(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アニオン性化合物(B)及びエステル化合物(C)の合計の含有量が、重合性化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下である、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
アニオン性化合物(B)の含有量が、アニオン性化合物(B)及びエステル化合物(C)の合計量100質量部に対して、5質量部以上95質量部以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のコーティング組成物は、活性エネルギー線硬化性の反応性基を有する重合性化合物(A)と、アニオン性化合物(B)と、水酸基を3以上有する多価アルコールと1価カルボン酸とのエステル化合物(C)とを含有する。
また、前記アニオン性化合物(B)は、式(1)で表される化合物であり、前記エステル化合物(C)の水酸基価は0mgKOH/g以上25mgKOH/g以下である。
【化2】
本発明のコーティング組成物によれば、特定のアニオン性化合物(B)と、特定のエステル化合物(C)とを組み合わせて使用することで、指紋が付着しても目立ちにくく、たとえ付着したとしても拭取り易く、更には、タッチしたときの操作性が良好であるという効果が得られる。
以上のような効果が得られる理由は定かではないが以下のように考えられる。
アニオン性化合物(B)は、特定構造の親水基と疎水基を有するため、指紋付着の原因成分である水分及び皮脂成分との親和性を高める機能を有する。一方、エステル化合物(C)は、指紋の皮脂成分との親和性を高めるとともに表面の滑り性を高めて優れた操作性を得ることができる。また、アニオン性化合物(B)とエステル化合物(C)との親和性が高いので、両化合物が硬化膜中で均一にミクロ相分離し、相乗効果が発揮されると考えられる。更に、指紋付着の原因成分と硬化膜との親和性が均一に向上することから、均一に拭取りやすくなるものと考えられる。但し、上記は推定であり、本願発明はこれらの作用機構に限定されない。
以下各成分について詳細に述べる。
【0010】
[重合性化合物(A)]
本発明における重合性化合物(A)(以下「化合物(A)」ともいう)とは、活性エネルギー線硬化性の反応性基を有するものをいう。化合物(A)は、硬化性及び安全性の観点から、非イオン性であることが好ましい。
なお、本明細書において、「活性エネルギー線硬化性の反応性基」とは、紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射により直接、又は光重合開始剤の作用で重合が進行し硬化反応を生じる官能基を意味する。
【0011】
活性エネルギー線の硬化性の反応性基としては、例えば、エチレン性二重結合を有する官能基が挙げられ、具体的にはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等を挙げることができる。これらの中では、反応性の高さの観点から、好ましくはアクリロイル基及びメタクリロイル基、より好ましくはアクリロイル基である。
化合物(A)の反応性基の数は、硬化性向上の観点から、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上であり、また、入手容易性及び製造容易性の観点から、好ましくは15個以下、より好ましくは8個以下、更に好ましくは6個以下である。また、前記反応性基の数は、硬化性及び拭取性の観点からは、更に好ましくは4個以上、更により好ましくは5個以上である。
【0012】
反応性基を2個以上有する化合物(A)としては、例えば、水酸基を2個以上有する化合物(以下、「多価アルコールa」ともいう)と(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、反応性基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、硬化性、硬化膜の強度及び取扱い容易性の観点から、好ましくは多価アルコールaと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物であり、反応性の観点から、より好ましくは多価アルコールaとアクリル酸とのエステル化合物である。
多価アルコールaが有する水酸基の数は、コーティング組成物の硬化性向上の観点から、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上であり、また、入手容易性及び重合性化合物の製造容易性の観点から、好ましくは15個以下、より好ましくは8個以下、更に好ましくは6個以下である。また、前記水酸基の数は、硬化性及び拭取性の観点からは、更に好ましくは4個以上、更により好ましくは5個以上である。
