特許第6339938号(P6339938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339938
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】固体燃料の製造方法及び固体燃料
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   C10L5/44
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-538587(P2014-538587)
(86)(22)【出願日】2013年9月26日
(86)【国際出願番号】JP2013076058
(87)【国際公開番号】WO2014050964
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-218004(P2012-218004)
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「バイオマスエネルギー技術研究開発/戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業(実用化技術開発)/石炭火力微粉炭ボイラーに混焼可能な新規バイオマス固形燃料の研究開発」に係る共同研究実施計画書(平成23年度〜24年度)
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】新倉 宏
(72)【発明者】
【氏名】川真田 友紀
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−191085(JP,A)
【文献】 特開2008−274110(JP,A)
【文献】 特開2003−206490(JP,A)
【文献】 特開平11−061142(JP,A)
【文献】 バイオマス炭化特性評価装置の開発,電力中央研究所報告,2012年 4月,報告書番号:M11014
【文献】 スギ樹皮を原料にした木質ペレット製造試験,新潟県森林研究所研究報告,2011年,No.52,49-52頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードグローブ粉砕性指数が30〜70である、石炭と混燃させるための固体燃料の製造方法であって、
樹皮粉砕物の水分を10〜50%に調整し、嵩密度が0.55g/cm以上になるまで高密度化した後、酸素濃度10%以下かつ温度170〜350℃の条件下でロータリーキルンを用いて焙焼することを含む、上記方法。
【請求項2】
樹皮粉砕物が、針葉樹の樹皮粉砕物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
焙焼処理を行うための装置を不活性ガスで置換して焙焼する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
200〜330℃で焙焼する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
樹皮粉砕物の水分を10〜30%に調整する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ハードグローブ粉砕性指数が30〜70である、石炭と混燃させるための固体燃料であって、樹皮粉砕物の水分を10〜50%に調整し、嵩密度が0.55g/cm以上になるまで高密度化した後、酸素濃度10%以下かつ温度170〜350℃の条件下でロータリーキルンを用いて焙焼することよって得られる、上記固体燃料。
【請求項7】
物質収率が60〜90%、熱量収率が70〜95%である、請求項6に記載の固体燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系バイオマスを焙焼(torrefaction)することによって得られる固体燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の枯渇化及びCO排出による地球温暖化への対策として、バイオマスを原料とする燃料の利用が検討されている。一般にバイオマスとは、エネルギー源又は工業原料として利用することのできる生物体をいい、代表的なものは木材、建築廃材、農産廃棄物等である。
【0003】
従来より、バイオマスを有効利用する方法が各種提案されている。その中でも、バイオマスを低コストで高付加価値物に転換できる有用な方法として、バイオマスを炭化して固体燃料を製造する方法がある。これは、バイオマスを炭化炉に投入して酸素欠乏雰囲気下で所定時間加熱して炭化処理し、固体燃料を製造するものである。
