(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノズル主要本体の横方向から噴流を噴出し、ウォータージェット加工(以下、適宜単に「加工」という。)するノズルを、被加工物の溝部に挿入し、溝部の側面を加工する際には、ウォータージェットを噴射する加工位置から溝部(窪んだ部位)の底面までの距離は、オリフィス(絞り)から主要本体(本体)の底面までの距離よりも大きくする必要がある。つまり、絞りからノズル主要本体の底面までの距離によって、加工可能な溝部の形状が制約されている。
特許文献1では、オリフィスをオリフィス取付台に取り付け、オリフィス取付台の周囲に形成したねじ山でオリフィス(絞り)を固定する。そして、オリフィス取付台と本体との間は、Oリングによってシールされる。従って、流体圧力がノズルに作用する面積は、オリフィス取付台の断面積となる。オリフィス取付台が流体から受ける力は、圧力とこの断面積の積で得られるため、大きな力となる。オリフィス取付台の外周に設けられているねじ部材が、流体圧力がオリフィス取付台に与える力に抗して、オリフィス取付台を固定する。そして、オリフィス取付台のねじ径と材料の強度でオリフィス(絞り)を固定する張力が決定される。つまり、ねじ部材の外径は、流体の圧力、オリフィス取付台の外径並びにオリフィス取付台及びノズル主要本体の材質で定められていた。ここで、ウォータージェット加工に用いる流体圧力は通常100MPaから700MPaと非常に大きいため、ねじ山部材のねじ外径を大きく設計する必要があった。その結果、オリフィスの中心軸から主要本体底面までの距離が大きくなる。
ウォータージェット加工による加工形状の自由度を高くすることができるウォータージェット加工用ノズルおよびウォータージェット加工装置を提供することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、本発明のウォータージェット加工用ノズルは、高圧の流体に研磨材を混合して噴出するウォータージェット加工用ノズル(以下、適宜単に「ノズル」という。)であって、一方の端面に設けられた絞りと、他方の端面へ連通された空洞部と、前記空洞部と前記絞りとを連通する貫通流路と、前記空洞部に連通する貫通穴と、を備えるノズル体と、折れ曲げ部を有し前記絞りへ前記流体を供給する高圧流路を備える本体と、前記ノズル体と前記本体とを結合する結合手段と、前記空洞部に挿入される噴出管と、前記噴出管を前記ノズル体に固定する噴出管装着手段と、前記貫通穴に接続され、前記研磨材を前記空洞部へ供給する研磨材供給管と、を備え、環状隆起部と環状隆起部が当接する当接面とのいずれか一方がノズル体の一方の端面に、他方が本体に設けられており、前記環状隆起部は、前記当接面と当接して前記流体を封止し、前記高圧流路は、前記本体に設けられている前記当接面又は前記環状隆起部の内側に開口している。
本発明のノズルは、本体とノズル体が結合手段で結合されるため、流体圧力を受ける結合手段がコンパクトに構成され得る。また、ノズル体は、流体を噴出する噴出口を形成する絞りと、噴出管が嵌合される空洞部とを備えているため、絞りと噴出管を同軸に組立てることができ、絞りから噴出した流体のエネルギーが効率よく研磨材を運搬し、噴出できる。
ノズル体は、上記当接面の内側の面積と流体圧力との積の大きさの力を受ける。結合手段は、この力に抗してノズル体と本体とを結合する。環状隆起部が高圧流路の開口部を囲む当接面と当接して流体を封止するため、流体の圧力が作用する面積を小さくできる。すると、流体の圧力により結合手段に加わる力を小さく抑えることができ、結合手段を小さく形成することができる。この作用により、絞りの中心軸から本体底面までの距離を小さくできる。
【0006】
本発明のノズルは、好ましくは、前記ノズル体および前記本体の一方は係合部を備え、他方は前記係合部と嵌合する受容部を備え、前記係合部と前記受容部とが嵌合することで前記ノズル体が前記本体に位置決めされる。
上記構成によれば、ノズル体が本体に位置決めされるため、消耗品であるノズル体を交換した際に、ノズル体の位置が再現性良く固定される。コンピュータ制御加工する際に、ノズル位置が正確に再現されるため、ノズル交換後の再教示が不要である。
