【文献】
中村修平,富村哲也,澤五郎,パーコレーション閾値以下のカーボンブラック・ポリエチレン複合体の誘電特性の解釈,電気学会論文誌A,一般社団法人電気学会,1999年,119巻11号,1355−1361ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘電体材料(514)は、エポキシ、アクリル、他のモノマー、溶融熱可塑性ポリマー、または、部分的に架橋され得るポリマーの少なくとも1つを含んでいる、請求項1に記載の接触子アッセンブリ(102)。
容量要素は、導電性基板(202)と結合接触子(400)との間の信号伝播路(402)に沿ってやり取りされるデータ信号の直流(DC)成分をブロックする、請求項1に記載の接触子アッセンブリ(102)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、添付の図面を参照しながら本発明を例示的に説明する。
【0010】
図1は、本発明のある1つの態様例に従った接触子アッセンブリ102として複合アッセンブリを有する電気コネクター100を示した斜視図である。かかるコネクター100は、本明細書にて開示される主題の1以上の態様が組み込まれ得る種々のデバイスの1つの例を示すにすぎない。
図1に表されたコネクター100は、本明細書で開示される全態様をかかる
図1のコネクター100に限定することを意図していない。
【0011】
コネクター100は、接触子アッセンブリ102を幾つか含んでいる。接触子アッセンブリ102は、導電性材料を含んでおり、コネクター100に導電パス(電流を流すための導電パス)を供している。接触子アッセンブリ102は、例えば「回路基板(図示せず)または別のコネクターとの間で電子データ信号をやり取りする信号接触子」、「コネクター100の電磁シールドとグランド基準とを電気的に接続するグランド接触子」、「電力をコネクター100に伝える、および/または、コネクター100から電力を伝える電力接触子」およびそれに類するものであり得る。本発明のある1つの態様では、接触子アッセンブリ102は容量接触子(capacitive contact)である。
【0012】
図2は、本発明のある1つの態様に従った接触子アッセンブリ102の1つの斜視図である
図3は、
図2の線3−3に沿って切り取った
図2の接触子アッセンブリ102の断面図を示す。接触子アッセンブリ102は、容量アッセンブリ200から形成された多層状の容量接触子であり得る。例えば、接触子アッセンブリ102は、導電性層または導電性ボディおよびコンポジット層またはコンポジット・ボディから形成された一体化した容量部材または固有の容量部材を有し得る。容量アッセンブリ200は、コンポジット層204(
図3の「高いDk材料」)によって互いに分けられた導電性基板202(
図3の「ベース金属」)および導電性層206(
図3の「トップ電極」)を含んでいる。導電性基板202および/または導電性層206は、導電性材料(例えば、金属、金属合金、または導電性炭素系材料などの導電性材料)を含んでいるか、あるいは、それから形成されたものとなっている。例えば、導電性基板202は、銅(Cu)または銅合金から形成されてよい。別法にて、導電性基板202および/または導電性層206は、1またはそれによりも多い他の導電体から形成されてもよい。
【0013】
導電性基板202上にコンポジット層204が設けられており、そのコンポジット層204上に導電性層206が設けられている。コンポジット層204は、比較的高い誘電率(Dk)を有する材料から成っていてよく、あるいは、かかる材料を含んだものであってよい。例えば、コンポジット層204は、3.0よりも大きい誘電率(Dk)を有する1以上の材料を含んでいるか、あるいは、そのような材料から形成されたものであってよい。別法にて、コンポジット層204における材料の誘電率(Dk)は少なくとも4.2となっていてよい。別の例では、コンポジット層204の材料の誘電率(Dk)は少なくとも100であり得る。別の例では、コンポジット層204は、1以上の導電性材料または1以上の誘電体材料を含み得る、あるいは、そのような材料から形成され得る。かかる材料は、本明細書で「高誘電材料」とも称する。別法にて、コンポジット層204は、より低い誘電率(Dk)の材料を有するものであってもよい。例えば、コンポジット層204は、3.0以下の誘電率(Dk)を有するものであってもよい。
