特許第6339983号(P6339983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6339983
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】エレベーター用ガイドレールの吊り雇
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/02 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   B66B7/02 H
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-165766(P2015-165766)
(22)【出願日】2015年8月25日
(65)【公開番号】特開2017-43437(P2017-43437A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2017年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】志保澤 晃太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−011676(JP,U)
【文献】 実開昭57−191781(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第01717186(EP,A1)
【文献】 特開2006−306621(JP,A)
【文献】 特開2014−213975(JP,A)
【文献】 特開2011−136817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降体の昇降を案内するガイド部と、該ガイド部と一体となり略T字状となるように形成された背面部と、該背面部に設けられた連結部とから成るエレベーター用ガイドレールの複数本が、前記連結部を介して連結されて昇降路内に立設される際の前記昇降路内への吊り込み時に用いられるエレベーター用ガイドレールの吊り雇において、
前記エレベーター用ガイドレールの前記背面部に当接すると共に、前記連結部に当接可能な当接板と、該当接板が取り付けられ、該当接板との協働で前記エレベーター用ガイドレールを挟持する挟持部と、該挟持部に設けられた吊り点と、前記当接板と前記挟持部とを連結する連結手段とを備え、前記挟持部と前記当接板には、前記挟持部に対する前記当接板の取り付け位置を、前記エレベーター用ガイドレールのサイズに応じて変更可能にする取り付け位置可変手段が形成されていると共に、前記取り付け位置可変手段は、前記挟持部に間隔をあけて形成され、前記当接板が挿入されて係合する複数の挟持部係合溝と、前記当接板に形成され、複数のそれぞれの前記挟持部係合溝に係合可能な当接板係合溝とから成り、係合する前記挟持部係合溝と前記当接板係合溝の深さが異なっていることを特徴とするエレベーター用ガイドレールの吊り雇。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーター用ガイドレールの吊り雇において、
前記連結手段は、前記当接板に形成された当接板連結穴と、該当接板連結穴に適合するように前記挟持部に形成された挟持部連結穴と、前記当接板連結穴及び前記挟持部連結穴に挿入される連結ピンとから成ることを特徴とするエレベーター用ガイドレールの吊り雇。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベーター用ガイドレールの吊り雇において、
前記当接板は、平板部と、該平板部の一方の面から突出するように所定の間隔をもって設けられ、前記エレベーター用ガイドレールの前記背面部の側部を支持する2つの支持部とから成り、1つの前記支持部より端部側の前記当接板には当接板第1係合溝が、他の前記支持部より端部側の前記当接板には当接板第2係合溝がそれぞれ形成され、一方、前記挟持部は、吊り雇を吊上げるための吊り穴が形成された部材が設けられた天板部と、該天板部の両端部から斜め方向に延びる斜め板部と、該斜め板部のそれぞれから下方に延びる下方板部とから成り、一方の前記下方板部の上側には挟持部第1係合溝が、該挟持部第1係合溝より下側には挟持部第2係合溝が形成され、他方の前記下方板部の上側には挟持部第1係合溝が、該挟持部第1係合溝より下側には挟持部第2係合溝が形成されていることを特徴とするエレベーター用ガイドレールの吊り雇。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベーター用ガイドレールの吊り雇において、
