特許第6339862号(P6339862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339862
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】車両用灯具およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/00 20180101AFI20180528BHJP
   F21S 43/00 20180101ALI20180528BHJP
   F21S 45/00 20180101ALI20180528BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20180528BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20180528BHJP
   F21W 105/00 20180101ALN20180528BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180528BHJP
【FI】
   F21S8/10 151
   F21S8/12 260
   F21Y115:10
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-111277(P2014-111277)
(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-97192(P2015-97192A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2017年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-213443(P2013-213443)
(32)【優先日】2013年10月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎吾
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−311224(JP,A)
【文献】 特開2008−191528(JP,A)
【文献】 特開2010−282842(JP,A)
【文献】 特開2009−173743(JP,A)
【文献】 特開2009−277495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21S 43/00
F21S 45/00
F21W 103/00
F21W 104/00
F21W 105/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子を備える光源と、
前記光源が搭載される金属製の支持部材と、を有し、
前記支持部材には、前記半導体発光素子から出射される光の一部を遮るシェード部が前記支持部材と一体に形成されており
前記シェード部は、前記支持部材から連続する金属部と、前記金属部の上に形成されたアンダーコート層と、前記アンダーコート層の上に形成された金属膜と、を備え、
前記シェード部は、
第一水平部と、
前記第一水平部よりも下方に位置する第二水平部と、
前記第一水平部と第二水平部とを接続する傾斜部と、を有し、
前記傾斜部と前記第二水平部との接続部をなす前記金属部の上部には、下方に向かって窪んだ凹部が設けられている、車両用灯具。
【請求項2】
前記シェード部は、前記車両用灯具の光軸と交差する方向に延びており、
前記シェード部の延びる方向と直交する断面において、前記シェード部の前記金属部の上方を向く上面部から前方を向く前面部にかけて形成される稜線は曲率半径0.1mm以上1.0mm以下のラウンド形状とされている、請求項に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記アンダーコート層は、光重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂である、請求項またはに記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記シェード部の周囲の前記支持部材には金型痕が形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
半導体発光素子を備える光源と、
前記光源が搭載される金属製の支持部材と、を有し、
前記支持部材には、前記半導体発光素子から出射される光の一部を遮るシェード部が前記支持部材と一体に形成されている車両用灯具の金属製の前記支持部材の製造方法であって、
前記支持部材の形状をなすキャビティを形成するように複数の金型を用意する工程と、
前記キャビティへ金属を入れて前記金属を固め、前記シェード部と一体の前記支持部材を取り出す工程を有し、
複数の前記金型は、前記シェード部に金型の分割線が位置しないように、配置されている、車両用灯具の支持部材の製造方法。
【請求項6】
前記金型は曲率半径0.1mm以上1.0mm以下のラウンド形状部を有し、前記ラウンド形状部の形状を転写して前記シェード部を形成する、請求項に記載の車両用灯具の支持部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、ロービーム配光パターンを形成可能な車両用灯具が知られている。ロービーム配光パターンは、略水平方向に延びるカットオフラインより上方には光を照射せず、車両のすれ違い時に用いられる配光パターンである。
【0003】