【0007】
本発明のノズルは、好ましくは、前記係合部は、本体に設けられた筒状の突起部であり、受容部は、ノズル体の一方の端面に設けられた窪みとして構成される。
本発明のノズルは、本体が突起部を備え、ノズル体の受容部に突起部が受容されて本体が受容部と係合するため、組み立て性が高い。
【0008】
また、本発明のノズルは、折り曲げ部が鋭角をなすように構成することができる。このように構成すれば、高圧流路の折り曲げ部の下流側の長さを本体幅一杯にまで取ることができるため、絞り上流の高圧流体の流れを整流化できる。そのため、絞りから噴出する噴流の直進性を高めて加工能力を向上できる。また、加工面が平滑になる効果が生ずる。
【0009】
本発明のノズルは、好ましくは、噴出管が空洞部に嵌合するように挿入され、絞りと、貫通流路と、空洞部と、が同一軸線上に形成されている。
上記構成によれば、絞りから噴出した噴流が、貫通流路、空洞部、噴出管の中心を通過するため、噴流がこれらの壁面の影響を受けにくく、高いエネルギー密度を備えた研磨材を含む噴流を得ることができる。
【0010】
本発明のノズルは、更に、前記噴出管装着手段は、前記他方の端面側の外周部に配設される雄ねじ部と、前記雄ねじ部に螺入されるナットと、前記ナットの内部に装着された環状の弾性体と、を備え、前記ナットは、前記弾性体の外周部を支持する弾性体支持部を有し、前記ナットを前記雄ねじ部に締め込む締め込み力によって、前記弾性体が前記ナットと前記ノズル体の他方の端面との間で押圧されて当該弾性体の内周部が縮径して前記噴出管の外周部に付勢されることで当該噴出管が固定される、構成をとることができる。
上記構成によれば、噴出管の固定が簡易かつコンパクトにできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウォータージェット加工による加工形状の自由度を高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るウォータージェット加工用ノズルであるノズル10について、適宜
図1から
図6を参照しながら詳細に説明する。図面は、構造の特徴を明確にするため、ノズル体12および環状隆起部36(
図1参照)を拡大して表している。
【0014】
(構造)
ノズル10は、
図1に示すように、本体13と、ノズル体12と、ノズル体12と本体13とを結合する結合手段であるボルト14(
図2参照)と、ノズル体12に装着された噴出管15と、ノズル体12に装着され研磨材を供給する研磨材供給管61と、を備えている。ノズル体12は、フランジ体21を備えている。ノズル体12と本体13との係合部は、本体13に設けられた突起部31である。
【0015】
図1に示すように、本体13は、ノズル体12の受容部22に挿入する突起部31と、高圧水発生装置16である高圧ポンプから送出された高圧流体が流れる高圧流路32と、結合手段であるボルト14(
図3参照)と係合する雌ねじ部33(
図3参照)と、を有している。本体13は、オーステナイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼、チタン合金その他の耐食性金属で製作できる。
【0016】
図1及び
図3に示すように、突起部31は、円筒状に本体13に突設されて一体に成形されている。突起部31の端面に高圧流路32の開口32e(
図3参照)が設けられ、さらに、開口32eを囲むように環状隆起部36が形成されている。突起部31は、受容部22に嵌合し、環状隆起部36が、受容部22の底面22aに設けられた平滑な表面、すなわち当接面22b(
図4参照)に当接する。これにより、ノズル体12と本体13は高い組付け精度で固定される。突起部31が、受容部22に嵌合しているため、ノズル体12は、流体圧力の振動により、振動しにくい。ノズル体12が振動しにくいため、噴流が安定し、ノズル10を用いて加工した際の加工面が平滑になる。
【0017】
なお、突起部31の断面は、円形でなく、例えば方形など異なる断面に形成できる。また、突起部31に替えて、ノズル体12に突起部を備え、本体13に凹部を備え、本体13の凹部にノズル体12の突起部を嵌合することができる。
【0018】
