(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に構築された通信バスに予め設けられたn個(nは2以上の自然数)のコネクタのそれぞれに互いに交換可能に接続され、各々が上記コネクタに割り当てられた互いに異なる個体識別子で識別される車載センサであって、
当該車載センサの電源投入後に、接続している上記コネクタに割り当てられた上記個体識別子を取得するID取得部と、
上記ID取得部で取得した上記個体識別子を記憶識別子として記憶する不揮発性のID記憶部と、
上記コネクタに割り当てられたn個の上記個体識別子を予め記憶した不揮発性のIDセット記憶部と、
上記電源投入に伴い、上記ID取得部で新たに取得した上記個体識別子である新規識別子が、上記ID記憶部に既に記憶している上記記憶識別子と一致しているか否かを判定する一致判定手段と、
上記ID取得部で取得した上記新規識別子を含むID信号を上記通信バス上に送出するID信号送出手段と、
上記IDセット記憶部に記憶しているn個の上記個体識別子が、自己の上記ID取得部で取得した上記新規識別子及び他の車載センサが上記通信バス上に送出した(n−1)個の上記ID信号に含まれる上記新規識別子に、全て一致しているか否かを判定する全ID判定手段と、
上記一致判定手段における判定結果と上記全ID判定手段における判定結果とに基づいて、接続先の上記コネクタが他の車載センサと入れ替わった交換、及び、上記ID取得部で取得した上記新規識別子の異常を判定する交換異常判定手段と、を備える
車載センサ。
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のn個の車載センサと、前記車両に構築され、上記車載センサが接続するn個のコネクタが設けられた前記通信バスとを有し、上記通信バスの上記コネクタのそれぞれに上記車載センサが互いに交換可能に接続され、各々の上記車載センサが上記コネクタに割り当てられた互いに異なる個体識別子で識別される車載センサシステムであって、
n個の上記コネクタにそれぞれ接続して、上記個体識別子を定めるn組の設定回路を備える
車載センサシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、複数の同じ車載センサにそれぞれ予め識別子を割り当てておく代わりに、各車載センサが接続するコネクタに、予め互いに異なる識別子(個体識別子)を割り当てておき、各々の車載センサを、コネクタに割り当てられた個体識別子で識別することが行われる。
しかしながら、このようなコネクタに割り当てられた個体識別子を用いる場合において、コネクタ端子の故障やコネクタに接続する車載センサ外部の回路の故障(配線の断線や短絡)、車載センサ側の回路の故障などにより、車載センサが認識する(または記憶する)個体識別子に異常を生じる(正しくない個体識別子を認識する)場合がある。このため、このような異常の発生を、車載センサ自体で検知できることが望まれる。
【0006】
一方、車両のメンテナンス時などに車載センサが一旦取り外され、再接続する際に、他の車載センサとの間で、接続先のコネクタが入れ替わる場合があり得る。この場合には、車載センサからすれば、認識する個体識別子が以前とは違うことになる。しかし、この場合は、入れ替わった接続先のコネクタに割り当てられた個体識別子(以前と異なる個体識別子)を新たに用いれば良く、故障等により個体識別子に異常が生じた場合と同様に扱うのは好ましくない。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、通信バスのコネクタに、他の車載センサと互いに交換可能に接続され、交換によって接続先のコネクタが他の車載センサと入れ替わったことが検知でき、かつ、コネクタに割り当てられた個体識別子の車載センサでの認識に異常が生じた場合には、その異常を検知できる車載センサ、及び、このような車載センサを通信バスに複数接続した車載センサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その一態様は、車両に構築された通信バスに予め設けられたn個(nは2以上の自然数)のコネクタのそれぞれに互いに交換可能に接続され、各々が上記コネクタに割り当てられた互いに異なる個体識別子で識別される車載センサであって、当該車載センサの電源投入後に、接続している上記コネクタに割り当てられた上記個体識別子を取得するID取得部と、上記ID取得部で取得した上記個体識別子を記憶識別子として記憶する不揮発性のID記憶部と、上記コネクタに割り当てられたn個の上記個体識別子を予め記憶した不揮発性のIDセット記憶部と、上記電源投入に伴い、上記ID取得部で新たに取得した上記個体識別子である新規識別子が、上記ID記憶部に既に記憶している上記記憶識別子と一致しているか否かを判定する一致判定手段と、上記ID取得部で取得した上記新規識別子を含むID信号を上記通信バス上に送出するID信号送出手段と、上記IDセット記憶部に記憶しているn個の上記個体識別子が、自己の上記ID取得部で取得した上記新規識別子及び他の車載センサが上記通信バス上に送出した(n−1)個の上記ID信号に含まれる上記新規識別子に、全て一致しているか否かを判定する全ID判定手段と、上記一致判定手段における判定結果と上記全ID判定手段における判定結果とに基づいて、接続先の上記コネクタが他の車載センサと入れ替わった交換、及び、上記ID取得部で取得した上記新規識別子の異常を判定する交換異常判定手段と、を備える車載センサである。
【0009】
この車載センサでは、交換異常判定手段において、一致判定手段における判定結果と全ID判定手段における判定結果とに基づいて、接続先のコネクタが他の車載センサと入れ替わった交換、及び、ID取得部で取得した新規識別子の異常を判定する。
