(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339953
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】マニピュレータ用の連結装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/04 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
B25J15/04 A
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-47163(P2015-47163)
(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公開番号】特開2015-171756(P2015-171756A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2017年1月25日
(31)【優先権主張番号】00363/14
(32)【優先日】2014年3月11日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】502454802
【氏名又は名称】エロワ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】EROWA AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ヘディガー
【審査官】
永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−221390(JP,A)
【文献】
国際公開第2000/027596(WO,A1)
【文献】
国際公開第2002/004177(WO,A1)
【文献】
特開2009−023050(JP,A)
【文献】
特開平05−031692(JP,A)
【文献】
特表2009−530121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニピュレータに固定的に連結するクランプ固定具(2)及び前記クランプ固定具に固定的にクランプするアダプタ(40)に特徴があるマニピュレータ用の連結装置(1)であって、
前記クランプ固定具(2)はロック機構(5)を備え、
前記ロック機構のロック素子は、前記アダプタ(40)の突出部又は窪みに係合するよう構成した、該連結装置において、
前記クランプ固定具(2)並びに前記アダプタ(40)は、細長い長方形の基本形状に特徴があり、
前記アダプタ(40)は側方拡開部(45,46)を設けたロック開口(44)に特徴があり、
また前記ロック機構(5)は、側方にシフト可能な2個の前記ロック素子(6,7)及び前記ロック素子間に配置した操作部材(8)を有し、
前記操作部材(8)によって、前記アダプタ(40)を前記クランプ固定具(2)に固定的に取付け可能になるよう、前記ロック素子(6,7)はそれぞれ側方にシフトして前記ロック開口(44)の前記側方拡開部(45,46)内に挿入可能となっており、
前記操作部材(8)は、後退した基本位置と前進した有効位置との間で移動可能とされ、
前記2個のロック素子(6,7)はそれぞれ、少なくとも1個のばね負荷手段によって前記操作部材(8)の方向に付勢されており、
前記2個のロック素子(6,7)は、前記有効位置に移動する前記操作部材(8)によって押圧されて相互に離間し、前記ロック開口(44)の側方拡開部(45,46)内に挿入されるように構成されており、
前記ロック機構(5)は、前記操作部材(8)に機械的に連結されたクランプピストン(27)を有し、
前記クランプピストン(27)は、圧力ばね(28)によって前方に向けて付勢されるとともに、前記クランプピストンの前方側に設けられた加圧空間(29)に圧入される媒体によって加圧されることで、後方側に移動可能に構成されており、
前記2個のロック素子(6,7)は、前記操作部材(8)の移動方向及び前記ロック素子(6,7)のシフト方向に直交する方向に延在するとともに、相互に平行に配置されており、
それぞれのロック素子(6,7)の両端部側が、前記クランプ固定具(2)に形成され該ロック素子(6,7)の側方移動を案内するガイド溝孔(19,21)に配置されていることを特徴とする、連結装置。
【請求項2】