環状隆起部36は、断面が略台形をなす円環状の突起である。環状隆起部36の端面は平滑に作成される。環状隆起部36の断面における先端部分は、丸みを帯びて製作できる。環状隆起部36が、結合手段であるボルト14(
図3参照)により、受容部22の当接面22b(
図4参照)に付勢することにより、環状隆起部36が弾性変形し、環状隆起部36と受容部22の当接面22bとの間が封止される。
環状隆起部36が当接面22b(
図4参照)に当接し、付勢することで弾性変形されてノズル体12と本体13との位置関係が定まる。そのため、フランジ体21と本体13との間には若干量のすき間δ(
図1参照)が設けられる。
【0019】
環状隆起部36の断面は略台形を成しているため、流体圧力が作用したときに環状隆起部36内に生ずる内部応力が均一となる。また、当接面22bとの接触面積が狭くなるため、当接面22bに高い圧力で当接し、高い密封性が得られる。上述のように、環状隆起部36は、環状隆起部36に作用する100MPaないし700MPaの高い流体圧力に耐え得る剛性と、弾性変形して密封する機能を備える。
【0020】
環状隆起部36は、窒化チタン、炭化チタン、ダイヤモンドライクカーボン(以下、「DLC」と呼ぶ。)その他の耐摩耗性被膜(以下、単に「耐摩耗性被膜」という。)を備えることができる。環状隆起部36は、ノズル体12を交換する毎に、弾性変形し、当接面22bと環状隆起部36との間を封止するところ、環状隆起部36に耐摩耗性被膜を設けることで、その寿命を伸ばすことができる。
【0021】
ノズル体12が流体から受ける力は、流体の圧力と環状隆起部36が当接する当接面22bの内側の断面積(受圧面積)との積で定まる。このため、環状隆起部36によって囲まれる面積は、できるだけ小さく製作される。本体13が環状隆起部36を備えていることにより、ノズル体12の接液し、受圧する断面積を最小限度に抑えることができる。
【0022】
なお、環状隆起部36は必ずしも円環状でなくてもよく、絞り23を囲むように形成された隆起部であればよい。
【0023】
高圧流路32は、屈曲部(折れ曲げ部)32aと、高圧配管に接続され高圧流体を高圧流路32へ導入する高圧流体導入口32bと、を有し、高圧流体導入口32bから屈曲部32aまでの第1の流路32cと、屈曲部32aから突起部31までの第2の流路32dと、で形成されている。
【0024】
高圧水発生装置16が発生した超高圧水(高圧流体)は、高圧配管38(
図6参照)を介して高圧流体導入口32bへ供給される。導入口32bは雌ねじ及びテーパ面を備えている。高圧配管38はナット37で雌ねじに固定される(
図6参照)。高圧流体導入口32bのテーパ面が、高圧配管38のテーパ面(不図示)と当接し、液封される。
【0025】
第2の流路32dは本体13の
図1における下面と平行に形成されている。第1の流路32cは、高圧流体導入口32bから屈曲部32aに向かって
図1の右側(ノズル体12から離れる方向)へ傾斜して形成されている。第2の流路32dの開口32eは、環状隆起部36の内側に位置している。第2の流路32dは受容部22と同軸に設けられている。
【0026】
屈曲部32aは、第1の流路32cを流れる高圧流体を第2の流路32dへ流動方向を鋭角θに変える部位である。屈曲部32aの流動方向(進行方向)に対する折り曲げ角は鋭角θを成す。
折り曲げ角を流動方向に対して鋭角θにすることで、第2の流路32dの長さを本体13の幅一杯に取ることができる。絞り23から噴出する噴流の流れは乱れずに収束していることが好ましい。この為には、絞り23上流での流れの乱れが少ないことが必要となる。しかし、上下方向の流れを左右方向に変えて絞りに供給するノズルにおいては、絞り上流に屈曲部32aを設ける必要があるため、一般的には整った噴流を得ることは困難である。この点、本実施形態のノズル10においては、屈曲部32aの折り曲げ角を鋭角θにすることで、屈曲部32aの下流かつ絞り23の上流の流路長さ、すなわち第2の流路32dの長さを出来る限り長く取ることができ、その結果、より安定した高圧噴流を得ることができる。
【0027】
図1及び
