(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339767
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】耐震装置を組込んだ間仕切り装置
(51)【国際特許分類】
E04B 2/82 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
E04B2/82 511W
E04B2/82 511T
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-68948(P2013-68948)
(22)【出願日】2013年3月28日
(62)【分割の表示】特願2013-36545(P2013-36545)の分割
【原出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-163217(P2014-163217A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105693
【氏名又は名称】コマニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩
【審査官】
富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−086033(JP,A)
【文献】
実開昭59−092114(JP,U)
【文献】
実開平06−044828(JP,U)
【文献】
特開2010−196290(JP,A)
【文献】
特開2001−090211(JP,A)
【文献】
特許第2724694(JP,B2)
【文献】
特開2000−186385(JP,A)
【文献】
実公平07−038501(JP,Y2)
【文献】
特公平6−8551(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/82−2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の空間を仕切る為に、その上端は天井面に固定し、下端は床面に固定した間仕切り装置において、該間仕切り装置は間に空間を設けた状態で対を成してパネルを起立すると共に該空間には耐震装置を配置した構造とし、上記耐震装置は床面と天井面を連結する連結具としてスタッドを利用し、天井面側の受け部材として機能する上止め金具を用いてスタッドの上端部と連結し、床面側に固定されたアジャスターによって支持した巾木に載ったスタッドの下端をL型金具を介して巾木と共にアジャスター受けに連結固定し、天井パネルの横揺れ並びに床面と天井パネル間距離の拡大を抑制するようにしたことを特徴とする耐震装置を組み込んだ間仕切り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地震による建物の吊り天井、及び壁の揺れを抑制し、特に縦揺れに対して天井と床との距離を一定に保って間仕切りの装置の転倒を防止し、また横揺れを抑えて天井の落下を防止することが出来る耐震装置を組み込んだ間仕切り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の大きな空間を仕切る為に間仕切り装置が用いられている。間仕切り装置にも色々な形態が存在しているが、基本的な構造は、床面に敷設した床レールにアジャスターを配置し、このアジャスターによって支持された巾木の上に間仕切りパネルを起立し、間仕切りパネルの上端は天井に取付けた天井レール(天井部材)に拘束し、そして、各間仕切りパネル間に起立したスタッドと連結した構造としている。
【0003】
図9は従来の一般的な間仕切り装置の縦断面を示す具体例である。同図に示すように、床面(イ)には床レール(ロ)が敷設され、この床レール(ロ)の所々に配置したアジャスター(ハ)、(ハ)・・の上に載って適度な高さに巾木(ニ)が支持されている。そして、該巾木(ニ)には間仕切りパネル(ホ)、(ホ)が載って据え付けられ、該間仕切りパネル(ホ)、(ホ)の上端は天井パネル(ヘ)に取付けた天井レール(ト)に嵌って拘束されている。
【0004】
