(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339855
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】エアレスタイヤ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60B 9/04 20060101AFI20180528BHJP
B60C 7/00 20060101ALI20180528BHJP
B29D 30/00 20060101ALI20180528BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20180528BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20180528BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
B60B9/04
B60C7/00 H
B29D30/00
B29C39/10
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-100769(P2014-100769)
(22)【出願日】2014年5月14日
(65)【公開番号】特開2015-217717(P2015-217717A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩村 和光
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 信
【審査官】
岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−507311(JP,A)
【文献】
特開2005−014229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 9/04
B60C 7/00
B29D 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面を有する円筒状のトレッドリングと、前記トレッドリングの半径方向内側に配されかつ車軸に固定されるハブと、前記トレッドリングと前記ハブとを連結するスポークとを備えたエアレスタイヤであって、
前記トレッドリングは、前記接地面から連続し、リング側面を形成する側壁を有し、
前記側壁は、前記トレッドリングが単体で水平面上に横置されたとき、前記水平面と当接し、リング軸が前記水平面に垂直な方向に向くように、前記トレッドリングを支持する支持部を有し、
前記支持部は、タイヤ周方向に断続的に複数設けられていることを特徴とするエアレスタイヤ。
【請求項2】
接地面を有する円筒状のトレッドリングと、前記トレッドリングの半径方向内側に配されかつ車軸に固定されるハブと、前記トレッドリングと前記ハブとを連結するスポークとを備えたエアレスタイヤであって、
前記トレッドリングは、前記接地面から連続し、リング側面を形成する側壁を有し、
前記側壁は、前記トレッドリングが単体で水平面上に横置されたとき、前記水平面と当接し、リング軸が前記水平面に垂直な方向に向くように、前記トレッドリングを支持する支持部を有し、
前記支持部には、前記トレッドリングを加硫成形するための金型の分割面からはみ出したオーバースピューが、タイヤ周方向に均一に形成されていることを特徴とするエアレスタイヤ。
【請求項3】
前記支持部は、タイヤ周方向に連続した平面である請求項1又は2に記載のエアレスタイヤ。
【請求項4】
前記側壁は、前記支持部からタイヤ軸方向の内側に陥没する凹状の文字又は模様を有する請求項1乃至3のいずれかに記載のエアレスタイヤ。
【請求項5】
前記側壁の正面視において、前記支持部の面積は、前記側壁の面積の10%〜100%である請求項1乃至4のいずれかに記載のエアレスタイヤ。
【請求項6】
接地面を有する円筒状のトレッドリングと、前記トレッドリングの半径方向内側に配されかつ車軸に固定されるハブと、前記トレッドリングと前記ハブとを連結するスポークとを備えたエアレスタイヤの製造方法であって、
前記トレッドリングは、前記接地面から連続し、リング側面を形成する側壁を有し、
前記トレッドリングの側壁に、前記トレッドリングが単体で水平面上に横置されたとき、前記水平面と当接し、リング軸が前記水平面に垂直な方向に向くように、前記トレッドリングを支持する支持部をタイヤ周方向に断続的に複数形成する工程と、
前記トレッドリング及び前記ハブを保持するための水平面を有し、前記スポークを成形するためのキャビティ空間を区画する金型を準備する工程と、
前記金型の前記水平面に、前記トレッドリング及び前記ハブを横置する工程と、
前記金型の前記キャビティ空間に前記スポークを形成する材料を注入して硬化させる工程とを含むことを特徴とするエアレスタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニフォミティを向上しうるエアレスタイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアレスタイヤとして、接地面を有する円筒状のトレッドリングと、車軸に固定されるハブとの間を、放射状に配列する複数のスポーク板部によって連結させた構造のものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