一致判定手段で新規識別子が記憶識別子と一致していないと判定された場合には、接続しているコネクタの端子の故障やこれに接続する車載センサ外部の回路の故障(配線の断線や短絡)、車載センサ側の回路の故障などの異常発生が考えられる。そのほか、接続しているコネクタや車載センサ自体は正常であり、車両のメンテナンス時などに、接続先のコネクタが他の車載センサと入れ替わった交換の場合も考えられる。
但し、一致判定手段で新規識別子が記憶識別子と一致していないと判定された場合でも、全ID判定手段で予め記憶しているn個の個体識別子が自己及び他の車載センサの新規識別子に全て一致していると判定された場合、即ち、n個の個体識別子のいずれもが、それぞれ自己及び他の車載センサの新規識別子のいずれかに一致した場合には、交換であることが判る。交換の場合には、接続しているコネクタ及び全ての車載センサは正常であり、CANバス上にn個の個体識別子の全てが重複することなく送出されるからである。一方、新規識別子が記憶識別子と一致せず、さらに、全ID判定手段でn個の個体識別子が自己及び他の車載センサの新規識別子に全て一致していると判定されなかった場合、即ち、n個の個体識別子のいずれかが、自己及び他の車載センサの新規識別子と一致しなかった場合には、交換には該当しない。この場合は、n個の個体識別子の中に、自己及び他の車載センサの新規識別子のいずれにも該当しない個体識別子(以下、非該当の個体識別子ともいう)が存在する場合であり、上述の故障などの異常発生により、自己の新規識別子が他の車載センサの新規識別子と重複したり、新規識別子が個体識別子に該当しないコードに変わるなど、新たに取得した新規識別子に異常が生じていることが判る。
【0010】
このように、この車載センサでは、通信バスのコネクタに、他の車載センサと互いに交換可能に接続され、接続しているコネクタや車載センサ自体は正常で、交換によって接続先のコネクタが他の車載センサと入れ替わった場合には、この交換が検知でき、かつ、コネクタに割り当てられた個体識別子(新規識別子)の車載センサでの認識に異常が生じた場合には、この異常を検知することができる。
なお、交換異常判定手段で判定を行うに当たっては、一致判定手段における判定結果と、全ID判定手段における判定結果の両方に基づいて、交換及び新規識別子の異常が判定できれば良く、一致判定手段による判定と、全ID判定手段による判定のいずれを先に行っても良い。
【0011】
さらに、上述の車載センサであって、前記交換異常判定手段は、前記一致判定手段で前記新規識別子が前記記憶識別子と一致していないと判定され、かつ、前記全ID判定手段でn個の前記個体識別子が自己及び他の車載センサの上記新規識別子に全て一致していると判定された場合に、前記交換であると判定し、上記一致判定手段で上記新規識別子が上記記憶識別子と一致していないと判定され、かつ、上記全ID判定手段でn個の上記個体識別子のいずれかが自己及び他の車載センサの上記新規識別子に一致していないと判定された場合に、前記異常であると判定する車載センサとすると良い。
【0012】
この車載センサでは、交換によって接続先のコネクタが他の車載センサと入れ替わった車載センサについては、この交換を、新規識別子の異常が発生している車載センサについては、この異常を、それぞれ適切に検知することができる。
【0013】
さらに、上述のいずれかの車載センサであって、前記個体識別子を含むセンサ信号を、前記通信バス上に送出し、上記通信バスでの通信を行う通信手段と、前記交換異常判定手段で前記交換であると判定した場合には、上記センサ信号の送出において、前記新規識別子を上記個体識別子として用い、上記交換異常判定手段で前記異常であると判定した場合には、上記センサ信号の送出において、前記記憶識別子を上記個体識別子として用いる個体識別子切替手段と、を備える車載センサとすると良い。
【0014】
この車載センサでは、交換であると判定した場合には、新規識別子を個体識別子として用いる一方、新規識別子の異常であると判定した場合には、記憶識別子を個体識別子として用いるので、有効な個体識別子を用いて、センサ信号を送出し、通信バスでの通信を引き続き行うことができる。
【0015】
さらに、上述のいずれかの車載センサであって、前記交換異常判定手段で前記異常であると判定した場合に、前記記憶識別子を含み、前記新規識別子の異常を通知する異常通知信号を、前記通信バス上に送出する異常通知手段を備える車載センサとすると良い。
【0016】
この車載センサでは、新規識別子の異常であると判定した場合に、この新規識別子の異常をECUや他のセンサに適切に通知することができる。
【0017】
さらに、上述のいずれかの車載センサであって、前記交換異常判定手段で前記異常であると判定した場合には、前記ID記憶部に既に記憶している前記記憶識別子を保持する一方、上記交換異常判定手段で前記交換であると判定した場合には、前記新規識別子を新たな上記記憶識別子として上記ID記憶部に記憶させる記憶識別子更新手段を備える車載センサとすると良い。
【0018】
この車載センサでは、新規識別子の異常が生じた場合に、ID記憶部に異常な記憶識別子が記憶されることを防ぎつつ、交換の場合に、更新された記憶識別子を用いて、正常にセンサを使用することができる。これにより、その後に生じた新規識別子の異常をも適切に検知することができる。
【0019】
また、他の態様は、上述のいずれかのn個の車載センサと、前記車両に構築され、上記車載センサが接続するn個のコネクタが設けられた前記通信バスとを有し、上記通信バスの上記コネクタのそれぞれに上記車載センサが互いに交換可能に接続され、各々の上記車載センサが上記コネクタに割り当てられた互いに異なる個体識別子で識別される車載センサシステムであって、n個の上記コネクタにそれぞれ接続して、上記個体識別子を定めるn組の設定回路を備える車載センサシステムである。