請求項1記載の連結装置において、前記ロック機構(5)は前記クランプ固定具(2)の中間部に配置し、また前記ロック開口(44)は前記アダプタ(40)の中間部に配置することを特徴とする、連結装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の連結装置において、前記アダプタ(40)は一体ピースで構成することを特徴とする、連結装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項記載の連結装置において、前記ロック機構(5)は前記クランプ固定具(2)の溝孔付き窪み(4)の中心に配置し、また前記アダプタ(40)には細長い棚状のベース(41)を設け、前記ベース内に前記ロック開口(44)が形成されており、前記アダプタ(40)の前記ベースは前記クランプ固定具(2)の前記窪み(4)内に挿入可能に構成されていることを特徴とする、連結装置。
【請求項5】
請求項4記載の連結装置において、前記クランプ固定具(2)の前記溝孔付き窪み(4)は頂部及び底部を棚部(17,18)によって画定し、前記棚部(17,18)にはそれぞれ、前記ロック素子(6,7)の側方移動を案内するガイド溝孔(19,21)が形成されていることを特徴とする、連結装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項記載の連結装置において、前記クランプ固定具(2)並びに前記アダプタ(40)は、少なくとも高さの2倍の幅を有し、また心出しピン(24,25)を前記ロック機構(5)の各側方で前記クランプ固定具(2)に配置し、前記心出しピン(24,25)それぞれは、前記アダプタ(40)のベース(41)にそれぞれ対応的に形成された心出し開口(49,50)に連係動作するよう構成することを特徴とする、連結装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか一項記載の連結装置において、前記アダプタ(40)は、ほぼT字状断面を有する構成とし、また前記ベース(41)から直角をなして突出する脚部(42a,42b)を有することを特徴とする、連結装置。
【請求項8】
請求項6記載の連結装置において、前記ベース(41)に対面する前記脚部(42a,42b)の前面側は、前記アダプタ(40)をクランプする際に前記アダプタ(40)が前記クランプ固定具(2)の端面に接触する衝合面を形成することを特徴とする、連結装置。
【請求項9】
請求項7又は8記載の連結装置において、前記アダプタ(40)の前記ベース(41)から各脚部(42a,42b)への遷移部分に突出部(53,54)を設け、前記突出部(53,54)は、前記クランプ固定具(2)の前記溝孔付き窪み(4)に適合して、前記アダプタ(40)は前記クランプ固定具(2)に確実にクランプする際に、前記溝孔付き窪み(4)内で垂直方向に適切な嵌合で取付けられることを特徴とする、連結装置。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか一項記載の連結装置において、前記操作部材(8)は、後退した基本位置と前進した有効位置との間でシフト可能とし、前記前進した有効位置は、前記2個のロック素子(6,7)を前記ロック開口(44)の側方拡開部(45,46)内に押圧し、これにより前記ロック素子(6,7)が前記側方拡開部(45,46)を部分的に画定するクランプ面に接触できるようにすることを特徴とする、連結装置。
【請求項11】
請求項10記載の連結装置において、前記操作部材(8)は、円錐状テーパ付きの側面(34,35)に特徴がある楔状に構成し、前記ロック素子(6,7)の前記操作部材(8)に対面する側面に、前記操作部材(8)における割当てられた側面(34,35)に適合する平坦圧力面(30,31)を設けてなる、ことを特徴とする、連結装置。
【請求項12】
請求項10又は11記載の連結装置において、前記ロック素子(6,7)はほぼ円筒形に構成し、各円筒形の外殻面には、前記アダプタ(40)の前記クランプ面(47,48)に適合する平坦圧力面(32,33)を設けることを特徴とする、連結装置。
【請求項13】
請求項1記載の連結装置において、前記クランプピストン(27)を、空気的又は液圧的な手段によって前記ばね負荷力に打ち勝って前記スタート位置に達することができるよう構成することを特徴とする、連結装置。
【請求項14】
請求項10〜12のうちいずれか一項記載の連結装置において、前記アダプタ(40)における前記側方拡開部(45,46)を部分的に画定する前記クランプ面(47,48)は、前記操作部材(8)の移動方向に対して角度をなし、前記アダプタ(40)は、前記クランプ固定具(2)に取付ける際に、前記ロック素子(6,7)が前記アダプタ(40)の前記クランプ面(47,48)に接触することによって前記クランプ固定具(2)に向かって前進することを特徴とする、連結装置。
【請求項15】
