特許第6339979号(P6339979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339979
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート製基礎材
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   E02D27/01 101C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-148134(P2015-148134)
(22)【出願日】2015年7月27日
(65)【公開番号】特開2017-25667(P2017-25667A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】598037569
【氏名又は名称】會澤高圧コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】青木 涼
(72)【発明者】
【氏名】山本 憲治
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−005204(JP,U)
【文献】 特開平11−310965(JP,A)
【文献】 特開2001−131989(JP,A)
【文献】 特開2010−070903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個が互いに接合されて、建物の壁や柱を支持する基礎の立上り部を形成するようになっているプレキャストコンクリート製の基礎材であって、
前記基礎材は所定幅で所定高さの板状に形成され、その端面、あるいは側面の一部に接合部が形成され、他の基礎材に形成されている前記接合部と接合されるようになっており、
前記接合部には、グラウト材が充填されるシアコッターが設けられ、
該シアコッターは、横方向に一定の高さの突起が、等間隔で上下に複数個並べられた形状を呈しており、
前記基礎材と前記他の基礎材とがそれぞれの前記接合部において接合されるとき、一方の前記シアコッターの前記突起から形成される山部と谷部が、他方の前記シアコッターの前記突起から形成される谷部と山部とにそれぞれ整合し、それによってグラウト材が充填されるキャビティが、一定厚さの波状に形成されるようになっていることを特徴とするプレキャストコンクリート製基礎材。
【請求項2】
請求項1に記載の基礎材において、前記シアコッターは前記基礎材の高さ方向の略全体にわたって形成されていることを特徴とするプレキャストコンクリート製基礎材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基礎材において、前記シアコッターは、前記複数個の突起を上下方向に横切る所定の深さの縦溝を備えていることを特徴とするプレキャストコンクリート製基礎材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の基礎材において、前記接合部には所定の長さのジョイントレールが設けられ、他の基礎材に同様に設けられている前記ジョイントレールと遊びをもった状態で互いに仮結合されるようになっていることを特徴とするプレキャストコンクリート製基礎材。
【請求項5】
請求項4に記載の基礎材において、前記ジョイントレールは、前記基礎材と前記他の基礎材が仮結合されると、前記基礎材と前記他の基礎材の高さが揃うようになっていることを特徴とするプレキャストコンクリート製基礎材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の幅に形成されている複数個のブロックからなり、これらのブロックが突き合わせ端面または側面において互いに連結されると建物の壁や柱を支持する立上がり部すなわち基礎梁が形成されるようになっている、プレキャストコンクリート製基礎材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造住宅等の建物の基礎として、布基礎やベタ基礎が周知である。布基礎は、所定高さの帯状に設けられた建物の壁面を支持する基礎であり、断面形状は所定の肉厚の逆T時形を呈している。そして、T字の横棒に相当するいわゆるフーチングが、均しコンクリートの上に載置され地中に埋められて沈下を防ぐと共に、縦棒に相当する部分によって建物の柱や壁面が支持されるようになっている。一方、ベタ基礎は、建物の壁面を支持する所定高さの帯状のいわゆる立上り部と、建物床面を投影した地面に打設される板状の底板とからなり、これらが一体的に形成された鉄筋コンクリートからなる。従来、このような布基礎やベタ基礎は、建築現場に型枠を設置してコンクリートを打設して得るようにしており、このような施工方法はコストが嵩み、時間も要することになる。近年、所定幅でブロック状のプレキャストコンクリートからなる基礎材を工場内で製造し、これらを建築現場に搬送し、そして基礎材同士を結合して基礎を得る施工方法も、見られるようになってきた。このような施工方法に使用されるプレキャストコンクリート製基礎材は色々な特許文献で提案されているが、本出願人も特許文献1によって所定のプレキャストコンクリート製基礎材を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−070903号公報
