特許第6339766号(P6339766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339766
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/04 20060101AFI20180528BHJP
   B29C 33/34 20060101ALI20180528BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20180528BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   B29C45/04
   B29C33/34
   B29C33/02
   B29C45/27
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-63786(P2013-63786)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-188720(P2014-188720A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】古賀 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】浦川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】眞坂 武史
(72)【発明者】
【氏名】蔵野 慶宏
(72)【発明者】
【氏名】渡部 茂
(72)【発明者】
【氏名】島添 稔大
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−160914(JP,U)
【文献】 特開平02−165922(JP,A)
【文献】 特開2007−152627(JP,A)
【文献】 特開2007−112027(JP,A)
【文献】 特開昭61−029515(JP,A)
【文献】 特開2007−216622(JP,A)
【文献】 特開2012−131178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 45/00−45/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料の硬化に必要な温度に加熱されると共に型締めによって互いに会合してキャビティを画成する複数組の固定金型及びその上面と会合・分離可能な可動金型と、
射出装置からの成形材料を前記可動金型に開設されたゲートを介して前記キャビティ内へ供給する非加熱のコールドランナと、
前記射出装置及び、前記可動金型へ向けて上下進退可能に配置されたコールドランナが存在する射出ステージと、
この射出ステージと平行に並ぶ位置にあって前記固定金型と可動金型とを型開きする開型ステージと、
を備え、一組の前記固定金型及び可動金型が前記射出ステージにあるとき、他の組の前記固定金型及び可動金型が前記開型ステージに位置するように、前記コールドランナを上昇させて前記可動金型から分離させた前記固定金型及び可動金型の組が、前記射出ステージと前記開型ステージとの間で移動可能となっている、
ことを特徴とする成形装置。
【請求項2】
コールドランナに、外部から開閉操作可能な注入バルブを設けたことを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料電池セルのガスケットなどのようなシール部品を成形するための成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板一体型のガスケットの成形では、基板を金型にセットして、ゴム組成物からなる成形材料を金型キャビティ内に射出し、キャビティ内で熱硬化させることによって、基板と一体のガスケットを得る。とくに、燃料電池セル用ガスケットを成形する方法としては、粘度の低い液状ゴムを成形材料として用いるコールドランナ式のLIM(Liquid Injection Molding)成形装置が採用されている。
【0003】
この種のコールドランナ式のLIM成形装置によれば、コールドランナ内では液状ゴムが硬化しないため、材料の消費量を削減して低コスト化を図ることができる。なお、コールドランナ式のLIM成形方法の典型的な従来技術としては、下記の特許文献に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−34126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコールドランナ式LIM成形装置によれば、キャビティ内の成形材料が固定金型及び可動金型の熱によって硬化した後は、型開きして製品を取り出してから、ゲートが開設された可動金型の下面を清掃して液状ゴムの硬化物を除去する必要があるため、成形サイクルの短縮が困難であった。