このような車両用灯具は、ロービーム配光パターンのカットオフラインに対応する形状のシェード部材によって、光源から出射される光の一部を遮ることにより、カットオフラインより上方に光を照射しない配光パターンを形成している。
【0004】
このロービーム配光パターンのカットオフラインには高い形状精度が求められる。このため、一般的には、樹脂の金型成形によりシェード部材を作製して、カットオフラインに対応する形状の精度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−294202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両用灯具の光源にLED(Light Emitting Diode)素子などの半導体素子を用いた半導体光源を採用することが一般的になってきている。近年では、2つあるいは1つの半導体発光素子あたりの出力が大きくなってきている。例えば、以前では必要な明るさを得るために3つの半導体光源を灯具ユニットに搭載していたところ、将来的には2つあるいは1つの半導体光源を灯具ユニットに搭載すれば十分な明るさを確保できるようになる見込みである。このため、1つの灯具ユニットに搭載される半導体光源の数を少なくしてコンパクトに構成しつつ、高い照度が得られる車両用灯具ユニットが提案されてきている。
【0007】
車両用灯具ユニットには、多くの光を出射できる半導体光源を搭載すると視認性の高い灯具ユニットが得られるので、高出力の半導体光源を搭載したいという要求がある。しかし、該半導体光源の発光強度の増加に伴い、半導体光源の近くに配置される樹脂製のシェード部材が熱により変形する虞があり、カットオフラインなどの明暗境界線の形状精度が低下してしまう虞がある。
そこで本発明は、多くの光を出射する半導体光源を搭載しても明暗境界線の形状精度が低下しにくい車両用灯具およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
半導体発光素子を備える半導体光源と、
前記半導体光源が搭載される金属製の支持部材と、を有し、
前記支持部材には、前記半導体発光素子から出射される光の一部を遮るシェード部が前記支持部材と一体に形成されている、車両用灯具が提供される。
【0009】
本発明に係る車両用灯具によれば、シェード部が金属製の支持部材と一体に形成されている。シェード部が半導体光源から出射された光を吸収して熱が生じても、この熱は速やかに支持部材のうちシェード部以外の部分に伝えられ、シェード部が高温になりにくい。シェード部が熱により変形することを抑制できるので、シェード部の形状が投影されて形成される明暗境界線の形状精度が低下しにくい。なお、光の一部を遮る、とは、シェード部に向かう光の直進を遮ることを言い、シェード部が光を吸収することによって光の直進を遮る、あるいは、シェード部が光を反射することによって光の直進を遮ってもよい。
【0010】
上記本発明において、前記シェード部は、前記支持部材から連続する金属部と、前記金属部の上に形成されたアンダーコート層と、前記アンダーコート層の上に形成された金属膜とを備えている。
【0011】
本発明に係る車両用灯具によれば、支持部材から連続する金属部にアンダーコート層を介して金属膜が形成されているので、形状精度の高い明暗境界線を形成することができる。アンダーコート層を設けることにより、シェード部の表面が平滑になるため、シェード部で散乱することが防止され、反射光を光学的に利用しやすくなる。また、光の利用効率を高められるとともに、グレア光が生じることを効果的に防止できる。
【0012】
上記本発明において、
前記シェード部は、前記車両用灯具の光軸と交差する方向に延びており、
前記シェード部の延びる方向と直交する断面において、前記シェード部の前記金属部の上方を向く上面部から前方を向く前面部にかけて形成される稜線は曲率半径0.1mm以上1.0mm以下のラウンド形状とされていてもよい。
【0013】
本発明に係る車両用灯具によれば、シェード部の金属部をバリが生じない作り方で簡単に作ることができるので、形状精度が高い。
【0014】
上記本発明において、前記アンダーコート層は、光重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂であってもよい。
【0015】
本発明に係る車両用灯具によれば、アンダーコート層をなす紫外線効果樹脂は紫外線を照射すると直ちに硬化するので、樹脂が垂れ下がる前に所望の形状にアンダーコート層を形成することができる。これにより、形状精度の高い明暗境界線を形成可能なシェード部を形成することができる。
【0016】
上記本発明において、
前記シェード部は、
第一水平部と、
前記第一水平部よりも下方に位置する第二水平部と、
前記第一水平部と第二水平部とを接続する傾斜部と、を有し、
前記傾斜部と前記第二水平部との接続部をなす前記金属部の上部には、下方に向かって窪んだ凹部が設けられていてもよい。
【0017】
本発明に係る車両用灯具によれば、アンダーコート層をなす樹脂がたまりやすい傾斜部と第二水平部との接続部に凹部を設けておくことで、垂れ下がった樹脂を凹部に収容させて、形状精度の高い明暗境界部を形成することができる。
【0018】
上記本発明において、前記シェード部の周囲の前記支持部材には金型痕が形成されていてもよい。
【0019】
本発明に係る車両用灯具によれば、シェード部の形状を形成する金型と、シェード部以外の支持部材の形状を形成する金型とを組み合わせて支持部材が製造される。すなわち、シェード部の形状のみが異なる複数種類の車両用灯具を安価に提供することができる。このように金型を組み合わせて支持部材を形成する場合には、金型と金型の境界に相当するシェード部の周囲の支持部材に金型の痕跡が形成される。
