(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周方向に耳部が形成されているエキスパンダ・スペーサと、前記耳部によって内周面が押圧されると共に外周側がシリンダの内壁に押圧された状態で該シリンダの軸方向に摺動可能であり、金属を材質とする少なくとも1つのセグメントと、を備える組合せオイルリングであって、
前記セグメントの内周面には、凹溝に沿って、その両側に連続した土手状のドロス状突出部がそれぞれ設けられていて、それら両側に存在する前記ドロス状突出部から構成される一対のドロス状突出部は複数設けられていて、
前記一対のドロス状突出部は前記凹溝の金属が両側に溶融した後に冷えて固まったものであり、
前記一対のドロス状突出部は、少なくとも1つの位置において前記ドロス状突出部の付け根の前記セグメントの前記内周面から4μm〜25μmの突出高さであり、
前記一対のドロス状突出部は、前記セグメントの周方向に直交する中心軸方向に対して、第1傾斜方向に傾斜するように設けられている、
ことを特徴とする組合せオイルリング。
エキスパンダ・スペーサの周方向に形成されている耳部によって内周面が押圧されると共に外周側がシリンダの内壁に押圧された状態で該シリンダの軸方向に摺動可能であり、金属を材質とするセグメントの製造方法であって、
セグメントの材料となる線材を巻回しているコイルマスタから前記線材を引き出して下流側に送る線材送り工程と、
前記コイルマスタよりも線材の送り方向の下流側において、前記線材に対してレーザ光を照射して、少なくとも1つの位置において、ドロス状突出部の付け根の前記内周面となる面から4μm〜25μmの突出高さであって、1つの前記セグメントの周長に、下流側において前記セグメントの合口を形成する際の切断加工幅を周方向の長さとして加えた長さ当たりに前記線材の送り速度に同期して等間隔に3か所以上の一対のドロス状突出部を形成するレーザ光照射工程と、
前記レーザ光照射工程よりも下流側で、前記線材を環状に塑性加工するコイリング工程と、
前記環状に塑性加工され、螺旋状に巻回された前記線材を、その巻回された巻回体の軸方向に沿うように切断し、前記セグメントの合口を形成する切断工程と、
を備え、
前記レーザ光照射工程によって前記内周面には、凹状の凹溝が形成されると共に、その凹溝の両側には、連続した土手状の前記ドロス状突出部が該凹溝に沿うようにそれぞれ設けられていて、それら両側に存在する前記ドロス状突出部から前記一対のドロス状突出部が構成されると共に、
前記レーザ光照射工程で形成された前記一対のドロス状突出部は前記凹溝の金属が両側に溶融した後に冷えて固まったものであり、
前記レーザ光照射工程で形成された前記一対のドロス状突出部は、前記セグメントの周方向に直交する中心軸方向に対して、第1傾斜方向に傾斜するように設けられている、
ことを特徴とするセグメントの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、組合せオイルリングの低張力化を実現するためには、セグメントの真円度の精度向上を図る必要がある。しかしながら、セグメントの真円度の精度を向上させるためには、セグメントの内周に機械加工を加えることによる加工応力の影響を無視することはできない。また、組合せオイルリングの低張力化に加えて、組合せオイルリングの薄幅化(幅寸法を小さくすること)も進められている。薄幅化されたセグメントにおいては、セグメントの内周における機械加工を起因とする折損にも注意する必要がある。また、セグメントの表面に表面処理を行うことも一案ではある。しかしながら、表面処理は製造コスト面で不利であり、近年の製造コストダウンの要求に鑑みると、より安価で要求品質を満たすことが可能なセグメントの単独回転の防止対策が望まれている。
【0007】
これらの問題に鑑みると、特許文献1、2に開示の構成では、エキスパンダ・スペーサの耳部の長さが細かな凹凸のピッチよりも短い場合、細かな凹凸のうちの凸部が耳部に乗り上げることで、耳部の回転を止めるのが十分と言えない状態となっている。また、特許文献1、2に開示の構成では、セグメントの内周に機械加工によって細かな凹凸を形成する際に、上述した加工応力の影響が生じ、それによりセグメントの真円度に影響を与えてしまう。
【0008】
また、特許文献3に開示の構成では、耳部の接線に沿った傾斜角となるような細かな凹凸を形成しているが、耳部とセグメントの内周との間の接触は点接触であり、また凹凸の凸部が耳部に乗り上げることで、耳部の回転を止めるのが十分と言えない状態となっている。また、特許文献4には、レーザ光によりセグメントの内周面に溝加工を施すと共に、その深さや溝の間隔に関して記載されている。しかしながら、溝はセグメントの摺動方向に沿うように延伸しているが、このような溝のみでは、セグメントの単独回転を防止するのは不十分である。また、特許文献5に開示の構成は、表面処理によって単独回転を防ごうとするものであるが、上述のように製造コスト面で不利である。また、組合せオイルリングの低張力化が図られている状況では、特許文献5に開示のような表面処理では、セグメントの単独回転の防止には不十分である。
【0009】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的は、組合せオイルリングの低張力化に対応させつつも、セグメントの単独回転を防止することが可能なセグメント、組合せオイルリングおよび工程を増やすことなくインライン加工が可能なセグメントの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、内燃機関の組合せオイルリング
が備えるエキスパンダ・スペーサの周方向に形成されている耳部によって内周面が押圧されると共に外周側がシリンダの内壁に押圧された状態で該シリンダの軸方向に摺動可能
であり、金属を材質とするセグメントであって、少なくとも1つのセグメントの内周面には
凹状の凹溝が設けられると共に、凹溝の両側には、連続した土手状のドロス状突出部が該凹溝に沿うようにそれぞれ設けられていて、それら両側に存在するドロス状突出部から構成される一対のドロス状突出部は複数設けられていて、一対のドロス状突出部は凹溝の金属が両側に溶融した後に冷えて固まったものであり、一対のドロス状突出部は、少なくとも1つの位置においてドロス状突出部の付け根の
セグメントの内周面から4μm〜25μmの突出高さであ
り、一対のドロス状突出部は、セグメントの周方向に直交する中心軸方向に対して、第1傾斜方向に傾斜するように設けられている、ことを特徴とするセグメントが提供される。
【0011】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、
環状のセグメントを、セグメントの幅の中心軸が鉛直方向に対して10度から30度の範囲内の少なくとも1つの位置を選択して傾斜するように水平面上に設置した際に、セグメントの周方向に直交する断面であり、かつ、水平面に接地し垂直な断面における内周面において、鉛直方向に最も高い位置におけるドロス状突出部の突出高さは、該ドロス状突出部の付け根のセグメントの内周面から4μm〜25μmとなるように設けられている、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、
一対のドロス状突出部には、セグメントの周方向に直交する中心軸方向に対して、第1傾斜方向とは異なる第2傾斜方向に傾斜するものが存在し、第1傾斜方向に傾斜する
一対のドロス状突出部と、第2傾斜方向に傾斜する
一対のドロス状突出部とはセグメントの合口以外の部分で隣り合っていて、隣り合う
