(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンのピストンとシリンダの隙間から未燃焼の混合気がクランクケース等に漏れ出し、このクランクケース内でオイル分を含んだ、いわゆるブローバイガスが発生する。そして、このブローバイガスは、オイル劣化等の原因となるので、PCV通路によってインテーク側(吸気系)に還元される。
【0003】
この種のPCV通路として、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。
図7に示す、特許文献1のPCV通路400はエンジンの一部に設けられており、上流側チャンバ410と、インテーク側に接続された下流側チャンバ420と、上流側チャンバ410と下流側チャンバ420とを連通する連通路430と、この連通路430内に取り付けられるPCVバルブ300とからなる。
【0004】
ブローバイガスは、クランクケース等に接続された上流側チャンバ410からPCVバルブ300の一次側ポート370に流入し、流路390を通って二次側ポート380から下流側チャンバ420へと流れる。そして、ブローバイガスは、下流側チャンバ420に接続されたインテークパイプへと供給される。その際、まず、ブローバイガスは上流側チャンバ410内で冷却されてオイル分が分離され、分離されたオイル分は、上流側チャンバ410を逆流し、上流側チャンバ410に接続されたオイルパンに戻る。次に、ブローバイガスは下流側チャンバ420内でも冷却されてオイル分が分離され、分離されたオイル分は、PCVバルブ300を介して逆流し、上流側チャンバ410に接続されたオイルパンに戻る。
【0005】
そして、下流側チャンバ420内で分離されたオイル分をスムーズに逆流させるために、弁体340が着座する弁座319には間隙Cが設けられている。オイル分は、間隙Cを通って一次側ポート370から上流側チャンバ410へ向けてスムーズに逆流することになる。
【0006】
ところで、ターボ過給機付きのエンジンでは、ターボ過給時に、加圧された空気がインテーク側からエンジンのシリンダに向けて排出される。すると、インテーク側に接続された下流側チャンバ420内の圧力が高くなり(つまり、正圧になり)、PCVバルブ300の弁体340は、一次側ポート370側へ移動して、弁座319に着座する。
【0007】
ただ、PCVバルブ300の弁座319には間隙Cが設けられているので、この正圧は間隙Cを介して、一次側ポート370から上流側チャンバ410側へ侵入するという問題が生じる。そこで、ターボ過給時における正圧の上流側チャンバ410側への流入を防ぐために、間隙Cを無くした上に、弁体340と弁座319とを気密に遮蔽可能な構造とすることが考えられる。しかしながら、ターボ過給時以外の際(例えば、下流側チャンバ420側の圧力がゼロ、又は低い負圧時)は、弁体340が下流側チャンバ420側へ移動せずに閉状態のままなので、オイル分を上流側チャンバ410側へスムーズに戻せなくなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本願発明は、上記問題に鑑み、ターボ過給時には下流側チャンバに作用する正圧が上流側チャンバに侵入することを防ぎ、ターボ過給時以外にはオイル分を上流側チャンバへ戻すことができるPCVバルブ、及びPCV通路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明のPCVバルブは、上流側チャンバ内に開口する一次側ポートと、下流側チャンバ内に開口する二次側ポートと、前記一次側ポートと前記二次側ポートとを連通する流路と、当該流路内を移動する弁体と、当該弁体が着座する弁座と、を備えた、エンジンのPCV通路に設けられるPCVバルブであって、前記弁体と前記弁座は、前記一次側ポートと前記二次側ポートとの間を気密に遮蔽可能に構成され、前記弁体を前記弁座から離間させる方向に付勢する付勢部材を備えたことを特徴とする。
【0011】
上記特徴によれば、ターボ過給時以外の状態では、付勢部材の付勢力により、弁体を開状態にし、一次側ポートと二次側ポートを連通させることで、下流側チャンバに溜まったオイル分を上流側チャンバ側へ戻すことができる。一方、ターボ過給時の状態では、正圧により弁体が一次側ポートへ押され、付勢部材が圧縮される。すると、弁体が弁座に着座して閉状態となり、一次側ポートと二次側ポートとの間を気密に遮蔽することで、下流側チャンバ内の正圧が上流側チャンバ側へ侵入することを防止できる。
【0012】
さらに、本願発明のPCVバルブは、前記付勢部材を保持し、当該付勢部材と共に前記PCVバルブの軸に沿って移動する保持部材を備えたことを特徴とする。
【0013】