また、隣り合う間仕切りパネル・・・の間にはスタッドが起立して間仕切りパネル(ホ)、(ホ)と連結し、しかも間仕切りパネル(ホ)、(ホ)は間に空間を設けて2枚が対を成して配置されている。ところで、天井レール(ト)が取付けられる天井は「つり天井」を構成しており、天井裏のコンクリート部に金属製のボルトを装着し、ハンガー、野縁受け、クリップ、野縁などを組み合せて格子状の骨組みを作り、該骨組みの下面に天井パネルを取付けた構造としている。
【0005】
そこで、地震が発生した場合には上記「つり天井」はブランコのように揺れ動き、各部材には不規則な力がかかって変形し、端部が建物の壁面に衝突して時には落下する場合もある。また、間仕切りパネル(ホ)、(ホ)・・・は上端が天井レール(ト)に嵌められており、天井レール(ト)に取付けられたパネルガイド(チ)によって支えられているが、地震の力によりパネル上端が天井レール(ト)から外れる場合もある。従って、天井が落下すれば、必然的に間仕切り装置は転倒してしまう。
【0006】
特開平9−256521号に係る「パーティション」は、地震の際にも倒れることがなく耐震性を備えている。そこで、天井と床の対向位置に笠木と巾木がそれぞれ固定され、笠木に対して押し上げた後、巾木に落とし込むことにより、前後に対向するパネルの上下端を係合するとともにこれらのパネルを連結したパーティションであり、パネルが巾木上から脱落するにいたるパネルの上方移動および前後移動のいずれかの動作を防止するパネル脱落防止具を設けている。
パネルの前後移動を阻止するパネル脱落防止具を設けることにより、地震によりパネルが上方へ移動してパネルの下端と巾木の係合状態が解除しても、パネルは前後移動しないので巾木上から脱落することはない。また、パネルを上方移動を阻止するパネル脱落防止具によっても、パネルの脱落を防止することができる。
【0007】
このパーティションは地震によるパネルの脱落防止を図った構造としているだけで、天井の揺れ防止、また天井の落下防止を図ることは出来ない。従って、地震による揺れが大きくなれば、天井が落下することで上端の支えが無くなりパネルは転倒する虞がある。
【特許文献1】特開平9−256521号に係る「パーティション」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように従来の間仕切り装置は地震の揺れに対して転倒する虞がある。上記特開平9−256521号に係る「パーティション」であっても、揺れが大きくなって天井が崩壊すればパネルの転倒を避けることは出来ない。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、地震時の天井、床、壁の揺れを抑制することが出来、特に、大きな地震が発生しても天井の落下を防止し、転倒を防止することが出来る耐震装置を組み込んだ間仕切り装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る耐震装置は床と天井を連結し、この耐震装置によって床と天井間距離を一定に保つことが出来る構造としている。また、該耐震装置によって床と天井の相対的横揺れを防止する。この耐震装置を取付ける箇所は特に限定するものではないが、一般的には建物空間を仕切る間仕切り装置の内部に組み込む場合、また間仕切り装置に対面して配置する場合、さらには部屋空間に設置した何らかの部材と組み合わせた構造とする場合などがある。
【0010】
ここで、耐震装置の具体的な構造は特に限定しないが、床面と天井面を連結する為の連結手段となる連結具を有し、連結具の下端は受け部材などを介して床面に連結・固定され、連結具の上端は受け部材などを介して天井パネルに連結・固定することが出来る。すなわち、天井パネルは耐震装置の連結具を介して床面と連結し、その為に、床面と天井パネル間距離が拡大することはない。また、天井パネルの横移動も抑制される。また、耐震装置を間仕切り装置に組み込む場合であれば、対を成す間仕切りパネルの間に形成される空間に連結具を取付け、又はスタッドの内部空間に連結具を設けることが出来る。さらに、スタッド自体を連結具として兼用することも可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の耐震装置は連結具を介して天井パネルが床面と連結している。従って、床面と天井間距離は一定に保たれる為に、地震の揺れに伴って天井のみが上昇することはなく、その為に、間仕切りパネル上端が天井部材から外れて間仕切り装置が転倒するといった事故は起きず、少なくとも抑制することが出来る。本発明の耐震装置を間仕切り装置に組み込むことで地震に強い間仕切り装置が構成出来る。