一対のドロス状突出部は、少なくとも2箇所に設けられている、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、一対のドロス状突出部
のそれぞれが土手状に連続する方向は、中心軸方向に対して45度以下の傾斜角度をなしている、ことが好ましい。
【0016】
また、本発明の他の側面は、上述の発明におけるセグメントは、炭素鋼またはステンレス鋼を材質としている、ことが好ましい。
【0017】
また、本発明の第2の観点によると、周方向に耳部が形成されているエキスパンダ・スペーサと、耳部によって内周面が押圧されると共に外周側がシリンダの内壁に押圧された状態で該シリンダの軸方向に摺動可能
であり、金属を材質とする少なくとも1つのセグメントと、を備える組合せオイルリングであって、セグメントの内周面には、
凹溝に沿って、その両側に連続した土手状のドロス状突出部がそれぞれ設けられていて、それら両側に存在するドロス状突出部から構成される一対のドロス状突出部は複数設けられていて、一対のドロス状突出部は凹溝の金属が両側に溶融した後に冷えて固まったものであり、一対のドロス状突出部は、少なくとも1つの位置においてドロス状突出部の付け根の
セグメントの内周面から4μm〜25μmの突出高さであ
り、一対のドロス状突出部は、セグメントの周方向に直交する中心軸方向に対して、第1傾斜方向に傾斜するように設けられている、ことを特徴とする組合せオイルリングが提供される。
【0018】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、
環状のセグメントを、セグメントの幅の中心軸が鉛直方向に対して10度から30度の範囲内の少なくとも1つの位置を選択してセグメントが傾斜するように水平面上に保持した際に、セグメントの周方向に直交する断面であり、かつ、水平面に接地し垂直な断面である内周面において、水平面から最も高い内周面の位置におけるドロス状突出部の突出高さは、該ドロス状突出部の付け根のセグメントの内周面から4μm〜25μmとなるように設けられている、ことが好ましい。
【0020】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、
一対のドロス状突出部には、セグメントの周方向に直交する中心軸方向に対して、第1傾斜方向とは異なる第2傾斜方向に傾斜するものが存在し、第1傾斜方向に傾斜する
一対のドロス状突出部と、第2傾斜方向に傾斜する
一対のドロス状突出部とはセグメントの合口以外の部分で隣り合っていて、隣り合う
一対のドロス状突出部は、少なくとも2箇所に設けられている、ことが好ましい。
【0021】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、一対のドロス状突出部
のそれぞれが土手状に連続する方向は、中心軸方向に対して45度以下の傾斜角度をなしている、ことが好ましい。
【0023】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、一対のドロス状突出部が形成可能な位置間のピッチをピッチP2とし、エキスパンダ・スペーサの耳部間のピッチをピッチP1とすると、nを正の整数とし、P2=n×P1を満たすと共に、ピッチP2で決定される位置のうち少なくとも2箇所には一対のドロス状突出部が形成される、ことが好ましい。
【0024】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、一対のドロス状突出部が形成可能な位置間のセグメントの幅中心におけるピッチをピッチP2とし、エキスパンダ・スペーサの耳部間のピッチをピッチP1とすると、nを0以上の整数とし、P2=n×P1+P1/2を満たすと共に、ピッチP2で決定される位置のうち少なくとも2箇所には一対のドロス状突出部が形成される、ことが好ましい。
【0025】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、セグメントは、炭素鋼またはステンレス鋼を材質としている、ことが好ましい。
【0026】
また、本発明の第3の観点によると、エキスパンダ・スペーサの周方向に形成されている耳部によって内周面が押圧されると共に外周側がシリンダの内壁に押圧された状態で該シリンダの軸方向に摺動可能であり、金属を材質とするセグメントの製造方法であって、
セグメントの材料となる線材を巻回しているコイルマスタから線材を引き出して下流側に送る線材送り工程と、コイルマスタよりも線材の送り方向の下流側において、線材に対してレーザ光を照射して、少なくとも1つの位置において、ドロス状突出部の付け根の内周面となる面から4μm〜25μmの突出高さであって、1つのセグメントの周長に、下流側においてセグメントの合口を形成する際の切断加工幅を周方向の長さとして加えた長さ当たりに線材の送り速度に同期して等間隔に3か所以上の一対のドロス状突出部を形成するレーザ光照射工程と、レーザ光照射工程よりも下流側で、線材を環状に塑性加工するコイリング工程と、環状に塑性加工され、螺旋状に巻回された線材を、その巻回された巻回体の軸方向に沿うように切断し、セグメントの合口を形成する切断工程と、を備え
、レーザ光照射工程によって内周面には、凹状の凹溝が形成されると共に、その凹溝の両側には、連続した土手状のドロス状突出部が該凹溝に沿うようにそれぞれ設けられていて、それら両側に存在するドロス状突出部から一対のドロス状突出部が構成されると共に、レーザ光照射工程で形成された一対のドロス状突出部は凹溝の金属が両側に溶融した後に冷えて固まったものであり、レーザ光照射工程で形成された一対のドロス状突出部は、セグメントの周方向に直交する中心軸方向に対して、第1傾斜方向に傾斜するように設けられている、ことを特徴とするセグメントの製造方法が提供される。
【0027】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、レーザ光照射工程では、線材送り工程での線材送り方向と交差する交差方向に沿ってレーザ光の照射を行うと共に、交差方向の一方から他方に向かう一方向のみにレーザ光の照射を行う、ことが好ましい。
【0028】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、レーザ光照射工程では、線材送り工程での線材送り方向と交差する交差方向に沿ってレーザ光の照射を行うと共に、交差方向の往復における二方向にレーザ光の照射を行う、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、組合せオイルリングの低張力化に対応させつつも、セグメントの単独回転を防止することが可能なセグメント、組合せオイルリングおよび工程を増やすことなくインライン加工が可能なセグメントの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施の形態に係る組合せオイルリング10について、図面に基づいて説明する。
【0032】
<組合せオイルリング10の構成について>
図1は、組合せオイルリング10の構成を示すと共に、組合せオイルリング10を装着したピストン2がシリンダ1に挿入された状態を示す縦断面図である。
【0033】
図1において、自動車等のエンジンのシリンダ1の内部には、往復動可能なピストン2が配置されている。このピストン2のピストン外周面3には、2つまたは3つのいずれかの環状の溝が設けられている(上方の1つまたは2つの溝は図示を省略)。そのうち、エンジン燃焼室から最も離れたクランクシャフト側(図示省略)には、オイルリング溝4が設けられている。オイルリング溝4には、組合せオイルリング10が装着されている。この組合せオイルリング10は、セグメントの外周面がシリンダ1の内壁を摺動することで、オイルコントロール機能を発揮する。
