【実施例】
【0023】
材料および方法
IL12p40の配列
IL12p40のタンパク質配列はNCBI受託番号:NM_008352(マウス)または1F42_A(ヒト)として示され、これらは米国国立生物工学情報センターのウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から入手可能である。
【0024】
細胞培養およびNSC単離
マウスNSCの単離および細胞培養は2つの従前の刊行物(Hsu Y.C.et al.,Developmental Dynamics 2009,238:302−314;Lee D.C.et al.,Molecular and Cellular Neurosciences 2009,41:348−363;これら2つの刊行物は参照によりその全内容が本明細書に援用される)に記載されている通りに行った。
【0025】
KT98/F1B−GFP細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、および500μg/ml G418(Merck、USA)を含有するダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)/F12(1:1)中で培養した。NSC単離については、GFP陽性KT98/F1B−GFP(KT98/F1B−GFP+)細胞を、FACSAriaセルソーター(BD Bioscience)を用いて選別し、ニューロスフェア形成培地(1×B27(Gibco)、20ng/ml EGF(PeproTech Inc.)、20ng/ml FGF2(PeproTech Inc.)、2μg/mlヘパリン(Sigma)、および500μg/ml G418を含有するDMEM/F12)で7日間培養し、これによりKT98/F1B−GFP+ニューロスフェア形成が誘導された。次に、KT98/F1B−GFP+ニューロスフェア由来単細胞を続いての動物試験および細胞分化アッセイに使用した。細胞は全て、37℃、5%CO
2で培養した。
【0026】
動物手術:坐骨神経損傷およびコンジット移植
本出願では、全ての動物試験手順は倫理指針に従い、所内動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)によって承認された(プロトコールNo.NHRI−IACUC−101067A)。FVBマウス(8〜10週齢)を動物試験に使用し、米国国立衛生研究所(National Health Research Institutes)(NHRI)動物センターで維持した。
術前に、マウスを5%イソフルラン(ハロ炭素)空気吸入により麻酔し、手術中、2%イソフルラン空気吸入により麻酔を維持した。坐骨神経損傷術では、3mmのマウス坐骨神経セグメントをマイクロシザーズで切り出した。神経コンジットの外科的移植では、従前に記載されているように(Hsu S.H. et al., Artif Organs 2009, 33:26−35;参照によりその全内容が本明細書に援用される)、ポリ(L−乳酸)(PLA)コンジットを使用した。
【0027】
NSCおよび/またはマウスIL12p80を含むまたは含まない5mmコンジットを坐骨神経損傷部位に移植した。坐骨神経損傷部位の近位端および遠位端の神経を、6−0ナイロン微小縫合糸を用い、残存神経1mmを用いてコンジットに係留した。坐骨神経損傷を受けなかったマウスを偽手術対照群(n=3)として定義した。
【0028】
外科的移植群は、コンジット単独群(n=8)、コンジット+NSC群(n=8)、およびコンジット+NSC+mIL12群(n=8)を含んだ。コンジット単独群では、コンジットに5μlマトリゲル(BD Bioscience)/リン酸緩衝生理食塩水(PBS)混合物(1:1)を充填した。コンジット+NSC群(n=8)では、コンジットに1×10
6 NSCを含む5μlマトリゲル/PBS混合物(1:1)を充填した。コンジット+NSC+mIL12群(n=8)では、コンジットに1×10
6 NSCおよび100ngマウスIL12p80(BioLegend)を含む5μlマトリゲル/PBS混合物(1:1)を充填した。
【0029】
機能評価:歩行軌跡分析およびロータロッドテスト
歩行軌跡分析は、術後毎週、Treadmill/TreadScanシステム(CleverSys)を用いて行い、坐骨神経機能指数(SFI)として表した。SFIの式は次の通りである。
【0030】
【数1】
【0031】