【0020】
この車載センサシステムでは、n個のコネクタにそれぞれ接続して、個体識別子を定めるn組の設定回路を備える。
これにより、車載センサが有する一致判定手段、全ID判定手段及び交換異常判定手段を用いて、交換によって接続先のコネクタが他の車載センサと入れ替わったことが検知でき、かつ、コネクタの故障やこれに接続するn組の設定回路の故障、車載センサ側の回路の故障などにより生じる新規識別子の異常を検知することができる車載センサシステムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、車両VEに搭載された、本実施形態に係る車載センサ1の概略構成を示す図である。また、
図2は、n=4個の車載センサ1を、車両VEに構築された通信バスに予め設けられたn=4個のセンサ接続コネクタ110,210,310,410(コネクタ)のそれぞれに接続した車載センサシステム2の概略図である。この車載センサシステム2では、通信バスとして、CANバスを用いており、4個の車載センサ1はこのCANバスを介してECUに接続している。なお、車載センサ1は、具体的には、特許文献1に開示された水素センサに、本発明を適用したものである。但し、本実施形態では、車載センサ1のセンサ部分についての説明は省略し、通信バスであるCANバスとの接続及びECUとの通信に関わる部分についてのみ説明する。
【0023】
4個の車載センサ1,1は、いずれも
図1に示すように、主として、CANコントローラ機能を内蔵するマイクロプロセッサ10、CANトランシーバ50、サージ保護回路20、安定化電源回路30、及び、6つの端子T1〜T6を有するバス接続コネクタ40を備える。これらの車載センサ1は、それぞれバス接続コネクタ40に嵌合するセンサ接続コネクタ110,210,310,410を含む4組の接続路100,200,300,400によって、CANバス及び電源ラインに接続されている(
図2も参照)。
CANバスは、通信データが流れる2本の通信線CANH,CANLを有する。なお、CANバスでの通信の方式は、2本の通信線CANHとCANLとの間の電位差で信号を伝送する差動式のシリアル通信である。また、電源ラインは、車両VEのバッテリBT(12V仕様)の+端子から供給される電源電位VBに接続されるVSUP線、及び、バッテリBTの−端子に繋がる接地電位GNDに接続されるCOM線を有する。
【0024】
まず、接続路100,200,300,400について説明する。
接続路100〜400は、それぞれ、センサ接続コネクタ110,210,310,410のほか、このセンサ接続コネクタ110〜410に嵌合する車載センサ1のバス接続コネクタ40の端子T1,T2をそれぞれ電源ラインのVSUP線,COM線に接続する線路121,122からなる電源線路120、及び、車載センサ1のバス接続コネクタ40の端子T3,T4をそれぞれCANバスの通信線CANH,CANLに接続する線路131,132からなる通信接続路130を有する。
さらに、接続路100〜400は、それぞれ、車載センサ1の外部でバス接続コネクタ40の端子T5,T6の接続状態を定める設定回路140(線路141,142),240,340,440を有する。
なお、
図1では、設定回路140のうち、実線で示す線路141は、電源ラインのCOM線に接続している。これにより、接続路100に接続するバス接続コネクタ40の端子T5は、車載センサ1の外部で接地電位GNDに接続されている。また、破線で示す線路142は、実際には存在しておらず、COM線には未接続である。これにより、接続路100に接続するバス接続コネクタ40の端子T6は、車載センサ1の外部でいずれの電位にも接続されない開放状態とされている。即ち、接続路100の設定回路140(線路141,142)は、端子T5が接地電位GNDに接続され、端子T6が開放状態とされる組み合わせとなるように定めてある。
【0025】
また、接続路200,300,400は、接続路100の設定回路140に代えて、それぞれ設定回路240,340,440を有する。図示しないが、設定回路240は、端子T5,T6がいずれも接地電位GNDに接続される組み合わせとなるように定めてある。また、設定回路340は、端子T5が開放状態とされ、端子T6が接地電位GNDに接続される組み合わせとなるように定めてある。また、設定回路440は、端子T5,T6がいずれも開放状態とされる組み合わせとなるように定めてある。
このように、設定回路140,240,340,440は、各々が定める端子T5,T6の接続状態の組み合わせが、互いに異ならせてある。これにより、CANバス上で車載センサ1を識別するため4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)を、センサ接続コネクタ110,210,310,410に割り当てている。
【0026】
なお、4組の接続路100〜400のうち、センサ接続コネクタ110〜410は、それぞれ異なる設定回路140〜440が繋がっている点を除き、コネクタの仕様は共通である。また、設定回路140〜440及びセンサ接続コネクタ110〜410以外の電源線路120及び通信接続路130については、4組の接続路100〜400ですべて共通である。
【0027】
次いで、車載センサ1の内部の構成について説明する。
