(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339915
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】リミットスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 21/28 20060101AFI20180528BHJP
H01H 21/36 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
H01H21/28 Q
H01H21/36 N
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-199873(P2014-199873)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-72074(P2016-72074A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 善太郎
【審査官】
太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭48−055354(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 19/03−21/88
H01H 13/00−13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの操作力を受けて回動するシャフトと、
前記シャフトの回動によってオン・オフされる内蔵スイッチと、
前記シャフトの回動力を受けて圧縮される弾性体を有し、前記シャフトへの外部からの操作力の消失時に開放される前記弾性体の圧縮力によって前記シャフトを初期の回動位置に戻す自己復帰機構と、
前記シャフトへの外部からの操作力の消失時の前記弾性体の圧縮力の急激な開放を緩和するダンパ機構とを備え、
前記自己復帰機構は、
前記シャフトの軸方向に対して直交する方向に移動可能に設けられたプランジャと、
前記プランジャの収容空間内に前記弾性体として設けられ前記プランジャを前記シャフトに向かって付勢するバネとを備え、
前記シャフトの回動力を受けて前記プランジャが前記シャフトから離れる方向に動かされることによって前記バネが圧縮され、
前記シャフトへの外部からの操作力の消失時に開放される前記バネの圧縮力を受けて前記プランジャが前記シャフトに向かう方向に動かされることによって前記シャフトが初期の回動位置に戻されるものであり、
前記ダンパ機構は、
前記プランジャの収容空間内に設けられたオイル圧式のダンパ機構あるいは空気圧式のダンパ機構である
ことを特徴とするリミットスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載されたリミットスイッチにおいて、
前記シャフトは、
前記プランジャに係合するカム部を有する
ことを特徴とするリミットスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シャフトを初期の回動位置に戻す自己復帰機構を備えたリミットスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、組み立て工場などでは、ライン上のワークやパレットの有無を検出するために、リミットスイッチが多く用いられている。このリミットスイッチの1つとしてレバータイプのリミットスイッチがある。
【0003】
このレバータイプのリミットスイッチは、ハウジングと、ハウジング内に収容された内蔵スイッチと、ハウジング内に収容された復帰プランジャおよびスイッチ動作プランジャ(カップ状のプランジャ)と、ハウジングに回動可能に支持され、基端部がハウジングの内部に収容されかつ先端部がハウジングの外部に突出したシャフトと、シャフトの先端部に設けられた回転レバー(ローラレバー)とを有している(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
図3に従来のレバータイプのリミットスイッチの要部を示す。このリミットスイッチ100は、ハウジング本体1とハウジングヘッド2とからなるハウジング3と、ハウジング3内に収容された内蔵スイッチ4と、ハウジング3内に収容された復帰プランジャ5およびスイッチ動作プランジャ6と、ハウジング3に回動可能に支持され、基端部71がハウジング3の内部に収容されかつ先端部72がハウジング3の外部に突出したシャフト7と、シャフト7の先端部72に設けられた回転レバー(ローラレバー)8とを備えている。
【0005】
シャフト7には、ハウジング3の内部に収容された基端部71にカム部71aが形成されており、ハウジング3の外部に突出した先端部72に全周にわたってセレーション72aが形成されている。このセレーション72aに回転レバー8が嵌合されている。回転レバー8にはその先端にローラ(図示せず)が取り付けられている。
【0006】
復帰プランジャ5およびスイッチ動作プランジャ6はシャフト7の軸方向に直交する方向に移動可能に設けられている。復帰プランジャ5は、この復帰プランジャ5が収容されている空間(収容空間)11内に設けられたコイルバネ9によって、シャフト7のカム部71aの上面にその底面が当接するように付勢されている。スイッチ動作プランジャ6は、このスイッチ動作プランジャ6の内部に設けられたコイルバネ10によって、シャフト7のカム部71aの下面にその上面が当接するように付勢されている。
【0007】
図3において、12および13はOリングである。なお、
