【実施例1】
【0013】
図1に、本発明のエレベーター用ガイドレールの吊り雇が吊上げるエレベーター用ガイドレールの上端部を示す。
【0014】
該図に示すように、エレベーター用ガイドレール4は、図示しない乗りかご又はつり合い重りから成る昇降体の昇降を案内するガイド部4aと、このガイド部4aと一体となり略T字状となるように形成された背面部4bと、この背面部4bに設けられる連結部である継ぎ目板部4dとから成り、エレベーター用ガイドレール4の1本あたりの全長は、4〜5mが一般的である。このエレベーター用ガイドレール4が複数本、継ぎ目板部4dを介してボルト等で連結されて昇降路内に立設される。
【0015】
図2乃至
図4に、本発明のエレベーター用ガイドレールの吊り雇の実施例1を示す。
【0016】
図3は、比較的小さなサイズ(例えば、13Kg/m
2の重量で、長さが4〜5m)のエレベーター用ガイドレール4を吊る際の吊り雇5の組上げ構造及びエレベーター用ガイドレール4の配置を示している。
【0017】
本実施例に係るエレベーター用ガイドレール4の吊り雇5は、
図3に示すように、エレベーター用ガイドレール4の背面部4bに当接すると共に、継ぎ目板部4dの底面4eに当接可能な当接板51と、この当接板51が取り付けられ、当接板51との協働でエレベーター用ガイドレール4を挟持する挟持部52と、この挟持部52に設けた吊り点である吊り穴55と、当接板51と挟持部52とを連結する連結手段(詳細は、後述する)とを備えて概略構成されている。
【0018】
そして、本実施例のエレベーター用ガイドレール4の吊り雇5は、挟持部52と当接板51には、挟持部52に対する当接板51の取り付け位置を、エレベーター用ガイドレール4のサイズに応じて変更可能にする取り付け位置可変手段(詳細は、後述する)が形成されている。
【0019】
この取り付け位置可変手段は、
図2に示すように、挟持部52の
図3及び
図4の上下方向に間隔をあけて形成され、当接板51が挿入されて係合する複数の係合溝、例えば一対となる挟持部第1係合溝52a及び52b、他に一対となる挟持部第2係合溝53a及び53bと、当接板51に形成され、挟持部第1係合溝52a及び52b、挟持部第2係合溝53a及び53bのそれぞれに係合可能な当接板第1係合溝51a及び当接板第2係合溝51bとから構成されている。
【0020】
更に、具体的に説明すると、
図2に示すように、当接板51は、平板部51Aと、この平板51Aの一方の面に、該面から突出するように所定の間隔をもって溶接により固定された2つの支持部51d1及び51d2とから成り、支持部51d1より端部側(
図2の右側)の当接板51には当接板第1係合溝51aが、支持部51d2より端部側(
図2の左側)の当接板51には当接板第2係合溝51bがそれぞれ形成され、当接板第1係合溝51aより当接板第2係合溝51bの方が深くなるように形成されている。また、当接板第1係合溝51a及び当接板第2係合溝51bのそれぞれの端部側の当接板51には、当接板連結穴51c1及び51c2がほぼ同等の位置に形成されている。
【0021】
一方、挟持部52は、吊り雇5を吊上げるための吊り穴55が形成された部材が溶接により固定された天板部52Aと、この天板部52Aの両端部から斜め方向に延びる斜め板部52B1及び52B2と、斜め板部52B1及び52B2のそれぞれから下方(当接板51側)に延びる下方板部52C1及び52C2とが一体に形成されて成り、下方板部52C1の上側(反当接板51側)には挟持部第1係合溝52bが、挟持部第1係合溝52bより下側(当接板51側)には挟持部第2係合溝53aが形成され、下方板部52C2の上側(反当接板51側)には挟持部第1係合溝52aが、挟持部第1係合溝52aより下側(当接板51側)には挟持部第2係合溝53bが形成されている。
【0022】
また、下方板部52C1の挟持部第1係合溝52bと挟持部第2係合溝53aの間には、外方に突出するように挟持部連結板54a1が溶接により固定され、下方板52C2の挟持部第1係合溝52aと挟持部第2係合溝53bの間には、外方に突出するように挟持部連結板54a2が溶接により固定されている。この挟持部連結板54a1及び54a2には、それぞれ挟持部連結穴54c1及び54c2が形成されている。
【0023】
そして、当接板第1係合溝51aと挟持部第1係合溝52a及び挟持部第2係合溝53aの溝は一様に浅く、当接板第2係合溝51bと挟持部第1係合溝52b及び挟持部第2係合溝53bの溝は、上記溝よりは一様に深く形成されている。