図4に示すように、第2の流路32dには、整流器34を配置することが好ましい。整流器34は、第2の流路32dに垂直に設けられた、整流板34aを備えている。整流板34aには、流通路となる複数の貫通穴が設けられている。整流器34の下流長さ(整流器34から絞り23までの長さ)は長いことが望ましい。そのため、整流器34は、整流板34aの下流部に中空円筒状の部材34bを設け、整流板34aと絞り23との距離を確保している。整流器34は、屈曲部32aを通過した高圧流体を整流する効果があり、その結果、絞り23から噴射された高圧流体の収束性が改善される。
【0028】
図1に示すように、ノズル体12は、フランジ体21(
図2を併せて参照)と、フランジ体21の一方の端面側(第2の流路32dの方向)に設けられた受容部22と、受容部22の底面22aに設けられた絞り23と、受容部22の反対側となる他方の端面側(噴出管15の先端側)へ延びるように突設された雄ねじ部24と、雄ねじ部24の端面からフランジ体21にかけて設けられた空洞部25と、絞り23と空洞部25との間に形成された貫通流路27と、を備えている。フランジ体21、及び雄ねじ部24は一体に形成されている。ノズル体12は、オーステナイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼、チタン合金その他の液体に対して耐食性を備える金属で製作できる。
【0029】
図1ないし
図3に示すように、フランジ体21は、ノズル体12の中央に設けられる厚肉のフランジである。フランジ体21は、ノズル体12に作用する流体の圧力を受け止め、その圧力に抗してノズル体12を本体13へ固定する。ウォータージェット加工に用いられる流体圧力は100MPaないし700MPaと非常に高いため、フランジ体21に作用する力が大きい。フランジ体21は、この力を受け止めるため、
図1の左右方向に厚みをもち、それにより高い剛性を備えている。本実施例では、フランジ体21が
図1上の上下方向に狭い幅で製作されているため、フランジ体21は略直方体(
図2参照)をなす。フランジ体21は、結合手段であるボルト14(
図3参照)により、本体13に結合される。
【0030】
図3に示すように、段付き穴21c,21cは、中央部に配設された受容部22及び空洞部25を挟むように、フランジ体21の両端付近に形成されている。
【0031】
受容部22は、突起部31を受容して位置決めするための窪みである。本体13の突起部31は、受容部22に嵌合し、挿入される。
【0032】
図4に示すように、受容部22の底面22aは環状隆起部36(
図1参照)との当接面22bが設けられている。当接面22bは平面であり、平滑な表面をもつ。当接面22bは平滑な表面を備えるため、環状隆起部36と当接し、環状隆起部36との間を密封することができる。当接面22bは、耐摩耗性被膜を備えることができる。当接面22bは、環状隆起部36と硬度を変えて仕上げる事ができる。
なお、当接面22bは、環状隆起部36との間を密封することができればよく、平面に替えて、曲面とすることができる。
【0033】
図1に示すように、逃がし穴26は、ノズル体12の底面から受容部22に貫通するように、設けられている。逃がし穴26は、環状隆起部36または当接面22bが摩耗して、流体が環状隆起部36と当接面22b(
図4参照)との液封を破って漏出した場合に、漏出した高圧の流体をノズル体12の外部へ逃がす役割を持つ。
【0034】
図1及び
図4に示すように、絞り23は、絞り部材23aに設けられており、高圧流路32から供給された高圧流体の噴出口となる。絞り部材23aは、円柱状をなし、ダイヤモンド、コランダムその他の無機物結晶で形成される。絞り23はその中心軸が絞り部材23aの中心軸上に設けられている。絞り23の直径は、0.05〜0.5mmである。絞り部材23aは、圧入、接着又は焼結により、ノズル体12と一体として固定されている。絞り部材23aは、ノズル体12と一体的に成形されることで、絞り23の中心軸が受容部22と精密に同軸に位置づけられる。絞り23が消耗したときは、絞り部材23aはノズル体12と一体として交換される。
【0035】
