特許第6339907号(P6339907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 松浦薬業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339907
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】漢方ゼリー医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/65 20060101AFI20180528BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20180528BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20180528BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20180528BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20180528BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20180528BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20180528BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20180528BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20180528BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   A61K36/65
   A61K36/484
   A61K9/06
   A61K47/36
   A61K47/32
   A61K47/18
   A61K47/22
   A61K47/42
   A61K47/10
   A61K47/12
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-186624(P2014-186624)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-56155(P2016-56155A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年8月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000187471
【氏名又は名称】松浦薬業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100075476
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐見 忠男
(72)【発明者】
【氏名】岩嶋 淨
(72)【発明者】
【氏名】良知 紀子
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−256495(JP,A)
【文献】 特開2007−238561(JP,A)
【文献】 特開2004−059503(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103083471(CN,A)
【文献】 特開2007−060957(JP,A)
【文献】 特開2003−018975(JP,A)
【文献】 神奈川県農業総合研究所研究報告,1996年,No.137,pp.1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
漢方原薬を含み、基剤としてカラギーナン及びカンテン末を添加することによってゼリー状とした漢方ゼリー医薬組成物であって、
上記漢方原薬は、芍薬甘草湯軟エキスであり、
甘味料及び矯味剤を含有し、
上記甘味料は、粉末還元麦芽糖水飴、アセスルファムカリウム及びアスパルテームから選ばれる少なくとも1種であり、
上記矯味剤は、キシリトール、エリスリトール、トレハロース水和物、無水クエン酸及びクエン酸ナトリウム水和物から選ばれる少なくとも1種であり、
シュウ酸塩を実質的に含まないことを特徴とする漢方ゼリー医薬組成物。
【請求項2】
包材に包装されている請求項1に記載の漢方ゼリー医薬組成物。
【請求項3】
上記包装の充填量が1〜20gである請求項2に記載の漢方ゼリー医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュウ酸塩によって及ぼされる悪影響の解消を目的とした漢方ゼリー医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
漢方製剤の医療用医薬品では、散剤または顆粒剤が多く、一般用医薬品では散剤、顆粒剤に加え、錠剤、液剤などがある。漢方原薬は一回の服用量が数百ミリグラムから数グラムを超えるものに及び、吸湿性を有することから原薬の2〜3倍量の賦形剤を添加して製剤化しなければならず、特に3gを超えるものは、一回服用量が非常に多くなり、服用しづらく、口中に広がりむせたり、苦味が残ったり、服用後長時間にわたって違和感を残したり、問題があった。錠剤の場合も3gを超えるものは、一錠あたりの重量が三百ミリグラムを超える場合がしばしばで、かつ錠数も数錠と多く、服用のしづらさが問題であった。また、液剤は誤嚥を最も引き起こしやすく、誤嚥性肺炎に繋がることから、特に高齢者には敬遠されている。このように漢方製剤の服用上の問題を解決できる製剤技術が望まれていた。
【0003】