【0024】
その結果、当接板第1係合溝51aを挟持部第1係合溝52bに挿入し、当接板第2係合溝51bを挟持部第1係合溝52aに挿入すると、各々の係合溝は隙間無く係合し、かつ、挟持部52と当接板51の上面は同じ高さに揃い、連結ピン61及び62を、当接板連結穴51c1及び51c2と挟持部連結板54a1及び54a2にある挟持部連結穴54c1及び54c2に貫通させることで、当接板51と挟持部52を確実に連結させることができ、
図3のように、比較的小さなサイズのエレベーター用ガイドレール4を吊る雇い構造になり、当接板51の支持部51d1及び51d2は、エレベーター用ガイドレール4を吊った際に、エレベーター用ガイドレール4が横方向にずれるのを防ぐための位置に配設される。
【0025】
本実施例での浅い係合溝と深い係合溝の定義は、浅い係合溝の底面と深い係合溝の底面の差が8mmであることで、例えば、当接板第1係合溝51aの深さが31mmであれば、当接板第2係合溝51bの深さは39mmである。
【0026】
なお、挟持部52の連結ピン61及び62には、当接板連結穴51c1及び51c2と挟持部連結穴54c1及び54c2に貫通させた後に連結ピン61及び62を捻ると抜け止めが図れるように、抜け止めピン61a及び62aが設けてある(この当接板連結穴51c1及び51c2、挟持部連結穴54c1及び54c2及び連結ピン61及び62で連結手段が構成されている)。また、連結ピン61及び62が当接板連結穴51c1及び51c2と挟持部連結穴54c1及び54c2を貫通し過ぎることを防止するために、当接板連結穴51c1及び51c2と挟持部連結穴54c1及び54c2よりも大きなサイズの貫通止めピン61b及び62bが設けてある。この連結ピン61の抜け止めピン61aと貫通止めピン61b、及び連結ピン62の抜け止めピン62aと貫通止めピン62bは、それぞれ90度ずれた位置に設けられている。
【0027】
一方、比較的小さなサイズのエレベーター用ガイドレール4を吊る際に、当接板51の表裏を間違えて組み立てた場合、即ち、エレベーター用ガイドレール4の横方向へのずれを防ぐための支持部51d及び51d2が、エレベーター用ガイドレール4の側面に配設されない様な組み立て方をした場合には、エレベーター用ガイドレール4を吊る際に、エレベーター用ガイドレール4が横ずれして不安定な吊り状態になる危険性があるが、当接板第1係合溝51aを挟持部第1係合溝52aに挿入し、当接板第2係合溝51bを挟持部第1係合溝52bに挿入し、表裏を間違った様な組み立て方とした場合には、当接板第1係合溝51aと挟持部第1係合溝52aの溝は隙間無く係合するが、当接板第2係合溝51bと挟持部第1係合溝52bの溝は隙間を生じて不完全な係合状態となり、かつ、挟持部52と当接板51の上面は同じ高さに揃わずに傾斜が生じること、及び連結ピン61及び62を当接板連結穴51c1及び51c2と挟持部連結穴54c1及び54c2に貫通させることができないことから、組立て方の間違いに容易に気付くことができ、間違った組み立て方で使用することを防止できる。
【0028】
同様に、
図4に示すように、比較的大きなサイズのエレベーター用ガイドレール4を吊る際の吊り雇5の組上げ構造は、当接板第1係合溝51aを挟持部第2係合溝53bに挿入し、当接板第2係合溝51bを挟持部第2係合溝53aに挿入した場合、即ち、当接板51の表裏を正しい向きで場合にのみ各々の溝は隙間無く係合し、かつ、挟持部52と当接板51の上面は同じ高さに揃い、連結ピン61及び62を当接板連結穴51c1及び51c2と挟持部連結穴54c1及び54c2に貫通させることができるため、間違った組み立て方を防ぐことができる。
【0029】
なお、挟持部52の斜め板部52B1及び52B2には、
図2、
図3及び
図4に示すように、連結ピン支持穴54b1及び54b2を設けてあり、連結ピン支持穴54b1及び54b2に通した紐状体63a及び63b等によって、連結ピン61及び62を挟持部52に保持させることができるため、連結ピン61及び62を当接板連結穴51c1及び51c2、及び挟持部連結穴54c1及び54c2から抜き取った際などに、連結ピン61及び62の紛失を防ぐことができる。
【0030】
図3に、挟持部第1係合溝52a及び52bに当接板51を挿入して、比較的小さなサイズのエレベーター用ガイドレール4を、吊り雇5で吊る際の支持構造の具体例を示している。
図3において、当接板51の支持部51d1及び51d2は、エレベーター用ガイドレール4を吊った際に、エレベーター用ガイドレール4が横方向にずれるのを防ぐための支持を担っている。