図3はシャフト7に外部から操作力が加わっていない状態、すなわちシャフト7が初期の回動位置に位置して
いる状態を示している。
【0008】
このリミットスイッチ100において、回転レバー8のローラに被検出対象物が当たると、回転レバー8が回動し、この回転レバー8の回動に伴ってシャフト7が回動する。このシャフト7の回動によるカム部71aの回転角度位置の変化により、復帰プランジャ5がコイルバネ9の付勢力に抗して押し上げられ、またスイッチ動作プランジャ6がコイルバネ10の付勢力に抗して押し下げられ、内蔵スイッチ4がオンとされる。
【0009】
被検出対象物が回転レバー8のローラから離れると、すなわちシャフト7への外部からの操作力が消失すると、それまで復帰プランジャ5の上昇によって圧縮されていたコイルバネ9の圧縮力が開放され、この開放されたコイルバネ9の圧縮力によって復帰プランジャ5が押し下げられる。これにより、カム部71aの回転角度位置が変化し、シャフト7が初期の回動位置に戻り、内蔵スイッチ4がオフとされる。このシャフト7を初期の回動位置に戻す機構を自己復帰機構と呼ぶ。この例では、復帰プランジャ5とコイルバネ9とで自動復帰機構14が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−247255号公報
【特許文献2】特開2005−135780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、
図3に示した従来のリミットスイッチ100によると、被検出対象物が回転レバー8のローラから急に離れると、反対方向に回転レバー8が回転し、内蔵スイッチ4がもう一度オンとされる現象が生じることがある。すなわち、シャフト7が初期の回動位置に止まらず、行き過ぎて反対方向にさらに回転し、内蔵スイッチ4がもう一度オンとされる現象が生じることがある。このような現象をダブルアクションと呼んでいる。
【0012】
このように、従来のリミットスイッチ100では、一度の動作で複数回、シャフト7が回転する現象があり、自己復帰機構の寿命が短くなるという問題があった。また、シャフト7だけではなく、内蔵スイッチ4も複数回動作する場合があり、2度目の動作時に発生した電気信号を読み込まないようにするなどの対応が必要となる。
【0013】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、誤動作を防止し、自己復帰機構の長寿命化を図ることが可能なリミットスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために本発明は、外部からの操作力を受けて回動するシャフトと、シャフトの回動によってオン・オフされる内蔵スイッチと、シャフトの回動力を受けて圧縮される弾性体を有し、シャフトへの外部からの操作力の消失時に開放される弾性体の圧縮力によってシャフトを初期の回動位置に戻す自己復帰機構と、シャフトへの外部からの操作力の消失時の弾性体の圧縮力の急激な開放を緩和するダンパ機構とを
備え、自己復帰機構は、シャフトの軸方向に対して直交する方向に移動可能に設けられたプランジャと、プランジャの収容空間内に弾性体として設けられプランジャをシャフトに向かって付勢するバネとを備え、シャフトの回動力を受けてプランジャがシャフトから離れる方向に動かされることによってバネが圧縮され、シャフトへの外部からの操作力の消失時に開放されるバネの圧縮力を受けてプランジャがシャフトに向かう方向に動かされることによってシャフトが初期の回動位置に戻されるものであり、ダンパ機構は、プランジャの収容空間内に設けられたオイル圧式のダンパ機構あるいは空気圧式のダンパ機構であることを特徴とする。
【0015】
本発明では、シャフトへの外部からの操作力が消失すると、自己復帰機構が働く。この自己復帰機構では、弾性体の圧縮力が急激に開放されると、ダブルアクションが生じる虞がある。しかし、本発明では、自己復帰機構に加えてダンパ機構を設けており、このダンパ機構によって弾性体の圧縮力の急激な開放が緩和されるので、ダブルアクションが低減されるものとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自己復帰機構に加えてダンパ機構を設けるようにしたので、シャフトへの外部からの操作力の消失時に開放される弾性体の圧縮力の急激な開放がダンパ機構によって緩和されるものとなり、ダブルアクションが低減され、誤動作が防止されると共に、自己復帰機構の長寿命化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るリミットスイッチの一実施の形態の要部を示す側断面図である。
【
図2】このリミットスイッチにおけるダンパ機構の動作を説明する図(リミットスイッチの要部をシャフトの軸方向から見た断面図)である。
【
図3】従来のレバータイプのリミットスイッチの要部を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係るリミットスイッチの一実施の形態の要部を示す側断面図であり、同図において
図3と同一符号は
図3を参照して説明した構成要素と同一或いは同等の構成要素を示す。
【0019】
このリミットスイッチ200も、従来のリミットスイッチ100と同様、ハウジング本体1とハウジングヘッド2とからなるハウジング3と、ハウジング3内に収容された内蔵スイッチ4と、ハウジング3内に収容された復帰プランジャ5およびスイッチ動作プランジャ6と、ハウジング3に回動可能に支持され、基端部71がハウジング3の内部に収容されかつ先端部72がハウジング3の外部に突出したシャフト7と、シャフト7の先端部72に設けられた回転レバー8とを備えている。