一方の前記下方板部の前記挟持部第1係合溝と前記挟持部第2係合溝の間には、外方に突出するように挟持部連結板が設けられ、他方の前記下方板部の前記挟持部第1係合溝と前記挟持部第2係合溝の間には、外方に突出するように別の挟持部連結板が設けられていることを特徴とするエレベーター用ガイドレールの吊り雇。
【請求項5】
請求項3に記載のエレベーター用ガイドレールの吊り雇において、
前記当接板第1係合溝と前記挟持部第1係合溝及び前記挟持部第2係合溝の深さは一様に浅く、前記当接板第1係合溝と前記挟持部第1係合溝及び前記挟持部第2係合溝の深さは、前記当接板第1係合溝と前記挟持部第1係合溝及び前記挟持部第2係合溝の深さよりは一様に深く形成されていることを特徴とするエレベーター用ガイドレールの吊り雇。
【請求項6】
請求項に記載のエレベーター用ガイドレールの吊り雇において、
前記当接板に形成された当接板連結穴は、前記当接板第1係合溝及び前記当接板第2係合溝のそれぞれの端部側の前記当接板に形成された2つの当接板連結穴から成り、前記2つの当接板連結穴がほぼ同等の位置の前記当接板に形成されていることを特徴とするエレベーター用ガイドレールの吊り雇。
【請求項7】
請求項2に記載のエレベーター用ガイドレールの吊り雇において、
前記連結ピンには、前記当接板連結穴と前記挟持部連結穴に貫通させた後に該連結ピンの抜け止めを防止する抜け止めピンが設けられていると共に、前記連結ピンが前記当接板連結穴と前記挟持部連結穴を貫通し過ぎることを防止する貫通止めピンが設けられていることを特徴とするエレベーター用ガイドレールの吊り雇。
【請求項8】
請求項3に記載のエレベーター用ガイドレールの吊り雇において、
前記挟持部の斜め板部のそれぞれには連結ピン支持穴が設けられ、該連結ピン支持穴に通した紐状体によって、前記連結ピンが前記挟持部に保持されることを特徴とするエレベーター用ガイドレールの吊り雇。
【請求項9】
請求項3に記載のエレベーター用ガイドレールの吊り雇において、
前記エレベーター用ガイドレールが小さいサイズのときには、前記当接板の支持部を前記挟持部に対向するように位置させて、前記当接板第1係合溝と前記当接板第2係合溝が前記下方板部のそれぞれに形成された前記挟持部第1係合溝に係合されて前記当接板を前記挟持部に取り付ける形態とし、一方、前記エレベーター用ガイドレールが前記小さいサイズよりも大きいサイズのときには、前記当接板の支持部が設けられていない前記当接板の他方の面を前記挟持部に対向するように位置させて、前記当接板第1係合溝と前記当接板第2係合溝が前記下方板部のそれぞれに形成された前記挟持部第2係合溝に係合されて前記当接板を前記挟持部に取り付ける形態とすることを特徴とするエレベーター用ガイドレールの吊り雇。
【請求項10】
請求項9に記載のエレベーター用ガイドレールの吊り雇において、
前記エレベーター用ガイドレールが小さいサイズのときには、深さの浅い前記当接板第1係合溝及び深さの深い前記当接板第1係合溝と、深さの深い一方の前記挟持部第1係合溝及び深さの浅い他方の前記挟持部第1係合溝が係合し、前記エレベーター用ガイドレールが前記小さいサイズよりも大きいサイズのときには、深さの浅い前記当接板第1係合溝及び深さの深い前記当接板第1係合溝と、深さの深い他方の前記挟持部第1係合溝及び深さの浅い一方の前記挟持部第1係合溝が係合することを特徴とするエレベーター用ガイドレールの吊り雇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベーター用ガイドレールの吊り雇に係り、特に、エレベーター用ガイドレールを昇降路内へ吊り込む際に用いられるものに好適なエレベーター用ガイドレールの吊り雇に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なエレベーターでは、乗かごとつり合い重りとが、ロープによって連結されて釣瓶式に昇降路内を昇降する。また、乗かごとつり合い重りとは、昇降路に立設されるガイドレールに案内されて昇降路内を昇降する。このガイドレールは、複数本が連結されて昇降路内に立設されるが、昇降路内への据え付け時には、1本ずつ昇降路内に吊り込む作業が必要となる。
【0003】
このガイドレールの昇降路内への吊り込み作業に関しては、特許文献1に記載されているような技術が提案されている。即ち、特許文献1には、ガイドレールの上端部に予め取り付けられた継ぎ目板に吊り具を掛ける形でガイドレールを吊り上げて、ガイドレールを昇降路内に搬入する吊り具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−11676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている従来技術は、サイズの異なる複数種のガイドレールを昇降路内に吊り込むことは考慮されていない。従って、特許文献1に記載されている従来技術にあっては、異なる複数種のガイドレールに対応させて複数の異なる吊り上げ治具が必要となる。