エアレスタイヤにおいても、空気入りタイヤと同様に、転動時のタイヤの振動を抑制するために、タイヤのユニフォミティの向上が望まれる。エアレスタイヤのユニフォミティを向上させるためには、トレッドリングの軸とハブの軸とが高い精度で一致していることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−260514号公報
【0005】
エアレスタイヤは、例えば、金型に設けられているキャビティ空間に、トレッドリング及びハブを配置した後、スポークを形成する樹脂材料を注入し硬化させることにより製造される。トレッドリング及びハブは、リング軸とハブ軸とを一致させるために、金型に形成されている水平面に横置きされる。
【0006】
しかしながら、トレッドリングの側壁に、スピューやタイヤのサイズ等を識別するための凸状の文字等が設けられている場合、トレッドリングが、金型の水平面に横置されたとき、上記スピューや文字等が、トレッドリングの側壁と金型の水平面との間に、周上不均一に介在する。その結果、金型の水平面に対するリング軸の傾きが垂直から外れ、リング軸とハブ軸とが一致しなくなり、ユニフォミティに影響を及ぼすおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、トレッドリングが単体で水平面に横置されたとき、水平面に対するリング軸の傾きを垂直に維持することにより、ユニフォミティを向上しうるエアレスタイヤ及びその製造方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、接地面を有する円筒状のトレッドリングと、前記トレッドリングの半径方向内側に配されかつ車軸に固定されるハブと、前記トレッドリングと前記ハブとを連結するスポークとを備えたエアレスタイヤであって、前記トレッドリングは、前記接地面から連続し、リング側面を形成する側壁を有し、前記側壁は、前記トレッドリングが単体で水平面上に横置されたとき、前記水平面と当接し、リング軸が前記水平面に垂直な方向に向くように、前記トレッドリングを支持する支持部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る前記エアレスタイヤにおいて、前記支持部は、タイヤ周方向に連続した平面であることが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記エアレスタイヤにおいて、前記支持部は、タイヤ周方向に断続的に複数設けられていることが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記エアレスタイヤにおいて、前記側壁は、前記支持部からタイヤ軸方向の内側に陥没する凹状の文字又は模様を有することが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記エアレスタイヤにおいて、前記支持部には、前記トレッドリングを加硫成形するための金型の分割面からはみ出したオーバースピューが、タイヤ周方向に均一に形成されていることが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記エアレスタイヤにおいて、前記側壁の正面視において、前記支持部の面積は、前記側壁の面積の10%〜100%であることが望ましい。
【0014】
本発明は、接地面を有する円筒状のトレッドリングと、前記トレッドリングの半径方向内側に配されかつ車軸に固定されるハブと、前記トレッドリングと前記ハブとを連結するスポークとを備えたエアレスタイヤの製造方法であって、前記トレッドリングは、前記接地面から連続し、リング側面を形成する側壁を有し、前記トレッドリングの側壁に、前記トレッドリングが単体で水平面上に横置されたとき、前記水平面と当接し、リング軸が前記水平面に垂直な方向に向くように、前記トレッドリングを支持する支持部を形成する工程と、前記トレッドリング及び前記ハブを保持するための水平面を有し、前記スポークを成形するためのキャビティ空間を区画する金型を準備する工程と、前記金型の前記水平面に、前記トレッドリング及び前記ハブを横置する工程と、前記金型の前記キャビティ空間に前記スポークを形成する材料を注入して硬化させる工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエアレスタイヤは、接地面を有するトレッドリングと、トレッドリングの半径方向内側に配されハブと、トレッドリングとハブとを連結するスポークとを備える。トレッドリングの側面を形成する側壁は、トレッドリングが単体で水平面上に横置されたとき、水平面と当接してトレッドリングを支持する支持部を有する。支持部は、トレッドリングの上記横置状態で、リング軸が水平面に垂直な方向に向くように、トレッドリングを支持する。これにより、リング軸とハブ軸、すなわちエアレスタイヤ1のタイヤ軸とが高い精度で一致することとなり、エアレスタイヤのユニフォミティが向上する。
【0016】
