特許第6339864号(P6339864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339864
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】部品キャリア材
(51)【国際特許分類】
   B65D 73/02 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   B65D73/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-113180(P2014-113180)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227185(P2015-227185A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】足立 竜介
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−525774(JP,A)
【文献】 実開平01−130976(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 73/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を支持する支持材と、この支持材の上面を覆うように配され前記部品を保護する保護材とを備え、前記保護材を取り除くまでは前記部品を保護する一方、前記保護材を取り除いた後は前記部品を取り出しできる部品キャリア材において、
前記支持材と前記保護材との間に所定の吸着力を有した吸着材を密着させ、これら支持材、保護材、吸着材を常時吸着し、かつ必要に応じて剥離可能に積層配置して成り
前記保護材は、剥離させる際、前記吸着材から剥離する高い剥離性を備えた裏面と、剥離させる際、前記吸着材を吸着したままこれを一体に支持材から剥離させる低い剥離性を備えた表面とから成ることを特徴とする部品キャリア材。
【請求項2】
前記吸着材は、前記部品に接触することで部品を吸着する部品吸着部と、前記保護材に接触することで保護材を吸着する保護材吸着部とに分かれて配され、
前記保護材は、前記支持材上に前記部品が存在しない際、前記裏面が前記部品吸着部および前記保護材吸着部の何れにも接触するように配される一方、前記支持材上に前記部品が存在する際、前記表面が前記保護材吸着部に接触するように配されて成ることを特徴とする請求項1記載の部品キャリア材。
【請求項3】
前記吸着材は、その両面がほぼ同一の吸着力に設定されて成ることを特徴とする請求項1または請求項に記載の部品キャリア材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじやリベット等の部品を複数個吊下した状態でかつ前記部品の頭部を保護する部品キャリア材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の部品キャリア材は、特許文献1に示すように、部品の一例であるリベットを複数個吊下する支持材と、この支持材の上面側に配され前記部品の頭部を保護する保護材とから構成される。前記支持材は、前記リベットの頭部を完全に収納可能な所定の深さに設定され開口部が小さな凹部を備えており、前記凹部には、前記リベットの軸部を挿通可能な下穴が形成されている。これにより、前記支持材は、前記リベットの頭部を前記凹部で吊下可能となる。一方、前記保護材は、フィルム状に形成されており、前記支持材の上面に貼り付けられることで前記凹部に収納された前記リベットの頭部を保護しつつ前記支持材の上面から前記頭部が突出しないようリベットの軸方向の動きを規制する。よって、従来の部品キャリア材は、これを搬送等する際に前記リベットを脱落させることがないという特徴がある。また、前述のように所定の箇所へ搬送されると、前記保護材が前記支持材から取り出され、前記リベットはその頭部から上方へ取り出されワーク等へ組みつけられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-149315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の部品キャリア材は、前記支持材に前記凹部を配する必要があるため、前記リベットを複数吊下する場合であると前記凹部を吊下するリベットの数だけ配置しなければならない。よって、従来の部品キャリア材は、前記支持材の製作コストが増大する問題があった。