貫通流路27は、絞り23から空洞部25へ連通するように、突起部31と同軸に形成されている。貫通流路27は、絞り23から空洞部25に向かうにつれて、断面が徐々に拡大している。絞り23から噴出した高圧噴流は、貫通流路27を通って空洞部25に入り、空洞部25内の混合器71に供給された研磨材と混合し、研磨材を伴って噴出管15から噴出する。
【0036】
空洞部25は、円筒状の空間である。空洞部25には、貫通穴28と貫通流路27が開口している。空洞部25は、突起部31と同軸上に形成されている。空洞部25は、混合器71及び噴出管15を納める空間となる。貫通穴28は、フランジ体21外面から空洞部25内面までを貫通する。貫通穴28には、後述する研磨材供給管61が設けられる。研磨材は、貫通穴28を通って空洞部25に設置された混合器71に供給される。
【0037】
混合器71は、内部に段付き穴を持つ中空円筒状をなす。段付き穴の大径部の側面には、貫通穴28と一致する箇所に研磨材供給口71aが形成される。研磨材供給口71aの外面は切欠きを備え、切欠きと後述するアダプタ62とを接触させることで混合器71の円周方向の組付け角度が定められる。段付き穴の細径部は絞り23から噴出した噴流を通し、大径部は、研磨材供給装置17から供給された研磨材を絞り23から噴出した噴流と混合し、噴出管15へ送り出す混合室となる。混合器71は、超鋼金属等の耐摩耗性材料で製作される。
【0038】
なお、混合器71の設置に替えて、空洞部25の内面に耐摩耗性被膜を設けることができる。この場合には、空洞部25の先端側に噴出管15を位置決めする段差を設けることが望ましい。
【0039】
雄ねじ部24は、フランジ体21を挟んで受容部22の反対側となる他方の端面側に、受容部22と同軸上に突設されている。雄ねじ部24の外周円筒面に、雄ねじが設けられている。雄ねじ部24の内周端面には、大きく面取りが設けられている。
【0040】
噴出管15は、
図1及び
図3に示すように、空洞部25に嵌合して挿入されている。噴出管15は、噴出管装着手段18によってノズル体12の雄ねじ部24に固定されている。噴出管装着手段18は、雄ねじ部24に螺入されるナット41と、ナット41の内部に装着された環状の弾性体42と、を備えている。
ナット41は、雄ねじ部24に螺入される大径の雌ねじ部41aと、噴出管15が挿通される小径の貫通穴41bと、貫通穴41bが形成された底部41cと、底部41cの内側底面に形成された弾性体支持部41dである傾斜した面取りと、を備えている。ナット41は、断面が略コの字形状をなした有底筒型形状からなる部材である。
【0041】
弾性体42は、内周部が噴出管15に当接している。弾性体42の外周部は、ナット41を締めて取り付けられた状態では、断面視で三角形をなしている。
弾性体42は、天然ゴム、又はNBR,EPDMその他の合成ゴムで作成された円形断面をなしたOリングを利用できる。また、弾性体42は、PE、PP、PTFEその他のプラスチックスで作成された断面三角形の円形リングを利用できる。これらのリングは一部で切断されていても良い。噴出管15を混合器71に当接するように空洞部25に挿入してから、ナット41を雄ねじ部24に締めこむと弾性体42が変形し、噴出管15に付勢するため、噴出管15は空洞部25に固定される。
【0042】
ナット41の内側底面は、弾性体42の断面形状に適合する傾斜した面取り41dが設けられている。雄ねじ部24の内周端面には、弾性体42の断面形状に適合する傾斜した面取り24aが設けられている。面取りの角度は、弾性体42の材質、寸法により適宜設計される。
ナット41の内側底面の面取り41dと雄ねじ部24の内周端面の面取り24aとの間に、弾性体42が挟まれている。噴出管15は、雄ねじ部24側から挿入され、ナット41を雄ねじ部24に締めこんで噴出管15をノズル体12に固定する。
【0043】
具体的には、ナット41を雄ねじ部24に締め込む締め込み力によって、弾性体42がナット41と雄ねじ部24の内周端面との間で押圧されて弾性体42の内周部が縮径して噴出管15の外周部に付勢されることで噴出管15がノズル体12に固定されるようになっている。
【0044】