請求項12記載の連結装置において、前記アダプタ(40)の前記クランプ面(47,48)は、前記操作部材(8)がシフトする方向に対して30゜〜60゜の間の角度をなすことを特徴とする、連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマニピュレータ用の連結装置に関する。このような連結装置は、クランプ固定具とこのクランプ固定具に取付け可能なアダプタとを備える。クランプ固定具は、通常ロボット装置のようなマニピュレータに取付けるとともに、例えば、アダプタはツール又はワークピース(パレット)に取付け、これによりツール又はワークピースはアダプタによってクランプ固定具に対し繰返し精密位置決めできるよう確実にクランプすることができる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(欧州特許第1707307号)からは、クイック・クランピング・システムと名付けられ、確実なクランプを行うためのマウント及びピンを備える汎用的な連結装置が知られている。クイック・クランピング・システムは、中央に配置したクランプマウントを設けた丸いハウジングを有する。ピンを確実にクランプするために、半径方向にシフト可能なスプールを設ける。このピンは、ピンを取付けるようスプールにおいて半径方向内部に位置する突耳に係合する周方向溝に特徴がある。ピンの操作は、ばね負荷ピストンによって行い、この目的のために、このピストンは、複数の円筒形ピンの形態とした保定装置に特徴があり、これら円筒形ピンは、スプールの不規則ガイド輪郭によるねじれガイドに係合し、これによりピストンの軸線方向移動はスプールの半径方向移動を生ずる。このクイック・クランピング・システムの丸い設計に起因して、比較的多くの空間、とくに高さを占め、この結果、通常低丈輪郭であるパレットが結果的にクイック・クランピング・システムによって高さが過剰になり、このことは、パレットにクランプされるワークピースを加工するときに邪魔になるおそれがある。
【0003】
特許文献2(特許第3419543号)は、ベース本体、及びこのベース本体に固定的に取付けるアダプタに特徴があるロボット装置用の連結装置を記載している。このベース本体にはクランプ固定具を設け、このクランプ固定具は、2個のサイドピストンと、ピンを操作するようこのサイドピストンに連結したロッドとを有する。このピンを窪み内でガイドする。一方、アダプタには、2個のピンを側方から所定位置に圧入できる窪みを機械加工したフック状のサイドピストンを設ける。さらに、ベース本体は、中央ピストン及びこの中央ピストンに連結するロッドに特徴がある。ロッドの端部には、2個のレバーによって回転可能な操作カムを配置する。これらレバーは、カムによって2個のフィンガに連結し、これらフィンガはカムの回転によって側方に往復移動してシフトすることができる。したがって、各ロック素子は個別の操作部材が割当てられる。
【0004】
特許文献3(欧州特許出願公開第1970170号)からはロボットアーム用の連結装置が知られている。この装置は、ロボットアーム用のアダプタ及びパレット用のアダプタを有する。ロボットアーム用のアダプタは、円筒状に構成したボールロックに特徴があり、このボールロックのボールは、パレット用のアダプタに配置したマウントに係合し、ボールを操作するためにシリンダを設ける。
【0005】
特許文献2は、ベース本体、及びこのベース本体に固定的に取付けるアダプタに特徴があるロボット装置用の連結装置を記載している。このベース本体にはクランプ固定具を設け、このクランプ固定具は、2個のサイドピストンと、ピンを操作するようこのサイドピストンに連結したロッドとを有する。このピンを窪み内でガイドする。一方、アダプタには、2個のピンを側方から所定位置に圧入できる窪みを機械加工したフック状のサイドピストンを設ける。さらに、ベース本体は、中央ピストン及びこの中央ピストンに連結するロッドに特徴がある。レバーをカムによって2個のフィンガに連結し、これらフィンガはカムの回転によって側方に往復移動してシフトすることができる。したがって、各ロック素子は個別の操作部材が割当てられる。
【0006】
特許文献3からはロボットアーム用の連結装置が知られている。この装置は、ロボットアーム用のアダプタ及びパレット用のアダプタを有する。ロボットアーム用のアダプタは、円筒状に構成したボールロックに特徴があり、このボールロックのボールは、パレット用のアダプタに配置したマウントに係合し、ボールを操作するためにシリンダを設ける。これら特許文献は、したがって、従来のボールロックを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1707307号明細書