【0014】
以下で説明するように、コンポジット層204は、「分散した導電性フィラー材を有する誘電体材料」を含んでいる。コンポジット層204の全体的な誘電率(Dk)を制御するために、誘電体材料において導電性フィラー材の濃度を変えることができる。本発明のある1つの態様では、導電性フィラー材の濃度は、以下で説明するようにパーコレーション閾値濃度よりも低くなっている。
【0015】
コンポジット層204は、1以上の手法で導電性基板202に設けることができる。ある1つの態様では、1またはそれよりも多い導電性基板202に対してコンポジット層204を電着(または「電気被着」もしくは「eコーティング」)してよい。例えば、誘電体材料を導電性基板202上に電着することによって、又は、誘電体材料およびフィラー材を導電性基板202上に共電着することによって、コンポジット層204を導電性基板202上に被着させてよい。別の態様では、反応性前駆体材料の化学反応によって被着させてもよい。反応性前駆体材料は、導電性基板202の表面上またはその表面にて反応し、かかる反応を通じて導電性基板202上にコンポジット層204が被着することになる。
【0016】
別の例では、コンポジット層204は、懸濁液、混合物または溶液といった流体状態または液体状態で供されることで設けてよく、導電性基板202がかかるコンポジット層204で浸漬被覆されてよい。例えば、コンポジット層204を形成するのに用いられる材料から成る流体浴に対して導電性基板202を全体的または部分的に浸してよい。そして、導電性基板202を流体浴から取り出して、硬化、乾燥、固化に付したり、または他の手法を用いたりして、導電性基板202上においてコンポジット層204として固体状態を得てよい。
【0017】
別の態様では、コンポジット層204は、導電性基板202上に積層されることで設けてよい。例えば、コンポジット層204は、導電性基板202の外表面に接着するシート、チューブまたは他の形状として形成してよい。コンポジット層204の導電性基板202への接着が助力されるべく、コンポジット層204と導電性基板202との間に接着剤を用いてよく、および/または、コンポジット層204を加熱してよい。
【0018】
別の例では、導電性基板202上にコンポジット層204がスクリーン印刷されることで設けられてよい。例えば、懸濁液、混合物または溶液といった流体状態または液体状態で供してよく、そのような状態で導電性基板202の外表面に印刷することによってコンポジット層204を設けてよい。そして、コンポジット層204は硬化、乾燥、固化に付されたり、または他の手法が用いられたりすることによって、導電性基板202上においてコンポジット層204が固体状態として得られることになる。
【0019】
別法にて、導電性基板202を覆ってフィットする形状、または、導電性基板202が中に入り込んでフィットする形状となるようにコンポジット層204を押出しまたは成形処理してよい。例えば、内側にチャンバーを規定する固体物(例えばチューブなど)としてコンポジット層204を形成してよい。導電性基板202はそのチャンバーに挿入することで設けることができる。ある1つの態様では、導電性基板202の外表面に係合する形状(例えば、導電性基板202の外表面にスナップフィットまたは緊密フィットする内部チャンバーを有するような形状)が得られるようにコンポジット層204を押出しまたは成形処理してよい。
【0020】
別の例として、コンポジット層204は流体状態または液体状態(例えば溶融状態)で供すことによって設けてよく、コンポジット層204の材料を導電性基板202上にスプレーしてよい。例えば、コンポジット層204を形成するのに用いる材料のエアロゾルまたは他の分散状態として導電性基板202上にスプレーしてよい。コンポジット層204の材料は、流体浴またはエアロゾル媒体から取り出される。そして、材料を硬化、乾燥、固化に付したり、または他の手法を用いたりして、導電性基板202上においてコンポジット層204を固体状態として得てよい。
【0021】
別の態様では、コンポジット層204は、スピンコーティングで導電性基板202上に設けてよい。例えば、コンポジット層204を形成する材料が流体状態にある際に導電性基板202の一部にコンポジット層204を設けてよい。導電性基板202は動かすことができ(例えば回転させることが可能であるので)、コンポジット層204の流体材料は、導電性基板202の少なくとも一部に移動することになって被覆が行われる。そして、流体材料は硬化、乾燥、固化に付されたり、または他の手法が用いられたりすることで導電性基板202上において固体状態のコンポジット層204として得られることになり得る。