上記特徴によれば、保持部材はPCVバルブの軸に沿って移動するので、当該保持部材によって保持された付勢部材は、PCVバルブの軸に沿ってスムーズに伸縮することができる。
【0014】
さらに、本願発明のPCVバルブは、保持部材の一部と係止する係止部を備えたことを特徴とする。
【0015】
上記特徴によれば、下流側チャンバの圧力が高い負圧になった際に、付勢部材や保持部材が二次側ポート側に吸い込まれそうになっても、保持部材、及び当該保持部材に保持された付勢部材は係止部により止まり、吸い込まれることはない。
【0016】
さらに、本願発明のPCVバルブは、前記保持部材は、前記弁体に当接する突出部を備えたことを特徴とする。
【0017】
上記特徴によれば、保持部材の突出部が弁体に当接しているので、保持部材と弁体との間に隙間ができる。そして、その隙間を介して、オイル分が上流側チャンバ側へスムーズに逆流できる。
【0018】
さらに、本願発明のPCVバルブを備えたエンジンのPCV通路は、上流側チャンバと下流側チャンバとを連通する連通路内に、前記PCVバルブが取り付けられ、前記PCVバルブの一次側ポートは、前記上流側チャンバ内に配置され、前記PCVバルブの二次側ポートは、前記下流側チャンバ内に配置されていることを特徴とする。
【0019】
上記特徴によれば、ターボ過給時以外の状態では、下流側チャンバ側に溜まったオイル分を上流側チャンバ側へ戻すことができ、一方、ターボ過給時の状態では、一次側ポートと二次側ポートとの間を気密に遮蔽することで、下流側チャンバ内の正圧が上流側チャンバ側へ侵入することを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
上記したように、本願発明のPCVバルブ、及びPCV通路によれば、ターボ過給時には下流側チャンバに作用する正圧が上流側チャンバに侵入することを防ぎ、ターボ過給時以外にはオイル分を上流側チャンバへ戻すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本願発明のPCVバルブ100について、
図1を参照して説明する。なお、詳しい構成は後述するが、本願発明のPCVバルブ100は、従来のPCVバルブ300とは、本体部110の弁座119の形状が異なる点、シール部材S1及び保持部材130を設けた点が異なっており、他の構造は従来のPCVバルブ300と基本的に同一である。
【0023】
図1は、PCVバルブ100の分解斜視図であり、PCVバルブ100は、本体部110、付勢部材としてのバネ120、保持部材130、弁体140、バネ150、外側筒部160の順に、PCVバルブ100の軸Pに沿って組み付けられている。具体的には、本体部110の円筒形状の先端部111の外側面112にバネ120を嵌め入れ、バネ120の末端121を先端部111の溝113に係止させる。バネ120の末端121は縮径しているので、溝113に確実に係止して、不用意に外れないようになっている。
【0024】
次に、バネ120を保持部材130の環状部131の内周面へ、バネ120の先端122が突出部132に係止するまで挿入する。さらに、保持部材130の先端側に弁体140を配置し、この弁体140の軸部141の周囲を取り巻くように、バネ150を軸部141に取り付ける。この状態で、外側筒部160の内部の中間室165に、本体部110、バネ120、保持部材130、弁体140及びバネ150を収容し、外側筒部160の開口縁部161を本体部110の基端部114に嵌入後、その嵌入箇所を溶着等により固定して、PCVバルブ100が完成する。
【0025】
なお、外側筒部160の外周面には、左右に一対の貫通孔162が設けられ、外側筒部160の先端側には、軸Pに向かって開口した軸孔163及び上下左右方向に開口した十字孔164が設けられている。これら貫通孔162、軸孔163、及び十字孔164は、中間室165と連通している。また、PCVバルブ100が組み立てられて完成した状態では、本体部110の貫通孔117と、外側筒部160の貫通孔162が重なり、一次側ポート170を形成する。また、外側筒部160の先端側の外周面にはリング状のシール部材S2が、外側筒部160の後端側の外周面にはリング状のシール部材S3がそれぞれ取り付けられている。
【0026】
次に、本体部110の詳細な構成について、
図2を参照して説明する。
【0027】
図2に示すように、本体部110は、基端部114と、当該基端部114から先端側に延びる円柱部115と、円筒状の先端部111を備える。この先端部111の外側面112は、先端側から円柱部115に向けて拡径し、最も拡径した後端側が溝113に連続している。そのため、バネ120の末端121を外側面112に嵌め入れる際は、傾斜した外側面112に沿ってバネ120を押し込めば、バネ120を容易に嵌め入れることができる。さらに、末端121が溝113に係止するので、バネ120が先端部111から抜けにくくなる。