【0034】
図1に示すように、組合せオイルリング10は、3ピース形の組合せオイルリングであり、鋼を主成分として形成されている。なお、鋼としては、ステンレス鋼、炭素鋼が代表例として挙げられるが、これら以外の鋼を用いても良い。
図1に示すように、組合せオイルリング10は、一対のセグメント20,30と、それらの間に配置しているエキスパンダ・スペーサ40とを有している。
【0035】
なお、以後の説明では、シリンダ1の軸方向(Y方向)において、エンジン燃焼室側を上側、それとは逆にエンジン燃焼室から離れる側を下側と称呼する場合がある。
【0036】
図2は、セグメント20,30の外観を示す平面図である。
図3は、
図2のA−A線に沿ってセグメント20,30を切断した状態を示す縦断面図である。
図2に示すように、セグメント20,30は、その外観が環状に設けられている。そして、それらの周方向の端面同士が合口21,31において狭い隙間で対向している。また、セグメント20,30には、内周面22,32と、外周面23,33と、上側面24,34と、下側面25,35とが設けられている。
【0037】
内周面22,32は、
図1に示すエキスパンダ・スペーサ40の耳部43と接触する部分である。一方、外周面23,33は、
図1に示すシリンダ1の内壁面と接触する部分である。これらの内周面22,32および外周面23,33は、上側面24,34と下側面25,35の間に設けられている。なお、上側面24,34は、セグメント20,30の上側(エンジン燃焼室側)に位置する平坦な部分であり、下側面25,35は、セグメント20,30の下側(エンジン燃焼室から離れる側)に位置する平坦な部分である。
【0038】
図4は、エキスパンダ・スペーサ40の構成を示す斜視図である。
図4に示すように、エキスパンダ・スペーサ40には、上片41と、下片42と、耳部43と、セグメント支持部44とが設けられている。上片41は、シリンダ1の軸方向(Y方向)において、エンジン燃焼室側に位置する水平な部分である。また、下片42は、シリンダ1の軸方向(Y方向)において、エンジン燃焼室から離れる側に位置する水平な部分である。
【0039】
また、耳部43は、上片41および下片42よりも径方向の内周側に位置している。耳部43には、上片41よりも上側(エンジン燃焼室側)に突出するものと、下片42よりも下側(エンジン燃焼室から離れる側)に突出するものがある。なお、耳部43には傾斜面43aが存在していて、その傾斜面43aは、シリンダ1の軸方向(Y方向)に対して傾斜していると共に、外周側を向いている。また、傾斜面43aを正面視した形状は、波型の一部に相当している。この傾斜面43aと、上片41または下片42で囲まれた部分は、オイルが流通可能な連通孔45となっている。
【0040】
ここで、上述した傾斜面43aの一部には、セグメント20,30の内周面22,32が当接し、その当接によって、セグメント20,30には、外径側(シリンダ1の内壁側)に向かうような付勢力が与えられる。また、耳部43には、耳側面43bも存在している。
【0041】
なお、耳側面43bのうち、傾斜面43aとの境界部分には、後述するドロス状突出部26,36が当接する。それにより、セグメント20,30の単独回転を防止することができる。
【0042】
図5は、セグメント20の合口21と、セグメント30の合口31とがシリンダ1の軸方向(Y方向)において重なる位置となった状態を示す図である。
図5に示すように、セグメント20の合口21と、セグメント30の合口31とが上下方向(Y方向)において重なる位置となる場合、セグメント20,30等で掻き残されたオイルが、たとえばエンジン筒内圧の負圧時において、
図5において矢印で示すようにエンジン燃焼室に配置されている圧縮リング側に吸い込まれ、さらに、圧縮リングを通り抜けてエンジン燃焼室で消失し、オイル消費量を増加させてしまう。
【0043】
このような問題を解決するために、本実施の形態では、セグメント20,30が、周方向において回転してしまう、いわゆる単独回転を防止するようにしている。本実施の形態では、セグメント20,30の内周面22,32には、一対のドロス状突出部26,36が設けられていて、そのドロス状突出部26,36の存在によって、セグメント20,30の単独回転を防止している。
【0044】
図6は、一対のドロス状突出部26,36および凹溝27,37の形状を拡大して示す部分的な斜視図である。なお、
図6では、下側面25,35が紙面手前側に位置する状態を示しているが、上側面24,34が紙面手前側に位置するものとしても良い。
図7は、セグメント20,30の内周側において一対のドロス状突出部26,36および凹溝27,37が形成された状態の内周面側から見た側面図を示すものである。
図8は、ドロス状突出部26,36および凹溝27,37を横断するようにセグメント20,30の周方向(X方向)に沿って切断したときの形状を示す断面図である。
図9は、複数のドロス状突出部26,36と、凹溝27,37が形成されたセグメント20,30を示す側面図であり、(A)はセグメント20,30の内周面に沿って時計回りに進んだときに、エンジン燃焼室側に向かうように傾斜するものの1種類のみの傾斜の向きのドロス状突出部26,36および凹溝27,37であり間隔が離れていることを示す図である。また(B)はセグメント20,30の内周面に沿って時計回りに進んだときに、エンジン燃焼室側に向かうように傾斜するものと、エンジン燃焼室から離れるように傾斜するものの2種類の傾斜の向きのドロス状突出部26,36および凹溝27,37を示す図である。
【0045】
図6から
図8に示すように、ドロス状突出部26,36は、凹溝27,37を挟んで設けられている。すなわち、土手状に連続するドロス状突出部26,36が、凹溝27,37に沿って、その両側に形成されている。このように、凹溝27,37の両側にドロス状突出部26,36が形成されているので、1つの凹溝27,37につき、一対のドロス状突出部26,36が存在する状態となっている。
【0046】
<ドロス状突出部の突出高さについて>
一対のドロス状突出部26,36は、その付け根の内周面22,32に対して、4μm〜25μmの範囲内で突出している。
図10は、セグメント20,30の幅の中心軸に対して20度開いたセグメント20,30の内周面の位置でドロス状突出部26,36の突出高さを測定するイメージを示す図である。
図10に示すように、ドロス状突出部26,36の突出高さは、セグメント20,30の幅の中心軸に対して20度開いたセグメント20,30の内周面の位置で測定していて、その位置での突出高さが4μm〜25μmの範囲内となっている。
【0047】
この測定では、セグメント20,30は、セグメント20,30の幅の中心軸に対して20度開いた(
図10のθ3が開き角度20度に対応)状態で設置可能な設置治具50に設置され、押さえ部材51でセグメント20,30を設置治具50との間で挟み込んだ状態で測定される。また、セグメント20,30の突出高さの測定は、レーザ照射部61を備える表面粗さ測定装置60を用いて、測定を行うようにしている。なお、この測定では、セグメント20,30のうち、鉛直方向において最も高い位置である頂点位置においてレーザ照射部61からレーザ光を照射して測定している。
【0048】
また、
図8に示すように、凹溝27,37を挟んで左側のドロス状突出部26,36の突出高さがH1であり、凹溝27,37を挟んで右側のドロス状突出部26,36の突出高さがH2としたとき、突出高さH1,H2の平均の高さを、一対のドロス状突出部26,36の突出高さとする。