バス接続コネクタ40の端子T1は、上述したように、接続路100〜400のうち電源線路120の線路121を通じて、電源ラインのVSUP線に接続されている。即ち、端子T1は、電源電位VBに接続される電源端子である。また、端子T2は、上述したように、接続路100〜400のうち電源線路120の線路122を通じて、電源ラインのCOM線に接続されている。即ち、端子T2は、接地電位GNDに接続される接地端子である。
また、端子T1に供給される電源電位VBは、この電源電位VBに重畳したサージ電圧を吸収するバリスタ等で構成されたサージ保護回路20に接続されており、このサージ保護回路20の出力電位VB1から、車載センサ1の内部で使用する安定化した制御用電源電圧Vcc1(=+5V),Vcc2(=+3.3V)が安定化電源回路30により生成されている。なお、マイクロプロセッサ10のVcc端子は、制御用電源電圧Vcc2(=+3.3V)に接続されており、マイクロプロセッサ10は、この制御用電源電圧Vcc2で駆動されている。また、CANトランシーバ50は、Vcc端子に接続される制御用電源電圧Vcc1(=+5V)と、Vio端子に接続される制御用電源電圧Vcc2(=+3.3V)の2つの電源で駆動されている。
【0028】
バス接続コネクタ40の端子T3,T4は、車載センサ1の外部で、接続路100〜400のうち通信接続路130(線路131,132)を通じて、CANバスの通信線CANH,CANLに接続される通信外部端子であり、車載センサ1の内部では、CANトランシーバ50に接続されている。また、CANトランシーバ50は、CANコントローラであるマイクロプロセッサ10のシリアル通信ポートTxD,RxDに接続されている。車載センサ1は、バス接続コネクタ40の端子T3,T4に接続される通信接続路130及び通信線CANH,CANLを通じて、ECUとの間で通信データをやりとりする。なお、ECUは、CANバスに接続された機器を個体識別子IDによって指定し、各機器との通信を行う。このため、本実施形態では、前述したように、各車載センサ1を識別するための互いに異なる4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)を、接続路100〜400の設定回路140〜440を用いて、センサ接続コネクタ110〜410に割り当てている。
【0029】
バス接続コネクタ40の端子T5,T6はそれぞれ、接続路100〜400の設定回路140〜440により、車載センサ1の外部で、開放状態とされるか、接地電位GNDに接続される。なお、前述したように、
図1では、接続路100の設定回路140(実線で示す線路141、及び、破線で示す存在しない線路142)により、端子T5が接地電位GNDに接続されており、端子T6が開放状態とされている。
これら2つの端子T5,T6は、それぞれサージノイズ等に対する保護用のダイオードD1,D2のカソード側に接続されており、これらダイオードD1,D2のアノード側は、それぞれ抵抗器R1,R2を介して制御用電源Vcc2(=+3.3V)に接続されている。すなわち、端子T5,T6は、それぞれ保護用のダイオードD1,D2及び抵抗器R1,R2を介して制御用電源Vcc2に接続されている。そして、この抵抗器R1,R2を介して制御用電源Vcc2に接続するダイオードD1,D2のアノード側は、それぞれマイクロプロセッサ10のデジタルの入力信号ポート(I/O入力ポート)である入力ポート10I1,10I2に接続されている。
これにより、端子T5,T6が開放状態の場合には、入力ポート10I1,10I2の入力レベルは、常に制御用電源電圧Vcc2(=+3.3V)に等しく、マイクロプロセッサ10は、これをハイレベルと認識する。一方、端子T5,T6が接地電位GNDに接続された場合には、入力ポート10I1,10I2の入力レベルは、常に接地電位GNDに対してダイオードD1,D2の順方向電圧分だけ高い約0.7Vであり、マイクロプロセッサ10は、これをローレベルと認識する。
【0030】
そこで、この車載センサ1のマイクロプロセッサ10は、バス接続コネクタ40がCANバスに接続された状態において、車載センサ1の電源が投入されたときに、端子T5,T6のそれぞれについて、開放状態とされているか、接地電位GNDに接続されているかの接続状態を、入力ポート10I1,10I2の入力レベルにより判別する。具体的には、例えば、入力ポート10I1の入力レベルがハイレベルである場合に、この入力ポート10I1が接続している端子T5が開放状態であると判断し、入力ポート10I1の入力レベルがローレベルである場合に、この入力ポート10I1が接続している端子T5が接地電位GNDに接続されていると判断する。入力ポート10I2に繋がっている端子T6についても同様である。
【0031】
図1では、マイクロプロセッサ10は、入力ポート10I1の入力レベルがローレベルとなるので、端子T5が接地電位GNDに接続されていると判断される。また、入力ポート10I2の入力レベルがハイレベルとなるので、端子T6が開放状態であると判断される。
そして、これら端子T5,T6の接続状態に基づき、接続しているセンサ接続コネクタ110(または210,310,410)に割り当てられた個体識別子IDを取得する。
【0032】
なお、マイクロプロセッサ10は、内蔵する不揮発性メモリ11に個体識別子IDを記憶するID記憶部11Aを有している。
また、マイクロプロセッサ10は、4個のセンサ接続コネクタ110,210,310,410に割り当てられた4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)を内蔵する不揮発性メモリ11のIDセット記憶部11Bに予め記憶している。
