(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記板状突起の表裏面のうち、前記筒状部の近くの面を第1板面とし、該第1板面の裏面を第2板面とし、該第2板面と前記突出壁の内面との交線の端点のうち、前記板状突起の吸込面側にある端点から任意の水平面Hに投影した点をA点、前記板状突起の吸込面の反対側にある端点から前記水平面Hに投影した点をB点、前記排水口から前記水平面Hに投影した点をC点とし、前記A点、前記B点及び前記C点から前記吸込面の延長面に下ろした垂線の足を、それぞれA´点、B´点、C´点としたとき、
前記A´点が前記B´点よりも前記C´点に近いか、又は前記A´点、前記B´点及び前記C´点が重なることを特徴とする請求項5の記載の車両用空調装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空気通路の断面積が拡大するとき、空気流がケースの内壁面から剥離する剥離流が発生する。剥離流は渦巻き流を形成し、この渦巻き流は騒音の原因となる場合がある。特許文献3〜5には、ケースの内壁面に突起を設けることで、風速分布の調整又は空力音の低減をする技術が開示されているが、剥離流によって生じる騒音を低減する技術は開示されていない。
【0007】
本発明の目的は、剥離流によって生じる騒音を低減した車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用空調装置は、内部に空気通路を有するケースと、前記空気通路に送風空気を供給する送風機と、を備える車両用空調装置において、前記ケースは、筒状部と、該筒状部の下流側に連接し、該筒状部の断面積よりも大きな断面積を有する拡大部とを備え、該拡大部は、壁面を前記空気通路の外側に向けて突出させた突出壁を有し、
該突出壁は、前記拡大部の壁面を周囲に対して相対的に前記空気通路の外側に向けて突出させた部分であり、前記突出壁を前記空気通路から突出させたことで、前記ケースの内壁面には段差が形成されており、前記突出壁は、前記空気通路の内側に向かって突出する少なくとも一つの突起を有し、該突起の頂部は、前記筒状部の内壁面を下流に向けて仮想的に延長した仮想筒の側面に接するか、又は該仮想筒の側面よりも前記突出壁側にあることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る車両用空調装置では、前記突起は、板状突起であり、該板状突起の幅方向は、前記空気流れの方向に交差する方向であることが好ましい。渦巻き流の形成を、より確実に防止することができる。
【0010】
本発明に係る車両用空調装置では、前記車両用空調装置は、前記送風機を有するブロワ部と冷却用熱交換器を有する熱交換部とを横置きしたレイアウトを有し、前記筒状部は、前記ブロワ部と前記熱交換部との間に設けられるダクト部であり、前記冷却用熱交換器は、吸込面の法線方向を前記ダクト部からの送風空気の流れ方向と交差させて配置され、前記拡大部は、前記ダクト部からの送風空気の流れ方向を前記冷却用熱交換器の吸込面に向かう方向へ変更する方向変更部であり、前記突出壁は、前記方向変更部の底部の壁であり、該底部の壁が前記空気通路の外側に向けて突出することによって空間が形成され、該空間は、前記冷却用熱交換器で発生する凝縮水の貯留部であることが好ましい。横置きタイプの車両用空調装置において、騒音を低減することができる。
【0011】
本発明に係る車両用空調装置では、前記突起は、前記吸込面又は前記冷却用熱交換器を前記空気通路内で支持するための支持壁との間に隙間を有することが好ましい。冷却用熱交換器で発生した凝縮水をより効率的に排水することができる。
【0012】
本発明に係る車両用空調装置では、前記熱交換部は、前記冷却用熱交換器を配置する部分の底部に、前記凝縮水を前記ケースから排出する排水口を有し、前記突起が板状突起であり、該板状突起が配置された壁面は、前記排水口に向かう下り傾斜面をなすことが好ましい。冷却用熱交換器で発生した凝縮水をより効率的に排水することができる。
【0013】
本発明に係る車両用空調装置では、前記板状突起の表裏面のうち、前記筒状部の近くの面を第1板面とし、該第1板面の裏面を第2板面とし、該第2板面と前記突出壁の内面との交線の端点のうち、前記板状突起の吸込面側にある端点から任意の水平面Hに投影した点をA点、前記板状突起の吸込面の反対側にある端点から前記水平面Hに投影した点をB点、前記排水口から前記水平面Hに投影した点をC点とし、前記A点、前記B点及び前記C点から前記吸込面の延長面に下ろした垂線の足を、それぞれA´点、B´点、C´点としたとき、前記A´点が前記B´点よりも前記C´点に近いか、又は前記A´点、前記B´点及び前記C´点が重なることが好ましい。冷却用熱交換器で発生した凝縮水をより効率的に排水することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、剥離流によって生じる騒音を低減した車両用空調装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して本発明の一態様を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0017】