【0049】
かかる突出高さのドロス状突出部26,36が耳側面43bと傾斜面43aとの境界部分に当接することで、セグメント20,30の単独回転が阻止される。ただし、ドロス状突出部26,36の突出高さは、セグメント20,30の単独回転を防止可能であれば、この範囲には限られなく、後述するドロス状突出部26,36および凹溝27,37の傾斜角度が小さければ、突出高さが4μmより低くても良く、突出高さは25μmより高くても良いが、一方で、突出高さが25μmを超えていくとセグメント20,30への変形、歪に影響を与え、好ましくはない。
【0050】
ここで、本実施の形態では、レーザ光を内周面22,32に照射した場合に、その照射部位が溶融して凹溝27,37が形成されるが、その凹溝27,37の両側に、溶融した金属が冷えて固まることにより凸状のドロスが形成される。この凸状のドロスが、ドロス状突出部26,36に対応している。したがって、ドロス状突出部26,36は、切削加工の際に形成される切削バリとは異なり、細く鋭利な部分がなく、その形状がなだらかな土手状(丘陵状)である。したがって、ドロス状突出部26,36は、切削バリとは異なり、何らかの衝撃が加わっても脱落し難くなっている。そのため、セグメント20,30の単独回転時に、ドロス状突出部26,36がシリンダ1内部で脱落し難いものとなっている。また、ドロス状突出部26,36は、切削加工の際に形成される切削バリとは異なり、細く鋭利な部分がなく、その形状がなだらかな土手状(丘陵状)であるので、薄幅化されたセグメント20,30において折損の起点となるのを防止可能となる。
【0051】
<ドロス状突出部および凹溝の傾斜角度について>
また、
図9(A),(B)に示すように、ドロス状突出部26,36および凹溝27,37の延伸方向は、セグメント20,30の周方向に直交する中心軸方向(Y方向)に対して平行であるか、または傾斜している。かかる延伸方向は、中心軸方向(Y方向)に対して、45度以下の角度をなすように設けられている。
【0052】
なお、
図11に示すように、エキスパンダ・スペーサ40の耳部43の耳側面43bは、中心軸方向(Y方向)に沿わずに傾斜しているものが大半であるので、ドロス状突出部26,36および凹溝27,37の延伸方向は、45度以下の範囲で傾斜していることが好ましい。たとえば、上述した延伸方向の中心軸方向(Y方向)に対する傾斜角度を傾斜角度θ1とすると、その傾斜角度θ1は、耳部43とセグメント内周面が接触する部位付近の耳部43の稜線の傾斜角度θ2よりも、小さく設けられることが好ましいが、傾斜角度θ1と傾斜角度θ2とが一致した角度であっても良い。
【0053】
また、
図9(B)においてセグメント20,30の内周面に沿って時計回りに進むと、ドロス状突出部26,36および凹溝27,37は、エンジン燃焼室側に向かうように傾斜するものと、エンジン燃焼室から離れるように傾斜するものの2種類が存在している。しかしながら、ドロス状突出部26,36および凹溝27,37は、エンジン燃焼室側に向かうように傾斜するもののみとしても良く(
図9(A)参照)、エンジン燃焼室から離れる側に向かうように傾斜するもののみとしても良い。
【0054】
すなわち、
図9(A)に示すように、全てのドロス状突出部26,36および全ての凹溝27,37は、セグメント20,30の周方向に直交する中心軸方向(Y方向)に対して、第1傾斜方向に傾斜するもののみが存在するものとしても良い。また、
図9(B)に示すように、ドロス状突出部26,36および全ての凹溝27,37は、セグメント20,30の周方向に直交する中心軸方向(Y方向)に対して、第1傾斜方向に傾斜するものと、この第1傾斜方向とは異なる第2傾斜方向に傾斜するものとが存在するものとしても良い。かかる
図9(B)に示す構成では、第1傾斜方向に傾斜するドロス状突出部26,36と、第2傾斜方向に傾斜するドロス状突出部26,36とは、合口21,31以外の部分で隣り合っていると共に、セグメント20,30の周方向の少なくとも2箇所に形成されている。なお、合口21,31を挟んだ部分では、第1傾斜方向に傾斜するドロス状突出部26,36と、第2傾斜方向に傾斜するドロス状突出部26,36とは、隣り合っても良く、隣り合わなくても良い。
【0055】
ここで、ドロス状突出部26,36および凹溝27,37の第1傾斜方向には、次のものが含まれる。すなわち、セグメント20,30の周方向に沿って進行したときに、中心軸方向(Y方向)の一方側(
図9(A),(B)では上側)に向かうようにドロス状突出部26,36および凹溝27,37が傾斜しているときの傾斜方向が第1傾斜方向に該当する。その第1傾斜方向における傾斜角度は、上記のように中心軸方向(Y方向)に対して、45度以下の角度であれば、複数のドロス状突出部26,36および複数の凹溝27,37の中に、傾斜角度が異なるものが混在していても良い。また、セグメント20,30の周方向に沿って進行したときに、中心軸方向(Y方向)の他方側(
図9(B)では下側)に向かうように傾斜していれば第2傾斜方向に該当する。その第2傾斜方向における傾斜角度は、上記のように中心軸方向(Y方向)に対して、45度以下の角度であれば、複数のドロス状突出部26,36および複数の凹溝27,37の中に、傾斜角度が異なるものが混在していても良い。なお、第1傾斜方向における傾斜角度および第2傾斜方向における傾斜角度は、セグメント20,30の単独回転が防止可能であれば、上述した45度以下の範囲には限られず、45度よりも大きな角度であっても良い。
【0056】
なお、
図9(B),(A)に示す構成では、ドロス状突出部26,36および凹溝27,37は、直線状となるように示されている。しかしながら、ドロス状突出部26,36および凹溝27,37は、曲線状であっても良い。たとえば、内周面22,32にレーザ光を照射することでドロス状突出部26,36および凹溝27,37を形成する場合、正弦波を描くようにレーザ光を照射しても良く、その他の曲線を描くようにレーザ光を照射しても良く、正弦波を含めた曲線と直線を組み合わせてレーザ光を照射するようにしても良い。
【0057】
また、
図7および
図9(B)に示す構成では、ドロス状突出部26,36は、中心軸方向(Y方向)に沿って下側から上側に向かうと、時計回りとなるように傾斜するもの、反時計回りとなるように傾斜するものの2種類が形成されていても良いが、時計回りとなるように傾斜するものと、反時計周りとなるように傾斜するもののうち、いずれかのみが存在する構成としても良い。また、複数種類の傾斜角度のドロス状突出部26,36が内周面22,32に形成されたものでも良い。
【0058】
<ドロス状突出部のピッチについて>
次に、一対のドロス状突出部26,36が内周面22,32に形成されているピッチについて説明する。ドロス状突出部26,36のピッチを決定するに際しては、ドロス状突出部26,36が耳部43の傾斜面43aに乗り上げない(傾斜面43aの境界以外の部位で当接しない)ようにすることが望ましい。すなわち、ドロス状突出部26,36は、隣り合う耳部43の間の空間部に位置することが望ましい。
【0059】
ここで、ドロス状突出部26,36が耳部43(傾斜面43a)にドロス状突出部26,36が乗り上げない状態で、耳部43(傾斜面43a)がセグメント20,30を外周側に押圧する場合、セグメント20,30が単独回転しても、耳側面43bと傾斜面43aとの境界部分とドロス状突出部26,36とが衝突する。それにより、セグメント20,30が単独回転するのを防止できるからである。
【0060】
なお、ドロス状突出部26,36は、1つのセグメント20,30の周長に下流側の合口切断工程における切断加工幅を加えた長さ当たり、等間隔に3箇所以上、一対で存在する。