【0005】
また、従来の部品キャリア材は、前記リベットが取り出される場合、エアの吸引により前記リベットを前記頭部側から吸引する吸引方式ではなく、前記頭部を挟持して摘み上げるピックアップ方式に採用され難い。これは、前記頭部を挟持する部材が前記凹部の狭い隙間に入り込む必要があるためであり、前記挟持する部材を小さな寸法としなければならず、ピックアップ方式には採用し難い問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、安価かつ部品の取り出しに係る作業性が高い部品キャリア材の提供を目的とする。この目的を達成するために、部品を支持する支持材と、この支持材の上面を覆うように配され前記部品を保護する保護材とを備え、前記保護材を取り除くまでは前記部品を保護する一方、前記保護材を取り除いた後は前記部品を取り出しできる部品キャリア材において、前記支持材と前記保護材との間に所定の吸着力を有した吸着材を密着させ、これら支持材、保護材、吸着材を常時吸着し、かつ必要に応じて剥離可能に積層配置して成り、前記保護材は、剥離させる際、前記吸着材から剥離する高い剥離性を備えた裏面と、剥離させる際、前記吸着材を吸着したままこれを一体に支持材から剥離させる低い剥離性を備えた表面とから成ることを特徴とする。なお、前記吸着材は、前記部品に接触することで部品を吸着する部品吸着部と、前記保護材に接触することで保護材を吸着する保護材吸着部とに分かれて配され、前記保護材は、前記支持材上に前記部品が存在しない際、前記裏面が前記部品吸着部および前記保護材吸着部の何れにも接触するように配される一方、前記支持材上に前記部品が存在する際、前記表面が前記保護材吸着部に接触するように配されて成ることが望ましい。さらに、前記吸着材は、その両面がほぼ同一の吸着力に設定されて成ることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の部品キャリア材1は、前記支持材10に従来のような凹部を配置する必要が無く平らな支持材10に下穴11を設けることで前記部品の一例であるリベットWの頭部W2を前記支持材10の上面側10aから突出させた状態で吊下できる。よって、従来のような凹部を設ける必要が無いため、前記支持材10の製作に係るコストを低減できる利点がある。このように、本発明の部品キャリア材1は、従来のような深さが深くしかも開口部が狭い凹部ではなく、前記リベットWの頭部W2を支持材10の上面側10aから突出した状態で吊下して保持できる。よって、前記リベットWを挟持して取り出すための部材を従来に比べて大きく設定できるため、上述したピックアップ方式に採用できる利点もある。さらに、本発明の部品キャリア材1は、図2に示すように前記保護材20の裏面22が前記吸着材である前記部品吸着部31および前記保護材吸着部32にそれぞれ接触するよう配された後、図3に示すように取り除かれる。この場合、前記裏面22は、高い剥離性を備えて成るため、この裏面22に前記部品吸着部31および前記保護材吸着部32が何れも付着して剥がされることなく前記支持材10の上面側10aに残っている。よって、本発明の部品キャリア材1は、この後の過程において前記リベットWを前記部品吸着部31に貼り付けて保持できるため、前記リベットWを前記支持材10から脱落させることを低減できる利点もある。
【0008】
また、本発明の部品キャリア材1は、図5に示すように前記保護材20の表面21が前記保護材吸着部32に接触するよう配された後、図6に示すように取り除かれる。この場合、前記表面21は、前記裏面よりも低い剥離性を備えて成るため、前記保護材吸着部32がこの表面21側に付着して剥がされる。つまり、前記保護材吸着部32は、前記表面21とともに前記支持材10の上面から取り除かれるため、前記部品吸着部31で保持したリベットWをその上方から摘み上げ取り出す際、摘み上げる部材などが前記保護材吸着部32に触れることがない。したがって、本発明の部品キャリア材1は、前記リベットWの取り出し作業の際、前記保護材吸着部32が前記支持材10から既に取り除かれているため、例えば作業者の指などが前記保護材吸着部32に触れることも無いことから前記支持材10が所定の位置から位置ズレなどを起こし難く、リベットの取り出し時における作業性が高い利点もある。
【0009】