SFIの計算は、正常(N)および試験(E)足に従い、PLは足跡の長さ(最長の足指の先と踵の間の縦断距離)を示し、TSは足指総幅(第1趾と第5趾の間の横断距離)を示し、ITは足指中間幅(第2趾と第4趾の間の横方向の距離)を示した。正常歩行ビデオ(一マウスの全歩行期間内に合計1500フレームを収集した)を得るために成体FVBマウスを使用し、これらの画像データを用いてTreadScanソフトウエアを較正した(足の位置の特定のためにこのソフトウエアを訓練するためには各ステップで10〜12のアウトラインで十分であった)。較正後、十分に確立されたプログラムを用いて、坐骨神経損傷マウスの全歩行期間中に異常な歩行状態および不規則な足指幅を排除する。
【0032】
ロータロッドテストは、術後第4週と第8週にRTシリーズRotarod Treadmill(SINGA)によって実行した。対照群では、マウスは神経切断および筋肉損傷なしと定義された(第4週はn=8、第8週はn=8)。正式なデータ収集の前に、前試験過程として各マウスに各10rpm、12rpm、および15rpmの3回、回転ロッド上を走らせた。データ収集では、マウスに20rpmで6回、回転ロッド上を走らせた。最長記録時間は120秒だった。
【0033】
タンパク質アレイ
タンパク質サンプルを移植されたコンジットから、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を含有する1×RIPAバッファー[50mM HEPES、pH7.3、150mM NaCl、2mM EDTA、20mM β−グリセロホスフェート、0.1mM Na
3VO
4、1mM NaF、0.5mM DTT、および0.5%NP−40]を用いて抽出した。100μgのタンパク質サンプルを、製造者のプロトコールに従ったマウス血管新生タンパク質抗体アレイ(RayBiotech)分析で使用した。タンパク質レベルは化学発光法を用いて検出した。
【0034】
神経分化アッセイ
1×HyQTase(Hyclone)を用い、ニューロスフェアから単細胞を解離させた。2×10
3細胞を、誘導因子を添加したまたは添加しない神経分化培地(2%FBSを含有するDMEM/F12)とともにポリ−D−リシン(BD Bioscience)コーティングチャンバースライドに播種した。CNTF+T3群では、神経分化培地に50ng/ml CNTFおよび10ng/ml T3を添加した。hIL12およびmIL12群では、神経分化培地にそれぞれ100ng/mlヒトIL12p80およびマウスIL12p80を添加した。
CNTF+T3+hIL12群では、神経分化培地に50ng/ml CNTF、10ng/ml T3および100ng/mlヒトIL12p80を添加した。CNTF+T3+mIL12群では、神経分化培地に50ng/ml CNTF、10ng/ml T3および100ng/mlマウスIL12p80を添加した。CNTF、T3、およびヒトIL12p80はPeproTechから購入した。培養培地を3日毎に交換した。
【0035】
免疫蛍光染色
細胞をチャンバースライド(Nunc、ネーパーヴィル、IL、USA)上、37℃、5%CO
2で増殖させた。免疫蛍光染色では、細胞をPBSで洗浄し、PBS中、4%(v/v)パラホルムアルデヒド(PFA;Electron Microscopy Sciences)で室温にて15分間固定した。次に、細胞をPBS中0.1%(v/v)トリトンX−100で室温にて15分間、透過処理を行った。次いで、細胞をブロッキング溶液(1×PBS中1%BSA)で室温にて1時間ブロッキングした後、特異的一次抗体で室温にて1時間インキュベーションを行った。
本出願では、分化能は、ガラクトセレブロシドに対するマウスモノクローナル抗体(Galc、1:1000、Millipore)、乏突起グリア細胞特異的タンパク質に対するウサギポリクローナル抗体(OSP、1:1000、Abcam)、およびミエリンタンパク質ゼロに対するニワトリポリクローナル抗体(PZO、1:1000、GeneTex)による免疫蛍光染色を使用することによって確認した。次に、これらの細胞をローダミン結合二次抗体(Millipore、ビルリカ、MA、USA)とともに室温で1時間インキュベートした。全ての切片を、2−(4−アミジノフェニル)−6−インドールカルバミジン二塩酸塩(DAPI)(Molecular Probes)で核染色し、蛍光顕微鏡(Olympus、東京、日本)下で観察した。Galc/DAPI、OSP/DAPIおよびPZO/DAPI二重陽性細胞を計数し、対照群に対して正規化した。