【特許文献2】特許第3419543号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1970170号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の技術分野におけるマニピュレータ用の連結装置であって、比較的低丈輪郭ながら、堅牢で重量物を取扱うことができる、該連結装置を創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的がどのように達成されるかは、特許請求の範囲の請求項1の特徴によって規定される。本発明によれば、連結装置並びにアダプタは、細長い、とくに長方形の基本形状に特徴があり、前記アダプタは側方拡開部を設けたロック開口に特徴があり、また前記ロック機構は側方にシフト可能な2個のロック素子及び前記ロック素子間に配置した操作部材を有し、前記操作部材によって、前記アダプタを前記クランプ固定具に固定的に取付け可能になるよう、前記ロック素子は前記ロック開口の前記側方拡開部内に挿入可能となることを特徴とする。
【0010】
このような連結装置は、とくに、ピッカー及びパレットを、例えば、ロボット装置のようなマニピュレータに連結/離脱するのに適する。クランプ固定具、並びに側方にシフト可能な2個のロック素子に係合する側方拡開部を有するロック開口を備えるアダプタとともに細長の設計にすることに起因して、比較的低丈プロファイル(輪郭)であって、それにもかかわらず大きな重量を取扱える連結装置を創製するという基本要件を満たす。
【0011】
好適には、前記ロック機構は前記クランプ固定具の中間部に配置するとともに、また前記ロック開口は前記アダプタの中間部に配置する。このような構成によれば、クランプ固定具を簡単かつ対称的に構成することができる。
【0012】
特に好適な一態様において、前記アダプタは一体ピースで構成し、このことによれば、設計技師はアダプタを極めて頑丈であるとともに低コストで入手できるようにする。
【0013】
連結装置の他の好適な実施形態において、前記ロック機構は前記クランプ固定具の溝孔付き窪みの中心に配置し、また前記アダプタには細長い棚状のベースを設け、前記ベース内に前記ロック開口を機械加工し、前記アダプタの前記ベースは前記クランプ固定具の前記窪み内に挿入するよう構成する。この種の溝孔付き窪みは、アダプタ又はアダプタのベースを取付ける理想的な手段を形成する。
【0014】
他の好適な実施形態において、前記クランプ固定具の前記溝孔付き窪みは頂部及び底部を棚部によって画定し、前記棚部には、前記ロック素子の側方移動を案内するガイド溝孔を機械加工し、各棚部にガイド溝孔を機械加工するのは比較的簡単である。
【0015】
さらに他の好適な実施形態において、前記クランプ固定具並びに前記アダプタは高さの少なくとも2倍の幅を有し、また心出しピンを前記ロック機構の各側方で前記クランプ固定具に配置し、前記心出しピンそれぞれは、前記アダプタのベースにそれぞれ対応的に機械加工した心出し開口に連係動作するよう構成する。この構成において、心出しピンは互いに比較的離して配置でき、このことは安定性並びに位置決め精度の双方に関して利点を与える。
【0016】
さらに他の好適な実施形態において、前記アダプタは、ほぼT字状断面を有する構成とし、また前記ベースから直角をなして突出する脚部を有する。このようなアダプタは安定性があり、また生産上費用効果がよい。
【0017】
他の好適な実施形態において、前記ベースに対面する前記脚部の後面側は、前記アダプタをクランプする際に前記アダプタが前記クランプ固定具の端面に接触する衝合面を形成する。この構成によれば、アダプタの脚部は止め部として使用でき、このことは費用効果のよい生産の点で有利である。
【0018】
さらに他の好適な実施形態において、前記アダプタの前記ベースから各脚部への遷移部分に突出部を設け、前記突出部は、前記クランプ固定具の前記溝孔付き窪みに適合して、前記アダプタは前記クランプ固定具に確実にクランプする際に、前記溝孔付き窪み内で垂直方向に適切な嵌合で取付けられる。この構成は、重量のある荷重が加わるとき、アダプタからクランプ固定具に伝達される力の一部が突出部を介して伝達できるので有利である。
【0019】
さらに他の好適な実施形態において、前記操作部材は、後退した基本位置と前進した有効位置との間でシフト可能とし、前記前進した有効位置は、前記2個のロック素子を前記ロック開口の側方拡開部内に押圧し、これにより前記ロック素子が
前記側方拡開部を部分的に画定するクランプ面に接触できるようにする。このようなロック機構を得ることは構造簡単であり、かつ費用効果がよい。
【0020】