前記多価アルコールaとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、イノシトール、ソルビトール等が挙げられ、反応性向上の観点から、好ましくはトリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールから選ばれる1種以上、より好ましくはトリメチロールプロパン及びジペンタエリスリトールから選ばれる1種以上であり、硬化性及び拭取性の観点から、更に好ましくはジペンタエリスリトールである。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」から選ばれる1種以上を意味し、他の同様の記載も同様の意味である。
【0013】
反応性基を2個有する化合物(A)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、及びこれらのアルキレンオキサイド変性物、ラクトン変性物、(ポリ)エステル変性物等が挙げられる。
反応性基を3個有する化合物(A)としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、及びこれらのアルキレンオキサイド変性物、ラクトン変性物、(ポリ)エステル変性物等が挙げられる。
反応性基を4個有する化合物(A)としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びこれらのアルキレンオキサイド変性物、ラクトン変性物、(ポリ)エステル変性物等が挙げられる。
反応性基を5個有する化合物(A)としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びそのアルキレンオキサイド変性物、ラクトン変性物、(ポリ)エステル変性物等が挙げられる。
反応性基を6個有する化合物(A)としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのアルキレンオキサイド変性物、ラクトン変性物、(ポリ)エステル変性物等が挙げられる。
これらの中でも、化合物(A)及び硬化膜の製造容易性の観点から、好ましくはトリメチロールプロパントリアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートから選ばれる1種以上、拭取性の観点から、より好ましくはジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである。
【0014】
前記、アルキレンオキサイド変性物としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物を(メタ)アクリル酸でエステル化したものが好ましく挙げられる。この場合、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの平均付加モル数は0を超え20以下が好ましい。
ラクトン変性物としては、トリメチロールプロパンやジペンタエリスリトール等の多価アルコールの、ε−カプロラクトン等のラクトン付加物を(メタ)アクリル酸でエステル化したものが好ましく挙げられる。
(ポリ)エステル変性物としては、トリメチロールプロパンやジペンタエリスリトール等の多価アルコールとポリエステルとの縮合物を(メタ)アクリル酸でエステル化したものが好ましく挙げられる。この場合(ポリ)エステルは、マレイン酸等の脂肪族ジカルボン酸と、ジエチレングリコール等の脂肪族ジオールとの(ポリ)エステルが好ましい。なお、(ポリ)エステルとはモノエステル及びポリエステルから選ばれる1種以上を意味する。
【0015】
[アニオン性化合物(B)]
アニオン性化合物(B)(以下、「化合物(B)」ともいう)は、視認性、操作性、及び拭取性の観点から、下記式(1)で示される化合物である。
【化3】
式中、R
1及びR
2は同一でも異なっていてもよい炭素数1以上25以下の炭化水素基、M
+は1価のカチオンを示す。
【0016】
R
1及びR
2の炭素数は、視認性、操作性、及び拭取性の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上であり、また、同様の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、更により好ましくは12以下である。また、前記炭素数は、優れた拭取性の観点からは、更により好ましくは10以下、更により好ましくは8以下であり、更により好ましくは8である。
R
1及びR
2は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれであってもよいが、視認性、操作性、及び拭取性の観点から、好ましくは脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和のいずれであってもよいが、好ましくは飽和の脂肪族炭化水素基である。R
1及びR
2の炭化水素基は、分岐又は直鎖のいずれであってもよいが、視認性、操作性、及び拭取性の観点から、好ましくは分岐であり、より好ましくは分岐の脂肪族炭化水素基である。
R
1又はR
2の炭化水素基が分岐構造を有することで、コーティング組成物が形成する硬化膜中でのアニオン性化合物(B)の均一性がより高まり、上記効果が更に向上すると考えられる。
【0017】
M
+は、例えば、金属カチオン、アンモニウムイオンが挙げられる。