図1は、車両用空調装置の一部の概略断面図である。
図2は、
図1のX−X線端面図である。本実施形態に係る車両用空調装置1は、
図1に示すように、内部に空気通路11を有するケース10と、空気通路11に送風空気を供給する送風機21と、を備える車両用空調装置において、ケース10は、筒状部12と、筒状部12の下流側に連接し、筒状部12の断面積よりも大きな断面積を有する拡大部13とを備え、拡大部13は、
図2に示すように、壁面を空気通路11の外側に向けて突出させた突出壁14を有し、突出壁14は、空気通路11の内側に向かって突出する少なくとも一つの突起15を有し、突起15の頂部151は、筒状部の内壁面を下流に向けて仮想的に延長した仮想筒16の側面よりも突出壁14側にある。
【0018】
本実施形態の車両用空調装置1は、HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)と呼ばれ、ブロワ部20、熱交換部30、及び配風部(不図示)を有する。また、車両用空調装置1は、ケース10の外側の空気をケース10内に取り込む導入口(不図示)を有し、ケース10内の空気を車室内へ向かって吹き出す吹出口(不図示)と直接的に、またはダクトを介して間接的に接続される。導入口は、例えば、車外の空気を取り込む外気導入口及び車室内の空気を取り込む内気導入口である。吹出口は、例えば、ベント吹出口、デフロスト吹出口及びフット吹出口である。ケース10は、車両用空調装置1の外形を形成する。空気通路11は、ケース10の内部空間である。
【0019】
ブロワ部20は、内部に送風機21を有する。送風機21は、導入口(不図示)から空気を吸引して下流へ送風することで、空気通路11に送風空気を供給する。送風機21は、例えば、シロッコファン又はターボファンなどの遠心式多翼ファン(不図示)とファンを駆動するモータ(不図示)とを有する。
【0020】
熱交換部30は、内部に冷却用熱交換器31を有する。冷却用熱交換器31は、送風機21の下流に配置され、冷凍サイクル(不図示)の一部として冷媒が通流可能とされており、必要に応じて送風空気を冷却する。また、冷却用熱交換器31は、支持壁17で支持して固定されるか、又はケース10に設けた窪み(不図示)内に冷却用熱交換器31の下部を収納して固定されてもよい。支持壁17は、冷却用熱交換器31で発生した凝縮水の排水口33への流れが妨げられないように、切欠き17aを有することが好ましい。
【0021】
筒状部12は、流線形の内壁面を有する。ここで、流線形とは、内壁面に実質的な凹凸がなく、送風空気がケース10の内壁面に沿って流れ、騒音につながる渦又は乱流の発生が少ない形状をいう。拡大部13は、筒状部12の下流側に連接し、
図2に示すように、筒状部12の断面積よりも大きな断面積を有する。空気通路の断面積が大きくなる部分では、空気流れがケース10の内壁面から剥離して、騒音の原因となる渦巻き流が発生するおそれがある。
【0022】
突出壁14は、
図2に示すように、拡大部13の壁面を周囲に対して相対的に空気通路11の外側に向けて突出させた部分である。空気通路11の外側に向けて突出させるとは、空気通路11の断面積を拡大させる方向に突出させること、又は筒状部12の内壁面を下流に向けて仮想的に延長した仮想筒16の側面から離れる方向に突出させることをいう。
図2では、一例として、突出壁14が、空気通路11の下側に向けて突出した形態を示した。
【0023】
突出壁14を空気通路11から突出させたことで、ケース10の内壁面には段差19が形成される。筒状部12を流れてきた送風空気は、ケース10の内壁面から剥離して、剥離流が発生する。本願発明は、剥離流が発生する領域に突起15を設けて、剥離流が渦巻き流を形成することを阻止することで、騒音の低減を図ることができる。
【0024】
突起15は、
図2に示すように、突出壁14の内壁面から空気通路11の内側に向かって突出する。空気通路11の内側に向かう方向は、例えば、筒状部12の内壁面を下流に向けて仮想的に延長した仮想筒16の側面に向かう方向である。突起15は、突出壁14と一体に形成されるか、又は突出壁14とは別体であってもよい。突起15が突出壁14と一体に形成される場合、突起15は突出壁14の内壁面から直接突出する。また、突起15が突出壁14と別体である場合、