図9(A)に示すドロス状突出部26,36が形成されている場合には、ドロス状突出部26,36のピッチP2と、エキスパンダ・スペーサ40の耳部43(傾斜面43a)のピッチP1は、以下の(式1)と(式2)とを同時に満たす関係にある。
P1 ≦ P2 ≦ π(D−2T)/3 …(式1)
P2=n×P1 …(式2)
ここで、Dはセグメント20,30の外径(シリンダ1の内径)であり、Tはセグメント20,30の径方向の厚みである。また、nは、1,2,3…のような正の整数である。
【0061】
一方、
図9(B)に示すドロス状突出部26,36が形成されている場合には、ドロス状突出部26,36のピッチP2と、エキスパンダ・スペーサ40の耳部43(傾斜面43a)のピッチP1は、以下の(式3)と(式4)と(式5)とを同時に満たす関係にある。ただし、この場合には、ピッチP2は、セグメント20,30の幅中心において測定したものとして定義される。
L1 ≦ P1/2 …(式3)
P1/2 ≦ P2 ≦ π(D−2T)/6 …(式4)
P2=n×P1+P1/2 …(式5)
なお、(式5)においても、nは、0,1,2,3…のような整数である(
図9(B)ではn=0の場合のP2を示す)。
【0062】
ここで、エキスパンダ・スペーサ40は、耳部43が形成された状態の線材をコイリングした後、所定長さに切断した後に、その一端と他端を接合することで形成される。その製造過程では、実際には、上片41側の耳部43が切り落とされて、下片42側の耳部43よりも個数が1つ少なくなる。なお、これとは逆に、下片42側の耳部43が切り落とされて、上片41側の耳部43よりも個数が1つ少なくなるものとしても良い。
【0063】
このように、上片41側の耳部43の個数が、下片42側の耳部43の個数よりも1つ少なくなると、耳部43の切断部位を含む部位の耳部43間の距離が、ピッチP1とはならず、ずれてしまう。その場合、上述の(式1)および(式2)を満たす場合(
図9(A)に示す場合)、および(式3)と(式4)と(式5)を満たす場合(
図9(B)に示す場合)でも、耳部43へのドロス状突出部26,36の乗り上げが生じてしまう虞がある。なお、この点は、下片42側の耳部43が切り落とされて、上片41側の耳部43よりも個数が1つ少なくなるようにした場合も同様である。
【0064】
このため、上述の(式1)および(式2)を満たす場合(
図9(A)に示す場合)、および(式3)と(式4)と(式5)を満たす場合(
図9(B)に示す場合)において、上記で求められるピッチP2の位置の全ての位置でドロス状突出部26,36を形成するものではなく、ピッチP2の位置の少なくとも1箇所は、ドロス状突出部26,36を形成しない部位(以下、この部位を逃げ部とする)を設ける状態とする。すると、その逃げ部に、上述した耳部43の切断部位を含む部位を位置させれば、耳部43へのドロス状突出部26,36の乗り上げを確実に防ぐことができる。
【0065】
<ドロス状突出部の皮膜に関して>
また、セグメント20,30には、その内周面22,32側に、皮膜が形成されていても良い。皮膜としては、リン酸塩処理、ガス窒化層、塩浴窒化などにより形成される皮膜が挙げられるが、それ以外の手法により形成される皮膜であっても良い。なお、このような皮膜が形成された場合でも、ドロス状突出部26,36の突出高さは、上述した4μm〜25μmの範囲内で突出するのが好ましい。
【0066】
<セグメントの製造方法について>
以上のような一対のドロス状突出部26,36および凹溝27,37を有するセグメント20,30の製造方法について、以下に説明する。
【0067】
図12は、セグメント20,30の製造方法の線材送り工程からコイリング工程までのイメージを示す図である。
図12に示すように、セグメント20,30を製造する場合、コイルマスタ100から線材101を送り出す(線材送り工程に対応)。このとき、線材101は、コイリング装置110へと向かって送り出される。なお、コイルマスタ100は、線材101が巻回されている部分である。また、線材101は、セグメント20,30の材料である。
【0068】
ここで、コイルマスタ100と後述するコイリング装置110の間には、レーザ光照射装置120が設けられている。そして、このレーザ光照射装置120により、線材101に対してレーザ光を照射して、セグメント20,30の内周面22,32となる部分に一対のドロス状突出部26,36を形成する(レーザ光照射工程に対応)。レーザ光照射装置120は、レーザ光をセグメント20,30の内周面22,32に照射する装置である。たとえば、内周面22,32が下側を向くように線材101を送る場合、線材101の下側にレーザ光照射装置120を配置することで、内周面22,32にレーザ光を良好に照射させることができる。このとき、たとえばレーザ光照射装置120が備えるミラー等を駆動させることで、内周面22,32には、千鳥状のドロス状突出部26,36および凹溝27,37を形成することができる。また千鳥状のドロス状突出部26,36に限らず同方向のドロス状突出部26,36を形成しても良い。
【0069】
なお、このレーザ光照射装置120としては、ファイバーレーザが好適である。しかしながら、たとえば、YAGレーザ、炭酸ガスレーザ、アルゴンレーザ、エキシマレーザ、ルビーレーザ、半導体レーザ等、ファイバーレーザ以外のレーザ光照射装置であっても良い。また、レーザ光照射装置120の出力調整を行うと共に、レーザ光照射装置120が備えるミラーの駆動速度を調整する等により、好適な突出高さのドロス状突出部26,36を形成することができる。また、レーザ光照射をセグメント20,30の幅方向に一方向の走査(1ショット)をすることで一対のドロス状突出部26,36を形成することができる。
【0070】
また、線材101にレーザ光を照射する場合、セグメント20,30の幅の中心軸に対して20度開いたセグメント20,30の内周面の位置で、4μm〜25μmの突出高さとし、1つのセグメント20,30の周長に下流側の合口切断工程における切断加工幅を加えた長さ当たり、線材の送り速度に同期して等間隔に3箇所以上、レーザ光を照射するようにする。このようにすると、切断によってセグメント20,30を形成する際に、合口21,31の形成に際して1箇所のドロス状突出部26,36が切断されても、少なくとも2箇所の一対のドロス状突出部26,36を残存させることができる。
【0071】
ここで、上述したセグメント20,30の幅の中心軸に対して20度開いたセグメント20,30の内周面の位置におけるドロス状突出部26,36の突出高さについては、実在するドロス状突出部26,36の突出高さのみならず、仮想的な高さも含まれる。ここでいう仮想高さとは、実際に肉盛りされたドロス状突出部26,36が存在する状態から、上記の内周面の位置をグラインドで切削した場合や後工程のローラなどにより潰された場合における、元来あったと想定されるドロス状突出部26,36の突出高さを指す。ドロス状突出部26,36の仮想的な高さは、凹状の切削部位の両側の稜線高さ等から算出することが可能である。
【0072】
たとえば、セグメント20,30の幅の中心軸に対して20度開いたセグメント20,30の内周面の位置についてのみ、スポット的に凹形状となるように切削した場合でも、セグメント20,30の単独回転の機能は果たせる場合を考える。そして、切削前のセグメント20,30の幅の中心軸に対して20度開いたセグメント20,30の内周面の位置での、ドロス状突出部26,36の突出高さが、4μm〜25μmであるとする。この場合、切削による凹形状の周囲のドロス状突出部26,36の形状(稜線の形状等)から、セグメント20,30の幅の中心軸に対して20度開いたセグメント20,30の内周面の位置における元来のドロス状突出部26,36の突出高さは、仮想的に算出することができる。したがって、上記の位置におけるドロス状突出部26,36の突出高さには、実在する突出高さと、周囲の形状等から算出される仮想的な高さの両方が含まれる。
