特許第6339877号(P6339877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社東洋製作所の特許一覧

<>
  • 特許6339877-ろ過器およびろ過槽 図000002
  • 特許6339877-ろ過器およびろ過槽 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339877
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】ろ過器およびろ過槽
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/02 20060101AFI20180528BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   B01D23/10 Z
   C02F1/28 H
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-136508(P2014-136508)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-13515(P2016-13515A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000151885
【氏名又は名称】株式会社東洋製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 修
(72)【発明者】
【氏名】藪下 英司
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−025092(JP,A)
【文献】 特開2005−131565(JP,A)
【文献】 特開2002−316181(JP,A)
【文献】 実開平01−163520(JP,U)
【文献】 特開平02−238835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D24/00−24/48
B01D29/00−29/96
B01D39/00−39/20
C02F3/02−3/10
C02F1/28
A01K61/00−63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水孔が形成された容器と、前記容器内に充填されたろ過体と、を備えるろ過器であって、
前記ろ過体は、前記容器に流入した流体の流下方向に対して直交するように横向きに設置された複数の組紐状繊維ろ過材を含むろ過材の層が複数積層されてなることを特徴とするろ過器。
【請求項2】
透水孔が形成された容器と、前記容器内に充填されたろ過体と、を備えるろ過器であって、
前記ろ過体は、前記容器に流入した流体の流下方向に対して直交するように横向きに設置された複数の組紐状繊維ろ過材と複数の棒状の油吸収材とからなり、
前記容器内に、前記組紐状繊維ろ過材の層と、前記油吸収材の層とが、積層されていることを特徴とする、ろ過器。
【請求項3】
前記容器が、網状部材を組み合わせることにより形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のろ過器。
【請求項4】
垂れ壁と、
前記垂れ壁の下流側に設置された越流壁と、
前記越流壁を越流した流体が流入するように設けられたろ過器と、を備えるろ過槽であって、
前記ろ過器が、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のろ過器であることを特徴とする、ろ過槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過器およびろ過槽に関する。
【背景技術】
【0002】
工事において発生した濁水は、濁水プラントにおいて処理した後、工事用の水として再利用するか、河川等に放流するのが一般的である。
処理水を工事用水として使用する場合においては、処理水中に高分子や軽量フロック等の浮遊物質が残っていると、重機やポンプ等の故障の原因となる。
また、処理水を放流した河川から農業用水用や魚飼育用水用に取水をしている場合には、放流基準内で処理した処理水であっても、浮遊物質や油分等が問題となる可能性がある。
【0003】
そのため、処理水を再利用するような場合には、ろ過効率の高いろ過器を使用することが望まれる。
ろ過効率が高いろ過器としては砂ろ過器が知られているが、砂ろ過器は比較的高価である。また、砂ろ過器は、濁水処理設備の一部として構築する必要があり、トンネル工事等の仮設備として簡易的に用いることは困難であった。