【0022】
別の例では、物理蒸着法(PVD)を用いて導電性基板202上にコンポジット層204を設けてもよい。コンポジット層204を形成する材料は、チャンバー内で気化形態で設けられ得る。気化材料が導電性基板202の少なくとも一部を被覆することになるように導電性基板202はチャンバー内に仕込まれる。そして、かかる材料は硬化、乾燥、固化に付されたり、または他の手法が用いられたりすることで導電性基板202上において固体状態のコンポジット層204として得られることになり得る。
【0023】
導電性層206は、導電性材料(例えば、金属、金属合金、導電性炭素など)をコンポジット層204上に被着させることによって設けてよい。ある1つの態様では、導電性層206は、コンポジット層204上にスパッタリングまたは電着処理を施すことによって設けることができる。それに代わって、別の手法によって導電性層206を設けてもよい。
【0024】
図4は、本発明のある1つの態様に従った結合接触子(mating contact)400との結合(または接合もしくは合わせられた、mate)した接触子アッセンブリ102の断面図を示す。結合接触子400は、その結合接触子400と接触子アッセンブリ102との間でデータ信号をやり取りすべく接触子アッセンブリ102を受ける導電体(雌コンタクトまたは導電性ビアなど)を示している。
図4に示されるように、結合接触子400は、その結合接触子400と接触子アッセンブリ102とを電気的に接続すべく、接触子アッセンブリ102の導電性層206と係合している。
【0025】
「接触子アッセンブリ102のコンポジット層204を通って導電性層206から導電性基板202へと至るように存在する信号伝播路(signal propagation path)402」に沿うように接触子アッセンブリ102から結合接触子400へとデータ信号がやり取りされ得る(または伝わり得る)。別法にて又は付加的に、コンポジット層204を横切るように結合接触子400から接触子アッセンブリ102へと反対方向にデータ信号がやり取りされ得る(または伝わり得る)。データ信号は接触子アッセンブリ102のコンポジット層204を通るように導電性層206と導電性基板202との間を流れるが、そのようなデータ信号が「導電性基板202、コンポジット層204および導電性層206によって形成される容量要素」を通過するようになっている。
【0026】
接触子アッセンブリ102がある周波数のデータ信号のやり取りを行い、他のある周波数またはDC(例えば直流電流)のデータ信号を濾波することになるように、容量要素はデータ信号を濾波(filter)し得る。接触子アッセンブリ102は、信号伝播路402に沿ってやり取りされる比較的高速の信号からノイズ信号および/またはDC信号をフィルター除去する(例えば、ノイズ信号および/またはDC信号のやり取りをブロックする)。単なる例示にすぎないが、接触子アッセンブリ102のカットオフ周波数(または遮断周波数)よりも低い周波数でやり取りされる信号をフィルター除去する高通過フィルター(high pass filter)として接触子アッセンブリ102は機能し得る。接触子アッセンブリ102は、より低い周波数またはDCで伝達される信号を信号伝播路402に沿って通過させず、信号伝播路402に沿ってやり取りされるカットオフ周波数(または遮断周波数)よりも高い周波数における信号のやり取りを許容し得る。別の例では、接触子アッセンブリ102のカットオフ周波数(または遮断周波数)よりも高い周波数でやり取りされる信号をフィルター除去する低通過フィルター(low pass filter)として接触子アッセンブリ102は機能し得る。また、接触子アッセンブリ102は、より高い周波数またはDCで伝達される信号を信号伝播路402に沿って通過させず、信号伝播路402に沿ってやり取りされるカットオフ周波数(または遮断周波数)よりも低い周波数における信号のやり取りを許容し得る。
【0027】