【0004】
このようにして製造された固体燃料は、発電設備や焼却設備等の燃焼設備の燃料に用いられるが、この場合、燃焼効率を向上させるために固体燃料を細かく粉砕して微粉燃料として用いることがある。固体燃料は単独であるいは石炭と混合して粉砕されるが、バイオマスのうち木質系バイオマスは大部分が繊維質であるため、粉砕性が悪く、燃焼効率の低下、粉砕機の運転性低下等の問題があった。
【0005】
特許文献1には、材廃材、間伐材、庭木、建築廃材等の木質系バイオマスを240℃以上300℃以下の温度で、15分以上90分以下の時間で熱分解した後に粉砕する方法が開示されている。加熱温度が240℃より低い温度であると破砕性、粉砕性が向上せず、300℃よりも高い温度であると破砕、粉砕時にサブミクロンオーダーの微粉量が増大して粉体トラブルを生じ易くなるため好ましくないとしている。
【0006】
また、特許文献2には穀類、実、種子を含むバイオマスを酸素濃度1〜5%、処理温度350〜400℃で30〜90分加熱して炭化処理することで、石炭と同等の粉砕性を有する固体燃料を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−026474号公報
【特許文献2】特開2009−191085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記方法で製造された炭化物は、物質収率及び熱量収率が低く、石炭に比較すると粉砕性が不十分であり、石炭と混合して粉砕処理して微粉炭ボイラーの燃料として使用することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、木質系バイオマス粉砕物の水分を10〜50%に調整後、嵩密度0.55g/cm以上に高密度化した木質系バイオマス粉砕物を原料として、酸素濃度10%以下かつ温度170〜350℃の条件下で焙焼(torrefaction)することによって、石炭と同等の粉砕性を有する固体燃料が製造できること見出した。
【0010】
これに限定されるものではないが、本発明は、以下の態様を包含する。
(1) 木質系バイオマス粉砕物の水分を8〜50%に調整し、嵩密度が0.55g/cm以上になるまで高密度化した後、酸素濃度10%以下かつ温度170〜350℃の条件下で焙焼することを含む、固体燃料の製造方法。
(2) 木質系バイオマスが、樹皮を含む、(1)に記載の方法。
(3) 固体燃料のハードグローブ粉砕性指数が30〜70である、(1)または(2)に記載の方法。
(4) 200〜330℃で焙焼する、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 木質系バイオマス粉砕物の水分を8〜30%に調整する、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 固体燃料が、石炭と混燃させるための固体燃料である、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7) 木質系バイオマス粉砕物の水分を8〜50%に調整し、嵩密度が0.55g/cm以上になるまで高密度化した後、酸素濃度10%以下かつ温度170〜350℃の条件下で焙焼することよって得られる固体燃料。
(8) 物質収率が60〜90%、熱量収率が70〜95%、ハードグローブ粉砕性指数(HGI)が30〜70である、木質バイオマスを焙焼させて得られる固体燃料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法にて得られる固形燃料は、物質収率、熱量収率が高く、さらに石炭と同等の粉砕性を有するため、石炭と混合して粉砕処理して微粉炭ボイラーの燃料として高い比率で混炭して使用することできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、原料として木質系バイオマスを使用する。木質系バイオマスとしては、木材チップ、樹皮(バーク)、おが屑、鋸屑等が挙げられる。これらの木質系バイオマスはあまり利用されることなく、廃棄されることが多いのが現状である。特に、樹皮を原料として焙焼した場合、木部のチップと比較して良好な性質を有する固形燃料が得られることが判明した。樹皮は木部と比較するとヘミセルロースの含有量が少ないので、焙焼した後の物質収率が高くなる。したがって、好ましい態様において本発明における木質系バイオマスは樹皮を含む。また本発明においては、木質系バイオマス原料として樹皮のみからなる原料を使用してもよい。樹種は広葉樹、針葉樹のいずれも使用できるが、針葉樹が好ましく、杉の樹皮が好ましい。