【0006】
このため、異なる複数種のガイドレールの吊り込みを考えた場合に、吊り込み作業を行う治具費用が高くなるほか、複数種の吊り上げ治具を交換して使い分ける必要があり、エレベーターの据え付け作業の能率低下を招く恐れがある。
【0007】
特に、現在の市場で導入率が高い標準型エレベーターでは、サイズが異なる2種類のガイドレールを使用することから、1つの吊り上げ治具で複数種のガイドレールを吊り込むことに対する要望が高い。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、異なる複数種のガイドレールの昇降路内への吊り込みを1つの吊り上げ治具で対応でき、経済的で、かつ、エレベーターの据え付け作業の能率低下を招く恐れのないエレベーター用ガイドレールの吊り雇を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のエレベーター用ガイドレールの吊り雇は、上記目的を達成するために、昇降体の昇降を案内するガイド部と、該ガイド部と一体となり略T字状となるように形成された背面部と、該背面部に設けられた連結部とから成るエレベーター用ガイドレールの複数本が、前記連結部を介して連結されて昇降路内に立設される際の前記昇降路内への吊り込み時に用いられるエレベーター用ガイドレールの吊り雇において、前記エレベーター用ガイドレールの前記背面部に当接すると共に、前記連結部に当接可能な当接板と、該当接板が取り付けられ、該当接板との協働で前記エレベーター用ガイドレールを挟持する挟持部と、該挟持部に設けられた吊り点と、前記当接板と前記挟持部とを連結する連結手段とを備え、前記挟持部と前記当接板には、前記挟持部に対する前記当接板の取り付け位置を、前記エレベーター用ガイドレールのサイズに応じて変更可能にする取り付け位置可変手段が形成されていると共に、前記取り付け位置可変手段は、前記挟持部に間隔をあけて形成され、前記当接板が挿入されて係合する複数の挟持部係合溝と、前記当接板に形成され、複数のそれぞれの前記挟持部係合溝に係合可能な当接板係合溝とから成り、係合する前記挟持部係合溝と前記当接板係合溝の深さが異なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異なる複数種のガイドレールの昇降路内への吊り込みを1つの吊り上げ治具で対応でき、経済的で、かつ、エレベーターの据え付け作業の能率低下を招く恐れがないので、エレベーター用ガイドレールを昇降路内へ吊り込む際には有効である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のエレベーター用ガイドレールの吊り雇が吊上げるエレベーター用ガイドレールの上端部を示す斜視図である。
図2】本発明のエレベーター用ガイドレールの吊り雇の実施例1であり、当接板を挟持部に取り付ける直前の状態を示す斜視図である。
図3】本発明のエレベーター用ガイドレールの吊り雇の実施例1が、比較的小さいサイズのエレベーター用ガイドレールを吊上げる状態を示す平面図である。
図4】本発明のエレベーター用ガイドレールの吊り雇の実施例1が、比較的大きいサイズのエレベーター用ガイドレールを吊上げる状態を示す平面図である。
図5】本発明のエレベーター用ガイドレールの吊り雇の実施例1を用いてエレベーター用ガイドレールを昇降路内に吊り込む作業時の状態であり、エレベーター用ガイドレールの吊り込み開始時の状態を示す側面図である。
図6】本発明のエレベーター用ガイドレールの吊り雇の実施例1を用いてエレベーター用ガイドレールを昇降路内に吊り込む作業時の状態であり、エレベーター用ガイドレールの吊り込み完了時の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示した実施例に基づいて本発明のエレベーター用ガイドレールの吊り雇を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例1】
【0013】
図1に、本発明のエレベーター用ガイドレールの吊り雇が吊上げるエレベーター用ガイドレールの上端部を示す。
【0014】