【0004】
特許文献1に記載のプレキャストコンクリート製基礎材51、52は、図4に示されているように、所定の長さに形成されているブロック状の基礎材からなる。基礎材51、52は、それぞれの端面、あるいは側面においてジョイントレール54、55が設けられ、これによって連結されるようになっている。内部が中空の箱型で前面に縦方向のスリット56が形成されているジョイントレール54が雌型ジョイントレール54であり、この雌型ジョイントレール54が設けられている基礎材が雌型基礎材51になっている。そして、外方に突出し所定長さで縦方向に形成されているジョイントレール55が雄型ジョイントレール55であり、この雄型ジョイントレール55が設けられている基礎材が雄型基礎材52になっている。雌型基礎材51にも雄型基礎材52にも、ジョイントレール54、55が設けられている端面には、その下方にシアコッター58、58が設けられている。そして雌型基礎材51にはその下部に高さ調整用金具59が設けられている。このようなプレキャストコンクリート製基礎材51、52から次のようにしてベタ基礎が施工される。建築現場において、地盤を所定の深さに掘る根切りを実施し、砕石を敷き詰めて転圧し、その上にコンクリートを打設して、所定厚さの均しコンクリートを形成する。ベタ基礎の立上がり部を形成するために、複数個の雌型基礎材51を所定の間隔離間させて並べる。次いで、隣り合う雌型基礎材51、51の間に雄型基礎材52、52を上方から挿入する。そうすると、雄型ジョイントレール55が雌型ジョイントレール54に案内されて挿入され、スリット56の下端部に当接する位置で停止して、雄型基礎材52の上面が雌型基礎材51の上面に整合する。雌型基礎材51と雄型基礎材52の連結部の上部からグラウト材を注入してシアコッター58に充填する。均しコンクリートの上に、底鉄筋を配筋してコンクリートを打設して底板を形成すると、プレキャストコンクリート製基礎材51、52からなる立上がり部と一体的に形成されたベタ基礎が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のプレキャストコンクリート製基礎材51、52によっても、あるいは説明はしていないが他の特許文献において提案されている他のプレキャストコンクリート製基礎材によっても、建築現場において型枠を設置する必要がないので、作業工程は少なく施工の費用は安価に済む。しかしながら、改良の余地も認められる。具体的には、隣接するプレキャストコンクリート製基礎材51、52同士の接合について、せん断抵抗に関するより大きな接合強度を得たいという要求がある。プレキャストコンクリート製基礎材はシアコッターによって接合されるので、その接合強度にはシアコッターの強度が関係しているが、これについて説明する。
【0006】
図5の(ア)には、シンプルな形状の2個のプレキャストコンクリート製の基礎材60、60の一部が示されており、これらはそれぞれの端面で互いに接合されている。そして、その接合部分に形成されているシアコッター61にグラウト材が充填されて、基礎材60、60が一体化されている。シアコッター61に充填されたグラウト材からなる固化体61は、図5の(イ)に示されている形状になっており、垂直断面すなわちX−X断面が図5の(ウ)に、そして水平断面すなわちY−Y断面が図5の(エ)に示されている。基礎材60、60の接合強度には、シアコッター61の強度が関係しているが、シアコッター61の強度は、接合部における許容せん断力を意味しており、次式で与えられる。
=min(Q、N) 1式
ここで、Q: 接合部の許容せん断力(N)
:シアコッターの垂直断面における許容せん断力(N)
:シアコッターの水平断面における許容圧縮力(N)
そしてシアコッター61の垂直断面の面積がS1(=a×b)とするとQは、次式によって与えられる。
=S1×グラウト材の許容せん断応力度
また、水平断面の面積がS2とするとNは次式によって与えられる。
=S2×グラウト材の許容圧縮応力度