【0013】
本発明において、木質系バイオマスは粉砕物を使用する。木質系バイオマスの粉砕物は、0.1〜100mmのサイズに粉砕されたものを使用することが好ましく、0.1〜50mmのサイズのものを使用することがさらに好ましい。なお、本発明において、木質系バイオマス粉砕物のサイズとは、篩い分け器の円形の穴の大きさによって篩い分けされたものである。木質系バイオマスを粉砕するための装置としては、ナイフ切削型バイオマス燃料用チッパーで粉砕処理することが好ましい。
【0014】
本発明においては木質系バイオマスの粉砕物を高密度化する。好ましい態様の本発明における高密度化とは、木質系バイオマス粉砕物をブリケットやペレット状などに成型する処理のことを意味する。成型処理を行うことによって、嵩密度を大幅に高めることができる。高密度化する前の木質系バイオマス粉砕物の嵩密度は0.01g/cm〜0.3g/cm程度であるが、高密度化処理後の嵩密度は0.55g/cm〜1.0g/cmである。
【0015】
高密度化処理後の木質系バイオマス粉砕物の嵩密度は、0.55g/cm以上とすることが必要で、好ましくは0.6g/cm以上にすることが好ましい。嵩密度が0.55g/cm未満であると固体燃料を燃料として微粉炭ボイラーで燃焼させる際、微粉炭ミルの粉砕室中の容積が大きくなり、粉砕室からこぼれ落ちるため、石炭との混合比率をあまり大きくすることが不可能なため、本発明の効果を最大限に得ることができない。
【0016】
本発明における高密度化を行う前に、樹皮粉砕物の水分を10〜50%とすることが必要であり、水分を10〜30%に調整することが好ましい。水分が10%より少ないとブリケッターやペレタイザーの内部で閉塞が発生し、安定した成型物の製造ができない。水分が50%を超えると成型できず、粉体状またはペースト状で排出される。
【0017】
本発明においては、高密度化する際、バインダーを0〜50重量部添加することが好ましい。バインダーは特に限定されていないが、有機高分子(リグニンなど)、無機高分子(アクリル酸アミドなど)、農業残渣(ふすま(小麦粉製造時に発生する残渣)など)等が望ましい。樹皮を効率よく有効利用することを目的としている観点から、バインダー添加部数は少ない方が望ましく、0〜50重量部、より好ましくは0〜20重量部が望ましい。ただし、50重量部以上添加しても高密度化が不可能であるというわけではない。
【0018】
本発明において高密度化処理を行うための装置は特に限定されていないが、ブリケッター(北川鉄工所製)、リングダイ式ペレタイザー(CPM製、御池鉄工所製)、フラットダイ式ペレタイザー(ダルトン製)等が望ましい。
【0019】
本発明における焙焼(torrefaction)とは、低酸素雰囲気下において比較的低温で加熱する処理のことである。通常の木材の炭化処理の温度は400〜1200℃であるが、本発明の焙焼は、より低い温度(170〜350℃)で行われる。焙焼を行うことによって、その出発原料よりも高いエネルギー密度を有する固体燃料が得られる。
【0020】
本発明における焙焼の処理条件は、酸素濃度10%以下で、温度170〜350℃である。酸素濃度が10%を超えると物質収率、熱量収率が低下する。また、温度が170℃未満では後述する粉砕性が不十分であり、350℃を超えると物質収率、熱量収率が低下する。温度は170〜340℃が好ましく、さらに200〜330℃がさらに好ましい。ヘミセルロースは270℃付近で熱分解が顕著になるのに対して、セルロースは355℃付近、リグニンは365℃付近で熱分解が顕著になるので、焙焼の処理温度を170〜350℃とすることで、ヘミセルロースを優先的に熱分解して、物質収率と粉砕性を両立できる固体燃料を製造することが可能になると推察される。
【0021】
本発明において、焙焼処理を行うための装置は特に限定されないが、ロータリーキルン、竪型炉が好ましい。なお、酸素濃度を10%以下に調整するため装置内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。処理時間は15〜180分が好ましい。
【0022】
本発明で得られる固体燃料は、好ましい態様において、原料の木質バイオマスに対して物質収率で60〜90%、熱量収率で70〜95%である。また、粉砕性の指標であるJIS M 8801:2004に規定のハードグローブ粉砕性指数(HGI)は30以上が好ましく、40以上がさらに好ましい。HGIが高くなるほど、粉砕され易いことを示している。HGIが30〜70の範囲であれば、石炭と混合して粉砕処理することが可能となる。石炭のHGIは通常40〜70であるので、本発明で得られた固体燃料は石炭と同等の粉砕性を有している。