【0073】
また、レーザ光を照射した後の線材101は、下流側に配置されているコイリング装置110により、ドロス状突出部26,36が環状の内周側に位置するように線材101を環状に塑性加工する(コイリング工程に対応)。コイリング装置110は、線材101を環状に変形させる装置であり、線材101は螺旋状に巻回された状態となる。
【0074】
なお、この後に、合口21,31が形成されるように螺旋状に巻回された線材101をその巻回したもの(巻回体)の軸方向に沿って切断することで、セグメント20,30が形成される(切断工程に対応)。
【0075】
<実験結果について>
次に、上述したセグメント20,30の一対のドロス状突出部26,36に関して、単独回転を防止可能か否かの実験を行った。その実験結果について、以下に説明する。まず、材質を炭素鋼(硬鋼線)とした場合において、ドロス状突出部26,36の突出高さと、ドロス状突出部26,36の延伸方向がシリンダ1の軸方向(Y方向)に対してなす傾斜角度θ1とを種々変更し、単独回転するか否かの評価を行った。
【0076】
この評価で用いたセグメント20,30は、その外径を89.0mmであり、セグメント20,30の幅W1(軸方向;Y方向の寸法(
図11参照))が0.4mmであった。また、セグメント20,30の内周面22,32に対しては表面処理を行わずに無処理とした。また、それぞれのセグメント20,30には、2箇所の一対のドロス状突出部26,36が形成されているものを用いた。また、組み合わせるエキスパンダ・スペーサ40の耳角度θs(
図1参照)は20度である。なお、2箇所の一対のドロス状突出部26,36の突出高さは、セグメント20,30の内周面の位置で測定している。開いた角度は前述のエキスパンダ・スペーサ40の耳角度θsと同じであり、エキスパンダ・スペーサ40の耳部43とセグメント内周面が接触する位置での角度となる。また、組合せオイルリング10の張力は10Nであり、シリンダボア径比で0.1(N/mm)となり、これは通常仕様である0.2〜0.3(N/mm)に対して半減以上である低い張力としている。
【0077】
かかる組合せオイルリング10を、
図13に示すような単気筒モータリング試験機200Aのピストン2Aのオイルリング溝4Aに設置し、実験を行った。ピストン2Aのストロークは70mmであり、回転数(往復数)は650rpmであり、試験時間を30分として実験を行った。また、単気筒モータリング試験機のシリンダ1Aは、上部の開口側が下部側よりも広いテーパ状シリンダであり、開口側の内径は89.32mm、下部側の内径は89.00mmであり、このテーパ状シリンダ内における組合せオイルリング10の張力振幅は2Nから10Nであり、下限はほぼ張力のない水準で設定している。なお、表1において「A」はセグメント20,30が単独回転しない場合であり、「B]は単独回転する場合を表している。
【0079】
表1の比較例1〜5では、一対のドロス状突出部26,36の突出高さが3μmとなっていて、傾斜角度θ1は、それぞれ45度(比較例1)、30度(比較例2)、15度(比較例3)、5度(比較例4)、0度(比較例5)となっている。また、比較例6は、ドロス状突出部26,36が存在せずに、内周面22,32にブラスト処理を行い、その表面粗さRzが10μmとなっている。
【0080】
また、表1の実施例1〜5では、一対のドロス状突出部26,36の突出高さが4μmとなっていて、傾斜角度θ1は、45度(実施例1)、30度(実施例2)、15度(実施例3)、5度(実施例4)、0度(実施例5)となっている。また、表1の実施例6〜10では、一対のドロス状突出部26,36の突出高さが10μmとなっていて、傾斜角度θ1は、45度(実施例6)、30度(実施例7)、15度(実施例8)、5度(実施例9)、0度(実施例10)となっている。
【0081】
さらに、表1の実施例11〜15では、一対のドロス状突出部26,36の突出高さが20μmとなっていて、傾斜角度θ1は、45度(実施例11)、30度(実施例12)、15度(実施例13)、5度(実施例14)、0度(実施例15)となっている。また、表1の実施例16〜20では、一対のドロス状突出部26,36の突出高さが25μmとなっていて、傾斜角度θ1は、45度(実施例16)、30度(実施例17)、15度(実施例18)、5度(実施例19)、0度(実施例20)となっている。
【0082】
表1の実験結果からすると、一対のドロス状突出部26,36の突出高さが4μm〜25μmの範囲内で、セグメント20,30の単独回転が防止される、という結果が得られた。
【0083】
次に、セグメント20,30の材質をステンレス鋼(ステンレス線)へと変更し、それ以外は表1と同じ条件で、実験を行った。すなわち、セグメント20,30の材質をステンレス鋼(ステンレス線)へと変更した以外、全ての条件を同じとして、実験を行った。この実験結果を表2に示す。
【0085】
表2の比較例31〜35では、一対のドロス状突出部26,36の突出高さが3μmとなっていて、傾斜角度θ1は、それぞれ45度(比較例31)、30度(比較例32)、15度(比較例33)、5度(比較例34)、0度(比較例35)となっている。また、比較例36は、ドロス状突出部26,36が存在せずに、内周面22,32にブラスト処理を行い、その表面粗さRzが10μmとなっている。
【0086】
また、表2の実施例31〜35では、一対のドロス状突出部26,36の突出高さが4μmとなっていて、傾斜角度θ1は、45度(実施例31)、30度(実施例32)、15度(実施例33)、5度(実施例34)、0度(実施例35)となっている。また、表2の実施例36〜40では、一対のドロス状突出部26,36の突出高さが10μmとなっていて、傾斜角度θ1は、45度(実施例36)、30度(実施例37)、15度(実施例38)、5度(実施例39)、0度(実施例40)となっている。
【0087】
さらに、表2の実施例41〜45では、一対のドロス状突出部26,36の突出高さが20μmとなっていて、傾斜角度θ1は、45度(実施例41)、30度(実施例42)、15度(実施例43)、5度(実施例44)、0度(実施例45)となっている。また、表2の実施例46〜50では、ドロス状突出部26,36の突出高さが25μmとなっていて、傾斜角度θ1は、45度(実施例46)、30度(実施例47)、15度(実施例48)、5度(実施例49)、0度(実施例50)となっている。
【0088】
表2の実験結果からすると、セグメント20,30の材質がステンレス鋼(ステンレス線)の場合でも、一対のドロス状突出部26,36の突出高さが4μm〜25μmの範囲内で、セグメント20,30の単独回転が防止される、という結果が得られた。
【0089】
次に、
図10に示す開き角度θ3(測定位置)を種々変更した場合に、ドロス状突出部の突出高さを測定した。その測定結果について、以下に説明する。まず、材質を炭素鋼(硬鋼線)とした場合において、ドロス状突出部26,36の傾斜角度を種々変更し、ドロス状突出部26,36の突出高さを種々変更した。そして、それらのときの開き角度θ3(測定角度)における、ドロス状突出部26,36の高さを測定した。なお、このときの測定条件は、開き角度θ3を種々変更した以外は、表1と同じ条件で測定を行った。この測定結果を表3に示す。なお、表3では、開き角度θ3が5度、10度、15度、20度、25度、30度、35度の場合のドロス状突出部26,36の突出高さを測定した。また、表3の実施例1〜20および比較例1〜5は、表1における実施例1〜20および比較例1〜5と同じものを測定しているので、実施例の番号は同じものを用いている。