これにより、車載センサ1は、最初の電源投入時に、端子T5,T6の接続状態に基づいて個体識別子IDを取得すると共に、IDセット記憶部11Bに記憶した4個の個体識別子(ID1〜ID4)を用いて、取得した個体識別子IDが正常であると判定されたときは、この取得した個体識別子IDを記憶識別子IDMとしてID記憶部11Aに記憶する。
【0033】
そして、この車載センサ1は、2回目以降(記憶識別子IDMを記憶した後)の電源投入時に、ID記憶部11Aに記憶した記憶識別子IDM及びIDセット記憶部11Bに記憶した4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)を用いて、新たに取得した個体識別子ID(新規識別子IDN)の異常を検知することができるようになっている。
以下、
図3〜
図6のフローチャートを参照して、本実施形態の車載センサ1における新規識別子IDNの異常の検知手法について説明する。
【0034】
まず、本実施形態に係る車載センサ1のうち、マイクロプロセッサ10の最初の電源投入時の動作を、
図3及び
図4のフローチャートを参照して説明する。
マイクロプロセッサ10の電源が投入されると、まず、最初(記憶識別子IDMを記憶する前)の電源投入時であるか否かを判断するため、
図3のステップS1で、不揮発性メモリ11のID記憶部11Aに記憶識別子IDMが記憶済みであるか否かを判断する。
ID記憶部11Aに記憶識別子IDMがまだ記憶されていない場合には、ステップS1でNoとなって、ステップS2に進み、
図3及び
図4に示す最初の電源投入時の動作(ステップS2〜S12)を実行する。一方、ID記憶部11Aに記憶識別子IDMが記憶済みの場合には、ステップS1でYesとなって、
図5に示すステップS21に進み、2回目以降の電源投入時の動作(ステップS21〜S29)を実行する。
そして、ステップS1でNoとなってステップS2に進んだ場合、すなわち、最初(記憶識別子IDMを記憶する前)の電源投入時の場合には、まず、ステップS2で、マイクロプロセッサ10の2つの入力ポート10I1,10I2の入力レベルを読み取る。
【0035】
次いで、ステップS3では、入力ポート10I1,10I2の入力レベルから得られる端子T5,T6の状態に基づいて、個体識別子IDを取得する。
次いで、ステップS4では、取得した個体識別子IDを含むID信号SIDを生成する。このID信号SIDは、後述するステップS7で、CANバス上に送出され、これにより、CANバスに接続された他の車載センサ1に対して、取得した個体識別子IDを通知する。
次いで、ステップS5では、不揮発性メモリ11のIDセット記憶部11Bに予め記憶している4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)を読み出す。
【0036】
次いで、
図4のステップS6に進み、ID信号SIDの送信タイミングであるか否かを判定する。ID信号SIDの送信タイミングである場合には、ステップS7に進み、ステップS4で生成した自己のID信号SIDをCANバス上に送出した後、ステップS8に進む。一方、ID信号SIDの送信タイミングでない場合には、ステップS7をスキップして、ステップS8に進む。
ステップS8では、他の車載センサ1がCANバス上に送出した3(=n−1)個のID信号SIDを受信する。
【0037】
続くステップS9では、ID信号SIDの監視期間(=1sec)が経過したか否かを判定する。監視期間がまだ経過していない場合(No)には、ステップS6に戻り、ステップS6〜S9を繰り返す。一方、監視期間が経過した場合(Yes)には、ステップS10に進む。
ステップS10では、ステップS5で読み出したIDセット記憶部11Bに記憶している4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)が、ステップS3で取得した自己の個体識別子ID、及び、ステップS6〜S9で取得した、他の車載センサ1がCANバス上に送出した3個のID信号SIDに含まれる個体識別子IDに、全て一致しているか否かを判定する。
そして、記憶している4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)が、取得した自己の個体識別子ID及び他の車載センサ1の個体識別子IDに全て一致している場合(Yes)には、ステップS11に進み、それ以外の場合、即ち、記憶している4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)のいずれかが、取得した自己の個体識別子ID及び他の車載センサ1の個体識別子IDに一致していない(No)には、ステップS12に進む。
【0038】
ステップS11に進む場合は、ステップS3で取得した個体識別子IDが正常な場合である。このため、ステップS11では、取得した個体識別子IDを記憶識別子IDMとして、マイクロプロセッサ10が内蔵する不揮発性メモリ11のID記憶部11Aに記憶する。
一方、ステップS12に進む場合は、自己または他の車載センサ1において、ステップS3で取得した個体識別子IDに何らかの異常が発生している場合である。このため、ステップS12では、取得した個体識別子IDを含み、この個体識別子IDの異常を通知する異常通知信号SAを、CANバス上に送出する。これにより、ECUに個体識別子IDの異常が発生していることを通知する。
なお、この場合は、ID記憶部11Aに記憶識別子IDMが記憶されないので、次回の電源投入時には、最初の電源投入時と同じ処理を行う。
そして、ステップS11またはステップS12が終了すると、電源投入後のその後の処理へ移行する。
【0039】
次いで、本実施形態に係る車載センサ1のうち、マイクロプロセッサ10の2回目以降の電源投入時の動作を、
図5のフローチャートを参照して説明する。
