(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蒸発材料(M1)を有する陰極アーク蒸発源(Q1)と、HIPIMSモードで動作可能で放電材料(M2)を有するマグネトロン放電源(Q2)とを有する真空引き可能なプロセス・チャンバ(2)を用意するステップと、
前記陰極真空アーク蒸発源(Q1)のみによって、陰極真空アーク蒸発プロセスで、前記基板(1)の表面上に前記蒸発材料(M1)を含む少なくとも1つの接合層(S1)を堆積するステップとを含む、
基板(1)の上に硬質材料層から形成された層構造(S)を堆積するコーティング方法であって、
前記接合層(S1)を堆積した後に、前記陰極真空アーク蒸発源(Q1)と前記HIPIMSモードで動作する前記マグネトロン放電源(Q2)の並行運転により、前記蒸発材料(M1)及び前記放電材料(M2)を含む少なくとも1つの中間層(S2)が、ナノ構造の混合層の形で堆積され、次に、前記HIPIMSモードで動作する前記マグネトロン放電源(Q2)のみにより、前記材料(M2)を含む少なくとも1つの最上層(S3)が堆積され、
前記陰極真空アーク蒸発源(Q1)と前記マグネトロン放電源(Q2)の前記並行運転において、コーティング圧力が、0.5Paから20Paの範囲で選択される
ことを特徴とするコーティング方法。
前記陰極真空アーク蒸発方法による前記反応性の堆積において、前記接合層(S1)が窒化物接合層(S1)として形成される、及び/又は前記中間層(S2)が窒化物中間層(S2)として形成される請求項1に記載のコーティング方法。
前記陰極真空アーク蒸発方法による前記反応性の堆積において、前記接合層(S1)が炭化物接合層(S1)として形成される、及び/又は前記中間層(S2)が炭化物中間層(S2)として形成される請求項1又は2に記載のコーティング方法。
前記陰極真空アーク蒸発方法による前記反応性の堆積において、前記接合層(S1)が硼化物接合層(S1)として形成される、及び/又は前記中間層(S2)が硼化物中間層(S2)として形成される請求項1から3までのいずれか一項に記載のコーティング方法。
前記陰極真空アーク蒸発方法による前記反応性の堆積において、前記接合層(S1)が酸化物接合層(S1)として形成される、及び/又は前記中間層(S2)が酸化物中間層(S2)として形成される請求項1から4までのいずれか一項に記載のコーティング方法。
前記陰極真空アーク蒸発方法による前記反応性の堆積において、前記接合層(S1)及び/又は前記中間層(S2)が、Ti主成分層、Zr主成分層、WC主成分層として、又はAlTi主成分層、Cr主成分層、TiSi主成分層として、又はAlCr主成分層として形成される請求項1から5までのいずれか一項に記載のコーティング方法。
前記マグネトロン放電源(Q2)による前記コーティングにおいて、前記中間層(S2)及び/又は前記最上層(S3)が、VMe(Meは金属)窒化物層として形成される請求項1から6までのいずれか一項に記載のコーティング方法。
前記マグネトロン放電源(Q2)による前記コーティングにおいて、前記中間層(S2)及び/又は前記最上層(S3)が、VZrNスパッタリングによってVZrN層として形成される、請求項1から7までのいずれか一項に記載のコーティング方法。
前記マグネトロン放電源(Q2)による前記コーティングにおいて、前記中間層(S2)及び/又は前記最上層(S3)が、MeSiBNCO(Meは金属)層として形成される請求項1から8までのいずれか一項に記載のコーティング方法。
前記マグネトロン放電源(Q2)による前記コーティングにおいて、前記中間層(S2)及び/又は前記最上層(S3)が、SiBNCスパッタリングによってSiBNC層として形成される、請求項1から9までのいずれか一項に記載のコーティング方法。
前記陰極真空アーク蒸発源(Q1)と前記マグネトロン放電源(Q2)の前記並行運転において、コーティング圧力が、1Paから10Paの範囲で選択される、請求項1から10までのいずれか一項に記載のコーティング方法。
前記マグネトロン放電源(Q2)が、前記スパッタリングにおいて、前記中間層(S2)を堆積するため、及び/又は前記最上層(S3)を堆積するために、パルス・ピークで少なくとも1つの電流密度が、0.1A/cm2に達するように前記HIPIMSモードで設定される、請求項1から11までのいずれか一項に記載のコーティング方法。