【0020】
また、本発明によれば、
上記車両用灯具の金属製の支持部材の製造方法であって、
前記支持部材の形状をなすキャビティを形成するように複数の金型を用意する工程と、
前記キャビティへ金属を入れて前記金属を固め、前記シェード部と一体の前記支持部材を取り出す工程を有し、
複数の前記金型は、前記シェード部に金型の分割線が位置しないように、配置されている、車両用灯具の支持部材の製造方法が提供される。
【0021】
本発明に係る製造方法によれば、シェード部にバリが生じないので、バリ取り作業が不要になる。
【0022】
上記本発明に係る製造方法において、
前記金型は曲率半径0.1mm以上1.0mm以下のラウンド形状部を有し、前記ラウンド形状部の形状を転写して前記シェード部を形成してもよい。
【0023】
本発明に係る製造方法によれば、シェード部にバリが生じることを防止でき、また、形状精度のばらつきが生じにくい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る車両用灯具によれば、多くの光を出射する半導体光源を搭載しても明暗境界線の形状精度が低下しにくい車両用灯具およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第一実施形態に係る車両用灯具の断面図である。
図2】車両用灯具が形成するロービーム配光パターンを示す図である。
図3】シェード部の正面図である。
図4】支持部材を金型成型する際の金型の配置図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る車両用灯具の断面図である。
図6】本発明の第三実施形態に係る車両用灯具の断面図である。
図7】本発明の第四実施形態に係る車両用灯具の灯具ユニットの側断面図である。
図8図8図7のB−B線断面図である。
図9図9図7のC−C線断面図である。
図10図7に示した支持部材の一部拡大図である。
図11】本発明の第四実施形態に係る車両用灯具が形成する配光パターンを示す図である。
図12】参考例に係る製造方法を示す金型の配置図である。
図13】好ましい製造方法に係る金型の配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第一実施形態>
以下、本発明の一実施形態に係る車両用灯具について、図1から図3を参照して詳細に説明する。
【0027】
(全体構成)
本実施形態に係る車両用灯具1は、すれ違い時に照射するロービーム配光パターンを照射可能な車両用灯具である。図1は、本発明の第一実施形態に係る車両用灯具の断面図である。
【0028】
図1に示すように、車両用灯具1は、前方が開口したハウジング2と、透明樹脂により形成された素通し状のアウタレンズ3とを備えている。アウタレンズ3は、ハウジング2の開口を覆うようにハウジング2に取り付けられて、その内部に灯室Sが形成されている。灯室Sには、灯具ユニット10が設けられている。
【0029】
灯具ユニット10は、半導体発光素子の一例であるLED(Light Emitting Diode)素子を備えた半導体光源11と、リフレクタ12と、投影レンズ13と、支持部材20とを備えている。
【0030】
支持部材20は略直方体状の金属製の部材である。支持部材20の上面には、半導体光源11やリフレクタ12が取り付けられている。また、支持部材20の前面には、投影レンズ13が固定されるレンズ支持部材14が取り付けられている。支持部材20の下部にはヒートシンクとして機能するフィン22が設けられている。フィン22は、支持部材20と同一の材料で支持部材20と一体的に形成されている。
【0031】
支持部材20の上面において、半導体光源11と投影レンズ13の間には、支持部材20と一体にシェード部21が設けられている。シェード部21は、半導体光源11から出射された直接光の一部および半導体光源11から出射されてリフレクタ12で反射された反射光の一部を遮る。
【0032】
半導体光源11の半導体発光素子は、その発光面が上方を向く姿勢で、回路基板を介して支持部材20の上面に搭載されている。なお、半導体発光素子としてLED素子のほかに、LD(Laser Diode)素子やEL(Electro Luminescence)素子などを採用してもよい。
【0033】
リフレクタ12は、支持部材20の上面であって半導体光源11の後方に取り付けられている。リフレクタ12の内周面には、略回転楕円面状の反射面が形成されている。リフレクタ12の回転楕円面の第一焦点またはその近傍に半導体光源11が配置され、回転楕円面の第二焦点またはその近傍にシェード部21の稜線21aが配置されている。
【0034】
投影レンズ13は、前面が凸曲面、後面が平坦面の、平凸レンズである。投影レンズ13の後方側焦点が、シェード部21の稜線21aまたはその近傍に位置されている。
【0035】
半導体光源11から出射された光の一部は、リフレクタ12によって反射されてシェード部21の稜線21aの近傍に集光される。シェード部21の稜線21aの近傍に集光された光は、投影レンズ13によって上下左右が反転されながら灯具前方に照射される。このとき、シェード部21によって光の一部が遮られるので、灯具ユニット10が灯具前方に形成する配光パターンには、シェード部21に起因する暗部が形成される。
【0036】
図2は、灯具の25m前方に設けた仮想スクリーンに投影した車両用灯具1が形成する配光パターンを示す図である。図2に示したように、本実施形態に係る車両用灯具1は、カットオフラインCLを上辺に有するロービーム配光パターンを形成する。このカットオフラインCLは、シェード部21の稜線21aに対応する形状となる。