2回目以降(記憶識別子IDMを記憶した後)の電源投入時の場合には、マイクロプロセッサ10の電源が投入されると、ID記憶部11Aに記憶識別子IDMが記憶済みであるので、前述したように、
図3のステップS1でYesとなり、
図5のステップS21に進む。
ステップS21では、マイクロプロセッサ10の2つの入力ポート10I1,10I2の入力レベルを読み取る。
【0040】
次いで、ステップS22では、入力ポート10I1,10I2の入力レベルから得られる端子T5,T6の状態に基づいて、新たに個体識別子ID(新規識別子IDN)を取得する。
続くステップS23では、ID記憶部11Aに記憶した記憶識別子IDMを読み出す。
【0041】
次いで、ステップS24では、新たに取得した新規識別子IDNが記憶識別子IDMと一致しているか否かを判定する。
新規識別子IDNが記憶識別子IDMと一致している場合(Yes)には、ステップS25に進み、後述するステップS34での判定に用いる不一致フラグをクリアした後、ステップS27に進む。一方、新規識別子IDNが記憶識別子IDMと一致していない場合(No)には、ステップS26に進み、不一致フラグをセットした後、ステップS27に進む。
【0042】
ステップS27では、新規識別子IDNを含むID信号SIDを生成する。このID信号SIDは、後述するステップS31で、CANバス上に送出され、これにより、CANバスに接続された他の車載センサ1に対して、取得した新規識別子IDNを通知する。
次いで、ステップS28では、不揮発性メモリ11のIDセット記憶部11Bに予め記憶している4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)を読み出す。
次いで、ステップS29に進み、次述する識別子判定処理ルーチンを実行した後、電源投入後のその後の処理へ移行する。
【0043】
次いで、
図5のステップS29における識別子判定処理ルーチンの動作を、
図6のフローチャートを参照して説明する。
識別子判定処理ルーチンが開始されると、まず、ステップS30で、ID信号SIDの送信タイミングであるか否かが判定される。ID信号SIDの送信タイミングである場合には、ステップS31に進み、ステップS27で生成した自己のID信号SIDをCANバス上に送出した後、ステップS32に進む。一方、ID信号SIDの送信タイミングでない場合には、ステップS31をスキップして、ステップS32に進む。
ステップS32では、他の車載センサ1がCANバス上に送出した3(=n−1)個のID信号SIDを受信する。
【0044】
続くステップS33では、ID信号SIDの監視期間(=1sec)が経過したか否かを判定する。監視期間がまだ経過していない場合(No)には、ステップS30に戻り、ステップS30〜S33を繰り返す。一方、監視期間が経過した場合(Yes)には、ステップS34に進む。
ステップS34では、ステップS25,S26でクリアまたはセットした不一致フラグがオンであるか否かを判定する。ステップS34で不一致フラグがオフの場合(No)には、新たに取得した新規識別子IDNに異常がなく、他の車載センサ1との交換も行われていないため、そのまま本識別子判定処理ルーチン(
図5のステップS29)を終了して、その後の処理へ移行する。なお、この場合は、ステップS22で取得した新規識別子IDNが、そのままCANバスでの通信に用いる個体識別子IDとなる。このCANバスでの通信は、図示しないが、ステップS31において、ID信号SIDをCANバス上に送出したのと同様に、個体識別子ID(=新規識別子IDN)を含むセンサ信号を、CANバスに送出して行う。但し、新規識別子IDN=記憶識別子IDMであるので、記憶識別子IDMを通信に用いる個体識別子IDとしても良い。なお、このステップS34でNoの場合(交換でも異常でもない正常な場合)には、ID記憶部11Aに記憶した記憶識別子IDMの更新も行わない。
【0045】
一方、ステップS34で不一致フラグがオンの場合(Yes)には、ステップS35に進む。
ステップS35では、ステップS28で読み出したIDセット記憶部11Bに記憶している4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)が、ステップS22で取得した自己の新規識別子IDN、及び、ステップS30〜S33で取得した、他の車載センサ1がCANバス上に送出した3個のID信号SIDに含まれる新規識別子IDNに、全て一致しているか否かを判定する。
そして、4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)が自己及び他の車載センサ1の新規識別子IDNに全て一致している場合(Yes)には、ステップS36に進み、それ以外の場合、即ち、4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)のいずれかが自己及び他の車載センサ1の新規識別子IDNに一致していない場合(No)には、ステップS37に進む。
【0046】
なお、ステップS35でYesとなって、ステップS36に進んだ場合は、新規識別子IDNが記憶識別子IDMと一致していないと判定され、かつ、4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)が自己及び他の車載センサ1の新規識別子IDNに全て一致していると判定された場合である。即ち、この場合は、新規識別子IDNが記憶識別子IDMと一致しない一方、4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)のいずれもが、それぞれ自己及び他の車載センサ1の新規識別子IDNのいずれかに一致した場合である。この場合、接続しているセンサ接続コネクタ110,210,310,410や車載センサ1自体は正常であり、交換によって、接続先のセンサ接続コネクタ110,210,310,410が他の車載センサ1と入れ替わったことになる。即ち、ステップS35でYesとなって、ステップS36に進むことで、交換であると判定する。