接触子アッセンブリ102はコンポジット層204を含んだ一体的に形成された容量要素を含んでいるので、信号伝播路402に沿って信号が伝わる信号長さを大きく増加させることなく容量フィルターが接触子アッセンブリ102に効率的に含まれている。それゆえ、接触子アッセンブリ102は、信号の時間遅れよじれ(time delay skew)に大きな影響を与えることなく信号をやり取りおよび濾波を為し得る。
【0028】
図5は、本発明のある1つの態様に従った電着システム500の図である。電着システム500は、導電性基板202の少なくとも一部を電着(または「電気被着」もしくは「eコーティング」)するのに用いられる。容器506内には流体浴504が存在している。流体浴504は、1以上の誘電体材料514および/または1以上のフィラー材508から形成される液体浴であってよく、溶剤に組み込まれたものとなっていてよい。ある1つの態様では、流体浴504は、部分的に硬化されたり又は硬化されなかったりする流体モノマーもしくは液体モノマーまたは流体ポリマーもしくは液体ポリマー(例えば、エポキシ材料および/またはアクリル材料)から形成される。別の態様では、誘電体材料は、溶融熱可塑性ポリマーまたは部分的に架橋され得るポリマーを含んでいる。流体浴504はフィラー材を含んでおり、かかるフィラー材が流体浴504中に懸濁した状態で含まれている。流体浴504において、フィラー材508および誘電体材料514は別個に懸濁した状態で含まれていてよい。例えば、フィラー材508および誘電体材料514が流体浴504にて化学的および/または物理的に組み合わされるのに代えて(例えば、誘電体材料514がフィラー材508上でコーティングを形成したり、あるいは、フィラー材508が誘電体材料514上でコーティングを形成したりするのに代えて)、フィラー材508および誘電体材料514が別個に流体浴504にて懸濁した状態で含まれていてよい。別法にて、流体浴504は、気体状形態で分散したフィラー材508を含んだガス浴であってもよい。例えば、流体浴504は、化学蒸着法(CVD)、プラズマ誘起CVD(PECVD)または他の種類の蒸着チャンバーのガスであってよい。ある1つの態様では、フィラー材508は、金属、金属合金または導電性炭素(例えば、カーボン・ブラック、グラフェン、カーボン・ナノチューブおよびそれに類するもの)から成る導電性粒子などの導電性フィラー材である。
【0029】
流体浴504に含まれるフィラー材508は、相対的に高い導電特性を有し得る。例えばフィラー材508は流体浴504の誘電体材料よりも低い抵抗で電流を通すものであってよい。ある1つの態様では、フィラー材508は、20℃にて6.30×10
7S/m(Siemen/meter)の電気伝導性を有する。別法にて、フィラー材508は、20℃にて5.96×10
7S/m、5.80×10
7S/m、4.10×10
7S/mなどの種々の電気伝導性を有し得る。別の態様では、フィラー材508は、導電性炭素材料の粒子またはフレークであり得る。例えば、フィラー材508は、カーボン・ブラックの比較的小さい粒子(例えば、30ナノメーター以下の平均粒径を有する粒子)を含むものであってよい。別法にて、フィラー材508はより大きな粒子を含むものであってもよい。
【0030】
流体浴504の誘電体材料514は、相対的に小さい電気伝導性を有し得る。例えば、誘電体材料514の導電率は、20℃にて1×10
−8S/m〜1×10
−12S/m以下でよい。別法にて、流体浴504の誘電体材料は、別の電気伝導性を有するものであってよい。
【0031】
導電性基板202は、流体浴504内に少なくとも部分的に挿入される。例えば、流体浴504が液体浴となる態様では、導電性基板202は流体浴504内に入るように下げられてよい。別法にて、流体浴504がガス浴となる態様では、ガス浴を収容する容器506内へと導電性基板202を配置してよい。
【0032】
導電性基板202は、電池または電力供給などの電源510と電気的に接続される。また、導電性の対電極512も流体浴504内に少なくとも部分的に挿入される。対電極512は電源510と電気的に接続されている。電源510によって、導電性基板202および対電極512を通るように電流が流れる。例示される態様では、電源510は、対電極512に正電荷を与え、導電性基板202に負電荷を与える。別法にて、対電極512に負電荷が与えられる一方、導電性基板202に正電荷が与えられてよい。導電性基板202と対電極512(および/または流体浴504)との電位差によって、誘電体材料514およびフィラー材508が流体浴内に分散し、導電性基板202上へと電着することになる。例示される態様では、誘電体材料514およびフィラー材508が流体浴504内において帯電粒子として表されている(例えば、記号「+」によって表されている)。ある1つの例では、負に帯電した導電性基板202によって、流体浴504の誘電体材料(例えば、ポリマー材料)およびフィラー材508が導電性基板202へと引き寄せられる。
