ点診断部は、内燃機関の始動時に前記アンモニアセンサが起動した後、前記還元触媒への前記還元剤の噴射が開始されるまでの間に取得された前記アンモニアセンサの出力値に基づいて、前記アンモニアセンサのゼロ点を診断するものであっても良い。
【0011】
また、前記ゼロ点診断部は、前記還元触媒に前記還元剤が噴射される通常運転時に取得された前記アンモニアセンサの出力値に基づいて、前記アンモニアセンサのゼロ点を診断するものであっても良い。
【0012】
また、前記ゼロ点診断部は、前記還元触媒の触媒温度が低下する場合に取得された前記アンモニアセンサの出力値に基づいて、前記アンモニアセンサのゼロ点を診断するものであっても良い。
【0013】
また、前記還元剤噴射制御部は、前記ゼロ点診断部による前記アンモニアセンサのゼロ点の診断が行われる場合に、前記還元触媒への前記還元剤の噴射量を一時的に減少させるものであっても良い。
【0014】
また、前記還元剤噴射制御部は、前記還元触媒への前記還元剤の噴射量を、通常運転時の前記還元触媒の目標吸着量に基づく値から、前記目標吸着量よりも少ない診断用吸着量に基づく値へ減少させるものであっても良い。
【0015】
また、前記還元剤噴射制御部は、前記ゼロ点診断部による前記アンモニアセンサのゼロ点の診断が行われる場合に、前記還元触媒への前記還元剤の噴射を一時的に停止させるものであっても良い。
【0016】
また、前記還元触媒における前記還元剤の吸着量を推定する吸着量推定部を備え、前記ゼロ点診断部は、前記吸着量が通常運転時の前記還元触媒の目標吸着量よりも少ない診断用吸着量以下の場合に取得された前記アンモニアセンサの出力値に基づいて、前記アンモニアセンサのゼロ点を診断するものであっても良い。
【0017】
また、前記ゼロ点診断部は、規定時間の間に取得された前記アンモニアセンサの出力値の平均値に基づいて、前記アンモニアセンサのゼロ点を診断するものであっても良い。
【0018】
また、前記ゼロ点初期化部は、前記条件下で取得された前記アンモニアセンサの出力値が所定の許容値以上の場合に前記アンモニアセンサのゼロ点を初期化するものであっても良い。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、上記の制御装置を備える内燃機関の排気浄化装置が提供される。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、還元剤を吸着して排気ガス中の窒素酸化物を還元する還元触媒の下流に前記還元剤が流出しない条件下で前記還元剤の噴射を制御するステップと、前記還元触媒の下流に設けられたアンモニアセンサの出力を取得するステップと、前記条件下で取得された前記アンモニアセンサの出力値に基づいて、前記アンモニアセンサのゼロ点を診断するステップと、前記ゼロ点の診断結果に基づいて、前記アンモニアセンサのゼロ点を初期化するステップと、を備える排気浄化装置の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、還元剤を吸着して窒素酸化物を還元する還元触媒を備えたシステムにおいて、アンモニアセンサのゼロ点の初期化を確実に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
1.排気浄化装置
(1)全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置10とその周辺の構成の一例を示している。この排気浄化装置10は、内燃機関5の排気通路11に接続されており、還元触媒20と、還元剤噴射装置30と、制御装置60等を備えており、内燃機関5から排出される排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を、還元剤としての尿素水溶液を用いて浄化する尿素SCRシステムとして構成されている。ただし、本実施形態において使用できる還元剤は尿素水溶液に限られるものではなく、例えばアンモニア水等、アンモニアが生成されるものであればよい。
【0025】