【0006】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、金型による成形装置において、製品の離型後の金型清掃工程を削減して成形サイクルの短縮を図ることにより低コスト化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る成形装置は、成形材料の硬化に必要な温度に加熱されると共に型締めによって互いに会合してキャビティを画成する複数組の固定金型及びその上面と会合・分離可能な可動金型と、射出装置からの成形材料を前記可動金型に開設されたゲートを介して前記キャビティ内へ供給する非加熱のコールドランナと、前記射出装置及び、前記可動金型へ向けて上下進退可能に配置されたコールドランナが存在する射出ステージと、この射出ステージと平行に並ぶ位置にあって前記固定金型と可動金型とを型開きする開型ステージと、を備え、一組の前記固定金型及び可動金型が前記射出ステージにあるとき、他の組の前記固定金型及び可動金型が前記開型ステージに位置するように、前記コールドランナを上昇させて前記可動金型から分離させた前記固定金型及び可動金型の組が、前記射出ステージと前記開型ステージとの間で移動可能となっている。
請求項2に係る成形装置は、前記コールドランナに、外部から開閉操作可能な注入バルブを設けた。
【0008】
上記構成を備える成形装置による成形に際しては、まず射出ステージにおいて、固定金型と可動金型を型締めし、この固定金型と可動金型の会合面間に画成されたキャビティ内に、射出装置からの成形材料を、コールドランナ及びゲートを介して供給する。コールドランナは非加熱であるため、射出装置からの成形材料はコールドランナで硬化することなくキャビティ内に充填される。
【0009】
キャビティ内の成形材料が固定金型及び可動金型の熱によって硬化した後は、固定金型及び可動金型を開型ステージへ移動して型開きし、製品を取り出すと共に、可動金型のゲート内で可動金型の熱で成形材料が硬化することにより生じたバリを除去する。そして、このような型開き後の製品の取り出しやゲートからのバリの除去作業は、射出ステージではなく開型ステージで行われるので、射出ステージでは、別の固定金型と可動金型を型締めして、キャビティ内へ射出装置からの成形材料を供給して硬化させる成形工程を行うことができる。
【0011】
また、射出装置からの成形材料をキャビティ内へ供給した後で注入バルブを閉塞することによって、キャビティ内の成形材料を所定の圧力に保持することができ、しかも、型開きと共にコールドランナから可動金型(ゲート)を分離したときにコールドランナ内の未硬化材料の流下が防止される。また、型締め後は注入バルブを開放することにより、キャビティ内への成形材料の供給を可能とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る成形装置によれば、射出ステージの外側の開型ステージで可動金型のゲートからのバリ除去を行うようにしたため、射出ステージでの金型の清掃工程が不要となり、成形工程の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る成形装置の好ましい実施の形態を示す説明図である。
図2】本発明に係る成形装置の好ましい実施の形態において、ゲートとキャビティの関係を示す平面図である。
図3】本発明に係る成形装置の好ましい実施の形態において、基板をセットする工程を示す説明図である。
図4】本発明に係る成形装置の好ましい実施の形態において、固定金型上に可動金型を位置決め設置した状態を示す説明図である。
図5】本発明に係る成形装置の好ましい実施の形態において、型締めした状態を示す説明図である。
図6】本発明に係る成形装置の好ましい実施の形態において、キャビティに液状ゴムを射出した状態を示す説明図である。
図7】本発明に係る成形装置の好ましい実施の形態において、コールドランナから可動金型及び固定金型を分離した状態を示す説明図である。
図8】本発明に係る成形装置の好ましい実施の形態において、製品離型及びバリ除去工程を示す説明図である。
図9】製品としての燃料電池用ガスケットを示す平面図である。
図10】本発明に係る成形装置の好ましい実施の形態において、射出ステージの射出工程と、開型ステージでの製品離型及びバリ除去工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る成形装置の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