【0028】
また、この先端部111の内側には、正面視円形に開口した開口部118が形成され、この開口部118から円柱部115側へ延びる一次室116が内部に形成されている。さらに、この開口部118は一次室116へ向けて傾斜する環状の弁座119を有しており、この弁座119は、後述する弁体140の着座部145と、全周に亘り密着できるように、着座部145に対応した形状をしている。
【0029】
また、円柱部115の側面には、一次室116まで貫通する左右に一対の貫通孔117が形成されている。そして、一次室116は、先端部111の開口部118から貫通孔117の間を、オイル分やブローバイガスが流通可能なように、連通した空間となっている。
【0030】
円柱部115の先端側の外周には、外側筒部160の内面と密着するリング状のシール部材S1が取り付けられている。一方、円柱部115の後端側には、PCVバルブ100をエンジンの一部に固定するために、ネジ等が螺合可能な固定孔H1が形成されている。
【0031】
では、次に、保持部材130の詳細な構成について、
図3を参照して説明する。
【0032】
図3に示すように、保持部材130は、環状部131と、当該環状部131の先端側に突出形成された突出部132と、環状部131の外周面に形成された接触面133とを備える。突出部132は、環状部131の先端側の4カ所に等間隔に形成され、その先端が内側に屈曲したフック形状をしている。また、接触面133は、環状部131の外周面の4カ所に等間隔に形成され、外側筒部160の内側の中間室165と接触できるように、中間室165の内面に対応した滑らかな湾曲面となっている。このように、等間隔で複数形成された接触面133が中間室165の内面に接触するので、保持部材130は中間室165内を、安定した姿勢で移動することができる。
【0033】
また、環状部131の外周面には、接触面133が形成されていない凹部134が存在する。そのため、保持部材130がバネ120の圧縮方向に移動する際、外側筒部160、保持部材130および溝113に囲まれた範囲Y(
図5参照)に溜まった液滴を、凹部134を介して排出しやすくなり、保持部材130の移動の応答性を向上させる。
【0034】
次に、環状部131の内周面は、先端に向けて傾斜する傾斜面135を備え、この傾斜面135より先端側には突出部132が位置している。そのため、バネ120の先端122を環状部131内に嵌め入れる際に、先端122が傾斜面135によって突出部132へ向けて誘導され、突出部132のフック部分に容易に係止できる。特に、保持部材130の取付けは、
図1に示すように、バネ120の先端122に環状部131を嵌めるだけという極めて簡単なものであり、組み立てが容易である。なお、環状部131の内径は、バネ120の先端122を嵌め入れることが出来るように、先端122の外径と等しいか、又は外径より大きくする。
【0035】
では、次に、弁体140の詳細な構成について、
図4を参照して説明する。
【0036】
図4(a)から(c)に示すように、弁体140は、頭部142と、当該頭部142の先端側に形成された円柱状の軸部141とを備える。軸部141は、先端に向けて階段状に細径となる形状であり、後述する二次側ポート180の軸孔163に挿入されたときに、その挿入長さによって流路断面積が変化するため、所定の流量特性を得ることができる。また、頭部142は略三角形状をしており、その角部143は、外側筒部160の中間室165の内面と接触出来るように、中間室165の内面と対応した滑らかな湾曲面となっている。そして、隣接する角部143の間に位置する直線部144は、中間室165の内面から離れているので、オイル分やブローバイガスは、中間室165の内面と直線部144の間に出来た隙間から流通することができる。また、頭部142の裏面には環状の着座部145が設けられており、この着座部145は、全周に亘り弁座119と密着できる。
【0037】
ところで、PCVバルブ100を組み立てた状態では、
図4(d)及び(e)に示すように、弁体140の頭部142の裏面に、保持部材130の突出部132が当接することになる。すると、弁体140の頭部142は、保持部材130の環状部131から離間した状態となり、頭部142と環状部131の間には隙間Xが形成される。また、保持部材130の突出部132の位置及び数は、弁体140の角部143又は直線部144のいずれかに当接可能に設計されているので、弁体140がPCVバルブ100のP軸を中心に回転して姿勢が変わっても、頭部142と環状部131の間には必ず隙間Xが確保される。
【0038】