内燃機関5は、ECU(Engine Control Unit)50によって制御される。制御装置60は、内燃機関5の制御に関する制御データ等をECU50から受信する。排気通路11において、内燃機関5と還元触媒20との間には酸化触媒12(DOC)が配置されている。酸化触媒12は、排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)を酸化する機能を有する。酸化触媒12は公知の触媒が適宜用いられる。
【0026】
本実施形態の排気浄化装置10に用いられる還元触媒20は、排気通路11内に噴射された尿素水溶液が分解することで生成されるアンモニアを吸着し、アンモニアとNOxとの還元反応を促進する機能を有している。具体的には、還元触媒20では、尿素水溶液中の尿素が分解することによって生成されるアンモニア(NH3)がNOxと反応することにより、NOxが窒素(N2)及び水(H2O)に分解される。還元触媒20は公知の触媒が適宜用いられる。
【0027】
還元触媒20の下流側には排気ガス中のアンモニア(NH3)濃度を検出するためのアンモニアセンサ(NH3センサ)14が備えられている。また、還元触媒20の上流側には排気ガス中のNOx濃度を検出するためのNOxセンサ16が備えられている。アンモニアセンサ14のセンサ信号は、制御装置60に送信され、制御装置60ではこのセンサ信号に基づいて排気ガス中のアンモニア濃度が算出される。また、NOxセンサ16のセンサ信号は、制御装置60に送信され、制御装置60ではこのセンサ信号に基づいて排気ガス中のNOx濃度が算出される。還元触媒20の上流側には排気ガスの温度を検出する排気温度センサ18が設けられている。
【0028】
(2)還元剤噴射装置
還元剤噴射装置30は、貯蔵タンク31と、還元剤噴射弁34と、ポンプ41等を主たる要素として構成されている。貯蔵タンク31とポンプ41とは第1の還元剤供給通路57で接続され、ポンプ41と還元剤噴射弁34とは第2の還元剤供給通路58で接続されている。このうち第2の還元剤供給通路58には圧力センサ43が設けられている。圧力センサ43のセンサ信号は制御装置60に送信され、制御装置60ではこのセンサ信号に基づいて第2の還元剤供給通路58内の圧力が算出される。
【0029】
また、第2の還元剤供給通路58の途中には、貯蔵タンク31に通じる循環通路59が接続されている。循環通路59にはオリフィス45が設けられており、循環通路59を介して貯蔵タンク31に戻される還元剤の流れに抵抗を与え、第2の還元剤供給通路58内の圧力が高められるようになっている。このような還元剤噴射装置自体は公知の構成のものを用いることができる。
【0030】
ポンプ41としては、制御装置60により駆動制御される電動ポンプが用いられている。本実施形態において、ポンプ41は、圧力センサ43によって検出される第2の還元剤供給通路58内の圧力が所定値に維持されるように、その出力がフィードバック制御されるように構成されている。
【0031】
還元剤噴射弁34は、制御装置60により開弁のオンオフが制御される電磁駆動式のオンオフ弁が用いられており、還元触媒20よりも上流側において排気通路11に固定されている。この還元剤噴射弁34は、基本的には、第2の還元剤供給通路58内の圧力が目標値に維持されている状態で通電制御が行われる。具体的には、演算によって求められる指示噴射量Qに応じて所定のDUTYサイクル中における開弁DUTY比を設定することにより、排気通路11内への還元剤の噴射量が調節される。
【0032】
ここで、還元剤噴射弁34の指示噴射量Qは、以下の式(1)から算出することができる。
指示噴射量Q=(現在のNOx流量に相当する噴射量A)+(還元触媒の吸着可能量に相当する噴射量B)
・・・(1)
【0033】