前記マグネトロン放電源(Q2)が、前記スパッタリングにおいて、前記中間層(S2)を堆積するため、及び/又は前記最上層(S3)を堆積するために、パルスのオン期間が10μsと5000μsの間に達し、パルスのオフ期間が100μsと10,000μsの間に達して、パルスのオン期間とパルスのオフ期間の比が1:3から1:20の範囲内に設定されるように、前記HIPIMSモードで設定される、請求項1から12までのいずれか一項に記載のコーティング方法。
前記マグネトロン放電源(Q2)が、前記陰極真空アーク蒸発源(Q1)によって蒸発材料(M1)でコーティングされる、請求項1から13までのいずれか一項に記載のコーティング方法。
【背景技術】
【0002】
従来技術から知られているPVD層は、陰極真空アーク蒸発技法(CVAE)を用いて堆積されるものであり、磨耗保護の分野の多数の用途において優れた減摩挙動を示す。大抵の様々なツール(切断、成形、一次成形、塑造)及び機械部品(とりわけはさみ道具)並びにエンジン部品(とりわけピストン・リング、バルブ)は、現在、窒化物層、炭化物層及び酸化層並びにそれらの混合物によってコーティングされている。既知のPVDプロセスは、蒸発した材料の高度なイオン化に基づく緻密層構造による高いコーティング率と、プロセス安定性とによって特徴づけられる。しかし、その一方で、既知の陰極真空アーク蒸発(CVAE)技法には多数の短所もある。
【0003】
重大な短所の1つには、実際には不可避の液滴放出があり、すなわち、選択された用途において生成される層に悪影響があり得る、又は十分に低い粗さ値を設定するのに絶対に不可欠なコーティングの後に表面処理をする可能性のある、nmからμm範囲の小さな金属の飛散の放出がある。別の重大な短所には、すべてのカソード材料が陰極真空アーク蒸発(CVAE)によって工業的に蒸発され得るわけではないということがあり、その例には、Si、B、SiC、B
4C、及び当業者に既知の他の材料などの材料が含まれる。
【0004】
この点において、標準的なDCマグネトロン・スパッタリングには、ターゲット上の電流密度が一般的に0.1A/cm
2未満の状態で、ターゲットに対して20W/cm
2以内の一般的な時間平均電力密度で動作するとき、上記2つの短所が実質的にない。
【0005】
この点において、層粗さに関して、具体的には、例えば工業の条件下で製作された厚さ数μmの厚い磨耗保護層を伴う個々の場合には、ブラッシング、ブラスティング、研磨、及び刺激性の成長によって誘起された粗さピークを除去するための他の加工などの機械的加工プロセスによる平滑化が、しばしば続いて実行されることに注意する必要がある。
【0006】
用いることができる材料に関して、標準的なDCマグネトロン・スパッタリングは、CVAEのプロセスより多様性が大である。例えば、金属及びそれらの合金に加えて、より低導電性の材料、及びSi、B、SiC、B
4C、MoS
2、WS
2などの脆性材料をスパッタリングすることができる。それによって、層組成物の製造能力に関する可能性が、CVAEよりもかなり多彩である。
【0007】
しかし、標準的なDCマグネトロン・スパッタリングにもある種の短所がある。標準的なDCマグネトロン・スパッタリングは、陰極真空アーク蒸発と比較して、工場におけるコーティング速度がより低いという特徴があり、このことは、当然、様々な態様において経済的に不利である。さらに、標準的なDCマグネトロン・スパッタリングで製造された層は、スパッタ材料の比較的低いイオン化により、顕著な柱状成長をするという特徴があり、このことは、多くの用途における層の機能性において、しばしば不都合をもたらす。
【0008】
したがって、標準的なDCマグネトロン・スパッタリングは、過去数年で、さらなる開発及び改善が絶え間なく行なわれている。この点において、大電流又は大電流密度を伴うパルス状のモードでマグネトロンを動作させることによってかなりの進歩が達成されており、このことにより、特にスパッタ材料のイオン化の改善のために、より稠密な層の形で、改善された層構造がもたらされる。それによって、柱状成長をあらかじめ定められ得る程度に抑制する、又は完全に防止することさえできる。大電流又は大電流密度を用いるパルス状のモードのマグネトロン・スパッタリングのこのプロセスは、「高イオン化インパルス・マグネトロン・スパッタリング」又は短縮形でHIPIMSともしばしば称される。HIPIMSにおけるターゲットの電流密度は、一般に標準的なDCマグネトロン・スパッタリングのもの、すなわち0.1A/cm