【0037】
(効果)
ところで、シェード部21は、回転楕円面状のリフレクタ12の第二焦点の近傍に位置するので、リフレクタ12からの反射光が集中し、反射光のエネルギーを吸収して高温になりやすい。高温になってシェード部21が変形してしまうと、シェード部21の形状が投影されて形成されるカットオフラインCLの形状が乱れてその形状精度が低下してしまう。例えば、シェード部21が変形して稜線に凸凹が形成されてしまった場合には、図2のカットオフラインCLに凹凸が生じてしまう。このような問題は、特に高出力のLED素子を採用した場合に顕著となる。また、1つの半導体光源で配光パターンを構成する車両用灯具においては、高出力のLED素子を搭載するため、この問題がより顕著となる。
【0038】
ところが、本実施形態に係る車両用灯具1によれば、このシェード部21は金属製の支持部材20と一体(monolithic)に形成されている。このため、シェード部21に生じた熱が支持部材20の他の部位に伝わりやすく、シェード部21が高温になることが抑制される。このため、多くの光を出射できる半導体光源11を搭載しても、シェード部21が変形しにくいため、明暗境界線の形状精度が低下しにくい。また、シェード部21自体も支持部材と同一の金属製であるため、高温になっても変形しにくい。
【0039】
また、シェード部21を支持部材20と一体化したので、従来のようにシェード部材と支持部材を別体で形成してから両者を組み合わせる場合と比べて、組み付け誤差が生じない。このため、本実施形態によれば、形状精度の高いカットオフラインCLを形成可能な車両用灯具1が提供される。
【0040】
また、シェード部21が支持部材20と同じ金属で形成されるため、従来のようにシェード部材を樹脂で形成する場合と比べて耐熱性が高い。このため、太陽光が投影レンズ13を介してシェード部21近傍で集光し、シェード部21が損傷してしまう、いわゆる溶損を回避できる。
【0041】
また、本実施形態に係る車両用灯具1によれば、ヒートシンクとして機能するフィン22が支持部材20と一体に形成されている。このため、シェード部21で生じた熱は金属製の支持部材20を介して速やかにフィン22に伝わり、フィン22から効率よく放散される。
【0042】
(シェード部の詳細)
図3(a)は、本実施形態に係る車両用灯具1のシェード部21の灯具前方からから見た模式図である。図3(a)に示したように、シェード部21は、金属部31と、アンダーコート層32と、金属膜33とにより形成されている。
【0043】
金属部31は、本実施形態ではアルミニウム製である。金属部31は、支持部材20から連続的に形成された部位である。金属部31の上面にアンダーコート層32が形成されている。さらにこのアンダーコート層32の上面に金属膜33が形成されている。
このアンダーコート層32の厚みは、5μm以上50μm以下とすることができる。アンダーコート層32の厚みが5μm未満では、その上面に形成する金属膜33の表面が十分に平滑にならない虞がある。アンダーコート層32の厚みが50μmより大きいと、その上面に形成する金属膜33にクラックが生じる虞がある。なお、図3では、アンダーコート層32および金属膜33の厚みを誇張して描いている。
金属膜33の厚みは、25nm以上1μm以下とすることができる。金属膜33の厚みが25nm未満では、均一に金属膜33を形成することが困難である。金属膜33の厚みが1μmより大きいと、金属膜33にクラックが生じる虞がある。
【0044】
支持部材20は、フィン22や、半導体光源11の取付部やリフレクタ12の取付部など各種の取付部を備えた複雑な形状をしている。このため、製造の容易さという観点においては、鋳造で製造することが好ましい。しかし、支持部材20を鋳造で製造すると、その表面粗さが大きくなってしまいやすい。このため、くっきりとした直線状の明暗境界線を得たい場合には、シェード部21を鋳造で形成すると不都合である。
【0045】
そこで本実施形態においては、まず、シェード部21の金属部31を含めて支持部材20を鋳造で形成する。さらに、鋳造で生じた金属部31上の微小な凹凸を樹脂のアンダーコート層32で埋めて、その上面を平坦面とする。さらに、この平坦なアンダーコート層32の上面に蒸着やめっきなどによって金属膜33を形成している。これにより、金属膜33の上面が平坦となり、この金属膜33の平坦な上面がなすシェード部21の稜線21aが投影レンズ13によって灯具前方に投影されて、くっきりとした直線状の明暗境界線が得られる。
また、アンダーコート層32を設けることにより、シェード部21の表面が平滑となるため、シェード部21で反射された光が散乱することを効果的に防止することができ、シェード部21で反射された光を光学的に利用しやすくなる。このため、アンダーコート層32を設けることにより、光の利用効率を高めることができ、かつ、グレア光が生じることを効果的に防止できる。
【0046】
このように、シェード部21以外の支持部材20を鋳造で形成し、形状精度の要求されるシェード部21は、鋳造品の表面にアンダーコート層32を介して金属膜33を蒸着で形成することが好ましい。これにより、形状精度の高いカットオフラインCLを形成できるシェード部21を有する支持部材20を低コストで提供できる。
【0047】
(シェード部の樹脂溜まり)