金属カチオンの金属としては、例えば、アルカリ金属、銅、銀等の遷移金属が挙げられる。これらの中でも、水分及び皮脂成分との親和性、並びに化合物(B)の製造及び入手容易性の観点から、好ましくはアルカリ金属である。アルカリ金属としては、同様の観点から、好ましくはリチウム、ナトリウム又はカリウム、より好ましくはナトリウムである。
アンモニウムイオンとしては、NH
4+、アルキルアンモニウム等が挙げられる。
M
+は、水分及び皮脂成分との親和性の観点から、好ましくはナトリウムイオン及びNH
4+から選ばれる少なくとも1種以上であり、製造容易性の観点からより好ましくはナトリウムイオンである。
【0018】
化合物(B)としては、例えば、ジオクチルスルホコハク酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸塩、ジ(6−メチルヘプチル)スルホコハク酸塩、オクチルデシルスルホコハク酸塩、ジデシルスルホコハク酸塩、ジイソデシルスルホコハク酸塩、ジドデシルスルホコハク酸塩、ジイソドデシルスルホコハク酸塩、ジトリデシルスルホコハク酸塩、ジイソトリデシルスルホコハク酸塩、ジテトラデシルスルホコハク酸塩、ジイソテトラデシルスルホコハク酸塩、ジオクタデシルスルホコハク酸塩、ジイソオクタデシルスルホコハク酸塩、ジエイコシルスルホコハク酸塩、ジイソエイコシルスルホコハク酸塩が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、水分、皮脂成分及び化合物(C)との親和性の観点から、好ましくは、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ジデシルスルホコハク酸塩、ジイソデシルスルホコハク酸塩、ジトリデシルスルホコハク酸塩、ジイソトリデシルスルホコハク酸塩、ジテトラデシルスルホコハク酸塩、及びジイソテトラデシルスルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種、より好ましくは、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ジデシルスルホコハク酸塩、及びジイソトリデシルスルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種、更に好ましくは、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸塩及びジイソトリデシルスルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種、更により好ましくは、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸塩である。
【0020】
[エステル化合物(C)]
エステル化合物(C)(以下、「化合物(C)」ともいう)は、視認性、操作性、及び拭取性の観点から、水酸基を3個以上有する多価アルコールと1価カルボン酸とのエステル化合物である。
化合物(C)の水酸基価は、視認性、操作性、及び拭取性の観点から、0mgKOH/g以上25mgKOH/g以下である。
【0021】
化合物(C)の由来となる多価アルコール(以下、「多価アルコールc」ともいう)の水酸基数は、視認性、操作性、及び拭取性の観点から、好ましくは8個以下、より好ましくは6個以下、更に好ましくは4個以下、また、同様の観点から、好ましくは3個以上であり、更に好ましくは3個又は4個である。前記水酸基数は、優れた拭取り性の観点からは、更により好ましくは4個である。
多価アルコールcとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、イノシトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの中でも、視認性、操作性及び拭取性の観点から、好ましくはグリセリン、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールから選ばれる少なくとも1種であり、優れた拭取り性の観点から、より好ましくはペンタエリスリトールである。
化合物(C)の由来となる1価カルボン酸(以下、単に「カルボン酸」ともいう)の炭素数は、視認性、操作性及び拭取性の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、また、視認性及び拭取性の観点から、好ましくは28以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。
カルボン酸は、拭取性の観点から、不飽和結合を有することが好ましい。カルボン酸に含まれる不飽和結合数は、拭取性の観点から、好ましくは1個以上であり、また、入手の容易性の観点から、好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下であり、また、更に好ましくは1個である。不飽和カルボン酸としては、優れた拭取性の観点から、更により好ましくはオレイン酸である。カルボン酸が不飽和基を有することで、皮脂成分との親和性がより向上するため、上記効果が更に向上すると考えられる。
【0022】