2から数A/cm
2を上回り、その結果、ターゲットに対して数100W/cm
2からMW/cm
2までの電力密度を簡単に印加することができる。
【0009】
層を堆積するための処理条件は、マグネトロン・スパッタリングと陰極真空アーク蒸発(CVAE)では、一般に異なるものである。
【0010】
マグネトロン・スパッタリングにおけるスパッタ・ガスとして、Arが通常用いられる。窒化物層、炭化物層、又は酸化層及びそれらの混合物の反応性蒸着のために、対応する反応ガスが付加される。実際には、層堆積のための反応ガスの流量より大きい、アルゴンのガス流量を用いて、しばしば作業が実行される。コーティング圧力は、通常0.1から1Paの範囲内である。
【0011】
CVAEでは、作業が、通常はArなしで、すなわち100%の反応ガスを用いて実行される。窒化物層の堆積のために、純粋な窒素がしばしば用いられる。層の反応性蒸着は、0.05から1Paの圧力範囲内でしばしば実行される。高いAlの割合を有する粉末冶金陰極が使用されるとき、この点において、圧力がより高いことが判明している。それで、一般に2から10Paの範囲の反応ガス圧力が用いられる。これに相応して、圧力範囲と用いられるガスについての両立性が競合する状況を想定するべきである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特に簡単な実施例で、本発明によるこの方法を実行する装置の基本原理が、例えば
図1aによる装置構成で示され、この図面は、短縮形でCVAE源Q1とも称される陰極真空アーク蒸発源Q1と、本発明による方法ではHIPIMSモードで動作する、短縮形でHIPIMSスパッタ源Q2又は短縮形でHIPIMS源Q2とも称されるマグネトロン放電源Q2とを有するプロセス・チャンバ2を非常に概略的に示している。
【0020】
以下では、簡単な実施例のために、例えば
図2に概略的に示されているものなど、本発明による基板1上の多層構造Sの製造を最初に論じる。
図2の本発明による層構造は、この点においてできるだけ成長擾乱を抑えるべきであり、同時に緻密層構造が意図されている。
図2の本発明による層構造には、原子化する第1の蒸発材料M1によって製造される接合層S1が含まれ、第1の蒸発材料M1は、
図1aによる少なくとも1つの第1の蒸発源Q1によって原子化されて、基板1に与えられる。この層構造には、接合層S1上に配置され、蒸発材料M1及び放電材料M2を含むナノ構造の中間層S2がさらに含まれ、原子化される放電材料M2は、少なくとも1つのマグネトロン放電源Q2並びに材料M2を含んでいるカバー層S3によって供給される。層の中のAlTiXN、AlCrXN、CrON(及びそれらの混合物)などの窒化物部分、炭化物部分又は酸化物部分を、それぞれの層S1からS3の中で設定するために、既知の方法で、堆積中にプロセス・チャンバ2の中で対応する反応ガスが用いられる。
【0021】
図2の基板1をコーティングするために、プロセス・チャンバ2の中に、Q1(CVAE源)と、HIPIMSモードで動作することができる少なくとも1つのマグネトロン放電源Q2(HIPIMS源)の2つの陰極真空アーク放電源が設置される。
【0022】
この点において、プロセス・チャンバ2では、
図1b、
図1c、
図1d及び
図1eで概略的に描かれたものなど、コーティング源のより複雑な配置も可能である。
【0023】
例えば、
図1bは、本発明により、さらに特別な動作モードで層を製造するのに使用されるプロセス・チャンバ2のカッタウェイ図を示す。
図1bのプロセス・チャンバ2の中で相対して配置された2つのフランジに、放電材料M2を有する2つのマグネトロン放電源Q2が設置される。マグネトロン放電源Q2に対して90°のオフセットで相対して配置されたフランジ上に、蒸発材料M1を有する複数の陰極真空アーク蒸発源Q1が配置されている。この点において、好ましくは、チャンバ高さに関して一方が他方の上に配置された2対の真空アーク蒸発源Q1が使用され、
図1bのカッタウェイ図では1対だけ見えている。
図1bの実施例では、マグネトロン放電源Q2は、例えば双極のHIPIMSモードで動作することができる。開閉可能なそれぞれのシャッタSC11、SC12、SC21及びSC22は、好ましくは放電源の前に配置される。
【0024】
以下では、第1の層構造が実施例として説明され、この層構造は、以前には陰極真空アーク蒸発プロセスを用いると十分な品質で製造することができなかったものである。
