特許第6339939号(P6339939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6339939ポリエステル樹脂組成物および該樹脂組成物を含む成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339939
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物および該樹脂組成物を含む成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20180528BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20180528BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20180528BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   C08L67/04ZBP
   C08L31/04 S
   C08K5/053
   !C08L101/16
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-541936(P2014-541936)
(86)(22)【出願日】2013年10月10日
(86)【国際出願番号】JP2013006067
(87)【国際公開番号】WO2014061243
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-227762(P2012-227762)
(32)【優先日】2012年10月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 紀之
(72)【発明者】
【氏名】南 徹也
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0149844(US,A1)
【文献】 特開2007−217513(JP,A)
【文献】 特開平06−065484(JP,A)
【文献】 特表2010−504396(JP,A)
【文献】 特開平09−151310(JP,A)
【文献】 特開2012−177011(JP,A)
【文献】 特開2007−231184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L67/00−67/04
C08L31/04
C08L101/16
C08K5/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシアルカノエート(A)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)およびペンタエリスリトール(C)を含有する、脂肪族ポリエステル樹脂組成物であって、
ポリヒドロキシアルカノエート(A)が、下記一般式(1)
[−CHR−CH−CO−O−] (1)
(式中、RはC2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)、
で示される繰り返し単位を含み、
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)の酢酸ビニル比率が65〜95重量%であり、かつポリヒドロキシアルカノエート(A)とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)が相溶している、脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
ポリヒドロキシアルカノエート(A)/エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)の重量比が90/10〜55/45であることを特徴とする、請求項1に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
ポリヒドロキシアルカノエート(A)およびエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)の合計含有量100重量部に対して、ペンタエリスリトール(C)の含有量が0.05〜20重量部であることを特徴とする、請求項1または2に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
ポリヒドロキシアルカノエート(A)が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、及びポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜の何れかに記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物を成形してなるポリエステル樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物に関するものであり、特に微生物の働きによって分解される生分解性ポリエステル樹脂を、種々の産業用資材として適用するためのポリエステル樹脂組成物およびそれから構成される成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック廃棄物が、生態系への影響、燃焼時の有害ガス発生、大量の燃焼熱量による地球温暖化等、地球環境への大きな負荷を与える原因となっている問題を解決できるものとして、生分解性プラスチックの開発が盛んになっている。
【0003】
中でも植物由来の生分解性プラスチックを燃焼させた際に出る二酸化炭素は、もともと空気中にあったもので、大気中の二酸化炭素は増加しない。このことをカーボンニュートラルと称し、二酸化炭素削減目標値を課した京都議定書の下、重要視され、積極的な使用が望まれている。
【0004】