式(1)において、現在のNOx流量に相当する噴射量Aは、還元触媒20の上流を流れる排気ガス中のNOx流量に相当する噴射量であって、還元触媒20の上流を流れる排気ガス中のNOxを還元するために必要な噴射量である。還元触媒20の上流を流れる排気ガス中のNOx流量は、排気ガス流量にNOxセンサ16のセンサ信号から算出されるNOx濃度を乗算して求めることができる。排気ガス中のNOx流量に相当する噴射量Aよりも余分に噴射した量は、その時点で還元触媒20に吸着される量(アンモニア吸着量)に相当し、余分に噴射した量(噴射量B)が還元触媒の吸着可能量となるように制御が行われる。また、還元触媒20の吸着可能量に相当する噴射量Bは、還元触媒20が現在の触媒温度で吸着することが可能な総吸着量(後述する目標NH3吸着量に相当)から、現在の還元触媒20のアンモニア吸着量を減算した差分より算出される量である。還元触媒20が吸着することが可能な吸着量は、還元触媒20の特性から予め定められており、触媒温度に応じて変動する。還元触媒20が吸着することが可能な総吸着量は、還元触媒20が理論上吸着可能な最大の吸着量に対して80%程度の値に設定される。これにより、還元触媒20のアンモニア吸着量が飽和することがなく、下流へのアンモニアの流出を抑止できる。
【0034】
制御装置60は、所定のサイクル毎に上式から指示噴射量Qを算出し、還元剤噴射弁34の噴射量を制御する。制御装置60は、所定のサイクル毎に触媒の吸着可能量に相当する噴射量Bを算出して、前回のサイクルで求めた噴射量Bの値に積算していくことで、所定のサイクル毎に還元触媒20のアンモニア吸着量を取得することができる。
【0035】
2.アンモニアセンサのゼロ点リセットの具体的手法
次に、アンモニアセンサ14のセンサ信号のゼロ点ドリフトを検出するオフセット診断について詳細に説明する。制御装置60は、アンモニアセンサ14の出力信号に基づいて排気ガス中にアンモニア(NH3)が含まれるか否かを判定する。そして、排気ガス中にアンモニア(NH3)が含まれる場合は、還元剤噴射弁34の噴射量を減少させることで、アンモニアが還元触媒20を通過して大気中に放出されることを抑止する。
【0036】
アンモニアセンサ14から検出されるNH3濃度は、本来のNH3濃度の値からオフセットする場合が想定される。このため、排気ガス中の正確なNH3濃度を検出するために、アンモニアセンサ14のゼロ点リセットを行う。ゼロ点リセットは、排気ガス中にNH3が含まれていない状態で、アンモニアセンサ14から検出されるNH3濃度をゼロ“0”にリセットするものである。これにより、ゼロ点リセットを行った後は、アンモニアセンサ14の出力信号から正確なNH3濃度を検出することが可能となる。
【0037】
アンモニアセンサ14のゼロ点リセットは、還元触媒20の下流にNH3が流出しない状況下で行う。具体的には、以下の第1〜第3の方法で還元触媒20の下流にNH3が流れない状況を生じさせて、アンモニアセンサ14のゼロ点のオフセット診断を行う。そして、オフセット診断の結果、アンモニアセンサ14のゼロ点がオフセットしている場合は、ゼロ点リセットを行う。
【0038】
第1の方法では、内燃機関5の始動時にアンモニアセンサ14を起動した後、還元剤噴射弁34からの還元剤の噴射を開始するまでの間に、ゼロ点のオフセット診断を行う。還元剤噴射弁34からの噴射が開始されない間は、排気通路11にアンモニアNH3が流れないため、基本的には還元触媒20の下流にアンモニアNH3が流れることはない。このため、アンモニアセンサ14の出力のゼロ点のオフセット診断を行うことができる。なお、還元剤噴射弁34からの噴射が行われていない間、排気ガス中に含まれるNOxは、還元触媒20に既に吸着されているアンモニアによって還元される。
【0039】
内燃機関5の始動時において、還元剤噴射弁34からの還元剤の噴射は、排気通路11内の排気ガスが還元剤を分解可能な温度まで上昇してから開始される。従って、内燃機関5を始動した後、排気温度が還元剤を分解可能な温度に上昇するまでの間は、還元剤が排気通路11に噴射されないため、アンモニアセンサ14のゼロ点オフセット診断を行うことができる。
【0040】
また、第1の方法において、好適には、還元触媒20のアンモニア吸着量が所定値以下の場合にゼロ点のオフセット診断を行う。これにより、還元触媒20の下流にアンモニアが流出することを確実に抑止することができ、ゼロ点のオフセット診断をより精度良く行うことができる。