【0025】
AlTiN層は、切断及び成形などで複数の用途があることが判明している。具体的には、この点において、陰極真空アーク蒸発によって堆積された層は、高度な接着強度を有する。対照的に、バナジウム主成分の層には特別な利点があり、約600℃以上の温度をかけると酸化物が形成され、これが優れた摩擦特性を有する。
【0026】
この組合せは、対応する動作温度において優れた摩擦特性及び磨耗特性の両方を有する層順序を可能にする層の設計に役立ち得る。
【0027】
このために、例えば
図1aに概略的に示されるように、陰極真空蒸着源Q1及び少なくとも1つのHIPIMSモードのマグネトロン放電源Q2が、プロセス・チャンバ2の中に設置されている。
【0028】
さらなる特別な動作モードでは、
図1bで概略的に示されるように、マグネトロン放電源Q2は双極のHIPIMSモードで動作する。どちらの場合にも、
図2による層順序は、蒸発材料M1の接合層S1と、蒸発材料M1及び放電材料M2の中間層S2と、放電材料M2の最上層S3とを有して堆積された。驚くべきことに、中間層S2及び/又は最上層S3のない純粋な接合層S1の粗さを下回る粗さが導入された。
【0029】
本発明による層構造の堆積におけるさらなる試行結果及び工程を、以下でより詳細に説明する。
【0030】
具体的には、
図2の層構造Sは、蒸発材料M1としてのAlTiのAlTiN接合層S1と、窒素を含むプロセス・ガスとを用いて製作された。ナノ構造の混合層形式のAlTiN−VZrN中間層が、AlTiN接合層に付着された。これは、中間層が、蒸発材料M1としてのAlTiと、放電材料M2としてのVZrと、窒素を含んでいるプロセス・ガスとから製作されたことを意味する。最終的に、VZrを含む放電材料M2と、窒素を含むプロセス・ガスからのVZrN最上層が形成され、中間層の上に堆積される。比較のために、純粋なAlTiN層並びに2つの多層の層構造が、陰極真空アーク蒸発によって単独で堆積された。試行結果は、重要な層パラメータ及び試行パラメータ、並びに様々な層の達成された粗さと一緒に表1にまとめられている。意図された層厚さはおおよそ4μmであり、層厚さの個々のプロセス間の変動、及び層構造の中の変動は、層厚さの約±10%である。
【0031】
AlTiN層の製造
最初に、それ自体は既知の基板前処理(例えば500℃への加熱及びAEGDプロセスによるArイオン洗浄)の後に、純粋な窒素雰囲気中で6Paの反応ガス圧力において、150Aの蒸発器電流で、研磨した試料上にAlTiN層が堆積された。試料におけるバイアス電圧は、コーティングの間50Vに達するものであった。おおよそ0.21μmの典型的な粗さに達した。
【0032】
陰極真空蒸着プロセスのみ、最上層VZrNを有するAlTiN
【0033】
このような層は、接合層についてはAlTiNの組合せがCVAEによって堆積され、最上層にはVZrNが同様にCVAEによって堆積された。AlTiNについては150Aの蒸発器電流及び6Paの圧力が用いられ、VZrNについては、対応する前処理の後に3Paの圧力が用いられた。これによって、粗さがかなり増加した。この理由は、VZr陰極の液滴放出が多いためである。0.42μmの粗さRaが生じた。
【0034】
接合層のAlTiNについては陰極真空蒸着プロセスのみ、AlTiN/VZrN及び最上層のVZrNについては並行運転
【0035】
同じ前処理の後、同一のプロセス・パラメータを用い、陰極真空アーク蒸発器のAlTiとVZrの並行運転により、接合層と最上層の間にナノ構造の中間層が堆積された。これによって、粗さRaが0.55μmへとさらに増加した。これは、CVAEによるVZr陰極の蒸発の実行時間がより長いためであると推測される。
【0036】
本発明による層構造S。AlTiNの接合層S1についてはCVAE、中間層S2についてはAlTiNのCVAEとVZrNのHIPIMSモードのマグネトロン放電の並行運転、VZrNの最上層S3についてはHIPIMSモードのマグネトロン放電
【0037】