最近、生分解性およびカーボンニュートラルの観点から、植物由来のプラスチックとして脂肪族ポリエステル系樹脂が注目されており、特にポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと称する場合がある)系樹脂、さらにはPHA系樹脂の中でもポリ(3−ヒドロキシブチレート)単独重合樹脂(以下、P3HBと称する場合がある)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)共重合樹脂(以下、P3HB3HVと称する場合がある)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂(以下、P3HB3HHと称する場合がある)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)共重合樹脂およびポリ乳酸等が注目されている。
【0005】
しかしながら、前記PHA系樹脂は硬質性の樹脂であり、結晶化が非常に遅いため成形加工後の経時変化によって、脆くなってしまうことが知られている。
【0006】
一般的に硬質性の樹脂に柔軟性を付与するには、可塑剤を添加する方法が挙げられるが、可塑剤が大量に必要となるためブリードアウトする問題がある。
【0007】
特許文献1には、ポリ(ヒドロキシアルカン酸)とエチレン−酢酸ビニル共重合体をブレンドすることで、良好な衝撃強度を付与する技術が開示されている。該文献ではエチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル比率は6重量%以上であるが、エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル比率およびポリ(ヒドロキシアルカン酸)の種類の組み合わせによって、相溶性および改善効果が異なるため、衝撃強度が不充分であった。
【0008】
特許文献2には、生分解性を有するP3HB3HVと酢酸ビニル比率が5〜30重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体などをブレンドすることで一定の割合が生分解性を有し且つ弾性率や破断伸びをある範囲内で制御可能な組成物が開示されている。しかしながら、該コポリマーとP3HB3HVは非相溶である。またP3HB3HVを含む組成物に十分な延性を付与するにはエチレンコポリマーを半分近くブレンドする必要があり、生分解性が低くなってしまう。
【0009】
特許文献3には、乳酸系ポリマーと酢酸ビニル比率が30〜90重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる組成物が、フィルム同士のブロッキングを防止し、かつ良好な破断伸び等を有することが開示されている。しかしながら、破断伸び等は必ずしも満足できるものではなかった。
【0010】
特許文献4には、ポリ乳酸系樹脂を主成分とし、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を含む樹脂組成物からなる層と、ポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを相溶させる相溶化剤を含む樹脂組成物からなる層から成る熱収縮性積層フィルムが開示されている。該文献によれば、前記2つの異なる層を2層以上積層することで優れた延性を有する熱収縮性積層フィルムとなるが、ポリ乳酸系樹脂を主成分とし、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を含む樹脂組成物からなる層だけでは、フィルムとして必ずしも満足のいく延性を有することはできていない。
【0011】
一方、前記PHA系樹脂は、結晶化速度が遅いことから、成形加工に際し、加熱溶融後、固化のための冷却時間を長くする必要があり、生産性が悪い、成形後に起こる2次結晶化により機械物性(特に、引張破断伸度などの靭性)が経時変化する、という問題点がある。
【0012】
このため、従来から、PHA系樹脂に、窒化ホウ素、酸化チタン、タルク、層状ケイ酸塩、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、金属リン酸塩などの無機物を配合して結晶化を促進しようとする提案があった。しかし、得られた成形体の引張伸びが低下する、成形体表面外観が悪化する、などの弊害が多く、効果は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2010−504396号公報
【特許文献2】特表平6−503847号公報
【特許文献3】特開平9−151310号公報
【特許文献4】特開2011−136428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解される生分解性ポリエステルの中でも、特にポリヒドロキシアルカノエートの欠点である結晶化の遅さ及び脆さを同時に改善して、射出成形などの成形加工における加工性を改善し、加工速度を向上するとともに、得られる成形品に延性を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、結晶化の遅いポリヒドロキシアルカノエートに、酢酸ビニル比率が65〜95重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(以下、EVAと称する場合がある)と、ペンタエリスリトールを混合し、ポリヒドロキシアルカノエートとエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を相溶させることにより、加工性と延性を両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(A)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)およびペンタエリスリトール(C)を含有する、脂肪族ポリエステル樹脂組成物であって、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)の酢酸ビニル比率が65〜95重量%であり、かつポリヒドロキシアルカノエート(A)とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)が相溶している、脂肪族ポリエステル樹脂組成物に関する。
【0017】
好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエート(A)/エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)の重量比が90/10〜55/45である。