この成形装置は、例えば図9に示すような、燃料電池セルのセパレータ61にゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるシール部62を一体に設けた燃料電池セル用ガスケット6を、粘度の低い液状ゴムを成形材料として用いるコールドランナ式のLIM(Liquid Injection Molding)成形装置であって、図1に示すように、固定金型1及びその上面と会合・分離可能な可動金型2と、ターンテーブル5の旋回によって円周方向所定位置(射出ステージS1)にある可動金型2へ向けて上下進退可能に配置され、内部に固定金型1及び可動金型2の型締めによって画成されるキャビティCへの成形材料の流路(コールドランナ31)が形成されたコールド金型部材3と、前記コールドランナ31を介して成形材料を前記キャビティCへ射出する射出装置4と、前記固定金型1及び可動金型2を移動させるターンテーブル5と、を備えている。
【0016】
また、図示は省略してあるが、この成形装置は、固定金型1に対する可動金型2の型開きや型閉じ動作を行うための型締め装置、コールド金型部材3や射出装置4の昇降動作を行うための駆動装置、インサート部品(この形態では基板61’)を固定金型1へセットするための装填装置、製品離型装置、バリ除去装置、これらの動作を制御する制御装置などを装備している。
【0017】
詳しくは、固定金型1は、ターンテーブル5上に固定されており、液状ゴムの架橋硬化に必要な温度に加熱され、その上面には、図9に示す燃料電池セル用ガスケット6のセパレータ61となる基板61’をセットする複数の凹部11が形成されている。
【0018】
可動金型2は、不図示の型締め装置によって固定金型1の上面に対して昇降可能に配置されており、固定金型1と同様、液状ゴムの架橋硬化に必要な温度に加熱され、その下面には、固定金型1との型締めによって基板61’の上面との間に図9に示す燃料電池セル用ガスケット6のシール部62を成形するための賦形空間であるキャビティCを画成する溝状凹部21が形成され、前記キャビティCへの液状ゴムの注入口であるゲート22が形成されている。
【0019】
図2に示すように、この実施の形態では、固定金型1には基板61’が二枚セットされるようになっており、したがって成形用キャビティとなる溝状凹部21も可動金型2の下面に二つ形成されており、ゲート22は各溝状凹部21(キャビティC)の一カ所へ向けて互いに対称位置に開口している。
【0020】
コールド金型部材3は非加熱であって、成形材料である液状ゴムが架橋硬化しない温度に保冷されており、不図示の駆動装置により昇降可能となっている。このコールド金型部材3を貫通して形成されたコールドランナ31は、その上端がスプル31aとなっており、複数に分岐して延びる下流部にはそれぞれ注入バルブ32が設けられ、この注入バルブ32は、外部から開閉操作可能な下流端のバルブゲートが、可動金型2のゲート22と接続可能となっている。また、コールド金型部材3の下面部には、可動金型2からの伝熱を防止するための断熱盤33が設けられている。
【0021】
射出装置4は、プランジャを内蔵した射出ノズル41を有し、その先端がコールド金型部材3の上面のスプル31aと密接衝合(ノズルタッチ)可能であり、射出ノズル41の先端とスプル31aとの密接衝合状態で、前記プランジャの動作によって、液状ゴムを、コールドランナ31、注入バルブ32及びゲート22を通じて各キャビティCへ射出するものである。
【0022】
ターンテーブル5は、鉛直な中心軸Oの周りに旋回可能であって、固定金型1及び可動金型2はこのターンテーブル5上に複数組設置されており、ターンテーブル5の回転によって、射出装置4及びコールド金型部材3の真下の射出ステージS1と、この射出ステージS1から前記中心軸Oの周りに所定角度回転移動した位置にあって固定金型1の上面の凹部11への基板61’の装填や製品の取り出しを行うための開型ステージS2との間を移動されるようになっている。またこのため、ある一組の固定金型1と可動金型2が射出ステージS1にあるときには、他の組の固定金型1と可動金型2は開型ステージS2に位置するようになっている。
【0023】
次に、上記構成を備える成形装置による成形サイクルについて説明すると、図3に示すように、開型ステージS2では、ターンテーブル5上の固定金型1から可動金型2が上方へ離間(開型)しており、ここではまず固定金型1の上面の凹部11へ、不図示の装填装置によって基板61’のセッティングが行われる。
【0024】
次に、基板61’が装填された固定金型1上には、不図示の型締め装置によって可動金型2が降下し、型閉じ状態となる。これによって、固定金型1に装填された基板61’の上面と可動金型2の溝状凹部21の間には、図9に示す燃料電池セル用ガスケット6のシール部62を成形するためのキャビティCが画成される。