【0036】
ウエスタンブロット法
ニューロスフェアから単離し誘導因子を含むまたは含まない神経分化培地(表1)で7日間培養した分化細胞において、免疫ブロット法により対応するタンパク質レベルを検出するために、グリア線維性酸性タンパク質に対するウサギポリクローナル抗体(GFAP、1:1000;Abcam)、乏突起グリア細胞特異的タンパク質に対するウサギポリクローナル抗体(OSP、1:4000;Abcam)、ミエリンタンパク質ゼロに対するニワトリポリクローナル抗体(PZO、1:4000;GeneTex)、およびα−チューブリンに対するウサギポリクローナル抗体(α−チューブリン、1:8000希釈;GeneTex)を使用した。分化細胞からのタンパク質サンプルは、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を添加した1×RIPA溶解バッファー(Millipore、ビルリカ、MA、USA)により採取した。
【0037】
IL12p80処理後のマウスNSCにおけるStat3のリン酸化状態を分析するために、Stat3に対するマウスモノクローナル抗体(1:1000;Cell Signaling)、pStat3−Y705部位に対するウサギポリクローナル抗体(1:1000;Cell Signaling)、pStat3−S727部位に対するウサギポリクローナル抗体(1:1000;Cell Signaling)、およびα−チューブリンに対するウサギポリクローナル抗体(α−チューブリン、1:8000希釈;GeneTex)を使用した。単細胞をニューロスフェアから単離し、3分間の遠心分離により試験シグナル細胞を採取し、種々の時点(スフェア、0分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、および8時間)で細胞溶解液を抽出した。従って、「0分」の時点では、遠心分離期間中の3分間、細胞はIL12p80の存在下にあった。細胞溶解液はウエスタンブロット法を用いて分析した。
【0038】
各サンプルのタンパク質濃度は、タンパク質アッセイ染色試薬(Bio−Rad Laboratories)により決定した。等量のタンパク質サンプルをドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)によりサイズ分画した後、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(Amersham)に転写した。その後、膜を5%ウシ血清アルブミン(Bio Basic、マーカム、オンタリオ州、カナダ)ブロッキングバッファー中、室温で1時間ブロッキングした。次に、これらの膜を5%ウシ血清アルブミンブロッキングバッファー中で特異的一次抗体とともにインキュベートし、その後、対応するHRP結合二次抗体(1:10000)(Millipore)とともにインキュベートした。タンパク質レベルは、α−チューブリンを内部対照とし、ECL試薬(Millipore)およびX線フィルムを用いて明らかにした。3回の個々の試験の免疫反応性バンドをImageJソフトウエアにより定量化し、対照群に対して正規化した。
【0039】
複合筋活動電位の測定
複合筋活動電位は、BIOPAC MP36およびBIOPAC BSL 4.0ソフトウエア(BIOPAC system Inc.)で記録および分析した。ステンレス鋼電極は直径0.22mmであった。刺激電極は坐骨切痕に配置し、記録電極は脾腹筋(坐骨切痕からおよそ2cm)に配置した。刺激電圧は6ボルトであり、刺激期間は0.1ミリ秒であり、取得長は200ミリ秒であった。距離はノギスで測定し、皮膚温度は25℃の一定温度に維持した室内で36℃に維持した。
【0040】
ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色および免疫組織化学染色
移植したコンジットを術後第8週に回収した。簡単に述べれば、移植したコンジットを4℃にて一晩、4%PFAで固定した。固定したサンプルを1×PBS中30%スクロースを用い、4℃で一晩脱水した。サンプルをTissue−Tek O.C.T.(Sakura、オランダ)中に包埋した後、液体窒素中で凍結させ、−80℃で保存した。
【0041】