【0018】
好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエート(A)およびエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)の合計含有量100重量部に対して、ペンタエリスリトール(C)の含有量が0.05〜20重量部である。
【0019】
好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエート(A)が、下記一般式(1)
[−CHR−CH−CO−O−] (1)
(式中、RはC2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)、
で示される繰り返し単位を含む。
【0020】
好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエート(A)が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3-ヒドロキシバレレート−コ−3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3-ヒドロキシヘキサノエート)、及びポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4-ヒドロキシブチレート)から選択される1種以上である。
【0021】
また本発明は、前記脂肪族ポリエステル樹脂組成物を成形してなるポリエステル樹脂成形体にも関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の樹脂組成物によれば、ポリヒドロキシアルカノエートの結晶化の遅さ及び脆さを同時に改善して、射出成形などの成形加工における加工性を改善し、加工速度を向上するとともに、当該樹脂組成物から得られる成形品に延性を付与することができる。また、上述した3成分を組み合わせることによって、成形品の延性と可撓性が改善され、更には、樹脂組成物に含まれる生分解性を示す成分の含有率、及び/又は、樹脂に含まれる生分解性を示す構成部分の含有率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)とエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)の相溶性確認の方法において、PHAとEVAが判別できない状態、即ち「相溶」と判断する場合の透過型電子顕微鏡写真である。
図2】ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)とエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)の相溶性確認の方法において、PHAが連続相でEVAが分散相となった状態である、即ち「非相溶」と判断する場合の透過型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、PHA(A)と、特定の酢酸ビニル(以下、VAと称する場合がある)比率であるEVA(B)とペンタエリスリトール(C)とを含有し、かつPHA(A)とEVA(B)が相溶していることを特徴とする。
【0026】
本発明において、PHA(A)は、一般式:[−CHR−CH−CO−O−]で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステル樹脂である。
【0027】
本発明に用いるPHA(A)は、式(1) :[−CHR−CH−CO−O−](式中、RはC2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)で示される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0028】
PHA(A)は、3−ヒドロキシブチレートが80モル%以上からなる重合樹脂であることが好ましく、より好ましくは85モル%以上からなる重合樹脂であり、微生物によって生産された物が好ましい。具体例としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)単独重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシプロピオネート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘプタノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシノナノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシデカノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシウンデカノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)共重合樹脂等が挙げられる。特に、成形加工性および成形体物性の観点から、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)共重合樹脂が好適に使用し得る。
【0029】
前記PHA(A)において、3−ヒドロキシブチレート(以下、3HBと称する場合がある)と、共重合している3−ヒドロキシバレレート(以下、3HVと称する場合がある)や、3−ヒドロキシヘキサノエート(以下、3HHと称する場合がある)や、4−ヒドロキシブチレート(以下、4HBと称する場合がある)等のコモノマーとの構成比、即ち共重合樹脂中のモノマー比率としては、成形加工性および成形体品質等の観点から、3−ヒドロキシブチレート/コモノマー=97/3〜80/20(モル%/モル%)であることが好ましく、95/5〜85/15(モル%/モル%)であることがより好ましい。コモノマー比率が3モル%未満であると、成形加工温度と熱分解温度が近接するため成形加工し難い場合がある。コモノマー比率が20モル%を超えると、PHA(A)の結晶化が遅くなるため生産性が悪化する場合がある。
【0030】