【0004】
一方、簡易的なろ過器としては、組紐状繊維ろ過材を使用した繊維ろ過器がある。
繊維ろ過器は、垂直に吊り下げられた組紐状繊維ろ過材を、ろ過槽内で濁水の流れに対して直交する方向に列状(カーテン状)に配設しているのが一般的である。
また、特許文献1には、空隙率の大きい編組状接触材(ろ過材)が内部に配設された沈殿槽および浮上分離槽を備えた繊維ろ過器であって、沈殿槽から浮上分離槽に濁水を通過させることで、浮遊物を編組状接触材に接触させてろ過処理を行う繊維ろ過器が開示されている。編組状接触材は、濁水の流れに沿うように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−117756号公報
【特許文献2】特開2002−224504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の繊維ろ過器では、上下端を固定した状態で設けられた紐状のろ過材が、濁水の水流に押されるため、ろ過材同士の間に隙間が形成されるおそれがある。ろ過材同士に隙間があると、浮遊物質や油分が吸着されずに流下してしまうおそれがある。
【0007】
このような観点から、本発明は、浮遊物質等の除去効果が高い簡易型のろ過器およびろ過槽を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のろ過器は、透水孔が形成された容器と、前記容器内に充填されたろ過体とを備えるろ過器である。前記ろ過体は、前記容器に流入した流体の流下方向に対して直交するように横向きに設置された複数の組紐状繊維ろ過材を含むろ過材の層が複数積層されてなることを特徴としている。
【0009】
かかるろ過器は、組紐状繊維ろ過材を含むろ過材が、流体の流れに対して直交する向きで、容器内に充填されているため、水流によって組紐状繊維ろ過材が動くことがなく、処理水中の浮遊物質などを組紐状繊維ろ過材に接触させて、効率的に吸着させることができる。
【0010】
また、前記ろ過体が、複数の組紐状繊維ろ過材と複数の棒状の油吸収材とからなり、前記容器内に、前記組紐状繊維ろ過材の層と前記油吸収材の層とが積層されていれば、油除去効果が大幅に上昇し、処理効果がより向上する。
【0011】
さらに、前記容器が、網状部材を箱状に組み合わせることにより形成されていれば、処理水の流れを阻害することなく、かつ、ろ過材を確実に保持することができる。
【0012】
また、本発明のろ過槽は、垂れ壁と、前記垂れ壁の下流側に設置された越流壁と、前記越流壁を越流した流体が流入するように設けられた前記ろ過器とを備えることを特徴としている。
【0013】
かかるろ過槽によれば、垂れ壁および越流壁により沈殿効果が促進するため、浮遊物等の一部が除去された上澄みに対してろ過器によるろ過が行われることになる。したがって、より効果的な水処理を行うことができ、かつ、ろ過器(ろ過体)の長期利用化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、浮遊物質の除去効果が高い簡易型のろ過器およびろ過槽を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のろ過槽を示す平面図である。
図2図1に示すろ過槽の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態のろ過槽1は、トンネル工事において発生する濁水Wのろ過処理を行うものであって、図1および図2に示すように、垂れ壁11と越流壁12とろ過器2とを有している。
ろ過槽1は、トンネルの坑外に設置されており、トンネル坑内から送水管5を介して輸送された濁水W中の浮遊物や油分等をろ過し、処理水Wとして排水する。
【0017】
ろ過槽1は、平面視長方形の枠状に形成された槽壁13と、槽壁13の底面を塞ぐ槽底14とにより形成された、いわゆるノッチタンクをベースに形成されている。本実施形態のろ過槽1は、上面が開放されていて、送水管5により輸送された濁水Wは、ろ過槽1の上部から投入される。
なお、ろ過槽1の形状寸法は限定されるものではなく、工事によって発生する濁水Wの量や設置スペース等に応じて適宜設定すればよい。
【0018】
送水管5は、トンネルの切羽(または、湧水発生箇所)からトンネル坑外のろ過槽1まで延設された管路である。
送水管5は、図2に示すように、ろ過槽1の長手方向の一方(図2において左側)の端部の上方から、濁水Wを投入することが可能に設けられている。
送水管5を構成する材料は限定されないが、例えば鋼管により構成すればよい。また、送水管5の内径等は、濁水Wの量等に応じて適宜設定すればよい。