図2に示すように、突起15を形成した成形物90が突出壁14の内壁面上に配置され、突起15は突出壁14の内壁面から間接的に突出する。突起15が突出壁14と一体であるとき、突起15はケース10を射出成形時の金型の抜き方向に沿って延出することが好ましい。突起15を射出成形で形成するとき、突起15の材料としては、射出成型に利用される樹脂であれば特に制限はないが、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン又はABS樹脂が用いられる。また、突起15の材料は、空調装置が配置される車両の温度環境に耐えられ、耐水性があり、臭気又は粉体の発生源とならないという観点から、例えばポリプロピレン、EPDM(ethylene propylene diene monomer)などのゴム又は発泡スチロールを用いてもよい。また、突出壁14が車両に搭載した姿勢におけるケース10の底部に設けられたとき、突起15は鉛直方向に対する角度が±15°以内であることが好ましく、鉛直方向に延出することがより好ましい。
【0025】
突起15の頂部151は、
図2に示すように、筒状部12の内壁面を下流に向けて仮想的に延長した仮想筒16の側面よりも突出壁14側にある。また、突起15の頂部151は、筒状部12の内壁面を下流に向けて仮想的に延長した仮想筒16の側面に接してもよい。突起15の頂部151が仮想筒16内まで延出すると、筒状部12から流れ出た送風空気が突起15に衝突して、送風量の減少につながる。また、空気流れに乱れが生じ、騒音につながる場合がある。仮想筒16は、筒状部12の内壁面の母線の延長線L1によって形成される筒である。仮想筒16の形状は、筒状部12が円筒形状である場合は円筒形状であり、筒状部12が角筒形状である場合は角筒形状である。また、筒状部12が下流に向かって断面積が漸次拡径又は漸次縮径するテーパー形状である場合、仮想筒16の形状は筒状部12のテーパー形状を延長させたテーパー形状である。また、仮想筒16は、筒状部12から流れ出た送風空気が形成する流管に一致する。流管は、例えばCFD(Computational Fluid Dynamics)解析で求めることができる。
【0026】
突起15の形状は、例えば、板状、柱状である。板状とは、幅方向の長さが厚さ方向の長さよりも長い形状をいい、表面及び裏面がいずれも平坦面である形態(
図1及び
図2に図示)、表面若しくは裏面のいずれか一方又は両方が曲面である形態(不図示)を包含する。板状突起15の幅方向とは、例えば、板状突起15の横断面が
図1に示すように長方形状であるときは長辺方向であり、板状突起15の横断面が長円形状であるとき(不図示)は長軸方向である。板状突起15の厚さ方向とは、幅方向に直交する方向をいう。柱状は、例えば、円柱状、円錐状、角柱状又は角錐状である。
【0027】
本実施形態に係る車両用空調装置では、突起15は、板状突起であり、板状突起15の幅方向は、空気流れの方向に交差する方向であることが好ましい。渦巻き流の形成を、より確実に防止することができる。板状突起15の幅方向と空気流れの方向とのなす角度は、90°±15°であることが好ましく、90°であることがより好ましい。
【0028】
突起15の数は、特に限定されず、
図1及び
図2では、一例として、突起15が3個である形態を示した。複数の突起15を配置する場合、複数の突起15は、筒状部12側から見たときに、前後に並べて配置されることが好ましい。例えば、突起15として板状突起を前後に並べて配置するときは、板状突起15同士の間隔が板状突起15の幅方向の長さよりも短いことが好ましい。複数の突起15は、すべて同じ形状とするか、又は相互に異なる形状としてもよい。また、突起15の頂部151の位置は、全て仮想筒16の側面に接する形態(不図示)、水平面に対する高さを全て同じとする形態(不図示)、筒状部12に近づくほど仮想筒16から離れる形態(不図示)、又は筒状部12から離れるほど仮想筒16から離れる形態(
図2に図示)である。本実施形態では、突起15の頂部151の位置が筒状部12から離れるほど仮想筒16から離れることがより好ましい。筒状部12から流れ出た送風空気は筒状部12から離れるほど延長線L1よりも外側に拡散する範囲が広くなるため、突起15の頂部151の位置が筒状部12から離れるほど仮想筒16から離れることで、突起15に衝突する送風空気の量をより減少でき、送風量の減少を抑制することができる。また、送風空気が突起15に衝突することによって空気流れが乱れ、騒音につながることを防止することができる。
【0029】
突起15が騒音を低減するメカニズムについて説明する。