前記PHA(A)の共重合樹脂中の各モノマー比率は、以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定できる。乾燥PHA約20mgに、2mlの硫酸/メタノール混液(15/85(重量比))と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、PHA分解物のメチルエステルを得る。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生が止まるまで放置する。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、上清中のPHA分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析することにより、共重合樹脂中の各モノマー比率を求められる。
【0031】
前記ガスクロマトグラフとしては、島津製作所社製「GC−17A」を用い、キャピラリーカラムにはGLサイエンス社製「NEUTRA BOND−1」(カラム長:25m、カラム内径:0.25mm、液膜厚:0.4μm)を用いる。キャリアガスとしてHeを用い、カラム入口圧を100kPaとし、サンプルは1μl注入する。温度条件は、8℃/分の速度で初発温度100℃から200℃まで昇温し、さらに200〜290℃まで30℃/分の速度で昇温する。
【0032】
本発明のPHA(A)の重量平均分子量(以下、Mwと称する場合がある)は、20万〜250万が好ましく、25万〜200万がより好ましく、30万〜100万がさらに好ましい。重量平均分子量が20万未満では、機械物性等が劣る場合があり、250万を超えると、成形加工が困難となる場合がある。
【0033】
前記重量平均分子量の測定方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(昭和電工社製「Shodex GPC−101」)を用い、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K−804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。この際、検量線は重量平均分子量31400、197000、668000、1920000のポリスチレンを使用して作成する。
【0034】
なお、前記PHA(A)は、例えば、Alcaligenes eutrophusにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32株(ブダペスト条約に基づく国際寄託、国際寄託当局:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)、原寄託日:平成8年8月12日、平成9年8月7日に移管、寄託番号FERM BP−6038(原寄託FERM P−15786より移管))(J.Bacteriol.,179,4821(1997))等の微生物によって産生される。
【0035】
本発明に用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)は、VA比率が65〜95重量%のものが好ましく、70〜90重量%がより好ましい。VA比率が65重量%未満であると、PHA(A)と非相溶となり、延性が改善されない場合がある。酢酸ビニル比率が95重量%を超えると、EVA(B)を比較的大量にブレンドしなければPHA(A)に延性を付与することができない場合がある。なお、前記EVA(B)のVA比率は、JIS K 7192に順じて求めることができる。
【0036】
前記EVA(B)として、具体的にはLANXESS社製「Levapren650HV」(VA比率65重量%のEVA)、LANXESS社製「Levapren700HV」(VA比率70重量%のEVA)、LANXESS社製「Levapren800HV」(VA比率80重量%のEVA)、LANXESS社製「Levapren900HV」(VA比率90重量%のEVA)や、LANXESS社製「Levapren700XL」(VA比率70重量%の部分架橋EVA)、LANXESS社製「Levapren800XL」(VA比率80重量%の部分架橋EVA)や、LANXESS社製「Levamelt700」(VA比率70重量%のEVA)、LANXESS社製「Levamelt800」(VA比率80重量%のEVA)および、日本合成化学社製「ソアブレンDH」(VA比率70重量%のEVA)などが挙げられ、これらを少なくとも1種使用できる。
【0037】
ところで、ポリヒドロキシアルカノエートの中でもポリ乳酸の場合、VA比率90重量%のEVA(B)をブレンドすると、ポリ乳酸−EVAブレンド物の延性はほとんど改善されない。また、ポリ乳酸にVA比率65重量%のEVA(B)をブレンドしても、延性はほとんど改善されない。しかしながら、3−ヒドロキシブチレート比率が80モル%以上のPHA(A)にVA比率65〜95重量%のEVA(B)をブレンドすると、延性を改善することができる。従って、ポリ乳酸ではVA比率65〜95重量%のEVA(B)をブレンドしても延性を充分に改善することができないが、前記3−ヒドロキシブチレート比率が80モル%以上のPHA(A)とVA比率65〜95重量%のEVA(B)では延性を大きく改善することができる。
【0038】
前記ポリエステル樹脂組成物の組成比は、PHA(A)/EVA(B)=90/10〜55/45(重量/重量)が好ましく、90/10〜70/30(重量/重量)がより好ましい。該組成比が90/10を越えると、ポリエステル樹脂組成物に延性を付与できない場合がある。該組成比が55/45未満であると、ポリエステル樹脂組成物の成形加工性が悪化し、生産性が低下する場合がある。
【0039】
本発明のPHA(A)とEVA(B)との相溶性の判断は、透過型電子顕微鏡(日立製作所社製「H−7650」)を用い、RuO染色したポリエステル組成物またはポリエステル組成物よりなる成形体を1万〜4万倍で観察することで、PHA(A)とEVA(B)が判別できない状態まで分散している場合を「相溶」とし、PHA(A)が連続相でEVA(B)が分散相となった分散構造を形成している場合を「非相溶」とする。
【0040】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物ではポリヒドロキシアルカノエート(A)の結晶核剤としてペンタエリスリトール(C)が用いられる。
【0041】