【0041】
第2の方法では、通常の運転状態で還元剤噴射弁34から還元剤を噴射している場合に、還元触媒20におけるアンモニアの吸着量が少なく、アンモニアが還元触媒20の下流に流れない状況下でゼロ点のオフセット診断を行う。
【0042】
また、第2の方法において、好適には、還元剤の噴射量を通常時よりも減少させてオフセット診断を行う。これにより、還元触媒20の下流にアンモニアが流出することを確実に抑止することができ、ゼロ点のオフセット診断をより精度良く行うことができる。
【0043】
第3の方法では、還元触媒20の温度が高温から低温に遷移する時にゼロ点オフセット診断を行う。還元触媒20の温度が高温から低温に遷移すると、還元触媒20がアンモニアを吸着可能な量が増加するため、還元触媒20の下流へアンモニアが流れることが抑制される。従って、還元触媒20の温度が高温から低温に遷移するタイミングでゼロ点オフセット診断を行うことで、還元触媒20の下流へアンモニアが流れることがなく、ゼロ点のオフセット診断を行うことができる。
【0044】
また、第3の方法においても、好適には、還元剤の噴射量を通常時よりも減少させてオフセット診断を行う。これにより、還元触媒20の下流にアンモニアが流出することを確実に抑止することができ、ゼロ点のオフセット診断をより精度良く行うことができる。
【0045】
ゼロ点オフセット診断の結果、アンモニアセンサ14のゼロ点がシフトしている場合は、ゼロ点リセットを行う。これにより、ゼロ点リセットを行ったアンモニアセンサ14により、還元触媒20の下流におけるアンモニア濃度を精度良く検出できる。従って、アンモニアセンサ14の出力信号から求まるアンモニア濃度に基づいて、還元剤噴射弁34からの還元剤噴射量を高精度にフィードバック制御することができる。
【0046】
2.制御装置
図2は、本実施形態の排気浄化装置10に備えられた制御装置60の構成のうち、アンモニアセンサ14のゼロ点のオフセット診断、及びゼロ点リセットに係る処理を機能的なブロックで表したものである。この制御装置60は、アンモニアセンサ出力取得部62、ゼロ点診断部64、ゼロ点初期化部66、排気温度取得部68、還元剤噴射制御部70、判定部72、吸着量推定部72を有して構成される。この制御装置60は、公知の構成からなるマイクロコンピュータを中心に構成されており、各構成要素はマイクロコンピュータによるプログラムの実行によって実現される。
【0047】
また、制御装置60には図示しない記憶部が備えられている。この記憶部には、各構成要素での演算結果やあらかじめ用意されたデータマップ等が記憶される。記憶部は、揮発性のメモリ(RAM:Random Access Memory)又は不揮発性のメモリから構成される。
【0048】
アンモニアセンサ出力取得部62は、還元触媒20の下流に設けられたアンモニアセンサ14の出力を取得する。ゼロ点診断部64は、還元触媒20の下流に還元剤が流出しない条件下で取得されたアンモニアセンサ14の出力値に基づいて、アンモニアセンサ14のゼロ点を診断する。ゼロ点初期化部66は、ゼロ点診断部64の診断結果に基づいて、アンモニアセンサ14のゼロ点を初期化(リセット)する。排気温度取得部68は、排気温度センサ18の出力から排気通路11を流れる排気ガスの温度を取得する。還元剤噴射制御部70は、上述した(1)式による指示噴射量Qに基づいて、還元剤噴射弁34からの還元剤の噴射を制御する。また、還元剤噴射制御部70は、ゼロ点のオフセット診断を行う場合に、後述するように噴射量を減量し、また噴射を停止させる制御を行う。吸着量推定部72は、上述した(1)式の吸着可能量に相当する噴射量Bを積算することで、還元触媒20におけるアンモニア吸着量を推定する。
【0049】
次に、上述した第1〜第3の方法のそれぞれについて、制御装置60が行う具体的な処理について説明する。
図3及び
図4は、第1の方法の処理を示すフローチャートである。先ず、