層S1はCVAEによって堆積された。次のステップで、CVAEとHIPIMSの組合せにより、S1とS3の間にナノ構造の層S2が製造された。驚くべきことに、スパッタリング・プロセス向けには変則的な数Paの圧力で作業が実行されたにもかかわらず、このプロセスは安定していた。同時に、主要なガスは窒素であったにもかかわらず、ターゲットからVZrのスパッタリングが見られた。窒素分子の励起若しくは原子化又はCVAEの同時操作による窒素原子の非常に高度なイオン化によってさえ、スパッタリング・プロセスが支援されると想定するべきである。さらに、スパッタリングターゲットにおいて高いバイアス電圧(1000V以内)を用いると、CVAEによって生成される金属イオン(Al又はTi)もスパッタリング・プロセスに寄与し得る。意外にも、純粋なSi層の粗さを下回るRa=0.13μmの非常に低い粗さが導入された。
【0038】
表1から明白に見られるように、本発明によるコーティング方法を用いて、層順序S1、S2、S3を有する層構造を製作することができ、前記層構造の層は、従来技術から既知のプロセスを用いて製作された基本的に同一の化学組成の層より、かなり低い粗さを有する。
【0040】
本発明によるコーティング方法の実施例を、層の実施例AlTiN/VZrNに関して、実施例として以下で詳細に説明する。
【0041】
マグネトロン放電源は、
図3aの双極のモードで動作させる。
図3aの実施例では、マグネトロン放電源Q2は、閉じた磁界の機構ではそれ自体は既知の不平衡マグネトロン(UBMマグネトロン)として動作する。
【0042】
この点において、相対して配置された2つのマグネトロン放電源Q2は、以下のやり方でHIPIMSモードにて動作する。第1のパルスP1で、マグネトロン放電源は、図面のマグネトロン放電源Q2の下部が第1のパルスP1の陽極として接続された状態で、図面の上部がスパッタリングされる。次の第2のパルスP2で、マグネトロン放電源Q2は、図面のマグネトロン放電源Q2の上部が第2のパルスP2の陽極として接続された状態で、図面の下部がスパッタリングされる。
【0043】
この図面の陰極真空アーク蒸発源Q1のそれぞれが、50原子パーセントのAl及び50原子パーセントのTiを含み、対になった2つのフランジのそれぞれが、互いの上に能動的に構成されている3つの蒸発器を有する。
【0044】
相対して配置された2つのマグネトロン放電源Q2で用いられる大電流パルシング(HIPIMS)のターゲットは、98.5原子パーセントのV及び1.5原子パーセントのZrを含み、それぞれの場合の原子パーセントは、本出願の構成の中の原子パーセントを意味する。
【0045】
コーティングされる試料は、明瞭さのために
図3aには示されないが、コーティング源の前で、それ自体既知の方法で3回回転させた。
【0046】
試料のコーティングは、この点において、本発明に従って以下のように実行された。
【0047】
1.放射加熱器により、基板を約500℃に加熱する。
【0048】
2.基板に200Vのバイアス電圧をかけ、AEGDプロセスで、Arイオンを用いて基板をイオン洗浄する。
【0049】
3.陰極真空アーク蒸発を用いて、例えば150A、6Pa、50V、およそ1.69Pa・m
3・s
−1(1000sccm)で100%の反応ガスの窒素流量にて、接合層S1をおおよそ900nmの層厚さまで堆積する。
【0050】
4.例えば1.52Pa・m
3・s
−1(900sccm)のN
2及び0.169Pa・m
3・s
−1(100sccm)のArのように、ガス混合物にArを付加する。
【0051】
5.シャッタ(
図3aには示されていない)の背後の、マグネトロン放電源Q2の2つのVZrターゲット(幅70mm、長さ700mm)に、双極性パルス・モードで点火する。パルスのパラメータは以下の通りである。パルスのオン期間は200μsであり、パルスのオフ期間は800μsである。電力は1kWから10kWへと除除に上昇させた。ターゲットにおける最大の電流密度は、おおよそ0.4A/cm
2に達した。層厚さはおよそ0.9μmである。
【0052】
6.陰極真空アーク蒸発源Q1をオフにして、0.8Paの圧力、0.169Pa・m
3・s
−1(100sccm)のAr、0.169Pa・m
3・s
−1(100sccm)のN
2、50Vのバイアス電圧で、パルスのパラメータは、オン期間を150μs、オフ期間を1000μsとして、ターゲット上で0.75A/cm
2の最大電流密度とし、層厚さが330nmのVZrN層を堆積する。
【0053】
接合層S1と中間層S2における層の成長速度は、おおよそ2300nm/hで、ほぼ同一であった。最上層S3の層成長速度は、おおよそ170nm/hに達した。
【0054】