ステップS36では、新規識別子IDNを新たな記憶識別子IDMとして、不揮発性メモリ11のID記憶部11Aに記憶(記憶識別子IDMを更新)する。そして、本識別子判定処理ルーチン(
図5のステップS29)を終了し、その後の処理へ移行する。なお、この場合も、正常な場合と同様に、ステップS22で取得した新規識別子IDNが、そのままCANバスでの通信に用いる個体識別子IDとなり、この個体識別子ID(=新規識別子IDN)を含むセンサ信号を、CANバスに送出し、通信を行う。但し、接続先が入れ替わって、更新前の記憶識別子IDM≠新規識別子IDNとなっているので、更新前の記憶識別子IDMを通信に用いる個体識別子IDとすることはできない。
【0047】
一方、ステップS35でNoとなって、ステップS37に進む場合は、新規識別子IDNが記憶識別子IDMと一致していないと判定され、かつ、4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)のいずれかが自己及び他の車載センサ1の新規識別子IDNに一致していないと判定された場合である。即ち、この場合は、新規識別子IDNが記憶識別子IDMと一致せず、さらに、4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)の中に、自己及び他の車載センサ1の新規識別子IDNのいずれにも該当しない個体識別子ID(非該当の個体識別子ID)が存在する場合である。この場合は、故障等により、自己の新規識別子IDNが他の車載センサ1の新規識別子IDNと重複したり、新規識別子IDNが個体識別子IDに該当しないコードに変わるなど、新たに取得した新規識別子IDNに異常が生じていることになる。即ち、ステップS35でNoとなって、ステップS37に進むことで、新規識別子IDNの異常であると判定する。
【0048】
ステップS37では、新規識別子IDNが異常であるので、正常な場合及び交換がされた場合と異なり、ステップS22で取得した新規識別子IDNに代えて、記憶識別子IDMを、CANバスにおける通信に用いる個体識別子IDとする。
さらに、続くステップS38では、個体識別子ID(=記憶識別子IDM)を含み、新規識別子IDNの異常を通知する異常通知信号SAを、CANバス上に送出する。これにより、ECUに新規識別子IDNの異常が発生していることを通知する。
そして、本識別子判定処理ルーチン(
図5のステップS29)を終了して、その後の処理へ移行する。これにより、それ以降、記憶識別子IDMを個体識別子IDとして用いて、CANバスでの通信を行う。即ち、個体識別子ID(=記憶識別子IDM)を含むセンサ信号を、CANバスに送出し、通信を行う。また、この場合は、新規識別子IDNが異常であるため、記憶識別子IDMの更新は行わず、ID記憶部11Aに既に記憶している記憶識別子IDMを保持する。
即ち、本実施形態では、交換と判定された場合のみ、ステップS36で、記憶識別子IDMを更新し、それ以外の場合には、記憶識別子IDMの更新を行わない。
【0049】
なお、本実施形態では、車載センサ1のうち、バス接続コネクタ40の端子T5,T6及びマイクロプロセッサ10の入力ポート10I1,10I2、並びに、ステップS2〜S3及びステップS21〜S22を実行しているマイクロプロセッサ10が、ID取得部に相当する。
また、ステップS24及びステップS34を実行しているマイクロプロセッサ10が、一致判定手段に相当する。
また、ステップS27及びステップS31を実行しているマイクロプロセッサ10が、ID信号送出手段に相当し、ステップS35を実行しているマイクロプロセッサ10が、全ID判定手段に相当する。
【0050】
また、ステップS34〜S35を実行しているマイクロプロセッサ10が、交換異常判定手段に相当し、ステップS38を実行しているマイクロプロセッサ10が、異常通知手段に相当する。
さらに、CANコントローラであるマイクロプロセッサ10及びCANトランシーバ50が、通信手段に相当し、ステップS22及びステップS37を実行しているマイクロプロセッサ10が、個体識別子切替手段に相当する。
また、ステップS36を実行しているマイクロプロセッサ10が、記憶識別子更新手段に相当する。
【0051】
次いで、
図2に示す車載センサシステム2について説明する。この車載センサシステム2では、4組の接続路100,200,300,400の通信接続路130を用いて、センサ接続コネクタ110,210,310,410に接続した4個の車載センサ1をCANバスへと通信可能に接続している。また、4組の接続路100,200,300,400のうち、各車載センサ1の端子T5,T6に接続する設定回路140,240,340,440の接続状態を、互いに異ならせてある。これにより、設定回路140,240,340,440は、センサ接続コネクタ110,210,310,410に割り当てる4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)のいずれかを定める。
従って、この車載センサシステム2では、4個の車載センサ1を、接続しているセンサ接続コネクタ110,210,310,410に割り当てられた個体識別子ID(ID1〜ID4)で識別することができる。
【0052】