図3のステップS10では、アンモニアセンサ14の値などの読み取りを行う。次のステップS12では、アンモニアセンサ14を起動可能であるか否かを判定し、起動可能な場合は次のステップS14へ進む。一方、アンモニアセンサ14を起動可能でない場合は、ステップS12で待機する。
【0050】
ステップS14では、アンモニアセンサ14の起動を行う。次のステップS16では、アンモニアセンサ14の起動が完了したか否かを判定し、起動が完了した場合は次のステップS18へ進む。一方、アンモニアセンサ14の起動が完了していない場合は、ステップS16で待機する。
【0051】
ステップS18では、還元剤噴射弁34からの尿素水の噴射が可能であるか否かを判定する。尿素水の噴射が可能な場合は、次のステップS20へ進み、還元剤噴射弁34から還元剤を噴射して通常運転を行う。ここで、尿素水の噴射が可能であるか否かは、排気温度が尿素水を分解可能な温度に達しているか否かによって判定される。
【0052】
ステップS18において、還元剤噴射弁34からの尿素水の噴射が可能でない場合は、
図4のステップS22へ進む。ステップS22では、還元触媒20の推定NH3吸着量が診断用NH3吸着量よりも小さいか否かを判定し、推定NH3吸着量が診断用NH3吸着量よりも小さい場合はステップS24へ進む。ここで、推定NH3吸着量は、上述した式(1)の吸着可能量に相当する噴射量Bを積算することによって求めることができ、それぞれのデューティサイクルにおける噴射量計算ごとに、前回の積算結果に対して今回の吸着可能量相当量Bが積算され、メモリに記憶される。また、診断用NH3吸着量は、触媒温度に応じて予め設定された値である。一方、推定NH3吸着量が診断用NH3吸着量以上の場合は、ステップS18へ戻る。
【0053】
図5は、目標NH3吸着量と診断用NH3吸着量の関係を示す特性図である。
図4において、横軸は還元触媒20の触媒温度を、縦軸は還元触媒20のNH3吸着量をそれぞれ示している。還元触媒20のアンモニア吸着量は、触媒温度に応じて変化し、触媒温度が低くなるほどアンモニア吸着量は増加する。このため、
図4に示すように、目標NH3吸着量は触媒温度が低くなるほど増加するように設定される。通常運転時は、還元触媒20の触媒温度に基づいて、還元触媒20のアンモニア吸着量が目標NH3吸着量となるように還元剤噴射弁34からの噴射が行われる。なお、上述のように、目標NH3吸着量は、還元触媒20が各温度で吸着可能な量の8割程度に設定される。
【0054】
また、
図5に示すように、診断用NH3吸着量は、目標NH3吸着量よりも少ない値に設定され、触媒温度が低くなるほど目標NH3吸着量との差分が大きくなるように設定される。診断用NH3吸着量は、還元触媒20のアンモニア吸着量が診断用NH3吸着量よりも小さい場合に、還元触媒20の下流へのアンモニアの流出が0となる値に設定される。従って、アンモニア吸着量が診断用NH3吸着量よりも小さい場合にアンモニアセンサ14のゼロ点リセットを行うことで、アンモニアが検出されない状況でアンモニアセンサ14の出力が“0”にリセットされるため、ゼロ点リセットを精度良く行うことができる。
【0055】
図4に戻り、ステップS24では、アンモニアセンサ14の出力値を積算する。次のステップS26では、規定時間が経過したか否かを判定し、規定時間が経過した場合は、ステップS28へ進み、アンモニアセンサ14の出力の積算値を規定時間で平均化して、平均のNH3濃度を算出する。一方、規定時間が経過していない場合は、ステップS18へ戻る。
【0056】
ステップS30では、平均のNH3濃度が所定のトレランス(許容度)よりも小さいか否かを判定し、平均のNH3濃度がトレランスよりも小さい場合はステップS32で通常運転を行う。一方、ステップS30において、平均のNH3濃度がトレランス以上の場合は、ステップS34へ進み、平均NH3濃度によるゼロ点調整を実施する。具体的には、平均NH3濃度の値が“0”となるようにゼロ点のリセットを行う。ステップS30の後はステップS32へ進み、ゼロ点調整が行われたセンサ値に基づいて通常運転を行う。
【0057】