さらに他の好適な実施形態において、前記操作部材は、円錐状テーパ付きの側面に特徴がある楔状に構成し、前記ロック素子の前記操作部材に対面する側面に、前記操作部材における割当てられた側面に適合する平坦圧力面を設け、前記操作部材における2個の側面相互間の間隔及び角度は、前記操作部材の前進した前記有効位置において、前記操作部材と前記アダプタの前記クランプ面に接触する前記ロック素子との間に自己ロック効果が得られるよう選択する。このような構成は、とくに、高い操作安全性の点で有利であり、なぜなら操作部材の前進後にロック機構が所定位置にロックされ、例えば、フィーダに電源喪失又は漏洩があってもクランプ固定具におけるアダプタの安全な取付け状態には影響を及ぼさないからである。
【0021】
他の好適な実施形態において、前記ロック素子はほぼ円筒形に構成し、各円筒形の外殻面には、前記アダプタの前記クランプ面に適合する平坦圧力面を設ける。ここでもやはり、このようなロック素子は構造簡単かつ生産の費用効果がよく、また重たいロック力を取扱うことができる。
【0022】
好適には、前記クランプ固定具の前記ロック素子それぞれには少なくとも1個のばね負荷手段を割当て、前記ばね負荷手段によって各ロック素子を前記操作部材の方向に付勢し、このことにより、操作部材の後退後に各ロック素子は内方に位置する集中基本位置に確実にシフトし、これによりアダプタをクランプ固定具から取外すことができる。
【0023】
とくに好適には、前記ロック機構は、前記操作部材に結合したばね負荷式のクランプピストンを有し、圧力ばねの作用によって前記操作部材を前記有効位置に押圧する。このことは、さらに、アダプタのクランプ固定具に対する信頼性の高いロックを確実にし、なぜなら圧力ばねが操作部材を前進した有効位置の方向に押圧するからである。
【0024】
他の好適な実施形態において、前記クランプピストンは、空気的、電気的又は液圧的な手段によって前記ばね負荷力に打ち勝って前記スタート位置に達することができるよう構成する。これらは、ロック動作に打ち勝ってクランプピストンをスタート位置に押圧する好適な手段である。
【0025】
特別に好適な他の実施形態において、前記アダプタにおける前記側方拡開部を部分的に画定する前記クランプ面は、前記操作部材の移動方向に対して角度をなし、前記アダプタ、前記クランプ固定具に取付ける際に、前記ロック素子が前記アダプタの前記クランプ面に接触することによって前記クランプ固定具に向かって前進する。この構成によれば、アダプタを所定位置で確実にクランプする際に、アダプタが所定位置に固定されない場合でも同時にクランプ固定具に向けて前進させる。
【0026】
他の好適な実施形態において、前記アダプタの前記クランプ面は、前記操作部材がシフトする方向に対して30°〜60°の間、好適には40°〜50°の間の角度をなす。このことにより、操作部材の軸線方向移動を利用してアダプタを
引き込み、クランプ固定具に固定的に取付けるという特別な利点が得られる。
【0027】
以下、図面につき本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】クランプ固定具及びアダプタよりなる連結装置の斜視図である。
【
図2】アダプタ及びクランプ固定具の一部分解した斜視図である。
【
図3】クランプ固定具及びアダプタの未クランプ状態における断面図である。
【
図4】クランプ固定具及びこのクランプ固定具に確実にクランプしたアダプタの断面図である。
【
図6】クランプ固定具及びこのクランプ固定具に確実にクランプしたアダプタの前方部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面における同一部分は同一参照符号で示す。
【0030】
図1につき説明すると、クランプ固定具2及びアダプタ40を備えるマニピュレータ用の連結装置1を示す。クランプ固定具2は、通常例えば、ロボット装置又はロボットアームのようなマニピュレータに固定的に取付けるとともに、アダプタ40は、例えば、ピッカー又はツーリング(tooling)/ワークピース用のパレットに配置する。アダプタ40によって、ピッカー又はパレットをクランプ固定具2に対して繰返し精密に固定的に配置することができる。正面から見たアダプタ40の後面をパレット又はピッカーに固定するのが普通である。クランプ固定具2並びにアダプタ40の双方は、基本的に細長い、好適には、ほぼ長方形形状に構成する。丸みのあるクランプ面に比べて、クランプ固定具2の細長基本構成には、とくに、フラットパレットにも適する低丈輪郭を持つという特別な利点がある。クランプ固定具2並びにアダプタ40は、好適には、高さの少なくとも2倍の幅、とくに、高さの少なくとも2.5倍の幅を有する構成にする。
【0031】