【0033】
ある1つの態様では、流体浴504の誘電体材料およびフィラー材508が導電性基板202上に共電着し、電着コンポジット層204として設けられる。例えば、流体浴504の誘電体材料およびフィラー材506を導電性基板202へと同時または並行的に電着させる。
【0034】
コンポジット層204を導電性基板202上へと適用する他の技術と比べ、導電性基板202上への電着によりコンポジット層204を設けることは、流体浴504の誘電体材料およびフィラー材508の接着性を向上させることができる。更に、コンポジット層204の電着では、そのコンポジット層204にわたって誘電体材料およびフィラー材406を略一様または均一に分布させることが可能となり得る。例えば、コンポジット層204では流体浴504の誘電体材料およびフィラー材508の分散または分布は略均質化したものとなり得る。
【0035】
また、コンポジット層204の電着は、コンポジット層204の厚さを比較的しっかりと又は厳密に制御できる。例えば、コンポジット層204の電着に使用する電流および/またはかかる電流を流す時間、電極間の距離(例えば、導電性基板202と対電極512との間の距離)、流体浴504中の誘電体材料514およびフィラー粒子508の濃度、ならびに/または、流体浴504の温度を変えることによって、コンポジット層204の厚さを比較的厳密に制御できる。
【0036】
コンポジット層204が導電性基板202に対して設けられた後、コンポジット層204上に導電性層206(
図2参照)などの1以上の付加的な導電性層が設けられてもよい。ある1つの態様では、導電性材料(例えば、金属または金属合金のイオンまたは粒子)を含んだ溶液を有する別の浴(図示せず)へと導電性基板202およびコンポジット層204を配置してもよい。コンポジット層204上に導電性層206を電着で設けるために、導電性基板202と対電極512との間に電流を流してよい。交互になる導電性層およびコンポジット層の電着は繰り返し行ってよく、それによって、コンポジット層204および導電性層206が交互に設けられた多層構造を形成する。
【0037】
図6は、本発明のある1つの態様に従ったフィラー材508(
図5)の種々の濃度[c]に対するコンポジット層204(
図2)の電気伝導性(σ)を示したグラフ600である。かかるグラフ600では、水平軸602がコンポジット層204に含まれるフィラー材508の濃度を示す一方、垂直軸604がコンポジット層204の電気伝導率を表している。グラフ600は、単なる一例にすぎず、フィラー材508のために使用されることになる全材料および/または全態様につき限定するものではない。
【0038】
図6に示されるように、コンポジット層204(
図2)の導電率は、コンポジット層204中のフィラー材508(
図5)の濃度が低い場合では比較的低いものとなっている一方、フィラー材508の濃度がより高くなると潜在的な上限値または漸近線606にまで増加する。その結果、コンポジット層204は、それにフィラー材508が添加されると、より導電性を呈することになり得る。例えば、流体浴504(
図5)内のフィラー材508の濃度が増加すると、コンポジット層204の導電率が増加し得る。
【0039】
しかしながら、コンポジット層204(
図2)を導電層として形成することを避けるために(例えば、
図2に示される導電性基板202、コンポジット層204および導電性層206によって形成される容量要素において誘電体層としてコンポジット層204を保持するために)、フィラー材508の濃度は、コンポジット層204の導電率が上限値606に達することがないように減じられる。ある1つの態様では、フィラー材508の濃度は、パーコレーション閾値濃度よりも低くなるように減じられる。
【0040】
図7は、コンポジット層204(
図2)におけるフィラー材508(
図5)の種々の濃度[c]に対する電気伝導性の変化率(σ/[c])の一例を示したグラフ700である。例えば、グラフ700は、