また、図3(a)に示したように、シェード部21は、第一水平部41と、第一水平部41よりも下方に位置する第二水平部42と、第一水平部41と第二水平部42とを接続する傾斜部43とを備えている。第二水平部42と傾斜部43との接続部をなす金属部31の上部には、下方に向かって窪んだ凹部44が設けられている。この凹部44の谷部は、第二水平部42をなす水平な金属部31の部分よりも下方に位置する。なお、凹部44は図示した形状に限らず、溝形状、スリット形状などであってもよい。
【0048】
アンダーコート層32を形成する樹脂(以降、アンダーコート剤と呼ぶ)は、第一水平部41をなす金属部31の上面や第二水平部42をなす金属部31の上面、傾斜部43をなす金属部31の上面に塗布される。傾斜部43をなす金属部31の上面に塗布されたアンダーコート剤は、硬化するまでの間に、傾斜部43をなす金属部31に沿って下方に流れ落ちやすい。このため、傾斜部43をなす金属部31の下部から第二水平部42をなす金属部31の上面にかけてアンダーコート剤がたまりやすい。
【0049】
図3(b)は、金属部31Aに凹部を設けずに形成したシェード部21Aを示す図3(a)と同様の図である。図3(b)に示すように、シェード部21Aは、傾斜部43Aをなす金属部31Aと第二水平部42Aをなす金属部31Aとを、凹部を設けずに、カットオフラインCLの形状に合せて形成している。
このような形状の金属部31Aにアンダーコート剤を塗布した場合には、硬化するまでの間に、傾斜部43Aをなす金属部31Aの下部から第二水平部42Aをなす金属部31Aの上面にかけてアンダーコート剤がたまってしまう。その結果、傾斜部43Aの傾きと、第二水平部42Aからの傾斜部43Aの立ち上がり位置が、金属部31Aの上面が形成する形状からずれてしまう。より具体的には、傾斜部43Aの立ち上がりの角度が小さくなったり、傾斜部43Aの立ち上がり位置が図の左方にずれてしまいやすい。このように、所望の形状のシェード部21Aが得られない場合がある。
【0050】
そこで、図3(a)に示したように、本実施形態に係る車両用灯具1のシェード部21には、傾斜部43をなす金属部31と第二水平部42をなす金属部31との間に凹部44が設けられている。硬化するまでの間に下方に流れ落ちたアンダーコート剤は凹部44にたまるので、結果的に、傾斜部43の上面と第二水平部42の上面とが所望の角度をもって交わる形状となり、所望の形状のシェード部21が得られる。
【0051】
なお、凹部44は第二水平部42から傾斜部43にむかって徐々に深く落ち込むように形成することが好ましい。本実施形態では、図3の(a)に示したように、この凹部44は、傾斜部43の面を延長した平面と、第二水平部42から谷部に向かってゆるやかに下がる曲面とによって形成されている。つまり、凹部44をなす底面のうち、第二水平部42に近い側の底面と第二水平部42の上面との距離t1は、傾斜部43に近い側の底面と第二水平部42の上面との距離t2よりも、小さく設定されている。
アンダーコート剤を金属部31に塗布してから硬化するまでの間に、アンダーコート剤は重力によって、アンダーコート剤は傾斜部43に沿って凹部44に向かって垂れ下がるが、第二水平部42からは凹部44に向かっては流れ込みにくい。つまり、凹部44に流れ込むアンダーコート剤の量について、傾斜部43に近い側には多くのアンダーコート剤が流れ込むが、第二水平部42に近い側には多くのアンダーコート剤が流れ込みにくい。そのため、凹部44を上記の形状に形成すれば、凹部44の傾斜部43側にアンダーコート剤がたまる空間が大きく確保されるので、アンダーコート層32の上面が所望の形状になるようにアンダーコート剤を硬化させやすく、好ましい。
【0052】
また、アンダーコート層32は光重合開始剤を含む紫外線硬化性樹脂で形成することが好ましい。例えば、紫外線硬化性樹脂としてアクリル系紫外線硬化樹脂を挙げることができる。
【0053】
本実施形態とは異なり、アンダーコート剤に熱硬化型樹脂を用いた場合には、加熱炉の中で一定時間をかけて樹脂を硬化させる必要がある。熱硬化型樹脂が硬化する前に、重力によって該樹脂が垂れてしまい、その上に均一な膜厚で金属膜を形成すると、金属膜の上面で形成する明暗境界線の形状精度が低下する虞がある。
しかし、紫外光によって重合が開始される光重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂をアンダーコート剤に用いた場合には、紫外線を照射すると直ちに硬化する。このため、紫外線硬化型樹脂が硬化する前に垂れにくく、明暗境界線の形状精度が低下しにくい。
【0054】
(複数の金型を組み合わせて支持部材を形成する)
なお、支持部材20を鋳造する場合には、シェード部21を形成する金型と、シェード部21以外の部位を形成する金型とを組み合わせて用いることが好ましい。
仕向け地が道路の左側を走行する地域である車両用灯具と、仕向け地が道路の右側を走行する地域である車両用灯具では、求められるロービーム配光パターンの形状が異なる。このように、異なる形状のロービーム配光パターンを形成するために、シェード部21についてもそれぞれ異なる形状が求められる。しかし、求められるロービーム配光パターンの形状が異なっている車両用灯具でも、シェード部21以外の部位については、共通している。そこで、シェード部21のみの形状が異なる複数種類の車両用灯具を、シェード部21以外の部位を形成する金型を共通して用いることで、安価に提供することができる。
【0055】
図4は、支持部材20を金型成型するときの金型の配置を示す模式図である。本実施形態では、上金型51と下金型52とを組み合わせて、支持部材20に対応する形状のキャビティ53を形成する。キャビティ53に溶融金属を注入し、固化した後に上金型51と下金型52とを開き、支持部材20を取り出す。