ペンタエリスリトールとは、下記式(2)
【0042】
【化1】

【0043】
で示される化合物である。多価アルコール類の一種であり、融点260.5℃の白色結晶の有機化合物である。ペンタエリスリトール(C)は糖アルコールに分類されるが、天然物由来ではなく、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドを塩基性環境下で縮合して合成することができる。
【0044】
本発明で用いられるペンタエリスリトールは通常、一般に入手可能であるものであれば特に制限されず、試薬品あるいは工業品を使用し得る。試薬品としては、和光純薬工業株式会社、シグマ・アルドリッチ社、東京化成工業株式会社やメルク社などが挙げられ、工業品であれば、広栄化学工業株式会社品(商品名:ペンタリット)や東洋ケミカルズ株式会社品などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
一般に入手できる試薬品や工業品の中には不純物として、ペンタエリスリトールが脱水縮合して生成するジペンタエリスリトールやトリペンタエリスリトールなどのオリゴマーが含まれているものがある。上記オリゴマーはポリヒドロキシアルカノエート(A)の結晶化には効果を有しないが、ペンタエリスリトールの結晶化効果を阻害しない。従い、オリゴマーが含まれていても構わない。
【0046】
本発明で用いられるペンタエリスリトール(C)の量は、ポリヒドロキシアルカノエート(A)の結晶化を促進できれば特に制限されない。しかし、ペンタエリスリトール(C)の結晶核剤としての効果を得るためには、ペンタエリスリトール(C)の含有量の下限値は、ポリヒドロキシアルカノエート(A)とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)の合計含有量100重量部に対して、好ましくは0.05重量部であり、より好ましくは0.1重量部であり、更に好ましくは0.5重量部である。また、ペンタエリスリトール(C)の量が多すぎると、溶融加工時の粘度が下がってしまい、加工し難くなる場合があるため、ペンタエリスリトール(C)の含有量の上限値は、ポリヒドロキシアルカノエート(A)とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)の合計含有量100重量部に対して、好ましくは20重量部であり、より好ましくは10重量部であり、更に好ましくは8重量部である。
【0047】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリヒドロキシアルカノエート単独、あるいは、ポリヒドロキシアルカノエートとペンタエリスリトール以外の糖アルコール化合物を含む樹脂組成物に比べて、加工時の樹脂組成物の結晶化が幅広い加工条件で安定して進行する点で優れているので以下に示すような利点がある。
【0048】
ポリヒドロキシアルカノエート(A)の中でも、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート(P3HB3HH)や、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート(P3HB3HV)などは、加熱溶融後に冷却して結晶化させる際、結晶化の進行は溶融時の樹脂温度の影響を受ける。すなわち、溶融時の樹脂温度が高いほど結晶化が進行し難くなる傾向がある。例えば、P3HB3HHは、溶融時の樹脂温度が樹脂の融点から170℃程度の温度の場合では、溶融時の樹脂温度が高いほど冷却時の樹脂の結晶化は進み難くなる傾向がある。また溶融時の樹脂温度が180℃程度以上の温度の場合では、冷却時の結晶化が数時間に渡って進行する傾向が有る。したがって、良好に成形加工を行なうためには、溶融時の樹脂温度を170℃〜180℃程度の温度範囲に制御しなければならないが、一般的な成形加工では溶融時の樹脂温度は均一でないため、上記の温度範囲で制御することは非常に困難である。
【0049】
本発明のポリエステル樹脂組成物の結晶化は、樹脂の溶融時の幅広い温度範囲に対して安定的に進行する。すなわち、溶融時の樹脂温度が樹脂の融点以上から190℃程度の温度範囲の場合であっても結晶化が安定的に早く進むため、本発明の樹脂組成物は、幅広い加工条件に対して優れた加工特性を有している。尚、溶融時の樹脂温度が200℃以上の温度で溶融加工する事は、熱劣化の観点で好ましくない。
【0050】
また、ポリヒドロキシアルカノエートの結晶化の進行は冷却温度にも依存している。例えば、P3HB3HHは、加熱溶融後の冷却温度が50〜70℃で最も結晶化が進行する傾向があり、冷却温度が50℃より低い、または70℃より高い場合は、結晶化が進行しにくくなる傾向がある。一般的な成形加工では金型温度が冷却温度に相関し、金型温度を上記温度範囲、すなわち50℃〜70℃の範囲で制御しなければならないが、金型温度を均一に制御するためには、金型の構造や形状を緻密に設計する必要が有り、非常に困難である。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂組成物の結晶化は、溶融後の樹脂の幅広い冷却温度範囲に対して安定的に進行する。すなわち、加熱溶融後の冷却温度が20℃〜80℃の温度範囲の場合であっても結晶化が安定的に早く進むため、本発明の樹脂組成物は、幅広い加工条件に対して優れた加工特性を有している。
【0052】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、従来のポリヒドロキシアルカノエート樹脂、あるいは、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂とペンタエリスリトール(C)以外の糖アルコール化合物を含む樹脂組成物では得られなかった、上記のような利点を有するので、溶融時の樹脂温度や金型などの冷却温度を幅広く設定できる点で、優れた加工特性を有している。
【0053】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、結晶化が安定的に早く進行することによって、以下に記すような特性が発現される。
【0054】