図6に示すグラフ600の数学的な導関数となり得る。別法にて、グラフ700は異なる形状を有していてよい。
図7に示されるグラフ700は、本明細書で開示される主題のあらゆる態様に関して限定するものではない。例えば、流体浴504(
図5)のフィラー材506および/または誘電体材料のための種々の材料では、異なるグラフ600および/またはグラフ700となり得る。
【0041】
グラフ700では、水平軸702がコンポジット層204(
図2)に含まれるフィラー材508(
図5)の濃度を示す一方、垂直軸704がコンポジット層204の有効誘電率(Dk
eff)またはコンポジット層204を含んだコンポジット・アッセンブリ200の電気容量(capacitance)を示している。
図7に示すように、コンポジット層204の導電率の変化率は、より低いフィラー材濃度においては上限値706まで増加することになり、フィラー材508の濃度が高くなると減少する。導電率の変化率の上限706に相当するフィラー材508の濃度は“パーコレーション閾値濃度708”と称され得る。
【0042】
図6および
図7に関して、パーコレーション閾値濃度708は、コンポジット層204(
図2)中のフィラー材506(
図5)の濃度を表すものであり、最大の導関数における濃度からフィラー濃度が別の増加した濃度へと増加または別の減じられた濃度へと減少すると、導電率に相当な変化がもたらされることになる(例えば、フィラー材506の他の濃度よりも最も急激な変化がもたらされる)。例えば、フィラー材506の濃度がパーコレーション閾値濃度708未満である場合、コンポジット層204は、コンポジット層に印加される直流(DC)の流れを阻止する(導電性層206および導電性基板202にDCが印加されるなどの場合においてDCの流れをブロックする)。フィラー材506の濃度がパーコレーション閾値濃度708以上である場合、コンポジット層204は導電体として作用し、導電性層206と導電性基板202との間でDC電流を通す。
【0043】
例示された態様では、パーコレーション閾値濃度708は、グラフ600のより大きい微分値(1つまたはそれよりも多い他の微分値よりも大きいグラフ600の微分値)におけるフィラー材508の濃度であり得る。例えば、パーコレーション閾値濃度708は、導電率と濃度との関係を示すグラフ600の最大微分値(maximum derivative)において生じ得る。別法にて、パーコレーション閾値濃度708は、別の異なる濃度において生じ得る。
【0044】
流体浴504(
図5)中のフィラー材508(
図5)の濃度は、コンポジット層204(
図2)中のフィラー材508の濃度がパーコレーション閾値濃度708を僅かに下回るように設定され得る。ここでいう「僅かに下回る」とは、フィラー材506の濃度がパーコレーション閾値濃度708から比較的小さい量ずれた範囲内にあること、例えばパーコレーション閾値濃度708から1%、3%、5%、7%、10%、14%または17%などずれた範囲内にあることを意味している。ある1つの態様では、フィラー材508の濃度が、パーコレーション閾値濃度708から10%低くずれた範囲内にある。
【0045】
パーコレーション閾値濃度708を僅かに下回る範囲内にフィラー材508(
図5)の濃度を設定すると、「導電性基板202、コンポジット層204および導電性層206によって形成される容量要素(
図2)」の電気容量が増加するといった予期せぬ結果がもたらされる。例えば、容量アッセンブリ200(
図2)の電気容量は、フィラー材508の濃度がパーコレーション閾値濃度708未満のポイントにまで増加すると、かかる増加に対して非直線的に予期せず増加する。本明細書に開示される1以上の態様に従って形成されるコンポジット層204は、例えば少なくとも4.0の有効誘電率(Dk)などの比較的高い有効誘電率(Dk)を呈することが見出されている。別法にて、有効誘電率(Dk)は少なくとも3.0であり得る。従前においては、導電性フィラー材の濃度が増加すると、コンポジット層がより導電性を呈するようになり、容量要素の誘電体層としてよりも導体として作用し、その結果、コンポジット層の誘電率(Dk)は3.0未満に低下するであろうとの想定があった。この点、本明細書の1以上の態様に従ってフィラー材508の濃度をパーコレーション閾値濃度608をほんの少し下回るポイントにまで増加させることによって高い有効誘電率(Dk)を達成することができ、それゆえ、かかる事項は予期せぬ事項である。