このような金型において、上金型51は、交換金型54を装着可能な装着部51aを備えている。交換金型54は、シェード部21を形成する部位54aを備えている。例えば、部位54aの形状が異なる複数種類の交換金型54を用意しておき、所望の形状の部位54aを有する交換金型54を装着部51aに嵌め込んで金型成型することにより、所望の形状のシェード部21を有する支持部材20を作製できる。
このような方法によれば、複数種類の形状のシェード部21を形成する際に、上金型51そのものを複数種類用意する必要がなく、複数種類の支持部材を安価に提供できる。
【0056】
なお、このように、シェード部21を形成する交換金型54とシェード部21以外の部位を形成する上金型51とを組み合わせて支持部材20を形成した場合には、シェード部21の周囲の支持部材20に、組み合わせた金型51,54の隙間に起因する金型痕21b(図1参照)が形成される。金型痕21bとは、金型同士の隙間に起因する突起や段差などである。
【0057】
<第二実施形態>
なお、上述した第一実施形態では、リフレクタと投影レンズを用いたいわゆるPES光学系の車両用灯具に本発明を適用した例を説明したが、本発明はこれに限れらない。次に説明する第二実施形態は、本発明をいわゆる直射光学系の車両用灯具に適用した例である。第一実施形態と共通する第二実施形態の部材については、同じ符号を付してその説明は省略する。
【0058】
図5は、本発明の第二実施形態に係る車両用灯具100の模式図である。
図5に示したように、本実施形態に係る車両用灯具100は、半導体光源11と、投影レンズ13と、支持部材120を備えている。
【0059】
支持部材120は、前方を向く搭載面123と、この搭載面123よりも前方に位置し、灯具下方から灯具上方へ突き出したシェード部121と、搭載面123の反対側に設けられたフィン122を備えている。シェード部121およびフィン122は、金属製の支持部材120と一体に形成されている。
【0060】
半導体光源11は、発光面が前方を向く姿勢で支持部材120の搭載面123に搭載されている。投影レンズ13は、支持部材120の前側で支持部材120に支持されている。投影レンズ13は、その後方側焦点が半導体光源11の近傍に位置するように、配置されている。
【0061】
半導体光源11から出射された光は、投影レンズ13を介して灯具前方に出射される。半導体光源11から出射された光の一部は、シェード部121によって遮られる。これにより、灯具の前方に暗部を有する配光パターンが形成される。
【0062】
本実施形態においても、シェード部121が支持部材120と一体に形成されているので、上述した第一実施形態と同様に、シェード部121が半導体光源11から出射される光から大きな熱量を吸収しても、シェード部121から支持部材120の他の部位に速やかに熱が伝わり、シェード部121が高温になりにくい。また、シェード部121が金属製なので、高温になっても変形しにくい。このため、明暗境界線の形状精度が低下しにくい。また、太陽光が投影レンズ13を介してシェード部121に集光しても、シェード部121が金属製なので、溶損が起こりにくい。
【0063】
<第三実施形態>
上述した第一実施形態と第二実施形態では、いわゆるPES光学系の車両用灯具および直射光学系の車両用灯具に本発明を適用した例を説明したが、本発明はこれらに限られない。次に説明する第三実施形態は、本発明をいわゆるパラボラ光学系の車両用灯具に適用した例である。以降の説明において、第一実施形態と共通する第三実施形態の部材については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図6は、本発明の第三実施形態に係る車両用灯具200の模式図である。
図6に示したように、本実施形態に係る車両用灯具200は、半導体光源11と、リフレクタ212と、支持部材220とを備えている。支持部材220は略直方体状の金属製の部材である。
半導体光源11は、発光面を上方を向けた姿勢で支持部材220の上面に搭載されている。リフレクタ212は、半導体光源11の後方で支持部材220の上面に取り付けられている。リフレクタ212の内周面は、略回転放物面形状の反射面とされている。半導体光源11は、リフレクタ212の回転放物面の焦点近傍に位置されている。
【0065】
このパラボラ光学系の車両用灯具200では、リフレクタ212によって配光パターンのカットオフラインが形成される。シェード部221は、半導体光源11から出射された光のうち、リフレクタ212に向かわずに、灯具の外部へ直接向かう光を遮る。
【0066】
上述した第一実施形態および第二実施形態と同様に、本実施形態においても、シェード部221が支持部材220と一体に形成されているので、シェード部221が半導体光源11から出射された光から大きな熱量を吸収しても、シェード部221から支持部材220の他の部位に速やかに熱が伝わり、シェード部221が高温になりにくい。また、シェード部221が金属製なので、高温になっても変形しにくい。このため、シェード部221で反射された光が意図しない方向に散乱することが抑制される。
【0067】
<第四実施形態>
次に、図7から図13を用いて、本発明の第四実施形態に係る車両用灯具300を説明する。図7は第四実施形態に係る車両用灯具300の灯具ユニット310の側断面図である。図8図7のB−B線断面図である。図9図7のC−C線断面図である。図8および図9には、支持部材320のみを示している。
【0068】
図7に示すように、灯具ユニット310は、金属製の一体成形された支持部材320と、支持部材320に取り付けられたリフレクタ312と、支持部材320に取り付けられたレンズホルダ314と、支持部材320にレンズホルダ314を介して取り付けられた投影レンズ313と、を有している。