図2に示すように、突出壁14によってケース10の内壁面に段差19が形成される。筒状部12から流れ出た送風空気は、段差19でケース10の内壁面から剥離する。突起15がない場合、内壁面から剥離した剥離流は、空気通路の上流から下流に向かって流れる通常の送風空気の流れに対して逆流し、突出壁14によって形成された空間51内で渦巻き流が形成される。この渦巻き流が騒音の原因となる。これに対して、突出壁14が突起15を有することで、逆流した送風空気の流れが突起15に衝突し、渦巻き流が形成されることを防止することができる。その結果、騒音を低減することができる。
【0030】
次に、
図1及び
図2を参照して、具体例を説明する。本実施形態に係る車両用空調装置では、例えば、車両用空調装置1は、
図1に示すように、送風機21を有するブロワ部20と冷却用熱交換器31を有する熱交換部30とを横置きしたレイアウトを有し、筒状部12は、ブロワ部20と熱交換部30との間に設けられるダクト部40であり、冷却用熱交換器31は、吸込面31aの法線方向をダクト部40からの送風空気の流れ方向と交差させて配置され、拡大部13は、ダクト部40からの送風空気の流れ方向を冷却用熱交換器31の吸込面31aに向かう方向へ変更する方向変更部50であり、突出壁14は、
図2に示すように、方向変更部50の底部の壁であり、底部の壁が空気通路11の外側に向けて突出することによって空間51が形成され、空間51は、冷却用熱交換器31で発生する凝縮水の貯留部となっている。横置きタイプの車両用空調装置1において、騒音を低減することができる。
【0031】
ダクト部40は、送風機21から送られた送風空気を下流に流すための筒状の空気通路11を形成する。
図2では、ダクト部40が、下流に向かうにしたがって上方に向かう形態を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、下流に向かうにしたがって下方に向かう形態、又は水平に配置した形態であってもよい。
【0032】
方向変更部50は、
図1に示すように、冷却用熱交換器31の吸込面31aと吸込面31aに対向する対向壁32との間に空気通路11を形成する。ダクト部40からの送風空気の流れ方向が例えば車両の左から右への方向であるとき、冷却用熱交換器31の吸込面31aに向かう方向は車両の後側へ向かう方向である。対向壁32は、例えば、風速分布の均一化を図るために、ダクト部40から離れるにつれて吸込面31aに近づく段状に形成されていてもよい。また、方向変更部50には、必要に応じ、吸込面31aに並列する板状の整流ガイド18を設けてもよい。
【0033】
突出壁14は、
図2では、ダクト部40と方向変更部50との境界に隣接して、方向変更部50の底部の壁を空気通路11の外側に向けて突出させた形態を示したが、本願発明はこれに限定されず、方向変更部50の底部の壁のうち、ダクト部40から離れた部分を突出させてもよい。ブロワ部20からダクト部40へ向かって送風空気を吹き出す吹出口(不図示)の面積は、一般的に、冷却用熱交換器31の吸込面31aの表面積と比較して小さい。また、車両用空調装置1の冷却性能を十分に発揮させるためには、吸込面31aの全領域に送風空気が通流することが好ましい。このため、ダクト部40では、空気通路11の断面積を下流に向かうにしたがって拡大させることが好ましいが、車両用空調装置1を配置するスペースには限りがあり、ダクト部40での空気通路11の断面積の拡大には限界がある。このような状況において、突出壁14を設けないと、ケース10が冷却用熱交換器31の吸込面31aのうち仮想筒16よりも外側となる領域を覆う構成となり、冷却用熱交換器31への送風空気の通流が部分的に妨げられて、車両用熱交換器1の冷却性能を十分に発揮できないおそれがあるところ、突出壁14を設けることで、車両用空調装置1をコンパクト化しながら、方向変更部50における空気通路11の断面積を吸込面31aの表面積以上とすることができ、吸込面31aの全領域に送風空気を通流させることができる。また、突出壁14は、空気通路11の外側に突出する量を周囲よりも大きくした最突出部14bを有することが好ましい。最突出部14bを有することで、凝縮水を空間(貯留部)51により効率的に集めることができる。
図2では、最突出部14bが、方向変更部50の底部の壁のうちダクト部40に隣接する壁にある形態を示したが、本発明はこれに限定されない。
【0034】
空間(貯留部)51は、方向変更部50に滴下した凝縮水を一時的に貯留する部分であり、空間(貯留部)51内に流入してきた凝縮水は、
図3に示される排水口33に向かって流れていく。なお、空間51は、空間の容積又は突出壁14の突出量が小さいほど渦巻き流が発生しにくくなる。しかし、車両レイアウトの要請から、
図1に示す車両用空調装置1のように、空間51がやむなく凝縮水の貯留部を兼ねる場合がある。そして、空間51が貯留部を兼ねる場合は、所定量の凝縮水を貯留する必要があるため、空間51の容積や突出壁14の突出量を小さくできない事情がある。本実施形態では、突出壁14の突出壁が大きい場合であっても、空間(貯留部)51内に突起15を設けることで、騒音の発生を低減することができる。