なお、噴出管装着手段18は、上述の構成に替えて、噴出管15の外周面に突起を設け、この突起をナット41及び雄ねじ部24との間に挟持して噴出管15をノズル体12に固定できる。また、ナット41と噴出管15を一体に製作するか、ナット41と噴出管15を接着、圧入、ろう付けにより固定しても良い。弾性体42に替えて、コレットを利用できる。コレットを用いる場合、コレットと同一のテーパを雄ねじ部24内面に設ける。これらの場合においては、ナット41を雄ねじ部24に締めこむことにより、噴出管15がノズル体12に固定される。
【0045】
図3に示すように、結合手段であるボルト14は、ノズル体12から段付き穴21c内に挿入され、フランジ体21を、ねじ穴33を介して結合する。ボルト14の頭部は段付き穴21c内に収容されている。
図2における横方向に、噴出管15の両側に配置したボルト14を用いて、フランジ体21を介してノズル体12を本体13に固定することで、ボルト14の軸径を細くすることができる。ボルト14の軸径が小さくなるため、噴出管15の中心から図面下側の端面までの距離L(
図1参照)を非常に小さく構成することができる。
【0046】
なお、ボルト14を2本設けることに替えて、ボルト14を4本以上設けることができる。結合手段としてはボルト14に替えてクランプを利用できる。また、ねじ穴33をノズル体12に設け、ボルト14を本体13から挿入して固定しても良い。この他、ボルト及びナットによりフランジ体21と本体13とを結合することができる。
【0047】
図1に示すように、研磨材供給管61は、貫通穴28に設けられたアダプタ62に固定され、研磨材供給装置17と空洞部25とを接続する。研磨材は、研磨材供給管61及びアダプタ62を流れる。研磨材供給管61は、ポリウレタンチューブその他の耐摩耗性材料で製作できる。アダプタ62は、超鋼金属、工具鋼等の耐摩耗性の高い素材で製作される。また、アダプタ62の内面に耐摩耗性被膜を形成することもできる。
【0048】
噴出管15は、中空円筒状の管である。空洞部25に挿入され、弾性体42を介してナット41を締めることによってノズル体12に固定される。噴出管15は、研磨材と流体が混合した混相流を通過させ、流体を整える役割をもつ。噴出管15は超鋼金属、工具鋼等の耐摩耗性の高い素材で製作できる。噴出管15の内外径は高い同軸度で成形されている。
【0049】
(使用方法)
図6を参照して、ノズル10の使用方法を説明する。ノズル10は、ブラケット35を介して、ノズル移動装置である多関節ロボット(不図示)のフランジ面に固定される。研磨材供給管61は、研磨材供給装置17と接続され、多関節ロボットの基台からロボットアームに沿ってノズル10まで設けられている。高圧配管38は、多関節ロボットの基台からロボットアームに沿って配管され、ノズル10の本体13へ接続されている。被加工物Wは断面略U字状の溝Dを備えている。高圧流体としては、超高圧に加圧された水(高圧水)が利用される。研磨材としては、ガーネット砥粒が利用できる。ノズル10は、多関節ロボットにより、溝D内に溝底付近まで挿入される。高圧水発生装置16から供給された高圧水は、研磨材供給装置17から研磨材供給管61を通って供給されたガーネット砥粒と混合し、噴出管15から噴出する。ガーネット砥粒を含む高速の噴流Jは、被加工物Wを貫通する。多関節ロボットによりノズル10が溝D内を移動すると、ノズル10の軌跡に沿って、被加工物Wが加工される。
【0050】
なお、高圧水の圧力、研磨材の供給量、ノズル10の移動速度、噴出管15の内径等を適宜変更することで、溝加工等の種々の加工をすることができる。また、ノズル移動装置としては、多関節ロボットに替えて、XYZ軸を有する直交軸ロボットを利用できる。
【0051】
ノズル10は、上記構成により、噴流中心から本体の底面(
図6における下方端)までの距離Lを非常に小さく製作できる。このため、溝Dの底面から加工部位までの距離L2を従来技術に比較して小さくできる。
【0052】
(作用効果)
図1に示すように、本実施形態のノズル10は、高圧の流体に研磨材を混合して噴出するウォータージェット加工用ノズルであって、一方の端面に設けられた絞り23と、他方の端面へ連通された空洞部25と、空洞部25に収容された混合器71と、混合器71と絞り23とを連通する貫通流路27と、空洞部25に連通する貫通穴28と、を備えるノズル体12と、折れ曲げ部32aを有し絞り23へ流体を供給する高圧流路32を備える本体13と、ノズル体12と本体13とを結合する結合手段14と、空洞部25に挿入される噴出管15と、噴出管15をノズル体12に固定する噴出管装着手段18と、貫通穴28に接続され、研磨材を空洞部25へ供給する研磨材供給管61と、を備えている。環状隆起部36と環状隆起部36が当接する当接面22b(