本発明のエアレスタイヤの製造方法は、トレッドリングの側壁に支持部を形成する工程と、スポークを成形するためのキャビティ空間を区画する金型を準備する工程と、金型にトレッドリング及びハブを横置する工程と、金型のキャビティ空間にスポークを形成する材料を注入して硬化させる工程とを含んでいる。トレッドリングの側壁に支持部を形成する工程では、トレッドリングが単体で水平面上に横置されたとき、水平面と当接する支持部が形成される。支持部は、トレッドリングの上記横置状態で、リング軸が水平面に垂直な方向に向くように、トレッドリングを支持する。金型は、トレッドリング及びハブを保持するための水平面を有し、金型の水平面にトレッドリング及びハブが横置されることにより、リング軸とハブ軸とが高い精度で一致することとなり、エアレスタイヤのユニフォミティが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のエアレスタイヤの一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】
図2のトレッドリングを水平面に横置きした状態の断面図である。
【
図4】
図2のトレッドリングの変形例を示す斜視図である。
【
図5】
図1のエアレスタイヤの製造方法における工程の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図1のエアレスタイヤのスポークの成形に用いられる注型金型の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態に係るエアレスタイヤ1の斜視図である。
図1に示されるように、本実施形態のエアレスタイヤ1は、接地面21を有する円筒状のトレッドリング2と、トレッドリング2の半径方向内側に配されかつ車軸に固定されるハブ3と、トレッドリング2とハブ3とを連結するスポーク4とを備えている。本例では、エアレスタイヤ1が乗用車用タイヤとして形成される場合が示される。
【0019】
図2は、トレッドリング2を示している。トレッドリング2は、接地面21と、接地面21から連続し、リング側面を形成する側壁22とを有している。トレッドリング2は、トレッドゴム部20の内部に、補強コード層6が埋設されている。
【0020】
トレッドゴム部20には、接地に対する摩擦力、耐摩耗性に優れるゴム組成物が好適に採用される。トレッドリング2の外周面である接地面21には、ウエット性能を付与するために、トレッド溝(図示しない)が種々なパターン形状にて形成される。
【0021】
本実施形態の補強コード層6は、第1ベルト層61と、その半径方向外側に積層される第2ベルト層62とを有している。第1ベルト層61と第2ベルト層62との間には、高高度のゴムからなる剪断層68が設けられている。補強コード層6は、第1ベルト層61のみによって形成されていてもよい。第1ベルト層61は、タイヤコードをタイヤ周方向に対して例えば10〜45度の角度で配列した1枚以上、本例では2枚のベルトプライ63、64から形成される。同様に、第2ベルト層62は、タイヤコードをタイヤ周方向に対して例えば10〜45度の角度で配列した1枚以上、本例では2枚のベルトプライ65、66から形成される。各タイヤコードが、プライ間相互で交差することにより、トレッドリング2の剛性が高められる。剪断層68の厚さは、例えば、2〜7mmが望ましい。第2ベルト層62の半径方向外側に、タイヤコードをタイヤ周方向に螺旋状に巻回したバンドプライが適宜積層されていてもよい。
【0022】
第1ベルト層61及び第2ベルト層62のタイヤコードとしては、それぞれスチールコード及び有機繊維コードが適宜使用できる。有機繊維コードの場合、強度及び弾性率が高いアラミド、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高モジュラス繊維が好適に採用しうる。
【0023】
このようなトレッドリング2は、予め、円筒状のドラム上で、第1ベルト層61形成用のシート状部材、剪断層68形成用のシート状部材、第2ベルト層62形成用のシート状部材及びトレッドゴム部20形成用のシート状部材を順次周方向に巻回して生のトレッドリングを形成し、しかる後、この生のトレッドリングを加硫金型内で加硫成形することにより形成される。
【0024】
図1に示されるように、ハブ3は、車軸に固定されるディスク部31と、ディスク部31の外周に形成された円筒部32とを有している。円筒部32の端縁には、側壁33が形成されている。側壁33は、ハブ軸A3に垂直な平面にて構成されている。ハブ3は、従来のタイヤホイールと同様に、例えば、スチール、アルミ合金、マグネシウム合金等の金属材料によって形成できる。
【0025】
スポーク4は、高分子材料による注型成形体によって形成される。スポーク4は、板状の形状をなし、タイヤ周方向に複数設けられている。
【0026】
図3は、トレッドリング2を水平面Hに横置きした状態を示している。横置きとは、トレッドリング2の側壁22が水平面Hに対向するように横姿勢で載置される態様をいう。
【0027】
トレッドリング2の側壁22には、トレッドリング2が単体で水平面H上に横置されたとき、水平面Hと当接し、トレッドリング2を支持する支持部23が形成されている。支持部23は、トレッドリング2が横置きされたとき、水平面Hと当接しうるように、トレッドリング2の軸方向の最外側に突出している。支持部23は、トレッドリング2が横置きされたとき、リング軸A2が水平面Hに垂直な方向に向くように、トレッドリング2を支持する。これにより、トレッドリング2のリング軸A2と、