【0091】
表3の比較例1〜5では、開き角度θ3が20度であるときのドロス状突出部26,36の突出高さが3μmの場合における、各開き角度θ3でのドロス状突出部26,36の突出高さを測定した。なお、比較例1は、ドロス状突出部26,36の傾斜角度θ1が45度のときの測定結果であり、比較例2は、同じく傾斜角度θ1が30度のときの測定結果である。また、比較例3は、同じく傾斜角度θ1が15度のときの測定結果であり、比較例4は、同じく傾斜角度θ1が5度のときの測定結果であり、比較例5は、同じく傾斜角度θ1が0度のときの測定結果である。これら比較例1〜5では、ドロス状突出部26,36の突出高さは、最大で3μmとなっている。
【0092】
また、表3の実施例1〜5では、開き角度θ3が20度であるときのドロス状突出部26,36の突出高さが4μmの場合における、各開き角度θ3でのドロス状突出部26,36の突出高さを測定した。これらのうち、実施例1は、ドロス状突出部26,36の傾斜角度θ1が45度のときの測定結果であり、実施例2は、同じく傾斜角度θ1が30度のときの測定結果である。また、実施例3は、同じく傾斜角度θ1が15度のときの測定結果であり、実施例4は、同じく傾斜角度θ1が5度のときの測定結果であり、実施例5は、同じく傾斜角度θ1が0度のときの測定結果である。これら実施例1〜5では、ドロス状突出部26,36の突出高さは、最大で4μmとなっている。
【0093】
また、表3の実施例6〜10では、開き角度θ3が20度であるときのドロス状突出部26,36の突出高さが10μmの場合における、各開き角度θ3でのドロス状突出部26,36の突出高さを測定した。これらのうち、実施例6は、ドロス状突出部26,36の傾斜角度θ1が45度のときの測定結果であり、実施例7は、同じく傾斜角度θ1が30度のときの測定結果である。また、実施例8は、同じく傾斜角度θ1が15度のときの測定結果であり、実施例9は、同じく傾斜角度θ1が5度のときの測定結果であり、実施例10は、同じく傾斜角度θ1が0度のときの測定結果である。これら実施例6〜10では、ドロス状突出部26,36の突出高さは、最大で10μmとなっている。
【0094】
また、表3の実施例11〜15では、開き角度θ3が20度であるときのドロス状突出部26,36の突出高さが20μmの場合における、各開き角度θ3でのドロス状突出部26,36の突出高さを測定した。これらのうち、実施例11は、ドロス状突出部26,36の傾斜角度θ1が45度のときの測定結果であり、実施例12は、同じく傾斜角度θ1が30度のときの測定結果である。また、実施例13は、同じく傾斜角度θ1が15度のときの測定結果であり、実施例14は、同じく傾斜角度θ1が5度のときの測定結果であり、実施例15は、同じく傾斜角度θ1が0度のときの測定結果である。これら実施例11〜15では、ドロス状突出部26,36の突出高さは、最大で20μmとなっている。
【0095】
また、表3の実施例16〜20では、開き角度θ3が20度であるときのドロス状突出部26,36の突出高さが25μmの場合における、各開き角度θ3でのドロス状突出部26,36の突出高さを測定した。これらのうち、実施例16は、ドロス状突出部26,36の傾斜角度θ1が45度のときの測定結果であり、実施例17は、同じく傾斜角度θ1が30度のときの測定結果である。また、実施例18は、同じく傾斜角度θ1が15度のときの測定結果であり、実施例19は、同じく傾斜角度θ1が5度のときの測定結果であり、実施例20は、同じく傾斜角度θ1が0度のときの測定結果である。これら実施例16〜20では、ドロス状突出部26,36の突出高さは、最大で25μmとなっている。
【0096】
なお、実施例1〜20、および比較例1〜5では、いずれも、開き角度θ3が5度のとき、ドロス状突出部26,36の突出高さが最も小さくなっている。これは、上述したコイリング装置110によるコイリング工程においては、コイリング装置110が備えるローラによって、開き角度θ3が5度の部位のドロス状突出部26,36が潰されるからである。
【0097】
次に、セグメント20,30の材質をステンレス鋼(ステンレス線)へと変更し、それ以外は表3と同じ条件で、実験を行った。すなわち、セグメント20,30の材質をステンレス鋼(ステンレス線)へと変更した以外、全ての条件を同じとして、実験を行った。この実験結果を表4に示す。なお、表4の実施例31〜50および比較例31〜35は、表2における実施例31〜50および比較例31〜35と同じものを測定しているので、実施例の番号は同じものを用いている。
【0099】
なお、表4においては、比較例31〜35は、表3の比較例1〜5のそれぞれにおいて、材質を炭素鋼(硬鋼線)からステンレス鋼(ステンレス線)へと変更したものに対応する。このとき、基準となる開き角度θ3が20度であるときのドロス状突出部26,36の突出高さを含め、開き角度θ3が0度、10度、15度、20度、25度、30度、および35度のいずれにおいても、ドロス状突出部26,36の突出高さが同程度となっている。
【0100】
また、表4においては、実施例31〜50は、表3の実施例1〜20のそれぞれにおいて、材質を炭素鋼(硬鋼線)からステンレス鋼(ステンレス線)へと変更したものに対応する。このときも、基準となる開き角度θ3が20度であるときのドロス状突出部26,36の突出高さを含め、開き角度θ3が0度、10度、15度、20度、25度、30度、および35度のいずれにおいても、ドロス状突出部26,36の突出高さが同程度となっている。
【0101】
なお、実施例31〜50、および比較例31〜35においても、いずれも、開き角度θ3が5度のとき、ドロス状突出部26,36の突出高さが最も小さくなっている。これは、上述したコイリング装置110によるコイリング工程においては、コイリング装置110が備えるローラによって、開き角度θ3が5度の部位のドロス状突出部26,36が潰されるからである。
【0102】
以上の表3の実施例1〜20、および表4の実施例31〜50の測定結果からすると、開き角度θ3が20度の部位において、ドロス状突出部26,36の突出高さが最大となるが、開き角度θ3が10度から30度の範囲では、4μm程度のばらつき範囲に収まって安定して形成されていることが判明した。したがって、エキスパンダ・スペーサ40の耳角度θsが10度から30度の範囲では、セグメント20,30の単独回転の防止に特に効果的であることが判明した。また、いずれの実施例1〜20,31〜50の場合でも、開き角度θ3が10度から30度の範囲では、ドロス状突出部26,36の突出高さは4μm〜25μmの範囲内となった。
【0103】
したがって、表1および表2の結果も併せて考慮すると、開き角度θ3が10度〜30度の範囲内では、セグメント20,30の単独回転が防止される、という結論となった。
【0104】
<作用効果>
以上のような構成のセグメント20,30、組合せオイルリング10およびセグメント20,30の製造方法によると、次のような作用効果が得られる。すなわち、セグメント20,30の内周面22,32には、一対のドロス状突出部26,36が複数設けられている。また、前記一対のドロス状突出部26,36は、少なくとも1つの位置において4μm〜25μmの突出高さである。
【0105】
このため、組合せオイルリング10の低張力化に対応させつつも、セグメントの単独回転を防止することが可能となる。
【0106】