では、次に、本願発明のPCVバルブ100を取り付けたPCV通路200について、
図5を参照して説明する。なお、PCV通路200の構造は、PCVバルブ100を取り付けた点で、従来のPCV通路400(
図7参照)と異なるが、他の構造は基本的に同じである。
【0039】
図5に示すように、PCV通路200は、エンジンの一部に設けられており、オイルパン及びクランクケースに接続された上流側チャンバ210と、インテーク側に接続された下流側チャンバ220と、上流側チャンバ210と下流側チャンバ220とを連通する円筒状の連通路230と、当該連通路230内に取り付けられたPCVバルブ100とからなる。
【0040】
PCVバルブ100の外側筒部160の中間室165は、下流側チャンバ220内に開口している二次側ポート180の軸孔163及び十字孔164と連通している。したがって、中間室165側から流出するブローバイガスは、軸孔163を直進して下流側チャンバ220側へ抜けることができ、一方、下流側チャンバ220側に溜まったオイル分は、十字孔164を通って中間室165側へ逆流できる。
【0041】
次に、本体部110の一次室116は、中間室165、及び上流側チャンバ210内に開口している一次側ポート170と連通している。そして、この一次室116と中間室165とで流路190を構成している。弁体140は、流路190内をPCVバルブ100の軸Pに沿って前後へ移動する。
【0042】
なお、PCVバルブ100の軸孔163は、中間室165よりも細径であり、軸部141の先端が挿入されている。下流側チャンバ220に負圧が発生すると、その軸部141を含む弁体140は、軸Pに沿って二次側ポート180側に移動し、バネ150の反発力とのバランスで挿入長さが決められ、軸孔163及び軸部141との間にできる流路面積が挿入量に応じて変化する。従って、一次側ポート170と二次側ポート180との間でのブローバイガスの流通量が所定の特性に合わせたものになる。
【0043】
また、中間室165内に挿入された円柱状の本体部110の外面と、中間室165の内面とはシール部材S1によって液密にシールされているので、弁体140が開状態の時に中間室165から逆流したオイル分は、本体部110の外面と中間室165の内面との隙間から漏れ出すことはなく、一次室116のみから一次側ポート170へと確実に逆流する。
【0044】
また、連通路230の一部にはネジ等が螺合可能な固定孔H2が設けられており、この固定孔H2とPCVバルブ100の固定孔H1とを貫通するようにネジ等を螺合することで、PCVバルブ100は連通路230内に固定される。さらに、連通路230は、PCVバルブ100を挿入可能な形状であって、先端と後端が、PCVバルブ100のシール部材S2及びシール部材S3によって、それぞれシールされている。そのため、上流側チャンバ210及び下流側チャンバ220の間でのオイル分及びブローバイガスの流通はPCVバルブ100の流路190を介してのみ許容され、連通路230とPCVバルブ100との隙間からオイル分やブローバイガスが漏れることはない。
【0045】
以下では、PCVバルブ100及びPCV通路200の動作について説明する。
【0046】
まず、
図5に示すPCVバルブ100は、ターボ過給時以外の状態、例えば、エンジン停止時における下流側チャンバ220内の圧力がゼロ、又は、通常のエンジン動作時における下流側チャンバ220内の圧力が低い負圧の状態である。この状態では、弁体140は、バネ150により一次側ポート170側へ付勢されている。ただ、バネ120は、このバネ150の付勢力に抗して、弁体140を弁座119から離間させる方向へ移動させることが可能な弾性を備えている。そのため、
図5に示すように、バネ120は、保持部材130を介して弁体140を弁座119から離間させ、開口部118を開放している。これにより、下流側チャンバ220に溜まったオイルは、二次側ポート180から中間室165内に逆流し、開放された開口部118を通って一次室116へ流れ、一次側ポート170を介して上流側チャンバ210へと戻される。
【0047】
では次に、ターボ過給機によるターボ過給時においては、加圧された空気がインテーク側からエンジンのシリンダに向けて排出されるので、インテーク側に接続された下流側チャンバ220内の圧力が高い正圧になる。すると、
図6に示すように、正圧による弁体140を一次側ポート170側へ押圧する力によって、弁体140が流路190内を一次側ポート170側に移動してゆき、バネ120は圧縮される。そして、弁体140の着座部145が本体部110の弁座119に着座して、開口部118を密閉する。この弁座119と着座部145は互いに対応した形状をしているので、開口部118を気密に遮蔽し、下流側チャンバ220から中間室165に入った正圧が一次室116側へ侵入するのを防止する。その結果、ターボ過給時に、下流側チャンバ220内に作用する正圧が一次室116に侵入し、一次側ポート170を介して上流側チャンバ210へ作用することを防止できる。