上述の服用上の問題を解決する手段として漢方製剤のゼリー剤が知られている。ゼリー剤とする場合、一般的にゼラチンが用いられるが、該ゼラチンを用いたものは、保存安定性が悪く冷蔵(冷蔵庫内で4℃程度)保存が必要になるという問題を有していた。そして、この問題を解決する為にゼラチンをカラギーナン、ローカストビーンガムに変えたゼリー剤が考案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−43474号公報
【特許文献2】特開2001−114696号公報
【特許文献3】特願平9−187233号公報
【特許文献4】特願平9−194346号公報
【特許文献5】特開2004−59503号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本東洋医学雑誌、54:645−650,浜田ら
【非特許文献2】Prog.Med.18:783−788,1998 下平ら
【非特許文献3】薬局 42:1643−1649,1991 内田ら
【非特許文献4】薬局 43:213−217,1992 太田ら
【非特許文献5】薬局 44:487−490,1993 加納ら
【非特許文献6】薬局 44:673−678,1993 加納ら
【非特許文献7】薬局 44:971−978,1993 菊池ら
【非特許文献8】薬事 39:2247−2252,1997 下平ら
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記漢方原薬は、通例、適当な大きさにした生薬を、適当量の常水を加えて、沸騰することにより抽出されるが、この時、生薬に含まれるシュウ酸塩も大量に抽出されて漢方原薬中に含まれてしまう。こうした漢方原薬(エキス)に含まれるシュウ酸塩は、味覚の悪さが漢方エキス製剤の服用感を損ねるだけでなく、尿路結石の原因化合物として、結石の問題を引き起こす可能性が大きい。しかし、従来の漢方製剤において、漢方原薬に含まれるシュウ酸塩がもたらす問題に何ら触れてはいなかった。
【0007】
本発明は、このような問題を引き起こすシュウ酸塩をできるだけ取り除く漢方原薬を配合した漢方ゼリー医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、シュウ酸塩除去操作として、沸騰抽出された漢方抽出液を濃縮後、水若しくは含水アルコール溶液に再溶解させたのちに濾過すること、若しくは、低温で水若しくは含水アルコールで抽出することで、シュウ酸塩をできるだけ取り除き目的の漢方原薬が得られ、本発明を完成させた。本発明の経口医薬組成物は、特にシュウ酸塩でもたらされる悪い味が少なく、尿路結石を起こす可能性が少なく、服用感に優れるものとなる。
【0009】
すなわち本発明は、漢方原薬を含み、基剤としてカラギーナン及びカンテン末を添加することによってゼリー状とした漢方ゼリー医薬組成物であって、上記漢方原薬は、生薬からシュウ酸除去操作を経て抽出されたものであることを特徴とする漢方ゼリー医薬組成物を提供する。
上記シュウ酸塩除去操作は、生薬から沸騰抽出された濃縮成分を水若しくは含水アルコール溶液に溶解させた後に濾過すること、あるいは、水若しくは含水アルコール生薬を用いて生薬から低温抽出することによって行われる。
また、上記シュウ酸塩除去操作を経て得られた組成物中におけるシュウ酸塩の含有量は、0.7mg/g未満である。
なお、本発明の漢方ゼリー医薬組成物は、本発明を逸脱しない限り、特に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における漢方ゼリー医薬組成物には、種々の薬効を得ることを目的として、漢方原薬が主成分として配合される。該漢方原薬には、液状、軟稠エキス状、乾燥エキス状のいずれの形態のものを使用してもよい。
本発明において、上記漢方原薬には、生薬からシュウ酸塩除去操作を経て抽出されたものが使用される。なお、シュウ酸塩を除去した漢方原薬は、既存の医薬品原薬として既に用いられており、医薬品としての効能効果を損なうものではない。例えば、日本薬局方カンゾウエキスは、水抽出した後に濃縮し、エタノールを定量加えることで、エタノールに不溶なシュウ酸塩などを除いている。このように、シュウ酸塩を除く行為は一般的に知られたものであるが、漢方ゼリー剤の機能性の向上のために検討されたことはない。
【0011】
上記シュウ酸塩除去操作としては、以下の2つの方法が主に挙げられる。
(1)生薬を、水若しくは含水アルコールで沸騰抽出した後、抽出液を濃縮し、その濃縮液を水若しくは含水アルコール溶液に溶解させた後、不溶物を濾過する方法。
(2)生薬を水若しくは含水アルコールで低温抽出し、不溶物を遠心分離で濾過して除く方法。
また、シュウ酸塩を除去可能であれば、シュウ酸塩除去操作は上記2つの方法に限定されるものではない。
なお、上記シュウ酸塩は、主にシュウ酸カルシウムとして抽出液中に存在しており、該シュウ酸カルシウムは、常温の水及び含水アルコールに対して難溶、あるいは不溶であるから、上記(1)又は(2)の方法でシュウ酸カルシウムを除去することができる。
【0012】
本発明における漢方ゼリー医薬組成物には、該組成物をゼリー状にして飲みやすくすることを目的として、基剤が配合される。該基剤には、カラギーナン及びカンテン末が使用される。
上記漢方ゼリー医薬組成物中において、基剤であるカンテン末及びカラギーナンの各配合量は、それぞれ0.1〜1.0質量%であることが好ましく、0.3〜0.6質量%であることがより好ましい。漢方ゼリー医薬組成物中におけるカンテン末あるいはカラギーナンの配合量が0.1質量%に満たない場合、十分な服用感の改善に至らないおそれがあり、1.0質量%を超える場合、服用感の悪化を招くおそれがある。
【0013】
本発明における漢方ゼリー医薬組成物にあっては、更なる服用感の向上を図るべく、甘味料及び矯味剤が混和されることが望ましい。