中間層S2においてEDX測定で測定されたV成分は5原子パーセント未満であり、それ以外の成分はAl、Ti及びNが含まれている。Zrは、ターゲットの中で低濃度であるため、検出するのが非常に困難であると想定することができる。マグネトロン放電源Q2によって導入されたこれら少量の成分は、陰極真空アーク蒸発源Q1とマグネトロン放電源Q2のHIPIMSマグネトロンの間の、ほぼ1:14という層成長速度の比の結果である。さらに、中間層S2のスパッタ率が、最上層S3のスパッタ率を下回ることもあり得る。
【0055】
本発明によって製作された層構造SのREM切断構造は、接合層S1が円柱形状で成長することを示す。隣接した中間層S2は、ほぼ同一の柱状構造を有する。HIPIMSによって堆積された最上層S3も、非常に稠密な微細柱状構造を有する。したがって、層構造Sのすべての層S1、S2及びS3で柱状成長が保たれている。
【0056】
実際に重要な、さらなる重要なクラスの層構造は、SiBNCタイプの非常に耐酸化性の強い層によって代表される。これらの層は、アモルファス成長し、酸化防止のための最上層として役立つ。ALTiN基層にSi及びBなど合金成分を導入すると、耐酸化性が向上することがさらに知られている。層順序S1、S2、S3の工程がここでも選択されたのはこのためである。本発明による、ターゲットに対して単極のモードを用いるこのような層の製造を、以下でより詳細に説明する。
【0057】
それぞれが互いの上にアクティブな3つの蒸発器を有する2つのフランジにおける55原子パーセントのAl及び45原子パーセントのTiのターゲットを、陰極真空アーク蒸発源Q1に取り付けた。
【0058】
マグネトロン放電源Q2(HIPIMS)には、セラミック成分の混合物が備わっており、結合部分は、66原子パーセントのSi、20原子パーセントのB及び14原子パーセントのCでもたらされる組成物を有する。
【0059】
試料は、陰極真空アーク蒸発源及びマグネトロン放電源の前に配置され、2重回転でコーティングされる。
【0060】
試料のコーティングは、この点において、本発明に従って以下のように実行された。
【0061】
1.放射加熱器により、基板をほぼ500℃に加熱する。
【0062】
2.基板に200Vのバイアス電圧をかけ、AEGDプロセスで、Arイオンを用いて基板をイオン洗浄する。
【0063】
3.陰極真空アーク蒸発を用いて、例えば、150A、反応ガスの窒素(1.69Pa・m
3・s
−1(1000sccm))は5Paで、50Vにて、第1の層を2μmの層厚さまで堆積する。
【0064】
4.1.44Pa・m
3・s
−1(850sccm)のN
2、0.127Pa・m
3・s
−1(75sccm)のArのガス混合物に対してArを定圧で付加する。
【0065】
5.シャッタ背後のSiBCターゲットに点火する。パルス・パラメータは、パルスのオン期間を50μsとし、パルスのオフ期間を950μsとする。電力は1kWから2.5kWへと除除に上昇させた。ターゲットの電流密度はおよそ0.2A/cm
2に達した。
【0066】
6.ナノ層の複合材料層を、4μmの層厚さまで堆積する。
【0067】
7.陰極真空アーク蒸発をオフにして、0.8Paの圧力、0.169Pa・m
3・s
−1(100sccm)のAr、0.169Pa・m
3・s
−1(100sccm)のN
2、50Vのバイアス電圧で、パルス・パラメータは、パルスのオン期間を100μsとし、パルスのオフ期間を900μsとして、5kWの電力で、ターゲット上で0.4A/cm
2の最大の電流密度となり、4.3nmの層厚さまでSiBNC層を堆積した。接合層S1と中間層S2における層成長速度は、4,400nm/hとほとんど同一であった。最上層S3の層成長速度は、およそ300nm/hに達した。
【0068】
中間層S2においてEDX測定によって測定されたSi成分は2原子パーセント未満であり、それ以外の成分はAl、Ti及びNが含まれている。適切な測定方法を用いて、恐らく1原子パーセント未満の、さらに少量のB及びCも検出することができると想定することができる。マグネトロン放電源Q2によって導入されたこれら少量の成分は、ほぼ1:15という、真空アーク蒸発源Q1の陰極真空アーク蒸発とHIPIMSマグネトロンのマグネトロン放電源Q2の間の層成長速度の比の結果である。さらに、中間層S2の堆積の段階のスパッタ率が、最上層S3の堆積の段階のスパッタ率を下回ることもあり得る。
【0069】
層の切れ目のREM画像が、次の3つの領域を明確に示している。
【0070】
1.CVAEによって製作された円柱状の接合層S1。