【0046】
ある1つの態様では、銅の導電性基板202、導電性層206および「86%のエポキシ材またはアクリル材とフィラー材508(10nm以上かつ30nm以下の平均サイズを有するフィラー材)として14%のカーボン・ブラック粒子から形成されるコンポジット層204」(
図2)を有する容量アッセンブリ200(
図2)の電気容量は、フィラー材506の濃度がより大きい又はより小さい容量アッセンブリ200の電気容量よりも予想外に大きくなることを見出している。別の態様では、銅の導電性基板202、導電性層206および「83.3%のエポキシ材またはアクリル材とフィラー材506(10nm以上かつ30nm以下の平均サイズを有するフィラー材)として16.7%のカーボン・ブラック粒子から形成されるコンポジット層204」を有する容量アッセンブリ200の電気容量は、14%以外のフィラー材506の濃度を有する容量アッセンブリ200の電気容量よりも予想外に大きくなることを見出している。
【0047】
別の態様では、銅の導電性基板202、導電性層206および「84〜85%のエポキシ材またはアクリル材とフィラー材506(10nm以上かつ30nm以下の平均サイズを有するフィラー材)として15〜16%のカーボン・ブラック粒子から形成されるコンポジット層204」を有する容量アッセンブリ200の電気容量は、14%または16.7%以外のフィラー材506の濃度を有する容量アッセンブリ200の電気容量よりも予想外に大きくなることを見出している。
【0048】
別の態様では、銅の導電性基板202、導電性層206および「83〜86%のエポキシ材またはアクリル材とフィラー材506(10nm以上かつ30nm以下の平均サイズを有するフィラー材)として14〜17%のカーボン・ブラック粒子から形成されるコンポジット層204」を有する容量アッセンブリ200の電気容量は、14%、16.7%以外または15〜16%以外のフィラー材506の濃度を有する容量アッセンブリ200の電気容量よりも予想外に大きくなることを見出している。
【0049】
別の態様では、銅の導電性基板202、導電性層206および「81〜88%のエポキシ材またはアクリル材とフィラー材406(10nm以上かつ30nm以下の平均サイズを有するフィラー材)として6〜19%のカーボン・ブラック粒子から形成されるコンポジット層204」を有する容量アッセンブリ200の電気容量は、14%、16.7%以外、15〜16%以外または14〜17%以外のフィラー材506の濃度を有する容量アッセンブリ200の電気容量よりも予想外に大きくなることを見出している。
【0050】
別の態様では、カーボン・ブラック以外の導電性材料をフィラー材508(
図5)として用いてよい。例えば、金、銀および白金などから成る粒子をフィラー材508として用いてよい。別法にて、金属酸化物をフィラー材508として用いてもよい。
【0051】
図8は、本発明のある1つの態様に従ってコンポジット層を導電性基板に設ける方法800を示すフローチャートである。かかる方法800は、電気コネクターのためのコンポジット・アッセンブリ(例えば
図2に示すコンポジット・アッセンブリ200など)の製造に関連して用いられ得るものである。
【0052】
802においては、流体浴が供される。流体浴は、誘電体材料を液体状態または流体状態で含んでおり、または、懸濁液中の誘電体粒子として誘電体材料を含んでいる。例えば、流体浴は、液体のエポキシ材またはアクリル材、溶融した又は部分的に硬化したポリマー、もしくは別の点で変性したポリマーを含んでいてよく、あるいは、それらから形成されたものであってよい。
【0053】
804においては、流体浴にフィラー材が添加される。フィラー材は、銀、金、白金、カーボン・ブラックなどの導電性材であってよい。フィラー材は、比較的小さい粒子またはフレークとして供することができ、例えば平均直径が30nmよりも大きくない粒子として供することができる。フィラー材濃度が流体浴のパーコレーション閾値濃度からずれた指定された範囲内となるまで、フィラー材を流体浴に加えることができる。例えば、フィラー材濃度がパーコレーション閾値濃度よりも小さく、かつ、そのパーコレーション閾値濃度から5%ずれた範囲内になるまでフィラー材を流体浴に加えてよい。別法にて、パーコレーション閾値濃度を下回る別の濃度となるようにフィラー材濃度を供してもよい。