ところで、セメント系の硬化体は許容圧縮応力度が許容せん断応力度よりはるかに大きいことを考えれば、面積S2についてはある程度の大きさがあれば、シアコッターの水平断面垂における許容圧縮力Nは十分に大きな値が得られる。従って、シアコッター61の強度Qを大きくするには、1式において、接合部の許容せん断力Qを大きくすることが重要であり、面積S1を大きくすることが重要であることが分かる。面積S1を大きくするには、シアコッター61の高さbを大きくすればよい。図5の(オ)には、図5の(ア)に示されているシアコッター61よりも高さが大きいシアコッター61’を備えた基礎材60’、60’が示されている。このようなシアコッター61’はその強度Qが大きくなっているので基礎材60’、60’の接合強度は大きくなるはずである。しかしながら、シアコッター61’を大きくすると基礎材60’、60’の強度に悪影響を及ぼしてしまう。基礎材60’、60’にせん断力が作用するとき、基礎材60’、60’自体にも内部にせん断力が作用するが、その最大せん断応力が作用する面63、63は、シアコッター61’の上端と下端とから延びる45°の面になる。シアコッター61’が高さ方向に大きくなると、この作用面63、63の面積が小さくなって破断し易くなってしまう。基礎材60’、60’が破断するとシアコッター61’が抜けたり破断してしまう。つまりシアコッター61’の高さが高すぎると、基礎材60’、60’の強度に悪影響を与えることになるので結果的に基礎材60’、60’の接合強度は弱くなってしまう。このような観点から、シアコッター61の高さは、基礎材60の高さ、つまり基礎の梁せいに対して、略1/3以下とせざるを得ない。このような制約があるので、必ずしも十分に大きな接合強度は得られないという問題がある。
【0007】
したがって、本発明は、基礎が施工されるプレキャストコンクリート製の基礎材において、互いに接合される基礎材の接合強度が十分に大きく、それによって強固な基礎が得られるプレキャストコンクリート製基礎材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、基礎の立上がり部が形成されるようになっているプレキャストコンクリート製の基礎材として構成する。基礎材は所定幅で所定高さの板状に形成し、その端面が、あるいは側面の一部が他の基礎材と接合される接合部になるようにする。接合部には、グラウト材が充填されるシアコッターを設ける。シアコッターは、横方向に一定の高さの突起が、等間隔で上下に複数個並べられた形状に形成し、それによって所定高さの山部と谷部とが交互に形成されるようにする。すなわち波状に形成する。これによって基礎材と他の基礎材とをそれぞれの接合部において接合するとき、一方のシアコッターの突起から形成される山部と谷部が、他方のシアコッターの突起から形成される谷部と山部とにそれぞれ整合し、グラウト材が充填されるキャビティが、一定厚さの波状に形成されるようにする。このようなシアコッターは接合部において高さ方向の全体に設けるようにするのが好ましい。接合部にはジョイントレールを設けて、他の基礎材のジョイントレールと遊びを持った状態で仮結合できるように構成する。
【0009】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、複数個が互いに接合されて、建物の壁や柱を支持する基礎の立上り部を形成するようになっているプレキャストコンクリート製の基礎材であって、前記基礎材は所定幅で所定高さの板状に形成され、その端面、あるいは側面の一部に接合部が形成され、他の基礎材に形成されている前記接合部と接合されるようになっており、前記接合部には、グラウト材が充填されるシアコッターが設けられ、該シアコッターは、横方向に一定の高さの突起が、等間隔で上下に複数個並べられた形状を呈しており、前記基礎材と前記他の基礎材とがそれぞれの前記接合部において接合されるとき、一方の前記シアコッターの前記突起から形成される山部と谷部が、他方の前記シアコッターの前記突起から形成される谷部と山部とにそれぞれ整合し、それによってグラウト材が充填されるキャビティが、一定厚さの波状に形成されるようになっていることを特徴とするプレキャストコンクリート製基礎材として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基礎材において、前記シアコッターは前記基礎材の高さ方向の略全体にわたって形成されていることを特徴とするプレキャストコンクリート製基礎材として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の基礎材において、前記シアコッターは、前記複数個の突起を上下方向に横切る所定の深さの縦溝を備えていることを特徴とするプレキャストコンクリート製基礎材として構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の基礎材において、前記接合部には所定の長さのジョイントレールが設けられ、他の基礎材に同様に設けられている前記ジョイントレールと遊びをもった状態で互いに仮結合されるようになっていることを特徴とするプレキャストコンクリート製基礎材として構成される。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の基礎材において、前記ジョイントレールは、前記基礎材と前記他の基礎材が仮結合されると、前記基礎材と前記他の基礎材の高さが揃うようになっていることを特徴とするプレキャストコンクリート製基礎材として構成される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、複数個が互いに接合されて、建物の壁や柱を支持する基礎の立上り部を形成するようになっているプレキャストコンクリート製の基礎材として構成され、基礎材は所定幅で所定高さの板状に形成され、その端面、あるいは側面の一部に接合部が形成され、他の基礎材に形成されている接合部と接合されるようになっている。