ヘマトキシリン・エオジン(H&E)および免疫組織化学染色では、低温包埋した神経コンジットを、クリオスタットミクロトーム(MICROM HM550)を用いて、スライド上、10μmの切片とした。免疫組織化学染色は特異的抗体:神経フィラメント200に対するウサギポリクローナル抗体(NF−200、1:500、神経線維のマーカー)およびミエリンタンパク質ゼロに対するニワトリポリクローナル抗体(PZO、1:500、有髄シュワン細胞のマーカー)によって行った。
PBS洗浄の後、サンプルを各二次抗体とともに室温で1時間インキュベートした。全てのサンプルをDAPI(1:5000)で室温にて3分間核染色し、FluorSave試薬(Merck)を用いてマウントした。蛍光顕微鏡(Olympus)および共焦点顕微鏡(Leica)を用いて再生した組織の全画像データを観察および収集した。
【0042】
統計学
データは平均±平均の標準誤差(SEM)として表した。2群を比較するためにスチューデントのt検定を用い、複数の群を比較するためには一元配置ANOVAを用いた。p<0.05の場合に統計的有意と見なした。
【0043】
【表1】
【0044】
結果
NSCと神経コンジットを移植すると、マウスにおける坐骨神経損傷の機能回復がコンジット単独の場合よりも改善する。
左坐骨神経(3mm)の切断後、全てのマウスが左後肢の運動機能を失い、足先が萎縮した引きずり歩行の表現型を示した。この試験で、本発明者らは、損傷を受けた坐骨神経を修復するためにNSCとコンジットを移植した。機能回復は、再生期間中、非侵襲的方法である歩行軌跡分析およびロータロッドテストを用いて評価した。坐骨神経機能指数(SFI)は、足取り分析と歩行中のある足跡と別の足跡の時間的および空間的関係とを組み合わせた歩行軌跡分析からのデータのスコアを計算したものである。SFIは0〜−100の尺度で、0は正常な歩行機能に相当し、−100は完全な機能喪失を意味する。
軌跡分析では、偽手術対照マウスは、坐骨神経の実際の損傷が無いこと以外は同じ手術手順を受けたマウスとして定義した。これらのマウスは、術前のSFIスコアと比べて、術後第1週から第8週までSFIスコアに明らかな差を示さなかった(
図1A、偽手術対照)。NSCとコンジット(
図1A、コンジット+NSC群)またはコンジット単独(
図1A、コンジット単独群)の移植では、SFIスコアは、術後第1週に、これらの2群間に有意差はないことを示した(−73.2±2.5と−77.0±3.9)。術後第2週から始まり、コンジット+NSC群は、コンジット単独群よりも高いSFIスコアを示した(p<0.01)。コンジット単独群よりもコンジット+NSC群におけるこの機能的向上は第8週まで続いた(
図1A)。
【0045】
ロータロッドテストもまた、損傷坐骨神経マウスの運動機能およびバランス能の回復を評価するために使用される。ロータロッドテストでは、対照群マウスを神経切断および筋肉損傷の無いものとして定義した。ロータロッドテストにおける対照群、コンジット+NSC群およびコンジット単独群の結果はそれぞれ、第4週で55±8、40±7、および16±1秒であり、第8週で62±14、53±9、および25±4秒であった(
図1B)。コンジット単独群は、術後第4週および第8週において、対照群およびコンジット+NSC群よりも、ロータロッド上でのバランスおよび歩行の能力に有意な低下を示した。興味深いことに、ロータロッドテストで術後第4週および第8週において対照群とコンジット+NSC群の間に差は見られない。これらの結果は、NSCとコンジットの移植が坐骨神経損傷マウスにおいて機能回復を促進したことを示した。
【0046】
IL12p80はNSCを介した坐骨神経修復に関与する。
NSCは、シュワン細胞を含む3種類の神経外胚葉系譜の全てに分化する能力を保持し、また、神経再生のための栄養因子も分泌または動員し得る(Ren Z.et al.,Reviews in the Neurosciences 2012,23:135−143)。従って、NSCを介した神経再生に関与した因子を特定するために、マウス抗体アレイを用いて、コンジット単独群とコンジット+NSC群の間のタンパク質発現レベルを検討した。NSCとともにまたは伴わずに移植した神経コンジットから抽出したタンパク質溶解液を術後第4週にタンパク質抗体アレイ向けに採取した。抗体アレイの定量データによると、コンジット+NSC群から採取した細胞抽出液中のIL12p40の発現はコンジット単独群の1.89倍であり、さらに、コンジット+NSC群のIL12p35発現はコンジット単独群と同等(1.04倍)であった(