【0012】
また、地震の横揺れに伴う天井の横揺れが防止される。すなわち、床面と天井パネルは耐震装置の連結具を介して連結されている為に、該天井パネルが床面に対して平行に横移動しようとすれば床面と天井パネルを連結する連結具には大きな張力が作用し、天井パネルの横揺れを阻止する力が働くことになる。従って、横揺れに伴う天井の落下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明に係る耐震装置を組み込んだ間仕切り装置の正面図。
【
図3】本発明に係る耐震装置を組み込んだ間仕切り装置を示す実施例の縦断面図。
【
図4】本発明に係る耐震装置を組み込んだ間仕切り装置を示す他の実施例の縦断面図。
【
図5】本発明に係る耐震装置を組み込んだ間仕切り装置を示す別実施例の縦断面図。
【
図6】本発明に係る耐震装置を組み込んだ
図4に示す間仕切り装置の正面図。
【
図7】本発明に係る耐震装置を組み込んだ間仕切り装置を示す更なる別実施例の縦断面図。
【
図8】本発明に係る耐震装置を組み込んだ
図6に示す間仕切り装置の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る耐震装置Aを示す概略図である。同図に示すように、耐震装置は部屋の床面2と天井面3を互いに連結し、床面2のB点には耐震装置Aの下端が連結固定され、天井面3のC点には耐震装置Aの上端が連結固定されている。ここで、耐震装置Aの具体的な構造は限定せず、棒状の剛体で構成する連結具を有する場合、可撓性のあるワイヤーで構成する連結具を有す場合などがあり、可撓性のワイヤーを使用する場合には緩まないように初期張力が付勢される。
【0015】
床面2と天井面3との間に耐震装置が介在することで、地震による縦揺れによって床面2と天井面3との距離が拡大することはない。また、
図1(b)に示すように、地震の横揺れが発生した場合に、床面2に対して天井面3が平行状態で横移動することも出来ない。すなわち、天井面3と耐震装置Aの上端固定点がC点からD点へ移動することが阻止される。
【0016】
ところで、本発明に係る耐震装置Aを部屋の適当な箇所に設置することでその効果を得ることは出来るが、実際には、部屋に設置した場合に邪魔にならないこと、また部屋の外観が損なわれないことが重要となる。そこで、一般的には建物の空間を仕切る為に設置される間仕切り装置に耐震装置Aを組込むことが便利であり、外観的にも好ましい。
【0017】
図2は本発明に係る耐震装置Aを組み込んだ間仕切り装置を表している正面図である。同図の1は間仕切りパネル、2は床面、3は天井面、4は床レール、5は巾木、6はスタッド、7は天井部材をそれぞれ表わしている。正面からの外観は従来の間仕切り装置と同じであるが、本発明では、床面2と天井面3との間の空間を間仕切りパネルを据え付けて仕切っただけでなく、床面2と天井面3は互いに連結されている。
【0018】
図3は耐震装置Aを組み込んだ間仕切り装置の縦断面を示す実施例である。床面2には床レール4が敷設され、この床レール4の所々にはアジャスター(図示なし)が配置され、該アジャスターには巾木5が適度な高さに調整して載置され、そして巾木5は床レール4を被覆してその上には間仕切りパネル1,1が所定の間隔をおき、対を成して起立している。天井面3にはコ形断面の天井部材7が下側を開口して取付けられ、上記間仕切りパネル1,1の上端はこの天井部材7に嵌っている。
【0019】
床面2には受け部材8が上記床レール4と共に固定され、この受け部材8にはネジ部9が起立し、そして該ネジ部9にはナット10が螺合して連結している。一方、天井パネル11の天井面3にも受け部材12が上記天井部材7と共にネジ止めされ、該受け部材12からはネジ部13が下方へ延び、このネジ部13にはナット14が螺合して互いに連結している。これら床側のナット10と天井側ナット14はワイヤー15にて繋がれている。
【0020】
すなわち、連結具はワイヤー15の両端にナット10,14を連結して構成し、この連結具を介して床面2に固定した受け部材8のネジ部9と天井面3に固定した受け部材12のネジ部13と連結した構造としている。両ナット10、14を締めることで、該ワイヤー15は弛むことなく所定の張力が付勢される。従って、天井面3と床面2との距離は一定に保たれ、また、該距離を一定の保った状態での横移動も阻止される。