そして接合部には、グラウト材が充填されるシアコッターが設けられている。本発明によると、シアコッターは、横方向に一定の高さの突起が、等間隔で上下に複数個並べられた形状を呈しており、基礎材と他の基礎材とがそれぞれの接合部において接合されるとき、一方のシアコッターの突起から形成される山部と谷部が、他方のシアコッターの突起から形成される谷部と山部とにそれぞれ整合し、それによってグラウト材が充填されるキャビティが、一定厚さの波状に形成されるようになっている。このキャビティにグラウト材が充填されて基礎材と他の基礎材が接合されると、グラウト材からなる固化体は波状に形成されるので、後で詳しく説明するように、基礎材の内部に作用する最大せん断応力の作用面は複数面に分散される。そうすると最大せん断応力が小さくなって基礎材の破断が防止されることになる。これによって、従来のシアコッタの高さの制約、つまり基礎梁の梁せいの略1/3以下にしなければならない、という制約が不要になる。従って本発明は、シアコッタの高さを自由に選択することができ、接合強度が高い基礎材を提供することができる。他の発明によると、シアコッターは基礎材の高さ方向の略全体にわたって形成されている。これはシアコッターの高さが最も高い場合であるが、このとき最高の接合強度が得られる。そして他の発明によるとシアコッターは、複数個の突起を上下方向に横切る所定の深さの縦溝を備えている。そうするとグラウト材が充填されて固化すると、複数個の突起からなる波状の固化体において、縦溝によって縦方向のリブが形成されることになる。このリブによって捻れにも耐性を備えることになり、さらに接合強度が高くなることが保証される。また他の発明によると、接合部には所定の長さのジョイントレールが設けられ、他の基礎材に同様に設けられているジョイントレールと遊びをもった状態で互いに仮結合されるようになっている。従って、建築現場における基礎の施工が極めて容易になる。また、基礎材は遊びをもった状態で仮結合されるので、グラウト材の注入がし易い。他の発明によると、ジョイントレールは、基礎材と他の基礎材が仮結合されると、基礎材と他の基礎材の高さが揃うようになっているので、高さの調整が容易になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る基礎材を模式的に示す斜視図で、その(ア)は雌型基礎材を、その(イ)は雄型基礎材をそれぞれ示す斜視図である。
図2】本実施の形態に係る基礎材の接合部を拡大して示す図で、その(ア)は雌型基礎材の接合部を、その(イ)は雄型基礎材の接合部を、それぞれ示す斜視図である。
図3】互いに接合された2個の本実施の形態に係る基礎材の一部と、これらの接合部のシアコッターにグラウト材が充填された状態を示す断面図である。
図4】従来例の雌型基礎材と雄型基礎材とを示す斜視図である。
図5】従来例を示す図で、その(ア)は互いに接合された一対の基礎材の一部を示す断面図、その(イ)はシアコッターにグラウト材が充填されて固化した固化体の斜視図、その(ウ)(エ)はそれぞれ固化体のX−X断面とY−Y断面における断面図、その(オ)は互いに接合された一対の基礎材の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る基礎材は、予め工場で製造されるプレキャストコンクリート製のブロックであって、図1の(ア)(イ)に示されているように、雌型基礎材1と、雄型基礎材2とからなっている。雌雄の型は後で説明するジョイントレールの種類によって決定されているが、雌型基礎材1と雄型基礎材2は、互いに接合されて基礎の立上り部、すなわち基礎梁を形成するようになっている。図には示されていないが、これらの基礎材1、2の他に、他の基礎材とは連結されずに単独で立上がり部を形成するようになっている独立型基礎材もある。しかしながら、本発明とは関係がないので説明は省略する。
【0013】
雌型基礎材1も雄型基礎材2も所定長さで所定厚の板状に形成され、建物の柱や壁を支持する上面4、4と、建築現場において打設されるコンクリートと一体化されることになる底面5、5と、長方形状の広い面積を備えた側面6、6、…と、端面7、7とを備えている。本実施の形態において、雌型基礎材1の一方の端面7は、雄型基礎材2が接合される接合部8になっているが、他方の端面7は接合されるようにはなっていない。その代りに雌型基礎材1の側面6の一部が雄型基礎材2と接合される接合部8になっている。これに対し本実施の形態において雄型基礎材2の両端面7、7は、いずれも雌型基礎材1と接合される接合部8、8になっている。
【0014】