化合物(C)としては、例えば、グリセリントリカプリレート、グリセリントリステアレート、グリセリントリオレート、トリメチロールプロパントリカプリレート、トリメチロールプロパントリステアレート、トリメチロールプロパントリオレート、トリメチロールプロパントリラウレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラオレート等が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは、視認性、操作性、及び拭取性の観点から、グリセリントリステアレート、トリメチロールプロパントリオレート、トリメチロールプロパントリカプリレート、トリメチロールプロパントリラウレート、トリメチロールプロパントリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、及びペンタエリスリトールテトラパルミテートから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、優れた拭取性の観点から、トリメチロールプロパントリオレート又はペンタエリスリトールテトラステアレートであり、更に好ましくはトリメチロールプロパントリオレートである。
【0023】
化合物(C)の水酸基価は、視認性、操作性、及び拭取性の観点から、25mgKOH/g以下であり、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下、更に好ましくは7mgKOH/g以下、更により好ましくは5mgKOH/g以下であり、また、0mgKOH/g以上であり、製造容易性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上である。
水酸基価の測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0024】
化合物(C)は、好ましくは多価アルコールcと、カルボン酸とのエステル化(脱水)反応等により得ることができる。当該エステル化反応は、常法に従って適宜行うことができる。エステル化反応の温度条件は、反応促進の観点から、好ましくは110℃以上であり、化合物の分解及び着色抑制の観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは260℃以下である。当該エステル化反応では、酸化錫等のエステル化触媒を用いてもよい。また、当該エステル化反応は、着色を抑制する観点から、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、反応促進の観点から、窒素を吹き込みながら行うことがより好ましい。
【0025】
[任意成分]
コーティング組成物は、上記の成分の他、重合開始剤、有機溶媒、帯電防止剤、ジイソシアネート化合物等の硬化剤、顔料又は染料、ガラスビーズ、ポリマービーズ、無機ビーズ等のビーズ類、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填材類、レベリング剤等の表面調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、分散剤等の添加剤等を含有することができる。
【0026】
<重合開始剤>
重合開始剤は、好ましくは、紫外線や電子線等の活性エネルギー線照射によりラジカルやカチオンを発生する光重合開始剤である。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルシオン類化合物類、ジスルフィド化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物等が挙げられ、より具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチルー1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジルメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン等が挙げられる。これらの中でも、硬化性向上の観点から、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
【0027】
<有機溶媒>
コーティング組成物は、有機溶媒を含んでもよい。
有機溶媒の沸点は、取扱い性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上であり、また、硬化膜の製造容易性の観点から、好ましくは220℃以下、より好ましくは140℃以下である。
有機溶媒の溶解度パラメータ(C.M.HansenによるSP値、単位:cal/cm
3)は、各成分の溶解性向上の観点から、好ましくは8.0以上、より好ましくは8.5以上であり、好ましくは15.0以下である。