図1に示されるハブ3のハブ軸A3すなわちエアレスタイヤ1のタイヤ軸A1とが高い精度で一致することとなり、エアレスタイヤ1のユニフォミティが向上する。
【0028】
図2に示されるように、本実施形態では、支持部23は、タイヤ周方向に連続した平面24である。支持部23を構成する平面24は、トレッドリング2の本体の側面であり、タイヤ赤道面に平行、すなわちリング軸A2に垂直に形成されている。支持部23がタイヤ周方向に連続していることにより、トレッドリング2の横置き姿勢がより一層安定し、トレッドリング2のリング軸A2とハブ3のハブ軸A3とをより一層高い精度で一致させることが可能となる。
【0029】
トレッドリング2の側壁22には、エアレスタイヤ1のブランドネーム、サイズ等を表示する文字25が形成されている。同様に、トレッドリング2の側壁22には、エアレスタイヤ1のデザイン性を高めるための模様(図示せず)が形成されていてもよい。
【0030】
既に述べたように、支持部23は、トレッドリング2の軸方向の最外側で平面24によって構成されているので、本実施形態で文字25等は、支持部23からタイヤ軸方向の内側に陥没する凹状に形成されている。このような文字25等は、支持部23と水平面Hとの当接になんら影響を及ぼさないので、水平面Hに対するリング軸A2の方向は垂直に維持される。
【0031】
支持部23には、トレッドリング2を加硫成形するための金型のエアーチャンネルによって吸い上げられたスピューが形成されていないことが望ましい。同様に、支持部23には、トレッドリング2を加硫成形するための金型の分割面からはみ出したオーバースピューが形成されていないことが望ましい。支持部23に上記オーバースピューが形成されている形態であっては、オーバースピューがタイヤ周方向に均一に形成されていることが望ましい。オーバースピューがタイヤ周方向に均一に形成されていることにより、水平面Hに対するリング軸A2の方向は、垂直に維持されるからである。
【0032】
側壁22の正面視において、支持部23の面積は、側壁22の面積の10%以上が望ましい。支持部23の面積が側壁22の面積の10%未満の場合、トレッドリング2が水平面H上に横置されたとき、支持部23の変形によって、水平面Hに対するリング軸A2の方向が変動するおそれがある。
【0033】
さらには、上記支持部23の面積が上記側壁22の面積の100%である、すなわち、側壁22全体が支持部23によって構成されている形態が最も望ましい。この場合、上記支持部23の変形を最小限に抑制できるので、水平面Hに対するリング軸A2の方向を高精度に維持することが可能となる。
【0034】
図4は、トレッドリング2の変形例であるトレッドリング2Aを示している。このトレッドリング2Aでは、支持部23Aは、タイヤ周方向に断続的に複数設けられている。支持部23Aは、トレッドリング2Aの本体の側面からトレッドリング2の軸方向の外側に突出している。支持部23Aは、トレッドリング2Aが横置きされたとき、リング軸A2が水平面Hに垂直な方向に向くように、トレッドリング2Aを支持する。これにより、トレッドリング2Aのリング軸A2と、ハブ3のハブ軸A3すなわちエアレスタイヤ1のタイヤ軸A1とが高い精度で一致することとなり、エアレスタイヤ1のユニフォミティが向上する。
【0035】
トレッドリング2Aでは、支持部23Aが、トレッドリング2Aの側壁22の本体から突出して形成されているので、エアレスタイヤ1のブランドネーム、サイズ等を表示する文字25A等は、トレッドリング2Aの側壁22の本体から突出して形成されていてもよい。この場合、文字25A等の突出高さは、支持部23Aの突出高さ以下である。文字25A等の突出高さが、支持部23Aの突出高さと等しい場合、文字25A等が実質的に支持部23Aを構成する。
【0036】
側壁22の正面視において、支持部23Aの面積S3は、側壁22の面積S2の10%以上が望ましい。支持部23Aの面積S3が側壁22の面積S2の10%未満の場合、トレッドリング2Aが水平面H上に横置されたとき、支持部23Aの変形によって、水平面Hに対するリング軸A2の方向が変動するおそれがある。
【0037】
図5は、エアレスタイヤ1の製造方法における工程の一例を示すフローチャートである。
図5に示されるように、エアレスタイヤ1の製造方法は、トレッドリング2の側壁22に支持部23を形成する工程(#1)と、スポーク4を成形するためのキャビティ空間を区画する注型金型を準備する工程(#2)と、注型金型の水平面にトレッドリング2及びハブ3を横置する工程(#3)と、注型金型を閉じる工程(#4)と、注型金型のキャビティ空間にスポーク4を形成する材料を注入し、硬化させる工程(#5)と、注型金型を開く工程(#6)と、注型金型からエアレスタイヤ1を離型する工程(#7)とを含んでいる。
【0038】
上記工程(#1)では、トレッドリング2が単体で水平面H上に横置されたとき、水平面Hと当接する支持部23が形成される。支持部23は、トレッドリング2の上記横置状態で、リング軸A2が水平面Hに垂直な方向に向くように、トレッドリング2を支持する。本実施形態では、支持部23は、トレッドリング2を加硫成形するための加硫金型によって、接地面21及び側壁22の本体と共に成形される。