雌型基礎材1の接合部8、8には、金属製の雌型ジョイントレール10、10が埋め込まれている。雌型ジョイントレール10は、図2の(ア)に拡大して示されているが、所定高さで断面が略方形の箱状に形成されている。雌型ジョイントレール10の前面にはスリット12が長手方向あるいは上下方向に形成されている。このスリット12の下端部に、次に説明する雄型ジョイントレールの下端部が当接すると雄型、雌形基礎材2、1の上面4、4の高さが揃うようになっている。接合部8には、本発明に特有な形状の本実施の形態に係るシアコッター14も設けられているが、これは後で説明する。雌型基礎材1の底面5には高さ調整用金具15、15が設けられている。これによって基礎の施工時において雌型基礎材1を安定的に設置できるだけでなく、所望の高さにすることができる。
【0015】
雄型基礎材2の接合部8、8には、金属製の雄型ジョイントレール17、17が埋め込まれている。雄型ジョイントレール17、17は、図2の(イ)に拡大して示されているが、露出している部分が鉄道用の軌道のような形状に形成されている。雄型基礎材2は、このような雄型ジョイントレール17を、雌型基礎材1の雌型ジョイントレール10に挿入することによって仮結合するようになっている。雄型ジョイントレール17が雌形ジョイントレール10に挿入されるときスリット12にガイドされて挿入されるが、スリット12の下端に雄型ジョイントレール17が当接する停止位置においても、雄型ジョイントレール17は若干の遊びをもった状態であるいは隙間をもった状態で雌型ジョイントレール10に仮結合される。これにより、基礎の立上がり部を施工するときに、組立あるいは仮結合が容易になる。
【0016】
本実施の形態に係るシアコッター14について説明する。シアコッター14は、雌型基礎材1の接合部8にも、雄型基礎材2の接合部8にも設けられている。シアコッター14は、横向きに寝かせた三角柱状の突起19、19、…が上下方向に等間隔で複数個並べられた形状からなる。これによって、突起19からなる山部と、突起19、19間の谷部とが交互に連続的に形成され、垂直に切断した断面形状がノコギリの歯状になっている。あるいは波型になっている。山部の高さ、あるいは谷部の深さは、好ましくは10〜20mmになっている。本実施の形態においては突起19、19は三角柱状の形状に形成されているが、台形の形状であっても、あるいは滑らかな形状から構成されていてもよく、連続的に複数個の突起が上下に並べられた形状になっていればよい。本実施の形態においてこのようなシアコッター14は、接合部8の全体、つまり基礎材1、2の高さ方向の略全体に渡るように設けられている。また本実施の形態において、シアコッター14には、2本の縦溝20、20も形成されている。これらの縦溝20、20は突起19、19、…を上下方向に横切る溝からなり、その深さは本実施の形態においては谷部の深さと一致している。このようなシアコッタ14が、雌型基礎材1の接合部8にも雄型基礎材2の接合部8にも設けられているが、雌型基礎材1と雄型基礎材2に設けられているシアコッター14は、若干相違している。具体的には、雌型基礎材1側のシアコッタ14と、雄型基礎材2側のシアコッター14は、それぞれの突起19、19、…が、上下方向にわずかにずれるように配置されている。これによって雌型基礎材1と雄型基礎材2とが仮結合されたとき、雌型基礎材1側のシアコッター14の山部と谷部が、雄型基礎材2側のシアコッターの谷部と山部とに整合することになる。
【0017】
本実施の形態に係る雌型基礎材1、雄型基礎材2を使用して、ベタ基礎を施工する方法について説明する。建築現場において、従来周知のように所定の範囲の地盤を所定の深さに掘る根切りを実施する。次いで、根切りされた地盤に砕石を敷き詰めてランマ等で押し固める転圧施工を実施する。転圧された砕石層の上にコンクリートを打設して、所定の水平精度で所定厚さの均しコンクリートを形成する。均しコンクリートが固化した後に、ベタ基礎の立上り部分として、本実施の形態に係る雌型基礎材1、1、…を、互いに所定の間隔離間させて並べる。この間隔は、雄型基礎材2の幅と等しいか、それよりもわずかに広い間隔とする。次いで、隣り合う雌型基礎材1、1の間に雄型基礎材2を上方から挿入する。雄型ジョイントレール17が雌型ジョイントレール10に挿入され、係止されると雄型基礎材2の高さが雌型基礎材1の高さと等しくなる。これによって雌型基礎材1、1、…と雄型基礎材2、2、…は仮結合される。
【0018】
図3には、仮結合された雌型基礎材1と雄型基礎材2の一部が示されているが、対向するシアコッター14、14の突起19、19、…は互いに上下にずれており、それによって一方のシアコッター14の山部は他方のシアコッター14の谷部に、一方のシアコッター14の谷部は他方のシアコッター14の山部に整合している。このように整合するので、雌型基礎材1と雄型基礎材2のそれぞれのシアコッター14、14から形成されるキャビティは、厚さが一定の波状を呈する形状に形成されることになる。この厚さは、シアコッター14、14同士の幅dと、シアコッター14の山部の高さhの合計で与えられる。前記したように好ましい山部の高さhは10〜20mmであり、シアコッター14、14同士の幅dは0〜10mm程度であるのでキャビティの厚さは10〜30mmになる。グラウト材21を注入する。そうするとキャビティ、すなわちシアコッター14、14内にグラウト材21が充?される。キャビティの厚さは一定であり、10〜30mmと十分に隙間があるのでグラウト材21は滑らかに流動し、シアコッター14、14の隅々まで充填される。これによって雌型基礎材1と雄型基礎材2とが接合される。