図2、IL12p40およびIL12p35)。IL12p40はIL12p70のサブユニットの1つであり、全IL12p40サブユニットの20%〜40%がホモ二量体型(IL12p80)として分泌される可能性があり、このホモ二量体型は生物学的機能の誘導においてIL12p40単量体の25〜50倍の活性であった(Heinzel F.P.et al.,Journal of Immunology 1997,158:4381−4388;Gillessen S.et al.,European Journal of Immunology 1995,25:200−206;Jacobson N.G.et al.,Journal of Experimental Medicine 1995,181:1755−1762)。これらの抗体アレイデータでは、コンジット+NSC群はIL12p40の発現レベルを増大させたがIL12p35はそうではなく、このことは、IL12p40の生理活性型であるIL12p80は神経再生に関与する因子であり得ることを示した。
IL12p40はIL12受容体β1と結合し、Stat3のリン酸化とStat3下流シグナル伝達の活性化をもたらす(Heinzel F.P.et al.,Journal of Immunology 1997,158:4381−4388;Gillessen S.et al.,European Journal of Immunology 1995,25:200−206;Jacobson N.G.et al.,Journal of Experimental Medicine 1995,181:1755−1762)。従前の研究は、Stat3の活性化は神経前駆細胞の星状グリア細胞系譜への分化を誘導することを示している(Wang B.et al.,PLoS One 2008,3:e1856)。これらの結果は、Stat3下流シグナル伝達の活性化および神経再生への関与におけるIL12p80の役割を暗示している。
【0047】
NSCとコンジットおよびIL12p80の移植は機能回復および神経再生を促進する。
神経再生におけるIL12p80の機能を調べるために、以下の条件で処置した坐骨神経損傷マウスを比較した:コンジット単独群、コンジットとNSC(コンジット+NSC群)、およびコンジットとNSCとマウスIL12p80(コンジット+NSC+mIL12群)。移植後第8週に、歩行軌跡分析およびロータロッドテストにより機能評価を行った。コンジット+NSC群およびコンジット+NSC+mIL12群のマウスは、コンジット単独群よりも有意に高いSFIスコアを示した(
図3A)。ロータロッドテストでは、コンジット+NSC群およびコンジット+NSC+mIL12群のマウスは、コンジット単独群よりも良好な歩行およびバランス能を示した(
図3B)。
さらに、これらのデータは、歩行軌跡およびロータロッドの両分析の機能評価において、コンジット+NSC+mIL12群がIL12p80無しの群(p<0.05)よりも有意な結果(p<0.01)を示したことを実証した(
図3Aおよび3B)。しかしながら、このIL12p80の付加的投与の効果(コンジット+NSC+mIL12群)はわずかなものであったので、IL12p80無しの場合(コンジット+NSC群)から神経修復能の補助を識別することはできなかった。従って、神経修復におけるIL12p80の効果を、組織学的切片評価(
図4)および神経伝導試験(
図5)によって実証する。
【0048】
神経再生試験では、5mm神経コンジットを3mmの坐骨神経損傷ギャップを接続するように移植する。コンジットを、損傷を受けた坐骨神経の近位端および遠位端に、各末端で残存神経1mmを用いて縫合した。従って、コンジットの中央領域に存在した軸策は、新たに再生した神経と見なされた。軸策再生はヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色および特定の神経細胞特異的マーカーを認識する抗体を用いた免疫組織化学により観察した。
図4A、4Bおよび4Cでは、「P」および「D」は残存神経の断端を示す(「P」は移植したコンジットの近位端から1.0mmであり、「D」は「P」から3.0mm遠位である)。H&E染色では、コンジット+NSC群(
図4B)およびコンジット+NSC+mIL12群(
図4C)は、コンジット単独群(
図4A)に比べて、再生した軸策の完成度に有意な促進を示した。神経再生の状態を、抗神経フィラメント200抗体(神経線維のマーカーであるNF200)および抗タンパク質ゼロ抗体(有髄シュワン細胞のマーカーであるPZO)を用いた免疫組織化学染色を使用することによってさらに確認する。免疫組織化学染色結果は、コンジット内での有髄シュワン細胞(PZO陽性細胞)と再生した神経の神経線維(NF200陽性細胞)の連関(それぞれ