トレランスの値は、アンモニアセンサ14自体の検出誤差によって定められる。ステップS30において、平均のNH3濃度がトレランスよりも小さい場合は、アンモニアセンサ14自体の検出誤差によってゼロ値からのシフトが生じていると考えられるため、ステップS34のゼロ点調整は行わない。
【0058】
以上のように、
図3及び
図4の処理によれば、内燃機関5の始動直後など、アンモニアセンサ14の起動直後において、推定NH3吸着量が診断用NH3吸着量よりも小さい場合は、アンモニアセンサ14の出力値から平均のNH3濃度を算出する。ここで、推定NH3吸着量が診断用NH3吸着量よりも小さい場合は、還元触媒20に十分な量のアンモニアが吸着しておらず、還元触媒20の下流にアンモニアが流出しない。従って、還元触媒20の下流にアンモニアが流出しない条件下で算出された平均のNH3濃度を0にリセットすることで、精度良くゼロ点リセットを行うことが可能となる。
【0059】
図6及び
図7は、第2の方法の処理を示すフローチャートである。先ず、
図6のステップS40では、アンモニアセンサ14の値などの読み取りを行う。次のステップS42では、還元触媒20の触媒温度が200℃よりも高いか否かを判定し、触媒温度が200℃よりも高い場合はステップS44へ進む。一方、触媒温度が200℃以下の場合は、ステップS42で待機する。なお、触媒温度が200℃よりも高いか否かを判定する意義は、還元触媒20が活性化状態にあり、尿素水の噴射制御を実行可能な状態であるか否かを判定することにある。すなわち、次のステップS44で診断不要となったときには、通常運転を行い、触媒温度が200℃よりも高いため尿素水の噴射制御を行う。
【0060】
ステップS44では、アンモニアセンサ14のゼロ点オフセット診断の要否を判定し、ゼロ点オフセット診断を行う場合はステップS46へ進む。一方、ゼロ点オフセット診断を行わない場合はステップS48へ進み、通常運転を行う。
【0061】
ステップS44の判定の際には、例えば、排気浄化装置10が搭載された車両の総走行距離または総走行時間が所定値に到達したとき、もしくは車両の運転中に規定時間が経過したときなどにゼロ点オフセット診断を行うことを判定する。
【0062】
ステップS46では、還元剤噴射弁34からの尿素水の噴射を停止させる。これにより、排気ガス中のNOxは還元触媒20に吸着しているアンモニアによって還元され、還元触媒20におけるアンモニアの吸着量が減少する。なお、ステップS46では、噴射を完全に停止させることなく、噴射量を減少させても良い。例えば、噴射量を通常の60〜70%程度に低下させるようにしても良い。このように、噴射量の低下によっても還元触媒20におけるアンモニアの吸着量を減少させることが可能である。
【0063】
次のステップS50では、還元触媒20の推定NH3吸着量が診断用NH3吸着量よりも小さいか否かを判定し、推定NH3吸着量が診断用NH3吸着量よりも小さい場合は
図7のステップS52へ進む。
【0064】
ステップS52では、診断用NH3吸着量に基づく噴射制御により尿素水の噴射を開始する。すなわち、還元触媒20のアンモニア吸着量が診断用NH3吸着量となるように還元剤噴射弁34から還元剤を噴射する。次のステップS54では、アンモニアセンサ14の出力値を積算する。次のステップS56では、規定時間が経過したか否かを判定し、規定時間が経過した場合は、ステップS58へ進み、アンモニアセンサ14の出力の積算値を規定時間で平均化して平均のNH3濃度を算出する。一方、規定時間が経過していない場合は、ステップS56で待機する。
【0065】
ステップS60では、平均のNH3濃度が所定のトレランスよりも小さいか否かを判定し、平均のNH3濃度がトレランスよりも小さい場合はステップS62で通常運転を行う。一方、ステップS60において、平均のNH3濃度がトレランス以上の場合は、ステップS64へ進み、平均NH3濃度によるゼロ点調整を実施する。
【0066】
以上のように、
図6及び