【0035】
突起15は、方向変更部50の底部の壁から上方に向かって延出する。突起15は、ケース10を車両に搭載したとき、鉛直方向に延出することがより好ましい。重力によって突起15の形状が経時変化するおそれを低減することができる。
【0036】
本実施形態に係る車両用空調装置1では、突起15は、冷却用熱交換器31を空気通路11内で支持するための支持壁17との間に隙間52を有することが好ましい。また、冷却用熱交換器31の下部がケース10に形成した窪み(不図示)に収納されて固定されており、支持壁17を有さない形態である場合、突起15は、吸込面31aとの間に隙間を有することが好ましい。冷却用熱交換器31で発生した凝縮水をより効率的に排水することができる。また、突起15は、対向壁32との間に隙間53を有することが好ましい。凝縮水の流路を確保し、意図しない凝縮水の滞留を減少することができる。
【0037】
図3は、
図1のY−Y線端面図である。本実施形態に係る車両用空調装置1では、
図3に示すように、熱交換部30は、冷却用熱交換器31を配置する部分の底部に、凝縮水をケース10から排出する排水口33を有し、突起15が板状突起であり、板状突起15が配置された壁面14aは、排水口33に向かう下り傾斜面Sをなすことが好ましい。冷却用熱交換器31で発生した凝縮水をより効率的に排水することができる。排水口33に向かう下り傾斜面Sとは、ケース10を車両に搭載したとき、壁面14aの水平面に対する高さが、排水口33に向かうにしたがって低くなる面をいう。
【0038】
図4は、板状突起の配置例を説明するための図である。板状突起の配置例について、
図1及び
図4を参照して説明する。
図4は、ケース10を車両に搭載したとき、板状突起15を上方から見た図であり、紙面が水平面Hである。まず、
図1に示すように、板状突起15の表裏面のうち、筒状部12の近くの面を第1板面152とし、第1板面152の裏面を第2板面153とする。また、第2板面153と突出壁14との交線のうち、板状突起15の吸込面31a側にある端部を端点154とし、板状突起15の吸込面31aの反対側にある端部を端点155とする(
図1に図示)。そして、
図4に示すように、端点154から任意の水平面Hに投影した点をA点、端点155から水平面Hに投影した点をB点、排水口33(
図3に図示)から水平面Hに投影した点をC点とし、A点、B点及びC点から吸込面31a(
図1に図示)の延長面Eに下ろした垂線の足を、それぞれA´点、B´点、C´点とする。このとき、
図4に示す板状突起15a,15cのように、A´点がB´点よりもC´点に近いか、又は
図4に示す板状突起15bのように、A´点、B´点及びC´点が重なることが好ましい。このように配置することで、凝縮水が板状突起15の根元部に沿って、排水口33に向かって効率的に流れ、排水効率を高めることができる。
【0039】
ここまで、車両用空調装置1がブロワ部と熱交換部とを車両の左右方向に配置したレイアウトを有する横置きタイプである形態について説明してきたが、本願発明では、車両用空調装置1がブロワ部と熱交換部とを車両の上下方向に配置したレイアウトを有する縦置きタイプであってもよい。縦置きタイプでも、拡大部で剥離流が発生するため、この部分に突起を設ければよい。また、横置きタイプの車両用空調装置1について、突出壁14がダクト部40の下側に突出した形態について説明してきたが、突出壁40がダクト部40の上側に突出する形態についても本発明を適用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
図1に示す車両用空調装置1を実施例1とした。
【0042】
(比較例1)
図1に示す車両用空調装置1において、突起15を設けない車両用空調装置(不図示)を比較例1とした。
【0043】
(CFD解析)
実施例及び比較例の車両用空調装置について、CFD解析ソフトを用いてCFD解析を行った。解析結果を
図5及び
図6に示す。
図5及び
図6では、運動エネルギーの分布をグレー階調に処理した画像を示したが、運動エネルギーの分布はグレー調に処理する前のカラー画像によって、より正確に表現される。
【0044】
図5は、実施例1のCFD解析結果である。
図5に示すように、実施例1の車両用空調装置では、突起によって、剥離流が渦巻き流を形成することが防止されることが確認できた。また、実施例1は、比較例1と比較して騒音が低減されていた。
【0045】
図6は、比較例1のCFD解析結果である。
図6に示すように、比較例1の車両用空調装置では、運動エネルギーが局所的に高くなっており(カラー画像における赤色部分)、剥離流が渦巻き流を形成していることが確認された。その結果、騒音が発生していた。