さらに、本発明の部品キャリア材1は、前記保護材20に接触する保護材吸着部32と、前記吸着材が前記下穴11の周囲に配され前記リベットWの頭部座面W2に接触する前記部品吸着部31とをそれぞれ個別に配置して成る。また、前記リベットWを前記部品吸着部31により吸着して保持している際、前記保護材20の表面21は、前記保護材吸着部32に直接触れる一方、前記部品吸着部31は前記頭部W2により隠されるためこの隠された部品吸着部31には直接触れない。したがって、前記保護材20を図6に示すように取り除いても前記頭部W2に隠れた前記部品吸着部31は前記表面21側に付着して剥がされるようなことがない。つまり、本発明の部品キャリア材1は、前記保護材20の取り外し作業時におけるリベットWの脱落がない利点もある。
【0010】
また、本発明の部品キャリア材1は、前記部品吸着部31の両面および前記保護材吸着部32の両面が何れもほぼ同一の吸着力を有するため、これらを前記支持材10の上面側10aに配置する際、貼り付ける方向性を注意する必要が無い利点もある。また、本発明の部品キャリア材1は、前記リベットWの挿通前あるいは挿通後といった各工程に合わせて前記保護材20の表面21と裏面22とを使い分けることにより、リベットWの挿入前であればその裏面22側を前記支持材10の上面側10aに予め重ね合わせて1つのまとまりにして保管や管理ができるとともにリベットWの取り出しに不要な前記保護材吸着部32を前記保護材20とともに取り外すことができ、取扱い面において非常に優れている利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る部品キャリア材を示す平面図であり、リベットが組み込まれる前の状態を示すものである。
図2図1のA−A線に係る拡大断面図である。
図3図2から保護材が剥がされる状態を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る部品キャリア材を示す平面図であり、リベットが組み込まれた後の状態を示すものである。
図5図4のA−A線に係る拡大断面図である。
図6図5から保護材が剥がされる状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1ないし図6に基づき本発明の一実施形態に係る部品キャリア材を順に説明する。まず、本発明の部品キャリア材1は、部品の一例であるリベットWを複数個まとめて保持するものであり、前記リベットWの組立作業を行う場合であれば、部品キャリア材1に保持されたリベットWが作業者(図示せず)等により取り出される。なお、前記リベットWは、所定の直径に寸法設定された軸部W1と、この軸部W1の直径よりも大きな直径に設定された頭部W2とから構成されている。
【0013】
前記部品キャリア材1は、PET基材から生成された平らな透明シートである支持材10と、この支持材10の上面側10aを覆うように配された透明の保護材20と、前記支持材10と前記保護材20との間に介在する吸着材(31,32)とを備えて成る。
【0014】
前記吸着材は、図1に示すようにドーナツ状に形取られ所定の間隔を空けて複数配列された部品吸着部31と、前記支持材10の4隅に配された保護材吸着部32とから構成されており、これらは何れも所定の吸着力を備えた両面テープで構成される。
【0015】
前記部品吸着部31および前記保護材吸着部32は、それぞれ所定の数だけ前記支持材10の上面側10aに配されており、何れも同等の厚さに設定されている。また、前記部品吸着部31および前記保護材吸着部32の両面は何れもほぼ同一の吸着力に設定されている。
【0016】
前記部品吸着部31は、前記リベットWの頭部W2の直径を超えない最大径に設定されており、さらに、前記軸部W1を挿通可能な下穴31aが形成されている。よって、前記リベットWの頭部座面W2aが前記部品吸着部31に接触し貼り付けられるため、前記リベットWは、前記下穴11,31aから抜け出し前記支持材10から脱落することがない。
【0017】
前記保護材吸着部32は、図1に示すように長方形に形取られて形成され、複数配された前記部品吸着部31を取り囲むように配されており、自身の吸着力によって前記保護材20を保持可能に構成される。
【0018】
前記支持材10は、図2に示すように、これの厚み方向へ貫通した下穴11を備えており、この下穴11は前記部品吸着部31の前記下穴31aと連通し、前記下穴11および前記下穴31aが何れも同一の穴径に設定されている。
【0019】