【0039】
図6及び7は、工程(#2)で準備されるエアレスタイヤ1のスポーク4を成形するための注型金型100を示している。注型金型100は、横置きされたトレッドリング2及びハブ3の一方の側壁22、33と当接する第1側部101と、トレッドリング2の接地面21を位置決めし保持する外周部102と、ハブ3の内周面を位置決めし保持する内周部103と、トレッドリング2及びハブ3の他方の側壁22、33と当接する第2側部104とを備えている。
【0040】
第1側部101及び第2側部104には、スポーク4を成形するための櫛歯状の第1スポーク形成部105及び第2スポーク形成部106が設けられている。第1スポーク形成部105及び第2スポーク形成部106は、タイヤ周方向に交互に配置され、トレッドリング2の内周面とハブ3の外周面との間に挟まれた空間に突出している。トレッドリング2の内周面、ハブ3の外周面、第1側部101、第1スポーク形成部105、第2側部104及び第2スポーク形成部106によってスポーク4を成形するためのキャビティ空間107が区画される。
【0041】
図7に示されるように、第1側部101は、トレッドリング2及びハブ3を保持するための水平面108を有している。同様に、第2側部104は、トレッドリング2及びハブ3を保持するための水平面109を有している。
【0042】
工程(#3)では、注型金型100の水平面108上にトレッドリング2及びハブ3が横置される。このとき、トレッドリング2は、第1側部101の水平面108、外周部102及び第2側部104の水平面109によって、位置決めされ保持される。支持部23は水平面108と当接し、リング軸A2が水平面108に垂直な方向に向くように、トレッドリング2を支持する。
【0043】
同様に、ハブ3は、第1側部101の水平面108、内周部103及び第2側部104の水平面109によって、位置決めされ保持される。ハブ3の側壁33は、ハブ軸A3が水平面108に垂直な方向に向くように、ハブ3を支持する。
【0044】
従って、トレッドリング2のリング軸A2とハブ3のハブ軸A3とは、互いに平行に配置される。さらに、トレッドリング2の接地面21は外周部102によって径方向に位置決めされ、ハブ3の内周面は内周部103によって径方向に位置決めされているので、トレッドリング2とハブ3とが正確に芯出しされ、リング軸A2とハブ軸A3とが、高い精度で一致する。従って、エアレスタイヤ1のユニフォミティが向上する。
【0045】
その後、工程(#4)では、第2側部104が移動して、注型金型100が閉じられる。これにより、注型金型100の内部に、スポーク4を成形するためのキャビティ空間107が区画される。
【0046】
工程(#5)では、キャビティ空間107にスポーク4を形成する樹脂材料が注入され、硬化される。これにより、トレッドリング2とハブ3とが、スポーク4を介して一体化され、エアレスタイヤ1が形成される。注入される樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が採用しうるが、安全性の観点から熱硬化性樹脂、例えばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂などが好適であり、特にウレタン系樹脂は弾性特性に優れるためより好適に採用しうる。
【0047】
その後、工程(#6)では、第2側部104が
図7中上方に移動して、注型金型100が開かれ、工程(#7)では、注型金型100からエアレスタイヤ1が離型される。
【0048】
以上、本発明のエアレスタイヤ及びその製造方法が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0049】
図1の基本構造をなすエアレスタイヤが、表1の仕様に基づいて試作され、トレッドリング単体での横置き姿勢の安定度、RRO及び実車による振動が評価された。
【0050】
<横置き姿勢の安定度>
単体のトレッドリングが水平面に横置きされ、その姿勢の安定度が試験者の官能により評価された。
【0051】
<RRO>
各エアレスタイヤのタイヤ赤道部及び両ショルダー部でのRROが測定され、それらの平均値が計算された。結果は、数値が小さいほど良好である。
【0052】
<実車振動評価>
各エアレスタイヤを装着した小型EV車両が、テストコースに持ち込まれ、走行時の振動が試験者の試験者の官能により評価された。結果は、振動を感じないレベルをA、振動を感じるが市場にて許容されるレベルをB、大きな振動を感じ、市場にて許容されないレベルをCとして表示される。
【表1】
【0053】
表1から明らかなように、実施例のエアレスタイヤは、比較例に比べて、ユニフォミティが向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0054】
1 エアレスタイヤ
2 トレッドリング
2A トレッドリング
3 ハブ
4 スポーク
21 接地面
22 側壁
23 支持部
23A 支持部
25 文字
25A 文字
100 注型金型
108 水平面
A2 リング軸
H 水平面