上記甘味料は、漢方ゼリー医薬組成物に甘みをつけるためのものであって、上記漢方原薬による苦味を緩和するものである。該甘味料としては、粉末還元麦芽糖水飴、アセスルファムカリウム、およびアスパルテームが挙げられ、これらの群から選択される少なくとも1種が使用される。
上記甘味料の添加率は、粉末還元麦芽糖水飴であれば1〜24質量%が好ましく、より好ましくは5〜18質量%であり、アセスルファムカリウムであれば0.001〜0.04質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.03質量%であり、アスパルテームであれば0.01〜0.4質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜0.3質量%である。
【0014】
上記矯味剤は、上記漢方原薬のような苦味を有するものを服用しやすくするものである。該矯味剤としては、キシリトール、エリスリトール、トレハロース水和物、無水クエン酸、およびクエン酸ナトリウム水和物が挙げられ、これらの群から選択される少なくとも1種が使用される。
上記甘味料の添加率は、キシリトール又はトレハロース水和物であれば1〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜25質量%であり、エリスリトールであれば1〜10質量%が好ましく、より好ましくは2〜8質量%であり、無水クエン酸であれば0.01〜0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜0.4質量%であり、クエン酸ナトリウム水和物であれば0.01〜0.4質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜0.3質量%である。
【0015】
また本発明の漢方ゼリー医薬組成物には、上記漢方原薬、上記基剤、上記甘味料及び上記矯味剤の他に、防腐剤、香料などの成分を混和してもよい。
上記防腐剤は、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなど、医薬品に配合できる防腐剤から任意に選んでよく、配合量は基準に定める量の範囲で、任意の量を選択できる。
また、香料も医薬品の基準の範囲内で添加することができる。
【0016】
本発明の漢方ゼリー医薬組成物は、上記成分を配合し、ゼリー状とする以外は、従来公知の漢方ゼリー医薬組成物の調製法に従って、例えば、ゼリー組成物の基剤を適当な温度で分散媒に分散させ、温度を調節しながらこれに漢方原薬を分散させ、その後冷却してゲル化させることによって調製することが可能である。
本発明の漢方ゼリー医薬組成物の充填量は、特に限定されないが、例えば服用し易いスティックに1包あたり1回あたりの投与量1〜20gを充填し、服用者に正しく服用させることができる。
【実施例】
【0017】
以下に本発明の実施例と比較例を挙げて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0018】
〔葛根湯軟エキスの調製〕
カッコンを4kg、マオウとタイソウを各2kg、ケイヒとシャクヤクを各1.5kg、カンゾウを1kg、及びショウキョウを0.5kgとり、常水125Lを加えて、沸騰後30分間抽出し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、葛根湯軟エキスA 5kgを得た。
上記葛根湯軟エキスAの内の2.5kgを取り、常水13kgに加えて撹拌した後に遠心分離ろ過することにより、不溶物を除去した。その後、ろ液を減圧濃縮して、シュウ酸塩をできる限り除いた葛根湯軟エキスB 1.8kgを得た。
【0019】
〔試料の作製1〕
カンテン末を予め熱湯に溶解させたうえで、葛根湯軟エキスA,Bをそれぞれ用いるとともに、常法に従って表1に示す組成でゼリー剤を調製し、実施例1及び比較例1の試料を得た。
【0020】
【表1】

【0021】
〔比較試験1〕
上記実施例1と比較例1のゼリー剤をそれぞれアルミラミネート包材に15gずつ封入し、服用した結果、実施例1は比較例1に比べて渋みが少なく、服用がしやすかったことから、服用感に優れていた。
また、実施例1と比較例1に含まれるシュウ酸塩をそれぞれ定量した(その結果を表1に示す)。表1に示すように、実施例1の方が圧倒的にシュウ酸塩が少なかった。
【0022】
〔芍薬甘草湯軟エキスの調製〕
シャクヤク3kgとカンゾウ3kgとを10倍量の30vol%エタノールで50℃にて1時間抽出し、ろ過する。ろ液を減圧濃縮して芍薬甘草湯軟エキスA 4kgを得た。
上記芍薬甘草湯軟エキスAの内の2kgを取り、常水5Lに加えて撹拌した後に遠心分離ろ過して不溶物を除去した。その後、ろ液を減圧濃縮して、シュウ酸塩をできる限り除いた芍薬甘草湯軟エキスB 1.8kgを得た。
【0023】
〔試料の作製2〕
カンテン末を予め熱湯に溶解させたうえで、芍薬甘草湯軟エキスA,Bをそれぞれ用いるとともに、常法に従って表2に示す組成でゼリー剤を調製し、実施例2及び比較例2の試料を得た。
【0024】
【表2】
【0025】
〔比較試験2〕
上記実施例2と比較例2のゼリー剤をそれぞれアルミラミネート包材に10gずつ封入し、服用した結果、実施例2は比較例2に比べて苦みや渋みが非常に少なく、服用がしやすかったことから、服用感に優れていた。
また、実施例2と比較例2に含まれるシュウ酸塩をそれぞれ定量した(その結果を表2に示す)。表2に示すように、実施例2の方が圧倒的にシュウ酸塩が少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によって、渋み苦みが少なく服用し易く、シュウ酸塩が少なく尿路結石の原因を作りにくい漢方ゼリー医薬組成物を提供できることが可能となる。