【0025】
次に図5に示すように、固定金型1と可動金型2は、ターンテーブル5の回転によって射出装置4及びコールド金型部材3の真下の射出ステージS1へ移送され、ここでコールド金型部材3が降下して可動金型2上に接合される。そしてこれによって、コールドランナ31に設けられた注入バルブ32の下流端のバルブゲートが、可動金型2のゲート22と接続状態となる。
【0026】
次に、注入バルブ32のバルブゲートを開放すると共に、コールド金型部材3の上面のスプル31aと密接衝合された射出装置4の射出動作によって、射出ノズル41から成形材料である液状ゴムが射出される。そしてコールド金型部材3は液状ゴムが架橋硬化しない温度に保冷されているため、射出ノズル41から射出された液状ゴムは、図6に示すように、架橋硬化することなくコールドランナ31から注入バルブ32及びゲート22を通じてキャビティCへ送られる。
【0027】
なお、成形材料である液状ゴムには、架橋硬化によって基板61’に対する自己接着性を発現するものを用いることが好適であるが、自己接着性のない液状ゴムを用いる場合は、基板61’の表面に、予め接着剤を塗布しておく。
【0028】
また、図5に黒く塗りつぶして示す部分Lは、前回の成形サイクルにおいてコールドランナ31及び注入バルブ32内に残留した未硬化の液状ゴムであり、この液状ゴムLは、図6に示す工程において、射出ノズル41から射出される液状ゴムに先行してキャビティCへ充填される。
【0029】
キャビティCへの液状ゴムの充填が完了すると、注入バルブ32の下流端のバルブゲートが閉塞される。このため、キャビティC内の液状ゴムは、所定の圧力に保持される。
【0030】
キャビティC内の液状ゴムは、固定金型1及び可動金型2の熱によって架橋硬化し、キャビティCと対応する形状のシール部62として成形されると共に、固定金型1上の基板61’(セパレータ61)の上面と一体化(加硫接着)され、キャビティCに開口したゲート22内の液状ゴムは、可動金型2の熱によって架橋硬化し、シール部62と連続したバリ63となる。一方、コールド金型部材3は液状ゴムが架橋硬化しない温度に保冷されると共に断熱盤33によって可動金型2からの熱が遮断されているため、コールドランナ31内に残留した液状ゴムは架橋硬化することはなく、次ショット時にキャビティCに充填されることになる。
【0031】
キャビティC内の液状ゴムの架橋硬化に必要な時間が経過したら、図7に示すようにコールド金型部材3が不図示の駆動装置によって上昇し、可動金型2から分離される。このとき、注入バルブ32は閉塞されているので、コールドランナ31内に残留している未硬化の液状ゴムが漏出して落下するようなことはない。
【0032】
次に、ターンテーブル5の回転によって、固定金型1及び可動金型2は、射出装置4及びコールド金型部材3の真下の射出ステージS1から、図1に示す開型ステージS2へ移送され、ここで図8に示すように、不図示の型締め装置によって可動金型2が固定金型1から上方へ離れて型開きされ、これによって、固定金型1側に保持される製品としての燃料電池セル用ガスケット6のシール部62から、可動金型2のゲート22内に生成されたバリ63が分離される。
【0033】
そして固定金型1から、図9に示すように、セパレータ61にゴム状弾性材料からなるシール部62が一体成形された製品としての燃料電池セル用ガスケット6を、不図示の製品離型装置によって取り出すと共に、不図示のバリ除去装置によって、可動金型2のゲート22からバリ63を除去する。
【0034】
この製品取り出し工程及びバリ除去工程は、上述のように開型ステージS2で行われるため、射出ステージS1での金型の清掃工程は不要であり、図10に示すように、射出ステージS2では、開型ステージS2での製品の離型及びバリ除去や、次の成形のための基板61’のセッティング作業に並行して、射出工程を開始することができる。したがって成形サイクルの効率を向上することができる。
【0035】
しかも、成形後に除去されるのは可動金型2のゲート22内に生じたバリ63のみであり、コールドランナ31内に残留した液状ゴムは未硬化であって、次ショット時にキャビティCに充填されるため、成形材料の無駄が最小限に抑えられ、コストの削減に寄与するものである。
【符号の説明】
【0036】
1 固定金型
2 可動金型
22 ゲート
3 コールド金型部材
31 コールドランナ
32 注入バルブ
4 射出装置
5 ターンテーブル
6 燃料電池セル用ガスケット(製品)
61 セパレータ
61’ 基板
62 シール部
63 バリ
C キャビティ
S1 射出ステージ
S2 開型ステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10