【0020】
また、シャフト7には、ハウジング3の内部に収容された基端部71にカム部71aが形成されており、ハウジング3の外部に突出した先端部72に全周にわたってセレーション72aが形成されている。このセレーション72aに回転レバー8が嵌合されている。回転レバー8にはその先端にローラが取り付けられている。
【0021】
また、復帰プランジャ5およびスイッチ動作プランジャ6はシャフト7の軸方向に直交する方向に移動可能に設けられている。復帰プランジャ5は、この復帰プランジャ5が収容されている空間(収容空間)11内に設けられたコイルバネ9によって、シャフト7のカム部71aの上面にその底面が当接するように付勢されている。スイッチ動作プランジャ6は、このスイッチ動作プランジャ6の内部に設けられたコイルバネ10によって、シャフト7のカム部71aの下面にその底面が当接するように付勢されている。
【0022】
このリミットスイッチ200において、従来のリミットスイッチ100と異なる点は、復帰プランジャ5の収容空間11内に、オイル圧式のダンパ機構(オイルダンパ)15を設けている点にある。
【0023】
このダンパ機構15は、復帰プランジャ5の収容空間11の天井面11aに固定されたシリンダ16と、シリンダ16の油圧室17に封入された作動油(オイル)18と、シリンダ16の下端開口部16aを挿通してシリンダ16の外部に延ばされたピストンロッド19と、油圧室17内に位置するピストンロッド19の先端の外周部に嵌め込まれたEリング20と、シリンダ16の下端開口部16aのピストンロッド19の外周面との間の隙間を塞ぐOリング21とから構成されている。
【0024】
なお、本実施の形態において、ピストンロッド19は、復帰プランジャ5の内底面5aの中央から一体的に突出するピン状のロッドとして設けられている。また、復帰プランジャ5の収容空間11内には、収容空間11の天井面11aと復帰プランジャ5の内定面5aとの間に、ダンパ機構15を囲むようにして、復帰プランジャ5とで自己復帰機構14を構成するコイルバネ9が設けられている。また、
図1は
図3と同様、シャフト7に外部から操作力が加わっていない状態、すなわちシャフト7が初期の回動位置に位置してる状態を示している。
【0025】
このリミットスイッチ200において、回転レバー8のローラに被検出対象物が当たると、回転レバー8が回動し、この回転レバー8の回動に伴ってシャフト7が回動する。このシャフト7の回動によるカム部71aの回転角度位置の変化により、復帰プランジャ5がコイルバネ9の付勢力に抗して押し上げられ、またスイッチ動作プランジャ6がコイルバネ10の付勢力に抗して押し下げられ、内蔵スイッチ4がオンとされる。
【0026】
図2(a)にカム部71aの回転角度位置が変化する前の状態(シャフト7が初期の回動位置にある状態)を示し、
図2(b)にカム部71aの回転角度位置が変化した後の状態を示す。回転レバー8の回動に伴ってシャフト7が回動し、カム部71aの回転角度位置が変化すると、このカム部71aに押されて復帰プランジャ5がコイルバネ9の付勢力に抗して上昇し、コイルバネ9を圧縮させる。また、復帰プランジャ5が上昇することにより、この復帰プランジャ5の内底面5aに一体的に設けられたピストンロッド19がダンパ機構15の油圧室17内をEリング20と共に上昇する。
【0027】
被検出対象物が回転レバー8のローラから離れると、すなわちシャフト7への外部からの操作力が消失すると、それまで復帰プランジャ5の上昇によって圧縮されていたコイルバネ9の圧縮力が開放され、この開放されたコイルバネ9の圧縮力によって復帰プランジャ5が押し下げられる。これにより、カム部71aの回転角度位置が変化し、シャフト7が初期の回動位置に戻り、内蔵スイッチ4がオフとされる。
【0028】
ここで、被検出対象物が回転レバー8のローラから急に離れた場合、
図3に示した従来のリミットスイッチ100では自己復帰機構14のコイルバネ9の圧縮力が急激に開放され、ダブルアクションが生じることがあった。これに対して、本実施の形態のリミットスイッチ200では、自己復帰機構14に加えてダンパ機構15が設けられており、このダンパ機構15によってコイルバネ9の圧縮力の急激な開放が緩和されるので、ダブルアクションが低減されるものとなる。
【0029】
すなわち、本実施の形態のリミットスイッチ200では、作動油18が封入されている油圧室17内をピストンロッド19がEリング20と共に緩やかに下降するので、コイルバネ9の圧縮力の急激な開放が緩和される。これにより、ダブルアクションが低減され、誤動作が防止されると共に、自己復帰機構の長寿命化が図られるものとなる。
【0030】
なお、上述した実施の形態では、ダンパ機構15を油圧式のダンパ機構としたが、空気圧式のダンパ機構などとしてもよい。また、上述したダンパ機構15では、Eリング20を用いた構成としたが、必ずしもEリング20を用いた構成としなくてもよい。また、復帰プランジャ5やスイッチ動作プランジャ6もカップ状のプランジャ(カッププランジャ)に限られるものでもない。また、自動復帰機構を構成する弾性体もコイルバネに限られるものではない。
【0031】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1…ハウジング本体、2…ハウジングヘッド、3…ハウジング、4…内蔵スイッチ、5…復帰プランジャ、6…スイッチ動作プランジャ、7…シャフト、71a…カム部、8…回転レバー(ローラレバー)、9,10…コイルバネ、11…収容空間、14…自己復帰機構、15…ダンパ機構(オイルダンパ)、16…シリンダ、17…油圧室、18…作動油(オイル)、19…ピストンロッド、20…Eリング、21…Oリング。