例えば、P3HB3HHは、成形時に十分に結晶化が進行しないため、成形後も徐々に結晶化が進行し球晶が成長するため、機械物性が経時変化し、成形品が徐々に脆化してしまう傾向があった。ところが、本発明のポリエステル樹脂組成物は、成形直後に多数の微結晶が生成するので、成形後には球晶が成長し難くなり、成形品の脆化も抑制されるため、製品の品質安定性の点で優れている。
【0055】
また、射出成形用の成形金型のキャビティ部のあわせ部(例えば、パーティングライン部、インサート部、スライドコア摺動部など)には、隙間があり、射出成形時に、その隙間に溶融した樹脂が入り込んでできる「バリ」が成形品に付着してしまう。ポリヒドロキシアルカノエート(A)は、結晶化の進行が遅く樹脂が流動性を有する時間が長いため、バリが起こり易く、成形品の後処理に多大な労力を要する。ところが、本発明のポリエステル樹脂組成物では結晶化が早いのでバリができ難く、成形品の後処理の労力を低減できるため、実用上好ましい。
【0056】
本発明にかかるポリエステル樹脂組成物は、ポリヒドロキシアルカノエート(A)の融点以上にまで加熱し混錬できる装置であれば公知の溶融混錬機により容易に製造できる。例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(A)とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)とペンタエリスリトール(C)と、さらに必要であれば他の成分とを押出機、ロールミル、バンバリーミキサーなどにより溶融混練してペレット状とした後、成形に供する方法、ペンタエリスリトールの高濃度のマスターバッチを予め調製しておき、これをポリヒドロキシアルカノエート(A)とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)に所望の割合で溶融混錬して成形に供する方法、などが利用できる。ペンタエリスリトール(C)とポリヒドロキシアルカノエート(A)とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)は混錬機に同時に添加してもよいし、あるいは先にポリヒドロキシアルカノエート(A)とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(B)を溶融させた後ペンタエリスリトール(C)を添加してもかまわない。
【0057】
本発明のポリエステル樹脂組成物ではPHA(A)とEVA(B)が相溶しているので、PHA(A)の融点以上でPHA(A)とEVA(B)を溶融混練すること、または、クロロホルム等のPHA(A)とEVAを溶解できる溶媒中で両樹脂をブレンドすることで、本発明のポリエステル樹脂組成物を容易に得ることができるが、生産性の観点から溶融混練で作製することが好ましい。
【0058】
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、各種添加剤を含有しても良い。ここで添加剤とは、たとえば、滑剤、ペンタエリスリトール以外の結晶核剤、可塑剤、加水分解抑制剤、酸化防止剤、離形剤、紫外線吸収剤、染料、顔料などの着色剤、無機充填剤等を目的に応じて使用できるが、それらの添加剤は、生分解性を有することが好ましい。
【0059】
他の添加剤としては、炭素繊維等の無機繊維や、人毛、羊毛等の有機繊維が挙げられる。また、竹繊維、パルプ繊維、ケナフ繊維や、類似の他の植物代替種、アオイ科フヨウ属1年草植物、シナノキ科一年草植物等の天然繊維も使用することが出来る。二酸化炭素削減の観点からは、植物由来の天然繊維が好ましく、特に、ケナフ繊維が好ましい。
【0060】
本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成形体の製造方法を以下に例示する。
【0061】
まず、PHA(A)、EVA(B)およびペンタエリスリトール(C)、さらには必要に応じて、前記各種添加剤を押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどを用いて溶融混練して、ポリエステル樹脂組成物を作製し、それをストランド状に押し出してからカットして、円柱状、楕円柱状、球状、立方体状、直方体状などの粒子形状のポリエステル樹脂組成物からなるペレットを得る。
【0062】
前記において、PHA(A)とEVA(B)等を溶融混練する温度は、使用するPHA(A)の融点、溶融粘度等やEVAの溶融粘度等によるため一概には規定できないが、溶融混練物のダイス出口での樹脂温度が140〜200℃であることが好ましく、150〜195℃であることがより好ましく、160〜190℃がさらに好ましい。溶融混練物の樹脂温度が140℃未満であると、PHA(A)とEVA(B)が非相溶となる場合があり、200℃を超えるとPHA(A)が熱分解する場合がある。
【0063】
前記方法によって作製されたペレットを、40〜80℃で十分に乾燥させて水分を除去した後、公知の成形加工方法で成形加工でき、任意の成形体を得ることができる。成形加工方法としては、例えば、フィルム成形、シート成形、射出成形、ブロー成形、ブロー成形、繊維の紡糸、押出発泡、ビーズ発泡等が挙げられる。
【0064】
フィルム成形体の製造方法としては、例えば、Tダイ押出し成形、カレンダー成形、ロール成形、インフレーション成形が挙げられる。ただし、フィルム成形法はこれらに限定されるものではない。フィルム成形時の成形温度は140〜190℃が好ましい。また、本発明のポリエステル樹脂組成物から得られたフィルムは、加熱による熱成形、真空成形、プレス成形が可能である。
【0065】
射出成形体の製造方法としては、例えば、熱可塑性樹脂を成形する場合に一般的に採用される射出成形法、ガスアシスト成形法、射出圧縮成形法等の射出成形法を採用することができる。また、その他目的に合わせて、上記の方法以外でもインモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法、サンドイッチ成形法、PUSH−PULL、SCORIM等を採用することもできる。ただし、射出成形法はこれらに限定されるものではない。射出成形時の成形温度は140〜190℃が好ましく、金型温度は20〜80℃が好ましく、30〜70℃であることがより好ましい。
【0066】
本発明の成形体は、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、食品産業、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に用いることができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。