該図に示すように、エレベーター用ガイドレール4は、図示しない乗りかご又はつり合い重りから成る昇降体の昇降を案内するガイド部4aと、このガイド部4aと一体となり略T字状となるように形成された背面部4bと、この背面部4bに設けられる連結部である継ぎ目板部4dとから成り、エレベーター用ガイドレール4の1本あたりの全長は、4〜5mが一般的である。このエレベーター用ガイドレール4が複数本、継ぎ目板部4dを介してボルト等で連結されて昇降路内に立設される。
【0015】
図2乃至図4に、本発明のエレベーター用ガイドレールの吊り雇の実施例1を示す。
【0016】
図3は、比較的小さなサイズ(例えば、13Kg/mの重量で、長さが4〜5m)のエレベーター用ガイドレール4を吊る際の吊り雇5の組上げ構造及びエレベーター用ガイドレール4の配置を示している。
【0017】
本実施例に係るエレベーター用ガイドレール4の吊り雇5は、図3に示すように、エレベーター用ガイドレール4の背面部4bに当接すると共に、継ぎ目板部4dの底面4eに当接可能な当接板51と、この当接板51が取り付けられ、当接板51との協働でエレベーター用ガイドレール4を挟持する挟持部52と、この挟持部52に設けた吊り点である吊り穴55と、当接板51と挟持部52とを連結する連結手段(詳細は、後述する)とを備えて概略構成されている。
【0018】
そして、本実施例のエレベーター用ガイドレール4の吊り雇5は、挟持部52と当接板51には、挟持部52に対する当接板51の取り付け位置を、エレベーター用ガイドレール4のサイズに応じて変更可能にする取り付け位置可変手段(詳細は、後述する)が形成されている。
【0019】
この取り付け位置可変手段は、図2に示すように、挟持部52の図3及び図4の上下方向に間隔をあけて形成され、当接板51が挿入されて係合する複数の係合溝、例えば一対となる挟持部第1係合溝52a及び52b、他に一対となる挟持部第2係合溝53a及び53bと、当接板51に形成され、挟持部第1係合溝52a及び52b、挟持部第2係合溝53a及び53bのそれぞれに係合可能な当接板第1係合溝51a及び当接板第2係合溝51bとから構成されている。
【0020】
更に、具体的に説明すると、図2に示すように、当接板51は、平板部51Aと、この平板51Aの一方の面に、該面から突出するように所定の間隔をもって溶接により固定された2つの支持部51d1及び51d2とから成り、支持部51d1より端部側(図2の右側)の当接板51には当接板第1係合溝51aが、支持部51d2より端部側(図2の左側)の当接板51には当接板第2係合溝51bがそれぞれ形成され、当接板第1係合溝51aより当接板第2係合溝51bの方が深くなるように形成されている。また、当接板第1係合溝51a及び当接板第2係合溝51bのそれぞれの端部側の当接板51には、当接板連結穴51c1及び51c2がほぼ同等の位置に形成されている。
【0021】
一方、挟持部52は、吊り雇5を吊上げるための吊り穴55が形成された部材が溶接により固定された天板部52Aと、この天板部52Aの両端部から斜め方向に延びる斜め板部52B1及び52B2と、斜め板部52B1及び52B2のそれぞれから下方(当接板51側)に延びる下方板部52C1及び52C2とが一体に形成されて成り、下方板部52C1の上側(反当接板51側)には挟持部第1係合溝52bが、挟持部第1係合溝52bより下側(当接板51側)には挟持部第2係合溝53aが形成され、下方板部52C2の上側(反当接板51側)には挟持部第1係合溝52aが、挟持部第1係合溝52aより下側(当接板51側)には挟持部第2係合溝53bが形成されている。
【0022】
また、下方板部52C1の挟持部第1係合溝52bと挟持部第2係合溝53aの間には、外方に突出するように挟持部連結板54a1が溶接により固定され、下方板52C2の挟持部第1係合溝52aと挟持部第2係合溝53bの間には、外方に突出するように挟持部連結板54a2が溶接により固定されている。この挟持部連結板54a1及び54a2には、それぞれ挟持部連結穴54c1及び54c2が形成されている。
【0023】
そして、当接板第1係合溝51aと挟持部第1係合溝52a及び挟持部第2係合溝53aの溝は一様に浅く、当接板第2係合溝51bと挟持部第1係合溝52b及び挟持部第2係合溝53bの溝は、上記溝よりは一様に深く形成されている。
【0024】
その結果、当接板第1係合溝51aを挟持部第1係合溝52bに挿入し、当接板第2係合溝51bを挟持部第1係合溝52aに挿入すると、各々の係合溝は隙間無く係合し、かつ、挟持部52と当接板51の上面は同じ高さに揃い、連結ピン61及び62を、当接板連結穴51c1及び51c2と挟持部連結板54a1及び54a2にある挟持部連結穴54c1及び54c2に貫通させることで、当接板51と挟持部52を確実に連結させることができ、図3のように、比較的小さなサイズのエレベーター用ガイドレール4を吊る雇い構造になり、当接板51の支持部51d1及び51d2は、エレベーター用ガイドレール4を吊った際に、エレベーター用ガイドレール4が横方向にずれるのを防ぐための位置に配設される。