クランプ固定具2は、前面に溝孔の付いた窪み4を設けた基礎ハウジング3を有する。溝孔付き窪み4は、頂部及び底部の棚部17,18によって画定する。この溝孔付き窪み4内にロック機構5を配置し、このロック機構5は、側方へシフト可能な2個のロック素子6,7と、及びこれらロック素子間の中心に配置する操作部材(
図1には示されない)とに特徴がある。この構成において、ロック機構5は、中間位置、すなわち、クランプ固定具2の中央位置に配置する。2個のロック素子6,7は基本的な集中位置にある状態で示す。溝孔付き窪み4内には、さらに、2個の心出しピン24,25を配置し、これら心出しピン24,25は、アダプタ40をクランプ固定具2に固定的にクランプする際の位置決めを行うよう作用する。溝孔付き窪み4には、クランプ固定具2からアダプタ40又はアダプタに連結するパレットに信号又は媒体を伝達するための接続部36を合流させる。さらに、溝孔付き窪み4内にはドリル穿孔部37を設け、これらドリル穿孔部37は、特別に狭小なアダプタ(図示せず)に接触するのに使用し、これらドリル穿孔部37は、狭小アダプタに配置した円筒形ピンのための心出し孔として利用する。
【0032】
一体ピースとして構成したアダプタ40は、断面がほぼT字状であり、細長い棚タイプのベース41と、このベースから直角に突出する2個の脚部42a,42bを有する。アダプタのベース41にはロック開口44を機械加工し、このロック開口44には、クランプ固定具2のロック素子6,7に形状及び位置が適合する2個の側方拡開部45,46を設ける。ロック開口44はアダプタ40の中間部に配置する。集中した基本位置にあるロック素子6,7をアダプタ40のロック開口44内に挿入できるよう、挿入部分におけるロック開口44の幅Bは、集中位置にある2個のロック素子6,7間の外側間隔よりも大きい。アダプタ40には、5個の大ドリル穿孔部49,50,58,59,60と、4個の小ドリル穿孔部57とを設ける。5個の大ドリル穿孔部49,50,58,59,60は、アダプタ40をパレット(図示せず)に取付けることができるねじ(図示せず)を収容するよう作用する。2個の外側ドリル穿孔部49,50は、同時にクランプ固定具2の心出しピン24,25に適合することによって心出し孔としても作用する。4個の小ドリル穿孔部57は、電気的配線又は圧縮空気等のような媒体をマニピュレータからアダプタ40に連結したパレットに及びその逆に導くのに供する。
【0033】
アダプタ40のベース41には頂部及び底部に平坦面51,52を設け、これら平坦面51,52は互いに平行となるよう指向させる。各平坦面51,52から各脚部42a,42bへの遷移部にヒール状の突出部53,54を設ける。2個の突出部53,54間の垂直方向間隔は、クランプ固定具2における溝孔付き窪み4の高さに適合し、アダプタをクランプ固定具2に固定的に取付けた後、アダプタ40が溝孔付き窪み4内に着座して、垂直方向に約0.05〜0.3mmの範囲にわたる僅かなクリアランスを生ずることができるようにする。アダプタ40は極めて頑丈となる形状及び構成にし、また比較的低コストで製造できる。
【0034】
次に
図2につき説明すると、後面から見たアダプタ40並びに一部分割して見たクランプ固定具2を示す。これらの図からは、クランプ固定具2のロック素子6,7及びこれらロック素子間に配置する操作部材8がよく見て取れる。操作部材8によって2個のロック素子6,7は側方にシフト可能、すなわち、クランプ固定具2の端部方向に平行に移動可能である。さらに、2個のロック素子6,7のために棚部17,18に溝孔付きガイド19,21を機械加工することが分かる。これら溝孔付きガイド19,21は、それぞれ棚部17及び18に貫通し、また頂部及び底部がそれぞれプレートによって限定されるが、これらプレートは頂部カバー20しか示されない。2個のロック素子6,7の頂部及び底部には、ロック素子6,7を溝孔付きガイド19,21内に挿入する際にロック素子6,7が回転するのを阻止するガイドとして作用する平坦面23を設ける。各ロック素子6,7は、頂部及び底部における互いに直径方向に対向する2つの平行な平坦面を有することに特徴があるが、それぞれ前方平坦面23のみを示す。同様に、基礎ハウジング3の側面に付着するカバープレート3aが見て取れる。
【0035】
さらに、各棚部17,18に機械加工した対応のドリル穿孔部16a,16bに挿入する2個のプランジャ10a,10bが見て取れる。これらプランジャ10a,10bそれぞれには、圧縮ばね11a,11b及びグラブねじ12a,12bが割当てられ、後者のグラブねじ12a,12bは、ドリル穿孔部16a,16bに機械加工したねじ立て内にねじ込むよう考案され、また圧縮ばね11a,11bを固定的に位置決め及び付勢するよう作用する。2個のプランジャ10a,10b並びに対応の圧縮ばね11a,11b及びグラブねじ12a,12bによって、