有機溶媒(SP値)としては、メタノール(14.3)、エタノール(12.9)、イソプロピルアルコール(11.5)、メトキシエタノール、エトキシエタノール、メトキシカルビトール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール(12.0)等のアルコール類;アセトン(9.8)、メチルエチルケトン(9.3)、メチルイソブチルケトン(8.6)等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン溶媒;ジエチルエーテル等のエーテル類;トルエン(8.9)、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸イソプロピル(8.5)、酢酸エチル(9.1)等のエステル類;メチルピロリドン、ジメチルスルフォキシド等が挙げられる。
これらの中でも、コーティング組成物の均一性及び塗工性向上の観点から、好ましくは、アルコール類、ケトン類又はそれらの混合物であり、より好ましくはイソプロピルアルコール(IPA)、n−ブタノール、メチルエチルケトン(MEK)又はそれらの混合物であり、更に好ましくはIPAである。
【0028】
本発明のコーティング組成物における各成分の含有量は、以下のとおりである。
化合物(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対する化合物(A)の含有量は、硬化性、透明性、視認性、操作性及び拭取性の観点から、好ましくは80質量部以上、より好ましくは90質量部以上、更に好ましくは95質量部以上、更により好ましくは97質量部以上であり、また、視認性、操作性及び拭取性の観点から、好ましくは99質量部以下、より好ましくは98質量部以下である。
化合物(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対する化合物(B)の含有量は、視認性、操作性及び拭取性の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.6質量部以上、更により好ましくは0.9質量部以上であり、また、同様の観点から、好ましくは3.5質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、更に好ましくは1.8質量部以下であり、優れた操作性の観点から、更により好ましくは1.2質量部以下である。
化合物(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対する化合物(C)の含有量は、視認性、操作性、及び拭取性の観点から、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上、更に好ましくは0.9質量部以上であり、また、同様の観点から、好ましくは3.5質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、更に好ましくは1.8質量部以下、更により好ましくは1.2質量部以下である。
化合物(B)及び(C)の合計100質量部に対する化合物(B)の含有量は、視認性、操作性、及び拭取性の観点から、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、更により好ましくは40質量部以上であり、また、同様の観点から、好ましくは95質量部以下、より好ましくは80質量部以下であり、優れた操作性及び拭取性の観点から、更に好ましくは70質量部以下、更により好ましくは60質量部以下である。
化合物(A)100質量部に対する化合物(B)及び(C)の合計の含有量は、視認性、操作性、及び拭取性の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.9質量部以上、更により好ましくは1.4質量部以上、更により好ましくは1.8質量部以上であり、また、同様の観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下、更により好ましくは2.5質量部以下である。
【0029】
化合物(A)100質量部に対する重合開始剤の含有量は、硬化性の観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは4質量部以上であり、また、硬化膜の透明性の観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。
コーティング組成物中の有機溶媒の含有量は、コーティング組成物の均一性及び塗工性向上の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、また、硬化膜の生産性の観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。
コーティング組成物中の化合物(A)、(B)及び(C)の合計量は、硬化膜の生産性の観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、また、コーティング組成物の均一性及び塗工性向上の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0030】
[コーティング組成物用防汚剤]
アニオン性化合物(B)及びエステル化合物(C)は、コーティング組成物に配合するコーティング組成物用防汚剤の成分として用いられる。すなわち、前記コーティング組成物用防汚剤(以下、「本発明の防汚剤」ともいう)は、化合物(B)及び化合物(C)を含有する。