【0025】
本実施例での浅い係合溝と深い係合溝の定義は、浅い係合溝の底面と深い係合溝の底面の差が8mmであることで、例えば、当接板第1係合溝51aの深さが31mmであれば、当接板第2係合溝51bの深さは39mmである。
【0026】
なお、挟持部52の連結ピン61及び62には、当接板連結穴51c1及び51c2と挟持部連結穴54c1及び54c2に貫通させた後に連結ピン61及び62を捻ると抜け止めが図れるように、抜け止めピン61a及び62aが設けてある(この当接板連結穴51c1及び51c2、挟持部連結穴54c1及び54c2及び連結ピン61及び62で連結手段が構成されている)。また、連結ピン61及び62が当接板連結穴51c1及び51c2と挟持部連結穴54c1及び54c2を貫通し過ぎることを防止するために、当接板連結穴51c1及び51c2と挟持部連結穴54c1及び54c2よりも大きなサイズの貫通止めピン61b及び62bが設けてある。この連結ピン61の抜け止めピン61aと貫通止めピン61b、及び連結ピン62の抜け止めピン62aと貫通止めピン62bは、それぞれ90度ずれた位置に設けられている。
【0027】
一方、比較的小さなサイズのエレベーター用ガイドレール4を吊る際に、当接板51の表裏を間違えて組み立てた場合、即ち、エレベーター用ガイドレール4の横方向へのずれを防ぐための支持部51d及び51d2が、エレベーター用ガイドレール4の側面に配設されない様な組み立て方をした場合には、エレベーター用ガイドレール4を吊る際に、エレベーター用ガイドレール4が横ずれして不安定な吊り状態になる危険性があるが、当接板第1係合溝51aを挟持部第1係合溝52aに挿入し、当接板第2係合溝51bを挟持部第1係合溝52bに挿入し、表裏を間違った様な組み立て方とした場合には、当接板第1係合溝51aと挟持部第1係合溝52aの溝は隙間無く係合するが、当接板第2係合溝51bと挟持部第1係合溝52bの溝は隙間を生じて不完全な係合状態となり、かつ、挟持部52と当接板51の上面は同じ高さに揃わずに傾斜が生じること、及び連結ピン61及び62を当接板連結穴51c1及び51c2と挟持部連結穴54c1及び54c2に貫通させることができないことから、組立て方の間違いに容易に気付くことができ、間違った組み立て方で使用することを防止できる。
【0028】
同様に、図4に示すように、比較的大きなサイズのエレベーター用ガイドレール4を吊る際の吊り雇5の組上げ構造は、当接板第1係合溝51aを挟持部第2係合溝53bに挿入し、当接板第2係合溝51bを挟持部第2係合溝53aに挿入した場合、即ち、当接板51の表裏を正しい向きで場合にのみ各々の溝は隙間無く係合し、かつ、挟持部52と当接板51の上面は同じ高さに揃い、連結ピン61及び62を当接板連結穴51c1及び51c2と挟持部連結穴54c1及び54c2に貫通させることができるため、間違った組み立て方を防ぐことができる。
【0029】
なお、挟持部52の斜め板部52B1及び52B2には、図2図3及び図4に示すように、連結ピン支持穴54b1及び54b2を設けてあり、連結ピン支持穴54b1及び54b2に通した紐状体63a及び63b等によって、連結ピン61及び62を挟持部52に保持させることができるため、連結ピン61及び62を当接板連結穴51c1及び51c2、及び挟持部連結穴54c1及び54c2から抜き取った際などに、連結ピン61及び62の紛失を防ぐことができる。
【0030】
図3に、挟持部第1係合溝52a及び52bに当接板51を挿入して、比較的小さなサイズのエレベーター用ガイドレール4を、吊り雇5で吊る際の支持構造の具体例を示している。図3において、当接板51の支持部51d1及び51d2は、エレベーター用ガイドレール4を吊った際に、エレベーター用ガイドレール4が横方向にずれるのを防ぐための支持を担っている。
【0031】
図4に、比較的大きなサイズ(例えば、18Kg/mの重量で、長さが4〜5m)のエレベーター用ガイドレール4を、吊り雇5で吊る際の支持構造の具体例を示している。
【0032】
図4において、大きなサイズのエレベーター用ガイドレール4を吊る場合には、当接板51の支持部51d1及び51d2の出張りは、エレベーター用ガイドレール4と反対の方に向けるようにして、挟持部第2係合溝53a及び53bに当接板51を挿入するものである。
【0033】
次に、本実施例の吊り雇5を用いてエレベーター用ガイドレール4を昇降路1内に吊り込む作業について、図5及び図6を用いて説明する。
【0034】