図4A、4B、および4Cの点線領域)がコンジット+NSC群(
図4E)およびコンジット+NSC+mIL12群(
図4F)では見られたが、コンジット単独群(
図4D)では見られなかったことを示した。さらに、再生神経の直径を、移植した神経コンジットの近位部位、中央部位、および遠位部位においてH&Eにより染色された一連のサンプル切片を再構成することにより測定する:近位部位(コンジットの近位端から1.0mm)、遠位部位(近位部位から3.0mm)、および中央部位(近位部位と遠位部位の間の中央)。近位部位と遠位部位において、再生神経の直径は、3群の間で有意差が無いことを示した(それぞれ、近位部位では262±44μm、284±42μm、および302±97μm、遠位部位では279±56μm、298±75μm、および322±123μm)。これに対して、コンジット+NSC群(189±18μm)およびコンジット+NSC+mIL12群(295±47μm)の中央部位の直径は、コンジット単独群(65±21μm)のそれぞれ2.9倍および4.5倍の厚さであった。注目すべきは、再生坐骨神経の中央部位では、IL12p80の添加がIL12p80を含まない群の1.6倍神経直径を増大させたことである(
図4G)。
3群の再生の概略図を
図4Hに示す。神経伝導は、坐骨神経を電気的に刺激し、個々の筋肉線維の活動電位からの電圧応答の総和である複合筋活動電位(CMAP)を記録することにより測定される(Mallik A.et al.,J Neurol Neurosurg Psychiatry 2005,76 Suppl 2:ii23−31)。本出願では、損傷肢および反対側の正常肢のCMAPを測定した。回復パーセンテージは、損傷肢のCMAPを反対側の正常肢のCMAPで正規化したものとして計算した(
図5)。コンジット+NSC+mIL12群は、コンジット+NSCまたはコンジット単独のいずれよりも良好な回復状態を示した(それぞれ17.7±4.3%、8.5±2.1%、および6.6±0.2%)。さらに、コンジット+NSC+mIL12群は、コンジット単独群よりも低い脾腹筋萎縮を示した(損傷肢/正常肢はそれぞれ0.39±0.02および0.26±0.07であった、p<0.01)。これらのデータは、NSCとコンジットの移植が機能回復および神経再生を促進したことを実証した。重要なこととして、IL12p80の付加的投与は、SFIおよびロータロッドの両分析の機能評価、神経伝導の改善、ならびに新たに再生した神経の直径の増大に統計的に有意な結果を示した。
【0049】
IL12p80はマウスNSCの乏突起グリア細胞およびシュワン細胞系譜への分化を刺激する。
次に、本出願は、マウスNSCにおいて乏突起グリア細胞およびシュワン細胞分化の誘導におけるIL12p80の能力を検討した。ニューロスフェアから解離させた細胞を、分化対照培地としての2%FBSを添加したDMEM/F12(対照群)、および乏突起グリア細胞分化培地(CNTF+T3群)でそれぞれ培養した(Hsu Y.C.et al.,Developmental Dynamics 2009,238:302−314;Lee D.C.et al,Molecular and Cellular Neurosciences 2009,41:348−363)。
乏突起グリア細胞およびシュワン細胞分化の誘発におけるIL12p80の能力を調べるために、100ng/mlヒトIL12p80(hIL12p80)またはマウスIL12p80(mIL12p80)を対照群またはCNTF+T3群に添加し、hIL12群、mIL12群、CNTF+T3+hIL12群、およびCNTF+T3+mIL12群と呼称した。分化細胞は、特異的細胞マーカー:ガラクトセレブロシド(Galc;乏突起グリア細胞)、乏突起グリア細胞特異的タンパク質(OSP;乏突起グリア細胞)、およびミエリンタンパク質ゼロ(PZO;有髄シュワン細胞)を認識する一次抗体ならびに蛍光色素結合二次抗体による免疫蛍光染色を用いて確認した(
図6A)。マーカー陽性細胞のパーセンテージを定量化し、
図6Bにまとめる。
細胞形態および免疫蛍光染色の結果は、IL12p80がマウスNSCにおいて乏突起グリア細胞または有髄シュワン細胞分化を誘導するためにCNTF+T3に取って代わり得ることを示した。細胞分化および成熟状態は、それぞれグリア線維性酸性タンパク質(GFAP、星状グリアマーカー)、OSP、およびPZOに対する系譜特異的抗体を用いたウエスタンブロット法により確認される(