【0071】
2.CVAE/HIPIMSによって製作されたハイブリッド層形式の中間層S2。微粒子の成長が開始され、この領域は恐らく極度のナノ層性質も有するはずであるが、これは、非常に高解像度の検査HRTEM(この検査では利用できなかった)を用いなければ検出できないものである。
【0072】
3.HIPIMSによって堆積されたアモルファスの最上層。
【0073】
このポイントにおける、接合層S1の柱状成長から微粒子の中間層S2への遷移が、真空アーク蒸発源Q1とマグネトロン放電源Q2のハイブリッド動作によって生じることに留意されたい。この点において、Si、B、Cなど成分の集積化が、AlTiN層における粒子の精細化をもたらす。しかし、SiBNC基部上の最上層S3は、アモルファス構造を伴って成長する傾向がある。
【0074】
中間層S2の層成分の組成物は、蒸発材料M1及び放電材料M2といった一定の材料、一定のバイアス電圧、陰極真空アーク蒸発源Q1のフランジ及びマグネトロン放電源Q2のフランジに付けられた様々な材料源の層を形成する粒子の流れの比による一定の他のプロセス・パラメータに伴って様々であり得る。これは、CVAE蒸発器の電流、HIPIMSターゲットにおける電力、又は単に平面内の様々な動作中の供給源の数でもあり得る。
【0075】
マグネトロン放電源M2が非常に大きな電力で動作する場合、及び/又はその複数が1つの平面に設置される場合、これらの供給源によって生成される層成分が支配的になり得る。
【0076】
さらに、チャンバの中の陰極真空アーク蒸発源Q1及びマグネトロン放電源Q2の機構によって影響され得るナノ層構造に応じて、個々の層の厚さが変化する可能性がある。したがって、より複雑な層を製造するために、複数の材料M1及びM2を、もちろん様々な供給源上に用いることができる。
【0077】
さらに、少なくともタイプQ1の供給源とタイプQ2の供給源を時間内に交互に動作させることは、材料M1及びM2の全体の層の中で一体化した部分を設定する方法である。
【0078】
それぞれの異なる材料を用いる複数の供給源Q1及びQ2が存在するとき、供給源Q1及びQ2を動作させる時間の順序化も起こり得る。
【0079】
この点において、試行動作中に、様々な手法が有利であると判明している。それらを以下で簡単に説明する。既に言及した
図1bは、2つのそれぞれの陰極真空蒸着源Q1及び2つのマグネトロン放電源Q2が備わっている4つのフランジを有するプロセス・チャンバ2を示しており、相互にコーティングするのを防止するために、供給源Q1、Q2の位置は、シャッタSC11、SC12、SC21、SC22によって遮蔽することができる。
【0080】
接合層S1を製造する第1の方法の実施例では、シャッタSC11、SC12は、少なくとも1つの陰極真空アーク蒸発源Q1(CVAE)の前で開かれる。マグネトロン放電源Q2の前のシャッタSC21、SC22は、この供給源のコーティングを防止するために閉まっている。中間層S2を堆積する段階では、マグネトロン放電源Q2(HIPIMS)の前のシャッタSC21、SC22は、同様に開いている。最上層S3を堆積する段階では、シャッタSC11、SC12は、陰極真空アーク蒸発源Q1の前では閉められ、マグネトロン放電源Q2の前では開かれる。
【0081】
図1cの第2の方法の実施例では、全くシャッタのない構成が示されており、すなわち矢印PSによる接合層S1を堆積する段階を通じて、マグネトロン放電源Q2が動作していないとき、マグネトロン放電源Q2の表面が、陰極真空アーク蒸発源Q1により、接合層S1の層材料M1で数10nmから数100nmにコーティングされる。これは、例えば実施例の実施例1及び2で1番目に挙げられたAlTiN層構造に当てはまる。マグネトロン放電源Q2に与えられたこの層は、層S1からS2の間の2つの別々のコーティング源の並行運転により、層特性(例えば構造)の理想的な傾斜が起こるように、マグネトロン放電源Q2(HIPIMS)の開始に際して最初に除去される。層S2の堆積がなければ、S1とS3の間の理想的な遷移がもたらされる。
【0082】
図1dによる第3の方法の実施例には、接合層S1が堆積されるとき、マグネトロン放電源Q2の前でゆっくりと開くシャッタSC21、SC22を有する構成が示されている。シャッタSC21、SC22の形状と、接合層S1の層堆積中にシャッタが開く時間の長さとにより、陰極真空アーク蒸発源Q1によって生成される層材料の堆積の厚さが決まり、したがって、層特性(例えば構造)の傾斜は、このように別々のコーティング・プロセスの並行運転及びコーティング成分によって設定することができる。これは、例えば前述の実施例1及び2で下部に示されたAlTiN層構造の場合である。層S2の堆積がなければ、S1とS3の間の理想的な遷移がもたらされる。