また、本実施の形態では、一対のドロス状突出部26,36は、セグメント20,30の幅の中心軸に対し、10度から30度の範囲内で開いたセグメント20,30の内周面の位置のうち少なくとも1つの位置において、ドロス状突出部26,36の付け根の内周面から4μm〜25μmの突出高さであることが好ましい。
【0107】
このように構成される場合には、セグメントの単独回転を良好に防止することが可能となる。
【0108】
また、本実施の形態では、一対のドロス状突出部26,36は2箇所以上設けられていて、セグメント20,30の周方向に直交する中心軸方向(Y方向)に対して、全ての一対のドロス状突出部26,36は、第1傾斜方向に傾斜するように設けられていることが好ましい。
【0109】
このように構成される場合には、一対のドロス状突出部26,36の形成が容易となる。また、セグメント20,30の単独回転を良好に防止することが可能となる。
【0110】
また、本実施の形態では、セグメント20,30の周方向に直交する中心軸方向(Y方向)に対して、一対のドロス状突出部26,36には、第1傾斜方向に傾斜するものと、該第1傾斜方向とは異なる第2傾斜方向に傾斜するものとが存在する。また、第1傾斜方向に傾斜する一対のドロス状突出部26,36と、第2傾斜方向に傾斜する一対のドロス状突出部26,36とはセグメント20,30の合口21,31以外の部分で隣り合っていて、隣り合う一対のドロス状突出部26,36は、少なくとも2箇所に設けられていることが好ましい。
【0111】
このように構成される場合でも、セグメント20,30の単独回転を良好に防止することが可能となる。
【0112】
また、本実施の形態では、一対のドロス状突出部26,36はセグメント20,30の幅方向に土手状に連続的に設けられていて、そのドロス状突出部26,36の方向は、中心軸方向(Y方向)に対して45度以下の傾斜角度をなしていることが好ましい。
【0113】
このように構成される場合には、セグメント20,30の単独回転を一層良好に防止することが可能となる。また、一対のドロス状突出部26,36がセグメント20,30の幅方向に土手状に連続することで、セグメント20,30がオイルリング溝4の内部で移動したり傾いたりしても、セグメント20,30の単独回転を良好に防止することが可能となる。
【0114】
また、本実施の形態では、一対のドロス状突出部26,36は、凹溝27,37を挟んで設けられていることが好ましい。このように構成される場合には、たとえばレーザ光の照射により、凹溝27,37を形成することで、その凹溝27,37に存在していた鋼を利用することで一対のドロス状突出部26,36を容易に形成することができる。
【0115】
また、本実施の形態では、セグメント20,30は、炭素鋼またはステンレス鋼を材質としていることが好ましい。この場合には、単独回転を良好に防止することが可能となる。
【0116】
また、本実施の形態では、一対のドロス状突出部26,36が形成可能な位置間のピッチをピッチP2とし、エキスパンダ・スペーサ40の耳部43間のピッチをピッチP1とすると、nを正の整数とし、P2=n×P1を満たすと共に、ピッチP2で決定される位置のうち少なくとも2箇所には一対のドロス状突出部が形成されることが好ましい。
【0117】
このように構成される場合には、ドロス状突出部26,36は、耳部43(傾斜面43a)に乗り上げるのを確実に防止することができる。そのため、セグメント20,30の単独回転を一層良好に防止することが可能となる。
【0118】
また、本実施の形態では、ドロス状突出部26,36が形成可能な位置間のセグメント20,30の幅中心におけるピッチをピッチP2とし、エキスパンダ・スペーサ40の耳部43間のピッチをピッチP1とすると、nを0以上の整数とし、P2=n×P1+P1/2を満たすと共に、ピッチP2で決定される位置のうち少なくとも2箇所には一対のドロス状突出部が形成されることが好ましい。
【0119】
このように構成される場合にも、ドロス状突出部26,36は、耳部43(傾斜面43a)に乗り上げるのを確実に防止することができる。そのため、セグメント20,30の単独回転を一層良好に防止することが可能となる。
【0120】
また、本実施の形態では、セグメント20,30を製造する場合、線材送り工程においてセグメント20,30の材料となる線材101を巻回しているコイルマスタ100から線材101を引き出して下流側に送り出す。また、レーザ光照射工程では、コイルマスタ100よりも線材101の送り方向の下流側において、線材101に対してレーザ光を照射して、少なくとも1つの位置において、ドロス状突出部26,36の付け根の内周面となる面から4μm〜25μmの突出高さであって、1つのセグメント20,30の周長に、下流側においてセグメント20,30の合口21,31を形成する際の切断加工幅を周方向の長さとして加えた長さ当たりに線材101の送り速度に同期して等間隔に3か所以上のドロス状突出部26,36を形成するようにする。また、レーザ光照射工程よりも下流側のコイリング工程で、線材101を環状に塑性加工する。また、切断工程では、螺旋状に巻回された線材101を、線材101を巻回した巻回体の軸方向に沿って切断し、合口21,31を形成する。
【0121】
このような各工程を経る場合、従来の工程において、インラインプロセスとなり、セグメント20,30の内周面22,32側に、ドロス状突出部26,36を確実に形成することが可能となる。また、内周面22,32にブラスト処理を行う場合と比較して、セグメント20,30に与える変形、歪の影響を小さくすることができる。
【0122】
また、本実施の形態では、レーザ光照射工程では、線材送り工程での線材送り方向と交差する交差方向に沿ってレーザ光の照射を行うと共に、交差方向の一方から他方に向かう一方向のみにレーザ光の照射を行うことが好ましい。
【0123】
このように構成される場合には、一対のドロス状突出部26,36の形成が容易となる。また、セグメント20,30の単独回転を良好に防止することが可能となる。
【0124】
また、本実施の形態では、レーザ光照射工程では、線材送り工程での線材送り方向と交差する交差方向に沿ってレーザ光の照射を行うと共に、交差方向の往復における二方向にレーザ光の照射を行うことが好ましい。
【0125】
このように構成される場合でも、セグメント20,30の単独回転を良好に防止することが可能となる。
【0126】
<変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0127】
上述の実施の形態では、組合せオイルリング10は、一対のセグメント20,30と、1つのエキスパンダ・スペーサ40を備える構成としている。本発明におけるエキスパンダ・スペーサは、耳部43が周方向において、上片下片のそれぞれの内周側に交互に配置されているが、耳部が周方向において、シリンダ軸方向に一対をなして配置されているエキスパンダ・スペーサでもよい。また、組合せオイルリングは、1つのセグメントと、1つのエキスパンダ・スペーサを備える構成としても良い。
組合せオイルリングの低張力化に対応させつつも、セグメントの単独回転を防止することが可能なセグメント、組合せオイルリングおよびセグメントの製造方法を提供する。
エキスパンダ・スペーサ40の周方向に形成されている耳部43によって内周面22,32が押圧されると共に外周側がシリンダ1の内壁に押圧された状態で該シリンダ1の軸方向に摺動可能なセグメント20,30であって、セグメント20,30の内周面22,32には、ドロス状突出部26,36が周方向において少なくとも2箇所以上設けられていて、そのドロス状突出部26,36は、4μm〜25μmの突出高さに設けられている。