図7A)。定量化結果は、GFAP、OSPおよびPZOのタンパク質レベルが、IL12p80を含有する分化条件でアップレギュレートされていたことを示した(
図7B)。これらの結果は、NSCを乏突起グリア細胞および有髄シュワン細胞へ分化誘導可能であることを実証した。
【0050】
IL12p80はNSCにおいてStat3のリン酸化を誘導する。
NSCにおいて、Stat3のリン酸化は、乏突起グリア細胞分化過程に関与することが示されている(Wang B.et al.,PLoS One 2008,3:e1856)。T細胞では、IL12p40サブユニットはIL12受容体β1に結合し、その後、Stat3のリン酸化および下流シグナル伝達経路を誘導することができる(Jacobson N.G.et al.,Journal of Experimental Medicine 1995,181:1755−1762)。従って、IL12p80は、NSCにおいて、Stat3活性化を介して乏突起グリア細胞の分化を誘発することができる。
hIL12p80またはmIL12p80処理NSCにおけるStat3のリン酸化状態は、ウエスタンブロット法により分析される。この研究では、Y705とS727(Stat3リン酸化部位)の両方のリン酸化状態がニューロスフェアにおいてわずかに発現された(
図8、スフェアのレーン)。ヒトおよびマウスIL12p80は両方ともY705におけるStat3のリン酸化を誘導し、その強度は15分でピークに達し、30分で低下し始めた。同様に、S727におけるStat3のリン酸化もIL12p80によって増大し、8時間持続した(
図8、hIL12群およびmIL12群)。これらの結果から、Stat3のリン酸化はNSCにおけるIL12p80により誘導される乏突起グリア細胞分化に重要であったことが明らかとなった。
【0051】
結論
本研究では、神経コンジットにてNSCとともにIL12p80を移植すると、運動機能の回復が改善され、神経再生が促進され、神経伝導が改善され、新たに再生した神経の直径が増大することが実証される。コンジット+NSC+IL12からの再生神経は、損傷を受けた神経の中央部においてコンジット単独群の最大4.5倍厚い。IL12p80はin vitroでNSCを乏突起グリア細胞または有髄シュワン細胞へと分化誘導し得る。さらに、この分化誘導はStat3のリン酸化を介するものであり得ることも示される。IL12p80単独の投与でも、ある程度の神経修復を達成することができた。
【0052】
考察
IL12p80はIL12p40のホモ二量体であり、IL12p70はIL12p40とIL12p35のヘテロ二量体である。IL12p40はIL12受容体β1に結合し、IL12p35はIL12受容体β2に結合する。また、IL23はIL12p40とIL23p19のヘテロ二量体であり、IL23p19はIL23受容体に結合することも報告されている。神経コンジット内のIL12p80とNSCは神経損傷修復を改善することが示された。IL12p80単独の投与でも、ある程度の神経修復を達成することができた。
【0053】
IL12p70は、in vitroにおいてマウス交感神経上頚神経節ニューロン神経突起伸長を促進できることが示されている(Lin H.et al.,Neurosci.Lett.2000,278:129−132)。従って、IL12p80、IL12p70、およびIL23をはじめとするIL12p40サブユニットを含有するタンパク質は全て神経修復に寄与することができた。神経修復の範囲は末梢神経損傷、脊髄損傷および脳卒中などの神経損傷の神経発生だけでなく、アルツハイマー病、パーキンソン病および多発性硬化症などの神経変性疾患も含み得る(Beckervordersandforth R.et al.,Stem Cell Reports 2014,2:153−162)。
【0054】
神経幹細胞およびIL12p40を用いて神経再生を促進するための組成物および方法の具現化を特定の実施形態に関して記載した。これらの実施形態は例示であって限定されないものとする。多くの変形、修飾、付加、および改良が可能である。これらのおよびその他の変形、修飾、付加、および改良は、以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であり得る。