【0083】
例えば2つといった複数のフランジがチャンバの中に配置される場合には、接合層S1は、もちろん1つの層材料に限定されない。例えば1つのフランジ上にAlTi陰極を設置して、別のフランジ上にTiSi陰極を設置することができる。次いで、対応する多層又はナノ層の層構造を堆積することができる。中間層S2にも同じことが当てはまる。
【0084】
特別な場合には、層S1を省略することによってハイブリッド方法を直接起動することができ、その結果、層順序S2/S3が生成される。次いで、それらを、多重形式で互いに積み重ねることができる。
【0085】
HIPIMSスパッタ源向けの好ましい説明されたマグネトロン構成は、前述のように不平衡マグネトロン(UBM磁界)である。しかし、必ずしもこれを使用する必要はなく、もちろん平衡マグネトロン(BM磁界)も使用することができる。さらに、閉じた磁界の構成が、特に相対して配置された2つのマグネトロンの双極の動作の場合に説明されていた。しかし、閉じた磁界のモードで動作しない構成も、制約なしで用いられ得る。
【0086】
HIPIMSマグネトロンの、中間層S2及び最上層S3を堆積する段階のさらなる特別な動作モードには、マグネトロンに対する同一のパルスで同時に開始するもの、マグネトロンに対する別々の段階を同時に開始するもの、又は同一若しくは異なるパルスに時間変位されて開始するものがある。
【0087】
すべての通常のプロセスが、主として一定の値を有する直流、小電流値と大電流値の間のパルス状の直流、大電流パルシングなどの供給源Q1を使用するCVAEの動作モード向けに適切である。
【0088】
この点において、マグネトロンのHIPIMS動作は、別々の動作モードを用いることができる本出願の構成の範囲内で理解されるべきである。ターゲットにおけるさらなる放電は、プラズマ放電(例えばターゲットにおける、放電するためのプラスの電圧)を制御するため、又は大電流パルシングの前に予備イオン化を設定するために、パルスのオフ期間で動作させることができる。追加の放電は、例えばターゲットの汚染を最小化するための、小さな放電電力でのパルスのオフ期間におけるスパッタリングにも役立つことができる。この追加のスパッタリングは、直流放電、NF、MF及びRFによって可能であり、この点において、好ましくは、実際の大電流パルシングを伴うMFの重ね合わせの動作モードが用いられる。
【0089】
原子化するべき円形、円筒状又は長方形の表面(ターゲット、陰極)が利用可能であるように、供給源Q1及びQ2の構造の形態は様々に選択することができ、この点においてさらなる形態が考えられる。円筒状のターゲットが使用される場合、供給源Q1及びQ2は、理想的なターゲット利用を確実にするために、回転動作をすることができる。
【0090】
CVAE源Q1及びHIPIMS放電用のQ2の機構及び数は、本発明による目的を実現することができる程度に必要に応じて選択することができる。例えば、供給源は互いに相対する必要はなく、互いの間に任意の所望の角度を有することができる。
【0091】
この点において、フィルタリングされたアーク源も、供給源Q1として使用することができる。フィルタを有するHIPIMS放電源Q2を提供することも技術的に実現可能である。
【0092】
例えばCVAEのQ1を使用して最初にCr/CrN層S1が堆積されることで、硬質炭素層も製造することができる。S2が、CrによるQ1の動作及び黒鉛ターゲットによるQ2の動作として、これに続く。この動作モードは時間中断も可能である。Cr
xC
y部分を有するS2が生成される。次いで、供給源Q2により、これの上にa−Cタイプの硬質炭素層が堆積される。この段階を通じて、PA−CVDプロセスとの組合せも考えることができ、これは、a−C:H層が生成されるように、ガス含有炭化水素によって層部分を供給する。
【0093】
本発明による基板に対して、接合層の厚さは、この点において好ましくは0〜50,000nmであり、中間層(S2)の厚さは、好ましくは50nm〜10,000nmであり、最上層(S3)の厚さは、好ましくは10nm〜10,000nmである。