本発明の防汚剤における各成分の含有量は、上述のコーティング組成物における化合物(B)及び化合物(C)の合計100質量部に対する化合物(B)の含有量で示した範囲が好ましい。
本発明の防汚剤は、有機溶媒を含んでも良い。好ましい有機溶媒は、上述のコーティング組成物における有機溶媒と同じである。
本発明の防汚剤における有機溶媒の含有量は、均一性の観点から、好ましくは20質量%以上であり、また、コーティング組成物の配合設計の自由度の観点から、好ましくは80質量%以下である。
なお本発明のコーティング組成物及びコーティング組成物用防汚剤は、上記成分を配合して均一に混合することで得られる。
【0031】
[コーティング膜]
本発明のコーティング膜は、例えば、前記コーティング組成物を、基材に塗工し、前記コーティング膜に活性エネルギー線を照射する方法により容易に形成することができる。なお、基材に対してコーティング組成物を塗工した後、必要に応じて乾燥を行ってもよい。
コーティング組成物を塗布する基材としては、例えば、ガラス類、トリアセテートセルロース(TAC)ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0032】
コーティング組成物を塗工する方法としては、例えば、バーコート法、ロールコーター法、スクリーン法、フレキソ法、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法等が挙げられる。また、コーティング後の乾燥条件としては、例えば、乾燥温度50〜150℃、乾燥時間0.5〜5分間の範囲内で行うことができる。
【0033】
照射する活性エネルギー線としては、簡易な設備で照射を行える観点から紫外線が好ましい。照射線量としては、使用する活性エネルギー線によっても異なるが、例えば、紫外線を照射する場合には、コーティング膜を効率よく製造する観点及び塗布対象である基材の損傷を抑制する観点から、積算照射量は10〜500mJ/cm
2とすることが好ましい。
【0034】
本発明のコーティング膜は、上記基材上に形成される。コーティング膜及び基材を備えるフィルムは、タッチパネルディスプレイに貼り付けて使用することができる。
タッチパネルとしては、抵抗膜方式又は静電容量方式のタッチパネルが挙げられる。抵抗膜方式のタッチパネルとしては、例えば、マトリックス抵抗膜方式のタッチパネルが挙げられる。静電容量方式のタッチパネルとしては、例えば、Wire Sensor方式またはITO Grid方式の投影型静電容量方式タッチパネルが挙げられる。
【実施例】
【0035】
本実施例において、各種測定及び評価は、以下の方法により行った。
【0036】
(1)硬化膜の作製
水平に設置したセルローストリアセテート(TAC)膜(富士フイルム株式会社製「FT TD80UL M」(幅11cm×長さ11cm×厚さ80μm)に対して、コーティング組成物1mLを塗布し、ワイヤーバーNo.8を用いて均一な塗膜を得、温風乾燥機(ESPEC社製「PH−202」)にて70℃で1分間乾燥させた。乾燥後の塗膜をセットしたイナートボックスを窒素置換し、UV照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン(株)製「Light Hammer10」)にて、照射強度250mW/cm
2で、200mJ/cm
2のUV照射を行い、硬化膜を得た。
【0037】
(2)視認性の評価
上記「硬化膜の作製」で作成した硬化膜(2cm×10cm)に、人差し指を介して鼻皮脂を付着させ、10人の目視観察により、指紋の見えやすさを判定し、指紋が見えないもしくは指紋が見えにくいと判定した人の数により、以下の基準で視認性の評価とした。
AA:10人
A:9人
B:6人以上8人以下
C:5人以下
【0038】
(3)操作性の評価
上記「硬化膜の作製」で作成した硬化膜を、被験者10人がそれぞれ指でなぞって滑りを判定し、滑りがよく操作性が良好と判定した人の数により、以下の基準で操作性の評価とした。
AA:10人
A:9人
B:6人以上8人以下
C:5人以下
【0039】
(4)拭取性の評価
上記「硬化膜の作製」で作成した硬化膜に、人差し指を介して鼻皮脂を付着させ、テスター産業株式会社製「AB−301 COLOR FASTNESS RUBBING TESTER」の試験片台に設置した。摩擦子にティッシュペーパー10枚を巻き付け、荷重:150g、スピード目盛:40、移動距離:40mmに設定して試験片台を往復させ、拭取りを行った。100倍の光学顕微鏡にて観察し、硬化膜上の鼻皮脂が視認されなくなるまでの拭取り回数を測定した。回数が少ないほど、拭取り性が良好である。
【0040】
(5)酸価の測定
「JIS K 0070−1992 3.1 中和滴定法」に記載の方法に従って、測定した。
【0041】
(6)水酸基価の測定
「JIS K 0070−1992 7.1 中和滴定法」に記載の方法に従って、測定した。水酸基価の算出に用いる酸価は、前記方法による測定結果を用いた。
【0042】
合成例1 エステル化合物C−1の合成