【0048】
さらに、本体部110の外周面と、中間室165の内面はシール部材S1によって気密にシールされているので、中間室165に入った正圧が本体部110の外周面に漏れ出し、当該外周面に沿って迂回して、外側筒部160の貫通孔162(
図1参照)から上流側チャンバ210に侵入することを防止できる。これにより、ターボ過給時に、下流側チャンバ220内に作用する正圧が、上流側チャンバ210へ作用することをより確実に防止できる。
【0049】
そして、
図6に示すターボ過給時から、ターボ過給時以外の状態(例えば、エンジン停止時における下流側チャンバ220内の圧力がゼロ、又は、通常のエンジン動作時における下流側チャンバ220内の圧力が低い負圧の状態)に移行すると、正圧による弁体140を一次側ポート170側へ押圧する力が無くなる。すると、圧縮されたバネ120が、自然長に戻ろうと弾性力を生じさせる。そして、このバネ120の弁体140を二次側ポート180側へ付勢する弾性力により、弁体140が弁座119から離間して開口部118を開放することとなり、再び
図5に示す状態に移行する。
【0050】
このように、本願発明のPCVバルブ100によれば、ターボ過給時以外の状態では、バネ120の付勢力により、弁体140を開状態にし、一次側ポート170と二次側ポート180を連通させることで、下流側チャンバ220に溜まったオイル分を上流側チャンバ210側へ戻すことができる。一方、ターボ過給時の状態では、正圧により押された弁体140によりバネ120は圧縮され、弁体140を閉状態にし、一次側ポート170と二次側ポート180との間を気密に遮蔽することで、下流側チャンバ220内の正圧が上流側チャンバ210側へ作用することを防止できるのである。
【0051】
ところで、
図5及び
図6に示すように、保持部材130は、中間室165の内面と接触する接触面133によって、軸Pに沿って略直角に交わる姿勢を維持したまま、流路190内を前後に移動できる。そして、バネ120は、この保持部材130に保持されているため、先端部111から外れたり、他の部材等に噛み込んだりすることなく、軸Pに沿ってスムーズに伸縮できるのである。
【0052】
さらに、
図5に示すように、中間室165の内面の一部には段差状の係止部166が形成されており、弁体140が弁座119から離間した位置において、保持部材130の一部と係止している。これは、後述する吸気ポート(下流側チャンバ220側)の圧力が高い負圧になった際に、バネ120や保持部材130が二次側ポート180側に吸い込まれそうになっても、係止部166によって保持部材130を停止させ、さらに、保持部材130に保持されているバネ120も停止させて、吸い込みを防止するためである。
【0053】
また、
図5に示すように、弁体140は、バネ120により、保持部材130を介して二次側ポート180側へ付勢されているが、弁体140と保持部材130との間でオイル分の逆流が阻害されることはない。なぜなら、保持部材130の突出部132は弁体140の頭部142に当接しているので、保持部材130の環状部131と弁体140の頭部142との間に隙間X(
図4(e)参照)ができ、その隙間Xを介して、オイル分が中間室165から一次室116へとスムーズに逆流できるからである。
【0054】
なお、本願発明のPCVバルブ100は、
図5及び
図6で説明した動作以外にも、従来のPCVバルブ300と共通する動作、すなわち、ブローバイガスの流通を許容又は制御する弁としての動作も実現するので、以下に簡単に説明する。
【0055】
それは、吸気ポート(下流側チャンバ220側)の圧力が高い負圧になると、
図5に示す状態から、弁体140は軸Pに沿って二次側ポート180側に移動する。すると、弁体140の軸部141が軸孔163に挿入され、バネ150の反発力とのバランスで挿入長さが決められ、軸孔163及び軸部141との間にできる流路面積が挿入量に応じて変化する。従って、一次側ポート170と二次側ポート180との間でのブローバイガスの流通量が所定の特性に合わせたものになる。
【0056】
なお、本願発明における上流側チャンバとは、オイル分を分離するものに限定されず、エンジンのクランクケースやオイルパン等に連通する部分の総称であり、同様に、下流側チャンバとは、オイル分を分離するものに限定されず、エンジンのインテーク側に連通する部分の総称を意味する。また、本願発明のPCVバルブ及びPCV通路は、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。