【0069】
支持部材320は、半導体発光素子311が搭載される光源取付部321と、光源取付部321より前方に設けられた水平カットライン形成部322(シェード部)と、光源取付部321より下方に設けられた放熱フィン部323と、光源取付部321より後方に設けられたリフレクタ支持部324と、水平カットライン形成部322より前方に設けられたホルダ取付部325と、を有している。
光源取付部321の上面には、発光面が上方を向く姿勢で半導体発光素子311が搭載されている。
【0070】
支持部材320の後端には、上方に向かって開口する筒状のリフレクタ支持部324が設けられている。リフレクタ312は、このリフレクタ支持部324の開口に軸部312aを差し込むことにより、支持部材320に固定されている。
【0071】
リフレクタ312は、半導体発光素子311の発光面を覆う姿勢でリフレクタ支持部324に固定されている。リフレクタ312の内面には、略回転放物面の主反射面312bと、主反射面312bの前部に設けられた副反射面312cとが設けられている。
【0072】
投影レンズ313は、その後面に固定されたレンズホルダ314を介して、支持部材320に固定されている。投影レンズ313の後端には径方向に延びるフランジ部313aが設けられている。フランジ部313aの後面は、レンズホルダ314の前面に溶着や接着などにより連結されている。
【0073】
支持部材320は、その前端部に、円板状のホルダ取付部325を一体的に備えている(図9参照)。このホルダ取付部325には、前方に開口するねじ孔325aが設けられている(図9参照)。レンズホルダ314は、このねじ孔325aにネジ325bを嵌め込むことにより、ホルダ取付部325に固定されている(図7参照)。
【0074】
支持部材320の上面には、半導体発光素子311へ電力を供給する給電用アタッチメント(図示せず)が搭載される。図8に示すように、支持部材320の上面には、給電用アタッチメントを取り付けるための給電アタッチメント取付ねじ孔326と、位置決めピン327が設けられている。位置決めピン327は、支持部材320の上面から上方に向かって突出し、給電用アタッチメントを支持部材320に対して位置決めする。
【0075】
このような第四実施形態に係る車両用灯具300によっても、リフレクタ312の回転放物面の主反射面312bによって、水平カットライン形成部322およびその周囲に光が集まる。しかし、水平カットライン形成部322に発生した熱が、水平カットライン形成部322および放熱フィン部323を一体に備える支持部材320によって拡散され、水平カットライン形成部322が高温になることが防止される。
【0076】
図10は、図7に示した支持部材320の水平カットライン形成部322周辺の拡大図である。図10に示すように、水平カットライン形成部322は、支持部材320のうち、灯具の上方を向く上面部322aと、灯具の前方を向く前面部322bとが形成する稜線により形成されている。上面部322aは、光源取付部321より前方に位置する平坦な部位である。この上面部322aには左右方向に段差が設けられている。前面部322bは、上面部322aから稜線を介して連続する部位である。
水平カットライン形成部322は、投影レンズ313の後方焦点群に対応するように後方に向かって凹んだ円弧状に形成されている。また、上面部322aの段差に応じて、この水平カットライン形成部322にも段差が形成されている。
この円弧状の水平カットライン形成部322は、図7で示したように、前後方向を向く車両用灯具300の光軸と交差する方向に延びている。この水平カットライン形成部322のの延びる方向と直交する断面において、水平カットライン形成部322の金属部の上方を向く上面部322aから前方を向く前面部322bにかけて形成される稜線は曲率半径0.1mm以上1.0mのラウンド形状とされている。なお、水平カットライン形成部322の金属部の表面に、第一実施形態で説明したようにアンダーコート層および金属膜などを設けてもよい。
【0077】
水平カットライン形成部322の下方には、OHS形成部328が設けられている。OHS形成部238は、標識を認識しやすくするためのOHS(Over Head Sign)配光パターンを形成する。
OHS形成部328は、第一反射面328aと第二反射面328bとを備えている。第一反射面328aは第二反射面328bより大きな反射面である。第一反射面328aおよび第二反射面328bは、水平カットライン形成部322よりも前方かつ下方に設けられている。第一反射面328aは第二反射面328bよりも下方に設けられている。第一反射面328aは第二反射面328bよりも前方に設けられている。第二反射面328bは、正面から見て、半導体発光素子311を通過する中心線よりも側方に偏った位置に設けられている。図示の例では、第二反射面328bは、右方に偏った位置に設けられている。
【0078】
図11は、車両用灯具300が形成する配光パターンを示す図である。図11は、車両用灯具300の前方25mの地点に垂直に設置された仮想スクリーンを灯具側から見た図である。
【0079】
半導体発光素子311から出射されリフレクタ312の主反射面312bで反射された光は、その一部が水平カットライン形成部322で遮られながら、投影レンズ313に入射する。投影レンズ313は、この光を灯具前方に向かって照射し、ロービーム配光パターンLを形成する。
【0080】
半導体発光素子311から出射されリフレクタ312の副反射面312cで反射された光は、第一反射面328aおよび第二反射面328bに入射する。第一反射面328aおよび第二反射面328bは、この光を投影レンズ313に向かって反射させる。投影レンズ313は、この光を灯具前方に向かって照射し、OHS配光パターンを形成する。