・ポリヒドロキシアルカノエート原料A1:製造例1で得られたものを用いた。
【0068】
<製造例1>
培養生産にはKNK−005株(米国特許7384766号参照)を用いた。
【0069】
種母培地の組成は1w/v% Meat−extract、1w/v% Bacto−Tryptone、0.2w/v% Yeast−extract、0.9w/v% NaHPO・12HO、0.15w/v% KHPO、(pH6.8)とした。
【0070】
前培養培地の組成は1.1w/v% NaHPO・12HO、0.19w/v% KHPO、1.29w/v% (NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの)、とした。炭素源はパーム油を10g/Lの濃度で一括添加した。
【0071】
PHA生産培地の組成は0.385w/v% NaHPO・12HO、0.067w/v% KHPO、0.291w/v% (NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N 塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの)、0.05w/v% BIOSPUREX200K(消泡剤:コグニスジャパン社製)とした。
【0072】
まず、KNK−005株のグリセロールストック(50μl)を種母培地(10ml)に接種して24時間培養し種母培養を行なった。次に種母培養液を1.8Lの前培養培地を入れた3Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MDL−300型)に1.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度33℃、攪拌速度500rpm、通気量1.8L/minとし、pHは6.7〜6.8の間でコントロールしながら28時間培養し、前培養を行なった。pHコントロールには14%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。
【0073】
次に、前培養液を6Lの生産培地を入れた10Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MDS−1000型)に1.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度28℃、攪拌速度400rpm、通気量6.0L/minとし、pHは6.7から6.8の間でコントロールした。pHコントロールには14%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。炭素源としてパーム油、を使用した。培養は64時間行い、培養終了後、遠心分離によって菌体を回収、メタノールで洗浄、凍結乾燥し、乾燥菌体重量を測定した。
【0074】
得られた乾燥菌体1gに100mlのクロロホルムを加え、室温で一昼夜攪拌して、菌体内のPHAを抽出した。菌体残渣をろ別後、エバポレーターで総容量が30mlになるまで濃縮後、90mlのヘキサンを徐々に加え、ゆっくり攪拌しながら、1時間放置した。析出したPHAをろ別後、50℃で3時間真空乾燥し、PHAを得た。得られたPHAの3HH組成分析は以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定した。乾燥PHA20mgに2mlの硫酸−メタノール混液(15:85)と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、PHA分解物のメチルエステルを得た。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生がとまるまで放置した。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、遠心して、上清中のポリエステル分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析した。ガスクロマトグラフは島津製作所GC−17A、キャピラリーカラムはGLサイエンス社製NEUTRA BOND−1(カラム長25m、カラム内径0.25mm、液膜厚0.4μm)を用いた。キャリアガスとしてHeを用い、カラム入口圧100kPaとし、サンプルは1μlを注入した。温度条件は、初発温度100から200℃まで8℃/分の速度で昇温、さらに200から290℃まで30℃/分の速度で昇温した。上記条件にて分析した結果、化学式(1)に示すようなPHA、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)であった。3−ヒドロキシヘキサノエート(3HH)組成は5.6モル%であった。
【0075】
培養後、培養液から国際公開第2010/067543号に記載の方法にてPHBHを得た。GPCで測定した重量平均分子量Mwは60万であった。
・ポリヒドロキシアルカノエート原料A2:製造例2で得られたものを用いた。
【0076】
<製造例2>
KNK−005株の代わりにKNK−631株(国際公開第2009/145164号参照)を用いた他は、製造例1と同様にしてポリヒドロキシアルカノエート原料A2、P3HB3HHを得た。重量平均分子量Mwは62万、3HH組成は7.8モル%であった。
・ポリヒドロキシアルカノエート原料A3:製造例3で得られたものを用いた。
【0077】
<製造例3>
KNK−631株および炭素源としてパーム核油を用いた以外は、製造例1と同様の方法でポリヒドロキシアルカノエート原料A3、P3HB3HHを得た。重量平均分子量Mwは65万、3HH組成は11.4モル%であった。
・ポリヒドロキシアルカノエート原料A4:シグマ・アルドリッチ社製のポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)を用いた(3−ヒドロキシバレレート(3HV)組成は5モル%)。
・エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂:以下の市販品を用いた。