窒素導入管及び脱水管を取り付けた容量500mLのガラス製フラスコに、アルコールとしてトリメチロールプロパン40.2g(0.30モル)と、カルボン酸としてオレイン酸247.2g(0.89モル)とを仕込み、窒素を吹き込みながらフラスコ内を235℃で脱水しながら撹拌し、酸価が1.0mgKOH/g以下になるまでエステル化反応を行った。濾過助剤(昭和化学工業株式会社製「ラヂオライト#700」)及び濾紙(アドバンテック東洋株式会社製「No.2」)を用い、反応物を70〜80℃にて減圧濾過し、エステル化合物C−1を得た。水酸基価を測定し表1に示した。
【0043】
合成例2〜5,8 エステル化合物C−2〜C−5及びC−8の合成
アルコール及び脂肪酸を表1記載の通りに代えた以外は、合成例1と同様の方法で、エステル化合物C−2〜C−5及びC−8を得た。水酸基価を測定し表1に示した。
【0044】
合成例6 エステル化合物C−6の合成
窒素導入管及び脱水管を取り付けた容量500mLのガラス製フラスコに、アルコールとしてペンタエリスリトール40.9g(0.30モル)と、カルボン酸としてステアリン酸326.4g(1.14モル)と、酸化錫(和光純薬工業株式会社製 試薬)0.07gとを仕込み、窒素を吹き込みながらフラスコ内を235℃で脱水しながら撹拌し、酸価が1.0mgKOH/g以下になるまでエステル化反応を行った。フラスコ内を90℃まで冷却し、85質量%燐酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)0.138gを加えて90℃で30分間撹拌し、更に協和化学工業株式会社「キョーワード 600S」3.67g加えて90℃で30分間撹拌した。濾過助剤(昭和化学工業株式会社製「ラヂオライト#700」)及び濾紙(アドバンテック東洋株式会社製「No.2」)を用い、反応物を80〜90℃にて減圧濾過し、エステル化合物C−6を得た。水酸基価を測定し表1に示した。
【0045】
合成例7 エステル化合物C−7の合成
アルコール及び脂肪酸を表1記載の通りに代え、「キョーワード600」3.67gを3.34gに代えた以外は、合成例3と同様の方法で、エステル化合物C−7を得た。水酸基価を測定し表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
なお、上記合成例に用いた原料の詳細は、下記の通りである。
・トリメチロールプロパン:広栄パーストープ株式会社製「TMP」
・グリセリン:花王株式会社製「精製グリセリン」
・ペンタエリスリトール:広栄化学株式会社製「ペンタリット(工業用)」
・オレイン酸:花王株式会社製「ルナック O−A」
・カプリン酸:花王株式会社製「ルナック 10−98」
・ラウリン酸:花王株式会社製「ルナック L−98」
・パルミチン酸:花王株式会社製「ルナック P−95」
・ステアリン酸:花王株式会社製「ルナック S−98」
【0048】
実施例1〜18、比較例1〜10(コーティング組成物の調製と評価)
表2に記載のコーティング組成物の配合組成に従って、各成分を均一に混合し、コーティング組成物を調製した。得られたコーティング組成物を用いて硬化膜を作成し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
なお、上記コーティング組成物の原料の詳細は、下記の通りである。
A−1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製「KAYARAD DPHA」)
A−2:トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬株式会社製「KAYARAD TMPTA」)
B−1:ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム:70質量%IPA溶液
B−2:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム:70質量%IPA溶液
B−3:ジデシルスルホコハク酸ナトリウム:70質量%IPA溶液
B−4:ジイソトリデシルスルホコハク酸ナトリウム:70質量%IPA溶液
B−5:ジミリスチルスルホコハク酸ナトリウム:70質量%IPA溶液
B−6:アルカンスルホン酸ナトリウム(バイエルAG社製「メルソラート H−95」、アルキル基の炭素数10〜18)
C−1〜C−8:合成例1〜8
C−9:グリセリンモノステアレート
C−10:ペンタエリスリトールモノステアレート(花王株式会社製「エキセパール PE−MS」)
C−11:ポリエチレングリコールジステアレート(花王株式会社製「エマノーン 3299V」)
C−12:ポリオキシエチレン(25)硬化ひまし油(花王株式会社製「エマノーン CH−25」)
開始剤:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬工業株式会社製)
溶媒:2−プロパノール(和光純薬工業株式会社製)
【0051】
以上の実施例1〜18の結果より、本願発明のコーティング組成物は、視認性、操作性、拭取性のいずれも良好であることが理解できる。比較例1〜10の結果によれば、上記特性のいずれか、あるいは全てが不十分な特性であることが理解できる。