【0021】
ところで、同図に示す耐震装置の連結具は床面2と天井面3を連結する為の1手段に過ぎず、他の構造とすることも可能である。例えば、垂直に起立しているスタッドを利用し、その上端に何らかの金具を設けて天井面3と連結し、下端にも金具を設けて巾木5を貫通し、床面2と連結することも可能である。
【0022】
図4は本発明の耐震装置Aを組み込んだ間仕切り装置の断面を示す他の実施例であり、前記
図3に示した場合とその構造はほぼ同じであるが、受け部材8,12の取着構造が違っている。
図4に示す受け部材8は床パネル16の下側に配置し、受け部材8から起立するネジ部9が該床パネル16に設けた穴を貫通して床面2から突出している。そして、この突出したネジ部9にナット10が螺合した構造としている。これに対して、前記
図3に示した受け部材8はネジを床面2に螺合することで固定している。
【0023】
また、
図4に示す間仕切り装置では、天井側の受け部材12は天井パネル11の上側に配置され、該受け部材12のネジ部13は分割された天井パネル11と天井部材7をそれぞれネジ止めして下方へ延びている。そして、このネジ部13にナット14が螺合して連結した構造と成っている。ここで、天井パネル11の上側に配置した受け部材12
と該天井パネル11をネジ止めしたネジは、同じネジを用いて天井部材7も固定している。
【0024】
図5は本発明の耐震装置Aを組み込んだ間仕切り装置の断面を示す別の実施例である。前記
図3に示した連結具は間仕切り装置の両間仕切りパネル1,1の間に設けた構造と成っているが、
図5の連結具はスタッドの空間を利用して配置した構造である。スタッド6は隣り合う間仕切りパネル1,1の間に起立しているが、該スタッド6は鋼板などを材質とした一定断面の成形品であり、長手方向には貫通した内部空間を形成している。この内部空間に連結具と成るワイヤー15、及びナット10,14が収容され、ネジ部9、13に螺合した構造としている。
【0025】
図6は前記
図5の正面図を示した場合であるが、スタッド6はアジャスター17にて支持された巾木5に載って垂直に起立している。ここで、スタッド6,6・・・は隣り合う間仕切りパネル1,1・・・の間に介在するが、必ずしも全てのスタッド6,6・・・の内部空間に連結具を設けなくてもよい。
【0026】
図7、
図8は連結具としてスタッドを利用し
た縦断面と正面図を示し、スタッド6の上端を天井面3と連結し、スタッド6の下端を床面2と連結した構造と成っている。天井面3には上止め金具18が天井部材7と共にネジ止めされ、この上止め金具18はスタット6の内部空間に嵌っている。そして、該上止め金具18は該スタッド6にネジ止めされて連結している。
【0027】
一方、スタッド6の下端はL型金具19,19を介して巾木5と共にアジャスター受け20にネジ止めされている。従来の間仕切り装置の場合、巾木5はアジャスター17の上に載置されるだけで、その為に上方への力が作用すると浮き上がってしまうことから、本発明では該巾木5がアジャスター受け20に連結すると共に、アジャスター17を床面2にネジ止めしている。従って、該アジャスター17が浮上することはなく、該アジャスター17に載置された巾木5はアジャスター受け20とネジ止めされることで、スタッド6の下端は床面2と連結した構造と成っている。
【0028】
前記
図2〜
図8は耐震装置Aを間仕切り装置に組み込んだ実施例を示している。
その為に、外観上は内部に耐震装置Aが組み込まれていることは分からず、外観的には好ましい間仕切り装置と成る。しかし、既存の間仕切り装置にも耐震装置Aを設けたい場合には、該間仕切り装置の正面又は背面に付設することが出来、外から見えないように適当なカバーにて被覆することが出来る。従って、内部に組み込むより簡単に設置することも可能となる。
【符号の説明】
【0029】
A 耐震装置
B 耐震装置の下端が床面に連結固定される点
C 耐震装置の上端が天井面に連結固定される点
D する場合に耐震装置天井面が横揺れの上端が移動する点
1 間仕切りパネル
2 床面
3 天井面
4 床レール
5 巾木
6 スタッド
7 天井部材
8 受け部材
9 ネジ部
10 ナット
11 天井パネル
12 受け部材
13 ネジ部
14 ナット
15 ワイヤー
16 床パネル
17 アジャスター
18 上止め金具
19 L型金具
20 アジャスター受け