【0019】
ろ過槽1の槽壁13の他方(図面において右側)の面には、処理水Wを排水するための排水口15が形成されている。
排水口15は、槽壁13に形成された貫通孔に筒状の部材を取り付けることにより形成されている。
【0020】
排水口15は、ろ過槽1の深さ方向中央よりも上側に形成されていて、ろ過槽1内でろ過された処理水Wの上澄みを排水することが可能に構成されている。
なお、排水口15の形状、数や形成箇所等は限定されない。
【0021】
ろ過槽1の内部は、図1および図2に示すように、垂れ壁11および越流壁12により3室(第一室R〜第三室R)に仕切られている。
垂れ壁11および越流壁12は、濁水Wの流れ(長手方向)に対して直交するようにろ過槽1内を仕切っている。すなわち、垂れ壁11および越流壁12は、ろ過槽1の短手方向に沿って形成されている。垂れ壁11および越流壁12の両端は、槽壁13に接合されている。
【0022】
垂れ壁11は、図2に示すように、第一室Rと第二室Rとの境界に設けられている。
垂れ壁11は、槽底14との間に隙間を有した状態で形成された仕切り壁である。ろ過槽1の第一室Rに投入された濁水Wは、垂れ壁11の下をくぐって第二室Rに至る。
垂れ壁11の下端と槽底14との隙間の大きさ(高さ)は限定されるものではないが、少なくとも送水管5の内空面積よりも、隙間の面積の方が大きくなるようにする。
【0023】
垂れ壁11の上端は、槽壁13の上端と同じ高さとしているが、垂れ壁11の上端の位置は、濁水Wが越流することのない高さであれば、これに限定されない。
また、本実施形態では、垂れ壁11を、ろ過槽1の長手方向中央よりもやや上流側(送水管5側)に形成しているが、垂れ壁11の位置は限定されない。
【0024】
越流壁12は、垂れ壁11の下流側(排水口15側)に、垂れ壁11と隙間をあけて形成された仕切り壁であって、第二室R2と第三室R3との境界に設けられている。
図2に示すように、越流壁12の上端は、垂れ壁11および槽壁13の上端よりも低く、越流壁12の下端は槽底14に当接している。
【0025】
なお、垂れ壁11と越流壁12との間隔の大きさは限定されない。
また、越流壁12の上端と垂れ壁11および槽壁13の上端との高低差の大きさも限定させるものではないが、垂れ壁11の下端を潜った濁水Wが、垂れ壁11および槽壁13を越流することなく、越流壁12のみを越流することが可能な大きさとする。
【0026】
図1および図2に示すように、ろ過器2は、越流壁12を越流した濁水Wの全てが流入するように、越流壁12の下流側の側面に沿って形成されている。
ろ過器2は、第三室Rに設けられた容器3と、容器3に充填されたろ過体4とを備えている。
【0027】
容器3は、エキスパンドメタル(網状部材)を、ろ過槽1内で組み合わせることで形成されている。すなわち、容器3は、多数の開口(透水孔)が形成された板状部材を組み合わせることにより形成されている。
本実施形態では、図2に示すように、2枚のエキスパンドメタルをL字状に組み合わせることにより、容器3の底面31と下流側面32を形成している。そして、底面31の上流側の端面を越流壁12の側面に突き合わせるとともに、底面31および下流側面32の側端面(図1における上下の端面)を槽壁13に突き合わせた状態で固定することで、箱型の容器3を形成している。
【0028】
なお、容器3の構成は限定されるものではなく、例えば、エキスパンドメタルを組み合わせることにより箱型に形成したものを越流壁12の下流側面に固定してもよい。また、容器3は、透水孔が形成されたものであれば、必ずしもエキスパンドメタルにより形成する必要はなく、例えば、貫通孔が形成された鋼板を使用してもよい。また、容器3は、底面31のみをエキスパンドメタル等の透水孔が形成された部材により形成し、下流側面32等の側面は貫通孔がない鋼板等により形成してもよい。
【0029】
本実施形態の容器3は、底面31が排水口15の内空の上端以上の高さに位置するように形成されている。すなわち、本実施形態の容器3は、越流壁12の下流側(図面において右側)の水面よりも高い位置に形成されている。
なお、容器3の底面31は、必ずしも水面よりも高い位置に形成する必要はないが、容器3の下流側面32の上端は水面よりも高い位置となるように形成する必要がある。底面31が水面よりも低い位置となるように容器3を形成する場合には、下流側面32の水面よりも上の部分には透水孔がない部材により構成する。
【0030】
本実施形態のろ過体4は、複数の組紐状繊維ろ過材41,41,…と複数の棒状の油吸収材42,42,…とからなる。
容器3内において、複数の組紐状繊維ろ過材41,41,…は、容器3に流入した濁水Wの流下方向に対して直交するように横向きに(ろ過槽1の短手方向に沿って)設置されている。