【0054】
806においては、フィラー材を含んだ流体浴が、導電性基板または導電体の外表面に対して適用される。例えば、上述したように、流体浴およびフィラー材を用いて導電性基板202上に電着処理を施したり、成形処理を施したり、そのような導電性基板202を囲む形状が得られるように押出し処理を行ったり、あるいは、導電性基板202上で積層処理したり、導電性基板202に対してスプレー処理したり、または、印刷処理などを施してよい。流体浴およびフィラー材は硬化、乾燥に付されたり、または他の手法が用いられて導電性基板上にてコンポジット層が固体状態として得られることになる。例えば、流体浴およびフィラー材はコンポジット層204(
図2には図示せず)を形成し得る。
【0055】
808においては、コンポジット層上に導電性層が設けられる。例えば、導電体202(
図2)に係り合うコンポジット層204の側部とは反対側に位置する「コンポジット層204の側部」に導電性層206(
図2)が堆積されて設けられてよい。
図2に示すように、コンポジット層204によって分けられるように導電体(例えば、導電性基板202および導電性層206)はコンポジット層204の対向する側部に設けられ、容量要素を形成する。導電性層206からコンポジット層204を横切って導電性基板202へと流れるように「コンポジット層204を含んだ接触子アッセンブリ102(
図1)」に電流が流れることができる。
【0056】
図9は、本明細書で開示の1以上の態様に従って形成された容量要素を含んだ1以上の接触子902,904を含むコネクター900を示している。コネクター900は、
図1に示されるコネクター100のチクレット(chicklet)における導電性の信号トレースなど、バックプレーン・コネクターの導電性部品として示されている。別法にて、コネクター900は別の種類のコネクターであってもよい。また、接触子902,904は、
図9の挿入図に示すようなものであってよい。
【0057】
接触子902は、導電性のボディまたはコア910とコンポジット層912(コア910上でコーティングを形成するコンポジット層912)とを有するピンとして示されている。コンポジット層912は、上述したコンポジット層204(
図2)と似ていてよい。導電性層914は、コンポジット層912上に形成されるものであってよく、導電性層206(
図2)と似ていてよい。コンポジット層912および導電性層914がボディ910上にて順次層状に設けられることで容量要素を含んだピンが得られる。接触子902を通るようにやり取りされる信号は、ボディ910を通過するように移動するところ、コンポジット層912を横切って導電性層914へと移動し、「接触子902が結合する別の導電体(例えばレセプタクル)」へと移動することになったり、あるいは、「接触子902が結合する別の導電体」から導電性層914を通って、コンポジット層912を横切りボディ910へと移動することになったりする。
【0058】
接触子904は、対向アーム916(その間において結合接触子(例えばピン)を受ける対向アーム916)として表されている。アーム916の各々は、導電性のボディまたはコア910とコンポジット層920(ボディ918上でコーティングを形成するコンポジット層920)とを含んでいる。コンポジット層920は、上述したコンポジット層204(
図2)と似ていてよい。導電性層922は、コンポジット層920上に形成されるものであってよく、導電性層206(
図2)と似ていてよい。接触子902と同様、コンポジット層920および導電性層922がボディ918上に順次層状に設けられることで容量要素が得られる。接触子904を通るようにやり取りされる信号は、ボディ918を通過するように移動するところ、コンポジット層920を横切って導電性層922へと移動し、「アーム916の間でそれと係合するピン」へと移動することになったり、あるいは、かかるピンから導電性層922を通って、コンポジット層920を横切りボディ918へと移動することになったりする。上述したように、容量要素を「信号が伝播することができる接触子902,904」の一部として形成することは、接触子の外部に付加的な部品(例えば付加的なコンデンサー)を加えずに信号伝播路のためのコンデンサーまたはコンデンサー状要素を供することができることを意味している。