図5は、本実施例の吊り雇5を用いてエレベーター用ガイドレール4を昇降路1内に吊り込む作業時の吊り込み開始時の状態を示し、図6は、吊り込み完了時の状態を示す。
【0035】
まず、エレベーター用ガイドレール4を昇降路1内に吊り込む作業では、最下階乗場3において、図3又は図4に示すように、エレベーター用ガイドレール4を挟んで吊り雇5を組上げる。その後、図5に示すように、例えば、ウインチ、ホイスト等の揚重装置2の揚重ロープ2aの先端の揚重フック2bを挟持部52に設けた吊り穴55に取り付けた状態で、揚重装置2を駆動して揚重ロープ2aを巻き取る。これにより、エレベーター用ガイドレール4は、図5の左側から右側に順次移動し、継ぎ目板部4dの底面4eを当接板51に支持されながら、昇降路1内に引き入れられる。
【0036】
なお、この際に、エレベーター用ガイドレール4は、当接板51と挟持部52に挟み込まれていて、継ぎ目板部4dの底面4eが当接板51の上面から外れることは無いため、エレベーター用ガイドレール4が本実施例に係る吊り雇5から抜け落ちることはない。
【0037】
このようにして、エレベーター用ガイドレール4を昇降路1内に引き入れた後、図6に示すように、昇降路1の底部1aに吊り下ろし、揚重装置2の揚重ロープ2aを引き下げるようにして緩める。
【0038】
これにより、揚重ロープ2aに負荷されていた張力が除かれるため、その結果として、エレベーター用ガイドレール4の継ぎ目板部4dの底面4eを支持していた当接板51の支持力が除かれ、本実施例の吊り雇5は、図6の矢印60で示すように、その自重によってエレベーター用ガイドレール4に沿って下降する。
【0039】
このようにして本実施例に係る吊り雇5を、例えば、図6に示す作業者6の手の届く位置まで下ろし、連結ピン61及び62を当接板51と挟持部52から抜き取り、当接板51を挟持部52から抜き取ることにより、吊り雇5をエレベーター用ガイドレール4から取り外すことができる。
【0040】
以下同様の手順で、最下階乗場3の他の複数本のエレベーター用ガイドレール4を昇降路1内に吊り込むことにより、必要なエレベーター用ガイドレール4の全てを昇降路1内へ吊り込むことができる。
【0041】
以上のように構成した本実施例に係る吊り雇5によれば、エレベーター用ガイドレール4のサイズに応じて、挟持部52に対する当接板51の取り付け位置を変更させることにより、サイズの異なる複数種のエレベーター用ガイドレール4の昇降路1内への吊り込み作業に対応させることができる。
【0042】
これにより、本実施例に係る吊り雇5は、異なる複数種(図3及び図4に示したエレベーター用ガイドレール4以外に、このエレベーター用ガイドレール4と重さが同じでサイズが異なるもの)のエレベーター用ガイドレール4の吊り込みを考えた場合には、エレベーター用ガイドレール4の吊り込み作業を行う吊り雇5の費用を従来に比べて低減させることができる。また、本実施例は、エレベーターの据え付け現場で、吊り雇5をエレベーター用ガイドレール4のサイズ毎に交換する手間が省け、エレベーターの据え付け作業の能率低下を防ぐことができる。
【0043】
従って、本実施例の構成とすることにより、異なる複数種のエレベーター用ガイドレール4の昇降路1内への吊り込みを1つの吊り雇5で対応でき、経済的で、かつ、エレベーターの据え付け作業の能率低下を招く恐れがないので、エレベーター用ガイドレール4を昇降路1内へ吊り込む際には非常に効果的である。
【0044】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。即ち、上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…昇降路、1a…昇降路の底部、2…揚重装置、2a…揚重ロープ、2b…揚重フック、3…最下階乗場、4…エレベーター用ガイドレール、4a…ガイド部、4b…背面部、4d…継ぎ目板部、4e…継ぎ目板部の底面、5…吊り雇、6…作業者、51…当接板、51A…平板部、51a…当接板第1係合溝、51b…当接板第2係合溝、51c1、51c2…当接板連結穴、51d1、51d2…支持部、52…挟持部、52A…天板部、52B1、52B2…斜め板部、52C1、52C2…下方板部、52a、52b…挟持部第1係合溝、53a、53b…挟持部第2係合溝、54a1、54a2…挟持部連結板、54b1、54b2…連結ピン支持穴、54c1、54c2…挟持部連結穴、55…吊り穴、60…矢印、61、62…連結ピン、61a、62a…抜け止めピン、61b、62b…貫通止めピン、63a、63b…紐状体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6