図2の右側に示す第2ロック素子7が操作部材8に向けて内方に付勢される。クランプ固定具2の他方の側面には、図面には示されないが同様の対応プランジャ、ばね及びグラブねじがロック素子6を操作部材8に向けて内方に付勢し、このようなプランジャ、ばね及びグラブねじを第1ロック素子6に割当てる。
【0036】
2個のロック素子6,7は溝孔付きガイド19,21に沿って側方にシフト可能であり、操作部材8の前方移動によって有効位置に向けて互いに離れる方向にシフトするとともに、操作部材8が後退するとき割当てられたプランジャによって互いに向かう方向に休止位置にシフトすることができる。
【0037】
図3につき説明すると、連結装置1、すなわち、クランプ固定具2及びアダプタ40の非付勢状態の断面図を示す。アダプタ40はクランプ固定具2の溝孔付き窪み4内に挿入し、ロック機構5はスタート位置をとり、したがって、アダプタ40は所定位置に固定的にクランプされる。図示のようにロック機構5のスタート位置では、操作部材8が後退した基本位置にあるとともに、2個のロック素子6,7は集中基本位置をとる。操作部材8は、楔状に構成し、円錐状にテーパが付いた2個の側面に特徴がある。ロック機構5は、さらに、加圧空間29内にシフト可能に配置し、機械的に操作部材8に連結したクランプピストン27を有する。クランプピストン27は、数個の圧縮ばねにより操作部材8の方向に前方に付勢されるが、
図3では1個のばね28のみを示す。ばね力に打ち勝ってクランプピストン27を後退したスタート位置に押圧するため、加圧空間29に対してクランプピストン27に前端部に加圧媒体を、例えば加圧空気を充填する。この結果、クランプピストン27が操作部材8とともに図示のようにスタート位置に後退する。さらに、アダプタ40の心出しドリル穿孔部49,50内にそれぞれ突入するクランプ固定具2の2個の心出しピン24,25が見て取れる。
【0038】
この
図3に示すような、操作部材8が後退した基本位置をとり、また2個のロック素子6,7が集中スタート位置をとる状態においては、アダプタ40をクランプ固定具2の溝孔付き窪み4内に挿入することができるが、これはなぜならアダプタ40をクランプ固定具2の溝孔付き窪み4内に挿入するとき、同時に集中したロック素子6,7もアダプタ40のロック開口44内に挿入されるからである。
【0039】
図3aにつき説明すると、クランプ固定具のロック機構5とともにアダプタ40のロック開口44の一部を拡大した図を示す。ロック素子6,7の平坦面をより分かり易くするため、ロック素子6,7は幾分互いに離れた状態で示す。このことにより、どのように各ロック素子6,7の操作部材8に対面する内側面に第1平坦面30,31(スラスト平坦面)を設け、また外側面に第2平坦面32,33(衝合平坦面)を設けるかが明瞭になる。操作部材8の円錐状テーパ付きの側面34,35は、ロック素子6,7のスラスト平坦面30,31に対応又は対面するよう構成する。各ロック素子6,7の内側面におけるスラスト平坦面30,31は、操作部材8の側面34,35と同様に、連結装置1及びクランプ固定具2並びにアダプタ40の中心線Mに対してそれぞれ約4゜〜10゜の角度をなし、図示の実施例において、この角度は約6゜で示す。このことにより、後で詳細に説明するようにロック状態では操作部材8とロック素子6,7との間で自己ロック効果が得られる。同様に、どのようにロック開口44の側方拡開部45,46のそれぞれに割当てられたロック素子6,7の外側面の衝合面32,33に適合するテーパ付きクランプ面47,48を設けるかが見て取れ、これにより各ロック素子6,7が、
側方拡開部45,46に接触する。操作部材8は中心線Mに沿ってシフト可能である。
【0040】
次に
図4につき説明すると、
図3に示す連結装置1がクランプ状態にあることを示すとともに、
図4aではクランプ固定具のロック機構5の一部をアダプタ40のロック開口44と一緒に拡大した図で示す。ロック機構5を
図3に示すスタート位置から
図4及び4aに示す有効状態に送るため、加圧空間29を加圧し、この結果、クランプピストン27はばね28の作用によって図示の前方有効位置に移動することができる。前方への移動において、クランプピストン27は同様に、操作部材8を前方に押圧し、この結果、操作部材8の円錐状テーパ付き側面34,35が2個のロック素子6,7を強制的に離間させることによって2個のロック素子6,7を外側方にシフトさせる。