【0019】
均しコンクリートの上に、格子状に底鉄筋を配筋して、連結索等を用いて互いに連結する。図には示されていないが、雌型、雄型基礎材1、2の底面5、5からも所定の鉄筋が出ているので、これらを底鉄筋と連結する。コンクリートを打設して底板を形成する。グラウト材21とコンクリートが固化すると、底板と立上り部が一体化された強固なベタ基礎が得られる。
【0020】
本実施の形態に係る雌型、雄型基礎材1、2においては、本発明に特有の形状からなるシアコッター14、14を備えているので、強い接合力を備えている。まずシアコッター14、14は、接合部8の全体にわたって、つまり雌型、雄型基礎材1、2の高さ方向の全体にわたって設けられているので、前記した1式によって与えられる、接合部の許容せん断力Qは十分に大きい。そしてシアコッター14、14で固化するグラウト材21は、図3に示されているように厚さが一定の波状に形成される。つまり固化したグラウト材21の形状は、雌型、雄型基礎材1、2の中で波状になっている。そうすると雌型、雄型基礎材1、2にせん断力が作用したときに雌型、雄型基礎材1、2中に作用する最大せん断応力の作用面23、23、…は雌型、雄型基礎材1、2中で複数の面に分散することになる。これによって雌型、雄型基礎材1、2のせん断破壊が防止される。このように本実施の形態に係る雌型、雄型基礎材1、2は、シアコッター14、14の接合部の許容せん断力Qが大きく、そして雌型、雄型基礎材1、2のせん断破壊を防止できるので、強い接合強度を備えていると言える。
【0021】
本発明に係る雌型、雄型基礎材1、2は、上記実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。まず、本実施の形態においてシアコッター14、14は、接合部8の全面、すなわち高さ方向の全体にわたって設けられるように説明したが、必ずしもそのようにする必要はない。シアコッター14、14の高さは、自由に設定できる。ただし、本発明に係るシアコッター14、14は、雌型、雄型基礎材1、2中における最大せん断応力の作用面が分散し、それによって接合部8の高さの1/3より大きくすることが可能になっている。従って、本発明の効果が得られるようにするためには、シアコッター14、14の高さは、接合部8の高さの1/3より大きくすべきであり、好ましくは1/2以上である。シアコッター14において、本実施の形態においては縦溝20が2本設けられているが、この縦溝20の本数については制限はない。また縦溝20は必ずしも必須ではない。
【0022】
本実施の形態に係るシアコッター14、14は、雌型基礎材1と雄型基礎材2とで、突起19、19がお互いに上下にずれており、それによって雄型基礎材1と雌型基礎材2を接合するときに一方のシアコッター14の山部は他方のシアコッター14の谷部に、一方のシアコッター14の谷部は他方のシアコッター14の山部に整合すると説明した。しかしながら、雌型基礎材1と雄型基礎材2とで、お互いの突起19、19、…の上下方向の位置が一致していてもよい。この場合、一方のシアコッター14の山部と他方のシアコッター14の山部が、一方のシアコッター14の谷部と他方のシアコッター14の谷部とがそれぞれ整合することになる。つまり一方のシアコッター14と他方のシアコッター14とからなるキャビティは、山部と山部が整合する幅狭のくびれ部分と、谷部と谷部とが整合する幅広の部分とが交互に形成される。くびれ部分の幅がグラウト材の注入において重要であり、グラウト材が滑らかに充填されるように、くびれ部分は、例えば10mm程度確保すべきである。
【0023】
本発明の実施の形態は他の点でも変形が可能である。例えば雌型、雄型ジョイントレール10、17の変形が可能である。これらの形状は、前記した形状だけに限られず、お互いに仮結合できるようになっていればどのような形状であってもよい。さらには、雌型、雄型基礎材1、2の接合部8においてジョイントレールが設けられていなくてもよい。仮結合せずに直接グラウト材を注入して接合してもよいからである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本実施の形態に係る雌型、雄型基礎材1、2は、底面6、6にフーチングとなるコンクリートを打設すれば布基礎の施工にも利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 雌型基礎材 2 雄型基礎材
4 上面 6 側面
7 端面 8 接合部
10 雌型ジョイントレール 12 スリット
14 シアコッター 15 高さ調整用金具
17 雄型ジョイントレール 19 突起
21 グラウト材
図1
図2
図3
図4
図5