図7の処理によれば、内燃機関5の運転中に触媒温度が200℃を超えている場合に、還元剤噴射弁34からの噴射を停止又は減量し、推定NH3吸着量が診断用NH3吸着量よりも小さくなった場合は、還元触媒20のアンモニア吸着量が診断用NH3吸着量となるように還元剤の噴射を行う。ここで、診断用NH3吸着量を還元触媒20の目標のアンモニア吸着量として噴射を行うことで、還元触媒20に十分な量のアンモニアが吸着することがなく、還元触媒20の下流にアンモニアが流出することがない。従って、還元触媒20の下流にアンモニアが流出しない条件下で算出された平均のNH3濃度を0にリセットすることで、精度良くゼロ点リセットを行うことが可能となる。
【0067】
また、
図6及び
図7の処理は、温度変化が生じた場合であってもアンモニアが還元触媒20の下流に流れない温度範囲で実施することが望ましく、例えば触媒温度が200℃〜300℃程度の範囲で実施することが望ましい。これにより、触媒温度がより高温となった場合に、還元触媒20のアンモニア吸着量が低下してアンモニアが還元触媒20の下流に流れることを抑止できる。
【0068】
図8及び
図9は、第3の方法を示すフローチャートである。先ず、
図8のステップS70では、アンモニアセンサ14の値などの読み取りを行う。次のステップS72では、還元触媒20の触媒温度が400℃よりも高いか否かを判定し、触媒温度が400℃よりも高い場合はステップS74へ進む。一方、触媒温度が400℃以下の場合は、ステップS78へ進み、通常運転を行う。
【0069】
ステップS74では、アンモニアセンサ14のゼロ点オフセット診断の要否を判定し、ゼロ点オフセット診断を行う場合はステップS76へ進む。一方、ゼロ点オフセット診断を行わない場合はステップS78へ進み、通常運転を行う。なお、この判断は第2の方法と同様に行うことができる。
【0070】
ステップS76では、還元触媒20の温度が低下しているか否かを判定し、還元触媒20の温度が低下している場合はステップS78へ進む。一方、還元触媒20の温度が低下していない場合はステップS76で待機する。
【0071】
ステップS78では、還元剤噴射弁34からの噴射量の目標値を、通常の目標NH3吸着量から診断用NH3吸着量へ切り換えて噴射を行う。これにより、
図5に示すように、通常の目標NH3吸着量の場合は、触媒温度の低下に伴って噴射量を大きく増加させるが、目標値を診断用NH3吸着量に切り換えたことによって、触媒温度の低下に伴う噴射量の増加量が緩和される。従って、還元触媒20の下流にアンモニアが流出することを確実に抑止できる。
【0072】
ステップS78の後は
図9のステップS80へ進み、アンモニアセンサ14の出力値を積算する。次のステップS82では、規定時間が経過したか否かを判定し、規定時間が経過した場合は、ステップS84へ進み、アンモニアセンサ14の出力の積算値を規定時間で平均化して平均のNH3濃度を算出する。一方、規定時間が経過していない場合は、ステップS82で待機する。
【0073】
ステップS86では、平均のNH3濃度がトレランスよりも小さいか否かを判定し、平均のNH3濃度がトレランスよりも小さい場合はステップS88で通常運転を行う。一方、ステップS86において、平均のNH3濃度がトレランス以上の場合は、ステップS90へ進み、平均NH3濃度によるゼロ点調整を実施する。
【0074】
以上のように、
図8及び
図9の処理によれば、触媒温度が400℃を超えている場合において、還元触媒20の温度が低下している場合は、還元剤噴射弁34からの噴射量の目標値を、通常の目標NH3吸着量から診断用NH3吸着量へ切り換えて噴射を行う。これにより、温度の低下により還元触媒20のアンモニア吸着量が増加するため、還元触媒20の下流へアンモニアが流出することを抑止でき、更に、通常の目標NH3吸着量から診断用NH3吸着量へ切り換えて噴射を行うため、還元触媒20の下流へアンモニアが流出することを確実に抑止することができる。
【0075】
以上説明したように本実施形態によれば、還元触媒20の下流にアンモニアが流出しない条件下でアンモニアセンサ14のゼロ点診断を行うようにしたため、アンモニアセンサのゼロ点診断を精度良く行うことが可能となる。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。