以上で説明したように、本実施形態の車載センサ1では、一致判定手段(ステップS24及びステップS34)における判定結果と全ID判定手段(ステップS35)における判定結果とに基づいて、接続先のセンサ接続コネクタ110,210,310,410が他の車載センサ1と入れ替わった交換、及び、新たに取得した新規識別子IDNの異常を判定している(ステップS34〜S35)。
より具体的には、一致判定手段(ステップS24及びステップS34)で新規識別子IDNが記憶識別子IDMと一致していないと判定され、かつ、全ID判定手段(ステップS35)で4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)が自己及び他の車載センサ1の新規識別子IDNに全て一致していると判定された場合に交換であると判定する(ステップS35でYes)。
一方、一致判定手段(ステップS24及びステップS34)で新規識別子IDNが記憶識別子IDMと一致していないと判定され、かつ、全ID判定手段(ステップS35)で4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)いずれかが自己及び他の車載センサ1の新規識別子IDNに一致していない(非該当の個体識別子IDが存在する)と判定された場合に、新規識別子IDNの異常であると判定する(ステップS35でNo)。
【0053】
これにより、接続しているセンサ接続コネクタ110,210,310,410や車載センサ1自体は正常で、交換によって接続先のセンサ接続コネクタ110,210,310,410が他の車載センサ1と入れ替わった場合には、これを検知して、異常であるとは認識しない。一方、新規識別子IDNの異常が発生している車載センサについては、この異常を検知することができる。
即ち、この車載センサ1では、CANバスのセンサ接続コネクタ110,210,310,410に、他の車載センサ1と互いに交換可能に接続され、交換によって接続先が他の車載センサ1と入れ替わった場合には、この交換を、センサ接続コネクタ110,210,310,410の端子やこれに接続する車載センサ1外部の回路の故障(配線の断線や短絡)、車載センサ1側の回路の故障などにより、コネクタに割り当てられた個体識別子ID(新規識別子IDN)の車載センサでの認識に異常が生じた場合には、この異常を、それぞれ適切に検知することができる。
【0054】
さらに、本実施形態の車載センサ1では、交換であると判定した場合には、新規識別子IDNを個体識別子IDとして用いる一方、新規識別子IDNの異常であると判定した場合には、記憶識別子IDMを個体識別子IDとして用いるので、有効な個体識別子IDを用いて、センサ信号を送出し、CANバスでの通信を引き続き行うことができる。
【0055】
さらに、本実施形態の車載センサ1では、異常通知手段(ステップS38)を備えているので、新規識別子IDNの異常であると判定した場合に、この新規識別子IDNの異常をECUや他のセンサに適切に通知することができる。
【0056】
さらに、本実施形態の車載センサ1では、交換異常判定手段(ステップS34〜S35)で新規識別子IDNの異常であると判定した場合には、ID記憶部11Aに既に記憶している記憶識別子IDMを保持する(更新しない)(本実施形態では、正常と判定した場合も同様)。一方、交換異常判定手段(ステップS34〜S35)で交換であると判定した場合、即ち、接続先のセンサ接続コネクタ110,210,310,410が他の車載センサ1と入れ替わった場合には、新規識別子IDNを新たな記憶識別子IDMとしてID記憶部11Aに記憶する(ステップS36)。
これにより、新規識別子IDNの異常が生じた場合に、ID記憶部11Aに異常な記憶識別子IDMが記憶されることを防ぎつつ、交換の場合に、更新された記憶識別子IDMを用いて、正常に車載センサ1を使用することができる。これにより、その後に生じた新規識別子IDNの異常をも適切に検知することができる。
【0057】
また、本実施形態の車載センサシステム2では、車載センサ1が有する一致判定手段(ステップS24及びステップS34)、全ID判定手段(ステップS35)及び交換異常判定手段(ステップS34〜S35)を用いて、交換によって接続先のセンサ接続コネクタ110,210,310,410が他の車載センサ1と入れ替わったことが検知でき、かつ、設定回路140,240,340,440等の故障によって生じた新規識別子IDNの異常を検知することができる。
【0058】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態では、交換異常判定手段(ステップS34〜S35)で交換及び新規識別子IDNの異常を判定するにあたって、一致判定手段(ステップS24及びステップS34)による新規識別子IDNが記憶識別子IDMに一致しているか否かの判定を行ってから、全ID判定手段(ステップS35)による4個の個体識別子ID(ID1〜ID4)が自己及び他の車載センサ1の新規識別子IDNに全て一致しているか否かの判定を行った。
しかし、これらの判定の順序は、これに限られず、一致判定手段における判定結果と全ID判定手段における判定結果の両方に基づいて、交換及び新規識別子IDNの異常が判定できれば良く、これらの判定の順序は任意に変更することができる。
【0059】
また、実施形態では、車載センサがCANバスに接続されるセンサであったが、例えば、LINバスなど、CANバス以外の通信バスに接続される車載センサに本発明を適用しても良い。
また、実施形態では、n=4個の車載センサ1を、CANバスに設けられたn=4個のセンサ接続コネクタ110,210,310,410(コネクタ)に接続したが、通信バスに接続する車載センサの数は、適宜変更することができる。