【0081】
OHS形成部328は、車両前方の水平線よりも上方に光を照射して、OHS配光パターンを形成する。
本実施形態では、第一反射面328aは水平線より2〜4度上方の第一領域A1に光を照射し、第二反射面328bは水平線上の第二領域A2に光を照射する。
なお、本実施形態では、第一反射面328aと第二反射面328bとがそれぞれ離間して設けられた例を説明したが、第一反射面328aと第二反射面328bとを連続して形成してもよい。
【0082】
次に、図12および図13を用いて、第四実施形態に係る支持部材320の好ましい製造方法、特に金型を使った支持部材320の成型方法を説明する。図12は、参考例に係る製造方法を示す金型の配置図である。図13は、好ましい製造方法に係る金型の配置図である。
本実施形態のように複雑な形状の支持部材320は、例えば3つの金型を用いて、金型成型により作製できる。図12あるいは図13のように、上下に移動可能な上金型401、上下に移動可能な下金型402、前後に移動可能な前金型403を用意して、支持部材320の形状をなすキャビティ404を形成する。
溶融した金属をキャビティ404に流し込み、冷却して金属を固化させ、金型を開いて、水平カットライン形成部322と一体の支持部材320を取り出す。このようにして、支持部材320を作製することができる。
あるいは、キャビティ404に、粉末状の金属を樹脂に混入させた混合物を射出し、この加熱して樹脂成分を飛ばすことにより、金属製の支持部材320を固め、金型を開いて、水平カットライン形成部322と一体の支持部材320を取り出すことができる(金属粉末射出成型)。
【0083】
ところで、複数の金型によりキャビティ404を形成する際には、図13に示したように、水平カットライン形成部322を形成するカットライン転写部405とは異なる位置に金型の分割線PLを位置させることが好ましい。図12のように、カットライン転写部405に分割線PLを位置させてしまうと、得られる水平カットライン形成部322にバリが生じてしまいやすい。このバリを除去する工程のために生産効率が低下してしまう。
【0084】
一般的には、鋭い形状に水平カットライン形成部322を形成すると、配光中の水平カットラインを明瞭に形成しやすいと考えられている。そこで、シェード部を得るための金型を設計する際に、図12のように、シェード部に金型の分割線を位置させることが考えられる。
【0085】
ところが、本実施形態のように、水平カットライン形成部322を含む支持部材320を金属で一体に成型する場合には、金型同士の隙間に溶融金属や金属粉末を含む樹脂が入り込みやすい。このため、図12の金型から得られる支持部材320において、分割線PLに溶融金属や金属粉末を含む樹脂が入り込み、水平カットライン形成部322にバリが形成されてしまう。このため、水平カットライン形成部322に生じたバリを削り取り、また、削った箇所に仕上げ研磨加工を施す必要が生じる。このように、本実施形態のように水平カットライン形成部322を含む支持部材320を一体成形する場合には、金型の分割線PLを設ける位置によって生産性が影響されることに、本発明者は気が付いた。
【0086】
そこで、図13のように、水平カットライン形成部322は、一つの金型に形成した水平カットライン形成部322に対応する形状のカットライン転写部405Aを転写させることにより、形成することが好ましい。本実施形態では、上金型401Aに水平カットライン転写部405Aが形成されている。つまり、上金型401A、下金型402A、前金型403Aが、水平カットライン形成部322に金型の分割線PLが位置しないように配置されている。
このような金型を用いた製造方法によれば、水平カットライン形成部322にバリが生じない。また、図13の例によれば、上金型401Aと下金型402Aの分割線PLは、配光に寄与しない領域に位置している。このため、バリが除去されなかった場合でも、配光パターンに悪影響が及ぶことがない。
特に、本実施形態では、水平カットライン転写部405Aは、曲率半径0.1以上1.0mm以下の刃物で彫り込んで形成されている。金型の形状を転写する場合は、鋭く尖った形状を転写するよりも、ラウンド形状を転写する方が、その形状を安定的に転写しやすい。このため、水平カットライン転写部405Aの形状が転写されて形成される水平カットライン形成部322は曲率半径0.1mm以上1.0mm以下ラウンド形状を有し、形状精度のばらつきなく作製することができる。
【0087】
なお、上述した第一実施形態から第四実施形態においては、ロービーム配光パターンを形成する車両用灯具を説明したが、本発明はこれに限られない。暗部を備えた配光パターンを形成するコーナリングライト、フォグライト、あるいは車両用標識灯などに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1:車両用灯具
2:ハウジング
3:アウタレンズ
10:灯具ユニット
11:LED素子
12:リフレクタ
20:支持部材
21:シェード部
22:フィン
13:投影レンズ
14:レンズ支持部材
31:金属部材
32:アンダーコート層
33:金属膜
41:第一水平部
42:第二水平部
43:傾斜部
44:凹部
100:車両用灯具
120:支持部材
121:シェード部
122:フィン
123:搭載面
200:車両用灯具
220:支持部材
221:シェード部
222:フィン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13