図4参照)とのいずれか一方がノズル体12の一方の端面に、他方が本体13に設けられており、環状隆起部36は、当接面22bと当接して流体を封止し、高圧流路32は、本体13に設けられている当接面22b又は環状隆起部36の内側に開口している。
【0053】
上記のように構成したノズル10は、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、ノズル10は、ノズル体12がフランジ体21を備え、本体13とノズル体12がフランジ体21を介してボルト14で結合されるため、流体圧力を受けるボルト14がコンパクトに構成され得る。また、ノズル体12は、流体を噴出する噴出口を形成する絞り23と、噴出管15が嵌合される空洞部25とを備えているため、絞り23と噴出管15を同軸に組立てることができ、絞り23から噴出した流体のエネルギーが効率よく研磨材を運搬し、噴出できる。
ノズル体12は、当接面22bの内側の面積と流体圧力との積の大きさの力を受ける。ボルト14は、この力に抗してノズル体12と本体13とを結合する。環状隆起部36が絞り23を囲む当接面22bと当接して流体を封止するため、流体の圧力がノズル体12に作用する面積を小さくできる。すると、流体の圧力によりボルト14に加わる力を小さく抑えることができ、ボルト14を小さく形成することができる。この作用により、絞り23の中心軸から本体13の底面までの距離L(
図6参照)を小さくできる。
【0054】
ノズル10は、フランジ体21と本体13のいずれか一方は係合部である突起部31を備え、他方は係合部と嵌合する受容部22を備え、突起部31と受容部22とが嵌合することでノズル体12が本体13に位置決めされる。
上記構成によれば、ノズル体12が本体13に位置決めされるため、消耗品であるノズル体12を交換した際に、ノズル体12の位置が再現性良く固定される。多関節ロボット(不図示)を使用してコンピュータ制御加工する際に、本体13に対してノズル体12の位置が正確に再現されるため、ノズル交換後におけるコンピュータプログラミングの再教示が不要である。
【0055】
ノズル10の係合部は、本体13に設けられた筒状の突起部31であり、前記受容部22は、ノズル体12の一方面に設けられた窪みとして構成される。
本体13が突起部31を備え、ノズル体12の受容部22に突起部31が受容されて本体13が受容部22と係合するため、ノズル10の組み立て性が高い。
【0056】
ノズル10は、折り曲げ部32aが鋭角θをなすように構成することができる。このように構成すれば、高圧流路32の折り曲げ部32aの下流側である第2の流路32dの長さを本体13の幅一杯にまで取ることができるため、絞り23の上流側の高圧流体の流れを整流化できる。そのため、絞り23から噴出する噴流の直進性を高めて加工能力を向上できる。また、噴流の直進性を高めることで、噴流による加工面が平滑になる効果が生ずる。
【0057】
ノズル体12は、絞り23から噴出した噴流が通過する、絞り23と空洞部25とを連通する貫通流路27を更に備え、噴出管15が空洞部25に嵌合するように挿入され、絞り23と、貫通流路27と、空洞部25と、が同一軸線上に形成されている。
上記構成によれば、絞り23から噴出した噴流が、貫通流路27、空洞部25、噴出管15の中心を通過するため、噴流がこれらの壁面の影響を受けにくく、高いエネルギー密度を備えた研磨材を含む噴流を得ることができる。
【0058】
噴出管装着手段18は、内部に環状の弾性体42を有するナット41を備え、ノズル体12は、フランジ体21の他方側に、空洞部25を取り囲むように突設される雄ねじ部24を備え、ナット41を雄ねじ部24に締めこむときに、弾性体42が噴出管15と当接し、噴出管15に付勢することで噴出管15が固定される、構成をとることができる。
上記構成によれば、噴出管15を簡易かつコンパクトに固定できる。
【0059】