【0031】
図4に、比較的大きなサイズ(例えば、18Kg/m
2の重量で、長さが4〜5m)のエレベーター用ガイドレール4を、吊り雇5で吊る際の支持構造の具体例を示している。
【0032】
図4において、大きなサイズのエレベーター用ガイドレール4を吊る場合には、当接板51の支持部51d1及び51d2の出張りは、エレベーター用ガイドレール4と反対の方に向けるようにして、挟持部第2係合溝53a及び53bに当接板51を挿入するものである。
【0033】
次に、本実施例の吊り雇5を用いてエレベーター用ガイドレール4を昇降路1内に吊り込む作業について、
図5及び
図6を用いて説明する。
【0034】
図5は、本実施例の吊り雇5を用いてエレベーター用ガイドレール4を昇降路1内に吊り込む作業時の吊り込み開始時の状態を示し、
図6は、吊り込み完了時の状態を示す。
【0035】
まず、エレベーター用ガイドレール4を昇降路1内に吊り込む作業では、最下階乗場3において、
図3又は
図4に示すように、エレベーター用ガイドレール4を挟んで吊り雇5を組上げる。その後、
図5に示すように、例えば、ウインチ、ホイスト等の揚重装置2の揚重ロープ2aの先端の揚重フック2bを挟持部52に設けた吊り穴55に取り付けた状態で、揚重装置2を駆動して揚重ロープ2aを巻き取る。これにより、エレベーター用ガイドレール4は、
図5の左側から右側に順次移動し、継ぎ目板部4dの底面4eを当接板51に支持されながら、昇降路1内に引き入れられる。
【0036】
なお、この際に、エレベーター用ガイドレール4は、当接板51と挟持部52に挟み込まれていて、継ぎ目板部4dの底面4eが当接板51の上面から外れることは無いため、エレベーター用ガイドレール4が本実施例に係る吊り雇5から抜け落ちることはない。
【0037】
このようにして、エレベーター用ガイドレール4を昇降路1内に引き入れた後、
図6に示すように、昇降路1の底部1aに吊り下ろし、揚重装置2の揚重ロープ2aを引き下げるようにして緩める。
【0038】
これにより、揚重ロープ2aに負荷されていた張力が除かれるため、その結果として、エレベーター用ガイドレール4の継ぎ目板部4dの底面4eを支持していた当接板51の支持力が除かれ、本実施例の吊り雇5は、
図6の矢印60で示すように、その自重によってエレベーター用ガイドレール4に沿って下降する。
【0039】
このようにして本実施例に係る吊り雇5を、例えば、
図6に示す作業者6の手の届く位置まで下ろし、連結ピン61及び62を当接板51と挟持部52から抜き取り、当接板51を挟持部52から抜き取ることにより、吊り雇5をエレベーター用ガイドレール4から取り外すことができる。
【0040】
以下同様の手順で、最下階乗場3の他の複数本のエレベーター用ガイドレール4を昇降路1内に吊り込むことにより、必要なエレベーター用ガイドレール4の全てを昇降路1内へ吊り込むことができる。
【0041】
以上のように構成した本実施例に係る吊り雇5によれば、エレベーター用ガイドレール4のサイズに応じて、挟持部52に対する当接板51の取り付け位置を変更させることにより、サイズの異なる複数種のエレベーター用ガイドレール4の昇降路1内への吊り込み作業に対応させることができる。
【0042】
これにより、本実施例に係る吊り雇5は、異なる複数種(
図3及び
図4に示したエレベーター用ガイドレール4以外に、このエレベーター用ガイドレール4と重さが同じでサイズが異なるもの)のエレベーター用ガイドレール4の吊り込みを考えた場合には、エレベーター用ガイドレール4の吊り込み作業を行う吊り雇5の費用を従来に比べて低減させることができる。また、本実施例は、エレベーターの据え付け現場で、吊り雇5をエレベーター用ガイドレール4のサイズ毎に交換する手間が省け、エレベーターの据え付け作業の能率低下を防ぐことができる。
【0043】
従って、本実施例の構成とすることにより、異なる複数種のエレベーター用ガイドレール4の昇降路1内への吊り込みを1つの吊り雇5で対応でき、経済的で、かつ、エレベーターの据え付け作業の能率低下を招く恐れがないので、エレベーター用ガイドレール4を昇降路1内へ吊り込む際には非常に効果的である。
【0044】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。即ち、上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。