前記保護材20は、前記支持材10と同様にPET基材から生成された平らな透明シートから成る。また、その裏面22は、図2に示すように前記支持材10に貼り付けられた前記保護材吸着部32および前記部品吸着部31に接触していた後、図3に示すように取り除かれることで前記保護材吸着部32および前記部品吸着部31が前記支持材10の上面側10aに残るように構成される。一方、その表面21は、図5に示すように前記支持材10に貼り付けられた前記保護材吸着部32と接触していた後、図6に示すように取り除かれることで前記保護材吸着部32を前記支持材10から取り除けるように構成されている。つまり、前記保護材20は、その表面21および裏面22がそれぞれ異なる剥離性を備えており、図2に示すようなリベットWを挟み込まない場合であれば、前記裏面22が前記支持材10の上面側10aに向き合うよう取り付けられ、逆に図5に示すようなリベットWを挟み込む場合であれば、前記表面21が前記支持材10の上面側10aに向き合うように取り付けられる。
【0020】
このように構成される部品キャリア材1の作用について説明する。本発明の部品キャリア材1は、当初は図2に示すように前記支持材10の上面側10aに前記部品吸着部31および前記保護材吸着部32が貼り付けられ、さらに、これら部品吸着部31および前記保護材吸着部32に前記保護材20が貼り付けられて保持される。また、前記保護材20の裏面22は、上述のように前記表面21よりも剥離性の高い特性を有しており、この裏面22が前記支持材10の上面側10aに向き合うよう配され前記吸着材に貼り付き固定されている。よって、この部品キャリア材1は、前記リベットWを挿通する前の前記保護材20を前記支持材10に取り付けた状態で1つのまとまりとして保管や管理ができる特徴がある。
【0021】
次に、この部品キャリア材1に前記リベットWを挿通するため、前記保護材20が作業者(図示せず)等によって図3に示すように剥がされる。しかし、上述した通り前記裏面22が剥離性の高い特性を備えているため、これに貼り付いていた前記部品吸着部31および前記保護材吸着部32は、何れも前記支持材10から剥がされることなくこれら全てが前記支持材10の上面側10aに貼り付いている。したがって、本発明の部品キャリア材1は、前記リベットWの頭部座面W2aを保持するための前記部品吸着部31や前記保護材20を保持するための前記保護材吸着部32が何れも前記支持材10から除かれることがない。よって、取扱い面で優れている特徴がある。
【0022】
また、上述したように前記保護材20が剥がされると、前記リベットWが前記支持材10の下穴11へ順次供給され、この後、図4および図5に示すように前記リベットWの頭部上面W2bを覆うように前記保護材20が取り付けられる。この時、前記保護材20は、その表面21が前記支持材10の上面側10aに向き合うように取り付けられ、前記保護材吸着部32の吸着力によって保持される。よって、前記リベットWの頭部上面W2bは、前記保護材20によって保護されるため、前記部品キャリア材1を搬送するなどしても傷が付きにくく、しかも、前記保護材20は、前記保護材吸着部32によって保持されるので搬送時に前記支持材10から剥がれ難い。
【0023】
一方、前記保護材20は、上述したようにその表面21に前記吸着材を貼り付けた状態で前記支持材10から剥がせる剥離性を有している。これにより、前記保護材20は、前記頭部上面W2bを保護している図5の状態から図6のように取り除かれると、前記表面21に前記保護材吸着部32を付着させた状態で前記支持材10から取り除かれる。よって、作業者等により前記リベットWを取り出す場合、支持材10の上面側10aに粘着面がむき出しとなる前記保護材吸着部32を残すことが無いので作業者は、前記保護材吸着部32に触れることがなく、これによる前記支持材10の位置ズレなどの不具合が低減する。
【0024】
なお、本実施形態において、前記部品吸着部31および前記保護材吸着部32は、何れも両面テープとしたがこれに限定されることはなく、例えば、シート状の磁石としてもよく、この場合、前記支持材10、前記保護材20、前記部品の材質を磁気が帯びる材質とすればよい。また、前記部品は、頭部Wを備えたリベットWとしたがこれに限定されることはなく、例えば、樹脂材あるいは金属から成るワッシャ(図示せず)などであってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 部品キャリア材
10 支持材
10a 上面側
11 下穴
20 保護材
21 表面
22 裏面
31 部品吸着部
31a 下穴
32 保護材吸着部
W リベット
W1 軸部
W2 頭部
W2a 頭部座面
W2b 頭部上面
図1
図2
図3
図4
図5
図6