・EVA−1:LANXESS社製「Levapren900HV」(VA比率90重量%のEVA)
・EVA−2:LANXESS社製「Levapren800HV」(VA比率80重量%のEVA)
・EVA−3:LANXESS社製「Levapren700HV」(VA比率70重量%のEVA)
・EVA−4:LANXESS社製「Levapren600HV」(VA比率60重量%のEVA)
・EVA−5:住友化学社製「エバテートK3010」(VA比率28重量%のEVA)
・ポリ酢酸ビニル:電気化学社製「サクノールSN−04T」(VA比率100重量%)を用いた。
【0078】
<実施例1>
(ポリエステル樹脂組成物の製造)
ポリヒドロキシアルカノエート原料A1、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂およびペンタエリスリトール(和光純薬工業株式会社製)を、表1に示した配合比率(以下、表中の配合比は、重量部を示す)で、同方向噛合型2軸押出機(日本製鋼社製:TEX30)を用いて、設定温度120〜140℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬し、ポリエステル樹脂組成物を得た。樹脂温度はダイスから出てくる溶融した樹脂を直接K型熱電対で測定した。当該ポリエステル樹脂組成物はダイスからストランド状に引き取り、ペレット状にカットした。
【0079】
(射出成形)
得られた樹脂組成物は射出成形機(東芝機械社製:IS−75E)を用い、成形機のシリンダー設定温度は120〜140℃、金型の設定温度は50℃で、ASTM D−638に準拠したダンベル状の試験片を成形した。金型の実温度は金型の表面をK型熱電対で接触測定した。測定した金型の実温度を、各表で金型温度として示した。
【0080】
(離型時間)
本発明のポリエステル樹脂組成物の加工性は離型時間で評価した。金型内に樹脂を射出した後、金型を開いて突き出しピンによって試験片を変形させることなく突き出し、金型から離型させることができるまでに要する時間を離型時間とした。離型時間が短いほど結晶化が早く、成形加工性が良好で改善されていることを示す。
【0081】
(引張破断伸び)
射出成形で得られたダンベル状試験片は、ASTM D−638に準拠して、23℃における引張測定を行い、引張破断伸びを測定した。引張破断伸びは高いほど良好である。
【0082】
(相溶性)
透過型電子顕微鏡(日立製作所社製「H−7650」)を用い、RuO染色した樹脂組成物を1万〜4万倍で観察することで、PHAとEVAが判別できない状態(黒く大きな固まりが全く見えない)まで分散している場合を「相溶」(図1)とし、PHAが連続相でEVAが分散相(黒く大きな固まりとして見える)となった分散構造を形成している場合を「非相溶」(図2)とした。
【0083】
<実施例2〜3>
表1に示すような配合比で、実施例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂組成物のペレットを作製し、射出成形の離型時間および得られた試験片の引張破断伸びと相溶性を測定した。結果は表1に示した。
【0084】
<比較例1〜5>
表1に示すような配合比で、実施例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂組成物のペレットを作製し、射出成形の離型時間および得られた試験片の引張破断伸びと相溶性を測定した。結果は表1に示した。
【0085】
【表1】

表1に示すように、比較例1では成形品の離型時間は18秒と良好であるが、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が入っていないので引張破断伸びは15%であり低い。また、比較例2では引張破断伸びは230%であるが、ペンタエリスリトールが入っていないので離型時間に65秒を要した。比較例3と比較例4ではエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を配合しているが、酢酸ビニル共重合比が低いので非相溶となり引張破断伸びは低かった。比較例5ではエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の代わりにポリ酢酸ビニルを配合したが、引張破断伸びは低かった。それに対して、実施例1〜3ではペンタエリスリトールと適正な酢酸ビニル共重合比であるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を併用した結果、射出成形時の離型時間は25秒であり、かつ引張破断伸びは200〜225%と、加工性および延性の両方に優れることがわかった。
【0086】
<実施例4〜6>
表2に示すような配合比で、実施例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂組成物のペレットを作製し、射出成形の離型時間および得られた試験片の引張破断伸びを測定した。結果は表2に示した。
【0087】
【表2】

実施例4〜6ではペンタエリスリトールと適正な配合比率のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を併用した結果、加工性および延性の両方に優れることがわかった。
【0088】
<実施例7〜12><比較例6〜11>
表3に示すような配合比で、実施例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂組成物のペレットを作製し、射出成形の離型時間および得られた試験片の引張破断伸びを測定した。結果は表3に示した。
【0089】
【表3】

表3に示すように、比較例7、9、11はエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が入っていないので引張破断伸びは低い。また、比較例6、8、10はペンタエリスリトールが入っていないので、それぞれ実施例8、9、11に比べて離型時間に長時間を要した。それに対して、実施例7〜12ではペンタエリスリトールと適正な酢酸ビニル共重合比であるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を併用した結果、射出成形時の離型時間は短くかつ引張破断伸びは高く、加工性および延性の両方に優れることがわかった。
図1
図2