また、容器3内では、複数の組紐状繊維ろ過材41,41,…が、長手方向に沿って並設されていて、層を形成している。
【0031】
組紐状繊維ろ過材41と同様に、複数の棒状の油吸収材42,42,…は、容器3に流入した濁水Wの流下方向に対して直交するように横向きに(ろ過槽1の短手方向に沿って)設置されている。
また、複数の油吸収材42,42,…は、長手方向に沿って並設されていて、層を形成している。
【0032】
本実施形態では、組紐状繊維ろ過材41の層と、油吸収材42の層とを交互に積層することで、ろ過体4を形成している。
なお、ろ過体4は、必ずしも組紐状繊維ろ過材41の層と油吸収材42の層とを積層して形成する必要はなく、組紐状繊維ろ過材41と油吸収材42とがランダムに配設されていいもよい。
【0033】
送水管5を介して輸送された濁水Wは、まず、ろ過槽1の第一室Rに投入される。
第一室Rに投入された濁水Wは、垂れ壁11の下端を潜りぬけて第二室R2に流入した後、越流壁12を越流して容器3に流入する。
容器3に流入した濁水Wは、組紐状繊維ろ過材41および油吸収材42に接触することで浮遊物質や油分などが除去された処理水Wとして第三室Rに流下する。
その後、第三室R内の処理水Wの上澄みが排水口15から排水される。
【0034】
本実施形態のろ過槽1によれば、組紐状繊維ろ過材41および油吸収材42が濁水Wの流れに対して直交する向きで、容器3内に充填されているため、水流によって組紐状繊維ろ過材41および油吸収材42が動くことがなく、濁水W中の浮遊物質や油分などを効率的に吸着させることができる。
そのため、処理水Wを工事用水として再利用する場合であっても、機械設備等への悪影響を防止することができる。また、処理水Wを河川等に放流する場合や農業用水などに使用する場合であっても、浮遊物質や油分などにより問題が生じることもない。
【0035】
ろ過槽1によれば、比較的コンパクトな装置により効率的にろ過処理を行うことができるため、設置スペースが限られている場合であっても、濁水等のろ過処理を行うことができる。
動力を要することなく、水の流れにより浮遊物質などをろ過体4に吸着させるため、沈殿時間等を必要とせず、連続的な水処理を行うことができる。
また、動力が不要なため、現地の状況(動力の確保の可否や設置個所等)に限定されることなく、使用することができるとともに、安価である。
【0036】
容器3がエキスパンドメタルにより形成されているため、水の流れを阻害することがなく、かつ、ろ過体4を確実に保持することができる。
また、容器3は、底面31が水面よりも高くなるように形成されているため、容器3に流入した濁水がろ過体4を確実に通過し、浮遊物質や油分の除去が効率的に行われる。
【0037】
また、ろ過槽1に投入された濁水は、垂れ壁11および越流壁12により沈殿効果が促進するため、浮遊物等の一部が除去された上澄みに対してろ過器3によるろ過を行うことができる。そのため、より効果的なろ過処理を行うことができ、かつ、ろ過器3(ろ過体4)を長期的に利用できる。
ろ過槽1の排水口15は、比較的高い位置に形成されているため、処理水の上澄みを排水することを可能としている。
【0038】
組紐状繊維ろ過材41は、浮遊物などが付着して除去効果(吸着効果)が低下しても、洗浄することにより除去効果が復活するため、維持管理が容易である。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、トンネル工事の濁水処理に本発明のろ過槽を使用する場合について説明したが、ろ過槽の使用箇所はトンネル工事に限定されるものではなく、あらゆる作業現場(建設工事や工場等)の簡易濁水処理設備として使用することができる。また、河川や水路などの水処理にも使用することができる。
【0040】
前記実施形態では、ろ過体として組紐状繊維ろ過材と油吸収材とを組み合わせたものを使用したが、ろ過体は、組紐状繊維ろ過材のみで形成してもよい。また、ろ過体には、油吸収材に代えて、あるいは油吸収材に加えて、他のろ過材を使用してもよい。
【0041】
ろ過槽に配設された仕切り壁(垂れ壁および越流壁)の数は限定されない。
送水管により輸送された濁水をろ過槽の上方から投入する場合について説明したが、濁水はろ過槽の側面や底面等から投入してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ろ過槽
11 垂れ壁
12 越流壁
13 槽壁
14 槽底
15 排水口
2 ろ過器
3 容器
4 ろ過体
41 組紐状繊維ろ過材
42 油吸収材
5 送水管
W 処理水(流体)
濁水(流体)
図1
図2