【実施例】
【0023】
以下に実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本明細書において、部、%などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0024】
実施例1
杉の樹皮をナイフ切削型バイオマス燃料用チッパー(緑産社製、Wood Hacker MEGA360DL)にて粉砕処理した。樹皮粉砕物を70mmのスクリーンに通した後、乾燥機で120℃、10分間乾燥処理を行って、水分を12%に調整した。
【0025】
次いで、水分を調整した樹皮粉砕物に対して、リングダイ式ペレタイザー(御池鉄工所、MIIKE多目的造粒機ペレットミルSPM−500型)にてダイ穴直径6mm、ダイ厚さ36mmのリングダイを用いて高密度化処理を行って、嵩密度0.60g/cmのペレットを得た。
【0026】
続いて、このペレットを原料として、大型キルン型炭化炉を用いて固体燃料を製造した。具体的には、窒素パージして(酸素濃度1%未満)、焙焼温度310℃、滞留時間30分で焙焼を行って固体燃料を得た。
【0027】
なお、嵩密度の測定方法は、JIS K 2151の6「かさ密度試験方法」に従った。
【0028】
実施例2
製材のサンダーダスト(粉砕物のサイズ:約7mm以下)を原料として、水分を10%に調整した。次いで、実施例1と同様にして高密度化処理を行って、嵩密度0.69g/cmのペレットを得た。続いてこのペレットを原料として、実施例1と同様にして焙焼を行って固体燃料を得た。
【0029】
実施例3
製材断裁シュレッダーダスト(粉砕物のサイズ:約7mm以下)を原料として、水分を10%に調整した。次いで、実施例1と同様にして高密度化処理を行って、嵩密度0.68g/cmのペレットを得た。続いてこのペレットを原料として、実施例1と同様にして焙焼を行って固体燃料を得た。
【0030】
実施例4
製材プレーナ粉(粉砕物のサイズ:約5mm以下)を原料として、水分を10%に調整した。次いで、実施例1と同様にして高密度化処理を行って、嵩密度0.69g/cmのペレットを得た。続いてこのペレットを原料として、実施例1と同様にして焙焼を行って固体燃料を得た。
【0031】
比較例1
杉の樹皮をハンマーミル(Prrsident Husky Corporetion製、PROGRIND 1500T)にて粉砕処理した。樹皮粉砕物(水分含量:約55%)を100mmのスクリーンに通した後、水分調整を行わずに実施例1と同様にして高密度化処理を行ったが上手く成型できず、嵩密度0.078g/cmの粉体が得られた。
【0032】
続いて、この粉体を実施例1と同様に炭化しようとしたが、炭化炉入口のロータリーバルブの詰まりや乾燥後のサイクロンの詰まりが発生し、固体燃料の製造ができなかった。なお、乾燥後のサイクロンで生じる詰まりとは、炭化炉内で発生した粉塵を排ガスと共に炭化炉から排出してサイクロンで処理する際に発生する詰まりのことである。
【0033】
比較例2
実施例1および比較例1で用いた杉の樹皮(未粉砕)を、比較例2の固体燃料試料とした。
【0034】
固形燃料の評価
実施例1〜4、比較例2で得られた固体燃料について、下記の項目を評価した。結果を表1に示す。
・物質収率:焙焼前後の試料の重量から計算した。
・熱量収率:焙焼前後の試料を島津燃研式自動ボンベ熱量計CA-4PJにて測定した発熱量から計算した。
・粉砕性:試料をボールミルで200rpm、4分間粉砕し、200メッシュをパスしたものの重量を測定し、粉砕性を評価した。石炭の粉砕性の指標であるハードグローブ粉砕性指数(HGI、JIS M 8801:2004)の値から換算して、固体燃料試料のHGIとした。なお、HGIが小さいほど、試料が粉砕しにくいことを意味する。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示されるように、水分8〜50%に調整し、嵩密度0.55g/cm以上に高密度化した木質系バイオマスを原料として固体燃料を製造した場合(実施例1〜4)、炭化炉入口のロータリーバルブの詰まりや乾燥後のサイクロンの詰まりは発生しなかった。また、焙焼によって製造した実施例1〜4の固体燃料は、物質収率及び熱量収率が高く、ハードグローブ粉砕性指数(HGI)が30〜70の範囲であり粉砕性が良好であった。
【0037】
一方、嵩密度0.5g/cm未満の原料を使用した比較例1では、炭化炉入口のロータリーバルブの詰まりや乾燥後のサイクロンの詰まりが発生し、固体燃料の製造ができなかった。また、比較例2の未処理の樹皮はHGIが30未満で粉砕性に劣っていた。