ノズル10は、封止部である環状隆起部36及び当接面22bが受容部22内部に設けられるため、封止部に噴射した研磨材や加工くずのような異物が混入しにくい。このため、封止部が損傷しにくい。また、封止部から高圧の流体が漏出した場合には、漏出した流体が逃がし穴26から排出されるため、高圧水が不用意に予期しない方向へ飛び散ることを防止できる。
【0060】
ノズル10は、整流器34を第2の流路32d内に備えている。このため、折れ曲げ部32aを通過して乱れた、絞り23の上流側の高圧流体の流れが整流化される。絞り23から乱れの少ない噴流が噴出管15の中心を貫通するように噴出し、噴出管15から噴出する研磨材を伴う噴流が高いエネルギー密度を備える。
【0061】
(変形例1)
図7に、上記実施形態の変形例1のノズル80を示す。上記実施形態のノズル10と同一の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。本体81は、底部が細くなっており、本体81の上方に高圧流体導入口32bが設けられている。第1の流路82cは、高圧流体導入口32bから図面上の下方向へ本体81の下端付近まで伸びている。第1の流路82cの下端に屈曲部82aが設けられ、第2の流路82dは図面上の左上方向に延びている。突起部31は、第2の流路82dと同軸に本体81に設けられ、ノズル体12の受容部22に受容される。ノズル体12は第2の流路82dと同軸に斜め上方向に傾いて設けられている。ノズル体12に設けられたアダプタ83は、屈曲し、研磨材供給管61を上向きに本体81に沿って固定している。
【0062】
ノズル80によれば、断面溝型の被加工物の溝部に、ノズル80を挿入し、溝部の奥から斜め上方向への加工が可能になる。本体81の底部が細くなっているため、より狭い場所へノズル80を挿入することができる。
【0063】
(変形例2)
図8ないし
図10を参照して、変形例2のノズル90を説明する。上記実施形態のノズル10と同一の部材については、同一の符号を付し、重複する詳細な説明を省略する。
図10に示すように、雌ねじ部33は、フランジ体97に設けられている。ボルト14は、本体91側から挿入され、ノズル体95の雌ねじ部33に係合し、本体91とノズル体95をねじ締結する。本体91は、穴94を備える。穴94は、
図8に示すように、ノズル体95側(左側面)から見て第2の流路32dの両側で、かつ、本体91に設けられた段付き穴98(
図10参照)の外側に設けられている。
図10に示すように、係合部であるピン92、93は、穴94に嵌合して挿入されている。ピン92は、円柱状のいわゆる丸ピンである。ピン93は、円柱状のピンの、外周面を4方向から一部削り取られている、断面が略菱形のいわゆるダイヤピンである。ノズル体95のフランジ体97は、受容部である穴96を備える。穴96は、係合部であるピン92、93と嵌合する。ノズル体95は、ピン92、93が穴96と嵌合し、フランジ体97の一方の端面側に設けられた環状隆起部36が本体91の表面に当接することで、位置決めされて固定される。本体91の環状隆起部36が当接する面は平滑に仕上げられており、この面が当接面22b(
図8参照)となっている。
本変形例では、本体91に設けられているピン92、93がそれぞれ、フランジ体97の穴96に嵌合するため、ノズル体95が正確に位置決めされ、かつ、丸ピンとダイヤピンを組み合わせているため抜差しが容易に構成される。
【0064】
ノズル90によれば、当接面22b(
図8参照)が本体91の表面に完全に露出しているため、平面度の高い当接面22bを得ることができる。例えば、当接面22bを平面研磨して製作することができる。当接面22bの平面度が向上した場合には、当接面22bと環状隆起部36が均等に接触できるため、当接面22bの寿命が向上する。また、当接面22bに耐摩耗性被膜を施した場合にも、平滑な膜厚の被膜を得ることが容易である。さらに本体91の形状が単純になるため、製作コストを下げることができる。
【0065】
本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、係合部および受容部はノズル体を本体に対して位置決めできればよく、自由に変形できる。