図4aから分かるように、平坦面32,33によりロック素子6,7の外側面がロック開口44のテーパ付きクランプ面47,48に接触して、アダプタ40をクランプ固定具2に向けて引き込み、最終的にアダプタの2個の脚部がクランプ固定具2の棚部に接触する。クランプピストン27及び操作部材8に対してばね28によって発揮されるクランプ固定具の支持のため、空間29aをクランプ27の後面側で、例えば好適には圧縮空気のような媒体で加圧することができ、圧縮空気による空間29aの加圧は、通常は操作部材8がアダプタ40をクランプ固定具2に引き込むよう2個のロック素子6,7を外側方への強い力で押圧するに足る僅かなもので十分である。
【0041】
ロック素子6,7の内側面におけるスラスト平坦面30,31と操作部材8の2個の側面34,35との間における角度を適合させることによって、操作部材8とクランプ面47,48に接触するロック素子6,7との間に自己ロック作用が得られ、これによりロック機構5自体がロック状態を見つけることができる。このロック状態を釈放するため、クランプピストン27の前端面において加圧空間29を、好適には圧縮空気のような媒体によって加圧する必要があり、クランプピストン27が操作部材8と一緒に後退したスタート位置に戻るシフトを生ずるまで圧力を増大させる。
【0042】
次に
図5につき説明すると、クランプ固定具2の他の断面を示し、とくに、どのように操作部材8を2個のロック素子6,7間に配置し、またどのように4個のプランジャ10a,10b、13a,13b全体が対応の圧縮ばね11a,11b,14a,14bによって左側のロック素子6及び右側のロック素子7を操作部材8の方向に内方に押圧するかを明瞭にする。プランジャ10a,10b、13a,13bは、操作部材8が基本位置に後退しているとき、2個のロック素子6,7を集中した基本位置にシフトするのを確実にしようとする。さらに、2個のカバー20,22により、ロック素子6,7の側方案内をするのに供する溝孔付きガイド19,21の頂部及び底部の限界を画定することが見て取れる。さらに、グラブねじ12a,12b,15a,15bにより、圧縮ばね11a,11b,14a,14bがロック素子6,7の方向に付勢されることが見て取れる。
【0043】
次に
図6につき説明すると、クランプ固定具2及びこのクランプ固定具に固定的にクランプするアダプタ40の前端部の断面を示す。この
図6からは、アダプタ40の心出しドリル穿孔部50に心出しピン24が突入していることが見て取れ、同様に、どのようにアダプタ40のベース41が溝孔付き窪み4内に突入するかが見て取れる。アダプタ40はクランプ固定具2に対してデッドフィット状態で固定的にクランプされる。このことは、一方で脚部42a,42bそれぞれの前端部が止め部を形成し、アダプタ40が所定位置で固定的にクランプされる際にこの止め部でクランプ固定具2及び棚部17,18の端面にそれぞれ接触するとともに、他方でアダプタ40のベース41の頂部及び底部に配置した突出部53,54が溝孔付き窪み4の内側面でクランプ固定具2の棚部17,18に接触して、アダプタ40をクランプ固定具2において垂直方向に支持する。各突出部53,54と溝孔付き窪み4の内側面との間には、少なくとも未負荷状態では約0.05〜0.6mmの範囲にわたる小さいギャップが残存するとともに、アダプタ40のベース41とクランプ固定具2の溝孔付き窪み4との間には大きなギャップ55が残存し、この大きなギャップは、汚れに影響を受けにくいという利点を有し、なぜなら、例えば、塵埃及び切削屑のようないかなるデブリもこのギャップ55に溜まることができ、クランプ固定具2におけるアダプタ40の正確な位置決め及び/又は連結装置の適正機能に対する影響を何ら与えないからである。それでも空気ジェットのオリフィスを設け、このオリフィスを経て連結装置の露出したコンポーネントをジェット清掃できると理解されたい。
【0044】
上述したように、アダプタ40のロック開口に係合するロック機構とともに説明した構成により、アダプタ40は重い荷重及び高トルクを取扱うことができる。この点に関して行った試験によれば、約210mmの長さ及び約70mmの高さを有するクランプ固定具2は、800mmの長さを有するパレットに連結し、かつ500kgの荷重を搬送するとき、アダプタ40を繰返し正確かつ確実に固定的にクランプできることを証明したが、この試験例においては、荷重はアダプタに連結したパレットの中央に配置するものと仮定する。
【0045】
図面につき説明した上述の例示的な実施形態は最終的なものと理解すべきではなく、説明した例示的実施形態から逸脱する実施形態も特許請求の範囲で定義される保護範囲内にあり得る。したがって、例えば、上述の説明から逸脱するロック素子の実施形態も実施可能であり、例えば、2個の操作素子及びそれぞれに割当てられた2個のロック素子、並びにそれぞれに割当てられた2個の及び開口を設けたダブルロック機構も実施可能であり、心出し素子の数及び/又は構成に関する変更例も可能である。